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2021年4月26日 (月)

抹殺された温家宝の母親追悼文

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温家宝前首相は、おそらく文革と共産党改革に何度も言及している唯一の中国共産党(中共)の指導者です。
温は、かねてから公開の場で、現在の中国の政治制度を批判しました。
まず2013年3月5日に開幕した全人代の時のこと、温は習近平と並んで登壇し、引退を前にした最後の政府活動報告を読み上げました。
その大半は、2
期10年の在任中に世界第2の経済大国に押し上げた実績の報告にすぎませんでしたが、続けて政治体制改革に触れてこのように述べています。

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温家宝前首相(右)と習近平国家主席=2013年3月、北京・人民大会堂 CNN 

権力が過度に集中し、制約を受けていないという状況に対し、制度面から是正する。
文革の錯誤がまだ完全に消えていない。政治体制改革は成功しておらず、文革は再び起こりうる」

共産党指導者の演説につきものの「嵐のような拍手」はなく、水を打ったような静寂が人民大会堂を支配したそうです。
温が政治体制の改革について述べたのは初めてではなく、この最後の演説の4年前の2011年にも香港の呉康民にこのようなことを述べています。

「中国の改革が困難である主な理由は、封建制度の残滓と文革の遺毒である」

ここで温が言う「封建制度の残滓」とは、身分が階級と化してしまった社会制度のことを指しています。
中国は紅2代といって
、共産中国の成立と発展に大きく貢献した者の子孫に 特権を与えています。これが「太子党」です。
彼らは中国内部で特権的ファミリーを作って、社会経済や軍を牛耳り、他の党派(団派・上海派)と内部抗争を続けてきました。

「中国20年以上在住の外国人の言として「中国の問題とは実はとても簡単なもので、それは500ほどるあの特権ファミリーの問題である」
「500の特権ファミリーには7人あるいは9人の政治局常務委員、25人の政治局委員、205人の中央委員、さらに一世代、二世代前の元老とその家族が含まれている」
「たとえば、江沢民元総書記の家族は電信事業、李鵬元首相の家族は電力事業、温家宝前首相は保険事業、周永康前政治局常務委員の家族は石油事業をそれぞれ国内で独占し、劉雲山政治局常務委員の家族は投資ファンドを喰い漁っている」
( 陳破空『赤い中国の黒い権力者たち』)

全盛だった重慶モデルのボスだった薄熙来と習の党派闘争にからんで薄を批判したと考えられていました。
ところが必ずしもそれだけでないことがわかるのは、「封建制の残滓」と並んで上げられているのが「文革の遺毒」だという部分です。
当時薄は、文革を思わす大衆動員をとり、「唱紅歌(革命歌を歌え)」運動を行い、テレビに連日資本主義がもらたす経済的な不平等を批判させ、国家が経済で果たす役割を拡大すべきだと主張しました。やがてテレビCMの放送を禁止するといった極端なやり方をするようになっていきます。

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これに政治路線的に最も激しく対立し、このような文革礼賛路線を否定したのが温でした。
温は、天安門事件で失脚した趙紫陽前総書記の秘書でしたが、 趙は第2次天安門において唯一デモ隊との対話を求めて「ここに来ることが遅かったのを許して欲しい」と言った人物です。
は鄧小平によって即座に解任され、やがて64天安門事件という軍隊による大虐殺事件へとつながっていきます。

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それはさておき、文革に関わった経験を持つ最高指導者は、温と習が上げられるでしょう。
このような温の文革否定的的な政治路線は、次期国家主席となるとみられていた文革支持者である習の路線と根本的に異なっていました。
そのことから、当時共通の敵だった薄打倒までは共闘したものの、以後このふたりは隠微な対立をする関係となります。

この翌年の2012年の第18回共産党大会の2カ月前、温は清華大学の講演で文革についてこう述べています。

「中国が大躍進を行い、人民公社がゆがんだ道をゆき、文革という過ちを犯した。改革開放は継続して前進せねばならず、後退できない。そして改革開放こそが国家の未来と希望に関係し、民族の前途と運命に関係するのだ 」

いっそう明確な文革批判と政治改革の訴えは、温が総理としての最後の記者会見の席上での発言です。

「文革終了後、中国共産党は歴史的決議を行い、改革開放を実施した。しかし、文革の錯誤と封建時代の影響はまだ完全に消えていない。今後、また生産分配が不公平になり、汚職腐敗問題などが起こるだろう。これら問題を解決するには、経済改革を行うだけでなく、政治改革を行わねばならない。特に党と国家の指導制度の改革をせねばならない。
政治改革が成功しなければ、経済改革は最後まで行えない。すでに獲得した成果も再び失うことになり、新たな生産の問題は根本的に解決できず、文革の悲劇が再び繰り返されるかもしれない。改革をただ前進させるしかなく、停滞したり後退したりすることに出口はない」

そしてつい先日のこと。温は母親の追悼文を公表し、その中で文革が今日に至るまでの政治運動に影響を与えているとし、温一家自身、文革期間に災難にあったことを書いています。
温の父親は1959年に、歴史的問題で教師の職を追われ、さまざまな制約を受けました。
文革期間には暴力的な紅衛兵によるリンチを受け、学校に軟禁され、給料も出なくなり、大字報と呼ばれる政治的壁新聞が家の門のところに貼られ、野蛮な「尋問」や公開拷問を受けました。
温の父親は連日、紅衛兵に殴打されて、顔形が変形するような日々を送ったようです。

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「 中国の温家宝(ウェンチアパオ:Wen Jiabao)前首相(78)がマカオ紙に習近平(シーチンピン:Xi Jinping shî-chinpin)国家主席を暗に批判したとも取れる文章を寄稿し、波紋を呼んでいる。寄稿文を掲載したのはマカオの知名度の低い新聞で、これは恐らく、中国本土では掲載に意欲を示すメディアがなかったことを示しているとみられる。
寄稿は先週掲載されたもので、表向きは亡き母への追悼文となっている。
ただ、その中で公正、正義、人道、自由を求めるとともに、中国共産党が忘れたがっている文化大革命期を振り返っており、多くの読者が習氏への遠回しの批判と解釈した。温氏の文章に中国のSNSは騒然となった。寄稿文は数十万回にわたって共有され、検閲当局が介入して拡散を阻止する事態となった。
寄稿の末尾で、温氏は中国の理想像を提示しており、国の現状が自身の期待に沿うものではないことを示唆しているとみられる。温氏は「私の考えでは、中国は公正さと正義に満ちた国であるべきだ」「民意や人道、人の本質が常に尊重され、若々しさと自由、努力する姿勢が常にあるべきだ」としている温氏は2003年から13年にかけて首相を務め、1989年6月の天安門事件で暴力的な弾圧に反対したことで失脚した共産党総書記、趙紫陽(チャオツーヤン:Zhao Ziyang)氏の側近トップを務めたこともある」(CNN 4月20日 中国の温家宝前首相、習主席を暗に批判? 寄稿が波紋 )

温がマカオの小媒体に発表したこの文章は、即座に発禁となったようです。
ちなみに習は最近、党史学習近平教育動員大会というイベントで次のように強調しているそうです。

「旗幟鮮明にして歴史虚無主義に反対せよ」「中共は歴史虚無主義者ではない」「自分の歴史に無知であるな、自分を卑下するな」

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毛沢東のレガシーを利用する習主席 - WSJ

このように、中国共産党は輝ける大道を歩んできた歴史がある、毛沢東主義と習近平主義の旗を掲げて前進せよ、と主張しながら、一方で文革については、温時代の党史が独立した一章を割いて暗黒面を記述したことに対して、わずか1節で「社会主義建設は曲折しながら発展した」と書かれているにすぎないようです。

また「白毛女」「紅色娘子軍」など文革時代の紅色革命劇は、中共100年の祝賀宣伝の重要演目となっています。
清明節の間、北京の福田公墓にある、四人組の毛沢東の妻・江青の墓地が対外的に開放される一方、改革派の代表的人物である趙紫陽の墓地は当局によって一般人立ち入り禁止となりました。

中国において、歴史は文革へと逆流を開始したようです。
ただし注意しなければならない点が、ひとつあります。
60年前の文革は鎖国状態で行われた内乱でしたが、今の中国は勃興しようとしている世界帝国です。
ですから文革への逆行は中国国内のことだけでは済まず、全体主義の世界的台頭となることでしょう。
米国のアンティファなどはその兆候なのかもしれません。

 

 

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コメント

こっちも誰もいない。。

温家宝···温かい家の宝ってスゲェ良い名前だよな。
お爺さんがマカオの小さな新聞に寄稿した程度でチェックされて消されるというのは、中国共産党はネットを完全に監視下に置いていて超管理社会の党独裁だというのが改めて明らかになりました。

習近平さんも、よほど「批判されるのが恐い!許せない!」という独裁者の末期症状が出ています。
あそこは国政というよりも党内派閥の争いと利権が優先なんでしょうけど。
国民はたまったもんじゃありませんね。老人層には「毛沢東首席の時代は良かった」という人が一定の割合でいるそうですけど、それは「みんなが貧しくて当たり前」という時代を経験しているからです。

なんか党の意向にそぐわないと、これまで中国経済を引っ張って世界的な大成長企業になったアリババグループやファーウェイですら解体させかねない有り様は、そこまでやるのかあー、と。

つまり、共産党独裁による恐怖政治です。

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