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2021年4月24日 (土)

難破寸前の一帯一路

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中国の一帯一路がぶざまなことになっています。
まずその兆候は、中国がさんざんなぶりものにしてきたオーストラリアで現れました。

「オーストラリア政府は21日、ヴィクトリア州と中国が結んでいた「一帯一路」構想参加協定を破棄すると発表した。中国政府はこの対応に怒りを表明し、両国の緊張関係がさらに高まっている。
オーストラリア政府は今回、中国とヴィクトリア州が結んでいた2つの協定を、新たに制定された権限を使って破棄した。国益を守る合意に違反しているためと説明している。
在豪中国大使館はこの動きを「挑発的だ」と批判。「両国の関係をさらに傷つけるもので、最終的にはオーストラリアにとって有害となる」とコメントした。
「オーストラリア政府が中豪関係を改善する気がないことを再び示すものだ」
オーストラリアでは先に、州政府や地方自治体、公立大学が諸外国と結んだ合意について国益を脅かす可能性がある場合、政府判断でこれを破棄できる法律が制定された。政府がこの法律を行使したのは今回が初めてだという」(2021年4月23日 BBC)

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スコット・モリソン首相

豪政府が破棄を決定したビクトリア州の協定は、ビクトリア州が2018年と19年に中国と締結した一帯一路関連協定2本に加え、州教育省が2004年にイランと交わした了解覚書、1999年にシリアと締結した科学協力協定の4本です。
ビクトリア州政府は、労働党左派が握っていますが、中国、イラン、シリアとは、これまた揃いも揃ってアブナイならず者国家がお好きなようで。
マリス・ペイン外相は、申告があった1000件以上のブロジェクトを審査した結果、これらの協定の破棄を決めたとし、同時にイランとシリアと結んだ教育や科学に関連する協定も破棄すると発表しています

マリス・ペイン外相は、これらの廃棄された協定について、「豪州の外交政策に矛盾する、あるいは豪州の外交関係の弊害となる」と述べています。
ちなみにペイン外相は、昨年10月、東京を訪れて日米豪印クアッド外相会談に参加していますし、首相のスコット・モリソンは安倍氏が辞任したときに強いショックを受けて東京まで飛んできた人物です。

2020年12月、連邦政府は、国が国益に反すると認めた場合は州政府の結んだ外国との協定や条約を廃棄できるとした外交関係法 (foreign relations laws)を成立させました。
当時は特定の国家を名指ししたものではないとしていましたが、もちろんそれは政治的フェイントだったようで、その目的は中国の一帯一路からオーストラリアをデカップリングすることにあったようです。
中国はすでに国内の多くの地域や分野を握っており、特に労働党左派が握るビクトリア州を拠点にして一帯一路を浸透させ、国内を分断させることを狙っていたと、連邦政府は見ています。

では、この中国の拡げた大風呂敷である一帯一路は、果たしてほんとうに機能しているのでしょうか?
そもそもなんのために一帯一路を作ったのか、いよいよ誰にも分からなくなってきました。
当初それは、中国があり余るチャイナマネーで、中国と世界を結ぶ21世紀のシルクロードを作るためだと信じられてきました。

中国自身はこう答えています。
中国国務院報道局英語版ウェブサイト “How the world will benefit from China’s Belt and Road?” (原文英文)

「世界経済の弱さを後押しし、貿易・投資環境の大きな構造変化に適応するための戦いは、世界金融危機以来、多くの形をとってきた。
中国の古代ユーラシア貿易ルートの復活がその答えである。
一帯一路は国際協力とグローバルガバナンスの新しいモデルであり、一帯一路イニシアチブは世界開発に新たなエネルギーを注入することを目指している
新シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードで構成される一帯一路イニシアチブは、古代シルクロードのコンセプトとルートに基づく開発戦略と枠組みです。2013年後半に中国の習近平国家主席によって提案された」

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ね、抽象的でしょう。
前段でわかるのは、一帯一路は、古代のシルクロードという古い酒を、一帯一路という新しい革袋に入れたものだていどのことです。
中国とアジア、中欧、西欧・アフリカをつなげる巨大な21世紀のシルクロードが一帯一路だというイメージです。

しかしここでハタと思いませんか。なにを時代錯誤なことをのたもうているのか。今は空路と海路の時代です。
紛争が多いアジア-欧州ルートは、いたるところで寸断されるために、国際ルートとしては補助的な存在にすぎません。
もちろんそんなことなど中国はわかっています。
中国が本気で望んだのは、カラコルムハイウェイと呼ばれる中国-パキスタン回廊と、ミャンマーの港にから雲南を経て中国内陸に至るオイルラインだけで、さらに西へのルートの現実性は政治的なものにすぎません。

それがわかるのは、この中国国務院の文章の後段の「一帯一路は国際協力とグローバルガバナンスの新しいモデルだ」として、それが「世界開発に新たなエネルギーを注入する」という部分です。
ここで中国は一帯一路の目的を、端的に「国際協力とグローバルガバナンス」と言い切っています。
文章はあえて主語が欠落させていてぼやかしていますが、とうぜんこの主語は「中国」しかありえません。
ガバナンスという意味は、「統治・支配・管理」の意味です。
つまり、一帯一路は中国が地域覇権国から世界帝国に飛躍するための装置だったのです。
なんのことはない、ここまではオレの勢力圏にするつもりだということにすぎません。

要は、中国にとって、一帯一路とは初めから自らの中華共栄圏構築のツールだったのです。
これが習近平がいう「中国の夢」です。

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ところがこの一帯一路は、当時のグローバリズムの全盛を背景にして、各国それぞれに勝手に解釈されてしまいました。
資金難に悩む諸国にとって、中国という気のいい巨大土建屋がやってきて、国内にどんどんと新しい道路や港湾などを作ってくれる、そしてそれらを海上ルートや陸路で世界一繁栄している中国市場へと直結できるんだ、という美しい誤解でした。

この中国の一帯一路の呼びかけに最も敏感に反応したのは、案外知られていませんが中欧・東欧諸国でした。
彼らはソ連圏から離れて念願の「夢のEU」に入れてもらったのはいいですが、新規の投資は滞り、ただの安価な労働力の供給地に成り下がったことに不満を募らせていました。
これではEUの植民地になっただけではないか。ソ連は独裁的で大嫌いだったが面倒見がよかった。しかしドイツときたら財政緊縮しかいわないで、ドイツ製品を押しつけてくる、ああ、たまらないぜ、くそメルケルめ、というわけです。

米外交専門誌「デプロマット」はこう書いています。(原文英文)
How China’s 17+1 Became a Zombie Mechanism

https://thediplomat.com/2021/02/how-chinas-171-became-a-zombie-mechanism/

なおこの「16+1」とは、一帯一路の参加国のことです。

「2012年、中国は16+1メカニズムを打ち出し、後にギリシャを加えて17+1に拡大したため、中東欧で大きな両手を広げて歓迎した。
それが提案された10年前、当時の16+1メカニズムは多くの熱意と希望を持って受け取られた。
中国は大きな力でインフラを構築し、古い工場を復活させ、西欧の投資家を見ることがなかった人々や地元のプロジェクトに投資すると信じられていた。
この熱気の中で、中東欧諸国の間には、自らこそが「中国のヨーロッパへの入り口」になるための競争が始まった。
しかし10年経ってみれば、約束は果たされず、ゴールラインは見えないどころか始まりもしていないことに気がついた。
どうしてこんなことが起こったのだろうか?
率直にいえば、中国は期待と成果を両立させることができなかったからだ。

そして10年後、中国は大きな失望を受ける。
この17カ国が揃って、ファーウェイの5Gネットワークへのアクセスを禁止する米国との覚書に署名してしまったからだ。
そしてこの17カ国は、ファーウェイや他の中国のハイテク企業を対象とした封じ込め作戦であるワシントンのクリーンネットワークイニシアチブに参加してしまった。
これらの中東欧(CEE)諸国は、中国のヨーロッパへの玄関口であると考えられていた。
今や、彼らは中国にとって最大の頭痛の種となっている」

このようにオーストラリアのみならず、中東欧諸国もまた、一帯一路はインフラ投資計画ではなく、中国にとってだけ必要な地域の港や空港を割譲させ、覇権の拠点に作り替えていくことだとわかったのです。

 

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コメント

 そもそも中国の一帯一路なんか、最初から上手く行くはずなどなかったのだと思いますね。
日本のODA外交でさえ期待したほどの効果はなく、汚職やひも付き援助批判を招いてしまった側面が大きかったですし。

中国は一帯一路に現在までに10兆円使い、関係国に33兆円を貸し出しています。にもかかわらず、一帯一路共栄圏(仮)に属する国々における民心掌握には大失敗していて、もはや「反中国回廊」と呼んで良いくらいのさんざんなあり様です。
各地でとん挫している状態で、工事中止状態や計画変更を余儀なくされている例が頻出しています。

とん挫している原因は資金調達に失敗している要因も大きいです。
AIIBは機能していなく、先進諸国からの資金調達が途切れていますし、中国自身も国内安保や軍事費増大に優先的に資金をまわしていて財政的に困難な状況です。

こうした事実は「バスに乗り遅れるな」と連呼したマスコミからは未だに満足に報道されませんが、中国経済が引き続き無限拡大中にあるという迷信は薄れつつあるような気がします。

最近、中共はアリババなどの民間企業への締付けを強くしています。
中でも金融関連企業を、事実上の完全国営化したいようです。デジ
タル人民元を導入して、中国国内の金の流れ全てについて中共が
監視出来るようにしたいようですわ。人の流れはすでに掌握できる
ようになっているので、中共の独裁は盤石なものとなります。

でも私から見て、アリババを創設のジャック・マーさんの方が、近平
皇帝よりもずっとビジネスについては有能だと思われます。中共の
政権をとる太子党の連中もほとんどは無能でしょう。開放政策以降
の中国の大発展は、鄧小平さんの能力というよりも、直接的には
一般中国人の商人としての才覚によるものですわ。

それがここへ来て、中共指導部と大成功した実業家の間のパワー
バランスが危うくなって来た。マーさんが旧態依然の中共のシバリ
にシビレを切らして、政府当局に不満を漏らしたのは当然ですわ。
指導部は焦った、「俺達がアホで無能なんがバレてしまうやんけ」
と。可哀想なマーさんは、その後数カ月の間、人々の前から姿を消
してしまいます。軟禁なのか謹慎蟄居なのか、事実はわかりません。
中共が、党と民のケジメを国内外に示したのだと思いますわ。開放
と言いながら、昔ながらの全て党指導の経済に戻ったようです。

で、一帯一路です。政治バカの中共に、他国を交えての経済を推進
する能力があるようにはまったく思えません。党のメンツの為、マー
さんら企業家には活躍の場はありませんから。党に対してイエスマン
の狡賢い小判ザメ企業などが、他国を生贄にして金を稼ぐような形
に堕落していくのが定説です。独裁の中共が力をもつような自由な
競争が無い所には、健全で力強い経済は生まれませんわ。

いつも楽しみに拝読しております。

一帯一路もAIIBもそうですが、我が国は一部にバスに乗り遅れるなと騒ぐ人がいたのに、ずっと距離を置いてきました。そして距離を置くどころか、対抗概念とも言えるFOIPを提唱しています。
AIIBは明らかにADBの猿真似で、基軸通貨の発行体は欧州だけ、日米は参加しませんでした。途上国が人民元をいくらもらっても、基軸通貨ではないので中国以外に国内での支払いすらできません。資金調達が機能せず一帯一路がうまくいかない状況、最近の中国の軍事的な圧力の増大は、こんな焦りの裏返しかもしれませんね。

日米首脳会談ではっきりと中国を敵視し始め、何だか約80年前の大東亜共栄圏とABCD包囲網みたいになってきていて、国内を抑えきれなくなった中国が、軍事的に暴発する可能性を考えてしまいます。日本の真珠湾攻撃みたいに、台湾海峡や尖閣諸島ではないとんでもない場所へ、いきなり中国軍がやってくるようなことがないことを祈ります。

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