菅首相訪米、米国は台湾防衛を要求するでしょう
菅首相が訪米しました。
「菅義偉首相は15日夜、初の米国訪問に向け出発する。ワシントンのホワイトハウスで16日午後(日本時間17日未明)にバイデン大統領と会談。日米同盟を強化し、中国の台頭に連携して対処する方針を確認する。気候変動問題や重要品目のサプライチェーン(供給網)構築を含む経済安全保障をめぐっても意見を交わす見通しだ」(時事4月15日)
NHK
菅さんの初陣です。
バイデン政権ができてから、4カ月ちかくたっていますので、2+2会談やクアッド首脳会談などで実務的なことの積み重ねはできていますので、そうそう大外しはないはずです。
新大統領として初の外国要人としてのご指名ですから、バイデンとしても気合が入っていると思われます。
バイデンがなにを言うのか忘れてしまい、菅さんが大仏と化している光景が見えるようで、ああ心配。
なにか宗主国に新大統領が誕生するたびに押っ取り刀でご挨拶に出向くようでなんだかなぁ、という気がしますが、声もかからないほうがもっとなんだかなぁ、なんですが(笑)。
むしろ今の中国の「戦狼」ぶりを見ると、つまらないプライドを捨てて実を取るべき時期です。
向こうさんからしても、数ある同盟国から日本を「大統領最初の客人」として選んだのは、くじ引きで決めたわけではありません。
日本以外に中国にストップをかける同盟国が、世界に存在しないからです。
日本人は妙にじぶんの国を弱小国だと思っているふしがありますが、アジア全域を見渡しても経済力で世界3位、人口は仏独を合わせたより大きな1億2千万人、海軍力は自由世界第2位、空軍力も同じ世界5位、そしてなにより民主国家群の中核的同盟となることを期待されているクアッドの提唱国てす。
それがわが国の客観的国際地位だ、ということを忘れないようにしましょう。
だから米国はヨーロッパ諸国ではなく、「最初の客」として日本を指名したのです。
暴走する中国を止めるには、地理的にも軍事的にも中国に隣接する日本しかいないし、日本ぬきで世界戦略は立てられないからです。
日本はこの自らが置かれた立場から逃げようがないし、逃げるべきではありません。
菅さんは安倍氏と既に会談しているので、腹案はもっていると思われます。
たぶん外交の師匠に胸襟を開いていろいろと尋ねたのでしょうね。
安倍氏としてもここで菅さんが外交的失敗をすれば致命的になることは分かっていますから、元の女房役に親切に教えたんじゃないでしょうか。
ほんとうは彼が行けば安心なんですが、ま、しょうがない。
もうすでに共同声明の内容については事務方同士で決めているはずで、先乗りしているNSCの北村局長と米国サリバン大統領補佐官が文言まで詰めているはずです。
その意味では、首脳会談はジジが居眠りをしないかぎり予定調和です。
要点は絞られています。
よくメディアが気候変動がどーたらと言っていますが、そりゃ話には出るでしょうが、もうすでに首相は2050年までにCO2排出ゼロを謳ってしまっていますから、総論で終わると思います。
むしろ、バイデンが環境問題とグリーンエコノミーに注ぎ込むという220兆円規模のインフラ投資をすると言っているのですから、退屈でしょうがしっかり拝聴してきて下さい。
バイデンは壮大な大風呂敷を拡げています。
「バイデン米政権は31日、8年間で2兆ドル(約220兆円)規模をあてるインフラ投資計画を議会に提案する。財源として連邦法人税率を21%から28%に上げるなど企業増税を求める。持続的な経済成長や中国への対抗を狙う。野党は増税に反対しており、議会審議が紛糾するのは必至だ。
バイデン大統領は31日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグを訪れて演説し、「米国雇用計画」の詳細を発表する。
ホワイトハウスによると、道路や橋の修復など交通網の整備に6210億ドルを求める。気候変動対策の一環で電気自動車(EV)を普及させるため、地方政府や企業に補助金を出して充電設備を2030年までに50万カ所設ける。電力網の刷新に1000億ドルをあてて温暖化ガスの排出削減にもつなげる。
国を挙げて巨額を投じる中国に対抗するため、サプライチェーン(供給網)の強化など製造業の振興に3000億ドルを投じる。このうち半導体の米国生産を後押しする補助金に500億ドルを充てるよう求める。人工知能(AI)など研究開発投資にも1800億ドルを見込む。
バイデン政権が公約に掲げる格差解消も計画の柱だ。過疎地を含む全米に高速通信網を行き渡らせる。低所得者向けの住宅や公立学校、育児施設の増設・修復も促す」(日経3月31日)
目的はCO2削減という民主党左派好みの空疎なものですが、巨額財政投資自体は大正解です。
コロナから立ち直ることが求められているのは米国も日本も同じこと。
日本は今米国に協調して巨額財政投下をする時期です。
むしろ米国側から、もっと日本がカネをバラ撒けと要求して欲しいくらいです。
外圧頼みは寂しいですが、うちの国の財務省や太郎ちゃんはそうでもしないとビクリとも動きませんからね。
次に、なんといってもメーンテーマは対中戦略のすり合わせです。
ジジが気象変動なんて寝言を言っている時は聞いたふりをしているだけでかまいませんが、対中戦略はわが国の焦眉の課題です。
ここで米国は日本に腹を括れ、いつまでもコウモリやっているんじゃねぇ、と言ってくることでしょう。
いや、言って欲しい。かまわないから一発かまして下さい、バイデン閣下。
日本には中国ラブの亡者どもが政権与党に溢れているのです。
実は、この首相訪米前に、日米韓三カ国は、北朝鮮をめぐる問題などを協議しています。
日経
「日米韓3カ国は2日、安全保障担当の高官協議をワシントン近郊で開き、北朝鮮の非核化や中国への対応に関する協力を確認した。中国は3日、韓国との外相会談を福建省アモイで開催した。対立を深める米中が韓国との連携を巡って綱引きする構図が鮮明になった。
共通の安全保障上の目標を守り、前進させるために努力する」。日米韓は協議後に共同声明を出して強調した。バイデン政権発足後、対面で初の高官協議だった。北村滋国家安全保障局長とサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)、韓国の徐薫(ソ・フン)国家安保室長が出席した。
声明は中国を念頭に「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の懸念」を話したとも記した。半導体など重要品目の安定供給網(サプライチェーン)の構築といった経済安全保障の協力も協議したとみられる」(日経4月4日)
北村NSC局長とサリバン補佐官、日米はメンツまで一緒です。
日米韓“安全保障担当”高官協議がスタート|日テレNEWS24
もちろんここで話合われたのは、韓国の去就です。
米国が言ったのは、コリア、お前真面目に中国と対峙する気があるのか、あるならクアッドに参加しろ、台湾防衛についても一肌脱げと言ったところでしょうか。
韓国がなんと答えたのか分かりませんが、さすが日本を目の前にして「日本の歴史認識が問題だから協力できない」なんてことは言わなかったようです。
しかし、米国の言うことは聞く耳持たないことは、態度で示しています。
なんとその翌日、中韓外相会談がもたれて、その席上韓国はは協力関係の強化と2+2会談の実現、そして習の訪韓まで要請しています(爆笑)。
「韓国の聯合ニュースによれば、王氏は会談冒頭、朝鮮半島問題をめぐり「韓国と共に対話による政治解決プロセスを推進する」と強調。鄭氏は「韓中両国は韓(朝鮮)半島の完全な非核化という共通目標がある」と述べ、「中国の積極的役割」に期待感を示した。
韓国が要請している習近平国家主席の訪韓については、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いた後、早期実現を図るとした。日中韓首脳会談の早期開催に向けた協力も再確認した。
中国外務省によると、王氏は北朝鮮が主張する「(自国の)安全への合理的な懸念」の解決が必要と改めて指摘。米国と対立する北朝鮮の立場を代弁した」(日経4月4日)
やってくれますね、コリア。
韓国は中国に対して、北朝鮮を代弁して「北の安全保障の懸念」を払拭してくれるように要請し、さらなる「協力強化」を約束したうえで習に訪韓まで請うたというんですから、空恐ろしい。
それだけで終わらず、外務・防衛の2+2会談を中国にもちかけるということは、安全保障分野でも、中国様の準同盟国になる意志を示したということになります。
韓国はそれを時期もあろうに、日米韓国三カ国会談翌日にかますのですから、見上げたんだよ、風呂屋の煙突です。
米国の顔に真正面から泥団子を投げつけ、中国にひざまずいたことになりますが、意味を分かってやっているんでしょうね。
いいかげん米国も目を覚ましなさい。あの国はもうアチラ側に走ったのです。
トランプはとっくにそう考えて、その対処を練っていましたが、バイデン政権はそこからですか、なのです。
では、このような韓国の裏切りという新局面を受けて、日本の役割とその位置づけを大きく変化させねばなりません。
まず朝鮮半島に対しては、米韓同盟の枠組みを崩さずに新しいシフトに変化していく必要があります。
米韓同盟があるからこそ、韓国軍を戦時統制権で拘置できます。
これがあるかぎり韓国大統領が自由に動員できるのは特戦団と海兵隊くらいで、主力は動かせません。
トランプのように見切りをつけて去ることはいつでもできますから、今は韓国軍に北や中国軍とおかしな共同をさせないことてす。
最悪なのは、中韓北の三国が同盟を組み、それにロシアが協力するという構図です。
この反日米4カ国同盟を組まれた場合、日米同盟は対応できないかもしれません。
ですから、韓国が実質で裏切っていることは充分承知していても、韓国はまだ友好国だというしぐさを続けておく必要があるのです。
そしてその一方で、韓国なき日本海方面の防衛を構想せねばなりません。
韓国が従来要求されてきた役割は、対北、対中、対露の前線国家・橋頭堡でしたから、これを失えば、当然最前線に日本が来ることになります。
西は東シナ海・尖閣海域、北は日本海が日本の新たな防衛ラインとなります。
今回日米首脳会談でここが詰められるはずです。
具体的には、日本がこの数十年曖昧にし続けてきた台湾防衛に参加を求められることでしょう。
尖閣を日米安保で守ることを米国に頼むるなら、その見返りに台湾防衛の旗幟を明確にせねばならないのです。
日本は韓国とは違う意味で米中に二股をかけていました。
もうそれが効く時代ではないのです。
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共同声明で台湾防衛の件が入るかどうか?、入るならばどの程度の内容か? 先島諸島在の私などは、ハラハラドキドキです。
ここで日本が台湾防衛に積極関与出来ないならば、尖閣防衛も口だけに終わりそう。尻がムズムズする思いです。
最悪なのは中国からの嫌がらせに臆して台湾を切り捨てる事。
地理的側面を考えるならば、やがて同じ事が宮古・八重山まで広がる懸念を持たざるを得ません。
台湾をめぐる中国との対立は沖縄防衛とセットです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年4月16日 (金) 22時48分