慰安婦問題終了のお知らせ
ちょっと驚いたニュースが入ってきました。
韓国のソウル中央地裁が、慰安婦問題や徴用工といった定食メニューを終りにしてしまうような判決をだしてしまいました。
「韓国のソウル中央地裁は21日、旧日本軍の慰安婦被害者や遺族20人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを却下した。同地裁は1月に日本政府に対し12人の原告に1人当たり1億ウォン(約970万円)の賠償支払いを命じたが、異なる判断を出した。
却下は訴訟要件を満たしていない場合、審理を行わず下す決定だ。
今回地裁は日本政府が主張する主権免除を適用する必要があると判断した。主権免除とは主権国家が他国の裁判管轄権から免除されることを意味する」
(聯合4月21日)
李容洙(イ・ヨンス)
初めて地裁の判決が割れましたね。それも分裂する判決を出したのはまたもソウル地裁ですから、思わずおいおいと言いたくなってしまいます。
前回は(といっても今年の1月ですけど)こう言っていました。
「日本政府が慰安婦被害を賠償すべきという8日の韓国裁判所の判決は、被害者には司法の正義が実現したという意味がある。日本は慰安婦被害について謝罪しながらも「賠償」という概念は最後まで拒否してきた。しかしこじれるだけこじれた韓日関係を解決すべき韓国政府の立場では、もう一つの大きな宿題を抱えることになった。日本は直ちに「韓国が国際法を違反した」と強く反発した。
裁判所は今回の判決で国際法的に通用する「主権免除」概念を排斥した。これは一国の裁判所が他国の政府の主権行為に対して裁判管轄権を持つことができないという規範だが、裁判所は「主権免除論はその後ろに隠れて賠償と補償を回避する機会を与えるためのものではない」と判示した。梁起豪(ヤン・ギホ)聖公会大教授は「その間、被害者が日本と米国の裁判所に提起した訴訟ですべて敗訴したが、今回、韓国国内で救済になったということ」とし「公式的に法廷で日本政府の法的責任が認められたのは初めてであり、意味が大きい」と評価した」
(中央日報日本語版1月9日)
今回は慰安婦訴訟は主権免除に反するから損害賠償は却下、前回は主権免除を認めずに損害賠償を認める、というわけです。
今回が常識的判断、前回が非常識なんですが、実は前回で日本は「敗訴」しています。
いや正確には裁判に出ていませんから、勝つも負けるもないのですよ。
日本政府はそもそもの前提である主権制限論に反するようなこんな裁判は裁判として認めていないんですからね。
ですから、ソウル中央地裁が、原告の訴えを認めて前回は1億ウォンの損害賠償を認めようとどうしようと、われ関せずがわが国の一貫した立場です。
日本がワレ関セズの立場を取ると、困ったのは原告側でした。
上訴でもしてくれればプロパガンダになるのに、日本はシカトですから呆然としたことでしょう。
ならば判決が確定したと見なして日本政府から1億ウォンを差し押さえればいいのですが、ここからが本当の問題が始まるのです。
聯合
だって日本政府からむしり取るといってもナニを取るんですか、ということにハタと気がついたようです。
この慰安婦裁判は構造は徴用工と一緒ですが、大きく違うのは訴えられたのが三菱重工などの私企業ではなく日本政府だということです。
すると1億ウォン分の日本政府の資産を差し押さええて現金化せにゃならんのです。
ナニを差し押さえるんでしょう。韓国国内の日本政府資産なんて大使館や公使館ていどしかありませんから、大使館でも差し押えるしかないのです。
実際にやったら見物だろうなぁ。大使館の屋根にそそり立つ慰安婦像。もう外交もクソもないよね。
ここで日本政府が主権制限論を主張した意味が、やっと鈍い原告らにも分かってきたことでしょう。
具体的に大使館を差し押さえるという意味は、日本の外交官に使わせないようにするということです。
いうまでもなく、外交官とその施設の保護を義務づけたウィーン条約違反です。
まずこれをやったら、大使帰国ていどでは済みません。今までの最悪の流れから一気に断交に発展するでしょう。
ソウル地裁が今回言っているように、相手国の正当な外交活動をやらせないんですから、もうこんな国とは国交自体が成り立たないと日本政府は判断するでしょうからね。
それにやっと気がついたので、韓国司法はこの4月になって、慌てて主権制限論を認めて訴訟費用を日本に求めない判決をだしています。(遅いンだよ)
「裁判所は「ウィーン条約27条の規定により、国内的事情と解釈にもかかわらず(慰安婦の合意など)条約の効力は維持することができる」とし「このような場合、判決の執行自体が権利濫用に該当し請求異議の訴訟や暫定処分の対象になる可能性を排除することはできない」と指摘した」
(朝鮮日報4月20日)
ここでソウル中央地裁が言っているウィーン条約27条とはこのようなものです。
第二十七条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。
苦しい言い訳ですね。ウィーン条約が言っていることは、条約は国内法を超越するということです。
ですから条約に反する国内法は作れないし、よしんば出来てもそれに条約上の義務は拘束されないということです。
日本の場合なら、仮にデニーさんが首相になって、辺野古飛行場使用取り消し法みたいなものを作っても、条約上の義務は消滅しないのでまったく無意味なようなものです。
そこでソウル中央地裁はムン閣下のメンツも立てて、国内法的には慰安婦に関する今までの政府の措置や司法判断はそのまま維持できるが、慰安婦合意は条約だからこの埒外にある、という論法をひねり出したわけです。
簡単に主権制限論についておさらいしておきます。
これは国際ルールです。
「国及びその財産に関して免除が認められる具体的範囲等について主に以下のとおり定める。
(1)国は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる。ただし、商業的取引から生じた裁判手続、雇用契約に関する裁判手続等本条約に定める裁判手続については免除が認められない。
(2)国の財産に対する強制的な措置(差押え等)は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、とられてはならない。
外務省『国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約』
要するにこういうことです。
外国において、外国籍の私人、ないしは私企業を訴えることは出来ますが、外国政府を訴えることはできません。
そんなことを認めると、たとえば沖縄の基地反対派が米国政府を相手取って損害賠償請求訴訟なんかができてしまいます。
そして頭の調子のおかしな地裁判事が原告勝訴にしてしまうと、米国には支払い義務が生じます。
それに応じないと、合衆国財産である戦闘機を差し押える、なんてことになっちゃいます(笑)。
ね、ありえないでしょう。そんなことを認めたら、私人が勝手気ままに国家間関係に介入できてしまういますもんね。
だから、外国政府を訴えることは原則不可能なのです。
やっと遅ればせで、韓国司法はそれに気がついたようです。
負けた元慰安婦は「国際司法裁判所に行く」といっていますが、どうぞご自由に、恥かくだけですから。
わずかですが、実際に主権免除論が国際司法裁判所で審理されたケースがあります。
それは2004年に、イタリアの最高裁がドイツ政府に対して第二次大戦中に生じた損害の賠償を命じた判決を出したことに対して、ドイツ政府はこれを不当として国際司法裁判所に提訴しました。
まぁ、そもそも旧同盟国に損害賠償を求めるというのが相当にヘンですが、ドイツからすればそんなことを認めてしまったらヨーロッパ全部の国に損害賠償を支払わなければならなくなって、戦後処理の枠組み全体がおかしくなります。
ドイツは個人賠償をしたが、日本はしていない、なんてことを言う人がいまでもいますが、ドイツはユダヤ人だけに対してのことで、膨大な数に登る被占領地の人に対しては賠償はおこなっていないのです。
ユダヤ人だけには謝罪して賠償させる一方、侵略した国家に対する賠償は不問に付すというのが、連合国の作った枠組みでしたからね。
結局2012年に国際司法裁判所は、ドイツ勝訴、イタリアが国際法違反だという判決を出して幕になりました。
ちなみにムン閣下もまだ延々と慰安婦問題をやりたいようで、韓国外相はこんなことをまだ言っています。
「鄭氏は、大統領府の国家安保室長を務めた際、数回にわたって非公開で訪日し、日本政府の高官と元慰安婦問題について協議したと明かしたうえで、「毎回、現実的な案を持っていったが、日本が自分の主張だけを一貫して行う態度に驚いた。協議を壊そうとしていた」と語った。
一方、慰安婦合意について鄭氏は「合意を破棄したと言ったことは一度もない。韓国政府は合意の枠を維持しながら現実的な解決方法を追い求めていく」と主張。「解決においては被害者中心主義、被害者の立場を尊重しなければならないというのが韓国政府の基本的な精神だ」と強調した」(朝日21年4月21日)
私のかすかな記憶では、慰安婦問題は日韓合意で決着して、10億円支払って安倍氏のお詫びの手紙までつけて、既に手渡しています。
このときに締結したのが日韓慰安婦合意で、その文言にはこの冷厳な文言が入っています。
「最終的、かつ不可逆的に解決した」
最終的に解決したことをどう再協議することができるんでしょう、ボク、わかんないや。
ひょとして韓国外相がいう「現実的解決法」って、日韓政府と企業がカネを出し合って財団を作ってどうのこうのというアレですか。
あんたって馬鹿ですか。
かつてのアジア女性基金の焼き直しのようなことをしても失敗するのが分かっていたから、直接日本政府が10億円を慰安婦ひとりひとりに配ったのですよ。
日韓両政府が、米国を仲介にしてそのやり方で合意したのですから、どこをどう叩いてもこれでオシマイ。
国家間交渉でいったん合意したことは条約と見なされますから不動です。
ゴールポストを動かすことはできない、それが「不可逆的」という文言の意味です。
関連記事 慰安婦問題の日韓合意について
« 安保は米国、経済は中国という二股をどこまで続けられるか | トップページ | 慰安婦問題はメビウスの環 »
これがまた覆されることも韓国ではあり得ると思われますが、とりあえず正しい判断が出たのかと。
韓国国内では不満だらけです、この判断にパッシングの嵐かも。
写真の李容洙は、昨年挺対協の元代表とゴタゴタした際に彼女は慰安婦でないと暴露されても元慰安婦を演じてるんですね。
証言もコロコロ変わるし、韓国のお家芸でしょうか。
こんな人を元慰安婦として扱う国内外のメディアも悪意に満ちてます。
投稿: 多摩っこ | 2021年4月22日 (木) 09時41分
あくまで「主権免除」に触れるから訴えが認められ無かっただけで、この胡散臭い活動そのものが否定された訳ではないので手放しでは喜べませんね。
これで内輪揉めでもして自滅してくれたらありがたいのですけど。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年4月22日 (木) 17時52分
今日の記事を読んでの、まず第一の感想は、よかったという一言です。まずは良かったです。今後どのような韓国になっていくのかという不安はやはりあることはあるのですがね。
あまりに非常識な韓国であってはなりませんね。ムンジェインさんが一番に悪いんでしょう。彼は異常な性格のように感じられます。これが韓国人の代表的人物だと言ってしまうのは、多くの韓国人に対して失礼かもしれません。
私は朝鮮人に対し、好感の思いがあります。その理由は、u-tubeで見た出征兵士を送る韓国の女性たちの姿でした。あの時は、朝鮮も日本であり、満州も台湾も日本でした。大日本帝国ですね。
私は今後日本がどのように進んでいけるのかということを時々考えるのですが、いまさら昔に帰るということも不可能だと諦めてはおります。しかし、日本人の戦前の方々は立派なものだと思いますよ。このあいだ門田氏のご講演をu-tubeで見ましたが、台湾の金門島を防衛した陸軍中将(お名前は失念)の生きざまなど、戦前戦後の道義あふれる行動はまさに武士道の精神だったですね。
現在の政治家が戦前の方々のように、大きなスケールで物事を考えるようになってもらいたいです。
投稿: ueyonabaru | 2021年4月22日 (木) 21時39分