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2021年5月27日 (木)

厳格リストで見る新型コロナ対応

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高橋洋一氏がツイートして、メディアが言葉尻だけを切り取って、まったくスルーしてしまったグラフがこれです。

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Oxford Stringency Index クリックすると大きくなります。

これは新型コロナ対応において、政府が民間に対して発動したstringency Indexと呼ばれるものです。
いまのところ訳語はなく、直訳すれば政府が民間にかけることができる政策の「厳格リスト」といったもので、17の項目ごとにスコアをつけていき、それを加算したものです。
日本は見てわかるようにグラフ中のボトムにあり、非常に緩い対策しかとっていないことがわかります。
表現については高橋氏も大いに反省しているようですが、「屁のようなもの」であることは疑いようがありません。

これはオックスフォード大学が作ったもので、151ヵ国を対象として、政府が取った政策措置の厳格さを17項目についてスコア化したものです。

・Oxford Stringency Indexの内訳
・8つの指標・・・学校閉鎖や移動制限などの封じ込めおよび閉鎖の政策に関する情報
・4つの指標・・・市民への所得支援や対外援助の提供などの経済政策に関する情報
・5つの指標・・・新型コロナの検査体制や医療への緊急投資などの保健システム政策に関する情報

・スコアの高い国・・・インド、サウジアラビア、南アフリカなど19ヵ国。平均97.1。
・日本の直近値・・・56.2

評価項目は、学校閉鎖や職場閉鎖、都市封鎖などの閉鎖政策、所得支援などの支援政策、検査体制や医療への財政支援などの医療支援です。
いうまでもなく、これを発動する主体は国家(政府)です。
日本は、ご承知のように「緊急事態宣言」という世界共通の用語を使っているので紛らわしいですが、宣言主体も執行するのも自治体、管理も自治体というように、国は自治体から要請があれば宣言を認めたり、財政的支援をすることが「できる」という後方支援に止まりました。

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新型コロナの緊急事態宣言、各国はどう動いているか

この世界の平均値の推移を見てみましょう。
もっとも厳しいフコアがでているのはグラフ左から2番目の2020年4月28日時点で主要国の多くは90~100に到達し、世界のスコアの平均値は82.1でした。
その後もそのまま高いスコアで推移し、グラフ右側の2021年5月に至っても60を切っていません。

日本がそれなりに「高い」スコアをもらっていられるのは、行動規制の厳しさ故ではなく、政府が予備費を10兆円積み上げたような手厚い所得支援政策などの支援政策があったためです。

では、なぜ日本はこのように感染拡大で、諸外国並の厳しい行動制限をとれなかったのでしょうか。
それは憲法に緊急事態において、国民や企業・団体に対しての外出規制や営業規制などの行動規制や、民間病院に新型コロナ専用病床を設置するように命じる項目がないからです。
念のためにいえば、憲法は「緊急事態法を作ってはならない」と禁じてでいるのではなく、文字通り欠落して「ない」のです。
戦争は「あってはならない」から軍隊は「持てない」という9条解釈と同じ流れで、緊急事態は「起てはならない」から緊急権限を国家に「与えてはならない」のであって、考えたり発言したり「してもならない」のです。

本来、憲法で国家緊急権の根拠となる原則を定め、基本法、個別法の三重構造とする多重構造で対応せねばならないのに対して、わが国はこの大元になる憲法に緊急事態が想定されていないために、その都度国会を招集して個別に法律を作って特別措置法で対処せねばなりませんでした。

今回の場合、新型インフルエンザ等対策特別措置法を作って対応しましたが、憲法第22条の「営業の自由」「移動の自由」の侵害にあたるという野党とメディアに配慮して、議論そのものを政府があらかじめ回避してしまいました。
政府が緊急事態宣言で私権制限ができるという解釈を打ち出せば、憲法審査会にすら出席しない立憲・共産が、緊急事態条項の準備だと解釈することが確実だったからです。

第二十二条何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

もちろん憲法にも「公共の福祉に反しない限り」という限定が設けてあるので、議論の余地はあったはずですが、そのような解釈をすればしたで、憲法学者たちは感染拡大は公共の福祉ではない、といいだすに決まっていますので、緊急時にはこんな神学論争をする時間の余裕はないと判断したのでしょう。
それにしても、こんな感染拡大を前にして議論すらできないとは、不毛なことよ。
高橋氏発言の切りとられ方をみると、朝日や毎日や立憲がなにを言いそうかはおおかた想像がつきますからね。

では、諸外国の緊急事態条項をおさえておきましょう。
※国立国会図書館 調査と情報 『COVID-19 と緊急事態宣言・行動規制措置』
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11499114_po_1100.pdf?contentNo=1

●各国の緊急事態条項
 ①憲法の緊急事態に関する規定によると考えられる国・・・イタリア、スイス、スペイン
②憲法に緊急事態に関する規定はあるが、今回の対応については法律の規定によると考えられる国・・・中国、フランス、ドイツ、韓国、インド
③憲法によらず国が緊急事態において強い権限を持つ国・・・米国、英国
④憲法に緊急事態条項がなく、個別の法律で対応した国・・・日本

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イタリアいち早く緊急事態宣言、でも拡大防止できず 米は自治体に強制

①の憲法に緊急事態条項がある例として、イタリアをとってみます。

「イタリア政府は、2020 年1 月31 日、国内で初めて感染者(中国人旅行者2 名)が確認されたことを受け、閣議決定で6 か月間の緊急事態を宣言した。この宣言は、災害防護法典(2018 年立法命令第1号)3第7 条及び第24 条の規定に基づくものである。
これらの規定によれば、緊急事態は、関係する州等の要請を受け、又は同意を得て、首相の求めに応じた閣議により宣言される。緊急事態の期間は12 か月以内とされ、12 か月以内の範囲で延長可能である(同法典第24 条第3 項)。
2020 年2 月23 日、政府は北イタリアでの感染者の急増を受け、感染区域において、域外への移動禁止、商業活動の停止等の措置を可能にする緊急法律命令を制定した5(国立国会図書館前掲)

イタリア政府は「災害防護法典」に則って6カ月間(延長可能)の緊急事態を宣言し、全国での移動禁止(移動するに際しては許可証を発行)、商業活動は薬局、食料品店を除いて全面停止、学校は全面休校、などの緊急法律命令を出しました。

②の憲法に緊急事態条項があるが、別の法律を運用した例としてフランスを見ます。

「フランス政府は、「COVID-19 ウイルスの拡散対策のために移動を規制する2020 年3 月16 日のデクレ」35(政令に相当)により、外出を原則として禁止する措置を講じた(生活必需品の購入、自宅周辺での短時間の運動等の例外を除く。)。この措置は、公衆衛生法典36L.第3131-1 条の規定に基づくものである。
同条の規定によれば、衛生担当相等は、緊急措置を必要とする深刻な衛生上の、特に感染症の流行の脅威が生じた場合には、公衆衛生のための措置を講じることができる。
その後、「COVID-19 の流行に対処するための緊急事態に関する2020 年3 月23 日の法律第2020-290 号」37(以下「2020 年3 月23 日の法律」という。)が制定されて公衆衛生法典が改正され、衛生緊急事態の章(L.第3131-12 条からL.第3131-20 条まで)の追加等が行われた」(国立国会図書館前掲)

フランスが取った措置はイタリア並の厳しい移動制限でしたが、法的根拠は公衆衛生法典で、これは感染拡大につれて衛生緊急事態条項を追加して運用されました。
これができたのは憲法の緊急事態条項がバックにあったからです。

③の憲法にないケースとして、米国を取り上げます。

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トランプ米大統領、国家非常事態宣言 新型ウイルス対策に500億ドル支出

「アメリカ政府は、2020 年3 月13 日、大統領は国家緊急事態を宣言し58、国家緊急事態におけるメディケア(高齢者等向け公的医療保険)等の要件緩和について定める2002 年社会保障法第1135 条(42 U.S.C.§1320b-5)の規定の適用を指示した。これは、1976 年国家緊急事態法第201 条及び第301 条(50U.S.C. §1621, §1631)59の規定に基づくものである。
同法のこれらの規定によれば、大統領は、緊急時に特別の権限の行使を大統領に認める法律に従って国家緊急事態を宣言することができ、その際に適用する法律の規定を指定する(今回は2002 年社会保障法第1135 条を指定)。
大統領は同日、1988 年ロバート・スタフォード災害救助及び緊急事態支援法第501 条第b 項(42 U.S.C. §5191)60に規定する緊急事態が存在するとの判断も示した。同項の規定によれば、大統領は、連邦が責任を負うべき緊急事態が存在すると判断する場合には、連邦の機関に州・地方政府(州、郡、市等の政府)への支援を指示することができる。
アメリカ合衆国憲法では、憲法によって連邦に委任されず、又は州に対して禁止されていない権限は、各州又は人民に留保されている(修正第10 条)。連邦による支援が行われているものの、今回の事態への対応は、一次的には州・地方政府において行われている」(国立国会図書館前掲)

米国では、大統領は国家緊急事態を宣言できますが、基本的な状況判断とその私権の制限は州政府に任されています。
これは大統領選挙でさんざん私たち日本人を驚かせた、大統領と州の権限の関係の複雑さによっています。
大統領は、一見強い独裁的権限を持つようにみえますが、実は大統領令でしかそれを行使できません。
議会の判断が優先し、大統領ができるのは拒否権だけです。
ですから、今回の感染拡大に対しても、ワクチンを緊急に作るなどの措置をとることはできても、各州の移動制限・営業規制は州政府が判断しました。
その結果、民主党系知事と共和党系知事で激しく対応に差が出ました。

④の憲法に緊急事態条項がなく、個別法で対応した国が日本です。

「2020 年4 月7 日、内閣総理大臣は、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態が発生した旨を宣言した。この宣言は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24 年法律第31 号)第32 条第1 項の規定に基づくものである。同項の規定によれば、新型インフルエンザ等対策本部長(内閣総理大臣)は、新型インフルエンザ等緊急事態が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態宣言をし、国会に報告するものとされている。
なお、同法は2020年3 月に改正されており(同月13 日公布、翌日施行)、これにより新型コロナウイルス感染症を暫定的に(2021 年1 月31 日まで)新型インフルエンザ等とみなし、同法に基づく措置を実施することが可能となっている。
都道府県知事は、同法第45 条の規定に基づき、新型インフルエンザ等緊急事態において、外出自粛等の要請、施設の使用停止等の要請・指示等を行うことができる。
今回、各知事が同条等の規定に基づき外出自粛の要請等を行い、例えば東京都知事は、2020 年4 月10 日、外出自粛、施設の使用停止等を要請した。なお、同法の罰則(第76 条から第78 条まで)は、医薬品等の特定物資の隠匿等及び立入検査の拒否等に対してのみ設けられている(それぞれ、6 月以下の懲役又は30 万円以下の罰金、30 万円以下の罰金)」(国立国会図書館前掲)

日本が一定の罰則を設けているのは医薬品の隠匿、立ち入り調査拒否などに対してのみで、私たちがいやっというほど経験したように緊急事態宣言とは名ばかりで、国民を鬱病にする効果しかありませんでした。

長くなりましたので、次回に続けます。

 

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コメント

最近は減りましたが、例えば交通事故が増加すると県警が「交通事故緊急事態宣言」なんてのを昔から気軽に出してましたから、言葉自体が緩いイメージで浸透しているのかもしれません。
だって何の強制力も無いわけだし。そりゃ欧米から見たら屁のようなもんでしょ。
当事者(被害者)には深刻ですけど。

高橋洋一が参与を辞めた一昨日、同じく外交参与の宮家邦彦がフジの夕方ニュースに出て答えてましたが、政府は省庁からの情報で指示を出すのが原則で、参与はあくまでもセカンドオピニオン的なアドバイザーだと。
高橋洋一はツイッターでの「笑笑」と「屁のようなもの」だけマスコミに抜き出されて炎上したわけですが、一言で言ってしまえば、すぐに揚げ足取られるからツイートは気をつけないと。というだけ。
揚げ足取りする連中は、ツイッターに限らずここのコメントに時々現れるように内容なんか禄に理解しないでひたすら批判的な物言いでマウント取りたいだけですから。。

これも一昨日でしたが、アメリカCDCが日本への渡航注意勧告をレベル4に上げたのを取り上げたTBSなんか、お約束のようにコメンテーターが「もう日本は最大レベルの危険度だと見られているんですね!それでもオリンピックを?」と。。
いや、米国CDC勧告のレベル4の国·地域は151もあって、そうでない方が珍しいというだけ。レベル3の中国より悪い扱いですけど、インド株が拡がっているからだという理由だそうで。。一応はそこも解説してたけど、なんともテンプレな印象操作報道(報道なのか?ただのアンチのキャンペーンでは?)をやっておりましたな。
インド株にも現在のワクチンは効果的なようなので、とにかく接種のスピードを上げるしかありませんね。

あと気になったのは、昨日のアエラが報じたイベルメクチンの扱い。症状緩和や死を防ぐ有効性があるのなら、なぜさっさと認可しないのやら。。

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