「チーム日英」結成される
日英同盟(Japan-Anglo Alliance ) が事実上締結されました。
もちろん、正式にはなんらかの条約を締結し、議会の承認を経てからのことですが、枠組みは出来上がっていると見るべきです。
ウェルカンバック、ブリテン!
かつて日本は英国と同盟を結ぶことで国際社会に参加し、そしてこれに反対した米国によって戦争への道を歩むことになりました。
日本は日英同盟と共に勃興し、その終了とともに地獄に落ちたのです。
岡崎久彦氏が草葉の陰でうれし泣きしていることでしょう。
「ロンドン 3日 ロイター] - 英国を訪問中の茂木敏充外相は3日、ラーブ英外相と戦略対話を行い、貿易や安全保障面での連携強化で一致した。
ラーブ外相は、アジア海域への英空母派遣に触れ、アジア地域へのコミットメントを強調。また、英国の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への参加に対する日本の支持に謝意を示した。
英外務省の声明によると、両外相はさらに「経済安全保障、先端技術、医療、科学など、共通の利益かつ専門知識を共有できる分野での連携強化」についても意見交換した」(5月4日ロイター)
なんと2時間半に渡る長時間会談だったようで、儀礼的なものではなくそうとうに気合の入った意見交換があったようです。
日英外相が会談 貿易交渉や香港情勢で連携確認 - 産経
外務省から要点について、プレスリリースがでています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/gb/page4_005313.html
●日英戦略対話 外務省プレスリリース
・ラーブ外相から、英空母打撃群の日本寄港を含むインド太平洋地域派遣について説明があり、茂木大臣から、英空母打撃群のインド太平洋地域への展開は英国の同地域へのコミットメントを象徴するものであり、同空母打撃群の日本寄港を歓迎する旨述べました。・両大臣は、防衛装備・技術協力やサイバーセキュリティを含む経済安全保障についても意見交換を行いました。
・ラーブ外相から英国のTPP11加入申請について言及したのに対し、茂木大臣から改めて歓迎する旨述べました。
・両大臣は、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄の実現に向け、安保理決議の完全な履行が不可欠であることを改めて確認しました。また、茂木大臣から、拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を求め、ラーブ外相から支持を得ました。
・両大臣は、新型コロナ対応におけるWHOを含む多国間主義の重要性及びWHOによる検証・改革の重要性を改めて確認しました。茂木大臣から、日本が6月にGaviと共催予定の「COVAXワクチン・サミット」に向けて英国の協力を求め、ラーブ外相から支持を得ました。
スゴイですね。TPP加盟からコロナ、サイバーセキュリティ、北の核と拉致から中国の人権と軍事膨張、そして目玉はやはりQE空母打撃群の日本寄港です。
ほぼすべての日英の案件が話合われた濃いものとなりました。
李克強あいてにケチをつけた茂木さんですが、英語はネイティブ並ですし、あのクールなスタイルは英国と相性がよかったことでしょう。
首脳級の会談は、会談そのものは事前に9割9分事務方が詰めて文書化しているものです。
ですから、ほんとうに重要な話は、むしろふたりしか聞いていないコーヒーブレークの立話の時にさりげなく行われます。
なんせ通訳も入れませんし、ノンレコードですから、そうとうに危ないことも言い合う場合があるそうです。
ワイン片手にこちらのほんとうに言いたいことをジョークまじりでしゃべることができたら、外相合格。
ヨーロッパの首脳レベルは、携帯で意見交換しているのですから、そのくらいできないと日本は国際社会からおいてきぼりになります。
安倍さんの強みの秘密はここにもあったのです。
それはさておき、この時期、ラーブ外相はG7外相サミットのホスト国として目の回るような忙しさだったはずですから、ここで2時間半も時間を割くということの重要さを、私たち日本人も感じるべきです。
つまり、英国にとっての主賓はわが国だったのです。
G7、5月3日から英で外相会議 2年ぶり対面形式: 日本経済新聞
更にこの日英会談と同時に、G7外相サミットも開かれています。
G7サミットの前哨戦となるG7外相会談は首脳によるG7サミットの下準備で、これで決まったことがそのまま使われることになります。
今回の外相サミットのテーマは、一にかかって中国ロシアの脅威に自由主義陣営が厳しく対処すことでしたが、こちらに関してはまだまだ煮詰まってはいません。
たしかに中国に関しては名指しで人権侵害問題に強く言及し、「われわれは恣意的かつ威圧的な経済政策や慣行に直面する中で、世界経済の体制強化に向け共同で取り組んでいく」と宣言し、台湾が世界保健機関(WHO)の年次総会や世界保健総会に参加することに支持を表明したことは一歩前進です。
また、中国のなりふりかまわぬ台湾海峡の行動を、「緊張激化につながり得る一方的な行動」としました。
これは日米共同声明とほぼ同じ文言であり、たぶん日米英が入れることを要求し、欧州がそれを共有したのでしょう。
外相サミットの焦点は、あくまでも台湾の扱いに尽きたはずです。
いままで中国をワンチャイナとする国際合意がガッチリ作られて、そのうえチャイナマネー欲しさが加わって、台湾は国際政治の孤児でしたから、WHO総会に招聘するというのはいいのですが、ではそれで肝心の台湾防衛にG7が合意できたかといえば微妙です。
これは外相サミットが、台湾海峡の緊張を深めている中国を批判しつつも、「両岸の緊張」という表現に止めていることでわかります。
「両岸」とは、日米共同宣言にも使われた表現でしたが、これは大陸と台湾をひとつとして見るというニュアンスがあります。
つまり、これは中国の主張する「一つの中国」(ワンチャイナ)を前提とした表現なのです。
台湾を正しく認知し、相応の外交関係を復活させない限り、台湾防衛は絵に描いた餅になりかねません。
つまり「地図にない国」である台湾を守るということになってしまいます。
このワンチャイナに対してわが国も腰が大いに引けています。
わが国は台湾有事は日本有事であるとして、「重要影響事態」に指定するとしていますが、まだ個別的自衛権の枠内で対処しようとしています。
これは台湾と正当な外交関係が存在しないためで、本来は台湾と相互防衛協定を結んで共に対処すべきなのです。
それが台湾-与那国-宮古-沖縄まで含んだ大きな地域防衛に必要なはずです。
ところが、それが今の日本にはできません。
米国からして、台湾関係法があるので有事には支援することは間違いありませんが、ストレートだったトランプに対してバイデンはあいかわらず「戦略的曖昧さは大事だ」などと言っています。
「米ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官は4日、米国が台湾防衛の意思を明確にすれば「重大な不都合」が生じると述べ、従来の「戦略的曖昧さ」を維持すべきだと主張した。
キャンベル氏はオンラインイベントで、米中双方には台湾問題で現状を維持することがそれぞれの利益にかなっているという認識があると指摘。「(従来の方針を転換して)戦略的鮮明性を打ち出せば、幾つかの重大な不都合が生じる」と語った」(ロイター5月5日)
これも同じことで、台湾と国交を結べば、中国が「神聖不可侵な領土を犯された」として台湾侵攻に走るのではないか、ということを恐れています。
だから、現状維持でなぁなぁにしておこうという「大人の知恵」で対処し続けてきたのですが、これが今の中国に通用するかです。
たぶん、もうむりです。もう中国は一線を超えてしまったのです。
トランプは次の一手として台湾との国交回復をし、同時に台湾への米軍配置も検討したはずでした。
それをバイデンは、また元のオバマ時代に戻してしまったのです。
そしてさらにEUに至っては、もっと利害関係が薄い分、距離を開けているというのが実際です。
「【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)のオンライン外相会合は19日、EU共通のインド太平洋戦略を策定する方針で合意した。総括文書で、EUの利益を守るため、この地域の「戦略を定め、存在感や行動を強化する」狙いを表明した。
総括文書は、中国の海外進出を念頭に、「法の支配」を守る重要性を強調。インド太平洋での安全保障や防衛について、地域のパートナー国との協力を進める意欲を示し、サイバー攻撃やテロ、組織犯罪などの課題を挙げた。
また、英仏に続いてドイツ、オランダが今夏、インド太平洋にフリゲート艦派遣を計画していることを踏まえ、EU加盟国が「インド太平洋に艦船を派遣することの重要性」を確認。「航行の自由」の原則を維持し、海洋安保への監視を行うことの意義を明記した。人権問題や地球温暖化対策、貿易をめぐる地域協力の推進も打ち出した。
総括文書は、中国についての直接の言及を最小限にとどめ、「多国間協調」を打ち出す内容になった。EUではハンガリーやギリシャなどが中国との経済協力を重視しており、中国を刺激することを嫌ったためとみられる。EU戦略の具体策については、ボレル外交安全保障上級代表が9月、文書で提案する見通し」(産経4月19日)
彼らはEU市場だけが魅力でついてきているだけで、中国を刺激するのだけは避けたいというのが本音です。
だから、EUあるいはNATOとしてはなかなかまとまらず、仏独の単独参加になってしまったようです。
EUでは昨年までに、フランスやドイツ、オランダがインド太平洋戦略を発表し、EU共通の戦略については、来年前半にEU議長国となるフランスが策定に強い意欲を示しているのでまだわかりませんが、いずれにしても親中派諸国との綱引きになることでしょう。
まずは日本がシャッキリすること。それが第一です。
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ブレグジットやらコロナ禍で大変なこと続きのブリテンがここまで接近してきたのね。むしろブレグジットがあったからこそだが···ボリスは嫌いだけど。
まあ、おいでませ~ブリタニア!80数年ぶりの同盟復活ですかな。
ちなみに貧乏明治政府が対ロシアで日英同盟を組んだ時代、日本もマトモに機能する諜報機関がありましたし。。
日露戦争の100年国債なんか、後に敵国となってガチンコで戦いながらも踏み倒さずに律儀に返済を続けていて···完済したのはつい15年ほど前です。。
あれはアレ、これはコレって話をちゃんと守ったということですね。
投稿: 山形 | 2021年5月 7日 (金) 07時31分
2021.5.6 相模吾です。
山形さん、日露戦争時の対外債務は、太平洋戦争終戦時には返済済みのはずです。 終戦後大蔵省が、対外債務を整理したときにはすでにありませんでした。
そのうえで他の残債の支払い延期、借り換え等を行つた結果返済が80年代後半になってしまった、と理解していますが。
昔から常に大陸からの圧力を受けてきた島国同士、ともに立憲民主主義体制、ノブレス・オブリージュ(武士道、騎士道)の尊重、ともに資源を世界に求める国等々、同じ価値観を共有できる要素が英国には多い。現実が、なかなか理想通りにいっていないことや、皇室・王室でごたごたが発生したつまらないことまでよく似ている。 外見的には全く異なる人種なのに、なんとなく親近感があるし、米国より信頼できるし、同盟に格上げしたいですね。
投稿: 相模吾 | 2021年5月 7日 (金) 12時16分
英国はアジアに舵を切る選択をしたわけですが、そのパートナーとして日本を選んだ事は我々日本人としても誇らしいですね。
最近の英国には世界史を作ってきたアングロサクソンの躍動感を感じます。
マスコミの論調ではEUから外れた代替えのように報道しますが、それは皮肉屋の考え方です。
EUこそ泥船であって、アジアの伸びしろに注目した英国の判断が正解でしょう。
そのEUも中国との投資協定の批准を凍結しました。しかし、EUにとっては、分断回避が眼目にならざるを得ません。産業革命の時のように、フランスは横目で英国をうらやむ時代がやってくるでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年5月 7日 (金) 14時26分