チャイナワクチン、ついたあだ名が「水ワクチン」
中国の一帯一路とワクチン外交が表裏一体なのはご存じのとおりです。
そりゃ涙ぐましいばかり。
王毅国務委員兼外交部長(外相)は今年1月に、こう述べています。
「 王毅外交部長、「厳冬の世界経済に暖流を注ぐ『一帯一路』協力」
新型コロナ感染症は世界経済に深刻な打撃を与え、「一帯一路」共同建設にもいくつかの困難をもたらした。だが「一帯一路」協力はその歩みを止めるどころか、反対に逆風の中を前進し、新たな進展も得て、力強い強靭性を示した。
2020年に「一帯一路」協力パートナーは新型コロナ感染症の中で支持し合い、団結して新型コロナと闘い、共に発展する「運命の紐帯」を形成した。国際定期貨物列車「中欧班列」は1万本を突破し、輸送量は1~10月ですでに2019年の総量を上回り、各国の新型コロナとの闘いに助力する「鋼鉄の輸送キャラバン」となった」(人民網日本語版 2021年01月04日)
う~ん、一帯一路は「運命の紐帯」、「鋼鉄の輸送キャラバン」ですか、共産党ならではのお言葉が怒濤のように。気合はいってるなぁ。
そしてつい先日6月24日の一帯一路オンライン会議では、習もこう言っています。
「習氏は一帯一路を通じた新型コロナウイルス対応で、国際社会に「自信と力」を与えたと表明。中国外務省によると、出席した王毅国務委員兼外相は中国がワクチンや原料4億回分以上を供与した約90カ国のうち「大半が一帯一路の協力パートナーだ」と指摘した。会合に参加した29カ国の外相らはワクチン協力の推進で一致した」(共同6月24日)
武漢研究所から漏洩したんじゃないかと言われている時期に「国際社会に自信と力を与えた」って言われてもねぇ。
ちなみにこのオンライン会議に出席したのは、中国の公式メディアによると、会議にはアフガン、チリ、コロンビア、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、タイ、アラブ首長国連邦、ベトナムなど29カ国の副首相、外相、国連の国際機関代表でした。
人民網
同じ会議で議長をした王毅は、コロナ流行について一帯一路の一時停止キーは押されていない、むしろ逆風に向かって前進し続けている、いけいけドンドンだと言っています。
ワクチンだけじゃないぞ、中国は一帯一路の関係各国と防疫経験交流会を行い、マスクや防護服、検査試薬、ウイルス検査実験室建設などの寄付や輸出などをしているんだ。
およそ90か国以上に4億回分のワクチンと原液を、多くの一帯一路沿線国パートナーに送ってんだ、すげぇだろ、世界は中国に感謝しているはず、ふんふん(鼻息)、と胸を張ったそうです。
いままではカードローンを組ましてカタを取り上げてきたが、今年の流行りはワクチンだぜ、ワクチン欲しけりゃ言うこと聞きな、ということのようです。
「台湾中正大学戦略国際事務研究所の宋学文教授はラジオ・フリーアジアの取材に対し、中国は各国がコロナパンデミックの影響で経済が衰退し、政治安定に危機的状況まで出ているのを見て、チャンスに乗じようと考えている、と指摘する。
「中国はワクチンを武器としている。以前はインフラ建設の融資と経済貿易物資協力プロジェクトを通じて、各国の経済発展に協力してきた。しかしその目的は単純に経済発展にとどまらず、政治戦略を多く内包している。今は、ワクチンを利用して、同様の作戦にでている」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.368 2021年6月25日)
中ロのワクチン外交を苦々しく感じているあなたへ:日経バイオテクONLIN
ただし、惜しむらくはこのかんじんなワクチンが効かないのですよ、 お立ち会い。
だって王毅がいくらファイアウォールだなんてリキもうと、マスクや防護服をばらまこうと、かんじんなワクチンがまったくスカ。
たとえば、南米チリはワクチン接種のスピードが速い国の一つでした。
チリの人口1900万人のうち63.3%が1回以上がチャイナワクチンのシノバックの接種を受け、接種を全て終えた割合も50.0%に達しています。
国の人口の63%ですから、まさにチャイナワクチンの治験場そのものだったわけです。
しかしチリの感染者数は減少していません。
最近も1日5000人以上の感染が確認されており、今月8日には7294人もの感染者が出ています。
こんな例は世界中いくらでもあります。
朝鮮日報(6月26日)によれば、こんな状況だとか。
NYT「中国製ワクチンには効果が無い」と指摘 接種国で感染状況が悪化
「チリだけではない。モンゴルでも全人口の58.7%が1回以上、さらに52.1%が接種を全て終えたが、人口335万人の国で1日2000人以上の感染者が出ている。人口100万人当たりの感染者数を計算すると世界第2位となる数だ。モンゴルでも中国製ワクチンを使用している。
米国のニューヨーク・タイムズ紙は「中国製ワクチンに依存してきたモンゴル、チリ、セイシェル、バーレーンなど90以上の国ではワクチン接種率が最高で70%に達しているが、今もコロナ感染者数は急増している」と報じた。接種率が高い英国でも感染者は多いが、接種を受けていない若い人が中心という点でこれらの国々とは事情が異なる。
つい先日にはインドネシアでシノバックのワクチン接種を受けた医療関係者350人以上が一気に感染したことも確認された」(朝鮮日報6月26日)
あるいはセーシェルは世界でもっとも人口当たりの接種率が高い国で、シノファームを使っていましたが、いまの惨状はこうです。
「インド洋の島国セーシェルは人口当たりの新型コロナウイルスワクチン接種率が世界のどの国よりも高い。だが感染再燃の抑制がままならず、住民が接種したワクチンの大半を占める中国製ワクチンの効果に対する疑問が強まっている。
セーシェルで唯一のコロナ治療センターにはここ数日、治療を求める患者が殺到し、医療がひっ迫している。115の島で構成されるセーシェルの保健当局によると、感染拡大はこれまでで最悪の状況だ。症状が見られる感染者数は1日当たり300人超に急増し、累計8172人に達した。政府はロックダウン(都市封鎖)の再導入を強いられている。
感染者数は少ないとはいえ、地理的に孤立した人口わずか10万人の小国にとっては桁外れに大きな問題となる。日々の感染率はインドを上回る」(ウォールストリートジャーナル5月11日)
セーシェルは接種率が6割、チリが7割接種してまったく感染拡大が止まらないのですから、とうとうチャイナワクチンについたあだ名が「水ワクチン」。
水を打つのと一緒だってことです。
中国製の新型コロナウイルスワクチン:低有効性とデータの欠落に加えて
これを隠したいのか、チャイナワクチンはいまだに第3次治験データを出していません。
「ロイター通信の報道によれば、世界保健機関は5月中旬からコロナバックワクチンの評価を開始すると考えられているが、この1週間前に同機関当局が発表したところでは、同機関が科興控股生物技術に要求した情報はまだ未提出の状態である。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、中国医薬集団も第3相臨床試験のデータを提供しておらず、独立系機関による評価が実施されていないことから同社製ワクチンの新型コロナウイルス変異株に対する有効性が不明のままである。
2021年5月に国際的な総合科学雑誌「ネイチャー」誌に掲載された記事には、「2020年初頭から研究者等が新型コロナウイルスワクチンの開発を始めていた中国は、早期に開発に着手した国の1つだが未だに完全な試験結果が発表されていない」と記されている」
(FORUM5月23日)
習の世界で最初に大量のワクチンを製造せよ、の至上命令に従って、「戦時製造」したためにどうやらやるべき治験を大幅に省いたようです。
だから試験記録を出したくても出せないのでしょう。
中国の下請け機関であるWHOですら有効性は79%。これで承認しちゃうかね。
しかしどうやらほんとうは有効性は51%のようです。
有効率がわずか5割だと、個々人の持つ自然抵抗力でCOVID-19に罹らなかったのかよく判らなくなります。
「2021年5月に世界保健機関(WHO)が緊急使用を承認した中国医薬集団のワクチンの有効性は成人で79%と推定されている。同ワクチンは世界保健機関が緊急使用を承認した初の中国製ワクチンであり、現在、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製のコロナバック(CoronaVac)ワクチンの承認も検討されている。臨床試験で示されたコロナバックの有効率は一貫しておらず、1つの研究では有効率がわずか51%という結果となっている」(FORUM前掲)
しかし習同志、グッドニュースもございますゾ。なんとチャイナワクチンには副反応がないのです。
「ただ幸いなことに中国製ワクチンの接種を受けたことで大きな副作用(副反応)が出たというニュースは今のところない。そのため一部のメディアは「中国製ワクチンは副作用もないし効果もない」と評価している」(朝鮮日報前掲)
そりゃそうです。なんせただの水なんだから(爆)。
朝鮮日報が引用したニューヨークタイムスの元記事はこちらです。
"They Relied on Chinese Vaccines. Now They’re Battling Outbreaks".
https://www.nytimes.com/2021/06/22/business/economy/china-vaccines-covid-outbreak.html
抄訳しておきます。
「90カ国以上の国が中国ワクチンを使用したが、これらの国々は未だに感染症と戦っている。
データ追跡プロジェクトOur World in Dataによれば、これらの国のうちセーシェル、チリ、バーレーン、モンゴルでは、人口の50〜68%が中国ワクチンを接種しているにかかわらず、COVID-19の感染が最も深刻な国のトップ10に入っている。
米国ワクチンを接種したイスラエルの1日の新規感染数は現在100万人あたり4.95人にとどまっていて感染拡大は阻止されているが、中国ワクチンを接種したセーシェルでは、100万人あたり716人以上となって約140倍である。
香港大学のウイルス学者であるジン・ドンヤン氏は、「ワクチンが十分に優れたものであれば、このようなパターンは見られないはずだ」と述べた。
また、オーストラリアのフリンダーズ大学医学・公衆衛生学部のニコライ・ペトロフスキー教授は、すべての証拠が揃っている以上、シノファーム社のワクチンが感染を抑制する効果はほとんどないと述べている。
中国ワクチンを擁護する声もある。
モンゴル保健省の緊急時科学諮問グループの主任研究員であるバトバヤル氏は、支那ワクチンは正しい選択だったと述べ、その理由の一つとして死亡率を低く抑えることができたことを挙げている。最近感染が拡大したのは、多くの人がワクチン接種で気が緩んだのと、国の経済再開が早すぎたためとしている。
このモンゴル保健省の意見について、ペトロフスキー教授は、中国ワクチンを接種した人に抗体が上がっておらず無症状の場合、無自覚にキャリアになってしまい、他の人にウイルスを拡散してしまうからだと述べている」
というわけで、鳴り物入りで真っ先に世界にバラ撒いたチャイナワクチン、一帯一路を強化するどころか、中国への怨嗟を増やし、一帯一路がガタつく結果を招いたようです。
しかも頭が痛いことに、中国は自国民に10億回接種したと言っていますから、無条件に受け入れた場合、ぺドロフスキー教授が指摘するように無意識の感染キャリアを入れることにつながりかねません。
なおイタリア新首相のドラギ首相も、中国製ワクチンの有効性に疑問を呈したそうです。
これでイタリアの一帯一路からの脱落は決定的となりました。
いずれにしても、チャイナ・ワクチンを接種した国は、ファイザーなどのワクチンを重ね打ちしたほうがよさそうです。
最近のコメント