董経緯亡命はバイデン政権の対中強硬路線へのきっかけか
董経緯亡命の続報です。
あいかわらず真相は闇の中なのですが、この間精力的に武漢研究所起源説を追ってきたニューズウィークが記事に組んでいます。
「<中国国家安全部の副部長の亡命が本当なら、アメリカに亡命した最高位の中国人になる。それも新型コロナウイルスが人為的に作られた証拠を携えているという>
中国共産党の最高幹部の一人がアメリカに亡命したという未確認情報が立て続けに報じられ、関心を集めている。しかもこの人物は、いわゆる新型コロナウイルス人工説を裏付ける、中国にとって不利な機密情報を持ち出したというのだ。
アメリカの保守系ニュース解説サイト「レッドスター」と、諜報業界のニュースレター「スパイトーク」は、アメリカに亡命した高官の正体として、中国国家安全部副部長という要職にある董経緯の名を挙げた。
中国政府は董(57)に関する噂についてまだ正式にコメントしていないが、米政府筋は本誌に、この話は「絶対に真実ではない」と語った。一方、中国のインターネット・コミュニティのなかには、董の居所を疑う声もある」(ニューズウィーク6月23日)
内容的にはこのブログでも既報のものばかりですが、米国政府が「絶対真実ではない」というのが、中国政府にかかるのか、董経緯の亡命が真実ではないといっているのかよくわかりません。たぶん後者でしょう。
私は亡命が事実だという仮説に立って話を進めていきます。
あくまでも仮説ですのでお含みおき下さい。
さて中国側の反応が出始めています。
これがなかなか傑作なのです。
報じているのは米国の自由亜州 という中国語系SNSです。
「中国メディアは6月18日、国家安全保障担当副大臣の董経緯(ドン・ジンウェイ)が同日朝、反スパイシンポジウムを主催し、最近海外に亡命したとの噂を打ち破ったと報じた。 一部の米国の専門家は、100年の党大会の前夜に、すべての安定を維持するために、中国共産党が噂を「興味深い」で方法で解決するためにはまだ不十分だと考えている。 中国当局の亡命は、常に焦点となり得る。
国家安全保障省は、スパイと「内部犯」と「裏金主」の両方を逮捕する必要があると指摘した。 中央政治法委員会のWeChatパブリック番号「長安剣」は、上記のニュースを公表するために率先して、特に注目を集めたシンポジウムは、ドン・ジンウェイが議長を務めたと述べた」
(2021年6月21日 自由亜州 原文中国語『中共国安高层现身破叛逃传闻 美专家质疑』)
https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/junshiwaijiao/rc-06182021095909.html
この会議の中で董経緯はこう言ったことになっています。
「董経緯が議長となった会議の内容を詳しくみてみると、目下国外のスパイ情報機関と各種の敵対勢力の党内浸透と機密窃取活動が明らかにエスカレートしている、という。国家安全部機関は、さらに、反スパイ「人民戦争」と戦うために、社会全体のパワーをよりよく組織的に動員すべきである、と呼び掛けた」(自由亜州前掲)
言ったとされることは平凡で、いかにも当局者がいいそうなことにすぎませんが、問題は中国が「長安剣」というツイッターに、中央政法委員会系オフィシャルアカウントを使って、今話題になっている董経緯の名前を出して反スパイ座談会の司会をさせたという意味です。
この亡命説が根も葉もなければ、沈黙すればよいのです。
ただの官僚ではなく、習の懐刀で、いつもは表に顔を出さないスパイの親玉なんですからね。
つまり共産党中央は、7月1日に迫る建党100周年記念大会前に、中国共産党のすべてが安定している、董のような高官が亡命することなどありえないと言いたいようです。
ほー、面白い。これだけムキになって否定されるとひねくれ者の私など、そんなに隠したいことなら真実なのか、と思ってしまいます。
なぜそのようにムキになるのでしょうか、逆にその真意を知りたいくらいです。
楊潔篪-ブリンケン会談 米中、人権・経済巡り激突 外交トップ、初の直接会談|【西日本新聞
楊潔篪が米中外交責任者直接対話において、ブリンケンに董経緯の返還を要求したというのは眉唾ですが(共産国家が高官の亡命を認めることなど絶対にあり得ませんから)、むしろ返還うんぬんよりもこの直接対話があったのが3月だという時期に注目してください。
以後、ブリンケンは、いやバイデンは外交は皮肉にもあれほど批判してきたトランプ路線、すなわち対中強硬路線を突っ走り始めます。
思えば、EU・NATOを反中包囲網に組み込んだのもこの3月でした。
そう見てくると、対中宥和路線を取と思われていたバイデン政権が、この3月を境に大きく転換したのがお判りになると思います。
そしてさらに追い打ちをかけるように、ワシントンポストなどの米国大手メディアが武漢研究所起源説を公然と報道を開始したのもこ時期からです。
それを受けて、バイデンがパンデミックの起源の再調査を命じたのがこの5月です。
なにか決定的に米国を硬化させる情報が、この3月以前のどこかの時期にもたらされたと考えると分かりやすくなります。
この董経緯亡命が起きたとされる時期はいつだったのか、それが重要です。
先日紹介したRed Stateによれば、それは今年の2月中旬に発生しています。
つまりブリケン-楊会談の一カ月前なのです。
董経緯が持ち込んだ情報は、彼の高いランクから考えて極めて危険なものであると想像できます。
董の国安部責任者という立場は、超限戦の指揮官、ないしはそれを熟知する立場の人物でした。
とうぜんこのCOVID-19パンデミックの正体がなにかを物語るものが含まれていたとしても、いささかも不思議ではありません。
それは今まで武漢研究所起源説を、ただのトランプの陰謀論だと一蹴してきたバイデンを震え上がらせるに充分な破壊力を持っていたはずです。
董はそれ以前からなんらかの接触を米国インテリジェンス機関ともっていた可能性があります。
いきなり亡命するという線もなくはありませんが、以前から米国の二重スパイだったとしても不思議はないからです。
なにかしらのことで発覚し、尻に火がついて亡命したのがこの2月だったということです。
ですからトランプやポンペオは、董経緯情報を知り得ていたと思います。
それがポンペオがいう、武漢研究所起源説には3mの高さの証拠があると胸を張る言葉の裏づけのような気がします。
ただこの証拠を開示すれば、その時点で董経緯の正体が発覚し、その生命はなかったはずです。
米国は中国共産党中枢の、しかも諜報係トップという貴重極まる「資産」を失うことになります。
だから情報ソースの隠匿のために、決定的証拠を開示できなかったのです。
ブリンケン-楊潔篪会談の感想をFOXに求められて、ポンペオはなまぬるい、なぜ武漢研究所起源説をぶつけなかったのだと怒っていましたが、それは3月には既に董経緯が亡命して米国の安全な懐に確保されていたからです。
とまれこのような流れがあって、バイデンはトランプの外交路線に追随する決意を固めたのかもしれません。
そう考えると、今までわからなかったことのパーツが、ピタピタと平仄があって組み合わされてきます。
たぶんこの董経緯情報はファイブアイズはもとより、NATOにも提供されていると思われます。
だから、今まで対中宥和に傾きがちな独仏などのEUですら、対中強硬方針に転換することを納得せざるを得なかったのかもしれません。
日本に対しても、おそらくなんらかの情報提供はあったでしょうが、なんとも言えません。
日本は機密情報の保持に関して、安倍政権時代にそうとうに締めてきていますが、親中派が政権中枢に多く存在する国と目されていますから。
長くなりそうなので、次回に続けます。
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