りんご日報廃刊へ 日本のメディアよ、これがほんとうの言論弾圧だ
かつてローマはカルタゴを滅ぼしたとき、その地を占領するだけでは飽き足らず、塩を撒いて永遠の不毛の地にしようとしたそうです。
中国の作法もそのとおりでした。
中国は香港という土地から民主主義を根こそぎしただけではなく、この香港の地に永遠に芽生えないように塩を撒きました。
それが今、香港で繰り広げられている事態です。
蘋果(ひんか・りんご)日報が廃刊に追い込まれました。
それを伝える香港ポストです。
「『りんご日報』、23日にも休刊に
創刊26年の『りんご日報』は今週中に休刊するもようだ。6月22日付香港各紙によると、警察は香港版国家安全法の「外国または域外勢力と結託して国家の安全を脅かした罪」で壱伝媒集団(ネクストメディア)と『りんご日報』の幹部5人を逮捕し、関連会社3社の資産1800万ドルを凍結した。壱伝媒集団は職員の給与を支払うことができないため、21日に特区政府保安局に一部資産の凍結解除を要求し、25日がデッドラインとなる。資産凍結が解除されなければ『りんご動新聞』は同日11時59分に運営停止、『りんご日報』は26日の発行を最後に休刊する。政府は関連資産を調査中で、関係者が引き続き法を犯すことを防ぐため資産凍結の解除を認めないとみられる。21日には大部分の職員が辞職を決定したため正常な運営を維持することは難しくなり、『りんご日報』は前倒しで23日に運営を停止する可能性がある。またこれに先駆け「りんご9時半新聞」は21日に放送停止を発表した」(6月22日香港ポスト)
上の写真は去年8月時のものですが、今回6月17日の家宅捜索はまさに絨毯爆撃のような態をなしました。
蘋果日報(りんご日報)を出版するネクストデジタル本社に500人が入り、徹底的にあらゆる机、あらゆる戸棚、キャビネットをぶちまけて捜索したと言われています。
その際、押収された取材ディスクは実に44枚。
押収といっても、中国の「押収」は立件に必要な証拠物件が見つかれば返却するという司法ルールがないので、押収の名を借りた事実上の没収です。
そもそも自由主義社会においては、新聞社に司法権力がガサ入れすること自体がかんがえられもしないことです。
わが国で新聞社が襲われたのは、2・26のクーデター時に反乱軍に侵入された時くらいで、このような香港警察の捜索自体が異常極まるものです。
今回、当局は詐欺罪が立件容疑のはずですが、大量に取材資料を押収していったことから、おそらく取材メモにある民主活動家の人名や発言などを探していたのだと思われます。
今回は、オーナーのジミー・ライが逮捕されたことだけのことで、それをもって報道機関の財産とライの個人資産すべてを凍結し、家宅捜索で取材資料を大量に持ち去るなどということは、自由主義社会では絶対にありえないことです。
もちろん香港ですらこのようなことはいままでなされたことはなかったし、いかに中国流全体主義が今や香港を濃厚に覆い尽くそうとしていることがわかります。
その意味で、ジミーライの逮捕と、りんご日報の閉鎖は、香港の民主主義が完全に死滅した分水嶺となるはずです。
ブルームバーク ジミー・ライ
その他りんご日報は、資産230万米ドルが凍結され、財政的に破綻に追い込まれました。
同時に印刷所なども閉鎖に追い込まれるという徹底ぶりです。。
同時に社の幹部5名も逮捕されました。
「業務への影響も大きい。金融ニュースを担当する幹部らが離職し、蘋果日報電子版は22日から金融ニュースの業務を停止、紙面でも23日付から掲載できなくなった。国際ニュースを担当する幹部らも離職した。同紙英語版も業務停止に追い込まれた。
ネットで蘋果日報の動画ニュースを伝える番組の女性キャスターは21日夜、「とても残念ですが、これが最後の放送になります」と説明。「道は険しくても、真実を守るため引き続き職務に当たってほしい」と他のメディアにエールを送り、「香港人の皆さん、ご自愛ください。縁があればまた会いましょう。バイバイ」と番組を終えた」[産経6月22日)
それでも翌日18日付けのりんご日報は、実に50万部を刷り、たちまち売れたようです。
香港市民はりんご日報が白紙であっても買う、と言っているそうです。
リンゴ日報」発行停止か 25日に最終決定―香港:時事ドットコム
日本のメディア諸兄よ、これが正真正銘の言論弾圧です。
諸君らが官房長官会見で発言を独占しようとして制止されたくらいで「言論弾圧だ」なんて言っているのが、児戯の類だと分かりましたか。
もし日本のメディアが「言論の自由」を謳いたいなら、この一報道機関にすぎないりんご日報の弾圧に対して、彼らを守るために新聞協会や新聞労連が立ち上がることです。
もちろん日本メディアは声明ひとつ上げようとしないでしょうから、彼らが常日頃言っている「報道の自由」「知る権利」とはしょせんそんなていどものなのです。
このりんご日報廃刊のニューさえ伝えたのは1面で載せた産経のみ。朝日、毎日は1面からモリカケ新文書発見です。
この人たちには、ジャーナリズムの矜持というものすらないようです。
とまれ、月末を待たず、りんご日報とネクスト・デジタルの歴史は終わります。
なぜこの時期に中国が大弾圧の鉈を振るったのかといえば、7月1日は香港返還記念日、そして、建党100周年記念行事日で習近平の重要演説が控えているからです。
だから中国共産党と香港当局のヒラメ共は、点数稼ぎに香港に残った唯一の自由のシンポルであるリンゴ日報を壊滅に追い込んだのです。
先だってのコメントに、中国は崩れるふうもない、重い・・・、というご意見がありましたが、お気持ちはわかります。
ただ私からひとつだけ言えることは諦めないこと、悲惨なことに慣れてしまわないこと。
またかと言って見逃さないこと。
私たちのこういった無力感こそが、彼らの糧なのですから。
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コメント
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テスト
昨日はスパム確認で弾かれて全くコメントできず。。
中国は「自由民主主義とやらが我々よりすぐれているとでも言うのか?」なんて平然と言い放つ始末ですからね。共産党独裁とは全く質が悪い。
まず、何よりも返還時に25年間は制度を維持するという英国との約束を平気でやぶってますし、実に悪辣です。
投稿: 山形 | 2021年6月23日 (水) 06時15分
大学へ取材と称して不法侵入して逮捕されたのを報道の自由への弾圧と嘯く北海道新聞はりんご日報への弾圧を見ても同じ事を言えるのか?
投稿: 中華三振 | 2021年6月23日 (水) 18時39分
このように約束を破る国の走狗って、どういう気持ちなんでしょう。
将来の出世の約束なんて反故にされるどころか、捕まって無かったことにされるに決まっているのに。
それを気にしていられないくらいに弱みを握られているってことなのかもしれませんが。
投稿: プー | 2021年6月23日 (水) 23時19分