麻生太郎副総理のグッジョブ
昨日、ワクチン接種の2回目を終了しました。
接種が終わったまわりの人達に聞くと、腕が腫れて痛いいう私のような人あり、まったくなんともないという人あり、頭痛がするという人ありで、それぞれです。
全部正常な抗体反応で、中華ワクチンなんぞ副反応がないというのが「自慢」だそうです。そりゃただの水ですから。
我が自治体は、車がない人のためにタクシーまで用立ててがんばっているようです。
会場には、わらわらとスタッフがいて、関所を何カ所も作り、接種にたどりつくまでのほうが大変。
自治体の大規模接種の経験が、反ワクチン運動を煽ったメディアのおかげで、この十数年なくなってしまって、マニュアルも知った人もないそうな。
さて、ちょっと遅くなりましたが、麻生さんグッドジョブ!
本業の財務大臣では財務省のいいなりで早く替わってほしいくらいですが、安全保障関連ではいい仕事しています。
「麻生太郎副総理・財務相は5日、中国が台湾に侵攻すれば安全保障関連法に基づく「存立危機事態」と認定し、集団的自衛権の限定的な行使もありうると言及した。都内の講演で語った。
麻生氏は「(台湾で)大きな問題が起きると存立危機事態に関係しても全くおかしくない。そうなると日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」と指摘した。麻生氏は政府の国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合のメンバーだ。
中国の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が中国共産党創立100年の記念式典で台湾統一を「歴史的任務」と語ったことにも触れ「台湾の様相が極めて厳しいものになってきた」と述べた」(日経7月5日)
日経
この発言は、台湾有事は日本の有事として受け止めて、日米で台湾防衛のために集団的自衛権を行使して戦うという意味です。
いままで「台湾海峡の安定と平和」といったように、故意にぼかした言い方しかしてこなかった日本政府にとって、副総理という政府ナンバー2のこの発言はエポックメーキングです。
いままで日本の政治家といえば、台湾有事は台湾だけのこと、わが国は関われないという態度をとり続けてきましたから、日本有事と台湾有事は一体であって、共に集団的自衛権の行使を可能とする存立危機事態なのだ、というこの麻生発言は大きな前進です。パチパチ。
この麻生発言に敏感に反応したのが中国です。
習路線を代弁する「戦狼外交官」の趙立堅が、実に分かりやすいリアクションをしてみせました。
ほんとうに、ここまでまッ正直な反応をされると好きになっちゃいそうです。
「北京=三塚聖平】中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は6日の記者会見で、麻生太郎副総理兼財務相が5日の講演で、中国が台湾に侵攻すれば安全保障関連法の「存立危機事態」として対処すべきだとの見解を示したことに対し、「中日関係の政治的な基礎を損なう」と反発した。「強烈な不満と断固たる反対」を表明し、既に日本側に厳重な抗議を行ったことを明らかにした。
趙氏は「台湾問題への介入を絶対に許さない」と発言。その上で「中国人民の国家主権を守り抜く強固な決心や意志、強大な能力を見くびってはならない」と強調した」(産経7月7日)
おー、またまた出ました、習の100周年演説の決め台詞、「見くびるな」です。
「戦狼」症候群の連中の流行り言葉なんですかね。
習は福島香織氏によれば、常にクーデターや暗殺にさらされ続けているとか。
もう一杯一杯なんでしょうが、習さん、身内にご注意下さい。
さて、現実問題として、中国がいかに「台湾独立を粉砕する。見くびるなよ」とリキんでも、現状では中国に台湾への武力侵攻を図る能力はありません。
中国が台湾侵攻する意図を持ち、その準備を進めていますが、現実問題としてそれはそうとうに困難だと米軍は見ています。
今年6月17日の、米軍のトップであるマーク・ミリー統合参謀本部議長の米議会上院歳出委員会での発言があります。
「米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は17日、米議会上院歳出委員会の公聴会で証言し、中国が台湾に軍事侵攻する可能性を巡り、「近い将来に起きる可能性は低いと思う」との見解を示した。
ミリー氏は「中国がそうしようとしても、台湾全体を攻め落とすだけの実際の能力を持っていない」との分析を明らかにし、現時点では中国にとって動機が薄いとの見方も示した。
一方、オースティン国防長官は、同じ公聴会で「台湾統一は間違いなく中国の目標だ。それを裏付けるたくさんの情報が得られている」と警戒感をあらわにした。その上で「台湾の防衛能力の向上支援を行っていく」とし、台湾への武器売却などの協力を続ける姿勢を強調した。
「近い将来」というのがどの程度の時間的スパンか分かりませんが、ミリーは「中国には台湾侵攻の能力がないし、動機が薄い」とみているようです。
それに強く反発したのが習の100周年演説で、総大将御自ら「なめるなよ、独立の気配を見せやがったら本気でやるぞ」、と叫んでいました。
これが米国と中国の掛け合いです。
たしかにミリーが言うように、今の中国が真正面から台湾海峡を押し渡ろうとした場合、膨大な兵員を運ぶ船舶数が足らず、制空能力も不足しています。
おそらくは、台湾周辺の島を落とすことすら困難でのではないでしょうか。
それほど渡海作戦というのは大気補な準備が必要で、それを隠しおおせることは困難です。
準備を開始すればすぐに衛星で探知されてしまいます。
ちなみにミリーは陸軍出身ですので、常に南シナ海や東シナ海において緊張関係にある海軍とは温度差があるようにもかんじます。
ジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官 中国の台湾侵攻「多くの人が理解しているより切迫」 米軍司令官
アキノリー太平洋艦隊司令官はこう見ています。
「ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領から次期インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は23日、上院軍事委員会の指名承認公聴会で証言した。アキリーノ氏は、中国による台湾侵攻が「大多数の人たちが考えるよりも非常に間近に迫っている」と警告し、対応策をとるべきだと訴えた。 アキリーノ氏は「台湾に対する(中国からの)軍事的脅威は増している」と指摘。「中国共産党が米軍を地域から排除することを目的とした能力を向上させている」とも強調した。
その上で、中国軍の軍事的進出を押さえ込む「太平洋抑止構想」の実現に向けてインド太平洋軍が議会に要求した、2022会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で270億ドル(約2兆9000億円)に及ぶ予算を承認するよう要請した」(2021年3月24日 産経)
中国との矢面に建ち、真っ先に矛を交えねばならない立場の海軍は、「大多数の人たちが考えるよりも非常に間近に迫っている」と考えているわけで、その「大多数」に陸軍のミリーが入るのかもしれません。
※関連記事宮古島沖、遼寧空母艦隊が通過の意味: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
そこで中国がとるのが、いわゆる「三戦」で、そのルーツは人民解放軍の喬良、王湘穂両大佐が1999年に出版した『超限戦』です。
三戦とは、世論戦(輿論戦)、心理戦、法律戦のことで、要するに国際世論を味方につけ、相手をありとあらゆる手口を駆使して揺さぶり、そして勝手に自国の法律を作ってしまって合法とすることです。
これを現実にやって成功してしまったのが、南シナ海の軍事要塞作りです。
ロシアは「三戦」という表現こそ使いませんが、2014年のクリミア半島侵攻で実際に用いました。
まず所属不明の武装集団が突如登場してクリミア独立を叫び、ウクライナ軍司令部には強力なサイバー攻撃が仕掛けられて部隊との連絡さえつかないまま、併合される憂き目になってしまいました。
ちなみにこのときロシアがクリミア住民にやらせたのが「住民投票」という手口で、住民の自己決定権といった法的体裁で、他国を侵略してしまいます。
沖縄を中国が取りに来る場合、この手段を必ず使いますのでご注意下さい。
デニーがやった県民投票なども、その下慣らしですが、当人にその自覚はないでしょうがね。
それはさておき、ロシアはさらにクリミア半島だけではなく、東ウクライナでも、同じ手口で親露派軍事集団を出現させ、内戦に持ち込む事態になっています。
ただし国際世論を味方にするという部分は、中国ロシア双方仲良く失敗しており、いまや世界を敵にまわしてしまう結果になっています。
このようにこの「三戦」はある意味で非常に政治的な戦いで、米国は今から13年前に「三戦」を「ハイブリッド脅威」として理解していますし、遅まきながら日本もわかりかけてきました。
これはサイバー戦に備えるといったハード面だけではなく、政治戦でもあるのです。
たとえば、米国は台湾にワクチンを供与しましたが、その時三人の上院議員を台北に運んだのは米空軍15連隊所属のC-17戦略輸送機でした。
米が台湾にワクチン75万回分、上院議員が米軍のC17輸送機で台湾を訪問
【台北共同】バイデン米大統領に近い米上院のクーンズ議員やダックワース議員ら一行が6日、米軍のC17輸送機で台湾を訪問し、新型コロナウイルスワクチン75万回分を国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ提供すると発表した」(共同6月6日)
ここで米国は慎重に訪台の日づけと、その運搬手段を吟味してみせました。
まず、到着したのが6月6日、この日は米軍のみならず世界の軍事関係者ならピンと来るはずのノルマンディ上陸作戦日における決行日(D-Day)当日です。
しかも、中国が保有しないC-17という巨大長距離輸送機を使い、降りたところが台北のど真ん中の松山空港の短い滑走路です。
こじつけではありません。三人の議員とワクチンを運ぶだけなら、C-17などいりませんから。
民間航空機をチャーターすればいいのに、なぜ米軍一大きな輸送機で、それも台湾の首都に乗りつけたのでしょうか。
これだけでゲップが出そうなくらい意味がこめられています。
もし中国が、愚かにも台湾に侵攻したなら、米国は1944年6月6日のように、最大規模の台湾支援軍を送るぞ、それでいいんだな、という意味です。
中国はその意味に気がついて、珍しく妙に静かでした。
日本の政治家で、この「三戦」を理解しているのはごく少数で、安倍氏はその希少なひとりです。
安倍氏は岸氏などと共に、第2次天安門事件が起きた6月4日に合わせて台湾にワクチンを届けるという快挙をなし遂げました。
気がつかないのは日本のボケーっとしているメディアくらいなものです。
これは天安門事件がまだ終わっておらず、ウィグル・香港を忘れない、台湾を守り抜くぞという世論戦です。
もう既に台湾と尖閣諸島の防衛のための戦いは始まっており、このような一挙手一投足がすべてハイブリッド戦 です。
そのためには、台湾-日本-米国の三カ国の連携をレベルアップせねばなりません。
米国はすでにトランプ時代から、台湾を代表事務所からワンランク上げて準大使館にする構想を持っていました。
そのために大きな建物を作っています。
この構想はバイデンにも受け継がれていますので、やがてここの警備要員として海兵隊が小規模配置されることでしょう。
また、台湾が常に曝され続けているハイブリッド戦の状況を、リアルタイムで日米台が共有する情報システムの構築も構想されていると聞きます。
日本も法律戦の一環として、尖閣に侵入され放題の現状から、領海法をしっかりと定めて法律戦で対抗する必要があります。
※関連記事『領海法がなくて、どうやって戦えというんだろう』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-77192f.html
『尖閣水域、なにが出来てなにができなのか?』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-61b0a9.html
このような日常的なハイブリッド戦対応こそが、中国の仕掛けてくる「三戦」に対する最大の防御なのです。
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アメリカはウイグル産とされるポリシリコン、綿花、トマトペーストなどのを用いた製品の輸入規制を行うと宣言しましたし、もう戦争は始まっているのも同然ですね。
特にポリシリコンは今絶賛キャンペーン中の太陽光発電には無くてはならないものだけに他の生産ルートの目処がついたという事なのでしょう。
水面下ではアメリカは中国からいつでも足抜け出切るように準備を進めていた反面、日本企業はのんきに中国とべったり状態でユニクロは槍玉にあげられ他の有力大手企業も注意対象として名指しされる始末。
安部政権時にささやかながら「中国から逃げる準備はしておいたほうがいいよ〜」というメッセージをこめた政策を行っていましたがそれを感じ取れた企業は皆無だったということですね。
「お前はどっちにつくんだ?」というボールを投げられた日本、お得意の穏便にやり過ごす戦術はおそらくもう通用しないでしょうから、本当に準備をまるっきりやってない企業は壊滅的な痛手を被る事になるのでしょう。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年7月15日 (木) 13時48分
麻生さんの発言には勇気づけられます。
台湾の次は沖縄なのは明らかなので、台湾の民主主義を守る事が絶対的に重要です。
ただ、バイデン政権の動向が気になります。
米国は麻生発言後に「台湾の独立は支持しない」、「一つの中国政策を堅持する」とし、あいまい戦術に回帰しています。
中共人士はこぞってこの声明を歓迎しています。
「米台関係は新局面に入った」、としたトランプ政権からはひどい後退です。いづれ「米中会談を目指したもの」との解説が多いですが、逆に台湾の危機を誘引してしまいそうな誤ったメッセージに思えます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年7月16日 (金) 00時06分