飲食店の面従腹背、いや、今や面背腹背
オリンピック、しらけると思いきや、気持ちよく盛り上がっています。
あれだけ執拗にメディアからディスられたのですから、嬉しい予想ハズレです。
メディアの作った同調圧力を強いるような「感動」は御免ですが、このような静かですが強い喜びはいいもんです。
それにしても、いかに日本国民がこのコロナ下で抑圧されていたのか、分かります。
コロナがほんとうに怖いのは、この閉じ込められて行き場を失くした抑鬱感です。
それを国民がため込んでしまっています。
かつての東日本大震災とそれから延々と続いた風評のトンネルにいた時にも感じましたが、怖いのは自分がひとりであると思うこと。
そして、この暗いトンネルはどこまでも続くと思うことです。
国民は今、ひとりぼっちに切り放されて、とぼとぼと果てることがない暗いトンネルを歩かされている気分なのです。
だから、オリンピックでの日本選手の涙ぐましい力闘が、いつもの年以上に身に沁みるのです。
卓球・水谷隼&伊藤美誠が悲願の金!王国中国の壁破り 卓球史上初 ...
もちろん終りのないトンネルなどないのは頭では分かっていても、あまりに理不尽な暗闇を強いられると、人はやがてうなだれていき目先の地面しか見なくなります。
ひとりひとりの精神が張りを失くし、ひからび始めていきます。
それが国民全体にひろがりつつあったのが、オリンピック前夜でした。
首相はこともあろうに、無観客オリンピックの圧力に屈してしまいました。
この瞬間、菅氏は状況のハンドルから手を離してしまったのです。
決断できない人、勝負に出られない政治家、一流の官房長官だが二流の首相、そういった評価が自民党支持者の間にも定着しかけています。
緊急事態宣言の乱発が、この陰鬱な空気を作り出した張本人です。
「百年緊急事態宣言」でもやるのか、というくらいと思うくらいの長期の、しかも飲食店を狙い撃ちしたような抑圧状況が続きました。
飲食店など庶民に残された、数少ない行き場のないやりきれなさの捌け口だったはずです。
これを取り上げてしまい、家に閉じ籠もっていろと言われ、旅行にも行くな、スーパーにもひとりで行けと命じられ、そしてその自宅こそがクラスターの大きな発生源だと言われるのですから、どこに行けばいいんです、私ら国民は。
公園でチューハイでも飲みますか。 おっと、これもダメなんだったっけ。
私が好きだった店など、2軒あったのを1軒にまとめ、従業員には暇を出し、それでも耐えられず、7月一杯休みにし、先日行けばまだ休業の札がかかっていたとか。
人知れず潰れてしまった店など、かぞえるのが馬鹿馬鹿しくなるほどありふれた風景になりました。
沖縄など、緊急事態宣言を出し放しなので、主力の観光がゴーストタウンです。
デニー知事はその無能が故に、県の経済の息の根を止めたのです。
沖縄、夜のスポット「栄町」もにぎわいなく 飲食店「生殺し状態だ
「シャッターを閉めた飲食店には、店主が書いた「考えてもわからん うつさないよう、うつらないよう直接的なつながりはひかえます」との張り紙があり、葛藤しながら閉店した様子がうかがえた。(略)
宮古島市西里の繁華街、通称「イーザト」はスナックやクラブなど多くの飲食店が立ち並ぶ。普段なら午後8時ごろには酔客が行き交うが、今は多くの店が営業を自粛する。西里で飲食店を営む50代の女性は「この状況が続くともたない。どの店も同じ状況だと思う。どうにかならないかね。毎日、ため息しかでないよ」とつぶやいた 」(琉新2020年5月20日)
この状態が、1年2か月前の去年5月です。
それが今年になっても、一瞬のGOTO期間を除いて、このような状況をいつ果てるともなく続けていれば、どうなるのでしょうか。
その典型が沖縄県です。
「沖縄は近年、観光業が絶好調だった。入域観光客数は2018年度に初めて1千万人を超えるなど、6年連続で過去最多を更新してきた。しかしコロナ禍の直撃を受け、県の統計によると2020年度の入域観光客数は約258万4千人と前年度より72・7%も減少。各地で土産物店や海外客向けの免税店の閉店が相次ぐ」(朝日2021年7月1日)
出店4、5年待ちの通りがシャッター街に 大逆風の沖縄:朝日新聞デジタル
観光客が宮古で72%減少だそうで、景気判断指数の地価もメタメタです。
「沖縄県内の最高路線価は、那覇市久茂地3丁目の国際通りで、1平方メートルあたり143万円。昨年は40・8%も上昇したが、今年は1・4%のマイナスと10年ぶりに下落に転じた。人気観光地の宮古島市・西里大通りは0%(前年プラス45・8%)と横ばい、石垣市の市役所通りはマイナス3・3%(同11・1%)と下落した」(朝日前掲)
いまなら、国際通りでもすぐに開店できるとのこと。
そりゃそうだ、観光客がひとっこひとりいないので、シャッター通り一歩手前ですもんね。
どうこれを考えるんですか、デニーさん。このまま無能の証明でしかない緊急事態宣言を続ければ、あなたは県の息の根を止めた知事として歴史に名を刻みますよ。
それでもいいんですか。どうせ再選なんかないんですから、もう少し意地を見せて欲しいものです。
寂れ切った市街地からそそり立つのは巨大な県庁と市役所だけ。
これはそうとうに恥ずかしい風景ではありませんか。
ところでここまで来ると、国民はどうすりゃいいんでしょうか?
もうあまり選択肢がありません。
お上の言うとおり潰れるのを待って多額の借金で苦しむのか、いっそさっさと潰れて廃業してしまって借金を背負い込まないようにするか、あるいは、宣言はしょせんただの「お願い」と見切って、従わないだけのことです。
現に多くの店主が、罰金が食らっても、そんなものより営業してしまったほうがいい、と判断したようです。
「新型コロナ: 都内飲食店の5割超、時短応じず 協力金遅れで離反
日本経済新聞の記者が緊急事態宣言が発令された後の16日と19日に、新宿、渋谷、池袋、新橋、上野の各駅周辺の5地点で、営業していた個人飲食店100店舗ずつを目視調査した。全体の52%、262店舗が午後8時以降も営業していた。
開いていた店の割合が最も高かったのは新宿駅周辺で、7割に迫る68店舗。サラリーマンが多い上野駅周辺は6割、新橋駅周辺は5割だった。渋谷駅と池袋駅周辺はそれぞれ4割だった。
6月下旬にまん延防止等重点措置に移行したとき、都は「午後7時まで」「1組2人まで」などの制限つきで酒類提供を解禁。宣言の再発令を受け7月12日から再び禁止した。午後8時以降に営業している店の大半は酒類を提供している。
要請に従わない背景には、協力金の支給の遅れがある。1月に申請した協力金が7月まで支給されなかったケースもあり、店の資金繰りを支えられていない。新橋で深夜営業する40代の居酒屋店長は「売り上げは急激に下がっており、経営は回らない」と話した」(日経7月25日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC197590Z10C21A7000000
東京都では、繁華街の酒を出す飲食店の半分は時短にも酒類提供禁止にも従わなかった、ということです。
当たり前です。そうなりますって、ならないほうがオカシイ。
半分の店が面従腹背、いや今や公然と面背腹背を開始したのは、協力金の支払いが遅れたことにあるそうです。
1月に出した申請が7か月後にも支給されなければ、誰が言うことを聞きますか。
税金を取る時だけは、重箱の隅をつつくようにして迅速、かつ執拗。
ところが出す段になると、申請が煩雑な上に、7か月遅れでも平気。これで言うことを聞くと思うほうが異常です。
今になって去年のコロナ予算の使い残しが30兆円なんていわれても、そんなものはただ執行が遅れただけのことだろうと思っちゃいますよ。
「新型コロナの感染拡大を受けて去年春から積み増してきた国の予算73兆円のうち、約30兆円を使い残している事がわかった。
家計や企業への支払を確認できたのは約35兆円と名目GDPの7%程度にとどまっている。
GDPの13%を支出した米国と比べると財政出動の効果が限られている」(日経モーニングプラスFT2021年6月24日)
30兆も残したから、今期は引き締めろというのが緊縮財政派です。
ちがうのです。対策費の執行の遅れが問題なだけで、それが致命的に遅れているために、国民を苦しめているのです。
私も2011年の放射能風評被害時に半年叩かれて、経営が破綻しかけた経験がありますから、今の飲食店の苦境は肌身でわかります。
回転資金がショートし、その累積が経営を押しつぶすのです。
その時に高齢だったり、後継者がいなかったりすれば、決断はたやすい。さっさと見切りをつけて離農します。
それと同じことが、今、飲食店で起きているようです。
こんな簡単なことが、ナマチュー一杯、菜っ葉ひとつ売ったことのない学歴エリートには判らないと見えます。
緊急事態宣言はとうに曲がり角にきています。
このまますっぽ抜けの破れザルと化した宣言を継続しても、無意味なばかりか国民の忍耐の限度を超えてしまうでしょう。
それがこの飲食店に現れています。
その見返りは、次の衆院選で自民の歴史的大敗として現れるはずです。
といっても、自民に代わる勢力はゼロコロナ=ゼロリスクを掲げる立憲か、緊急事態宣言が大好きな小池なのですから、ちゃーならんさぁです。
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コメント
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余った金が30兆円ですか。もったいない。
国が経済対策を行っても、執行能力が無いとその金が活きない。
となると、マスコミが報道するように緊急事態で協力しろと言うなら補償と一体だ。は若干意味が違いますね。国は補償はしている。問題は執行能力です。
ワクチンもしかり。国が十分な量を確保しても自治体によって執行能力には限界がある。逆に今回のコロナ渦で問題も見えてきた。
協力金も、その会社の営業状況を知り尽くしているのは銀行であり、信用組合です。手数料を払っても銀行や信用組合を活用するとか方法はあると思います。
協力金として、銀行、信用組合から支給し、その分を一括で国が銀行、信用組合に振り込む。その代わり手数料を支払う。忙しい商売人にとって手数料を払ってでも、現金化できればその方がいい。
技術畑の仕事をしている人間の経済を知らないたわ言でしょうか。
投稿: karakuchi | 2021年7月27日 (火) 23時02分
色々と漏れてくる情報を聞くに、どうやら県はコロナ関連の書類の処理に非常勤をほとんど雇わずに各部署から職員を動員して行っているような感じですが、この非常時になにケチ臭い事をしているのか。
米国の事務所や裁判費用、知事の全国トークショーなど散々無駄な支出ばかりしてこれなのだから呆れてものが言えません。
知人の元には接種券がようやく届き始めていますが、私の所にはいまだに来る気配もありません。
どうしよもないですね那覇市。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年7月27日 (火) 23時29分
先に謝っちゃいますけれど、オリンピック映像見ながら晩酌しながらなので、変なこと書いているかも。
6月2日沖縄タイムスによれば、沖縄県は「新型コロナウィルス感染者で重症化リスクの低い若者や軽症者の濃厚接触者調査を取りやめ、感染者本人が接触者に連絡するよう呼び掛ける方針を固めた」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4792bb3fd87cb72297c2cb1d5151686398076fc0
とのことですから、沖縄(本島中南部)の陽性とか感染とかの数は減りようないかも。
結構前から各地の海浜公園などでは、砂浜は閉鎖でも夕方になれば、普段通りに一人か二人で散歩やトレーニングをする人たちだけでなく、酒を含む飲み物食べ物を持ち込んで、独りで、グループで、それなりに楽しくやる人々がやって来る。
素敵な夕陽が見られそうな日は特に多く。
居酒屋に道路使用を認めて外席をつくって営業させるのと、どれほどの違いがあるだろうか、一人か二人客が何組か、店で短時間しっとり飲み食いするのもだめなのか、と考えます。(公園の階段堤や噴水の中に酒の空き缶が放置されているのを見ると、むしろ店で飲む方がいいとも思われ)
そして休業しない店で「ウェーイ」もあるわけで、こんなゆるゆるでもこの数字で済んでいるとも、まぁ言えます。
東京新宿あたりでは、対策取っているかも怪しい密密盛り上がりなクラブイベントなどもちょいちょい行われているようですね。
オリンピックが有ろうが無かろうが、店や路上や公園や、何処かのハコや誰かの家に集まって騒ぐのを我慢できない「飛沫感染?知らん」みたいな人たちが、我慢する人々で捻り出そうとする成果を台無しにするけれど、そいつらを狩ってゼロにできるような怖い国でも我が国はなく、安心安全は他の誰かが与えてくれるべきもの、というわけでもない。
うーん、オリンピックの選手大活躍がなきゃ、無駄に悲観したりイラついたり他罰的になる人を増やすばかりなところです。
マクロン仏大統領が、東京オリンピック開催は「正しかった。なぜなら、感染が数年後どうなるかは誰にもわからないから」と述べましたが、今現在の世界各国のワクチン接種状況と感染状況に鑑みて、私も同感です。
ワクチンを打っても感染が防げるとは限らない、なんなら今後も定期的にワクチンを打たねばならないことになるかもしれない、マスク着用が義務or推奨される場合が一切無くなるわけではない、無制限な渡航往来はまだない…、これらが今後1年から数年は続く可能性を考えると、有効な治療薬が出来ない限り、「専門家」が「出歩いてはダメ、お店をやってはダメ」と言ったら政府も国民も従う他ない、なんてやっていられるはずがないです。
感染しても重症化を回避する確率を上げなから、死者数に注意して、リスクを増やす行動・方法を避けながら活動はやめない、こんな落とし所でどちら様も割り切るよりないんじゃないですかね。
治療薬が確立するまでは、あの狂喜のインバウンドは戻らない(二度と無いかもしれない)、野放図な「ウェーイ」「ヒャッハー」にも戻せない、その前提で稼ぎ方や楽しみ方を考え出す、そういう基本方針を共有するよりないんじゃないですかねぇ。
投稿: 宜野湾より | 2021年7月28日 (水) 00時11分