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2021年8月

2021年8月31日 (火)

WHO武漢調査は中国の強要だった、調査団長の証言

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アフガン情勢が緊迫したためにアップが遅れていた記事を拾遺しておきます。
 米軍撤退完了とのことですが、アフガンについては明日にまた書くことになるでしょう。

さて、またまた武漢ラボ起源説が強化される証言がでてしまいました。
それも例の怪しい探検隊ならぬ、怪しいWHO武漢ウイルス調査団の団長の証言ですから、これは重い。
デンマーク公共テレビ局TV2は、調査団長だったぺーター・ベン・エンバレクが武漢で撮影したビデオと、同氏との長時間にわたるインタビューを公開しました。
https://nyheder.tv2.dk/udland/2021-08-12-dansker-var-chef-for-WHOs-mission-til-wuhan-maaske-er-nogen-slet-ikke-interesseret

覚えておられる方もいるかもしれませんが、このエンバレク氏は武漢ラボからの漏洩はないと記者会見した人物です。

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時事 ピーター・ベン・エンバレク団長
当時エンバレク氏はこう述べていました。
北京時事】新型コロナウイルスの発生源解明のため世界保健機関(WHO)が中国に派遣した調査団は9日、湖北省武漢市での調査を終え、中国側の専門家と共に武漢市内で記者会見した。WHOのピーター・ベンエンバレク氏は「実験室からウイルスが流出した可能性は極めて小さい」と述べた。米国は中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した可能性を主張していたが、WHOは同研究所の現地調査を踏まえ、これを否定した」(時事2021年2月9日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020901262&g=int
その彼が、わずか半年のうちにこの2月9日の記者会見の調査報告は、中国に強要されたものだと言い始めたのです。
この間の武漢ラボ起源説を証拠立てる数々の証言が積み重なり、世界のCOVID-19を見る目がすっかり半年前とは変わった空気を受けたものなのでしょう。
エンべレク氏はこんなことを言っています。
「WHO調査団の使命は、人類がCovid-21、Covid-23、Covid-25に直面しないためにも発生源を明らかにすることだ」と考えていましたが、同時に「ひよっとしたらCovid-19の発生源を掴めないかもしれないといった懸念があった。それはすでにこのCovid-19の発生源問題が政治問題化したからである」
同氏によると、WHOは調査団派遣前から、その人選に圧力がかかっていたが、その原因は中国を巡る政治問題と化していたからだといいます。
「発生源の解明に関心を持つ人(国)とそれにはまったく関心がないばかりか、誤導しようとする人(国)で混乱していたからだ」
発生源が中国であり、しかも武漢ラボだとする人たちと、絶対にそれを認めずに別な原因に誘導しようとする勢力が確執していたようです。
結局、後者が勝利し、武漢ラボで機能獲得実験を石正麗と共同研究していたピーター・ダザックまでもが大きな顔をして調査団にもぐり込むに至って、既に当初からこの調査団の公平性は失われていました。
エンベレク氏は、中国側は調査団のビザの発給を一時拒否する圧力をかけることで、中国が望む結論を出す人物を入れたいのだ、と感じたと語っています。
そしてそれは、中国指導部内に発生源を隠蔽したい勢力がいることを物語っている、とエンベレク氏は感じたそうです。
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WHO調査団のダザック。この男がCOVID-19を共同で作った。

※関連記事『もうひとりの重要人物・ピーター・ダザック』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-6b47e5.html

ダザックはCOVID-19を作り上げた人物のひとりですが、調査団員としてシャラっとしてこんなことを言っていました。
「米国の動物学者、ピーター・ダザック氏はAP通信の取材に対し、調査団が訪問したい場所や面会したい人のリストを事前に中国側に提供していたとし、いずれも拒否されなかったと述べた。米国のトランプ前政権がウイルス流出疑惑を唱えた武漢ウイルス研究所への訪問では「洞察に満ちた質問をすることができ、(中国側の)重要人物がみな出席した」とも語った」(テレ朝2月6日)
自分が武漢ラボの内部関係者でありながらいけしゃーしゃーと「洞察に満ちた質問ができた」ですか、ほんとうにそれを聞きたいならば自分が証言台に立つことです。
実際はどうであったのかエンベレク
氏は、中国側の科学者と満足な質疑すら保証されなかったと述べています。
WHO調査団を迎え入れる17人の中国科学者チームは、自由に調査団と意見交換することを禁じられ、接触すら禁じられ、その
討論は当局が監視するオンラインに限定されていました。

調査団は自由に外に出て独自の調査をすることが禁じられ、調査初期の14日間は検疫の名目でホテルに缶詰にされました。
軟禁から自由になったものの、調査団の科学者たちが自らのテーマに沿った調査は一切認められず、中国当局の引き回す場所に連れ回される一方であったそうです。
当局の許可した場所で、当局の許可した人物とだけ面談し、決められた答えを聴取するだけ、これか「調査」の名に値するのでしょうか。
こういう当局が完全に主導権を握った「調査」や「取材」は共産圏ではあたりまえのことで、証言者がすべてあらかじめ公安当局が選んだ「仕込み」であることは特に珍しくはありません。
今回の調査団も、中国共産党の常套手段の、仕込みと隠蔽、そして誘導に遭遇しただけのことです。

調査団は数少ない現地の人間との面談で、COVID-19に最初に感染したといわれる人物と引き合わされましたが、この人物は2019年12月8日に感染症状が出たことになっているということでしたが、発生源とされた武漢海鮮市場を訪れていなかったそうで、ならばどこで感染したのでしょうか。
この時、エンベレク氏はこう感じたそうです。
「新型コロナ感染は2019年中に我々が考えていたより拡がっていたことを感じた」
まさに、エンベレク氏が言うように、2019年9月前後からCOVID-19は武漢ラボ関係者の間に感染拡大し、おそらくクラスターが研究所内部に生まれていたことが分かっています。
ですから、2019年9月から2020年1月にかけての、研究所関係者のの医療カルテの開示が必要なのです。
もちろんそんなものは提供されるはずもありませんでしたが。
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CNN 武漢ラボ

それどころか驚くべきことには、武漢の血液バンクには20万本の血液サンプルが保管されているが、血液テストは実施していない、と中国当局は堂々と答えていたそうです。
その理由が奮っています。個人情報を遵守しなければならないので、調査団の調査も拒否したとのこと。
あの国民の財布の中まで見張っている監視国が、発生源の武漢市で血液サンプルを取ったが、「個人情報保護」で検査をしていないとは笑止です。
エンバレク氏によると、調査団は研究リーダーの石正麗はおろか、武漢ラボの研究員への満足な調査もできず、コウモリ研究をしていた2カ所の実験室のデータへのアクセスも認められませんでした。
これらのデーターベースは2019年の9月に削除されていますが、もちろんどこかに残されているはずですが、中国側は知らぬ存ぜぬだったとのこと。
面白いのは、調査団は武漢ラボのP2施設が2019年12月2日という最初患者が出た直後に移転したことを、その時知ったそうです。
この初発の患者発生と同時期の研究施設移転は、研究所の移転作業が難しいことを考慮すると疑惑に満ちています。
エンベレク氏がこう考えたのは当然でしょう。
「研究所の移転は決して容易なことではない。中国側が何かを隠蔽するために必要となったと考えられるからだ」
 また 中国側は実験室の研究者の抗体検査を実施し、陽性反応者は1人だけだったと言っていたそうです。
そしてその1人は家庭クラスターで感染したと説明していましたが、ここでも血液サンプルは取っていません。
家庭内から感染したのなら、家族の誰からで、どういう経路で感染したのか発生動向調査されるべきですか、もちろんそんなものはされるはずがありません。
エンベレク氏は、こう感じたそうです。
「ひょっとしたらその1人が新型コロナの最初の感染者であった可能性があるが、その人物が今どこにいるのかなどについては中国側は何も明らかにしていない」
というわけでほとんど収穫のない「調査」をしていたWHO調査団でしたが、興味を引くのはエンベレク氏が武漢ラボP2実験室についてもっと注目する必要があるとしている点です。
このP2施設がある別棟は、武漢ラボ本館から分離されて武漢海鮮市場に近い場所にあります。
どうやらここで「コウモリ女」こと石正麗はコウモリの遺伝子操作実験をしていたようです。
つまり、石正麗は本館のP4を使わず、もっとバイオセキュリティが低い別棟のP2実験室でウイルスの機能獲得研究をしていたようです。
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WHO、武漢の海鮮市場を視察 滞在1時間、解明は不透明

なお、予想されていたことですが、海鮮市場には猫一匹いなかったそうで、中国当局は市場を徹底的に整理し、消毒しまくって証拠隠滅した後で、さぁご覧下さいというわけです。
まことに公明正大な態度です。
いや失礼、ちゃんと見せてくれていました。それが
外国から輸入した冷凍品の倉庫で、中国当局に言わせるとこれが発生源だとのご託宣です。はいはい。
これも調査団は、義理堅く感染源の可能性のひとつとして上げています。
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WHO新型コロナ起源調査終了 中国主張に沿う「結論」目立つ | 毎日新聞
そもそも中国国内で中国と共同記者会見なんかしたら、こう言わされるに決まっています。
彼らは外国人といえど、絶対に中国内で不利益な発言などさせる気はないからです。
調査団が透明性を確保したいなら、WHO本部か国外の第三国ですべきでした。
また中国側がいかにも因果関係があるかのように言っている、武漢における2019年10月の「軍人オリンピック」も、そこで9000回ものドーピング検査がされたといいながら、ここでもサンプルひとつ残っていなかったそうです。
つまり自分らが発生源だという軍人オリンピックにも、なにひとつ証拠がないということになります。
むしろここからウィルスが入ったのではなく、逆に米国などにここから持ち出さた可能性が指摘されています。
ウィルスの入り口ではなく、世界への出口だったのかもしれません。

詳細な報告書である米国下院マッコーネル報告書は、この新型ウィルスを世界に拡散したのは、2019年10月18日にあった第7回軍人オリンピックだったとしています。

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米軍ウイルス持ち込み」の根拠は?新型コロナウイルス感染源めぐる米中

「さらに、マッコールは2019年10月の世界軍事大会に言及し、9,000人が入国したと述べた。外務委員会のデータによると、インフルエンザのような症状で母国に戻った人もいた」(FOX前掲)

この第7回軍事スポーツ世界大会(ミリタリーワールドゲームズMWGs)は、「軍人のオリンピック」として世界109カ国から9308人の選手が集まり、27種類の329競技で競いました。
中国政府は23万6000人のボランティアを募り、90のホテルを用意しましたが、参加したカナダの選手は「街はロックダウン状態だった。私は到着後、12日間、熱と悪寒、吐き気、不眠に襲われ、帰国する機内では、60人のカナダ選手が機内後方に隔離された。私たちは咳や下痢などの症状が出ていた」とカナダ紙に証言しています。
マッコーネル報告書は、この軍人オリンピック大会の競技会場も、6つの病院も、さらには大会参加後に体調不良を訴えた選手がいた場所も、すべて武漢ラボの周辺に位置していたことを指摘しています。

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上図で赤点が武漢ウィルスラボ、黒点が軍人オリンピック会場、青点が軍人から出た患者が収容された病院、緑点が選手のホテルです。
この2019年9月の軍人オリンピックにより、新型ウィルスは世界的に拡散し、パンデミックを引き起こしたとマコーネルは報告書で結論づけています。
マッコーネル報告書は、「軍人のオリンピック」参加国のうち、イタリアとブラジル、スウェーデン、フランスの4カ国について、具体例を示しながら「2019年11月から12月にかけて、国内での感染発生を確認した」と記しています。

このマッコーネル報告書が正しいとすれば、欧米には既に2010年1月以前にウィルスが侵入していたことになります。
そう考えると、米国CDCがあれだけ厳重な中国とのアクセスを遮断したにもかかわらず、侵入を許してしまった理由がわかります。
COVID-19は生物兵器として作られ、まず2019年9月頃に実験動物から研究員に感染が移り、さらにそこから一定の広がりを持ったところで10月の軍人オリンピックで世界に拡散していった可能性が高いと思われます。

とまれ、このような調査の名に値しない調査結果発表でも、中国は強い介入をしてきました。
エンバレク氏はこのように述べています。

「中国共産党は武漢海鮮市場からヒトへの感染説を主張し、武漢ラボ漏洩説はその可能性は皆無だという立場を強調した。武漢ラボ漏洩説を報告書に記載するか否かで長い議論があった。最終的には、中国側は「漏洩説」に言及することを受け入れる一方、今後の調査は必要ないという言質を取った」
つまり中国側は報告書に武漢ラボ漏洩説を載せることだけは認めたが、その追加調査はしないという言質をWHOから取ってしまったわけです。
このデンマークのドキュメンタリーで、エンバレク氏は自らを含むWHO調査団の多くは武漢調査前には「武漢ラボ流出悦」に懐疑的だったが、調査後は流出問題について真剣に考え直しているそうです。
ならば調査団の科学者が連名でこの調査の経緯を正直に語り、改めて第2回の調査をWHOに要求することです。
それが科学者の良心ではないでしょうか。
といっても、二回目の武漢調査など中国は絶対に受け入れないでしょうが。
もうやらないとWHOに言質をとっていますしね。
バイデンが命じていた米国情報機関の報告書がでたようですが、予想どおり毒にも薬にもならないもののようで、こんなもんならマッコーネル報告書のほうがはるかに詳細です。
※扉写真に縦長サイズを使ってしまったために通常サイズのものに差し替えました。

2021年8月30日 (月)

なぜ、アフガン邦人救出は「失敗」したのか?

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まずはアフガン情勢から。本日のテーマは波線の下からです。
米国がISIS-Kの拠点を攻撃したようです。
アフガニスタン・カブール空港への攻撃の脅威が続く中、米中央軍司令部は日本時間28日午前、アフガニスタン国内の過激派勢力「イスラム国(IS)」系組織「IS-K」の「計画者」をドローンで攻撃し、標的を殺害したと発表した。
米中央軍司令部は米東部時間27日夜(日本時間28日午前)、「地平線を越える対テロ作戦をIS-Kの計画者に実施した」と声明を発表。「無人空爆はアフガニスタンのナンガルハール州で行われた。初期の兆候によると、我々は標的を殺害した。市民の被害の報告は得ていない」としている。
ロイター通信は当局筋の話として、中東から出発した「リーパー」ドローンが標的となった「ISーK」の関係者を攻撃したと伝えた。別のIS関係者と車に乗っていたところを爆撃し、2人とも死亡したという」(BBC8 月24日)
この米軍が攻撃したナンガルハール州はアフガン東部でパキスタン国境付近の地域で、今までタリバンの制圧地域と見られていましたが、ISIS-Kも勢力を延ばしていました。


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この国境周辺地域は、ISIS-KのKに当たるホライソンを含む、彼らの理念的サンクチュアリ(聖域)です。

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ドローンMQ-9を使ったようですが、この目標指示をするために、特殊部隊ユニットが現地に送り込まれているはずで、おそらく複数のユニットが潜入していると見られます。

もちろん、こんなことではISIS-Kは壊滅しませんし、痛くもかゆくもないでしょう。
むしろ米国が向かい合ってくれた、と喜んでいるかもしれません。
やったほうがやらないよりややマシなていどで、撤退計画全体がまちがっているのです。
このような最悪の事態が到来した以上、撤退は一時棚上げにして、一定数の駐留軍を再配置せねばなりませんが、それもカブール市内のタリバンを単独で駆逐せねばならず、ニッチもサッチも行かない状態です。
やりようがないので、無人機でISIS-Kを狙い撃ちするという方法を続けていますが、ならばせめて拠点だった空軍基地だけでも撤収せねばよかったのです。

タリバンがISIS-Kの戦闘員を拘束したという報道も出ており、たぶん全面的なシハード派内部の本格的内部抗争に発展しそうな勢いで、当面この趨勢をみるしかないでしょう。

なお英仏軍も撤退策戦を終了しましたが、まだかなりの数の英仏人、あるいは避難資格を持つアフガン人が残されているようです。

「英国のベン・ウォレス国防相は27日、英メディアに、近く終了する見通しの英国の退避作戦で、アフガニスタンから救出できない人が最大で1250人に上ることを明らかにした。
 内訳は、通訳などで雇用したアフガン人協力者ら800~1100人、英国人が100~150人。ただ、一部は希望してアフガンにとどまっているという。
 英政府は、アフガン人らにビザ発給の手続きなどをしていた空港近くの拠点をすでに閉鎖した。手続きを終えて空港内で待機中の人を国外退避させた後、全ての軍部隊を撤収させる方針だ」(読売8月28日)

まだ多くの外国人と保護対象のアフガン人が残された現状で、到底あと数日で完了するとは思えませんので、ここ数日の米国の動きが注目されます。

                                                  ~~~~~

さて、今回、自衛隊のオペレーションは1名の救出だけに終わってしまいました。
私は、尽力された自衛隊関係者には深い敬意を抱きますが、あえてこれを「失敗」と評します。
失敗の原因はいくつか考えられます。

元海自海将伊藤俊幸氏は、その理由のひとつとして、現地日本大使館の任務放棄をあげています。
今回私たちを呆れさせたのは、現地大使館が避難を求める邦人を置いて、大使以下英軍輸送機で自分たちだけでさっさと逃げてしまったことです。
たぶん本省からの撤退命令が入っていて、その期限どおりに出国せざるを得なかったという言い訳は用意されているでしょうが、本筋を間違えています。

どこで間違えているのか。それは国家は自国民を保護するのが最大の責務だからです。
さまざまな国家機関や自治体が救援に動くことができる国内と違って、海外における戦争や大規模災害にあって、邦人は国家機関しか頼るものがありません。
この任務を担うのが現地大使館です。その大使館が真っ先に逃げ出しては話になりません。

韓国の事例を見ます。
韓国は日本に勝ったと言って喜んでいますが(いちいち日本を引き合いにだすんじゃねぇと思いますが)、、たしかに日本は1名、韓国は380名を避難させることに成功しました。

「韓国政府は道義的責任を全うするために現地人職員と家族の韓国入国を推進してきた」と話した。このうち大多数は職業訓練院や病院などにおける医師やIT専門家、通訳者など専門人材に該当するというのが外交部の説明だ。
彼らの移送のために、16日、カタールに一時撤収していた在アフガン韓国大使館職員は22日、再びアフガン・カブール空港に移動して事前作業に入った。
同時に彼らが無事にカブール空港に到着して移送を開始できるように米国など現地友好国との協議を継続してきた。これに関連して崔次官は「軍輸送機は8月23日、中間寄着地であるパキスタンイスラマバードに到着し、8月24日からカブールとイスラマバードを往復してアフガン人を移送した」と明らかにした」(中央8月25日)

https://news.yahoo.co.jp/articles/22ec05b7983f4542ac4492388da0c15a366f0b1a

韓国軍輸送機がカブールに入ったのは8月23日、わが国は24日ですから、そこに大きな違いはありません。
違いが出たのが現地大使館です。
韓国も16日に、外国輸送機を使ってカタールに大使館員を避難させていました。

たぶんここまでは韓国も日本も同じです。
違うのはここからです。韓国は一回カタールに避難させていた大使館員をカブールに呼び戻し、避難作業にあたらせました。
現地において政権が事実上崩壊しているような事態においてはより危険度が高く、時々刻々状態は悪化するわけですから、その対応の指揮をとるべき司令部が必要で、それが大使館です。

今回なら、アフガン政府がいち早く大統領共々逃亡して消滅するという信じがたい状況で、いわば無政府状態でした。
タリバンが市内各所に勝手に検問所を作ったり、政府関係者や外国協力者を家捜をしている状況で、邦人が頼るべきは外交特権を持つ大使館と職員しかいないのは自明でした。
にもかかわらず、大使館が外国に設置されているのは邦人保護のためであるというう大目的を忘れて、日本大使館員は17日には自分だけ逃げたというわけです。
結局、本来邦人保護のためにあるわけではないJICAが、その任務を全部背負って奮闘しました。
JICA職員が邦人と現地スタップの名簿を作り、ひとりひとり安否を問い合わせ、事務所に集合させ、避難誘導して輸送機に乗せわけです。
この無様を通り越して゛人間としての品位すら疑われる岡田隆大使以下12名の大使館員については、帰国次第しっかりと国民の指弾を受けて頂きましょう。

むしろ問題は自衛隊です。
自衛隊は海外活動において、外務省と緊密に連携することを求められています。
先日、「コブラゴールド」という多国間共同訓練がありましたが、目的の一つに海外紛争時の自国民保護があげられていました。
まさにただ今現在アフガンで起きている状況にどんぴしゃの訓練ですが、その時には在タイ日本大使館と自衛隊が緊密に連携しています。

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陸上自衛隊の海外「邦人救出」訓練 タイで軍事演習 コブラ・ゴールド

上の写真で避難民役をやっているのが、アジアや中東、アフリカ各地から集められた120名の大使館員たちです。
たぶんアフガン大使館からも行ったんじゃないですか。なにを学んだのやら。
今回、このコブラゴールド演習が想定したよりはるかに深刻な事態がアフガンで起きたわけです。

コブラゴールドでは、大規模地震が起きたという想定でしたが、政府と現地の軍隊は機能を停止しておらず、自衛隊と緊密な協力関係を作ることができました。
一方アフガンでは、これらの前提がすべてないない尽くしでした。
当該の相手国政府たるアフガン政府がない、協力すべきアフガン軍は雲散霧消、そして苦笑することにはわが日本大使館もない、ときています。
するとどうなるのでしょうか。

まず、ハードルは国内にありました。
自衛隊は海外派遣される場合、外務省の要請という御墨付きがいります。
海外派遣が無条件の武力行使につながらないように厳格な要件が定められているからです。
これが先日も記事にしましたが、自衛隊法84条です。

  1.  当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう)が行われることがないと認められること。
  2.  自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国の同意があること。
  3.  予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。

つまり、自衛隊は邦人避難に当たって、①戦闘行為が起きていないこと、②当該国政府の了解③当該国との連携がなければダメだということになります。
すると、このアフガンなどは全部当てはまりません。
①戦闘は起きており、②当該国政府などどこにもなく、したがって③「当該国の了解と連携」などとりたくても取れないからです。
霞が関官僚に聞けば、自衛隊による邦人救出はできましぇん、外国軍の輸送機に乗って勝手に逃げてくださいませ、でオシマイです。
これが今の日本です。

そこで当初政府が考えたのは民間チャーター機でした。

「イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人らの国外退避をめぐり、日本政府は8月上旬から輸送に向けた準備を始めていた。当初は、海外の民間航空機をチャーターして18日にも首都カブール入りさせ、邦人らを運び出す計画だった。ところが、タリバンが各地の主要都市を制圧していくスピードが想定以上に速く、15日にはカブールが陥落した。民間機から自衛隊機の派遣へと作戦変更を余儀なくされた。
政府が自衛隊機の派遣を正式に決めたのは23日だ。同日午前に開いた国家安全保障会議(NSC)での協議をふまえ、岸信夫防衛相が自衛隊に輸送機の派遣を命令した」(産経8月29日)
アフガン退避、民間機から作戦変更 想定以上にタリバン制圧早く(産経新聞)

しかし、崩壊のスピードがはるかに速く断念。
ここで首相と防衛大臣が、責任はオレが取る、これは緊急避難だ、自衛隊機を出せ、と考えたのでしょうね。(そう国民にストレートに言えば支持率が上がるのに)
これが欧米各国より避難機を送ったのが、10日も遅れた最大の原因でした。

次に戦闘の有無については、そもそも危険があるから自衛隊を送るわけです。
より危険だから自衛隊を送るのに、戦闘があるなしを条件にすること自体がナンセンスです。
これはかつてのPKO5原則の流れですが、本来であれば、現地において政権が事実上崩壊しているような事態においてこそ、在外邦人保護が必要であり、そのために自衛隊は訓練を重ねているにもかかわらず、「戦闘がない」を派遣条件にすること自体がズレきっています。

また、各地で大量虐殺を働いてきたタリバンが支配するカブールに派遣する以上、自衛のための武器を携行させねばなりません。
避難する列に襲撃を受けて、おもむろに憲法9条を印籠から取り出し、控えおろ、平和憲法であるぞ、頭が高い、と言ってもパーンと撃たれるだけのことだからです。
しかし自衛隊に自衛用の武器を持たせねば、といっても障害はいくつもあります。
まずこの邦人避難の場合、その武器使用は田上嘉一弁護士(陸上自衛隊三等予備陸佐)によれば、このようなことになります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tagamiyoshikazu/20210827-00255199

「国民の権利・自由を制限する規制行政(侵害行政)とは異なるため、多くの国において軍隊が実力を行使する行動については法律等で規制を行っておらず、この点が軍隊と警察などの行政機関との根本的な差異となります。
自衛隊の行動には、防衛出動以外にも治安出動や海上警備行動といった警察権の行使としての行動もあるため、その手続・要件・効果などについては法律で規定する必要がありますが、在外邦人保護や在外邦人輸送については、国際法に則って行えば足りるので、国内法で規定しなくても構わないということも十分考えられるのです」(田上前掲)

田上氏は国内と違って海外の邦人保護には国内法を適用することはおかしく、国際法の既定でかまわないとしています。
まったく正論ですが、現実にはこのような割り切り方をせずに、国内の時の政局で決めてしまった5原則やら3原則を持ち出して縛っています。
するととうなるのでしょうか。中途半端になるのです。
今回の1名の邦人だけしか救出出来なかったのは、退避を求める人たちが空港に着いておらず、退避希望者を運び出すことはできなかったためです。
避難を希望する邦人の多くは、空港外の市内のJICA事務所に集まっていましたが、そこまで自衛隊が救出の手を差し伸べることができなかったのです。

「政府は現地で車両を手配し、輸送対象者らの検問突破を試みたが、26日にはカブール空港付近で自爆テロが起きるなど、空港周辺の治安は悪化していった」(産経前掲)

ここで再びなぜかを問いましょう。

それは自衛隊法84条の4の「当該輸送を安全に実施することができると認める」ことが求められるからです。
さらにそれを政治決断で乗り越えたとしても、今度は隊員の武器使用要件が警察官職務執行法第7条に準用されている現実にぶつかります。
正当防衛、緊急避難に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならないとされていることから、派遣隊員が適宜適切に武器使用が出来ず、自身や保護している邦人等を不必要な危険に曝しかねません。
そもそも自衛隊法84条の3には「邦人救出」が明示されていないために、大使館やJICA事務所に避難して動きがとれない人たちがいたとしても、助けに行くことができないのです。
あくまでも「空港に自力でたどり着いた人」だけが救助対象となるにすぎません。

そのため、今回のように奇跡的にあの避難民で塞がれた道路をくぐり抜けて空港にたどりついた人だけを自衛隊輸送機に乗せることができるわけで、空港までのもっとも危険な道程の保護を自衛隊はすることができませんでした。
もちろん自衛隊は外務省と違って、その能力も気概も装備も備えています。
避難誘導隊も設置され輸送用の特殊専用車両もオーストラリアから購入済みです。
しかし今回は部隊は出ましたが、この輸送専用車は投入されませんでした。
なぜなら、自衛隊はカブール市内に行くことをあらかじめ禁じられていたからです。

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自衛隊が邦人保護訓練 タイ中部、米軍と連携確認

私は、この問題を憲法改正論議と絡めるべきではないと思っています。
もちろん占領軍憲法がその源なのは明らかですが、改憲を待っていては国民が死ぬからです。
今後、このアフガン事件に似たことが世界各地で起きるでしょう。
それはテロリズムがタリバンのアフガン制圧で、間違いなく上げ潮期に入ってしまったからです。
ISISは蘇り、各地でテロを働き、その都度大量の避難民が出ます。
不安定そのものの韓国だって、いつどうなるのかわかりません。
鈴置氏が予言するような韓国政府崩壊などになった場合、どうやって邦人を救出するのでしょうか、その救出対象は数万人ですから。
あるいは台湾に中国か進攻したら・・・。

今回のことを教訓にしましょう。

 

※ かき氷に飽きたので、記事のデザインを変えました。

 

 

                                                  

2021年8月29日 (日)

日曜写真館 ひとかどに祭太鼓の打てるなり

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滯りては町筋を山車がゆく 清崎敏郎

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はるかなる祭囃子に腰浮けり 能村登四郎

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帰る気になかなかならず山車に従き 稲畑汀子

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夕ごころまだ定まらず夏祭 角川源義 

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冷めがての飴はびいどろ夏祭 林翔 和紙

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夏祭その夜ちか星と月照れり 山口誓子

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山車通りゆきたるあとの人通り 清崎敏郎

今年も夏祭りはありませんでした。祭りは地域の伝承なので、2年切れると心配です。

 

2021年8月28日 (土)

なぜカブール空港で自爆テロが起きたのか?

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カブール空港で大規模な自爆テロが起きたようです。
これまでにわかっているだけで、米兵13人と、アフガン人少なくとも60人が死亡しました。
タリバン兵60人も死亡したとタリバンは発表しています。
またテロは、空港のアビーゲートと市内のバロン・ホテルの2カ所で起きたようです。
心配されていた事態でしたが、現実のものとなりました。
死傷者が100人を超えたという情報もあり、時間を追うごとに増加しています。

米国防総省のカービー報道官は26日、アフガニスタンの首都カブールの国際空港の周辺で少なくとも2回の爆発があったとツイッターで明らかにした。米兵を含めて60人超が死亡したとの報道がある。CNNテレビによると、バイデン政権は自爆攻撃の可能性があるとみている。
カービー氏によると、1つ目の爆発は空港の入り口の一つである「アビー・ゲート」付近で起きた。国外退避を望む多くのアフガン人らが集まっていた場所だ。
アビー・ゲートから数百㍍の距離にある「バロン・ホテル」の敷地内またはホテル周辺でも爆発が起きた。バロン・ホテルは外国人の利用が多いとされる。米軍は19日、ヘリコプターを使って同ホテルから169人の米国人を空港に移動させていた。
カービー氏は声明で「多くの米兵が死亡した。多くの米兵が負傷し、治療を受けている」と説明した。複数の米メディアによると、少なくとも米兵4人が死亡、3人が負傷した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは少なくとも60人のアフガン人が死亡したと報じた。
米国の在カブール大使館は26日、米国人に対して「空港への移動を避け、空港の入り口付近からも離れるべきだ」と米国人に勧告した。実行犯は明らかになっていないが、バイデン米政権は過激派組織「イスラム国」(IS)系のイスラム国ホラサン州(IS-K)が空港やその周辺でテロを起こす恐れがあると警戒してきた」(日経8月26日)
カブール空港周辺で爆発、60人死亡か 自爆攻撃の可能性: 日本経済新聞 (nikkei.com)

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 日経

日経の記事にあるアビーゲート付近には、避難民がまさにびっしりと道路を覆い尽くしていたようです。
CNNが写真を出していますが、これでは車両どころか人も通行できません。

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CNN.co.jp : ISIS系、カブール空港へのテロ攻撃を謀議か 米分析

米兵はこの道路の先で空港に入場させる人を検問していて、自爆テロを仕掛けられました。
自爆テロは元々最も防御が大変に難しいテロですが、このようなごった返す群衆に紛れ込まれると打つ手がありません。
上と下の写真はほぼ同一の場所のようです。
ここで一挙に80名以上の方が生命を失いました。その中には多くの女性と子どもも含まれているようです。

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AFP
謹んでご冥福をお祈りします。

上の写真のように密集した群衆が道路を封鎖してしまったために、外国人の避難が不可能になりつつあります。
邦人1名が退避に成功し、「極く少数」がまだ現地に残されているようです。
自衛隊の任務は昨日夕方で終了と決められていたために、脱出させられたのは1名となります。

「政府は27日、アフガニスタンからの退避を希望する邦人1人を首都カブールの国際空港で自衛隊機に搭乗させ、隣国パキスタンへ輸送した。今回の自衛隊機の国外退避任務による初の退避となる。現地に派遣していた自衛隊輸送機と政府専用機計4機は、状況の変化に備えて周辺国で待機させる方針だが、28日には空港を警備する米軍が撤退作業を本格化させるため、現地大使館や国際協力機構(JICA)の現地スタッフ、その家族らの退避は困難な模様だ」(8月27日毎日)

この昨日夕方の日本人を乗せた自衛隊機が最終となり、国外退避任務にあたっていた自衛隊員は任務を終え、現地を離れました。
27日は、これ以外にも自衛隊の輸送機がカブールからイスラマバードまで日本に関係するアフガニスタン人の退避を行ったということです。
自衛隊輸送機は近隣国の空港に留まって、状況の変化に備えるとのことです。
ただ、いうまでもありませんが、
自爆テロが起きてしまった結果、いっそう脱出は困難になることが明らかです。
大部分の邦人が脱出したという情報もあり、実態はよくわかりません。

「政府は15日にイスラム主義組織タリバンがカブールを陥落させたことを受け、17日、大使館の日本人職員12人を英軍機でアラブ首長国連邦(UAE)に退避させたが、ごく少数の邦人のほか、大使館、JICAの現地スタッフが取り残された」(毎日前掲)

大使館員12名は英軍輸送機で早期に撤退しており、残された邦人を集合させた場所はJICA事務所、避難指揮もJICAがあたっています。
こういう時に陣頭指揮にたつべき岡田隆大使以下の現地外務省職員が真っ先に逃げており、政府もカブールの状況が把握できていないようです。
それにしても,最後まで情報を送り、邦人保護の指揮に当たるのが大使館の役目だと思っていましたが、私の勘違いのようです。
それはさておき、現地にいまだ残されている邦人と現地スタッフが無事脱出できることを心からお祈りします。

また諸外国が脱出作戦を開始したのは、カブール政権が崩壊し始めた12日前後の頃からで、わが国の脱出作戦はそれから10日も遅れています。
派遣要件に、「現地政府の了解と連携」という非現実的な法制約があったからです。
結局は、首相と防衛大臣の決断で自衛隊輸送機が送られたのですが、この結果を見ると遅きに失した恨みが残ります。
今後これらの不具合を修正し、現実に対応できるものに変えねばなりません。

さて米国はこの事態を受けて、空港とつながる代替道路を作ろうとしているようです。

「(米国防総省筋は)代替の進入経路は国外避難を急ぐ米国人、外国人や資格要件を満たしたアフガン人に提供されるとした。8略)
代替経路の計画ではタリバンと協力し、人々の集まりを分散させ、大規模な群衆の出現を阻止するなどとしている」(CNN8月22日)
CNN.co.jp : ISIS系、カブール空港へのテロ攻撃を謀議か 米分析 

事態をいっそう複雑にしているのは、この自爆テロの実行犯が反タリバンの「ISIS―K」と呼ばれる過激派のようだということです。
ISIS-Kはこのような組織のようです。
※いままでISと表記していましたが、ISISに統一しました。

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Inside ISIS-K – Taliban's 'sworn enemy' who kill babies & raise 

ISIS -Kは、アフガニスタンとパキスタンで活動しているISIS (またはいわゆるイスラム国)グループである。‎
彼らは、アフガニスタンにおけるすべてのジハード主義武装グループの中で最も極端で暴力的である。‎
‎2015年1月、イラクとシリアにおけるISの権力の絶頂期に設立され、自称カリフ制が米国主導の連合軍によって敗北した際に解体された。‎
彼らは、アフガニスタンとパキスタンのジハード主義者、特に自分の組織に満足しないアフガニスタンのタリバンの両方から戦闘員を募集している。
このISIS-Kの「K」はアフガンやパキスタンなどの地域を含むとするKhorasan(ホラサン)を意味する。
ISISとはイデオロギーや戦術を共有するが、組織面や指揮系統、管理面でどのていど密接な関係にあるのについては全面的に解明されていない」(BBC 8月27日)
Afghanistan crisis: Who are Isis-K? - BBC News

ISIS -KのKはホラサン( Khorasan ) を意味し、アフガニスタン、パキスタン、イラン東部にまたがる一帯の歴史的な地名で、現在の国境線を否定するISの思想に沿った名称です。
別名として「IS-K」「ISIS-K」「ISIL-KP」「ISKP」など、さまざまな略称で呼ばれています。
つまりISISにすら飽き足らない極左グループで、彼らはタリバンをすら甘いと非難し続け、彼らを浸食して拡大してきたようです。
今回の自縛テロでも、米軍の検問以前に何カ所かタリバンの検問所も通過しなくてはならず、その際に腹にまいた大量の爆弾が発見されないのが不思議です。
おそらくは、タリバン兵の中に複数のISIS―Kの協力者がいたと思われます。

ISIS―Kは昨日の記事でも書いたように、タリバンの指導者が外国と協議のテーブルを囲むことすら批判します。
それが薄汚い取引だというのです。
ですから、ISIS -Kはウィグルやパキスタンなどの周辺国に対して攻撃の手を緩めず、タリバンさえ攻撃対象と見なします。

「イスラム国からみるとタリバンは、敵であるアメリカと交渉し、取引をした。これだけでタリバンは、イスラム戦士の風上にも置けない腰抜け野郎となったわけです。
とうぜん、タリバンはISIS -Kを敵と見なして攻撃しているようです」(飯山陽note8月27日)

それに対してタリバン側も猛然と反撃し、双方は激しい戦闘も交えていたようです。

‎「(アジア太平洋財団のサジャン・ゴヘル博士は)、ISIS-Kはタリバンと大きな違いがあり、カタールのドーハの「豪華なホテル」で打ち出された交渉による和平解決を非難し、ジハードと戦場を放棄したと非難している。
‎ISの武装勢力は現在、西側情報機関が情報を共有しようとしているタリバン政府にとって、大きな安全保障上の課題を表している」
(BBC前掲)‎

「イスラム国は基本的にどの国の当局とも協力しないし、国際社会から承認されようなんて全然思っていない。一方アルカイダ系は、国家当局と協力関係をもったり、国際社会から承認されようと小細工をするのです。
後者の代表がタリバンやシリアのHTS、ムスリム同胞団やハマスもこっち系です」(飯山前掲)

このゴヘル博士が言う「タリバンと西側情報機関筋の情報共有」とは、この代替ルートの設定も実はタリバンとの協議の上での一定の協力関係が水面下で成立していることを指しています。
ですから欧米の撤退作戦は、タリバンとの了解関係の下に行われており、ISIS -Kはタリバンのメンツを潰したことになります。

「撤収期限の8月末が迫るなかで米国は、タリバンとの間で、外交団や軍のレベルで「日常的な連絡態勢」(国務省)を構築した。
背景には、「脱アフガン」を円滑に進めたい米国側と、外国勢力を国内から排除して早期に支配を確立したいタリバンとの利害の一致がある。タリバンとしては今後の政権運営をにらみ、米欧に恩を売る狙いもあるとみられる。タリバンがアフガン人の出国を認めないとするなど両者の隔たりは大きいとはいえ、限定的な協力関係が生まれているといえる」(産経8月27日)
アフガン自爆テロ IS―K、米タリバンの〝信頼なき協力〟標的 - 産経ニュース (sankei.com)

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ISIS -K の自縛テロ犯人

では、なぜISIS -Kはこのような自縛テロを働いたのでしょうか。
たぶん米軍にもっとアフガンに居て欲しいからです。
そのためには撤退作戦で米国と手を結んでいるタリバンのメンツを潰し、バイデンに撤収時期を未定にさせることです。
なにを言っているんだ、タリバンらは米軍をアフガンから追い出すために戦ってきたのではないか、と思われるかもしれませんが、ISIS -Kは違うのです。

ISIS -Kの目標はあくまでも「イスラム法の実現」であって、タリバンが望む「アフガ ニスタンイスラム首長国」などというものの成立ではありません。
第一、ISIS -Kは大部分が非アフガン人であって、アフガンイスラムなんじゃら国などはどうでもよいのです。
大きな理想の為に戦ってきて、ここでオシマイですか。冗談ではない。
大悪魔たる米国と日々戦うたとこそがジハードなのに、目の前から急にいなくなったら困るじゃありませんか。

大悪魔の米軍がいさえすれば、タリバンの日和見野郎もまた目を覚まして戦列に加わらざるをえないところまで追い込める、とまぁISIS -Kは考えているのかもしれません。
そのためにタリバン指導部と米国の癒着を罰するのだぁ、ざまぁみろ、とこんなところかもしれません。
ですから、ほんとうに叩きたい相手は米軍ではなく、タリバンのほうなのです。

ところでこの自縛テロを受けて、バイデンは米軍の撤退作戦に追加投入をすると言い出しました。
ついでに報復もするそうです。

「バイデン氏は、軍による民間人の避難計画は続けるとし、必要に応じてアメリカ兵を追加で派遣する考えを示しました。さらに8月31日を過ぎてもアメリカに協力したアフガニスタン人を国外に避難させる支援は続けると強調しましたが、今月末の軍の撤退期限を延長するかどうかは明確には言及しませんでした[(8月27日TBS)

こんなことを言い出すくらいなら、初めから秩序正しい撤退をすればよかった、などといってももう遅い。
結局、英国などの猛反発を受けて31日の撤退期限を先延ばしにするのでしょうが、また自爆テロでも起きて多くの米兵が亡くなるようなことが起きれば追加報復をせざるをえなくなり、結局撤退そのものの見直しまで検討せざるを得なくなるかもしれません。
見通しが甘いからこうなるのです。
いまやるべきは撤退の延期と、大規模な米軍投入しかありません。
誰だ、この眠い男を「トランプより外交がうまいので安心感がある」なんておだてていた奴は。

一方タリバンは勝利宣言を出して、政権を樹立して国際社会の承認を得ようとしていますが、彼らが国家の実効支配を宣言するにはISIS -Kなどの跳ね上がりを撲滅して、治安を安定させねばなりません。
さもないと、タリバンの勝利宣言が偽りで、アフガン戦争が継続していることになってしまうからです。
いままでさんざんテロ攻撃を仕掛けてきた側のタリバンに、果たして治安維持の能力があるのかどうか見物です。
その最初の試金石として、この空港自爆テログループであるIS-Kを摘発し、残る避難民の安全を確保してみせねばなりません。
これは米国の利害にも重なります。

誤解をおそれずに言えば、この自爆テロによって米国とタリバンは共通の敵を持つことができたともいえるわけです。
その結果、米国はISIS-Kへの報復、タリバンは仇敵の一掃と秩序回復という一点で水面下で手を結ぶことになるでしょう。
米国がやりそうなことは、少数の特殊部隊を潜入させての報復ですが、もちろんタリバンはそれを黙認することになります。
といっても地方が勝手に動いて統制がとれないのがタリバンですから、うまくいくかどうかはわかりません。
もちろん双方ともそんなことは口が裂けても認めないでしょうが。

誰が敵で誰が味方かわからない、敵とも手をつなぎ敵の敵を撃とうとすると背中を撃たれてしまう。
まるでカオス。これが帝国の墓場たるアフガンのゆえんです。

 

2021年8月27日 (金)

タリバンは必ずウィグル過激派を支援する

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今、表面的には蜜月のように見えるタリバンと中国との関係は、今後どうなるのでしょうか。
短期的には、国際社会で唯一の庇護者を任じる中国とタリバンの関係はうまくいくはずです。
ただし、これが中長期的なとなると、話は別物です。

というのはタリバンは、本質的にイスラムによる「世界革命論者」だからです。
いやタリバンは「イスラム神学者」だという人がいますが、それは間違いです。
かれらに解釈のための神学などありません。
飯山陽氏によれば、 タリバンのイスラム法とは「神が定めた法を地上に無前提で実現すること」です。
無前提ですからイスラム法とそれを実現しようとする自らは絶対善であり、現代の民主主義と考え方が違っていても歯牙にもかけないだけのことです。

「なぜならイスラム法は神の法で、立法者も主権者も神だからです。
人間には立法権も主権もありません。人間は神が定めた法に、ただただ従うだけです。
神が定めた法を解釈したり、実際の事案にどの規定をあてはめるべきか、またイスラム法の観点からどう採決を下すべきかを判断するのがイスラム法学者です」(飯山陽note 『タリバンが民主主義を否定」の真意』8月20日)

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BBC

したがってタリバンが考えるイスラム法は、あらかじめ神が定めたもので、民主主義によって多数決で決めるものではなく、ましてやその時その時の情勢で変化などしてはならないのです。
今日本のメディアではタリバンが穏健になった、変わったなどと言う「専門家」で溢れていますが、反米=善という図式に囚われているだけのことです。
やがて彼らが変わったかどうか、その目でわかるはずです。
タリバンはイスラムの教えは唯一絶対である以上、いかなる他宗教も認めず、世界の果てまであまねくイスラム法によって支配し、邪教を信じるものたちを滅ぼさねばならないと考えます。
これが私が、タリバンをイスラム教の「世界革命論者」だと呼ぶゆえんです。

このような本質的性格を持つタリバンにとって、世界一貪欲な唯物論者の中国とうまくやれというほうが無理筋です。
両者はまさに南極と北極くらい離れた対極の存在で、タリバンにとって中国ほど理解を超えた国はないはずです。
まだしも、キリスト教原理主義を国の出発点に持つ米国のほうが理解の範囲内かもしれません。
具体的には、いままでタリバンが勢力を植えつけてきた周辺国の「もう一つのタリバン」との関係が焦点になります。

おそらく二つの考え方がタリバンの中に存在しているはずです。
ひとつは、当然周辺国のジハードを支援を堅持すべしという考えで、とりあえずジハード(聖戦)派と呼んでおきます。
今ひとつは、いや今は中国とことを荒立てるべきではないとする一派で、これも暫定的にカブール派と呼びます。
ジハードを強く主張するのは、タリバン内のアルカイダやISで、後者はカブールにいる指導部です。

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解説】 タリバンとは何者か 米軍撤収のアフガニスタンで復権 - BBCニュース

アルカイダやISはニュースにならなくなっただけのことで、タリバンの中に匿われていまだ健在です。
タリバンとアルカイダの関係は、アルカイダの首領であるビンラディンを匿ったことから関係が続いており、タリバンは彼らを自らの一部にしています。

タリバンは権力を奪うと直ちに刑務所に入っていた元副指導者マウルビ・ファキル・ムハンマドを含む780人と戦闘員2300人を解放し、アフガン東部の拠点に向かわせました。
囚人の多くは、米軍が苦労して逮捕したIS系、TTP、アルカイダ系の指揮官、幹部クラスです。
奪還されたこれらの指導者たちが、再びジハードを命じるであろうことは疑問の余地がありません。
その場合、中国と米国がその最初の攻撃対象になるでしょう。

たとえば、中国が名指しでタリバンに関係の清算を迫ったウィグルの過激派「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」はアルカイダ系だと言われています。
アルカイダからすれば、タリバンが王毅となにを約束しようと知ったことではありません。

というのは、そもそもタリバンは一枚岩ではないからです。
タリバンは、中央本部で意思決定してそれを下位の支部に通知するような近代的上意下達システムを持ちません。
彼らは砂漠に点在する部族単位のゲリラの連合体にすぎません。
近代的政党でも軍隊でもないのです。
いちおう上図のような指導部組織があることはありますし、たぶん国家形態らしきものを作るでしょう。
それはイランなどと一緒で、ナントカ大臣という肩書のテロリストらが雛壇に並ぶわけです。
もちろん、それを私たちの知っている近代国家のそれにあてはめるのは間違です。

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タリバンには、パシュトーン系タリバンもあり(これが主流ですが)、タジク系タリバンやハザラ系タリバンもいます。
それらが別々に支配地域を持っていて、さらにそのほかにアルカイダとかISもいるのですからややっこしい。
その意味で、「タリバン」は正確には「タリバンズ」と複数形で呼ぶほうがふさわしいのではないでしょうか。

その中にアルカイダやISといった外国人タリバンも拠点を持っていて、独自に活動を行っています。
アルカイダがウィグルでの活動を休止したように見えたのは、タリバンの制止が効いたからではなく、アルカイダが米国によって集中攻撃を受けたために活動ができなくなっていただけにすぎません。

しかもカブール政権を倒すまでの内戦で、タリバンはアルカイダやISの力を借りてしまいました。

「タリバンは、戦場での勝利を上げ、領土を拡大し、最終的にはアメリカの軍隊撤退をきっかけにカブールのアシュラフ・ガーニ大統領の政府から権力を握るために様々なテロ集団に頼っている」(アジアタイムス8月5日)タリバンは反中ETIMとの関係を容易に断ち切らない - アジアタイムズ (asiatimes.com)   

こうして復活した彼らは、さらに刑務所から指導者と戦闘員を奪還して、もはや引き止める者は誰もいません。

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東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)

またタリバン自身も、タリバンの支部をパキスタン領内に持っています。
いや支部というより、こちらが本家かもしれません。
なぜならバキスタンこそタリバンの生まれた土地だからです。
パキスタンには分断されているとはいえ、アフガン・タリバンと同属のパシュトーン族が多く暮らしていてテヘリーク・エ・タリバン・パキスタン(TTP) というゲリラ組織も活動しています。

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いまさら聞けない、マララ・ユスフザイについて知っておくべき12のこと


「パキスタンはまた、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)と並び、タリバンがアフガニスタンで政権を握っていた時期にそれを承認した3カ国の1つでもある。タリバンと外交関係を解消したのは、パキスタンが最も遅かった。
タリバンはある時期、パキスタン北西部の支配地域から、同国を不安定な状態に陥れると脅したことがあった。パキスタンのタリバンによる攻撃の中でも、大きな注目と国際的な非難を集めたのが、2012年10月にミンゴラで帰宅途中だった女子生徒マララ・ユサフザイさんが襲われた事件だった。
その2年後には、ペシャワールの学校で集団殺害を起こし、米軍などによる大規模な軍事攻撃が実施された。それにより、タリバンのパキスタンでの影響力は減少した。2013年にはパキスタンのタリバンの主要人物が少なくとも3人、米軍のドローン攻撃で殺された。うち1人はハキムラ・メスード指導者だった」(BBC2021年8月16日)

これらの組織と縁を切るように、王毅がタリバンに強く求めているのはよく知られています。

「中国政府がより大きな中央アジアの接続性のためにアフガニスタンに拡大しようとしている600億米ドルの中国・パキスタン経済回廊(CPEC)プロジェクトを含む、隣国パキスタンにおける中国の利益に対する新たな攻撃を開始するグループの一部として、その圧力が高まっている。
中国は特にETIMを「国家安全保障に対する直接的な脅威」と見なしている、と王毅外相は最近の会合でタリバン代表団に語った。中国西部新疆地域の不安定化に屈した過激派組織は、パキスタンにおける中国の利益に対する脅威でもある」
(アジアタイムス前掲)

タリバンは表面的には関係を見直すとは言っているものの、タリバンは常習的嘘つきです。
彼らにとって異教徒に対する嘘は武略ですから、いまは中国と手を結びたい時期だから彼らが喜びそうなことを言っているていどのことです。
先ほどから見てきている通り、アフガンタリバンのトップがなにを中国と合意してこようと、アルカイダやISは知ったこっちゃないというのがここの特質です。
 

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ETIM戦闘員

ETIMとTTPの主力部隊は、現在、アフガン内に聖域を持っており、アフガンの北東部と南西部で拠点を置いています。
ちなみに、アフガンとパキスタンやウィグルとは陸続きで、自由に行き来出来ます。
パキスタンタリバン指導者の1人で最強硬派グループ「ハッカーニ・ネットワーク(HQN)や、パキスタン・タリバン運動(TTP)などがジハード(聖戦)主義を捨てることはありえません。

タリバン政権に座る現実派指導部から見れば、ETIMとTTPのようなジハード派は危険な跳ね上がりにみえるでしょうし、逆に彼らからみれば、政権で大臣を名乗っているような奴らは、ウィグルの人々にイスラムの教えを捨てることを強要する中国共産党と同類の輩と写ることでしょう。
この現実派とジハード派の対立はまだタリバン政権が始まったばかり(
というかまだなにも始まっていない)だから見えにくいだけで、本質的に分裂は避けられないことなのです。

ところで、中国はこの野に解き放たれた狼たちをどうする気でしょうか。
おそらく繰り返しタリバン指導部に関係を絶つたとを要求しつづけることでしょうが、タリバンは馬耳東風。
だって下まで統制が効かないもん。同じタリバンと名乗っても別組織だもん、ってなもんです。、
表面的には取り締まりを約束しても、そんな統制力はないし、現実派だって内心は中国の無神論者どもなどくたばってしまえと思っているはずですから。
今は仕方なく共産党と手を握っているがそれは方便。ジハード派のほうがはるかに「正しい」と考えていますから、ヌカに釘、暖簾に腕押しが続くことになります。

ジハード派はアフガン領内やパキスタン国内で、中国の権益を攻撃するかもしれませんが、その時中国が怒りに任せてタリバン相手にいつもの「戦狼」の片鱗でも顕せばどうなるのか、大変に楽しみ、いや興味深いことではあります。
私はアフガンに次の「帝国の墓場」ができるほうに賭けます。
お次は中国の番です。

 

 

2021年8月26日 (木)

馬鹿が始めて、馬鹿がめちゃくちゃにしたアフガン戦争

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一回アップしましたが、都合で落とした記事です。大幅に加筆修正してあります。

どの国が最初にタリバン国を承認するかと言われていますが、当然あの国しかいないでしょう。
もちろん今回の崩壊劇のプロデューサーだった中国です。中国はトンビが油揚をさらった気分でいます。
ロシアも続くことでしょうが、もう少し高見の見物をしてからにするかもしれません。
欧米は絶対にタリバン政権を承認せず、米国のようにアフガン政府の資産凍結と支援停止をします。
ドイツなど1セントたりとも出すか、と言っているようです。

それにしても世界が驚愕したのは、一晩でカブール政権が崩壊し全土制圧されてしまったということです。
私たちは、公称30万人の兵力を抱えたアフガン政府軍が一瞬にして消え失せてるマジックを見させられたんですからね。
それも大規模な戦闘があればまだしも、ろくに戦いもしないで消滅です。
常識的に言って、いかに腐り切っていたとしても、30万の大軍が一晩で蒸発してしまうとは考えられません。
30万と一口でいいますが、ヨーロッパのどの軍隊より大きく、もちろんわが国の日本の自衛隊よりも大きいのですから、ウソだろという気分にもなります。

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アフガン治安悪化を懸念 政府軍の能力不足指摘―米司令官:時事ドットコム

いちばんウソだろうと思っているのは、当の米国政府です。
米国はアフガンに米国型民主主義を築こうとして、2兆ドル(200兆円!)以上の支援を投入し、大量の武器を与え、政府軍兵士を訓練しようとしました。
これはかつての南ベトナム支援を上回る規模で、ここには南ベトナムにはしなかった地下資源の開発でメシが食えるようにする経済計画まで含まれていました。
まったく余計なお世話で、そんなことでまともな民主主義国家が生まれる道理がないのは、かつてこの国に徹底した国家改造をされた経験がある日本人ならわかります。
日本でまがりなりとも米国型民主主義が出来上がったのは、明治から一貫してヨーロッパ型民主主義国家だったからにすぎません。
それを砂漠に点々と都市があるだけの、ケシ栽培以外まともな産業がない部族国家相手にやってうまくいくわきゃありません。
この不毛な戦争を始めたブッシュジュニアは、「我々は日本で民主主義を成功させたから、今回も成功する」なんてトンチキなことを言っていましたが、バカですか。

とうぜんのこととして、いつまでたっても民主化と安定化はいっかな進まず、米国の富と若者の命だけが虚しく費消されていきました。
そこで10年前になって時のオバマ政権は、店じまいを決めたのですが(その副大統領が誰あろうバイデンだったことをお忘れなく)、撤退するといってもここまで深入りすると容易なことではなく、ズルズルとした状況だけが続きました。

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 NW

「アフガニスタンでは治安部隊は戦場での証拠集めに忙しい。武器、空になった弾丸ケース、簡易爆発物(IED)の部品、文書、携帯電話、爆薬を使った痕跡......。反政府勢力の戦闘員を拘束して裁判にかけても証拠がなければ有罪にできないからだ。しかも身柄を拘束しても、賄賂で裁判の前に自由の身になることが珍しくない」(ニューズウィーク2017年9月9日)
米軍アフガン増派、「勝利なき戦争」という大誤解|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

まさにアフガンは、米国の抱える回収不能の不良債権そのものとなっていたのです。

これに目鼻をつけようとしたのがトランプ政権でした。
彼一流のビジネス感覚でアフガン派兵をサンクコスト(回収不能資金)として割り切り、いかにそれをソフトランディングさせるかに心を砕きました。
トランプはアフガンの泥沼から足を抜き、2期めは全軍事力を対中軍事作戦にシフトする気でした。
そのためにタリバンと和平協定を結び、彼らが違約すればすぐにお仕置きをするといった硬軟取り混ぜた秩序ある撤退を完了しようとしていました。
ところが、あろうことかトランプが大統領選で「敗北」しバイデンに替わると、この協議は空文化してしまいました。

本来は、いかに政権が替わろうと、前政権が取り交わした協議の上にバイデンは撤退を進めるべきだったものを、タリバンや現地政府にも計らずに、今まで共にアフガンで戦ってきたNATO諸国とも協議をしないで、ひとり勝手に「夜逃げのような撤退」を進めてしまったのです。
米軍主力はさっさと逃げてしまい、取り残されたカナダ軍や英軍は怒り狂っています。

特に今まで米国と緊密な連携を取っていると思ってきた英国は怒り心頭です。

「ジョー・バイデン米大統領は、火曜日のG7首脳のリモート会議で、人道的空輸が8月31日を超えて続くという英国からの嘆願を拒絶した。
英国保守党議員は、「特別な関係」が終わり、米英関係は「スエズ以来最低になろうとしている」と主張し始めた。
ある英国大臣は、「バイデンのアメリカは自分たちの逃げの算段がついたら、途端に撤退することを選択したようだ」と発言した」
(ガーディアン8月24日)
UK evacuation from Kabul to end within ‘24 to 36 hours’, defence sources say
https://www.theguardian.com/world/2021/aug/24/us-has-no-plans-to-delay-afghanistan-exit-beyond-31-august-pentagon-says

この英国の怒りは、米国が数千人の本来保護すべきアフガン人らを避難させずに逃げたことに対して、英国が8月31日の撤退を延ばすように要請したことをバイデンが一蹴したためです。
このガーディアンの記事は、議員らが「スエズ以来最悪の裏切り」だと言っていると伝えていますが、それはかつての1956年のスエズ動乱において、米国が土壇場で英仏を裏切ってソ連と手打ちしてしまったことを指しています。
今回の背信行為も英国は事前になにも知らされておらず、同盟国との協議ひとつしない一方的撤退であっただけに、バイデン政権に対する不信感として後々まで響くはずです。
英軍やカナダ軍は、アフガン人保護のために8月31日を過ぎても保護活動を継続するでしょうから、仮に両軍に死傷者がでるようことにでもなれば、両国関係は最悪になるかもしれません。
日本だって、アフガン復興のため20年間にわたり約68億ドル(約7500億円)も支援してきたのですから、バイデンに厭味のひとつも言う資格があります。

「本来は、軍の撤退前に、米政府関係者や在留米国人、米軍協力者の国外退避を完了させる。それなのに、バイデン氏が「米国史上最長の戦争を終わらせた大統領」という勲章欲しさに急がせたため、約1万5000人の米国人と、約10万人のアフガン人協力者を置き去りにした。虐殺の危険がある。
 駐留米軍の撤退作業は5月から本格化した。バイデン氏は「8月末には撤退完了」と内外に公言し、タリバンに作戦の詳細を教えてしまった」(加賀孝英8月25日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210825/for2108250002-n1.html

今、米国議会ではバイデンを公聴会に召喚し、辞任を求める動きまででていますが、クビにされて当然です。
一瞬で20年間の努力を灰にし、山賊まがいのタリバンごときに完全敗北し、あまつさえ保護すべきアフガンの協力者を置き去りにして、同盟国との関係を最悪にしたのですから。

そのうえバイデンは「自分の国を守る意志がない国は助けない」などと言わずもがなのことまで言ってしまい、同盟国を更に不安におとしいれてしまいました。
わかりきったことを言うんじゃないよ。安定した同盟関係を復活させるというのが、この人の最大の外交公約だったはずでしょうに。

馬鹿が始めて、馬鹿がめちゃくちゃにしたのがこのアフガン戦争だったようです。
大統領たる資質を持つかどうかを問わず、トランプ憎しだけで大統領選をやるからこうなるのです。
どこかの国の知事とご同類です。
私はこの無能な米国大統領をデニー・バイデンと呼ぶことにしました。

それはさておき、この期を見逃す手はないと見たのが中国でした。
中国はアフガン撤退の後に米国が中国と全面対決に入ることを予想していました。
そこでそうはさせじと大きな打撃を米国に与えることを考えたのです。
それがタリバンのアフガン全土掌握というカードでした。
米軍撤退と聞いて浮き足だつ政府軍を地方都市から攻め上げて支配関係を逆転させると、一気にカブールまで落としてしまったのは、私たちが見てのとおりです。

下の写真はフォトショップで作ったのではなく、本当にタリバンがネットで流しているものです。
硫黄島と並べて米軍装備で身を固めたタリバン兵が彼らの旗をこれ見よがしにひるがえしています。
米国も小馬鹿にされたものです。

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ところで、バイデンは8月一杯の撤退公約にしがみついた時は30万人の兵士がいるゾと盛んに強調していました。
素人がそう思っているだけではなく、軍トップの統合参謀本部議長のマーク・ミリーまでが、「アフガニスタン軍には国を守る能力も装備も規模もあったのに失敗したのはリーダーシップの問題で、私を含め誰が11日間であの規模の軍隊が崩壊すると予想できるだろうか」なとと、マヌケなことを言って恥をかく始末です。
誰かミリー将軍に、アフガン軍は今やカブール空港で米軍と共に警備に当たっている500人だけだ、と教えてやらなかったものなのでしょうか。

自分の国以外はまともな報道をすることもある韓国中央日報は、こう報じています。

「ワシントン・ポストのファクトチェッカーは実際にアフガニスタン軍が30万人だったならNATO加盟国のうちトルコに次いで多い水準なのは正しいと評価した。 しかしこれは軍人と警察を合わせた数字である可能性が高いとみた。 英シンクタンクの国際戦略問題研究所(IISS)の今年の報告書ではアフガニスタン政府軍の規模を17万8800人とみた。陸軍が17万1500人、空軍が7300人だ。 ここにアフガニスタン国家警察と呼ばれる組織が9万9000人で、これを含めて30万人と指定したということだ。 警察とはいうが地域武装勢力だ。装備と訓練が足らず、安全な地域ですらまともに役割を担えない水準だったとIISSは分析した」(中央8月19日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9840bd051551aaaa606fd511fc61ee44c25a90e0

つまり、バイデンが信じた「公称30万」とは、英シンクタンクの国際戦略問題研究所(IISS)の今年の報告書によれば、アフガニスタン政府軍の規模を陸軍が17万1500人、空軍が7300人、ここにアフガニスタン国家警察と呼ばれる組織が9万9000人を足して総計で30万人という計算が根拠だったようです。
警察と言ってもまともな訓練も受けない地域軍閥の私兵で、その中には多くのタリバンさえ含まれていたようですからアジャパーです。
頼りの正規軍さえも、兵隊の多くは名だけ登録すれば給料をもらえると思っていたような幽霊兵士で、それを仕切っている将軍どもも中央政府からの兵隊の給料をネコババし、装備も流していた、というどっちもどっちの関係だったみたいです。

まぁ政府予算といっても、カブール政権には財政などあってなきが如し。
ざるに水を注ぐようなものでした。
彼らカブール政権にとっては、しょせん米国さんから汗をかかずに貰ったカネですからね。
それにしてもよく米国議会や予算監査当局が黙っていたものです。
米国は正規軍建設を半ば諦めて、約870億ドル(約9.5兆円)を支出して治安維持軍を作ったのですが、これも失敗。
またもや米国の富をドブに捨てるようなことになってしまいました。

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U.S. Army photo by Sgt. Kyle Wagoner

かくして数年前から、公称30万の大軍といっても内実は多めに見ても7.5万人もいれば万々歳、タリバン兵力が12万に対してカーブール政府軍ほうが劣勢という兵力の逆転が起きていました。
米国が撤退の意志を明らかにするや、見捨てられればタリバンの血の報復に家族もろとも合うことを恐れた兵士たちは、我も我もとタリバンに武器をもったまま部隊丸ごと投降してしまいました。
いまやタリバンは米軍がカブール政権に供与した装備を公然と使用しています。
下のようなタリバンがハンビーに乗ってパトロールしているカブール市内の様子は、20年間タリバンと戦ってきた米軍兵士にとって悪い夢のような風景のはずです。
タリバンには数万丁の新型米軍自動小銃や戦闘服、ハンビーなどの車両、多くの火砲が渡ったと見られています。
タリバンは自軍でも使うだけではなく、その多くを武器の闇市場に流し、それがテロ集団の手に渡っていくことになります。

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さて、旧政府軍は雲散霧消してしまいましたが、反タリバン勢力はまだ健在です。

「アフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンの支配に反発する動きが目立ち始めた。北部では軍閥がタリバンを追い出し、一部の地区を奪い返した。支配地域の奪還は、タリバンが権力を掌握して以降、初めてとみられる。各地で市民のデモも起きている。 2021年8月16日のBBCの戦況図をご覧いただくと、どす黒い赤に塗りつぶされたアフガン全土の中に唯一小島のように抵抗している地域があります。地元メディアによると、北部バグラン州で21日、地元軍閥が一斉攻撃を仕掛け、タリバンから3地区を取り戻したという。SNS上では、軍閥メンバーとみられる男たちが、崩壊した政権が使っていた黒、赤、緑の3色の国旗を屋根の上に飾る動画が拡散した。 東隣にあるパンジシール州の住民によると、同州では第1副大統領として政権を支えていたサーレ氏や、タリバンの猛攻から逃げてきた政府軍兵士ら数千人が地元軍閥に合流し、武装闘争の準備を進めている」(朝日8月22日)

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ここが北部同盟(ノーザンアライアンス)の拠点パンジシール州です。
かつて1990年代、「バンジシールのライオン」と称されたアフマド・シャー・マスウードの拠点だった場所です。
マスウードは高潔で魅力的な人柄として知られており、もしこの人物が健在なら、カブール政権もここまで腐敗しなかったと言われています。
しかし彼は2001年9月にタリバンに暗殺され、今はその息子のアフマド(同名)が指揮をとっていると言われています。

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アフマド シャー マスウード

父親の遺志を継いで息子もまたタリバンのイスラム原理主義支配に批判的で、全土の反タリバン勢力を糾合しようとしています。
このバンジシールには、多くのアフガン軍兵士や旧北部連合などの戦士が集まってきており、持ちこたえられれば、各地で今は声をひそめている反タリバン勢力が反攻に立ち上がる可能性も残されています。
タリバンは4割を占めるパシュトーン族が権力を独占していますが、内部は複雑だといわれていますので、今後いかに展開するのか慎重に観察したほうがよいでしょう。

 

2021年8月25日 (水)

アフガン自衛隊機派遣、グッジョブ岸大臣!

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アフガン邦人救出に向かった自衛隊輸送機がパキスタンのイスラマバードに到着しました。
無事に帰国されることをお祈りします。

「C2輸送機、パキスタン到着 後続2機と輸送活動へ
イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人らの退避支援のため、24日未明に鳥取県の美保基地を出発した航空自衛隊C2輸送機は日本時間の同日夜、アフガン隣国パキスタンの首都イスラマバードの空港に到着した。関係者への取材で分かった。
 C130輸送機2機も埼玉県の入間基地から那覇基地経由で出発。3機はイスラマバードを拠点として週内にも邦人輸送を始めるとみられる。C130は、アフガンの首都カブールの空港とイスラマバード間をピストン輸送する。C2は、拠点整備に当たる隊員や機材の運搬などを担う。
 政府は政府専用機1機の追加派遣を調整している」(共同8月24日)

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フォト特集】C-2輸送機、アフガンへ 入間基地離陸 - 産経ニュース

アフガンがタリバンの手に落ち、、外務省職員は国外脱出しましたが、まだJICAなどの職員を始めとする多くの日本人と、大使館に勤めていた現地雇用のアフガン人が残されたままでした。
今回の自衛隊機が飛来する予定のカブール空港まで残留者たちを保護しながら誘導するのは、JICAがすることになっているようです。
おいおい、それをするのが大使館の仕事だろう、邦人置いて自分らだけ真っ先に逃げてどうすると思いますが、外務省には期待することは少ないので先に進めます。

欧米政府はいち早く救援機を派遣していますが、わが国は国内法に縛られるとどうなるか心配していましたが、さすが岸大臣、グッジョブ!

「岸防衛大臣は「現地の邦人や大切な仲間である大使館の現地職員などの安全確保が極めて重要な責務だ。自衛隊が、こうした方々を退避させることが不可欠で、一刻も早く退避できるよう任務を果たしてほしい」と述べ、国際機関の日本人職員や大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを退避させるため、自衛隊法84条に基づいて自衛隊機による輸送を命令しました(NHK8月23日)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/66149.html

岸大臣と共に日本政府が雇用してきたアフガン人も救出させるとしていますが、外国人も共に救出するのは初めてのことです。

「「人道的観点から、退避させることは極めて重要な責務だ」 岸信夫防衛相は23日、記者団にこう語った。
対象者として現地職員の家族も含めて数百人規模を想定している。自衛隊法84条の4で規定された措置で、外国人を同乗させれば初めて」(ZAKZAK8月24日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210824/pol2108240002-n1.html

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岸防衛大臣 NHK

今回、新鋭機のC-2も投入されたのは、従来のC-130と比較して圧倒的に航続距離が長いからです。
C-2ならば、無給油で日本本土からカブール空港に飛行できます。
ただしC-130のパイロットらは、今まで海外の台風などの災害派遣で多くの国外運用の経験がありますが、C-2は国外運行すること自体がニュースとなるような初期段階なので、いきなりアフガンに投入するかどうかは微妙です。
おそらく経験豊富で小回りが効くC-130がカブール現地に飛び、そこからピストン輸送でC-2が待つ近隣国(イスラマバードか)に引き継ぐのかもしれません。

さて、今回の自衛隊機派遣は防衛省が、外務大臣代理から派遣要請を受けた形を取っています。
代理ということは茂木大臣ではなかったようで、かえって結構でした。
こういう時、外務の相方が防衛大臣の経験もある河野氏だったらと思いますが、しょうがない。
外務省からの要請の御墨付きをもらった岸大臣は直ちに関係幹部会議を開き、自衛隊機の輸送命令を発出しました。
そして発令されたその晩には飛び立っていますから、自衛隊は既に準備をスタンバっていたようです。これまたグッジョブ!
岸大臣はタリバンがカブールを制圧する前後から、自衛隊や外務省と検討に入っていたと思われます。
当初救援機派遣は難しいと言っていたのは、初めから行くぞと言っていると与党内部からも邪魔が入るので、フェイントだったようです。

(おしらせ)
令和3年8月23日  防衛省
在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等の輸送の実施について
1 アフガニスタン・イスラム共和国情勢に鑑み、本日、外務大臣臨時代理から、防衛大臣に対し、同国に滞在する邦人等の輸送について依頼がありました。
これを受けて、本日、防衛大臣から、当該邦人等の輸送の実施を命じました。命令の概要は、以下の通りです。
現地における情報収集・関係機関等との調整のため、アフガニスタン・イスラム共和国に現地調整所を設置
航空支援集団司令官を指揮官とする在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等輸送統合任務部隊を編成
現地には、中央即応連隊長を指揮官とする、空輸隊、誘導輸送隊等からなる在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等輸送派遣統合任務部隊を編成し、邦人等の輸送及び輸送支援を実施2 本命令を受け、早ければ本日夕刻、航空自衛隊の輸送機をはじめとする自衛隊部隊を現地に向け出発させる予定です。

この防衛省の「お知らせ」にもあるように、外務大臣からの要請という形にこだわったのは、自衛隊法84条の3と4にその既定があるからです。
これは2016年に追加改正されたもので、まだ発令実績がありませんでした。
「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)と「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)という法律は整備されていましたが、ネックがいくつかありました。
それはPKO5原則にもあったように現実離れした「安全」の縛りが大きかったです。
自衛隊法84条の3を押さえておきます。
自衛隊法 (doshisha.ac.jp)

●自衛隊法第84条の3
在外邦人等の輸送
第八十四条の三  防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。

そもそも民間航空機ではなく自衛隊機を出さねばならないような在外邦人等輸送は、外国での災害や暴動といった緊急事態が起きているからで、安全なわきゃありませんがね。
南スーダンでは「戦闘」と日報に書いたら、野党から「戦闘が起きている地域に自衛隊を出したか。これは違反だ。撤収させろ」とワーワーやられました。
今回のアフガンのケースのように、現地政権が崩壊してしまって、その次の政権が国際的に承認を受けていないという空位というケースすらあります。
ところが、法的筋立てでいえば「現地政府の許可と連携」が必要となるのですが、その許可を求めるべき相手国政府がいなきゃどうしようもありません。
実際に今回のように大使館が脱出してしまうようなケースでは、現地政府が機能停止してしまっていることなどザラにあるわけです。

この問題を、上の防衛省の「在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等の輸送の実施のお知らせ」とあるように、アフガン・イスラム共和国というカブール政府から許可を得た形にしてクリアしました。
きっとのちに国会で立憲共産党からネチネチやられるでしょうが、目の前に救助を求めている邦人を見殺しにするのか、という話です。

派遣先国の同意について聞かれた加藤官房長官はこのように答えています。

「本件輸送は、現在のアフガニスタンのような例外的な状況において、緊急的な措置として人道上の必要性から、安全が確保されている状況で自国民などの退避のために輸送を行うものであることから、仮に明確な同意がとれていないとしても国際法上問題ない」

世界各国が既に急延期を派遣している現状を見て、国際法上問題がないとつっぱねる気のようです。
まったくそのとおりで、派遣機を出さないほうが国際社会で異常なのです。

また、法改正前までは、自衛隊は自分自身と、自分の管理下に入った人の生命を守るための武器使用(自己保存型武器使用)まででしたが、2016年の法改正で、保護措置に際してはこれに加えて任務の実施を妨害する行為を排除するための武器使用(任務遂行型武器使用)が認められるようになりました。
これもあまりにも当然な法改正で、従来法では自衛隊は輸送機周辺で警備して来るのを待つだけに任務が限定されており、空港までの道中の安全確保ができなかったのです。
邦人が武装集団に追いかけられながら空港のフェンスまで来て助けてくれ、と自衛隊に叫んだとしても、自衛隊は救援の手をさしのべられなかったわけです。
今回、陸自は邦人保護のために主力の中央即応団100名に加えて避難誘導専門部隊と専用車両も派遣しているはずで、状況時代ではカブール市内にまで出て、邦人保護をする可能性もありますが、現地の状況次第です。
現時点ではしないとしていますが、いかがなものでしょうか。
タリバンは一応外国人の脱出は認めていますが、アフガン人に対しては出国を認めておらず、また規律もいいかげんなので、自衛隊による避難警護が必要だと思われます。

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https://trafficnews.jp/photo/82512#photo18

まだどのような展開になるのか予断を許しませんし、柔軟に対応せねばなりませんが、やるね岸さん。
こういう時のために政治家がいるのです。
今回の場合、政治家がただ官僚に「自衛隊機を出すべきだろうか」、などと聞いてはいけません。
彼らは前例踏襲・因循姑息ですから、必ず「自衛隊機を出すためには現地政府の了解と連携が必要です。タリバンとは接触もできていません」と答えるでしょう。
ここでそうですか、やっぱりダメですか、日航に問い合わせましょう、と引っ込めば政治家はいらない。日本の舵取りはすべてお役人が差配すればいいだけのことです。

本気で世界のどこにいようと同胞を救助する気が政治家にあるなら、「知ったことか、そんなものは放っておけ」と言って、目標に向けてその手段を講じるはずです。
8月21日付け産経によれば、菅氏は日米首脳会談を控えた外務省幹部との打ち合わせの席でこのように言ったそうです。

「「そんなもの、放っておけばいいんだ」
4月の日米首脳会談を間近に控え、首相は、「共同声明に『台湾』を盛り込めばハレーションが起きる」と説明した外務省幹部にこう語った。当時、声明に「台湾」を明記する案が報じられ、与党内に台湾問題を「内政問題」とする中国政府の反発を懸念する声があった。外務省幹部がそうした状況を話したところ、首相は言下に突き放した」
菅政権「台湾重視」鮮明 閣僚級接触模索 香港「有事」警戒、半導体供給網維持… - 産経ニュース (sankei.com) 

菅氏の胆力に感嘆します。
今回も岸氏は菅氏のこの後ろ楯があったからできたことです。
このような強い指導力を持ちながら、国民に理解される「言葉」を持たないとは。
この腹を括れる力業を持てる者だけが政治家と呼ばれるのです。

 

2021年8月24日 (火)

菅氏はいい味出していましたが、この先は厳しいでしょう

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菅さんが足下の横浜市長選で惨敗し、FNN 調査で内閣支持率32.1%、自民党の政党支持率33.5%、合わせて青木率ギリギリ65.6%ですか。
首の皮一枚で踏みとどまっているというところです。

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横浜市長選、首相「謙虚に受けとめたい」 再選には意欲 [横浜市長選挙

政局は一気に自民党内の内紛へと移りました。
菅さんはワクチンひとつにしてもよく凌いでいると評するべきでしょうが、国民の非常事態宣言の恨みつらみ、もやもやした鬱屈を全部被せられた格好です。
国民はメディアに煽られているとはいえ、この先行きが見えない袋小路感にいらついているのは確かです。
それを知事から要請されたから拒否出来なかったとはいえ、緊急事態宣言をズルズル引き延ばして拡大させてしまいました。
このズルズル感、決められない感が国民の不信感を買うのです。

首相が今やるべきは、国民に先行きをみせる出口戦略でした。
世界的に見れば、死亡者数は最低水準、感染者がデルタ株で増加しているのは別に日本だけのことではありませんし、接種の打ち手の決断にしてもいい味だしていました。
ですから、今になって医療がアップアップしだしたのは、複雑な医療業界の背景があるのは書いてきたとおりなのですから、むしろ胸を張っていいくらいなのです。
だからただひたすら耐えろ、我慢しろではなく、今4割に達した国民のワクチン接種率を更に高めれば、コロナ禍を突き抜けられると国民を鼓舞すべきなのです。

オレはこうしてこの胸つき八丁を乗り越えるのだ、着いて来いくらいに指し示さねばならなかったのです。
このへんはボリス・ジョンソンを見習ってください。
しかし菅氏はこういうことが大の苦手。コミュニケーション障害かと揶揄されるほど極度に発信力が貧弱です。
危機のリーダーには不向きなタイプなのです。
優秀な番頭タイプで仕事は出来るし、官僚の使い方も知っている、人柄も誠実です。
しかし天は二物を与えずで、有事に先頭に立つ指導者タイプではないようです。
ああ、人材がはまるべき場所にはまっていた安倍-菅時代がモーレツに懐かしいぞ。
そこに西村大臣が上目線でやれば、人気は急下降しますって。

危機の時期のリーダーは、こうやってこの胸つき八丁を乗り越えるのだ、という出口を明瞭に指し示さねばなりません。
首相が責任を、その国民感情を含めて引き受けねばならないのは致し方がないことです。
うまくいって当然、失敗すれば袋叩きにされるのが首相の役回りですからね。
残念ですが、菅氏が看板では次の総選挙は勝てないと私すら思います。
このまま推移すれば総選挙で過半数割れをおこすでしょう。
当落線上で立憲共産党と競っているような陣笠議員諸氏は、全部落選するででしょうから、そりゃあ浮足だちます。

俵に足がかかった自民党、ここで高市さなえさんを出すくらいの気概があればリカバリーできるでしょうが、どうかな。
彼女が出れば総選挙で保守票は固められるでしょうし、小池待望論にもカウンターになりえます。
私も誰か選べと言われたら高市氏を推すことでしょう。

ただ、彼女の出身母体は細田派ですから、同一派閥から下村氏が出るため、細田派は分裂選挙になります。
細田派のオーナーの安部氏がどう決断するかです。
いずれにしても、菅さんが続投する気なら総選挙の結果は見えていますので、彼次第となります。
ただし出たとしても、今回お自民党総裁戦は地方票まで入れたフルスペックとなりますので、菅氏が勝てる保証はありません。
現職が総裁選で破れるという醜態をさらすなら、ここは身を引いてという声が麻生氏あたりからささやかれそうです。

こんな床屋政談は3行くらいにするつもりだったら、長くなりすぎたので明日に分割しました。

 

 

2021年8月23日 (月)

中国、コロナ封じ込めに失敗した模様

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1週間前に一回アップしたところ、アフガン情勢急変で差し替えられてしまった可哀相な記事です。
今アップしておかないと時期を失するので、再挑戦ということで。
なお、大幅に加筆してあります。

                                         ~~~~

ゼロコロナ戦略をとっていた中国が、コロナの封じ込めに失敗したようです。

「米国などの国々と比べれば新規感染者数は極めて少ない。ただ「感染者ゼロ」を目指す中国の戦略の下では厳しい対策が求められており、住宅街のロックダウンや公共イベントの中止などにも踏み切っている。エコノミストらは、感染拡大を早期に抑え込めなければ、こうした対策が中国の経済成長に深刻な影響を及ぼす可能性が大きいとみている。
北京市当局は先週、毎年恒例の北京国際映画祭を延期すると発表したほか、各種展示会を含む大型イベントの中止を決めた。8日には、コロナ流行地域から航空機や列車の市内乗り入れを一時停止した。
7月下旬にデルタ株が最初に見つかった南京市では、市民920万人が数週間の間に感染検査を受けた」(ウォールストリートジャーナル8月4日)
中国の厳しいコロナ対策、経済回復阻害のリスク - WSJ

「厳しい国境封鎖を敷く中国だが今月に入り30を超える第1級行政区(省・直轄市・自治区)の半数余りで感染力の強いデルタ変異株が確認され、対象を絞ったロックダウン(都市封鎖)や移動制限、集団検査など新たな一連の対策実施を余儀なくされた」(ブルーミングバーグ2021年8月10日)

今の時点では表に出てくる感染者数は8月9日の新規感染者数が1週間前の倍以上の143人となったていどで、たいしたことはありませんが、情報隠蔽が常態のあの国ではこれはごく一部だとみるべきです。
しかも全国各地で発生しています。

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WSJ

ところで、中国は典型的なゼロコロナ戦略をとってきました。

「世界では多くの国が新型コロナウイルスとの共生に軸足を移しつつあるが、中国はコロナを一切容認しない政策を堅持しており、世界2位の経済大国が今後何年も孤立しかねないリスクが生じている」(ブルーミングバーク前掲)

「コロナを一切容認しない政策」、これが「ゼロコロナ」政策ですが、どこかで聞いことがありませんか。
今、立憲が言っていることです。
立憲は法定伝染病並にコロナを撲滅しろといっていますから、あんがい中国を手本にしたのかもしれません。

その中国は、当初ロックダウン(都市封鎖)一本でコロナを乗り切ったと豪語した国です。
感染確認された地域を物流も含め完全に封鎖し、その上で絨毯爆撃のように市民の老いも若きも全員にPCR検査を行い、感染者の洗い出しをします。
あぶり出された感染者を完全に隔離し、接触を断ち、移動できなくして感染者がいないことが確認された時点で封鎖解除する、というものです。

この方法に憧れをいだいたのか、全数PCRこそ日本がとるべきだ、やらないのは政府の感染隠しだ、と日本でヒダリ方向やワイドショーが盛んに煽っていましたね。
実際にデニー知事や、元中学生過激派だった世田谷区長がやって、結局失敗した方法です。
そもそもPCRって、なんども書いてきましたが、プラスにもマイナスにも3割近く間違いが出る方法なのですよ。
だから1000人検査すれば、偽陽性を300人も出してしまいます。
しかも日本はコロナは2類感染症指定ですから、一回陽性と判定されればなんらかの隔離をせねばなりません。
これを丸ごと医療機関に収容すれば間違いなくパンクします。

また2類指定したために、専用病床を持つ病院だけしか患者を受けいれることが不可能になりました。
2類は結核などと同じですから、厳重な隔離施設を持ち、特別な訓練を受けた医師と医療スタッフが必要なのです。
多くの病院は尻込みし、コロナ特別病棟を増設することを嫌がりました。
政府は増設を「お願い」し、その予算もつけてあったのですが、いっこうに去年から専用病床は増えず、今頃になってアップアップしかけているわけです。
この医療問題についてはまた別の機会に書くかもしれません。

とまれ今のように信頼できる有効性の高いワクチンがあれば、国民の負担が大きい都市封鎖や非常事態宣言に頼るべきではありません。
しょせん緊急事態宣言や都市封鎖など、ワクチンがない時期の時間稼ぎなのです。
ヨーロッパで去年やった都市封鎖は、たとえば英国などは家から出られる人数は1名に限定し、それも食料品買い出しに制限しました。
表に出られるのは一家で1名、それも時差をおいての散歩だけ。会社もほとんどが閉鎖になっています。
どこぞの放送局のように明け方までカラオケに興じたり、BBQなんかしたら大変な罰金をとられました。
知事会は都市封鎖をしたいと盛んに言っているようですが、この覚悟がおありでしょうか。
あいまいな覚悟のままやったら、今の非常事態宣言と変わりありませんし、本格的都市封鎖をすれば、いまでも充分にくたびれきっている国民はワクチンの副反応より、行動制限による副反応で国民が参ってしまうでしょう。

ところで、この都市封鎖という強権的方法に中国は長けていました。
そりゃそうですとも。常に国家が国民全体を監視しているデジタル共産主義の国ですから。
ウィグルでは民族主義者をウィルスと見なして、彼らをありとあらゆる方法であぶり出し、接触を遮断するために隔離し収容所に入れました。
この方法と同じことをコロナに応用しただけのことです。
そんな国を、世界最速で感染拡大を止めた、さすがは共産党、危機に強い、と絶賛する人がうちの国にも大勢出たのには驚きました。
日本のような民主主義国家で、簡単に中国をまねできると思っているほうが異常です。

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ブルーミングバーク

大きな誤解があるようですが、都市封鎖でCOVID-19ウィルスがこの世から消滅するかといえば、残念ながらそんなことはないのです。
都市封鎖をしたところで一時的には感染を抑えこんだように見えても、ウィルスは必ず社会のどこかに潜伏し、時間をおいて条件が整えば復活します。
仮に国内がゼロコロナになったとしても(ありえませんが)、世界全体を見れば各地に感染が燃え盛っている現状ですから、鎖国でもしない限り、必ず流入します。
そのとき国民に抗体がなければ、再び感染が燃え盛ることになるわけです。
だから抗体を作り出すワクチン接種が最優先なのです。

またこの都市封鎖によってゼロコロナを一時的に達成できますが、感染力が高い変異株へ変異することは止められません。
あくまでも都市封鎖が有効に見えるのは、ワクチンがなく、治療薬がないという初期の絶望的状況においてだけなのです。
ところが、今はワクチンもあれば、年内に有効な治療薬ができるところまでたどり着いています。
都市封鎖などにすがる必要はまったくありません。
こんなことをしたら、経済のダメージと国民への打撃は計り知れないものとなります。

中国に話を戻します。
中国は都市封鎖でゼロコロナをめざし、習の政治的思惑で解除を決めてしまいました。
習が一声、「感染は終わった」と言えば、あら不思議コロナ感染が完全になくなってしまうという珍しい国のようです。
内実は習のメンツのための政治的解除でしかなく、武漢を中心に各地に大量にCOVID-19ウィルスは潜在していたはずです。

そして中国が早期に解除を可能にした理由は、中国製ワクチンができたからです。
ワクチンはメンセンジャーRNAワクチン技術を用いない限り、普通は数年くらいかかるものなのに、手品のように半年くらいで作って見せました。
これをろくな治験もせずに、いきなり人間に接種したのですからたいしたタマです。
そもそも2019年9月くらいに作り始めているんですが、まぁこれは置いておきます。

中国ワクチンについて、中国の保健当局であるCDC(←米国CDCのまね)は、これが有効性を持たないことをかなり前から知っていたようです。
こんな発言を中国CDCのトップが言って物議をかもしたことがあります。

「中国疾病対策センター(CCDC)トップの 高氏は10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べた。
また、効果を高めるため、新型ウイルスのいくつかのワクチンを混合させることを、政府として検討していると示唆した」
(BBC2021年4月12日)
中国製ワクチンは「効果小さい」 中国当局者が発言、すぐ修正 - BBCニュース 

中国CDC自身、たぶん5割効けば御の字と思っているはずです。

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 産経

いまや中国ワクチンを供与された国々(ただじゃありませんからね)は、一斉に接種を中止し始めています。

「ザ・ディプロマットが伝えたところでは、ゲブレイエススWHO事務局長が世界保健機関による前回調査の報告書に反する意見を発したのは、これまで中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンに頼っていたマレーシア保健省がいずれ同ワクチンの接種を中止するという方針を表明した直後であった。
ザ・ディプロマットによると、マレーシア保健省がこの決断に達したのは、伝染性の高いデルタ株に対して科興控股生物技術製ワクチンの有効性が低いことを示唆する裏付けがあるためである。
マレーシアは人口の70%に投与するのに十分な4,500万回分のファイザー、ビオンテック製ワクチンを確保したと、ザ・ディプロマットは報じている。(略)
複数の報道によると、インドネシアでは中国製ワクチンの投与を受けた医療従事者が新型コロナウイルス感染症検査で陽性となり、一部が死亡する事例が発生したことで、科興控股生物技術製ワクチンの接種者に追加免疫接種(ブースター)を行うことを予定している」
 Indo-Pacific Defense Forum (ipdefenseforum.com)

しかもシノバックは武漢株に対応していると称しているだけで、今、世界を席巻しているデルタ株にはまったく無力のようです。
無力どころか、接種済みとカウントしてしまうために、対策がザルになる分かえって危険性が増します。
これは一見「ブレークスルー感染」のように見えますが、元々ただの水ですから、そう呼んでいいものやらどうやら。

ですから中国CDCは、今頃になって米国製ワクチンでブースト(追加)接種をしなければならないと考えたようです。

「複数の報道によると、中国保健当局自体が自国製ワクチンを投与した中国国民に対する外国製ワクチンの追加接種の必要性を検討している。戦略国際問題研究所(CSIS)グローバルヘルスポリシーセンター(GHPC)の上級副社長兼局長を務めるスティーブン・モリソン(Stephen Morrison)博士はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、「これで中国自体が自国製ワクチンを信頼していないことが暗に示されることになった」と述べている」
 Indo-Pacific Defense Forum (ipdefenseforum.com)

そこで恥も外聞もなくファイザーを1 億回分輸入して、共産党幹部にだけ優先接種したようです。
大部分の国民はそんなことを知らないし、仮に知ったとしてもどうにもなりません。
したがって、コロナはかならず全国各地で再拡大します。
今、その感染再拡大が始まったところのようです。

そこで再び登場したのが、得意の都市封鎖です。

「高強・元衛生相は、中国は厳しい規制措置を撤回すべきではなく、米国や英国の緩い封じ込め戦略という失敗を回避すべきであるとの見解を表明」した。」(WSJ前掲)

これやると、経済が一気に冷え込みます。
既にその兆候が出ており、中国の景気回復は腰折れし始めました。

「コロナ一掃に向けた中国の取り組みは、投資家にも影響を及ぼしている。しかも多くの投資家は、テクノロジー企業に対する政府の徹底的な締め付けで中国株から一時1兆5000億ドル(約165兆円)の価値が吹き飛んだことで、既に打撃を受けている。
  インフレ圧力が高まる一方で成長は鈍化する見込みで、年後半の経済リスクは積み上がりつつある。ゴールドマン・サックス・グループと野村ホールディングスは今月、中国政府のコロナ対策を理由に中国の成長見通しを引き下げた」(ブルーミングバーク前掲)

習は、巨大民間企業を叩き国有化を進めるという再共産主義化に熱心ですから、これで多くの民間企業が経営難に陥って国営化できるのは、むしろ願ったりかなったりかもしれませんが、中国の経済回復が福音だった国際経済にとっては迷惑なことです。

 

2021年8月22日 (日)

日曜写真館 ふところを風吹き過ぎてゆく晩夏

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すでに晩夏草ぬきんでて昏れる山 桂信子

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坂の上電線たわみ晩夏なり 藤田湘子

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少女ゐて晩夏の花を買へといふ 富澤赤黄男

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扉を押せば晩夏明るき雲よりなし 野澤節子

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晩夏とてありやうや脱ぎすてしもの 細見綾子

2021年8月21日 (土)

ムン閣下の真夏の夜の夢

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日本人に尽きることなき泉のように心温まる話題を提供してくれている韓国ですが、またなにかやらかしているようです。
といっても少しだけ。ホント、少しだけ穴から鼻だけだしたってかんじかしら。

韓国聯合が「三菱重工資産の差し押さえ命令 韓国大統領府日本と協議中」という記事を配信したとき、おーとうとうムン閣下、とうとうお腹を召される覚悟をしたかと感心したのですが、内容を読むとよくわかりません。

「ソウル聯合ニュース】韓国の水原地裁安養支部が大法院(最高裁)の強制徴用賠償判決を巡り、三菱重工業の資産差し押さえ命令を出したことに日本政府が反発している問題について、韓国青瓦台(大統領府)の関係者は19日、「政府は被害者の権利実現および韓日関係などを考慮し、多様な合理的解決策を見つけるために各界各層の多様な意見を取りまとめ、日本側と緊密に協議している」と説明した」(聯合8月19日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20210819004200882?section=japan-relationship/index

この韓国サイドの報道だけ読むと、まるで三菱重工に対する徴用工裁判での差し押さえについての協議を日本政府と開始したというふうに読めます。
しかもこの聯合の記事では「している」という進行形だから、もうやったということでしょうか。
「被害者の権利実現と韓日関係などを考慮して」やるというんですからいっそう面妖。
日本政府は、この徴用工裁判に関しては協議の対象にすらならない、面談さえしないと言っているわけですからね。
二国間テーブルで、「えー、被害者の人権実現のために、差し押さえたほうがいいでしょうか、それともやっぱりダメっすか」、って日本に聞くわけ(笑)。

そのうち時事通信がこんな記事を配信しました。

「【ソウル時事】韓国の元徴用工訴訟をめぐり、裁判所が、三菱重工業が韓国企業から受け取るべき商品代金の差し押さえなどを命じた問題で、韓国企業「LSエムトロン」は19日、取引してきたのは三菱重工ではなく、グループ会社の「三菱重工エンジンシステム」だとする立場を明らかにした。
日本企業債権の取り立て命令 元徴用工訴訟―韓国裁判所
LSエムトロンは事実関係を綿密に確認した上で、裁判所に陳述書を提出する予定。三菱重工との取引がないことが確認されれば、命令の効力が消失する見通しだ」(時事8月19日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081900886

当の三菱重工が説明するには、どうも韓国裁判所が命令したという差し押さえるカネとは、「LSエムトロン」という韓国企業が「三菱重工エンジンシステム」という三菱重工系列会社に支払う代金みたいですね。
なんのこたぁない、三菱重工本体の売り掛けを差し押さえるならそれなりに、おお、来るべきものがやっと来たか、これで晴れて報復だ、やっと悲願の縁切りだ、というかんじなりますが、その子会社が相手だそうです。
なーんだ、つまんない。

まぁそう言わない、言わない、ちゃんとコリアにはそれなりの目論見があったのです。

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中央

「日帝強占期の強制徴用被害者が日本企業から実質的な賠償を受けるためにさらに一歩近づいた。韓国裁判所が強制徴用訴訟で敗訴した三菱重工業が韓国企業から受け取る商品代金約8億ウォン(7500万円)余りを差し押さえる決定を下したためだ。
被害者が三菱重工業取引代金を韓国企業から直接受け取ることができるようにする裁判所の取立命令も下された。このような具体的な措置が下されたのは今回が初めてだ。(略)
強制徴用被害者は2018年10月韓国大法院(最高裁)全員合議体の確定判決を受けても、韓国内から引き出せる日本企業の財産がないか現金化できる方法がなく、実際の損害賠償は受けられずにいた。
今回の裁判所の差押および取立決定で実際の賠償が目前まで来たという評価も出ている。18日、強制徴用被害者側代理人によると、水原(スウォン)地裁安養(アニャン)支部は今月12日、三菱重工業が韓国企業であるLSエムトロンに対して保有している商品代金の債権に対して債権差押および取立命令決定を下した」(中央8月19日)
https://japanese.joins.com/JArticle/282038

この韓国の記事には「日帝強占期」なんていう変な四文字熟語がありますが、これは日本が大韓帝国との合邦をしたことを、あれは軍事占領だった、という韓国特有の言い回しです。
韓国としては、1段目の徴用工裁判ブースターで打ち上げ、2段目ロケットで日韓基本条約を一方的に廃棄し、そして3段目の「日帝強占」の賠償を韓国民にする新条約を締結せよ、という3段ロケット構造で「蒼天を撃つ」予定だったのですが、1段目すら不発状態のままで2年以上立っています。

何年か前の反日ポスターにこんなのがありましたね。デカイですが面白いので貼っておきます。

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細かく見ていくと、韓国人の「英雄」たちがいるわ、いるわ、(苦笑)。
お、インスンシンの2列後ろにわれらがムン閣下もいるじゃないですか。
彼らの後ろにはゾンビーの大群が、いや違ったろうそくデモのようです。わー、空気入るなぁ。
それにしても亀甲船がほんと好きだなぁ。
こんな重装甲で覆っちゃえば、低重心の船は不安定で外洋に漕ぎ出すことすらできっこないんですがね。
99.99%妄想の産物ですので、恥の上塗りはお止めになったほうが・・・、あ、すいません、余計なお世話か。

それはともかくこのところ2回連続で「国際法に照らすと無理」という判決が続いただけに、この水原地裁判決をもらって、ひさしぶりに盛り上がっているご様子です。
差し押さえたらこう使うという青写真まで作っていました。

「今回差し押さえられた商品代金はLSエムトロンがトラクターエンジンなど部品を購入した後、三菱重工業側に支払う代金だ。債権差押および取立命令事件を代理しているイム・ジェソン弁護士(法務法人ヘマル)によると、差押決定を受けた債権額は請求金額総額基準8億5319万ウォンとなっている。
この金額は2018年大法院の確定判決を受けた被害者4人の損害賠償金とそれに対する遅延損害金、執行費用などを合わせた金額だ」(中央前掲)

この差し押さえた約8億5000万ウォン(約8000万円)は原告4名と遅延損害金となるそうです。よかったね。
だけどものすごいポカやっているのに気がつかないというのが、いかにもコリア、これこそコリアです。
だって、同じ「三菱重工」でも、三菱重工と「三菱重工エンジンシステム」って別法人なのだよね。あたりまえだ。
すると「三菱重工との取引がないことが確認されれば、命令の効力が消失する」(時事)ので、あっと言う間に自動消滅です。

残念。むしろ私としてはやってほしかったくらいです。
これが認められるとなると、「三菱重工」と名が被っていさえすれば任意の「三菱重工」の会社の商品代金を差し押さえられるということになります。
仮にこの水原地裁判決を韓国企業であるLSエムトロンが受け入れた場合、「三菱重工」と名のついた法人は、韓国でモノを売ろうと思わなくなるでしょう。
だって、「三菱重工」と法人名につくだけで売り掛けが、突如として回収できなくなるからです。

ところでトリビアですが、「三菱重工」と名がつく会社って、どのくらいあると思いますか。
ごく一部ですが、えー願いましては、三菱造船、三菱重工海洋鉄構、三菱重工エンジニアリング、Primetals Technologies, Limited.、三菱重工工作機械、物流・冷熱・ドライブシステムドメイン、三菱ロジスネクスト、三菱重工サーマルシステムズ、三菱重工エンジン&ターボチャージャ・・、まだまだ一杯ありますが、詳しくはウィキで見てね。
三菱重工業 - Wikipedia

これらはいわば三菱重工帝国とでもいうべき世界屈指の企業集団に入っていますが、それを「三菱重工」という名がかぶっているからって、あんたねぇ。
たとえばこんなかんじです。
LSエムトロンから、「エムトロンですが、おたくへの今月の支払いが裁判所から差し押えられましたのでひとつよろしくお願いいたします」なんて電話をもらったら、どう答えますか。
一瞬なにを言っているのか理解不能になるでしょうが、数秒後に我にかえって、なにが差し押さえだ、お前の会社とオレの会社は何の紛争も起きていないのに差し押さえとはなんの話だ、となるでしょうね。
そして、ああ韓国とビジネスするんじゃなかった、と深く後悔するでしょうな。
そりゃそうです。誰がこんなリスキーな商売をしますか。
政府と裁判所の思惑ひとつで売り掛けが消滅するような国と危なっかしくて取引なんぞできませんからね。
こういう危険情報は速やかに韓国と取引している日本企業に伝わり、潮が引くように日本は韓国から手を引いていきます。

お分かりになったでしょうか。
ここでもコリアはかつての日本製品ボイコット運動と同じことを仕出かしてしまったのです。
政府や自衛隊を相手にしているぶんにはともかく、日本企業を相手にするととんでもない経済的実害が出ることにまだ気がつかないようです。

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ボイコットジャパン」、韓国の日本製品不買運動は過熱するブームの様相

あの時も、一時の反日ウップン張らしが、結局高いものにつきましたね。
初めはイケイケでしたが、しばらくすると日本製品がないとコリア製品が作れないことがわかって、結局困ったのはコリアのほうでした。
日本にとって韓国製品は代替が効きますが、韓国にとって日本製品は製品を作る枢要な部品だったり素材だったりしたわけで代わりがありません。
この時も自分で作ろうとしてコケています。
日本の輸出管理規制強化で、一時日本製の素材の輸出が滞った時にどれだけ大騒ぎしたか、もうお忘れのようで、ノーテンキなことでまことにうらやましい。
コリアさんは、天に向けて吐いた唾は全部自分の顔にかかってくる、ということをいいかげん教訓化して欲しいものです。
韓国にとって日本がないと成り立たないが、日本にとって韓国などなくても済むのです。

ひと昔前までは地政学的に朝鮮半島は重要なんて言っていましたが、いまやどちらでも。
日米の防衛ラインは朝鮮半島から台湾海峡にシフトしているのです。
外務・防衛担当外相のハイレベルな二国間協議を「2+2」とよびますが、韓国とは開かれていません。

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令和2年版防衛白書

ロシア(2013年11月2日の第1回を皮切りに3回)
英国(2015年1月21日の第1回を皮切りに4回)
フランス(2014年1月16日の第1回を皮切りに5回)
インドネシア(2015年12月18日)
インド(2019年11月30日)

米国とはとうぜんのこととして毎年のように開かれ、英国、豪州、フランス、インドといった潜在的な同盟相手国との戦略的関係の強化を図っています。
また、ロシアのように領土問題などの諸懸案を抱えている相手国とも信頼の醸成目的で開いていますし、今台湾と2+2をもとうという動きもでています。
しかし韓国とは、どちらからも開こうという声がありません。
韓国には米国だけがつきあってあげているだけです。
これが冷厳な事実なのですが、分かっていないのは当のコリアだけ。

韓国の行動にはひとつのパターンがあります。

第1段階・・・極度に過激な表現で日本を威嚇する。
第2段階・・・国際社会に自分の主張を精力的にイガンジル(告げ口)して回る。
第3段階・・・当局者会議の場で、守秘義務を破り、自分に都合のいいことだけを公表する。
第4段階・・・論破されると、新たなテーマにすり替える。
第1段階に戻る。永遠のループ。

このような行動習性は、多少の前後の違いはあっても不動のワンパターンですから、今回もまた同じことです。
ただし日本からすれば、つきあう義理はないので、第3段階の協議はもう開かれませんので、裁判所がその都度違う判決をだして右往左往しているだけです。
協議したいですって、どうぞひとりでやったらどうですか、そもそも余命半年のレームダックと交渉ごとをする国は世界のどこにもありませんがね。
かくして、今回もまたムン閣下の真夏の世の夢だったようです。

それにしてもアフガンじゃないですが、こんなことにばかりやっているこの国、一晩でパッタリと倒れるかもしれませんね。
そしてそれを悲しむ国はひとつもないはずです。

 

2021年8月20日 (金)

ワクチン2回接種で新規感染を99.6%ブロックできることが立証された

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世界の感染対策は大きくコロナとの共存に転換しています。
全数検査と行動制限だけに頼る旧来の方法から、ワクチン接種を徹底していく方針に切り替わりました。
かつて国民皆PCR検査と言っていたメルケルも、大きくワクチンの方向に舵を切りました。

「[ベルリン 10日 ロイター] - メルケル首相は10日、ドイツ政府が新型コロナウイルスワクチン接種の促進に向け、10月11日付で無料の新型コロナ検査の提供を打ち切ると発表した」(ロイター2021年8月10日)

代わりにドイツが全力でやっているのが、メルケルのいう「国民誰でもワクチンを打てる」という国民皆ワクチンです。

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新型コロナ: ドイツ、誰でもワクチン接種可能に 6月から: 日本経済新

「連邦議会選挙を約7週間後に控え、メルケル首相はこの日、16州の州首相との会合を開き、国民に不人気な感染拡大抑制策の実施を回避しながら、感染力が強いデルタ変異株の拡散を防止する方法について協議。メルケル首相は会合後の記者会見で「悪いニュースはワクチン接種率のペースが大幅に鈍化していることだ。夏季休暇後には再びペースが上がることを期待している」と述べた。
会合では、無料の検査の提供を終了することで合意。ただ、子どもや妊娠中の女性などワクチンの接種が推奨されない人に対しては引き続き無料で提供される」(ロイター前掲)

これが世界のコロナ対策の新たな流れです。
ドイツは、PCRで感染者をあぶり出して隔離し、都市封鎖で終息させるという旧来の方法から、高齢者から始めたワクチン接種を年齢層を問わずに接種をする方法に切り替えたのです。
これは感染者数だけを指標とする従来のやり方から脱することを意味します。
英国方式とはやや違いますが、経済再開とワクチンという点では同じ流れだといってよいでしょう。
イタリアも同じく行動制限を止め、ワクチンを徹底しつつ経済回復に重点を移しています。

一方、日本だけはあいかわらず、経済回復など知ったことか、国民がたるんでいるからいかんのだ、と言う感染専門家たちにイニシャチブを握られてしまっています。
メディアときたひには、新規感染者数を大本営発表よろしく朝から晩まで毎日毎日ガナり続けています。
NHKなどは高校野球にまで割り込んで、「速報、全国で新規感染者2万何百人に。過去最高」などと流す始末。
ならば、せめてその報道のなかに陽性者中にワクチン接種者がどれだけいるのか、重症者に含まれるワクチン接種率がどれだけあるのか、一回くらい報じてくれてもバチが当たらないと思います。

と思っていたら、産経が昨日、ワクチン接種者と新規感染者の関係を報じてくれました。パチパチ。

「大阪府は18日に開いた新型コロナウイルス対策本部会議で、3月以降に確認された新規感染者計約8万5千人のうち、ワクチンを接種した人は全体の2・5%の2118人だったとの分析結果を公表した。
2回目のワクチン接種後、免疫を獲得するとされる2週間以上が経過して発症した人は317人(0・4%)で、重症者や死亡者はいなかった」
(産経8月18日)
コロナワクチン2回接種で発症0.4% 重症・死亡なし 大阪府分析 - 産経ニュース (sankei.com)

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産経

大阪府のデーターでは、2回接種した人で新規感染したのは0.4%、重症者、死亡者なし。
これはまだ大阪府のデーターという限定ですが、おそらく他の自治体のデータも似た数値をだすはずです。
つまりワクチンを2回接種すれば、99.6%の確率で新規感染をブロックできるということです。

諸外国の例で見ても、新規感染者の9割以上が未接種です。
特に今感染が多い年代の40代~50代は、直ちになんらかの方法で接種を受けて下さい。
それがご自身のためでもあり、同時に家族と社会を守ることなのだ、ということを政府は徹底的に広報すべきです。

極論すれば新規感染者数など、ある意味どうでもいいのです。
あくまでも「極論すれば」、ですから念のため。
問題は、政府や自治体がどう防ぐかという流れをしっかりと示すことです。
それをしないで新規感染者数が東京都で5千を超えた、感染爆発だ、お前ら国民がたるんでいるから罰として都市封鎖だ、オリンピックでウキウキしたから増えたんだ、などという陰気な情報の奴隷になってまいます。

そういえば、なぜかいい数字はまったく報じられることがありません。
実効再生産数は、ご承知のように「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方で、「1」を下回ると収束に向かうとされていますが、東京都の実効再生産数は1.06まで下がっており、全国もその傾向に追随しています。

では、東京都と神奈川の実効再生産数をみてみましょう。
1人から何人に?「実効再生産数」|NHK特設サイト
 まずは東京都です。「1」の線がわかりますね。すれすれです。

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 次に神奈川県です。すでに「1」を切っています。

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全国です。「1」すれすれです。

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実効再生産数が「1」を切れば、感染は縮小することが分かっていますから、あと少しでピークアウトを迎えるはずです。
ところがメディアは口を揃えて「先が見えない感染爆発」と報じます。よほど絶望するのが好きなのかしらね。
いつまでたっても医療体制が足りないから逼迫だとワンパターンです。
では、なぜそうなるのでしょうか。

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病床数世界一なのに医療崩壊」のワケ 森田洋之医師に聞く | 毎日新聞

私は医療関係者に対して敬意を払うことはやぶさかではありませんが、失礼ながら、今、日本の医療陣がコロナに対しての戦いに真正面から取り組んでいるとは思えません。
元々は日本における医療資源はG7の中でも突出して優良でした。それは病床数の数が日本の人口1000人当たりの病床数は13床とトップクラスだということからもわかります。
そして日本は1日の感染者数がこれまた世界有数に少ないわけです。

世界有数の病床保有国が、世界有数の少ない新規感染者数で医療崩壊の危機だというのですから道理に合いません。
では、なぜコロナ病床数が不足するのでしょうか。
理由は単純です。一般病床は充分にあるが、コロナ病床が足りないからです。
コロナのための確保予定病床数は約2万7000で、1年8か月たつのにほとんど増えていません。
重症者向けの確保予定病床数も約3600と横ばいです。

政府はコロナ病床を増やそうと、1床最大1950万円の補助金をつけていますが、もらっただけで消極的な病院もあるそうです。

「政府は新型コロナウイルス感染者用の確保病床(コロナ病床)の活用実態を調査する。約6000床を確保する東京都では約6割の約3800床が埋まっただけで逼迫し、入院できず自宅待機を余儀なくされる人がいる。病床確保のための補助金を受け取りながら患者受け入れに消極的な病院がないか調べる。
日本は一般病床と感染症病床が計88万9000床あり、世界的にも病床が多い。それでもコロナ禍では病床不足が常に問題になった」(日経 2021年8月19日 )

イタリアは去年の世界トップクラスの感染爆発の後、それがいったん鎮静化した夏に、秋から冬に襲来するであろう秋以降の第3波に備えて、徹底したコロナ専用病床を増設したそうです。
新規のコロナ専用病院すら作り、専門医や看護師も大増員をかけました。
これが功を奏しました。

わが国は去年春に感染爆発しなかった代わりに、その後の期間に医療体制の大幅な拡充に手をつけられませんでした。
たぶん政府にも危機感はあったはずで、そのために3兆円の予算もつけていますが、そこでぶち当たったのが「医療体制の壁」でした。

ひとつには恒常的医師不足という宿痾が響いたのです。
元来、日本の病院数は約8000とG7諸国のなかで最も多いにかかわらず、日本の1病床当たり医師数は米国の5分の1、独仏の3分の1です。
看護師も同じで常に不足傾向にあります。
平時でも日本では病院の勤務医が恒常的に不足し、系列病院で融通し合っています。
米国では機動的に医師を融通できますが、日本はできないのです。

このような中でコロナが爆発してしまっために、感染症指定病院の医療スタッフが増員できませんでした。
指定病院以外の一般病院でも、コロナ患者を受け入れるためには感染症専門医や訓練された医療スタッフが必要ですし、さらにハード面でも院内に隔離病室を作らねばならないために、コロナ対応病床が増えなかったのです。

医療の不均衡です。必要な場所に必要な人材ソースが行きわたらないのです。
ですから一般病院はそれなりに人員が足りており、私も見聞していますが、特に混み合う様子もなく、むしろすいていると感じられるほどです。
一方、コロナ専用病床はギリギリの人員で必死に支えているという様相を呈しました。
もちろん私は一般病院が悪いと言っているのではなく、こういう感染症がパンデミックになっている時ですら、柔軟に対応できなくなっている医療体制が問題なのです。

国も分かっていて1.3兆円の医療支援予算をつけていますが、それは手つかず同然でそのままとなっていると聞きます。
政府予算は医師会なり自治体が国にこれこれこういうコロナ対策医療施設を作るので何百億円を交付しろ、という性格ですから、現場から上がってこなければ国も動きようがありません。

とすると、この硬直した医療体制のネックは、平時の医療体制から緊急時の医療体制に切り換えを拒むなにかしらのものが、医師会側にあると邪推してしまいます。
意地が悪い言い方で恐縮ですが、専門家会議が口を開けば国民がぶっ弛んでいるからだ、もっと引き締めろと、常に責任を国民に押しつけるもの言い方を好むのは、自分らになにか不都合なことがあって私たち国民に責任を転嫁しているように思えてしまうのです。
加計学園獣医学部新設の折、獣医師業界が獣医学部新設に抵抗して、文科省に圧力をかけていたことをふと思い出してしまって憂鬱になります。

せめてこんな緊急事態の時くらい国が一定の強制力をもって、医師会にコロナ病床の大幅拡充を命じて欲しいのですが、現行憲法下ではむりです。
私が冒頭で書いたヨーロパ諸国は、緊急事態法制を有して強い権限を政府に与えています。
だからロックダウンもコロナ病床の増設も、接種要員の手配も迅速に手配できました。
しかしうちの国は、緊急事態宣言がただの「お願い」であったように、ここでも政府は医師会に予算枠を示して「このような予算がついていますから、どうかひとつよろしくお願いします」と言うことしかできません。
かくして医師会は重い尻を上げたがらず、国は及び腰、自治体は無力という三すくみとなってしまい、いっかなコロナ病床が増設されないままデルタ株拡大期を迎えてしまったというわけです。

平時で何事もなければ万全とも言えるシテスムを持ちながら、しかしいったん緊急時になれば硬直してうまく動かない。
すべからく平時モードで国ができているために、緊急事態となるとそこここで破綻をきたし、一億総自粛という精神論に走る。
ただしいったんワクチン接種をするとなる、世界一の現場力で帳尻を合わせてしまう。
だから、途中はハチャメチャでも、結果的にはそれなりに凌げてしまう。
したがってヤケドしても変わらない。いいことなのか、悪いことなのか。
いずれにしても、なにもかもうんざりするほど日本的です。

末尾ながら、千葉真一氏がコロナでお亡くなりになりました。享年82歳でした。
私たちの世代のヒーローのひとりでした。ご冥福をお祈りします。
ワクチン接種をしておられなかったとか。残念のひと言に尽きます。

 

 

2021年8月19日 (木)

タリバンが善人になっただって?

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昨日あたりのニュース解説を見ていると、カブール政権や政府軍が腐敗していた、ということを崩壊の原因としているようです。
なんだかなぁです。わかりきってるじゃん、そんなこと。
旧アフガン政権が腐敗しているということは有名で、昨日今日に始まったことではありません。
政府軍の将軍どもが軍閥化していて部下の給料をネコババし、武器や燃料をタリバンに横流ししていたこともよく知られている事実でした。
ですから、これだけではカブール政権のあまりに急な崩壊は説明できません。

そのきっかけを作ったのが、昨日も書きましたが、バイデンです。
この人物はタリバンと何回か協議をするとすぐにサジを投げてしまい、8月中の撤退スケジュールに固執しました。
当のバイデンは「撤退には好機などありえない」、つまり即時撤退にまさるものなしなどと言っているようですが、とんでもない。
撤収作戦というのは、昔でいう退口(のきぐち)、もっとも高度な戦略の組み立てが必要なのです。
馬鹿がやると、今までの成果が台無しになるばかりか、その戦線が全面崩壊してしまうからです。

同じ米軍撤収をやるにせよ、トランプは来年まで引き延ばしてでも拙速を避けようとしていました。
撤退はとりもなおさず脆弱な政権の竹馬の足を取り払ってしまうことなのですから、何度でも撤退に関する合意を敵方と重ねたうえで、それを強制させる軍事的担保を置いておかねばなりません。

トランプなら、即座に空軍基地のすべてを手放すなどという愚策に走らないはずです。
トランプは一つの合意が破られると、即座にタリバン中枢に報復をかけました。
こういう担保、あるいは重しが必須なのです。

「トランプ前大統領はタリバンのリーダーであるハイバトゥラ・アクンザダに対して、「もし合意を守らなかったら、どの国も経験したことがないほどの打撃を与えてやる」と警告していた。
そしてタリバンが初めて合意を破った時には、その脅しを実行に移して懲罰的な空爆も行っている。それ以来、タリバンはトランプ政権に恐れをなして、米兵は一人たりとも殺されなくなったのは有名な話だ」(朝香豊8月17日)
アフガン・首都陥落を招いたバイデン政権の大罪【朝香豊の日本再興原論 No64】 - Daily WiLL Online )

それを満足な縛りもかけず一気に8月中の撤収を強行すれば、そりゃこうなりますって。
だって、米軍は「夜逃げのような撤退」、大スポンサーの中国は今だ行けって、やっつけろと気合を入れているのですから、タリバンが行かないテはない。
かくして、2年くらいは米軍撤退しても持つだろう、といわれていたカブール政権は一晩で瓦解です。

さて、もちろんタリバンになんの変わりもありません。
つい最近まで大量の市民虐殺を続けていたのに、カブールに入ったら突然「善人」に生まれ変わるはずがないじゃありませんか。
どうも日本のヒダリの人はタリバンが反米であるから善人だと勘違いしているようですが、冗談ではない。
彼らはイスラムの衣を被ったビーストです。
タリバンは、かつてのISと同じ殺人嗜好者であり、極度の女性差別主義者、しかもペドフィリア(小児性愛者)です。

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よく安易にカブール政権はなにももたらさなかった、と言う人がいますが、そんなことはありません。
ものごとを一面だけで見てはいけない。腐敗か清潔かだけが国家と社会の判定基準ではないのです。
たしかに政府は腐敗していたかもしれませんが、アフガン史上初めて獲得された20年間の長きに渡る市民的自由は、ゆっくりですが確実に社会に浸透していました。
それを見ずに、腐敗していたから滅びたのだとばかり言うのは公平な見方ではありませんし、ましてやタリバンごときを「清潔」だと評するのはまったくの勘違いも甚だしい。
飯山陽氏はこう書いています。

「アフガニスタンはタリバン政権後からこの20年間に、女性の社会進出や自由が随分と伸張しました。
タリバンの制圧地域が広がる中、教育を受け自由な思想や生き方を学んだ女性たちは、地元を捨て、首都カブールに逃げ込むという現象が続いています。
しかし首都カブールにも、タリバンの攻撃は迫っています。昨日も自動車爆弾テロと銃撃がカブール市内で発生、アメリカは十中八九タリバンの仕業だとしています。
ジャーナリストなど「目立つ」女性も多く暗殺されており、女性ジャーナリストは暗殺の危険を感じています。もう続けられないという人もいます。タリバン支配下の人々によると、既にタリバンは女性に対して、男性の親族の引率がなければ屋外に出てはならないとか、全身を覆うブルカを着用せよと命じたり、男性が髭を剃ることを禁止するなどしています。
これは以前、1996年から2001年まで国を支配していた時のタリバンの政策そのものです」
「タリバンはいい人」と報じる時事は「使えるバカ」|飯山陽|note  

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シュクリア・バラクザイ

ノルウェーのアフガニスタン大使を務めた、著名な女性人権活動家であるシュクリア・バラクザイ氏は次のように述べています。

「タリバンが支配している地域では、強制結婚や性奴隷が強制されており、児童婚も増えています。
彼らは若い未亡人や若い女の子を人質にしています。これは、アフガニスタンの文化、宗教、そして戦争のすべてのルールに反しています。戦争犯罪は、アフガニスタンの人々、特にこの社会の女性に対して起こっているのです」(飯山前掲)

Arab newsはこう書いています。
Afghanistan’s women fear the worst as Taliban advance sows alarm and terror 
『‎‎‎アフガニスタンの女性は、タリバンの前進が警戒とテロをまくので最悪の事態を恐れる‎』

「米国主導の軍隊が8月末までにアフガニスタンを離れる予定で、タリバンは急速に領土を拡大した。
タリバン勢力とカブール政府との和平交渉の状態に関する不確実性は、アフガニスタンの女性の自由と権利の運命に重い影を投げかけている。‎
‎長い従属の後、アフガニスタンの女性は、米国主導の軍隊が市民の自由に厳しい抑制を課していたタリバン政権を倒し、女性を教育や家の外のほとんどの職業から締め出した2001年以降、前例のない自由を享受するようになった」
(Arab news前掲)‎

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Arab news

‎タリバンが追放されていたこの20年間、アフガニスタンの女性は様々な国家機関で重要な地位を占め、大統領に立候補し、議員、閣僚、大使を務めてきました。
統治政党は、男女平等や自由な表現のような民主主義の基本原則に反対していましたが、その芽は確実に育っていたのです。

「人々は一つの暗いタリバン時代を目撃した。また彼らが戻って来れば、間違いなく女性の労働は許されず、今の私にはいないだろう。
‎ナルギスはジャーナリズムの学位を持っているが、近年の女性ジャーナリストに対する標的型攻撃が急増したため、彼女らは職業を続ける危険を冒さないと判断した。‎
荒廃した社会と同様に、女性はアフガニスタンで不釣り合いに苦しめられ、世界で最悪の地位にランクされている。アフガニスタンで働く女性ジャーナリスト、女性の権利活動家、女性数人が武装勢力によって、あるいは親族によって殺害された」
(Arab news前掲)

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Arab news

諸外国の治安維持軍が撤退するに従って支配地域を拡大したタリバンは、かつてのタリバン政権時代と同じ政策をとり始めました。

「タリバンは女性に男性の夫なしの外での外出を禁止し、身体全体を包むブルカを着用するよう命じ、1996年から2001年まで国を支配したときのように男性のひげを剃ることを禁じた」(Arab news前掲)

強制結婚や児童結婚とは、タリバンが支配地域で指揮官が自らの戦闘員と女性(時には12歳以下の児童)と強制的に結婚させることをいいます。
タリバン兵士が占領した地域の一軒一軒を回り、若い女性を強制的に略奪するのです。

‎「タリバン‎‎の戦闘員は、12歳の少女と強制的に結婚し、政府軍からアフガニスタンの広大な波をつかむにつれて性奴隷に強制している。‎
‎ジハード派の司令官は、彼らの兵士が結婚するために12歳から45歳までの未婚の女性のリストを作り、彼ら勝利者の間で分配される。‎‎その後、彼女たちは性的服従の生活を強制される。
この‎女性と少女の残忍な扱いは、アフガニスタンの軍事崩壊の最新の兆候に過ぎない」
『アフガニスタンの強姦:前進するタリバンは、NATO離脱後に12歳の少女を戦闘員の奴隷「妻」に強制する‎』
Taliban are going door-to-door forcibly 'marrying' girls as young as TWELVE | Daily Mail Online

22歳のアフガンの女性ジャーナリストは匿名を条件にガーディアン紙のインタビューに応じ、怯えたアフガン女性たちが家族を捨てて、タリバンの支配する町や村から逃げ出さざるを得なくなっていると語っています。

「ベールを纏った若い未婚女性は、性奴隷を逃れるために急いで町を抜け出し、隣の村に身を隠さなければならなかった。
しかし、ここも安心できる場所ではなかった。過激派は、彼らが占領した領地の住民に、ジハード主義者との結婚から女性と少女を守ろうとすることに対し、すべての地元住民を銃殺すると通知した。
若い女性ジャーナリストと同行の叔父は、さらに遠い場所へ避難することを余儀なくされた。彼女が逃げる前に暮らしていた町では、過激派がすべての電話回線を遮断し、とうとう両親との連絡が途絶えてしまった」(ガーディアン)
‘Please pray for me’: female reporter being hunted by the Taliban tells her story | Taliban | The Guardian

また、タリバンは女性の教育の権利を完全に否定しています。
女性に対して高等教育はおろか、初等教育すら与えません。
どうしてこのような極度の女性差別に対して、日本軍の戦時性暴力を批判する人たちが沈黙しているのが、かえって不思議です。

一方平和にさえなればいい、と考える女性が多いことも事実だということもつけ加えておきます。‎

「彼女たちは、都市のエリート女性とのつながりを感じず、たとえ彼女らが女性の権利を犠牲にしても、平和を最優先事項と考えています」
(Arab news前掲)

タリバンには、国際社会に受け入れられる前提となるべき規範やルールが存在しません。
とても21世紀の現実とは思えない「イスラム法」をふりかざし、これを絶対善として、容赦ない人権侵害、迫害、虐殺をくりかえしていくでしょう。
国際社会は、タリバンが新政権を樹立しても、異教徒を人とも見ず、国際法よりシャーリア法を優先するこの時代錯誤なカルト集団を容認しないでしょう。
ただし、中国以外は。

なおタリバンは、女性の人権は「イスラム法の範囲内で認めていく」と言っているようです。
それを文字通りに受け止めて、タリバンが日本人が考える女性の人権を守ろうとしている、彼らは変わったのだ、国際社会の眼を考慮し始めているのだ、かつてのタリバンとは違う、と朝日などは喜んでいるようです。
https://www.asahi.com/articles/ASP8L2C2QP8KUHBI04R.html

これについて飯山陽氏はこのように答えています。

「イスラム法では、男は男、女は女にふさわしい権利と義務を神が与えてくださったと信じます。つまりイスラム法の範囲内での女性の人権というのは、神が与えてくださった女性の人権だ、という意味です。
そこには、行動の自由は含まれません。
「自由人女性」は単独では外出してはならず、外出する際には男性親族につきそわれている必要がある、というのが「イスラム法の範囲内での女性の人権」です。またその場合でも、かならず頭のてっぺんからつま先まで、全身を布で覆い尽くす必要がある、というのが「イスラム法の範囲内での女性の人権」です。イスラム法には男女平等や、宗教の平等はありません。(略)
ですから幼児婚、児童婚も「イスラム法の範囲内での女性の人権」です。
外で勉強なんてしている場合ではありません。
女の教育自体が禁じられているわけではありませんが、女の役割はとにかく家事と育児なので、できるだけ早い時期からそれに従事するのが「イスラム法の範囲内での女性の人権」となります」(飯山陽NOTE )

タリバンは変わりません。
彼らが崇めるイスラム法では、変わること自体が許しがたい罪悪なのですから。



 

 

2021年8月18日 (水)

スリーピージョーはやっぱりスリーピーだった

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バイデンはまだのんびりと夏休みをとっています。のんきなもんです。
カブール空港では、かつてのサイゴン空港のように、脱出を求める人が群がり大混乱しています。
空港内部も大混乱、空港外には唯一の脱出路となった空港に入れない人たちが空港の壁をよじ登って滑走路にまで進入しようとして、警備の米軍から威嚇射撃を受ける始末です。
米軍輸送機にしがみつき、空から落ちた人まででる騒ぎです。

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カブール空港で大混乱 タリバンを逃れようと飛行機にしがみつく人たち

米国に協力してきた人々や自由を求める人たちは、残れば処刑される危険があるために必死です。
そんなときに、タリバンが対空ミサイルを中国に要求したというニュースが流れました。

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www.fnn.jp

「タリバンは、9月にアフガニスタンから米軍が完全に撤退する前に、中国から中距離地対空ミサイル(SAM)の供給を得るために必死だ。アフガニスタンのタリバン共同創設者ムラー・アブドゥル・ガーニ・バラダ(別名ムラー・バラダー)は、水曜日に天津で開かれた代表団レベルの会合で、中国の王毅外相の前にSAMを手に入れたいという願望を出した。
タリバン代表団は、タリバンからバラダと中国側のイが率いる代表団間会議中に中国からSAMを要求した」と彼らは言った」(パイオニア2021年8月1日 )
タリバンは中国から空中ミサイルを求める (dailypioneer.com)

そんなもんを、今タリバンが手にしたら、脱出する民間機や軍用機の首ねっこを握られることになります。
タリバンがもう脱出は認めないと思えば、対空ミサイルを一発撃てばいいだけなのですから。
かつてのソ連軍が、米国が供与したスティンガー対空ミサイルで敗北に追い込まれたことをお忘れなきように。

私はこの7月のタリバン-中国会談で、中国は今後の支援だけではなく、タリバンのカブール進撃を容認したと考えています。
よく専門家は、カブール政権が腐敗していたとか、政府軍の将軍が腐り切っていたなどといいますが、それは今に始まったことではありません。
この20年間一度としてクリーンだった時期などなかったのですから、なぜ今になって一気に崩壊したのかという理由にはなりません。
一気に崩壊したのは、8月中の撤退スケジュールに固執する大統領がいたこと、バイデンならばなんの報復も受けずにカブール占領を果たせるという読みがあり、かつそれを精神的物的に後押しする中国という後ろ楯が存在したからです。

今や米国にとって軟着陸するチャンスは完全に失われました。
ひたすら損害を小さくするダメージコントロールの時期です。
米国が道義的に最優先するべきは、自分の国の民間人や政府関係者の脱出もさることながら、米国に協力してきたアフガン人を国外脱出させることです。
同盟国か破れたら、さっさと見捨てて「夜逃げのように」逃げた。
これでは、その後の米国の信用に関わります。
かつてのベトナムにおける敗北は米国に大きな威信の低下を招きましたが、可能な限り米国協力者を脱出させ、その後に米国内に引き受けしたことで多少なりとも救われています。

すべての国境検問所をタリバンが押さえたために、残るはカブールからの空路だけとなってしまいました。
アフガンは内陸国ですから、この空港の安全と空路の確保が生命線です。
今、米軍は緊急展開していますが、一国でやるべきことではありません。
なぜなら、一国でやってしまえば、その後もまた一国で背負わねばならないからです。
こういうときこそバイデンが大好きな「同盟」の力を使わない手はありません。

そのためには、米国は大統領自らが声を上げて、アフガン治安維持に出兵したNATO諸国(ISAF)と連携して、大空輸作戦を展開すべきです。
必要なことは、自由主義陣営が共同でアフガンの民主政府崩壊の後始末を支援したという実績なのです。
同じ理由で、今後大量に発生するとみられるアフガン難民についても、いままでのシリアなどと違って等閑視できないはずです
とうぜん、米国内にもアフガン難民を大量に引き受けねばなりません。

フランスのマクロン大統領は16日のテレビ演説で、アフガニスタンの不安化で「欧州に向けて大量に移民が流出する危険がある」と述べ、対応の必要性を訴えた。欧州各国は、アフガンでの活動を支えた通訳、協力者の亡命受け入れを進める一方、2015年にシリア内戦で経験した移民危機の再来を警戒している。
マクロン氏は、「アフガンにはテロ集団がおり、不安な状況を利用しようとしている」と警告。大量移民は犯罪の温床になりうると指摘し、「欧州だけでは結果を引き受けられない」と国際社会の協調を求めた」(産経8月17日)
EU、難民問題協議へ アフガンめぐり危機再来警戒(産経新聞) - Yahoo!ニュース 

空港と空路の安全確保、避難民の保護と脱出支援、その輸送、そして難民の今後の処置まで含めて包括的に緊急の討議をせねばなりません。
これは国務長官や国防長官に任せきりにしていいことではなく、この地域全体の今後を決定する重大なことです。
そのために米国が主導してボスト・カブール陥落の構想を打ち出さねばならないのですが、こんな時に夏休みもないものです。
まさにスリーピージョーそのもの。

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タリバンが米中の力関係を逆転させる(遠藤誉)

そもそも米国インテリジェンス機関はかなり前から、予想を超えた速度でタリバンが進撃するとホワイトハウスに警告を鳴らしていました。

米軍撤退が進むアフガニスタンをめぐり、ロイター通信などは11日、反政府勢力タリバーンが90日以内に首都カブールを陥落させる恐れがあるとの米情報機関の見立てを報じた。情勢は悪化する一方だが、バイデン政権は8月末までの撤退方針を変えない姿勢を改めて示した」(朝日8月12日)
アフガン首都「90日以内」に陥落か 米情報機関見立て:朝日新聞デジタル (asahi.com)

バイデンは聞く耳を持たず、予定通りの撤収に固執しました。 
18日まで夏休みで戻らないと公言していたそうで、サキ報道官も夏休み中でした。

国防総省のカービー報道官は11日、「治安状況の悪化には留意している」としつつも、予定通り8月末の期限に向けて撤退を進める意向を示した。バイデン大統領も10日、撤退方針に変更があるかを問われると「ノー」と否定し、「私は決断を後悔していない」と判断を変えるつもりがないことを強調した」(朝日前掲)

それが今回の混乱を招いたことは、ブリンケンも認めています。

「米国のブリンケン国務長官は、CNNの番組に出演し、アフガニスタンの反政府勢力タリバーンによる首都カブールへの進攻について、アフガン軍が自国を防衛することができなかったという事実を目の当たりにしていると述べ、「このことが起きたのは、我々が想定したよりも早かった」と述べた」(CNN 2021年8月16日)

予想よりもはるかに早くタリバンがカブールに入城するという警告を情報機関から受け取っても無視し、対応策を立てないまま呆然と状況を追認したあげく、米国を信じたアフガンの人々を置き去りにしようとしている、情けないにもほどがあります。
バイデンはたりばんを過小評価していました。

「バイデン大統領は先月「タリバンは北ベトナム軍ではない。(両者は)能力という意味で比べ物にならない。アフガニスタンのアメリカ大使館の屋上から、人々がヘリコプターで運び出されるのを目にするような状況にはならないだろう。まったく比較にならない」と、タリバンの能力を完全に過小評価していたから最悪だ。自分が起こり得ないと断言していた状況が展開したのだ。しかも、自分たちの想定をはるかに上回る速度で、だ」(朝か香織浴衣8月17日)
アフガン・首都陥落を招いたバイデン政権の大罪【朝香豊の日本再興原論 No64】 - Daily WiLL Online

バイデンが精力的にやっているのは、唯一自分は悪くないという言い訳だけです。

「バイデン米大統領は16日、混乱を受けて批判が強まる中、自身の決定の正当性を訴え、米軍にアフガンの内戦で延々と戦いを続けさせるか、トランプ前大統領が交渉した撤退の合意を実行するか選択しなければならなかったと主張。
国外に脱出したアフガン政府指導部のほか、タリバンと積極的に戦わなかった同国軍を非難した」(ニューズウィーク8月17日)
アフガン空港、死者が出る混乱 バイデン氏は撤退の正当性主張|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 

悪いのはトランプ、負けたのはアフガン政府軍が弱かったからというわけで、そんなことを今さら言ってなにになるのでしょうかね。
現職大統領はあなた、そして今やるべきことは、ひとえに危機管理なのです。
ところがスリーピージョーときたら言い訳だけすると、またバカンスに戻ってしまったのですから、なんともかとも本当に眠い奴。

トランプから「最悪の事態を引き継いだ」とバイデンは言っていますが、そうでしょうか。
トランプも確かに撤退を決定していましたが、それをいかに軟着陸させるのかに心を砕いていました。

「8月14日、バイデン大統領は「私は(大統領)就任に際し、タリバンを軍事的に最強の状態にした前任者の取引を引き継いだ」と述べ、この事態の責任をトランプ前大統領になすりつけたが、これはあまりにもひどい話だ。
 たしかに、米軍のアフガニスタンからの撤退を決めたのは、トランプ前大統領である。だが、トランプ前大統領はタリバンのリーダーであるハイバトゥラ・アクンザダに対して、「もし合意を守らなかったら、どの国も経験したことがないほどの打撃を与えてやる」と警告していた。そしてタリバンが初めて合意を破った時には、その脅しを実行に移して懲罰的な空爆も行っている。それ以来、タリバンはトランプ政権に恐れをなして、米兵は一人たりとも殺されなくなったのは有名な話だ」(朝香織前掲)

おそらくトランプならば、タリバンと幾重にも合意を重ねて縛った上で、その担保として厳重な軍事的備えを残したまま粛々と撤収したことでしょう。

「トランプ前大統領は米軍撤退を決めた後も、バグラム空軍基地に米軍の戦闘機と軍用ドローンをそのまま残し、タリバンの動きを監視するために用いていた。ならず者たちに対して軍事的な脅しが必要であることを、トランプ前大統領は理解していたのである」(朝香前掲)

夜逃げのように撤退してしまった、どこぞの大統領とは違います。
中国が大口を開けて笑っているでしょう。
中国は明瞭に理解したはずです。こいつは使えない。だから誰よりも頼もしい味方だ、と。
それにしても部下たちが懸命のダメージコントロールをしている真っ最中に、またプールサイドに戻る大統領がいるとは。

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アフガン空港、死者が出る混乱 バイデン氏は撤退の正当性主張 ...

さすがのバイデン贔屓のCNNも批判しています。

「戦争終了時に展開するこの大混乱のシーンは、ベトナム戦争終結時の1975年にサイゴンが陥落した際の風景を想起させる。 バイデン氏が今年初めに撤退を検討した際に悩まされたシーンであり、今後バイデン氏につきまとうのは確実とみられる。
すでに一部の議員からは政権に対して、どうして情報機関が現地の状況についてこれほどまでに判断を誤ったのかや、米国人や味方の避難に関するもっとしっかりとした危機管理計画が定められていなかった理由について、より多くの情報を求める声が出ている。 米国を支援したアフガン人の通訳の避難などにも質問が飛んでいる。
バイデン氏はキャンプデービッドでもワシントンと同様の報告を受けられるが、危機の際にワシントンを離れている大統領の見え方を気にする当局者もいる」(CNN 2021年8月16日)

かくして今回の一件は、バイデン政権の危機管理能力の欠落を象徴するものとなりました。
やはりこの人物は大統領の椅子などに座らせてはならなかった人物だったようです。

 

 

2021年8月17日 (火)

中国とタリバンの愛憎関係

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アフガンの新しい支配者になったタリバンと中国との関係は、愛憎相半ばする関係です。
中国は既にタリバンを承認していますが、かといって友好関係が万全というわけでもありません。
というのは、タリバンこそ中国が考えた新しい形の戦争「超限戦」の歴史上初めての実行者であり、その反面ウィグル独立を支援した過去を持っているからです。

「超限戦」とは毛沢東の人民戦争論の現代版です。
従来あった軍事と非軍事、軍隊と民間人、平時と有事の垣根を取り払い、あらゆる機会を狙って軍事的目標のみならず民間施設をも攻撃するというものでした。
簡単にいえばノールール。掟無用。弱者の反則技。国際法などあってなきがごとしの無法者の戦略、それが超限戦でした。

これを1990年代に書いた解放軍の喬良と王湘穂の二人の大佐は、超限戦でしか中国は米国に勝てないと信じると同時に、これを実際に中国軍がやることによる大きなデメリットも当然考えたことでしょう。
仮に成功しても、その主犯が中国であるとバレれば、中国は国際社会から追放されてしまうからです。
それは今のCOVID-19の世界的パンデミックの発生源が武漢ラボだった場合、計り知れない打撃を受けるのは、当の中国だということを考えればお分かりになるでしょう。

しかし、この超限戦を実際にあっさりとやってのけた一群がいました。それがアルカイダです。

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19年前の9月11日、何が起きたのか

アルカイダが行ったのが、2001年米国同時多発9.11テロでした。
この時、中国軍内部に異様な歓喜が走ったそうです。ざまぁみろ、米帝め、思い知ったか、というわけです。
中国軍の高級幹部は、そうかこうやれば勝てるのだ、これは我々が研究していた超限戦そのものじゃないかと考えたようです。
そして、この9.11同時テロをもって、現代戦には戦場がなくなり、あらゆる場所、あらゆる時を選んで攻撃が可能だ、という考えを新たにしたといいます。

かくして、中国軍にとって9.11は中国軍の不滅の金字塔となったのです。

「ビン・ラディンとタリバン・アルカイダ組織の“テロ傑作”によって、『超限戦』本は世界的に有名になり、毛沢東の『持久戦を論ず』の次に、中国が生み出した優れた戦略思想書の地位を占めることになった」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.402 2021年8月16日)

さて、このようにしてアルカイダ、あるいはその親戚筋のタリバンは、中国軍の密かな憧れめいた対象となったのでした。
中国からすれば、もしタリバンとの関係が良好ならば、秘密軍事支援のひとつも送り、彼らを手先として使いたいような存在だったはずですから。
しかし、当のタリバンはそんな中国軍の熱い視線をよそに、90年代までアフガン国境を超えて来るウィグル人を訓練キャンプに入れて軍事訓練を与えていたのですから、皮肉なもんです。

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アフガンで支配地域広げるタリバン 米軍撤収で力の空白、軍閥も呼応

これを重く見た中国共産党は、9.11の報復として米国が始めた対テロ戦争に賛同し、タリバンも敵視するようになります。
ただし表面的には、です。
中国の本音は、ウィグル人をイスラム原理主義過激派として弾圧する口実にするための方便だったにすぎません。

ですから、表面的には米国の対テロ戦争に賛同しつつも、実際は中国はアフガンに一切介入しようとしませんでした。
1993年に内戦が勃発すると、中国はすぐさまアフガンから外交官を引き上げ、1996年~2001年の第1次タリバン政権時にも、深くかかわろうとはしませんでした。
これは米国に協力しないという意志表示でしたが、外交に疎い(というか概念そのものがない)タリバンにはそんな腹芸は通じるわけがなく、「イスラムの敵」とみなされた中国人は、アフリカや中東で次々に標的になっていきました。
ここで表面的にはタリバンと中国は決裂します。

しかしそれが大きく変化したのは一昨年の2019年6月のこと、中国外交部報道官の陸慷は記者会見で次のように驚くべきことを発表し、世界を驚愕させます。
なんと中国がタリバンと手打ちしたというのです。

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中国が米国の撤退を先取りしてタリバンを承認したというのも衝撃でしたが、それ以上にあの硬直したタリバンが「外交」に目覚めたということが驚かれたのです。
その時タリバン使節団の代表で登場したのが、今のタリバン政権の実質的首領であるガーニ・バラーダです。

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ガーニ・バラーダ 
タリバン幹部に日本から独占インタビュー 「われわれはアフガニスタ

「タリバンの在ドーハ弁事所主任のムラー・アブドゥル・ガーニ・バラーダおよび数名職員が中国を訪問した。中国側高官は彼らとアフガン“和平和解プロセス”について意見交換を行った。
これには世界が驚愕したが、中国の超限戦思考を知っていれば、十分ありうる展開だったといえる。
当時、トランプ政権はタリバンとの和平協議を模索していた。近くアフガンの大敗戦処理があるとみた中国の方が先手を打った格好だった。
そして今年の7月28日、王毅国務委員兼外相は天津市でタリバンの幹部と会談し、アフガニスタン和平などについて意見交換を行った」(福島前掲)

福島氏によれば、この中国-タリバン会談で中国側は、①「アフガンで決定的な力を持つ軍事、政治勢力だ」と強調。②東トルキスタン・イスラム運動らテロ勢力と一切の関係を絶て、と主張し、
タリバン側は、「いかなる勢力もアフガニスタン領土を利用して中国に危害を与えるようなことをは許さない。中国にアフガンの再建にさらに参与するよう希望する。タリバンは中国の投資者のためにより良いビジネス環境を提供する」と答えたといいます。

つまりタリバンは中国がアフガンに手をださなければ、「良いビジビネス環境を提供する」、というのです。
あのコチコチのイスラム原理主義者のタリバンが、「投資歓迎」と言ったのですから、こりゃ驚きです。

この会談で中国のアフガン方針は決定しました。
タリバン承認、その後に政権が樹立されれば支援を与え、投資を促進していく、です。

「これは我々が実務的態度だということ。(アフガニスタンについては)あなたがあなたの国をどのように統治しようとかまわないが、中国に影響を及ぼしてくれるな、という態度だ。
中国のようなアジアの大国がこうして公開の場でタリバンとの会見を行い、タリバン政府の合法性を約束したのだから、これはタリバンの巨大な外交勝利であったろう」(上海復旦大学南アジア問題専門家・林民旺)

このような情勢の中でタリバンは全土を掌握したわけですが、当然のこととしてこの会談合意の履行を求めるでしょう。
中国からしてみても、汗ひとつかかないで米国を追い出すことに成功し、そのうえアフガンを一帯一路に組み込めるまたとないチャンス到来というところです。
中国にとって、アフガンをおさえることのメリットは計り知れません。
たとえばアフガンには、中国の一帯一路政策の中央アジア部分を成す中国-パキスタン回廊(カラコラム・ハイウェイ)が通っていますが、その安全を保障させ、敵国インドを回避して友好国イランへの直通ルートを作ることができます。
完成すれば、中国の数少ない同盟国ののイラン、パキスタンと陸路で結べ、いくらインド洋がクーッド聯合艦隊に支配されても安心できます。パキスタンのタリバンTTP武装集団を抑えることもでき、タリバンを通じてカジキスタンやウズベキスタンなどの周辺国にも影響を強めることができます。
これで中国か構想するユーラシア陸路の完成に一歩近づくというもんです。めでたし、めでたし。

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パキスタンのカラコルム ・ ハイウェイ沿いインダス川を渡る橋の建設

そのうえ、また中国は推定1兆ドルを超える価値があるとされるウラン、リチウム、銅(すでに着工済み)、金などアフガニスタンの鉱物資源を狙っているとも言われています。
周辺のウズベキスタン、トルキスタン、カザフスタンの石油・天然ガス資源に対し数十億ドルの投資をしているので、これら油田から中国に伸びるパイプラインの安全も確保できます。

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ついに動き出した中央アジアの北朝鮮、トルクメニスタンの天然ガス輸出

中国にとってはいいことづくめ。
タリバンがこのような中国の権益さえ守ってくれれは、いくらでも支援しよう、カネも武器も喜んで売ってやろう、いやーまったくオレラはウィンウィンじゃないか、ということのようです。

と、ここまではチャイナの「明るい未来」ですが、この先となると微妙です。
諸外国でタリバン政権に援助を与える国などありませんから、必然的に中国だけが唯一の援助国となります。
タリバン国を承認するのは、中国の属国となってしまったパキスタンか、トルコ、イランくらいなものでしょうか。
国連の議決権すら与えられるか微妙です。

おそらく国際社会はミャンマー軍事政権に対してと同様の厳しい経済制裁をかけるでしょう。
常日頃は安保理でならず者連合を組んでいたロシアさえ、制裁に回ると思われます。
つまりまたもや、中国は世界の中で孤立すると展開になります。

また、今まで中国がうま味を味わえたのは、距離を開けていられたからです。
しかし、今後中国はタリバン新政権に対していやでも深入りすることになります。
一帯一路の名目で与える経済支援のみならず、近代兵器の操作を教える人民軍の軍事顧問も派遣することでしょう。
おそらく相当数の中国軍人が軍事顧問団としてアフガンに渡ることになるはずです。

今のアフガンはとりあえず全土を粗ごなしに平定しただけのことで、反タリバン各派は周辺国に逃げ込んで機をうかがっているだけです。
アフガン戦争の原因の一つは部族対立ですから、簡単に終わるはずがありません。

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時期を見て反タリバン勢力は、ゲリラ戦やテロ襲撃というかつてタリバンがやった方法を、そっくりそのまままねた攻撃をしかけてくるでしょう。
パイプラインは狙われ続け、中国企業や中国人はテロに合います。
その背後には、ひょっとしたら苦い敗北を喫したロシアや米国の影も見え隠れするはずです。
さぁ中国さん、シリアでロシアがやったような空爆で支援しますか、そこまで踏み込むともう後戻りはできませよ。

一方、初めこそ友好的ですが、やがて厚かましく利権漁りをしてくるにちがいない中国をタリバンがどう思うか、です。
タリバンというか、アフガン人の攘夷体質はそうそう簡単に変わりませんからね。
お手並み拝見です、習さん。
たぶん自分だけはうまくやれると信じているのでしょうが、ここが「帝国の墓場」だということをお忘れなきように。

 

 

2021年8月16日 (月)

タリバン、アフガン全土制圧

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タリバンが首都カブールを陥落させました。
ひとつの国が崩壊する時は、かくもあっけないもののようです。
1975年5月1日のサイゴンの情景が蘇ります。
国家が堅牢で、常にあってあたりまえと思っている日本人はこの光景をよく見ておいた方がいい。

ロイターは大統領府が制圧され、ガニ大統領は国外に脱出したと伝えました。

「シンガポール=森浩】アフガニスタンガニ大統領が15日、首都カブールから国外に退去し、隣国のタジキスタンに向かった。アフガン政府でイスラム原理主義勢力タリバンとの和平交渉を担当するアブドラ国家和解高等評議会議長が明らかにした。2001年の米軍進攻後に成立したアフガンの民主政権は事実上崩壊した。
アブドラ氏は公開したビデオメッセージで、ガニ氏を「元大統領」と呼んでおり、ガニ氏は既に辞任している可能性がある。アブドラ氏はガニ氏について、「国をこのような状況に追い込んだ」と批判した
ガニ氏は14日の演説で「治安部隊の再動員が最優先で、必要な措置が進行中だ」と述べ、戦闘を継続する意志を明らかにしていたが、わずか1日で国外に退去した。タリバンは1996年にカブールを制圧した際、ナジブラ元大統領を処刑した経緯がある。
国内の大半を支配下に置いたタリバンは15日、カブール郊外に進攻を始め、政府側と政権移譲に向けた協議の開始を明らかにしていた。タリバン報道官は15日夜、戦闘員に治安維持の名目でカブール市内に入るよう指示を出した」(産経8月15日)

大統領が国外に脱出したのは、タリバンが1996年に同じくカブールを占拠した際にナジブラ元大統領を処刑した過去があるからです。
おそらく今まで占領地でさんざんしてきたように、タリバンは政府と政府軍関係者、そして彼らからイスラムの掟に背くと目された市民を容赦なく摘発し、処刑していくことでしょう。

わずか1か月前までは、大統領は軍に抗戦を命じ、政府軍にとっての情勢は日に日に悪化しているものの、「まだ政治でなんとかなる状況かもしれない」と米国政府は見ていました。
米国の目論見では、政府軍は圧倒的な装備を持っているから、もしも政府が各地の部族長を味方につけることができれば、タリバンと政府のどちらも決定的に勝つことも負けることもない、膠着状態が訪れるかもしれないと、考えていたようです。
勝てないが負けない不安定も、長く続けばそれは「平和の時代」だというわけです。
もちろんそれは真の平和を意味しませんし、その「平和」の中でもタリバンは報復処刑や誘拐、暗殺、刑罰を繰り返しましたが、それもいつものことだと割り切ろうと、当のアフガン人は考えていたようです。
アフガン人にとって、近代において数十年単位の「平和」など無縁だったからです。
米国によってもたらされたこの20年の安定した時期は、特筆される時代だったのかもしれません。

この時代に、アフガンは女性の権利などが大幅に認められるなどしたのですが、その危ういバランスに乗った「平和」は根本から崩壊しました。

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全土支配下に」タリバン声明

外国の大使館は一斉に退去を開始し、日本大使館も撤収を始めました。
彼ら外交官は逃げおおせるでしょうが、多くのアフガン国民にとってカブールは逃げたくても逃げられない人々の最後の溜まり場と化しています。

「【カブール、ワシントン共同】アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが15日、首都カブールに進攻して大統領府を掌握、ガニ大統領は国外脱出した。ロイター通信などが伝えた。政権は事実上崩壊した。タリバンは全34州都をほぼ制圧し「全土が支配下に入った」との声明を発表、治安維持名目で戦闘員を首都入りさせ、カブール郊外で衝突が発生、40人以上が負傷した。
 イスラム原理主義の神学生らが結成したタリバンが首都を支配すれば、米中枢同時テロ後の米英軍による攻撃で旧タリバン政権が崩壊して以来約20年ぶりとなる。バイデン米政権は15日も米軍撤退方針を堅持すると改めて表明した」(共同8月15日)

また国外へのルートすべては、すでに7月下旬にタリバンが検問所を設置しています。
各地に残存する政府軍兵士やその協力者たちは、処刑を恐れて必死に国外に逃亡を計るでしょうが、その道は険しいようです。

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タリバン、国境の要所複数を制圧と アフガニスタン - BBCニュース  


「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは9日、イランとトルクメニスタンへ至る国境通過の要所数カ所を制圧したと発表した。
タリバンは、北部ヘラート州で大攻勢を展開し、イランに近いイスラム・カラ、トルクメニスタンと国境を接するトルグンディの街をそれぞれ制圧したと明らかにした。アフガニスタン政府当局もこれを認めている。
現場動画では、国境税関事務所の屋根からタリバン勢力がアフガニスタン国旗を引き下ろす様子が映っている。
イスラム・カラ検問所は、アフガニスタンとイランを結ぶ最大級の交易の要所で、月額約2000万ドル(約22億円)の収入を政府にもたらしていた。トルグンディは、アフガニスタンとトルクメニスタンを結ぶ2大交易拠点のひとつ」(BBC7月10日)

今や残された米国大使館と諸外国の外交関係者、そして民間人をどのように国外退去させるのかが焦点になってきました。
米国は米国職員、関係者の救出、渡米ビザ発給支援等で約5000人の増派をするとともに、カブール国際飛行場に連絡基地を置くと公表しています。

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サイゴン陥落はベトナム戦争に終止符を打った

しかしこのカブール国際空港も、タリバンの海に浮く小島のようになっているはずです。
これも1975年のサイゴン・タンソンニャット空港と重なります。
おそらく似たような大規模な脱出作戦がとられるはずですが、その際に、米国の協力者をどれだけ逃がすことができるのかが、今後の米国の信用につながります。

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アフガニスタン地図

それとは別に、米国は事後対応に追われています。
7月4日には、オースティン米国防長官が、アフガンと国境を接するウズベキスタンとタジキスタンの外相と相次ぎ会談し、アフガン情勢の安定に向けた協力を要請しています。
両国は米軍のアフガン進攻に際して基地を提供した経緯があり、バイデン政権としては両国をアフガンの治安対策の拠点とする構想を描いているようです。また、ロイターによると、バイデン政権はタジク、ウズベク、カザフスタンの中央アジア3カ国を、米軍協力者の一時受け入れ先にする方向で調整を進めているといいます。
おそらく米国は、これら中央アジアの国々となんらかの軍事協定を締結し、支援を送ることになるでしょう。

一方、アフガンを自分の弱い下腹だと考えているロシアは、アフガンから中央アジア諸国へのイスラム原理主義テロリストの浸透を恐れて軍事支援を強めています。
この動きは米国と一緒ですが、ロシアは米国よりも遥かに強い影響力を保持しています。
現にロシア軍は8月5~10日、タジキスタンと、同国南部のアフガン国境近くで、隣国のウズベキスタン軍も加えた3カ国合同演習を行いました。
この3カ国演習の目的は、国境から侵入したイスラム武装集団を撃退することだとされています。
同じくロシアは、8月2~6日には、ウズベキスタン南部国境沿いのテルメズでも同国軍との演習を実施しています。
これらは米軍がアフガンから完全に撤退下後に生まれる軍事的真空状態に、イスラム過激派と中国が影響をおよぼすことを念頭においたものだと見られています。

一方タリバンは、政権奪還をもくろんでいた去年段階から、各国と外交折衝を始めています。

「天津で王毅と会談したタリバン代表団は、7月初めにはモスクワを訪問し、かつて宿敵だったロシアからも、中国と同様の承諾を引き出している。そしてタリバンもロシアや中央アジアの旧ソ連領国家の脅威とならないと表明した。
インドも6月、同様にタリバンと接触。タリバンといかなる形であっても接触しない、という立場を変えて、初めてタリバンと正式な交渉ルートを開くことにした。(略)
中国とタリバンの天津の会談後、ブリンケン米国務長官は、本音かどうかはわからないが、中国がアフガン事務に参与することは、「ポジティブなこと」と期待を示した。中国がタリバンに対する経済的影響力でもって、平和的に衝突が解決し、本当に代表制と包括性をもった政府が誕生できるのであれば、すべての方面の利益になる、という」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.402 2021年8月16日)

タリバン政権を巡っては魑魅魍魎が跋扈するでしょうが、彼らの本質は変わらないのではないかと私は思います。
この20年間の民主国家としての積み重ねは帳消しになり、「イスラム法」が支配します。
そして中国はいち早くタリバン政府を承認して国交を結ぶでしょうし、巨額の援助を復興支援と称して送り込み、インドに替わって経済影響力をのばそうと図るはずです。
なお、中国とタリバンの関係についてはやや複雑なので、別記事といたします。

本日は、中国のコロナ再拡大についてアップしましたが、急遽差し替えました。

 

2021年8月15日 (日)

日曜写真館 まことにも獅子の愁や涅槃像

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獅子頭八方にらむ土用干 加藤一智

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獅子頭毛の房々や神の留守 野村喜舟

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獅子頭まつる神座荒東風す  巌谷小波

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屋根ごとに魔除獅子置き仏桑花 轡田進 

2021年8月14日 (土)

米軍「夜逃げのような逃げっぷり」、たちまちアフガン政権崩壊の危機へ


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アフガンが南ベトナム化しています。
米軍の撤退の声を聞くやいなやで、かつての南ベトナム崩壊の速度をはるかに追い抜いてしまいました。
首都カブールからわずか150キロの距離にあるガズニ州の州都ガズニが制圧されました。
米国は最低でも2年、悪くても半年ていどは持ちこたえると思ったようですが、米軍撤退が完了しないうちから、34州都のうち3分の1の10州都が陥落してしまいました。
米軍当局は6月下旬の時点で、カブールについて「8月末が期限の駐留米軍撤収から6カ月以内に陥落する可能性がある」と予想しましたが、当局者の一人はワシントンポストに「すべてが悪い方向に進んでいる」と述べ、従来の見通しが甘かったという認識を示しているそうです。
バイデン政権は30万人規模のアフガン政府軍は大半が首都カブール周辺に集結しているとし、簡単には陥落しないとしているようです。

しかし政府軍の士気は最低であり、逃亡が相次いでいます。
今まで北部同盟と共闘することを拒んでいたガニ大統領も、とうとうドスタムとの協議を開始し始めたようですが、いかんせん遅すぎます。
ドスタムが握るマザリシャリフが陥落すれば、長年にわたり反タリバンの根拠地だった北部での政府支配は完全崩壊する恐れがあります。
「イスラマバード、ワシントン共同】猛攻を続けるアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは11日までに、全34州都のうち9州都を制圧した。2001年の米中枢同時テロ後に米軍などの攻撃を受けてタリバン政権が崩壊して約20年。駐留米軍撤退完了が今月末に迫る中、タリバン幹部は首都カブールに向け進撃しているとし「3、4週間で首都を占領する」と述べた。
米軍の後ろ盾を失ったアフガン政府は
防戦一方。約6割の地区をタリバンが支配し、この数カ月で戦闘地域から数十万人が避難した。米紙ワシントン・ポストは10日、カブールが3カ月以内に陥落する可能性があるとの米軍の分析を報じた。」(共同8月11日)
支配地域の色分け図をみると、タリバンを表すドス黒い赤で染め上げられています。
ここまで戦線が崩壊してしまうと、もう和平交渉の余地はありません。
二度と米軍が戻ってこないことが明らかな以上、アフガン政権には挽回の余地がまったくなくなったからです。
タリバンにとって譲歩する意味がまったくなくなった以上、一気にカブールを陥落する所まで突き進むでしょう。
遠からずタリバン政権が樹立されるでしょうが、欧米は承認せずとも中国とロシアが承認し、正統政権と認めるはずです。
そして今後タリバン政権には色濃く中国の影が覆うはずです。
本来は共産主義とイスラム原理主義は不倶戴天の敵のはずですが、敵の敵は味方ということです。
中国はその伝でイランとも親密な関係を築いているようです。

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もう少し詳しくみていきましょう。
8月8日、アフガニスタン政府軍の兵士数百人が、集団でクンドゥーズ近くでタリバンに投降しました。
クンドゥーズ は州都であるだけではなく、2001年に米国と共闘した北部同盟によってタリバンが追い払われた象徴的な都市であり、ここの奪還は、タリバンにとって天王山を制したことになります。
このクンドゥーズ攻略にあたってタリバンは、クンドゥーズ 州の周辺部を支配下に置き、3カ月掛かりで陥落させています。

クンドゥーズ、アフガニスタン、8月9日(AP)― アフガニスタンの反政府組織タリバンは8月8日、同国北部でタジキスタンと国境を接するクンドゥーズ州の州都クンドゥーズのほとんどを手中に収め、同市の空港を巡って政府軍部隊との戦闘が続いている。
首都カブールからほぼ真北に約200キロの位置にあるクンドゥーズは、アフガニスタン北部東西南北の主要幹線道路が交わる要衝。
戦闘は州知事官邸と警察署を中心に展開し、タリバンが両方の建物に加えて、同市にある刑務所も制圧し、州都を押さえるのも時間の問題だ」(AP 8月8日)
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タリバンは既に大部分の州都を制圧しており、政府軍は隣国に逃亡する部隊が相次ぎました。
「また北東部バダフシャン州ではタリバンの攻撃で、政府軍兵士が戦わずして戦線を離脱し、千人以上が隣国のタジキスタンに越境逃亡した。米ワシントン・ポストによると、中国、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン各国と接する北部地域の国境地帯はすでにタリバンが制圧し、検問所での関税を徴収しているという」(WEDGE7月12日)
タリバン、アフガン全土で攻勢、米撤退加速、大使館員の“脱出”が焦点に(Wedge)
その時、膨大な米軍装備が置き去りにされており、今やタリバンはハンビーに打ち跨がり、米軍制式自動小銃を装備しているありさまです。
次の焦点は、第2の都市カンダハルですが、この都市はいまだ攻防が続いていますが、もはや時間の問題だと見られています。
この膨大な米国兵器の遺棄も、かつてのベトナム戦争終了時と酷似しています。
今や、カブールの米大使館員の撤収が注目の的にすらなっており、米大使館員の撤退が始まれば、各国は遅れてはならじとその後に続き、カブールはまさに1975年4月30日のサイゴンと化します。
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このような戦線の雪崩的崩壊はバイデンの命令によって引き起こされたものです。
「米国防総省によると、4月から始まった撤退作業はこれまでに「90%が完了」した。2500人いた駐留軍のかなりの部分がすでに撤収したと見られている。現地からの報道によると、米空軍の主要な拠点だったバグラム空軍基地では、5日未明に撤収が完了したが、最後の部隊は基地を引き継いだ政府軍に通告することもなく、“夜逃げ”するように基地を後にしたという。
政府軍側は米軍が撤収して2時間以上経って初めて米軍の姿が消えたことを知ったという。しかも、米軍が撤退して政府軍が基地に入る間に、何者かが基地内に侵入し、米軍の残した軍事物資の一部を略奪するというおまけまでついた」(WEDGE 前掲) 
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この慌ただしい米軍の「夜逃げのような逃げっぷり」には理由があります。
新政権が誕生したおり、5月1日までに約2500人の駐留米軍を完全撤退させ、アフガニスタンが不安定化するリスクを取るのか。もしくは5月1日の期限後も駐留を続けることでタリバンのほうから合意を破棄され、アフガン政府とタリバンの間でようやく始まった和平プロセスを断念するのか──」(ニューズウィーク 2021年3月31日)
このアフガン撤収は、民主党-共和党を超えた超党派的合意でした。
国防総省の資料では、20年間にも及ぶアフガン駐留における米軍の戦死者が2200人、負傷者が2万人以上。
さらにイラクでは、米兵4500人以上が死亡し、3万2000人以上が負傷したということです。
そしてアフガンには常に1万1000人の大部隊を常駐させねばなりませんでした。
東アジアでは、朝鮮半島の陸軍第2師団や、沖縄の第3海兵遠征軍は、常に部隊を抽出され続けて、満足な定員に達したことがない有り様だったようです。
陸軍は州兵にまで動員をかけてなんとかアフガン戦線に手当てしている状況で、これでは中国と対峙するどころではありません。
ですから、中国と真正面から対抗するには、アフガンからの完全撤収が急務だったのです。
かつてのベトナム戦争でも、米軍の撤退直後に、その軍事的空白を狙って中国が南ベトナム領西沙諸島に侵攻しました。
同じように、このアフガン・イラクでの出血の20年間来の時期に、中国は南沙諸島の軍事基地化を完成させてしまいます。
この愚かなアフガン介入がなければ、米国が中国の台頭を易々と許すことはなかったでしょう。
中国の脅威にいち早く気がついたトランプが、一刻も早くアフガンからの足抜きを考えたのには、そのようなわけがあるのです。
アフガンを清算し、戦線を縮小し、中国への台頭に備える、これはいつどうやってという時期と方法だけの問題に絞られており、今年中にアフガン撤退を開始するのは既定路線でした。
一方戦費も6368兆円にも登るという試算がでています。
「米国のアフガニスタン、イラク、シリア、パキスタンでの戦費が2001年の戦争開始以降で5兆6000億ドル(約638兆40000億円)に上っているとの新たな試算が明らかになった」(ウォールストリートジャーナル 2021年8月12日)
これは将来の米国に大きな負の遺産として残すことになりました。

「(ブラウン大学クロフォード氏は、国防総省は戦費をごまかそうとしているわけではないが、その試算は戦争の「真の費用」をまったく反映していないと指摘。例えば、国防総省の医療費は、戦地での負傷の手当てと、その直後の治療が中心で、長期的な治療や退役後の継続治療は十分考慮されていない。
 ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)のトッド・ハリソン上級研究員は、退役軍人の将来の医療費がどの程度になるのかは分からないが、巨額に上るだろうと話す。イラクやアフガンでの戦争だけでなく、高齢化するベトナム戦争の退役軍人の医療費も増加しており、復員軍人省の予算は急増している。
ハリソン氏によれば、同様にして向こう数十年間イラク、アフガン戦争の退役軍人も増加していくため、医療費は増加の一途をたどる公算が大きい。「退役軍人の医療費がどこまで膨らむのか皆目見当がつかない」とハリソン氏は話す」(WSJ前掲)
米戦費、中東・アジアで約640兆円=民間試算 - WSJ

トランプはいち早く撤退を今年5月1日に定めましたが、これを引き継いだバイデンが考えたのは、5月1日の期限を少しだけ延長し和平交渉に持ち込む時間稼ぎでしたが、これに失敗。
ふたつめは、タリバンとアフガニスタン政府から何らかの和平を取り付けることでしたが、これにも失敗。
もちろんアフガン政府に巨大な軍事支援を与え、空から爆撃をで支援するといった、これもまたかつての「ベトナム化」路線にそっくりなこともしたのですが、これがなんの役もたたず、かえってタリバンの戦力を近代化してしまったのは皮肉なことです。
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かくして残されたバイデンの選択肢は、「夜逃げのように逃げる」ことだけだったようです。
おそらくこの秋にはタリバン軍はかつての北ベトナム軍のように、意気揚々とカブールに入城することでしょう。
そして不毛なアフガン戦争は、ベトナム戦争に並ぶ米国のトラウマとなることでしょう。

 

2021年8月13日 (金)

デニー氏、アストラゼネカ・ワクチンを大部分拒否してしまう

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信じられないことを聞くと、ひとは一瞬ポカンっとするようです。
デニー知事が、政府から重点供与があったアストラゼネカ・ワクチンの供与を、な、なんと断ってしまいました。(悲鳴)
※追記・100回分は受け入れたそうです。タイトルに「大部分」をつけ加えました。

「玉城デニー知事は4日、記者会見を開き、国が新型コロナウイルスの緊急事態宣言地域に優先配分する意向の英アストラゼネカ製ワクチンについて「ニーズがない」として国の打診を断ったと明らかにした。 知事によると、河野太郎行政改革担当相からアストラ製ワクチンの優先配分を希望するか、問い合わせがあったという。
希望しなかった理由について、知事は(1)アストラ製は接種の間隔が8週間で、3~4週間のファイザー製やモデルナ製よりも接種完了が遅くなる可能性がある(2)対象が原則40歳以上のため、接種会場での運用が複雑になる恐れがある(3)職域接種を希望する県内企業からアストラ製の希望がない-を挙げた。」(沖縄タイムス8月5日)

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www.newsweekjapan.jp

政府の意図を河野氏は、いかにも彼らしくこう明確に述べています。

「河野規制改革担当大臣は、記者会見で「高齢の方はワクチン接種の影響だと思うが、かなり重症化する人数も減ってきている。40代や50代の重症化をどう抑えるかという時に、アストラゼネカのワクチンは40代以上に推奨されているので、必要な所にしっかりと回すことができると思う。緊急事態宣言が出されている6都府県に対し、接種の加速化という意味で使いたいという要望があれば、一定の量を上限に出すと伝えている」と述べました。
緊急事態宣言が出ている東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、沖縄県の6都府県を優先して、8月16日から9月にかけて、順次配送するということです。
配送量は、
▽東京都が57万9500回分
▽神奈川県が39万600回分
▽大阪府が35万7900回分
▽千葉県が30万5600回分
▽埼玉県が25万8700回分
▽沖縄県が5万8000回分を、
それぞれ上限とします。
このほかの道府県にも、それぞれ1000回分を上限に8月23日以降に配送する方針で、配送量は全国で合わせておよそ200万回分になります」)(NHK2021年8月3日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210803/k10013178351000.html

このアストラゼネカ・ワクチン投入は、緊急事態宣言を出した自治体へのテコ入れです。
デニーさん、分かっていないようだから、はっきり言って上げます。
これは沖縄向けの政府支援なんですよ。
6県で、沖縄県以外は全部巨大都市を抱える首都圏自治体ばかりです。
抱える人口を見ればわかります。

・沖縄県・・・143万
・東京都・・・1351万
・神奈川県・・・924万
・大阪府・・・884万
・千葉県・・・622万
・埼玉県・・・726万

同じ自治体といってもこれだけサイズが違うのに、沖縄だけが割り振られた理由はいくらなんでも分かりますね。
それを知ってか知らずか、頭から断るとは。

断るにしても理由になっていません
アストラゼネカの接種間隔が8週間で、ファイザー・モデルナが3週間だから、タイミングがズレて困るって、あんたそれを調整するのが行政の仕事でしょう。
職域での要請がなかったって、それは行政が働きかけなかったからでしょうが。
たぶん県庁の役人が企業に電話一本で、いかがですか、政府がちょっと危ないけど余ってるんでアストラゼネカならあるって言ってるんですがね、とでもやったんじゃありません。

アストラゼネカを使うと接種が遅れるですって。
いいですか、もう既にブツはあるのです。これから海外に予約してではなく、政府は手元に持っています。
だから河野さんは、今政府が保管しているワクチンがあるから、今月から9月の早い時期に送り込めると言っているのです。
今月中に第1回接種を済ましてしまえば、秋には第2回接種を済ますことが可能です。

要するに、沖縄県はやる気がないのです。
いつは果てることもない緊急事態宣言さえ続けていれば、なんとなくやっているように見えるだろ、ってことです。
県民への抑圧的行動制限だけでなんとかなると考えているようです。

まずは感染状況から。
今年2021年6月14日~6月20日のものです。
沖縄は、紫色の10万人あたり15人以上のワースト県です。

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直近では

「沖縄県は12日、新たに732人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。1日当たたりの新規感染者数では、5日の648人を上回り過去最多となった。累計感染者は3万775人となった。(略)
確定例との接触者は427人、調査中は305人。直近1週間(11日時点)の人口10万人当たり新規感染者は249・31人で全国一高い。2番目の東京都は199・59人。
12日発表の療養者5158人中、同日正午時点で自宅療養は2187人。入院・療養等調整中は1991人で2000人台に迫っている。 県の警戒レベル指標(12日)は、療養者数は5159人、病床占有率は79・6%、重症者用病床占有率は55・6%」(沖タイ8月12日)
沖縄で過去最多732人感染 初の700人超え 40代1人が死亡【8月12日昼】 | 沖縄タイムス

特にひどいのは、病床占有率79・6%、重症者用病床占有率55・6%です。目も当てられません。
その医療機関では、県立中部病院でこの6月にはクラスターを出してしまい、しかも情報隠蔽までしています。
すべてが後手後手。感染開始から1年8カ月たって、今頃になって、コロナ医療機器を追加整備し、簡易病室を作っている始末です。
いったい今までなにをしていたのか。

では、なぜ沖縄県がこのようにひどい感染状況なのでしょうか。
端的に、唯一の解決策であるワクチン接種が遅れているからです。
データーで見てみましょう。

まずは今の接種の1回目完了数です。
NHK特設サイト コロナワクチン接種状況 (2021年8月9日現在)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/pref/okinawa/

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この沖縄県の接種進捗状況を、九州・沖縄地域全体で見ると最も遅れています。

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更に全人口で比較すると、いっそう沖縄県の接種の遅れが際立ちます。
沖縄県のワクチン接種進捗状況を他の自治体と比較します。

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沖縄県と人口規模が同じなのは熊本県ですが、沖縄は143万、熊本は178万人ですが、これだけ差がついています。

●第1回接種完了率
・沖縄県(1回目)・・・37.03%
・熊本県          ・・・52.58%

沖縄県は、全人口に対しての接種の遅れが目立ちます。
そこで年代別の沖縄の接種率を見ます。

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上図で64歳以下は濃い青ですが、65歳以上は4割ていどしか進んでいません。
この中年層から若年層にかけての接種の遅れが、感染者数を押し上げているようです。

これは世界的傾向ですが、感染すると危険な年齢層は65歳以上ですが、感染を拡げるのは活発に活動する年齢層の20歳台です。
彼ら若年層が感染を各所で拾い、家庭に持ち帰ってそれを高齢者にうつしてしまうというパターンです。
彼らはほとんどが無症状ですから、自覚なく感染キャリヤーになってしまっています。
家に帰ればマスクをしませんから、ノーガードですしね。

ですから、今自治体に求められているのは、重体・死亡者を多く出しやすい高齢者を真っ先に保護しながら、一方で感染拡大の主役になっている中年・若年にも速やかにワクチンを接種して感染拡大を止めることです。

いくつもやりようはあるはずです。
たとえば政府から「40歳以上推奨」という縛りがあるなら(私はそれも疑問だと思っていますが)、40歳から65歳までの未接種者を対象にして打てばいいだけのことです。
この40歳から65歳までの世代は、現役世代であるために活発に活動し、にもかかわらず高齢者接種優先対象にならない世代です。
しかし危険度は上になればなるほど高くなります。
供与されるのは5万回分ですから、この世代に集中接種すれば、それで終わるでしょう。

とまれ、知恵を絞りなさい。
ろくに頭を絞らないで、すぐにいらないなんて安直な答えをしてしまう、そういう体質がダメなんです。
いままで基地反対とさえ言っていれば黙って振興予算が貰えたために、自分で積極的に道を拓いていく力をなくしてしまった、それがこのふぬけのデニー政権に凝縮して現れているようです。

今回のコロナ対応の特徴は、自治体に多くの権限が移譲されたことてす。
対応の性格の大枠を定めたのが緊急事態宣言でしたが、条文を見ればわかるように、その主体はあくまでも政府でなく自治体でした。
政府は自治体の要請に従って緊急事態宣言を出すという建前のために、自治体の能力がはっきり出てしまいました。
今までは、「オール沖縄」の言うがままに移設反対、オスプレイ反対と言っていればなんとか格好がつきましたが、このコロナ禍の下では沖縄県だけで立ち向かわねばならなくなったのです。

そして蓋を開けてみれば残酷なまでにむき出しになったのは、沖縄県の危機管理能力、いやそれ以前の行政遂行能力の欠落でした。
自治体主導といいながらも、大枠は政府が決定するのですから、それをいかに素早く遂行するのかは県の行政手腕にかかっていたはずです。
それがあまりにも低い。

デニー知事がやったのは、感染当初リベラル業界で流行した「世田谷モデル」の焼き直しの「いつでもどこでも何度でも」PCRをするというポピュリズムでした。

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本来は、この期間に、病床を確保し、重症者用設備を充実させるべきだったのに、PCRにかまけていたために大きく遅れをとったのです。
結果、PCRは財政の壁にぶち当たって中止。大量の検査を抱えて保健所や病院は医療崩壊寸前。
いつもはいじめまくっている自衛隊に医官を送ってもらうていたらくです。

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そして肝心な重症者用人工呼吸器は不足。病床も足りない、看護師も足りない、とないない尽くし。
そのうちどんどんと感染者が増えて収拾がつかなくなる。今はココです。

状況を打破するにはワクチンしかありません。ワクチン一択なのです。
その頼みの綱のワクチンが、先述したように九州・沖縄地域でもっとも遅れている始末です。
だから、河野大臣は率先して沖縄にアストラゼネカを送ろうと言ったのに、断ってしまうなんて、アンビリーバブルなバカ。
もう処置なしです、あの人。
阪神淡路の時の村山、東日本の時の菅、そしてコロナの時のデニー。
もはやデニー知事の無能は、人災の域に達しています。

 

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デニー知事、無能だから迷走したのか、迷走しすぎて無能になったのか

 

2021年8月12日 (木)

東京五輪、BBCに称賛される

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日本を褒めたことがないので有名なBBCから、東京オリンピックを褒められてしまいました。
BBCはこう述べています。

「もちろん、どのオリンピックもほかとは違う。しかし「東京2020」は本当に、前例のない大会だった。この17日間で確かに、劇的なスポーツのドラマが相次ぎ展開された。しかしそれでもこの大会は今後もずっと、「コロナ五輪」、「COVID五輪」として記憶される。今のパンデミック下の初のオリンピックで、緊急事態宣言下で開かれる初のオリンピックで、そして無観客で行われた初のオリンピックだった。
これだけの難問を前に、この大会がそもそも閉会までこぎつけ、そればかりか実に多くの特別な瞬間を提供したことは、ある意味で小さい奇跡だったと捉える人もいるだろう。
スポーツの不屈の精神、そして開催国のたくましさを強力に示すシンボルとなったと評価する人もいるだろう。賭けは成功したのだと」
(BBC) https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58133532

もちろん塩辛い英国人が簡単に褒めるわきゃないので、頭からよくできました、と言ってくれているわけではありません。
しかし、この考えられる限り最悪の条件下で、日本が勇気を持って対処しなし遂げたことは正当に評価してくれているようです。

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ARIGATO」の文字|東京2020オリンピック・パラリンピック

一方、五輪中止団の団長格であった朝日は社説でこう書いています。
まずはいちおう褒めて見せます。

「本来のオリンピズムを体現したアスリートたちの健闘には、開催の是非を離れて心からの拍手を送りたい。
 極限に挑み、ライバルをたたえ、周囲に感謝する姿は、多くの共感を呼び、スポーツの力を改めて強く印象づけた。迫害・差別を乗り越えて参加した難民や性的少数者のプレーは、問題を可視化させ、一人ひとりの人権が守られる世界を築くことの大切さを、人々に訴えた」
(朝日社説2021年8月9日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15004172.html

よく読むと選手全部を褒めたんじゃなくて、難民選手団とか性的少数者の人権を守った人らがエライと言っているたけのようです。
そして、こちらがほんとうに言いたい朝日の本音ですが、続けてこうも書きます。

「不都合な事実にも向き合い、過ちを率直に反省し、ともに正しい解を探ろうという姿勢を欠く為政者の声を、国民は受け入れなくなり、感染対策は手詰まり状態に陥っている。
 安倍前政権から続く数々のコロナ失政、そして今回の五輪の強行開催によって、社会には深い不信と分断が刻まれた。その修復は政治が取り組むべき最大の課題である」(朝日前掲)

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NHK オーストラリア選手団

もう失笑するしかありませんね。「反省せよ」ですか。
その言葉そのままお返しします。
五輪に直前まで頑迷に反対し続けて国民を動揺させ、次善の策すら議論させず、徒に国民の「分断を深めた」のはどこの誰だったのか。
東京大会が成功した今、「不都合な真実に向きあい」己の態度を省みる必要があるのは、政府か、メディアのほうか。
では、その選手達に直接尋ねてみるがいい。

今回のオリンピックは選手も厳しい制約下に置かれました。
ある意味、選手たちは日本国民以上の抑圧的行動制限下で戦ったのです。
なぜなら国民に対しての移動制限や外部での飲酒はしょせん「お願い」ですが、選手には厳しいレギュレーションであって、違反すれば選挙村からの退去、すなわち大会からの追放を意味したからです。
選手たちは観光はおろか、競技以外は選手村から一歩も出られず、競技を終えた選手は48時間以内に選手村から出て帰国せねばなりませんでした。
日本ができた「おもてなし」は、清潔で安全な住環境と競技環境、美味しい食事だけだったと言っていいくらいです。

大会が開かれたという大前提があったからこそ、選手たちが人類の到達可能の限界まで競うことが可能だったのです。
選手たちは、素直にその機会を与えたくれた東京大会と日本に感謝しているのです。
朝日の言うように大会そのものを中止してしまえば、すべては消えたのです。

きっと選手たちにとっては不満足な点も多々あったでしょうが、感染期の「コロナと戦うオリンピック」としては、それ以外わが国に選択肢がなかったことを、選手たちはよく理解してくれました。
万が一にも選手村で、あるいは競技会場でクラスターが発生すれば、大会そのものが中断される事態に陥ったからです。

終わってみれば、五輪が開催できたこと自体に喜びを表明する選手が圧倒的でした。
ある英国選手はこのように述べていました。

「昨年五輪が延期され本当に行なわれるか世界が疑問に思いました。もしできるなら東京しかないと信じていました。日本の皆さんの努力で夢が実現しました。不可能な時でも希望を見つけられると知りました。ありがとう」(英ボート代表E.クレイグ選手)

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twitmag.com

世界のスポーツ競技の頂点に立つオリンピックに参加し、そこでメダルを獲得するのを子どもの頃より夢見て来た人たちが集ったからです。
彼らはオリンピックに参加することを目指してトレーニングを重ね、参加できたことを生涯の誇りに思って生きていくことでしょう。
東京大会が中止されたなら、彼らの人生の目標を奪うに等しかったはずです。

そのアスリートたちに開催不安の思いを抱かせ、競技への集中を妨害したのは誰だったのか。
いったい誰が大会を妨害し続けたのか、それを問わずに「アスリートの健闘」もないもんです。
大会を開く英断をしたからこそ、「健闘」があったのです。

だから、閉会式の国立競技場の電子板に「ARIGATO」と浮きだしたのは、私たち日本国民の気持ちであると同時に、大会に参加できた全ての選手たちの偽りのない気持ちだったはずです。
私からも言いたい。ありがとう、世界から集まって来てくれた勇敢で強い選手たち、本当にありがとう!

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ところが、そうは思わない、思いたくない一群がいます。
大部分の軟弱なメディアは転向してしまいましたが、いまだ残る頑固派がさきほどの朝日などのサヨクメディアです。
彼らは開会直前まで「オリンピックか命か」などという大前提自体が間違っている命題を立てて、反対し続けました。
産経と読売を除くほぼすべてのメディアがこれに加担し、まるでメディアスクラムのようでした。
これに煽られた国民の7割もが中止に傾いた時期すらあったほどです。

それを一気に吹き飛ばしたのが、日本柔道の快進撃でした。

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olympics.com

レスリング女子では6階級中で4つの金を獲得し、卓球女子も活躍。スケートボードでは史上最年少の金メダリストが誕生しました。
苦戦続きだった競泳でも大橋選手が2冠に輝き、空手形の清水希容選手の凛とした演武の美しさは、恐らく世界を虜にしたはずです。

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空手・清水希容

彼女らは自らの実力で出場権を勝ち取ったのであって、朝日が好む女性・人権枠で勝ち取ったわけではありません。
彼女らの超人的な努力の積み重ねと闘争心が、女性のいっそうの地位向上に繋がるのであって、その逆ではないのです。

こういう朝日の、政府・組織委員会=悪玉vsアスリートの栄光といった構図に対して、BBCは至って常識的な見方を示しています。
それは、アスリートの栄光を準備し、支えたのが他ならぬ政府・組織委員会だという事実です。
BBCはこうも書いています。


「実際のところ、東京2020に参加したすべてのアスリートにとって、出場したこと自体が勝利だ。大会の延期と相次ぐロックダウンにもかかわらず、いかに自分がたくましかったかの表れだ」(BBC前掲)

このような公平な報道に素直に感謝します。
このコロナ感染期に、オリンピックを開催できたこと自体が奇跡で、出場できたことが勝利だったのです。


 

2021年8月11日 (水)

英国、規制解除で感染減少

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たまには外国も見てみませんか。英国などいかがでしょうか。
英国は今、コロナ規制を大胆に解除しているところです。よほど感染が減ったのか思いきや、1日になんと「たった」2万3千人だったそうです。
今、日本は1日に感染者数が1万人になった、東京都で5千人を超えれば菅内閣はもたない、なんて言われている時にです。

「ロンドン時事】英国の人口の大半を占めるイングランドで先週、新型コロナウイルスの規制がほぼ全面的に解除された後、国内の新規感染者数の減少傾向が続いている。人との接触が増えて感染者が激増するとの当初の懸念に反し、「歓迎すべき驚きの逆転現象」(BBC放送)。政府は引き続き緊張感を持って警戒するよう呼び掛けている」(2021年07月29日時事)

「今、再開しなければ、ウイルスが活発化する秋や冬になってしまう。今でなくて、いつやるのか。これが正しい時だ。ジョンソン英首相は18日のビデオメッセージでこう訴えた。
ジョンソン氏は「世界で初めて」(英BBC)とされる感染拡大局面での規制解除に踏み切った。英国では成人の88%が1回目の接種を終え、接種2回を完了した人は68%に上る。英政府は、欧州各国に先駆けて進むワクチン接種で「集団免疫」を実現できれば、インフルエンザのように定期的なワクチン接種で感染を抑え込めると踏んでいる」
(読売7月21日)

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新型コロナ: 英、感染急増でもコロナ規制撤廃へ 死者・重症者抑制で

英国政府はイングランドでの規制をほぼ完全に解除し、マスク着用義務や屋内交流の人数制限も共に解除しました。
おまけに夜の酒場も再開を認めました。
くどいようですが、日本の倍の感染者を1日出していても、です。
ちなみに、英国の新規感染者の大部分は日本と同じデルタ株です。

当初、この大胆な決断によって1日当たり10万から20万感染者がでるぞ、という専門家もいたそうですが、ボリス・ジョンソンが乾坤一擲の決断をしてみれば、開けてびっくり1日の感染者はむしろ激減してしまったのです。

「ところが保健省のまとめによると、27日の新規感染者は約2万3500人と7日連続で減少。規制が解除された19日は約4万人で、17日の約5万4000人と比べると半分以上減った。感染者1人が平均してうつす人数「実効再生産数」も1以下と伝えられる」(時事前掲)

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産経

とはいえ、英国内でも意見は二分されています。

「感染者や重症者を医療崩壊を招かない水準に抑え続けられるかは不透明だ。英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授は英BBC番組で、1日の感染が10万人に達するのは確実との見通しを示したうえで「日々の感染者が20万人に達し、新規入院者が2000人に達するかどうかが問題だ」と指摘した。そうなれば、医療体制の「重大な混乱」が起きると警鐘を鳴らす」(日経 2021年7月19日)

野党労働党もジョンソンの規制撤廃には否定的です。

英政界でも見解は割れている。最大野党・労働党は「感染者数は屋根を突き抜けている」(スターマー党首)と指摘し、全ての規制の一斉解除は無謀だと非難する」(日経前掲)

労働党市長のロンドンでは、マスク着用などの規制は残すとしています。
まだ完全に結果はでていないとみるべきですが、ジョンソンが賭けが勝利した理由はなんでしょうか。
それは、なんといっても英国のワクチン接種率が7割に達したことにあります。

「英国のワクチン接種の状況を確認する。少なくとも1回ワクチンを接種した人口の割合は、7月24日時点で68.6%と世界有数で、2回目の接種を終えた割合も54.7%と、イスラエル(61.3%)やカナダ(55.2%)と遜色がない。
18歳以上に限ると、少なくとも1回接種した人口の割合が88.1%、2回目の接種を終えた割合も70.5%に達する(7月25日時点)。中高齢者の多くがワクチン接種を終えている」
(田中理第一生命経済調査部 主席エコノミスト2021年7月21日)

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第一生命経済調査部

現在の英国の1日当たりのワクチン接種数(7日移動平均)は約20万回(人口の約0.3%)で、ピーク時の3分の1程度にペースダウンしてきているものの、このペースが続けば1ヵ月当たりの接種数は約600万回(人口の約9%)となる、そうです。
英国の18歳以上で1度もワクチンを接種していない人は、7月末の時点で現在は800万人前後いると考えられています。
新規に接種する人が2回の接種を終えるには、さらに2ヵ月半程度を要します。

集団免疫の獲得と人口割合のワクチン接種との関係はいまだに病理的に解明されきってはいませんが、下のグラフをみると、ワクチン接種と感染者数は逆相関を示しています。

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日経

また英国の感染年齢層は、日本と同じように中年・若年層が中心です。

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第一生命経済調査部

上図でわかるように、新規感染者の年齢構成(7月5~18日の集計結果)は 20代が28%、次いで10代23%、30代18%、40代12%となっており、65歳以上は3%ていどです。
これらの新規感染者は、ワクチンを未接種か、1回目の接種を終えたが、2回目をまだ接種していない人と推測されています。
ジョンソンが制限解除に踏み切ったのは、中高齢者の多くがワクチン接種を終えていること、新規感染者の多くが相対的に重症化リスクの低い若者が中心だということです。

したがって、英国の経験からこのように言うことが可能です。

①ワクチン接種が進んで高齢者の接種が進めば、重症化と死亡率は著しく低下する。
②新規感染者の多くは若者であり、彼らは仮に感染しても高齢者と違って重症化しない。
③若者の行動パターンによって、感染者数が増減する。

若者の行動によって感染が影響を受けることは、たとえば7月11日まで開かれたサッカー欧州選手権直後の感染者数増大があり、逆に今若者の多くは学校が夏休みに入ったために分散化したためだと専門家は見ています。

なお、ジョンソンは「励みになると減少傾向を歓迎する一方、規制解除が感染状況にどのような影響を及ぼしているか完全には明らかでないとし、「コロナ禍が終わったという早まった結論に至らないよう」とも国民に訴えています。

日本のメディアは口を開けば「コロナ対策は行き詰まった」といいますが、この英国の実験をみると、さてどうなんでしょうか。
日本の場合、一時供給と接種のタイミングがズレて、不足の所と過剰な所が生まれましたが、今はアストラゼネカは宣言を出した自治体に集中的に送られ、現在審査中のノバックスの承認が降りれば、供給体制は万全です。

ワクチン接種回数は既に1億回を超え、高齢者接種率は8割前後に達し、国民全体で3割ていどが二度目を終えています。
このワクチン接種の進み具合をみれば、12歳以上とされる接種対象者の8割に当たる量のワクチンの供給は10月末に完了し、11月には二度目の接種が終わる見通しです。
同時に変異株対策として、3回目のブースト(積み増し)接種の検討も始まっています。

欧米で接種率が横ばいになっているのは反ワクチン運動が盛んだからですが、わが国ではメディアが遅れているという煽りをしすぎたために、皮肉にも彼ら好みの反ワクチン宣伝をすることができなかったために、いったん始まってしまうとなかなかの速度で接種は進展しています。
もしわが国に製薬会社が欧米と同じ時期にワクチン供給をしていたら、今頃、嬉々として朝日などは反ワクチン運動の旗振りをしていたことでしょう。
禍福はあざなえるなんとかです。

ただし、にもかかわらずというべきでしょうか、日本が英国の賭を見習うことはないでしょう。
なぜなら、ゼロリスク論に染まってしまっているのが他ならぬ尾身氏のような政府専門家会議と医師会、そして西村大臣のような政府中枢だからです。
菅氏のリーダーシップで「ボリスの賭」に出ることは、まず不可能です。
英国のような規制解除をするには、反対するに決まっているメディアや野党を黙らせ、国民にオレを信じろということのできる強い政府が必須だからです。

 

2021年8月10日 (火)

米国、武漢ラボの遺伝子情報をハッキングしたようだ

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CNNが、米情報機関が新型コロナウイルスの起源解明に向け、武漢のウイルス研究所から遺伝子情報が漏洩したと報じました。

ワシントン(CNN) 米国の情報機関が、中国・武漢の研究所で扱われていたウイルス試料の遺伝子情報を含む膨大なデータを入手し、調査を進めていることが分かった。事情に詳しい複数の情報筋が明らかにした。一部の当局者はこの研究所について、新型コロナウイルスの流行の発生源になった可能性があるとの見方を示している」(CNN2021年8月6日)
https://www.cnn.co.jp/usa/35174900.html

CNNは、かつて武漢ラボ起源説についてトランプ一派の陰謀論と決めつけていましたが、汚名挽回を図っているようです。
バイデンは情報機関に武漢ラボ起源説を8月24日までに調査するように命じていましたが、どうやらこの記事はそのインテリジェンス機関からのリークのようです。
この米情報機関は武漢ラボにハッキングをしたようで、あまりに得た情報が膨大なために、スパコンまで使って解析しているといいます。
中国やロシアのハッカーが有名ですが、なんの米国もITの本場ですからホワイトハッカー軍団を擁しています。

「米情報機関がいつ、どのようにしてこれらの情報を入手したのかは不明。ただ、この種の遺伝子データの生成や処理に使われる機器は通常、外部のクラウドベースのサーバーに接続されており、ハッキングの可能性もあるという。
膨大な生データを使用可能な情報に変換する作業にはさまざまな困難が伴う。全データを処理する計算能力の確保が必要となるため、各情報機関はエネルギー省傘下の国立研究所にあるスーパーコンピューターを利用している」(CNN前掲)

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CNN

このCNNの記事では、まだ情報機関も決定的な証拠は掴んでいないようです。
ただし興味を惹かれるのは、武漢ラボが通常なら公開せねばならないウィルス資料を2019年9月に一方的に削除してしまっていることです。

「米政府内外の調査員は以前から、武漢ウイルス研究所で扱われていた2万2000のウイルス試料の遺伝子データを入手しようとしてきた。このデータは2019年9月に中国当局者によってインターネットから削除され、以降、中国は初期のコロナ症例に関する生データを世界保健機関(WHO)や米国に提出するのを拒んでいる」(CNN前掲)

この日付に注目してください。武漢で初発の患者が出たとされるのは、公式には2019年12月3日ですから、なぜその3か月も前の9月に早々と公開サイトから遺伝子情報を削除してしまったのでしょうか。
なんらかの情報隠蔽をする必要が生じたとしか考えられません。
ちなみに、ワクチン学者はシノバックなどのワクチン製造も、この2019年夏に始まったと見ています。
「2019年9月」、このとき、武漢ラボでなにかが起きたのです。

するとここで、少し前に出たマイケル・マッコーネル議員(共和党)の報告書の意味が分かってきます。
すでに提出された共和党の報告書は、2021年8月1日に、共和党トップのマイケル・マッコール下院議員によって出されています。
FOXニュース "Rep. McCaul on House GOP's bombshell Wuhan lab report: 'Greatest cover-up in human history"
『下院GOPの爆弾武漢研究所報告書に関するマッコール下院議員:「人類史上最大の隠蔽」』(原文英文)
https://www.foxnews.com/media/rep-mccaul-wuhan-lab-report-china-covid-republicans

武漢研究所の報告書は、COVID-19ラボリーク説の可能性に関するさらなる疑問を提起する。報告書の重要なポイントの多くは、2019年12月31日に武漢市保健委員会が武漢市保健委員会が武漢市保健委員会の「ウイルス性肺炎」の症例に関する報道声明を取り上げる前に、ウイルスが早ければ9月に中国で流通している可能性があることを示す武漢とその周辺の活動に焦点を当てた。
9月、武漢研究所の遺伝的シーケンシングデータベースは真夜中にオフラインになり、マッコールによると、彼らは重大な懸念事項を「隠す」か「隠蔽」しようとしていたことが示されている。同時期の衛星画像は、武漢研究所の近くの病院での活動の増加を示している、とマッコールは述べた。」(FOX前掲)

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マイケル・マッコール下院議員 FOX

2019年9月前後に、中国当局は武漢ラボの石正麗グループが作り出した「なんらかの新型ウィルス」が「なんらかの理由」で研究所から流出したと認識し、武漢ラボの遺伝的シーケンシングデータベース(遺伝子配列データーベース)を削除したのです。
もちろん、流出した新型ウィルスと武漢ラボとのつながりの証拠を消すためです。

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武漢ラボの石正麗

「なんらかの新型ウィルス」とは、石正麗とピーター・ダザックが、雲南の坑道から持ち帰ったキクガシラコウモリから取り出したウィルスに、機能獲得変異実験をして作り上げ、後にCOVID-19と呼ばれるようになる新型ウィルスである可能性が高いと考えられています。
彼らは、この方法でいっそうヒトに感染しやすく、しかも毒性の高いウィルスを人工的に作り出したのです。

これが何らかの理由で研究所から漏れた可能性が極めて高いことは、ほとんど確定的と言ってよいでしょう。
新型ウィルスが流出した可能性として、①実験動物の流出、②実験動物に噛まれたヒトから③生物兵器説などがあります。
華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 は②の実験動物に噛まれたという説を唱えています。

「WHCDCは研究の目的で所内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。ある収集の専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが、2017年と2019年に全国的な新聞やウェブサイトで報じられている。そのなかでこの専門家は、かつてコウモリに襲われ、コウモリの血が皮膚についたと述べていた。感染の危険性が著しく高いことを知っていた専門家は、自ら14日間の隔離措置を取った。コウモリの尿を被った別の事故の際にも同じように隔離措置を講じたという。ダニが寄生しているコウモリの捕獲で脅威にさらされたことがかつてあった、とも述べていた。
(こうして)捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよびRNAの抽出とシーケンシング(塩基配列の解明)のために採取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほどのところに存在したのである」(華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 2020年2月6日、研究者向けサイト「リサーチゲート」 )

武漢ラボはフランスが作った最新のP4施設ですが、大きな落とし穴がありました。
いかにも中国らしいのですが、施設はピカピカでも、実験動物の管理や実験後の汚物処理が前近代的なまま温存されていたのです。
管理は下請けの労働者に任され、杜撰で、不潔でした。
農業大学では、実験動物を逃したことが明るみになっています。

「FOXニュースが入手した大流行の起源に関する報告書によると、COVID-19の流行の数ヶ月前に、武漢国立バイオセーフティラボは、2年未満で稼働していた研究施設で航空安全および廃棄物処理システムの大規模な改修のための入札を要求した」8FOX前掲)

武漢ラボでも多数の実験用コウモリが、ケージの外に逃げ出して、ヒトを噛んでいる映像すら残っています。

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https://www.youtube.com/watch?v=ANRs4DojOek&feature=emb_imp_woyt

この動画には、武漢研究所内でケージに入った大量のコウモリが映っており、素手でコウモリに餌をやるシーンや、防護服グループがコウモリを追いかけたり、見学者たちの帽子に止まったり、時には噛みつく様子まで撮影されています。
また別の実験用コウモリを素手で扱い、噛まれて手が腫れ上がる映像も出ています。
米紙ニューヨーク・ポストは28日(現地時間)、WIVの研究者が手袋やマスクなどの保護具を着用せずにコウモリとその排せつ物を扱う様子が映る中国中央テレビの映像を公開した。
2017年12月29日に中国で放映されたこの映像で、半袖・半ズボン姿の研究者たちは、手袋以外は保護具を着用しないまま、感染性が高いコウモリの排せつ物を採取した。
同研究室で一部の研究者は手袋を着用しないままコウモリの研究サンプルを受け渡しした。研究室の中で一般的な衣類を着て、頭に保護具をつけていない姿も映像にある。
この映像で、ある科学者は「コウモリが手袋をかみ切って私をかんだ」「針でジャブ(jab)をもらった気分だ」と言っている。この映像にはコウモリにかまれた部分がひどく腫れている写真も登場する。
映像で、研究者たちが素手でコウモリを扱う姿が出ると、番組司会者は「負傷の危険性は依然として存在している」「研究者たちは現場調査前、狂犬病の予防注射を受けた」と説明した」 (ニューズウィーク2021年6月16日)

そして武漢ラボ研究関係者から、2019年に既にCOVID-19の患者が2名出て、受診していることがわかっています。
原因はわかりませんが、考えられるのは実験動物との不用意な接触です。

③の生物兵器説については決定的なことはいえません。
現時点では、その可能性も捨てきらないという段階です。
ただし、中国軍は超限戦という戦略思想を持っている国で、あらゆるものを兵器化することで知られています。
この武漢ラボも人民解放軍の指揮下にあり、意図的に使用したか否かは別にして、COVID-19が生物兵器として作られたことまでは確かだと推測できます。
ただし仮に生物兵器として作っていても、それを意図的に使用したかまでは今の時点ではなんともいえません。
ただ、可能性はありえる、とはいえるでしょう。

この武漢ラボからウィルスが漏洩したちょうどその時期に開かれていたのが、軍人オリンピックでした。
マッコーネル報告書は、この新型ウィルスを世界に拡散したのは、2019年10月18日にあった第7回軍人オリンピックだったと指摘します。

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米軍ウイルス持ち込み」の根拠は?新型コロナウイルス感染源めぐる米中

「さらに、マッコールは2019年10月の世界軍事大会に言及し、9,000人が入国したと述べた。外務委員会のデータによると、インフルエンザのような症状で母国に戻った人もいた」(FOX前掲)

この第7回軍事スポーツ世界大会(ミリタリーワールドゲームズMWGs)は、「軍人のオリンピック」として世界109カ国から9308人の選手が集まり、27種類の329競技で競いました。
中国政府は23万6000人のボランティアを募り、90のホテルを用意しましたが、参加したカナダの選手は「街はロックダウン状態だった。私は到着後、12日間、熱と悪寒、吐き気、不眠に襲われ、帰国する機内では、60人のカナダ選手が機内後方に隔離された。私たちは咳や下痢などの症状が出ていた」とカナダ紙に証言しています。
マッコーネル報告書は、この軍人オリンピック大会の競技会場も、6つの病院も、さらには大会参加後に体調不良を訴えた選手がいた場所も、すべて武漢ラボの周辺に位置していたことを指摘しています。

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上図で赤点が武漢ウィルスラボ、黒点が軍人オリンピック会場、青点が軍人から出た患者が収容された病院、緑点が選手のホテルです。
この2019年9月の軍人オリンピックにより、新型ウィルスは世界的に拡散し、パンデミックを引き起こしたとマコーネルは報告書で結論づけています。
マッコーネル報告書は、「軍人のオリンピック」参加国のうち、イタリアとブラジル、スウェーデン、フランスの4カ国について、具体例を示しながら「2019年11月から12月にかけて、国内での感染発生を確認した」と記しています。

遅まきながら、おどおどとWHOのテドロスが再調査などと可愛らしいことを言い始めました。
そりゃそうだ、前回の現地調査のリーダーは、こともあろうに、武漢ラボで石正麗の共同研究者だったことがバレたピーター・ダザックなんですから。
ダザックは、世界のウィルス学者が1000人いても、この男だけは調査団に加えてはならないという人物です。

「WHOのテドロス事務局長が16日に実施した非公開の会合で、加盟国に調査第2弾の計画を打ち出した。テドロス事務局長は前日、武漢市で感染が拡大した最初の数日間に関する生データが不足しており、調査が妨げられていると指摘した。
第2弾の調査では、人、野生動物、武漢の海鮮卸売市場などの調査に加え、テドロス氏は「2019年12月に人の感染が確認された地域で運営されていた研究所や研究機関の監査」を実施したいとの考えを示した。
さらに「新型コロナウイルスの起源の調査は科学的な探求であり、政治の影響を受けることなく実施される必要がある」と強調。「中国が透明性を維持し、全ての関連データを共有することで、第2弾の科学的プロセスを支援すると期待している」と述べた。
外交筋によると、中国はこの提案に反発。「第2弾調査計画は将来の研究の基盤となるものではない」とし、反対を表明したという」(ロイター7月17日)
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-who-china-idJPKBN2EM1NT

まぁ、中国は300%第2次調査なんか認めないでしょうから、実現不可能をわかって今月末に出るといわれる報告書に備えているんでしょうね。
いや、オレも調べようといってたじゃん、というわけです。


2021年8月 9日 (月)

ワクチンパスポートが現実化すると困る中国

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東京オリンピックが終わりました。
ああ、真夏の夜空に大輪の花火を見せてもらったような気分です。
各国のアスリートと組織関係者、ボランティアの皆さん、そして黙々と警備に当たった警察と自衛隊関係者の方々、酷暑の中ほんとうにありがとうございました。
閉会式はしょーもないもんでしたが・・・、つまらない三流のショーやるな、橋本泣くな、バッハ長すぎ。
選手はその前まで戦って疲れているんだから、少しはアスリートの身になれ。

ところで開幕式直近の世論調査では、完全に「やったほうがいい」派が逆転しました。
まだ新聞社関係はでていませんか、強烈な中止派だった女性誌の調査でこんなところです。
たぶんそう違った結果にはならないでしょう。
だってあの熱い競技見て、見たくないなんて思うほうがどうかしていますからね。

●東京五輪は開催して良かったと思いますか? (7月27日~7月30日調べ)
はい=77%
いいえ=23%

あいかわらずメディアは分裂しており、片方で「感動の17日間」とやったかと思うと、一方で「完全な失敗」とくさしてみたり、どっちかにしなさい。
ひとつはっきりしているのは、「完全な失敗」したのは、あんたらメディアのほうです。

選手村情報が歪まなかったのは、ひとえに選手自身からの1次情報だったからです。
あそこにメディアが入り込んで、自分の主張に合うようにイジリ回していたら目も当てられません。
たとえば立ち上げ初期にどこかの選手が「シャワーもない。まるで中世のようだ」言った、とメディアが書き立てましたが、それはメディアの尾ヒレ腹ビレ背ビレのたぐい。
直ちに「シャワーが壊れましたが、いたっていい環境。中世なんて言っていない」という当の選手自身からの抗議が入りました。
これがメディアのいつものやり口です。
切り取って増幅し、自分の望む「絵」に歪曲してしまう。

今回は彼らが取材できないので真相がすぐに発覚したのです。
この大会で感じたのは、SNSで直接に市民とつながれば、メディアは不要なばかりか、かえってコミュニケーションの阻害要因になっているのではないか、という実感です。
ほんと、メディアは社会の病巣そのものじゃないかしら。

                                                                 ~~~~~

さて、頭を切り換えます。
ワクチンパスポートが現実化するようです。
米国は外国人の渡航者にワクチン接種済の証明書の提示を求めるようです。
これで事実上、決まりです。

「[ワシントン 4日 ロイター] - 米国のバイデン政権が、同国を訪れるほぼ全ての外国人渡航者に対し、新型コロナウイルスワクチン接種を義務付ける計画を策定していると、ホワイトハウス高官が4日、ロイターに対し明らかにした。
高官によると、政権としては航空・観光業界の回復につながる渡航の再開を望んでいるが、感染力の強いデルタ変異株が流行し、感染者数が増加する現状では渡航制限をすぐに解除する用意はない。
現在、省庁間の作業グループが渡航再開に向けた新たな制度を策定中で、これには「限られた例外を除き、(全ての国から訪れる)外国人渡航者にワクチン接種の完了を求めるといった段階的なアプローチ」が含まれるという。
新型コロナ感染拡大を受けた米国の渡航制限は昨年1月の中国から始まり、その後多くの国が対象に追加されている」
(ロイター8月5日)

もう既にいくつかの国で始まっており、WHOは2次元バーコードを使って世界規格を作ると言っています。
ワクチンパスポートが世界規格化すれば、世界の主要国に渡航する場合、ワクチン接種していない人は、事実上渡航を制限されることになります。
反ワクチンの人たちには気の毒ですが、接種してもらわないと外国に行けません。
ヨーロッパの国の一部では、教師や公務員という公職に就くことや、長距離移動が禁じられる法整備が進んでいるようです。
私は反ワクチン思想そのものについてとやかく論評する気はありませんが、これがポストコロナの世界の現実です。

日本でも、海外渡航者向けの接種と、接種証明は既に実施されています。

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Q&A>ワクチンパスポートでどんな優遇あるの? 26日申請スター

残念ながら、現状ではIT化の遅れからか紙での証明書発行にとどまっています。
そもそもワクチン接種も、マイナンバーカードを使って管理すりゃ、迅速に行えたんですがね。
いちいち住民台帳に照合して、本人確認してという手間が省けました。
覚えているでしょう、自治体会場のあの煩雑な手続きを。

それはさておき、問題はここでも中国です。
各国もにもワクチン拒否者はいますが、拒否すれば渡航できないだけのことですが、中国は既にあの悪名高い水ワクチンを10億回打ったと豪語しています。
しかし、供与した国からは効かなかった、カネ返せという声しか聞こえてきませんね。
それだけならともかく、中国の足元からまた感染が再拡大し、日本企業も操業停止に追い込まれたようです。
おいおい、接種したんだろう。

「新型コロナウイルスを抑え込んできた中国で、感染が再拡大している。直近2週間で市中感染者数は7月中旬までの半年間の合計を超え、約30都市に拡大した。感染力の強いインド型(デルタ型)の変異ウイルスが原因だ。観光地が相次ぎ封鎖となり、ホンダの合弁工場が停止するなど経済にも影響が出始めた。
中国本土では新規感染者から入国者の感染者を除いた市中感染者数が重要な指標だ。国家衛生健康委員会が8月4日までに発表した資料などによると、7月20日~8月3日の2週間で合計485人。2月1日~7月19日の約6カ月間分(約430人)を上回った」(日経2021年8月4日 )

馬脚を顕しましたね、中国さん。
中国は、ワクチンで押えこんだのではないのです。
全体主義国家にしかできない、戒厳令もどきの強烈なロックダウンと移動制限一本で押さえ込んだだけのことなのです。
あ、後は情報統制で隠蔽したんです、ま、それは別の話。
肝心の決め手とならねばならなかったはずのワクチンが、効果のない戦時急造の粗製濫造モノだから、アイヤーです。
それが一気に経済回復を誇示して、世界一早い回復国としてマウントしたいばかりに強引に経済を開けたもんだから、このザマです。

ここで問題が出ました。
水ワクチンを打とうとチャイナの勝手、経済をジャンジャン平常化するのもカラスの勝手ですが、では、こんなメイドイン・チャイナの水ワクチンを国際社会が認めて、ワクチンパスポートを与えますか、という問題です。
たとえばタイは、中国からのワクチン供与に飛びついた国のひとつでしたが、まったく感染拡大に歯止めがかからず、ファンザーとモデルナのワクチンの追加接種をして凌いでいるようです。
時間も手間も費用も、なんていう無駄。

WHOは中国の圧力に負けて中国のワクチンを既に緊急使用許可を与えていますが、主要国はソッポを向いています。
するとどうなるのかといえば、主要国からすれば、いくらWHOが使用許可を出しても、そんなパスポートは無効だということになります。
もう一回しっかりしたファイザーなどのワクチンを打ち直して、パスポートを取り直していこい、ということになります。
しかもこれは中国一国だけの問題ではなく、世界中にバラ撒いた(しかも恩着せがましく)チャイナ・ワクチン接種済国すべても同じことになるわけです。

カネのない一帯一路のアフリカ諸国など、もう一回欧米製のものを打ち直さねばならず大損害。さぞかし中国を恨むだろうな(笑)。

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ワクチン輸出、中国席巻: 日本経済新聞

しかも当の中国サマは、なんとファイザーのワクチンを1億回分輸入しているのですから、またまた、おいおいです。
世界に先駆けたと自慢していたシノバックでも打てばいいでしょうに。
たぶん共産党員にだけ米国製ワクチンを打とうというのでしょうが、破廉恥なことです。

そしてそんなファイザーでワクチンパスポートを取れば、米国にのイミグレは、お、こいつは共産党員だな、もうすこし追加で調査しよう、入国は認めてもFBIに情報流しておくか、ということになります。
下手すりゃ、トランプ政権が作った共産党員入国禁止法に引っ掛かって、その場でお引き取り願うということになるかもしれません。

おそらく中国はWHOがチャイナワクチンを認めたことを根拠に、ワクチンパスポートを与えろというでしょうが、米国はWHOがなんと言おうと、チャイナ・ワクチンのワクチンパスポートなど受け取らないでしょう。
そして米国の判断にEUは追随するでしょうし、わが国も態度を迫られます。
さぁ困った中国さん、インチキばかりしているから最後にはこういうことになるのですよ。

 

2021年8月 8日 (日)

日曜写真館 幻の如く夜を咲き烏瓜

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妖精の編棒烏瓜咲かす 柳原佳世子

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烏瓜花あはあはと風の中 丹羽玄子

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切り岸の月まつ花の烏瓜 塩谷はつ枝 

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夢を乗すごとくに烏瓜の花 佐藤鬼房

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待たねども咲けばかなしき烏瓜 水原秋櫻子

 

2021年8月 7日 (土)

コロナの異常な愛情、またはなぜ私はいかにして心配するのを止めて、コロナと共存しようと思うようになったのか

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男子空手、喜友名諒が金メダル!おめでとうございます!
空手発祥地の沖縄が金を取ったことで、メダルの喜びもひとしおです。

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さて、 連日、デルタ株、デルタ株、とうるさいことです。
そりゃどんどん感染力は強くなっていくだろうし、また世界的再拡大という局面もありえるでしょう。
昨日のコメント欄でもどなたかががやけっぱちのように言っていましたが、「コロナはなくなるわけじゃない」のです。
しかしちょっと待って下さいな、それってウィルスの立場からすれば平常飛行ではありませんか。

だって、そもそもCOVID-19というウィルスはそういう性格なのです。
同じコロナ一族でもSARSやMERSと、今回のCOVID-19が大きく違うのは、宿主の呼吸器表面である上気道に侵入し、そこで増殖することてす。
だからPCR検査は、手軽に鼻孔や咽喉、時には唾液から採取できます。短時間で毎日できるのはそのためです。

一方、今までのSARSやMERSはもっと気道の奥のどん詰まりである肺に侵入し、そこで肺炎を起こします。
肺の中ですから肺炎から重症化しやすく、致死率も高いのです。
その代わりといってはナンですが、患者が重症化して動けなくなってしまうために、大きな流行にはなりにくいともいえます。
SARSは脅威を叫ばれたものの、中国から出られませんでした。
H5亜型のトリインフルエンザも同じで、致死率は高いものの、同じ理由で感染力は限られていました。

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新型コロナによる肺炎 通常の肺炎と何が違うのか|NIKKEI STYLE

COVID-19の場合、感染部位が上気道という浅い部位に病巣が限定され、肺の中で増殖しません。
だからCOVID-19は、既往症があって重症化しない限り、肺炎になかなかかかりません。

しかし逆もまた真なりで、COVID-19の増殖力と感染力は非常に強いのです。
理由は同じで、増殖部位の上気道が、体外と接触している部位であるために、その分ウィルスが体外に排出されやすいからです。
また軽症患者が大半を占め、その人たちは無症状であるケースが多いため、あっちこっちに移動してしまい、感染を拡げます。
この性格は季節性インフルエンザと一緒です。

現在、世界各国でデルタ株の感染者は増え続けています。
6月29日に開かれた厚労省の会議では、国内感染力は従来のウイルスの1・95倍という推定結果が公表されました。
今の東京都の実効再生産数はオリンピック期間中6日連続減少し、最大で1.76あった値が既に1.36まで大幅に減少しました。
下図の下から二番めの赤線です。

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さて、ワクチンはウィルスを絶滅させるわけではなく、体内に抗体をつくるだけですから、ウィルスはなくなるわけではありません。
消滅させるためには、特効薬が必要ですが、現時点では定まった特効薬はありません。

ワクチン接種は急速に進んでいます。
現時点で公式に9965万回、たぶんVRSのズレを考えると1億回を突破しています。
世界でも早いペースの国のひとつです。
65歳以上は、既に30,964,771回で接種率87.26%です。
官邸新型コロナワクチンについて

おそらくそう遠いことではなく、国民の6割以上が接種済みになるはずです。
すると新規陽性者判定者が1日1万になろうと、累積で100万に達しようと(どういう意味があるんだこの数字)、重症者は東京都で135人とやや押し上げられるものの、新規死亡者はわずか1名です。
東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数

これはどういう意味かといえば、たしかに感染は拡大しているが、重症化したり死んだりはしないということになります。
別の言い方をすれば、ウィルスはいつもいる、つまり拡散して常在化しつつある、という状態になります。
私はこれを「ウィルスとの共存期」と呼ぶことにしています。

「共存期」と書くと悲観的になりそうなので付け加えれば、世界各国の製薬会社は大車輪で治療薬を製造しようとしています。

塩野義社長、コロナ飲み薬「年内に承認申請」 供給体制も整備
塩野義製薬の手代木(てしろぎ)功社長は5日、毎日新聞のインタビューに応じ、開発中の新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症患者を想定した飲み薬タイプの治療薬について、年内に「条件付き早期承認」の申請を目指す考えを明らかにした。実用化をにらみ、年末までに国内で100万~200万人分の供給体制を整えると説明」(毎日8月5日)

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新型コロナ: コロナ飲み薬、塩野義が治験開始 家で投与可能に

また東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏はこのように述べています。

「しかし、生物学的な観点からいえば、2倍程度の感染力の変異は、それほど珍しくなく、これまでの感染症対策の延長線上で、十分に対応可能な範囲。ワクチンが普及しつつあることを考えれば、恐れすぎる必要はないです。
またデータを見ると、65歳以上の感染者数が明らかに抑えられています。ワクチン接種率が低い50代以下で感染者が増えても、重症化したり死に至ったりする高齢者を守る体制が整い、効果が出始めている。その証拠に、東京都の新規感染者数は1日千人を超えても、死者数や重症者数は減少傾向にあります」

つまり、症状がない状態のままで急速に感染が拡がっているとしても、ウィルスが弱毒化しているうえに、軽症段階から自宅で服用でき、重症化が防げる飲み薬が登場するでしょう。
米国を先頭にして多数の国が複数の治療薬を作っており、近い将来治験を終えて実用化段階になるでしょう。
ワクチンと治療薬の両輪が揃えば
、COVID-19は大きな人類の脅威とはなりえません。

人類が撲滅できたウィルスは、ポリオなど少数であることを考えれば、実行不可能なゼロコロナなどと気張って精神を病むより、いつもいるかもしれないが、まぁたいしたこたぁねぇ、と思うほうがいいのです。

また、変異株について過度の恐怖心をもつのも止めましょう。
ウィルスは、細胞の中に自分の遺伝子のコピーを大量に作っていきますが、その際のコピーミスで遺伝子パーツの配列がすこしずつズレていきます。
その結果、ひっきりなしに変異し続けます。
そして変異することで、より繁殖できる株だけが生き残っていきます。

ただし、COVID-19にはコピーミスを自己修正する能力があるようなので、インフルエンザほどひんぱんには変異しないようです。
変異株の中でより生存力が強いものが残るために(今のデルタ株がそうですが)、当初は強い繁殖力を持つことがありますが、ピークを迎えればまた平常に戻ります。
このように株が変化し、いったんピークを迎えて、また鎮静化する、そしてまた株が変化し(以下同文)、この繰り返しを規模を縮小しながら続けることになります。

なぜなら強い繁殖力をもつということは、裏返していえば社会の多くの人が感染して抗体を持ってしまうということですから、一定のピークを迎えると絶対に縮小へと転じるのです。
ただし、また変異して次の変異株にバトンタッチしているだけのことなのです。

ですから政府や自治体がよく言う「ここ一週間が山場だ」と言う言い方は半分は正しいのですが、またいずれは大きいか小さいかは別にして別の波が来るのです。
行政がこういう言い方を緊急事態宣言の理由付けにしたために、国民は頑張って宣言を乗り越えてもまた次の波がきてしまい、厭戦気分が広まる原因となりました。

ただし、それに対して人類が無力かといえばそういうわけでもなく、先述したように人間はワクチンや特効薬を作りだすことで、重症化することを防いでいます。
つまるところ、抗体を獲得するためにはふたとおりの方法しかないのです。
ひとつは、人間が作った人工的抗体、すなわちワクチンです。
いま一つは、ウィルスに感染することによって生じる自然抗体です。
ですから、感染によって抗体保持者が増えている、くらいにかんがえたら気が楽になりませんか。
その意味で、感染が拡大するということにも多少のメリットがあると思いましょう。

問題はむしろ国民の心のケアを含む公衆衛生です。
緊急事態宣言のような抑圧的な規制だけで乗り切ろうとしているために、国民は先が見えない心理状況に陥っています。
唯一の太陽であるオリンピックも、「政府がお祭りやっているようだから、国民が浮かれて感染拡大するんだ」なんて上目線で国民を叱りつけるような傲慢な輩も大量に出るありさまです。
こういう発言の出所は尾身会長の「感染爆発は五輪による気の緩みが原因」という発言から来ているようです。
尾身さん、それって科学的に因果関係を立証できるのでしょうね。
東京都の実効再生産数は大会期間中ずっと低下しているのですよ。

違うのです。コロナとは長いつきあいになりそうだと心して、その都度大事にならないようにいくつも手を打って「共存」する、長い眼で見て「なくならないのだ」と達観して落ち着くのが正解なのです。

だからこそ立憲じゃあるまいし「ゼロコロナ」なんて安易なゼロリスク論を掲げるのではなく、腹を決めて対策を作るべきなのです。
短期、中期、長期と区分けして考えねばならないでしょう。
短期的には一にワクチン、二にワクチン、三にもワクチン。
そして同時に医療機関の早急な拡充、そして充分な休業補償です。
特に今緊急にせねばならないのが、三の医療施設のコロナ用病床の拡充です。
厚労省が1.3兆円も予算をつけても、いっかな重い腰を上げず、国民に負担を強いる緊急事態宣言だけに頼ろうとする医師会は、根性を入れ換えたほうがいいでしょう。

中期的には治療薬。そして長期的には「コロナ共存社会」の構築でしょうか。
短期中期まではともかくとして、長期となると私にもわかりません。
しかしこのように考えていくほうが、ゼロコロナなんてありえないゼロリスク信仰に走るより、よほど精神衛生上よいと思いますが、いかがでしょうか。

 

 

 

2021年8月 6日 (金)

東京オリンピックの「大義」はコロナとの戦いです

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いよいよ終盤に近づいてきました。今日を入れてあと3日です。
早く終わってホっとしたいような、まだまだズッと見続けていたいような。

さて、よく東京オリンピックに大義がない、なんて言う人がいます。
たとえば立憲の原口副代表はこんなことを言っています。

「立憲民主党の原口一博副代表は24日、新型コロナウイルス感染拡大の恐れがあるとして、23日に開幕した東京五輪の中止を求めた。佐賀市内で記者団に「医療が切迫している。それを押して強行するのは大義がない。今からでも遅くなく、やめるべきだ」と述べた」(共同2021年7月24日)

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上の写真が中止デモですが、それにしてもダサイ。辺野古でも特定秘密法でも、はたまたオリンピックでもタコ焼きの型に入れて使い回しですからね、この人ら。
まぁ同じ人が、プラカードを取っかえ引っかえしているだけですから似て当然なんですが。
宇都宮健児氏などは、「大義なき五輪は中止しろ」とIOCへ45万筆の署名を集めたとして、こう言っています。

「東京五輪の開幕まであと8日と迫る中、新型コロナ感染拡大への懸念などから、五輪中止を求めるオンライン署名が45万筆を突破した。
署名を呼びかけてきた元日弁連会長の宇都宮健児弁護士は7月15日、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長や小池百合子都知事らに署名と五輪中止を求める要望書を提出した。
宇都宮弁護士は同日午前、都庁で会見し、「もはや五輪に大義は失われています。今なぜ五輪なのか」とあらためて中止の必要性を訴えた。
「人間の尊厳に重きをおく五輪憲章にも反する」 。東京五輪の中止を求める署名キャンペーンは、「Change.org日本版」で5月にスタート。7月11日に45万筆を突破し、同サイトとしては史上最多を記録している」(弁護士ドットム2021年7月25日)

こんな病院もあるそうです。

「医療は限界 五輪やめて! もうカンベン オリンピックむり!」、窓にそう掲げて話題になった立川相互病院(東京都立川市)。最近、「院長 憤怒」の文字が加わった。 私は知ってのとおり、日本はもう1年延期して、2022年に実施した方がよいと思っていました」
(毎日8月4日)

ここの副院長、連日テレビに出まくって「医者からのお願いだ。オリンピック、今からでもヤメロ」と叫んでいます。
ちなみにこの病院は共産党の民医連系だそうです。
もちろん毎日は共産党系だと知っているのに、まるで医者みんながオリンピックに反対しているようなトーンで報じています。

反対する人たちが言っているのは、海外から悪性ウィルスが持ち込まれる、ということのようですが、あんたね、外国人をバイキンのように言うんじゃないよ。
これってモロに外国人ヘイトじゃありませんか。どうして外人選手がウィルスを持ち込むと決めつけるのでしょうか。
海外選手の入国以前から始まる防疫フローは下の通りです。


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東京五輪・パラ選手ら毎日検査 変異株対応へコロナ対策厳格化 | 毎日新聞

選手は出国前96時間以内に3回検査を受け、日本に着いてからも専用バスで移動し、選手村から一歩も出られず、一般人はメディアを含めて立ち入ることすら出来ず(こら、白鵬)、毎日PCRを受けます。
そして陽性判定を受ければ、選手用医療施設に収容され、状態次第で選手専用の病院で治療を受けます。
一貫して外部との接触はありません。
海外選手や関係者は、まるで泡に保護されたように大会を送るわけで、「バブル管理」と組織委員会は呼んでいます。
選手たちも心理的にきつかろうということで、せめて選手村レストランを無料にして、とびきり美味しくしたのですよ。

ですから、逆に緊急事態宣言を出し続けている外部世界のほうが、選手村よりよほど危険といわれてもしかたがありません。
もういいかげん日本国民も分かってきたようですが、オリンピックが外部から大量のウィルスキャリアーを入れて、患者を大規模発生させ、医療崩壊させる、というのはまったくのデマです。
海外選手を理由にした中止論は、ただのゼノフォビア(外国人憎悪)の亜種にすぎませんから、すこしは恥じて下さい。

ところで、政府が言っていた大義は、東日本大震災と福島事故からの復興を見てもらうこと、そして10年前に受けた海外からの暖かい支援に対してのお礼をすることです。
ここまでは、中止論を声高に叫ぶ人はまれでした。
なぜなら「復興五輪」という大義は、日本人であれば正面切って反対しにくい共通の思いだったからです。

しかしそのうち、covid-19が世界的パンデミックとなるに従って、このまま開催して大丈夫かという不安が首をもたげました。
事実、去年はそれどころじゃなかった、というのが各国の実情だったことでしょう。
その感染拡大に対しての不安感に、いつでも・どこでも・なんにでも政府さえ批判できればダボハゼのように飛びつくメディアと野党とその界隈が相乗りしました。
そしてご承知のように、議論の行方は開催間際まで大会そのものをを中止しろ、という方向にすっ飛んでいってしまいました。やれやれです。

いつものことですが、ヒダリ方向の人らの議論は賛成か反対かの二択ですから、理念もクソもなくなってしまったのでした。
そして中止論者が言うことには、大義がない理念がない、アベがこれだけの反対を押し切って強行しようとしている、太平洋戦争突入のようだ、とテンション上りまくっていました。
ありとあらゆるメディアが連日のように中止論に誘導するために、世論調査でも7割が反対論に傾いた時期すらありました。
先日の「入院制限論」でわかるように、衰えたりとはいえ、短期的にはメディアはこのていどの力を持っているのです。
彼らの思考様式は二択ですから、やるかやらないか論から一歩も出られず、「安全な大会をするためにはどうしたらよいのか」という個別具体論にまでは話が進みません。

そして次なるは、無観客論です。中止が無理だとわかると、こんどは無観客でやれという無理難題です。
そのくせ自分の新聞社主催の高校野球には観客を入れても五輪だけには許さん、自分の社の球団には客をたっぷり入れて儲けてもいいが、五輪は無観客でしろというのですから、露骨なまでのダブスタ。
ここでも無観客にするならするで、いかに国民と世界の人々に楽しんで見てもらえるのか、共に人類の祝祭として享受できるのか、という論点など入る余地すらありませんでした。
有観客開催で頑張っていた政府も、尾身氏の天皇へのご進講がきっかけで起きたと思われる西村宮内庁長官「拝察」発言がトドメとなって、無観客に屈してしまいました。

こんなことを直前までやっていたために、「復興五輪」の初心はボロボロにされ、からくも福島開催競技や食材、そしてビクトリーブーケにだけにかろうじて残っているていどとなってしまいました。

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韓国メディアが根拠なき言いがかり…メダリストに贈られる“ビクトリー

 「東京五輪で贈られているビクトリーブーケには、東日本大震災で被災した地域で育てられた花が使用されている。「トルコギキョウ」(福島県産)、「ヒマワリ」(宮城県産)、「リンドウ」(岩手県産)、「ナルコラン」(福島県産)などだ。それぞれに復興への願いが込められている。
   東京五輪の公式サイトによると、例えばトルコギキョウは、福島県が県ぐるみで生産に取り組んでいる。震災による影響で農作物の出荷が減った際、県は特定非営利活動法人(NPO)を立ち上げ、花を栽培することで復興への希望を見出したという。黄色に藍色と、美しい配色の花束には、今大会の公式マスコットキャラクター「ミライトワ」が付いている。日本ならではのビクトリーブーケに、ツイッター上ではかわいい、私も欲しい、と評判だ」(「jCAST 2021年08月03日)
五輪の副賞「ビクトリーブーケ」 花には深い意味が込められていた: J-CAST トレンド【全文表示】

そして結局、「復興五輪」に替わる「大義」を見いだせないまま、組織委員会の不祥事とあいつぐ辞任によって日本人は心が干からびた状態になってしまって迎えたのが、今回のオリンピックでした。
それを一挙に吹き飛ばしたのが、涙ぐましい選手たちの大活躍でした。目も覚めるような快進撃。素晴らしい試合の数々。
これで世論から中止論がきれいさっぱり一掃されてしまいました。
やってよかったとつくづく思います。やっていなければ日本人の心はもうズタボロだったことでしょう。

そしてこの取り返した輝きを見ると、もう一つのホスト国としてのオリンピックの「大義」が改めて浮かびあがってきます。
それはスポーツは人に輝きを与えるという、素朴な真実です。 
オリンピックは世界最大のスポーツ祭典です。
かつての古代オリンピックが、都市間の戦争を休戦してまで開かれたように、世の中の悪しきこと、まがまがしい戦争や災害々あるいは疫病を一時忘れて、選ばれた超一流のアスリートらが一所に集い、フェアに競う祝祭です。

そこには世界の耳目が集中し、そこでホスト国は世界に向かって「時代の精神」を発信することができるのです。
この世界的パンデミック時において、それはひとつしかないでしょう。
「世界が結束し、連帯してコロナと戦い、平和の祭典を作る」ということです。
そしてそれを開催したのは、人類最悪の災害であった東日本と福島事故という二重の打撃から立ち直った日本というちいさな国なのだ、ということです。

今回の大会で私が感動したのは、どれほどコロナで痛めつけられていようと、その国が誇りとする最良のアスリートたちを日本に送ってきてくれたことでした。
たとえば、ブラジルは世界有数の感染者で苦しみましたが、素晴らしいアスリートを送って来てくれました。

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そしていまや民主主義の廃墟と化そうとしている香港からも、 絶望を乗り超えて選手団が来ました 。

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香港 X 開会式

民族、国境を越えて世界は、「コロナ」という共通の巨大な災厄に直面し、多くの犠牲者を出し、そしていまもまだ苦しみ続けています。
そしてそれを救済する手段としてオリンピックが存在するのです。
これは我が国だけの「大義」ではなく、世界共通の人類的「大義」です。
「震災復興」というのが日本だけの大義ならば、「コロナとの戦いと連帯、そして復興」は、人類共通のものです。
つまり「復興」という大義はさらに深化したのです。

ですから、日本が大会をしながら緊急事態宣言を出すのはおかしいといった議論を聞くことがありますが、真逆です。
日本はコロナと戦いながら、人類の希望と連帯をつなごうとしているのです。
その意味で、この東京オリンピックは平時のそれとは違い、「戦う復興オリンピック」だといえるのです。

これが私たちの東京オリンピックの大義です。
 

2021年8月 5日 (木)

軽症・中等症状は自宅療養、という報道は真実でしょうか?

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こういう時期に、こういうマネは止めてくれませんかね、毎日新聞さん。
8月2日に毎日が出した「中等症や軽症者は自宅療養を基本」という記事は、大きな動揺をもたらしました。
https://mainichi.jp/articles/20210802/k00/00m/010/197000c
国会でも立憲がはりきっているようです。
読んだ人の多くは、うわっ、政府は軽症・中等患者切り捨てに走ったか、という受け取りをしたでしょう。
そう国民に思わせるのが目的ですから。

実はこの記事は今はもうありません。毎日がタイトルを含めて書き換えてしまったからです。
各所から批判されて2日後に、こんな言い訳をしています。

「本記事では、当初「重症者については入院のための病床を確保するが、中等症や軽症者に関しては自宅療養を基本とする内容」としていたのを「入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込み、入院しない人を原則自宅療養とすることを可能とする方針」と修正しています。取材の過程で、中等症の人を一律自宅療養とするわけではないことが判明したためです」(毎日8月4日)

おいおい、そりゃ誤報です、ってことでしょうが。謝罪しなくていいのでしょうか。
もし訂正文をだすなら、原文はそのまま保持してわかるようにしておかねばなりません。
そして遅い。毎日はたぶん出した直後、自分の誤報に気がついていたはずです。
競合他社の記事と較べりゃそりゃわかります。
だから慌ててタイトルを全面的に差し替え、記事も書き換えたのでしょう。
そして2日遅れで書き換え済みの記事に、謝罪ならぬ言い訳を書き添えたということでしょうか。お粗末。

自分でも認めているように、毎日は話を「盛った」のです。
現行の記事のタイトルは「入院患者以外は原則自宅 政府、宿泊療養を限定 感染増加地域」ですが、元の記事は「中等症、軽症者は自宅療養が基本、政府病床確保方針」がオリジナルです。

魚拓が残っていたので、貼っておきます。

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毎日の最初の記事では、政府が中等症と軽症患者はウチで寝ていろ、医療機関は使わせんぞ、と政府が言ったということになります。
それに呼応するかのように、朝日が翌日に「自宅療養の厳しい現実 散らかった嘔吐物「私死ぬの?」、なんて記事を載せて煽りに煽っています。

「自宅療養者は第4波のピーク時、大阪で1万5千人、兵庫では1800人を超えた。これとは別に入院や宿泊療養を調整中の人も、大阪で3500人、兵庫では1900人を超えていた。  「重い肺炎ですぐに入院が必要なのに、亡くなる直前まで入院できない人が何人もいた」  神戸市西区の訪問看護ステーション「秋桜」を経営する社会福祉士の龍田章一さん(35)は、目に涙を浮かべながら当時を振り返った。  3月末から6月まで、市や病院からの依頼で、高齢者や障害者のコロナ患者140人の自宅を看護師と2人1組で訪問した。普段通うヘルパーは感染対策のため訪問できない。患者は動けず、生ごみが散らかり、吐いたものはそのまま。「痛い」「苦しい」とうめく声が室内に響く。「私も死ぬの?」と何度も問いかけられた」(8月3日朝日)

両紙を合わせて読めば、政府が病院から中等症と軽症患者を排除したために、自宅でゲロを吐いてのたうち回って死を待つ悲惨な末路が待っている、ということになります。
その上に毎日系のTBSが救急車は、100件の病院を回っても断られている、と追い打ちを掛けました。
このTBS報道には東京都も把握できていない未確認情報で、都は否定しています。

さて、この毎日の報道はフェークであることを、ファクトチェックを主宰する楊井人文氏が指摘しています。
https://twitter.com/yanai_factcheck/status/1422164612980428803

柳井氏は朝日系の論座にも登場するリベラル色が強い人物ですが、主観に惑わされずに客観的に突き放して物事を分析し続けています。

「菅首相の発言を確認しましたが、「中等症や軽症者に関しては自宅療養を基本とする」とは明言していません。「重症化リスクの特に高い方」も入院対象と述べており、重症者予備軍(従来の中等症)が含まれると解釈するのが自然です」

毎日がやった手法は、発言の主観的脚色です。
菅総理の発言を他のソースで見てみましょう。

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www.kantei.go.jp

「重症者など確実に病床確保、それ以外は自宅療養が基本=菅首相
[東京 3日 ロイター] - 菅義偉首相は2日夕、今後の医療提供体制に関して「重症患者や重症化リスクの特に高い方に確実に入院していただけるよう必要な病床を確保する」とした上で、「それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」と語った。
新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する関係閣僚会議で述べた。
菅首相は、在宅での医療に関して、往診の診療報酬を拡充し、家庭内感染の恐れがあるなどの事情がある場合は、ホテルを活用する考えも示した」(ロイター8月3日)

このロイターの記事で菅首相は「それ以外の方は」と言っている部分を、毎日は勝手に尾ひれをつけて「中等症・軽症」と話を盛ったのです。
毎日は、政府のコロナ対応は後手後手で、医療崩壊が始まっている、という方向に世論を誘導したいために、言っていないことまでつけ加えてしまった、というわけです。

では、現状はどうかといえばケースバイケースのようです。つまり一概にこうだ、とはいえないようです。
要は軽症者の扱いなのです。
たとえば同じ自宅療養者にも、先ほどの朝日のように深刻な苦痛を訴える方もいる反面、在宅で重症化したら保健所の責任になると思ってか病院に「療養中に呼吸困難、酸素飽和度93%」という所見をつけて送り込んでみたら、医者の眼から見ればまったく元気で、肺炎なんかになりっこない、というケースも珍しくないそうです。
しかしいったん病院に入れてまうと、一定の基準になるまで退院させられないので、コロナ病棟が軽症者によって占有され続けるということになります。
インヴェスドクター・ツイッター https://twitter.com/Invesdoctor/status/1422166728352485389

結果、軽症患者でコロナ病棟のキャパが急激に減少することになります。
では各県の軽症者の割合を、柳井氏のツイートを参考にして見てみましょう。

●入院患者に占める軽症者の割合
愛知県 約半数
福島県 半数以上
沖縄県 3割
熊本県 約3分の2
茨城県 3割強
神奈川県 1割
2020年11月〜2021年1月の全国平均 約4割
https://twitter.com/yanai_factcheck/status/1422200425785167875

愛知県や福島県ではコロナ病棟の半分が軽症患者で占められています。
その他の県でも
 沖縄県ではやや中等症患者が多いですが、軽症以下の入院患者が3割以上

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pref.okinawa.lg.jp/site/chijiko/k

熊本県も入院患者の3分の2程度が軽症以下 

Photo_20210804094401

pref.kumamoto.jp/soshiki/30/920

茨城県も入院患者の3割強が軽症 

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一方神奈川県は独自の医療機関保護ルールによって軽症入院者の割合が約1割に止まっています。
神奈川はこの入院基準によって、軽症者の療養原則を徹底しているため
、神奈川は100万人あたり死者数が全国平均以下で、死亡率(死者数/陽性者数)も東京都並みに低い水準でキープしています。

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神奈川県が、このようにコロナ病棟を確保できるのは、菅さんが言っているとおり「重症患者や重症化リスクの特に高い方に確実に入院してもらえるように必要な病床を確保する。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」という方針を貫いているからです。
なんだ、政府方針を既に実行している神奈川県みたいなところがあり、それに他県も習って欲しいと言っているだけじゃないですか。
それを大げさに加工して、「中等症・軽症患者は病院に入れない」、みたいな書き方をするから おかしくなるのです。

ホント、もう止めて欲しいよ、こういう煽り。
毎日新聞系列のサンデー毎日(鳥越さんが編集長していたところですが)などは、今週号ノ対特集はナント「五輪狂想曲・安倍・菅の陰謀」でした。
まるでアベの陰謀で五輪が強行されたのだぁ、ということのようで、安倍さん、辞めても人気者だね。
「月刊日本」は、五輪は太平洋戦争突入と同じだ、日本人は反省していない、悲劇を繰り返すな、なんて書いていましたね。
いや、すごいこと。では、今は太平洋戦争の真っ最中なんか。柔道の金メダルラッシュはさしずめ真珠湾なんだな(爆笑)。

ヒダリの人らの本音は、オリンピックと感染拡大がリンクして欲しいのでしょうな。
オリンピックで海外からウィルスが持ち込まれ、選手村では大クラスター、バタバタ倒れる海外選手で病院は満杯。
日本人は海外選手のために締めだされて医療崩壊。
かくして、オリンピックでこの世の生き地獄が来るぅ、と太鼓を叩いたわけですが、始まってみれば国民は連日の日本選手の大活躍で大喜び、大会関係者からの感染数は想定内。気の毒。
地獄なんか来ないどころか、日本人は長すぎるトンネルから顔を出して、久しぶりに太陽を拝んだ気になっています。
すると専門家と称する者が現れて、今度はしたり顔で「五輪の高揚感が感染拡大の原因」なんて言い出すんですから、どこまで精神がネジ゙くれているんだろうかね、この人ら。
左翼の人たちの状況からの乖離は今に始まったことではありませんが、今回ほど短期間で結果が見えてしまったケースは少ないんじゃないかな。

とまれ、医療問題における煽りは、誤報の中でももっとも悪質です。人命にもろにかかわるからです。
今回のことでも、野党はいうにおよばず与党内でも撤回決議なんか出すと騒いでいます。
選挙が近くなると、大きく状況を見ずに票欲しさで右往左往する、ああ見苦しい。

立憲の山井議員は「肺炎症状のある中等症の方が入院できない、そんなことは許されない」と質問しましたが、田村厚労大臣はこのように答えています。

「肺炎症状のある中等症の方は入院して頂きます。中等症Iでも重症化する方、リスクの高い方は当然、入院のままである」
“高齢”“基礎疾患”でも自宅療養?入院基準に混乱(2021年8月4日) - YouTube

田村大臣が言っているのは、中等症状でも肺炎の可能性がある人は入院させるが、そうでなければ入院する必要はないというだけのことです。
つまりインフルエンザと同じような扱いで入院基準をかんがえてということにすぎません。
このどこがまちがっているのでしょうか。

とまれこういう医療崩壊ネタが拡散すると、都市封鎖だなんて全国知事会が言い出すようになるのです。
憲法違反だよ、知事会さん。できるわきゃないっしょ。

 

2021年8月 4日 (水)

中国は強大になるほど戦略的に弱くなる

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もう少し台湾について続けることにします。
ひとことで台湾に対しての自由主義陣営の政策は、「あいまい路線」です。
ハッキリと台湾を一国家として認めるわけではなく、かといって「中国の一部」という中国の言い分に与するわけでもありません。
中国のワンチャイナという主張について、米国はあくまでも「そちらがそういっているのを聞き置いただけ」というのが基本スタンスです。
しかしだからといって、台湾を国家として認めたというわけでもありません。
コチラを立てず、アチラも立てず、なぁなぁまぁまぁ、お平らにお平らにというわけです。
これが自由主義諸国の台湾政策でした。
職業外交官たちが寄ってたかって作ったガラス細工のようなものですから分かりにくく、衝撃に弱いのです。

しかしいままではこれで済んでいたのです。
中国は米国や日本がワンチャイナ原則を守っていることで気をよくし、日米は中国というやっかいな怪物と戦わなくて済み、かつ台湾にとっても進攻の口実をあたえないで平穏無事に過ごせる、三方両得みたいな便利なスタンスでした。
しかし今、これが急速にうまくいかなくなりつつあります。

バイデン政権のNSCアジア担当のカート・キャンベルはこう言っています。
こんな古狸が舞い戻ってきているのかとため息が出ますが、舞い戻っちゃったんですね、これが。

「【ワシントン=永沢毅】米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は6日、台湾との関係について「強力で非公式な関係を支持しているが、独立は支持しない」と述べた。中国大陸と台湾は1つの国に属するとする「一つの中国」政策を歴代米政権と同じく踏襲する立場を改めて示した。
米シンクタンクのイベントで語った。歴代の米政権は台湾問題について1972年の米中共同声明などで当事者による「平和的解決」を支持してきた。台湾による一方的な独立は支持しない立場をとってきた。中国の武力侵攻を誘発してむしろ情勢を不安定にしかねないためだ。
キャンベル氏は「台湾は平穏な暮らしを送る権利があると確信している。国際社会で役割を果たす姿をみたい」と述べ、国際機関からの台湾排除を推進する中国を批判した。「私たちは台湾海峡を巡って抑止のメッセージを送ってきた」とも強調。中国が強権的な統治を強める香港を引き合いに「中国が国際秩序に完全に反する措置をとれば、国際社会がしかるべく対応をするというシグナルを発することが必要だ」と語った」(日経2021年7月7日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06DMI0W1A700C2000000/

ミリー統合参謀本部議長も似たようなことを言っているようです。この男は現職統合参謀本部議長でありがなら、トランプが去るやいなや罵詈雑言を浴びせるような人物です。

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カート・キャンベル・アジア担当調整官
米新政権、対中強硬路線を維持 人権、ハイテクで対決姿勢―気候変動は

キャベルが言っていることは特に目新しいことではなく、オーソドックスな米国のワンチャイナ政策にすぎません。
キャンベルはヒラリーの国務長官時代の最側近でした。
彼のような長年、民主党外交の中枢に巣くっていた者からみれば、ブリンケンなど元気のいいお兄ちゃんにすきません。

その彼が国家安全保障会議のアジア調整官となり、ケリー元国務長官が地球温暖化なんじゃらになった時、ああ、この二人がバイデン外交の舵を握るのかとため息が出たことを思い出します。
このふたりが、今の習の「戦狼」路線を作ったようなものですから。
あの時代、つまり南シナ海を要塞化し、空母を作り出す前に米国が毅然とした態度をとっていれば、今の「戦狼」が野放しになることはなかった。

エドワード・ルトワックは、近著『ラストエンペラー・習近平』でこのように述べています。

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中国、南シナ海で最大規模の海上軍事パレード —— 空母「遼寧」、

「中国にとって究極にして最適な戦略とは次のようなものだ。
ひとつは中国が自国の領域として主張する『九段線』、もはくは『牛の舌』として知られる地図を引っ込めること。つまり南シナ海の領有権の主張を放棄することである。そしてもうひとつは空母の建造を直ちに中止することだ。この提言が最も正しい選択であることは、いまも変わらない」(ルトワック前掲)

しかそれは習にとって「政治的に受け入れられないだろう。中国のメンツに大きなキズをつくるからだ」、とルトワックは言います。
中国は小国である時のほうがしたたかで強かったが、既に中国は「大国」それも「超大国」となってしまい退くことができないのだ、と。

「私の考えでは、習近平は『強大になるほど戦略的に弱くなる』という戦略の逆説(ストラテジック・パラドックス)にはまってしまったのである」(ルトワック前掲)

それがもう退くことすら出来ず、周囲をびっしりと取り囲んだ敵を蹴散らして進むしかない「チャイナ4.0」、つまり「戦狼」路線なのです。
習は、外国人との会話すら嫌うといわれるほどの井の中の蛙です。
権力内で国際社会を知っている者はほぼ絶滅。残っているのはイエスマンだけ。
このような党派闘争の手練手管だけで最高権力者に成り上がったような男が、対外的に「戦狼」だなんて言っているのですから、ナントカに刃物です。
こういう男相手に、キャンベルのような職業的なガラス細工外交がどこまで通用するでしょうか。

キャンベルら民主党外交が主張する現状維持外交路線は、まさに一時代前の「チャイナ3.0」という「選択的攻撃」路線に対応したものでした。が、既に中国は全方位に攻撃を仕掛ける超大国に変化してしまっているのです。
トランプ-ポンペオはこの中国の本質的変化を鋭敏に理解し、毅然として戦わねばならないことを宣言しました。
しかし、キャンベルはなまじ中国とつきあいが長い分、経験に囚われて動きが鈍いのです。
キャンベルは宮家邦彦氏が好きな精緻な「職業的外交」をする人物です。
ひとことでいえば、ステイタスクォ(現状維持)が大原則です。
すべからく波風を立てないて穏やか~に、、それがオバマ外交の「戦略的忍耐」などという屁タレ外交を生みました。

さて、このキャンベル発言ですが、日経の見出しのように「台湾独立支持せず」ということになりますが、それでは半分しか見たことになりません。
後半分でキャンベルは「中国が国際秩序に完全に反する措置をとれば、国際社会がしかるべく対応をする」、つまり軍事的進攻には軍事で答えるという意味で、「台湾」という国は認めない代わりに、中国よ、手を出すなという意味です。
これが今の米国の台湾を巡る基本線だと考えて下さい。
ただし、ここが大事ですが、それはあくまでも中国が先に手を出したらの話で、あくまでも米国は現状維持に徹するということになります。

トランプはこの既定のあいまいラインから一歩進もうとしました。
ポンペオはこう述べています。

「(ワシントン中央社)ポンペオ米国務長官は12日、米ラジオ番組のインタビューで、「台湾は中国の一部ではない」と明言し、台湾に対する米国の約束は党派を超えたものであり、台湾は民主主義の手本であると両党共に理解しているとの見方を示した。総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官は13日、中華民国は主権独立国家であり、これは争いようのない事実だと述べた」(フォーカス台湾 2020年11月13日)

たぶん第2期トランプ政権ができていたなら、民主党のステイタスクォ路線から一歩をでて、さらに二歩三歩台湾支持路線を強化することができたと思います。
ただし、ではトランプも「台湾独立」まで認めたかというと、それは疑問ですが。
なぜなら、それは中国に進攻の口実を与えることになるのは事実だからです。
台湾は、このあいまいな状況というハンディを逆手に取って民主化を進めた結果、いまやアジアの民主主義国家の模範となるほどです。
いつまでたってもクーデターをしているタイ、デモで大統領を選び、失脚すると牢獄にぶち込んでしまう韓国、腐敗が絶えないインドネシアやフィリピン、軍事独裁国家に戻ったミャンマーなどと較べると、アジアの中で特筆大書に安定した民主主義を確立しているのが台湾だとわかるでしょう。

だから、名を捨てて実を取れよ、それが大人の知恵だろう、というのが、日本も含めた自由主義陣営の共通見解だったわけです。
それを分かっているから蔡英文も、ギリギリで「台湾独立」とは口に出しませんでした。
蔡はバリバリの独立派ですから、本心では言いたくて言いたくてたまらないはずですが、「台湾独立」と言った瞬間、中国はおろか米国の支持も失いかねないから、我慢だぜ、ここは我慢だぜと踏ん張ってきました。
そして踏ん張っている間に、今の台湾の地位を高め、防衛力を強化して、中国が簡単に台湾に手を出せないようにしていたのです。

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台湾総統選、蔡英文氏が圧勝で再選 中国は見誤った? - BBCニュース

さて私はこのあいまい路線は、そろそろ中国相手に通用しなくなってきているとみています。
というのは習の驕り高ぶった「戦狼」路線は、とうとうこんなことまで言う輩を生み出してきたからです。

「中国北西部の共産党委員会が日本を標的とする核攻撃動画をネット上で再公開した。
この動画は7月11日に中国の動画投稿サイト・西瓜視頻に個人のユーザーがアップし、広く拡散したもの。いったんは削除されたが、地方当局による再公開でまたもや多数の「いいね!」を集めている。
再公開に踏み切ったのは陝西省宝鶏市の共産党委員会だ。中国は核を持たない国には核攻撃を行わないと宣言しているが、日本が台湾問題に首を突っ込んだら、「例外的に」核を使用してもいいと、この動画は主張している。
6分間程の動画は、軍事チャンネル「六軍韜略」が制作したもの。最初の公開から削除までのわずか2日間で200万回以上再生された。
六軍韜略が掲げるのは「日本例外論」だ。中国は核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しない「核の先制不使用」政策を維持し、非核保有国には核を使わないと誓っているが、日本はこの原則から外すべきだ、というのである」(ニューズウィーク2021年7月15日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/post-96706.php

おいおい、「日本が台湾問題に首を突っ込むなら核攻撃しろ」 ですと、 ブッソウなことを平気でいう(ブルブル)。
それも言っているのが向こうのネット民ならまだしも、陝西省宝鶏市の共産党委員会がこのぶっそうな核攻撃言説を認めて公開し、北京も黙認だということですから呆れます。
あの国では、共産党が許可しない勝手な言論は不可能ですからね。
だから中国共産党はSNSの形を借りて、日本に「台湾に関わったら核を見舞うでぇ」という脅迫をしたことになります。
ヤクザ屋さんですか、あんたらは。

この核先制攻撃論は極めつきに危険な考え方です。
なぜなら、それは現在すべての核保有国が共有している相互確証破壊を完全否定する、極め付きにアブナイ危険な考え方だからです。

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相互確証破壊 MAD  mutually assured destruction

相互確証破壊を煎じ詰めていえば、やったらやり返すということです。
相互の核に対する恐怖で縛って核を使えなくしようとする、いわば究極の防衛思想だともいえます。
核兵器はその極度の非人道的な被害のために勘違いされていますが、実は最大の防衛兵器なのです。
なんせ核さえ持てば、その国を侵略しようなどという不埒なことを考えなくなるからです。
だから北朝鮮のような世界最貧国ですらもちたがるわけです。

核保有国は、①長距離核ミサイル②空中発射核ミサイル③水中発射核ミサイルの3枚のカードを持っています。
これがストレートフラッシュよろしく3枚揃うと、核攻撃をした場合、共に滅びてしまうために核戦争にはなりません。
この3枚の核カードを完全に揃えている大国は米国とロシアだけで、中国はこの3枚がすべて不完全ですから、実を言うと核戦争を仕掛けたら滅びるのは中国のほうなのです。

ですから現実に先制核攻撃をするなんて言おうものなら、ならば我々もあんたの国を先制攻撃の対象とさせて頂くことになるが、覚悟はよいな、といわれるだけのことです。
軍事というのは対照的存在ですから、言ったら言った分同じだけ返されるだけなのです。
このような核戦略の理論を知ってか知らずか(知ってたいたら言えませんが)、「日本が台湾支援をしたら先制核使用する」などというのは、うちの国も先制核攻撃してくださいと言っているようなものです。
よほどの馬鹿か、増長してなにも見えないとしかおもえない放言で、こんな発言が出て来て拡散し、多くの支持者を集めてしまい、共産党がそれを裏書きするという中国国内を支配する「戦狼」的空気が恐ろしいのです。
超大国の奢りに走り、協調を知らず、仮に民間であったとしても核の先制使用などということを言い始める、自らの破滅に周辺国を巻き込むような国、それが習の中国です。

このような中国の「戦狼的空気に対して、キャンベルのように「台湾独立は支持しない」という定番発言を繰り返していればばよいのでしょうか。
確かにキャンベルが相手にしていた胡錦濤政権(ルトワック風にいえば「チャイナ3.0」ですが)なら、互いにこのガラス細工を壊すまいという自制があったので、米国側のステイタスクォ路線は一定の有効性を持っていました。
中国側も「一つの中国」は建前にすぎず、現実に台湾侵攻をする力も意図もないのだから、台湾はその間に黙々と強い民主国家を作ればいいだけだからです。

しかし、その常識が今の習政権に通じるのかどうか。
中国が退くことのできない「チャイナ4.0」に突入してしまった時に、今までの外交的常識にとらわれて「台湾の独立は支持しない」なんてのんきなことを言っていてよいのかどうか。
統合参謀本部議長のように「台湾侵攻は近々ありえない」などというような、妙にまったりとした観測を言っていてよいのかどうか。

かつてのクェート侵攻前夜、米国が介入するかどうかうやうかがっていたフセインに対して、在イラク米国大使は「米国はアラブ諸国間の戦争には介入しない」という言質を与えてしまい、それが侵攻の引き金になった故事があります。
今回のキャンベルの「独立は支持しない」というひと言は、なにもこの時期に言う必要はありませんでした。
むしろ、中国が侵攻するなら我が国は直ちに台湾を承認するぞ、といった毅然とした発言のほうが牽制球としても有効だったはずです。

 

2021年8月 3日 (火)

「台湾」という名称ひとつからわかること

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台湾がこんな小さな呼び方で喜んでいるそうで、かえって哀しくなります。
入場更新の際に、NHKが「チャイニーズ・タイペイ」という中国の圧力による名称ではなく「台湾」という正名で呼んだのです。
初めてNHKを褒めたような気がしますが、グッドジョブ!
なぜならNHKは、たぶん知らないでそう呼んだのでしょうが、「台湾」はこの国の「正名」(せいめい)です。

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五輪開会式でNHKアナの「台湾です!」に感涙 台湾にかかわる人々がこ

「23日の東京五輪開幕式当時、台湾の選手団が入場すると場内には「チャイニーズ・タイペイ」という放送が響き渡った。しかしNHKのアナウンサーがこれを中継しながら「台湾です」と紹介した。
中国の環球時報は社説を通じて「われわれは『一つの中国』原則を損なういかなる行動も容認できない」とし「五輪は神聖な舞台で、すべての汚いトリックを取り除かねばならない」と指摘した」(中央7月25日)

この女子アナ、後から怒られたんだろうな。
それともNHKの男気?ないない、日本一の恐中放送局ですから、あそこは。

この「チャイニーズタイペイ」なる妙チキリンな名称は、台湾が選んだものではありません。
中国の強圧に負けたIOCが台湾に強制しているものです。
台湾の選手たちは、1956年~1972年の間「中華民国」の名称でオリンピックに普通に出場できていました。
ところが、中国は
台湾は中華人民共和国に正当に帰属しており、その一つの省でしかないというワンチャイナ原則をふりかざし、オリンピックからも台湾を追放しにかかります。
76年の
モントリオールオリンピックの時、トルドー首相はカナダが「中華民国」を認めていないことを楯にとって台湾の出場を拒否する動きに出ました。
いたしかたなく台湾は出場を断念します。

80年のオリンピックに向けての交渉の中で、IOCと中国との間に妥協が成立し、それが「チャイニーズタイペイ」として出場する限り、オリンピックに出場を認めるという妥協案でした。これはその協定をつくった場所にちなんで「名古屋決議」と呼ばれています。
しかしわかるように、「
チャイニーズタイペイ」という名称はあえて争点をあいまいにしてあります。
中国から見れば台湾は中国の一部というように見えるが、台湾にとってはただのチャイニーズ文化圏のタイワンともとれるからで、帰属についてはなにも言っていないと解釈できるからです。

ですからこの名古屋決議に基づいて、台湾は台湾選手団の旗を中華民国の国章をあしらい、花の模様で囲んだ「チャイニーズタイペイ・オリンピック委員会旗」を使い、 金メダルを獲得した際には、中華民国の国歌の演奏は出来ず、代わりに「国旗歌」が演奏されています。

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チャイニーズタイペイ - Wikiwand

というわけで、NHKが「チャイニーズタイペイ」と呼ばず、「台湾」と「正しい名」で呼んだのは、なかなかたいしたことなのです。
「正名」とは、儒家思想で名を正す(なをただす)、つまり正しい名前で呼ぶことで「名分を正す」という意味です。
台湾正名運動においては、台湾を外来者である国民党が名付けた「中華民国」ではなく、ましてや「中国」の一部などではさらさらなく、「台湾」とシンプルに呼ぼうという運動です。
もちろん、この含意は台湾の独立です。

台湾において正名運動を進める林建良氏はこのように述べています。

「中国にとって、北京オリンピックは中華ナショナリズムを高揚させる絶好のチャンスでもある。戦後、蒋介石政権によって中国人意識を植え付けられ、台湾民族意識がまだ十分に成熟していない台湾人は、この中華ナショナリズムの高揚で動揺する可能性があるのだ。台湾の将来に関心を持っている人なら、少なからず似たような憂慮を抱いている」
台湾正名運動 (katakura.net)

林氏のいうように、中国が東京オリンピックで狙っているのは、中国共産党100周年を飾る中華帝国の栄光です。
それに対して台湾は脆弱な国際的地位しか持っていません。
その理由はひとつにはありとあらゆる形でかけられ続ける中国のイヤガラセですが、もう一つ原因があります。
それは台湾が台湾人としての民族意識を固めきっていないことです。
ですから、いまだ台湾人の半分は自らが「中国人」であると考えていて、台湾は「中国の一部」と考えているようです。
その意味では、ワンチャイナ幻想はどちらの側にも存在するのです。
その人たちは、国民党が目指す「大陸との協調」を支持しています。

「2008年北京オリンピックまでに台湾がやらなければならないことは、まず自国の地位を明確に定義することである。その第一歩は、裸の王様である「中華民国」を切り捨てることなのだ。
台湾の正式国名とされている「中華民国」が国際的にはもう通用しないことを、台湾人は認識すべきだ。領土範囲が中国とダブっている「中華民国」は、幻の存在でしかない。台湾人が「中華民国」の麻薬に浸かっている限り、台湾は国際社会から認められないし、台湾を守ることもできない」(林建良前掲)

蒋介石が大陸から命からがら逃げてきて、台湾に住む人たちを虐殺して作った「中華民国」は南京を首都するような幻想の上に成り立っていました。
私が蒋経国時代末期に初めて訪台した時、バスや鉄道で目にしたスローガンは「大陸反攻」でした。
いつか必ず大陸に戻る、このスローガンを撤回し一気に台湾化させたのが李登輝でした。
李登輝は台湾を台湾人の手に取り戻し、民主化を押し進めました。

だからたかだか名称一つの問題ではないのです。
台湾が「中華民国の麻薬」から脱し、自らを「台湾」と素直に呼べるようになって初めて民主化は終了するのです。

さて、安倍前首相は7月29日、日米台3カ国の国会議員による戦略対話(オンライン)に参加しました。

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日米台議員「対中抑止」議論 安倍前首相が参加: 日本経済新聞 

「日本と米国、台湾の議員有志は29日、安全保障などを議題に「戦略対話」の初会合をオンラインで開いた。日本側は日華議員懇談会(古屋圭司会長)の与野党議員が参加した。中国の抑止策を巡って意見を交わした。
日華懇顧問の安倍晋三前首相は中国当局による香港での民主派の運動への規制を念頭に「香港で起こったことが台湾で決して起こってはならない」と述べた。
中国の海洋進出を巡り「南シナ海や東シナ海で一方的な現状変更の試みが行われていることを懸念している」と語った。
日米台の経済的な連携を進めるため、米国と台湾に環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を呼びかけた。世界保健機関(WHO)への台湾のオブザーバー参加に関し「中国も広い心で受け入れてほしい」と説いた」(日経7月29日)

いやー、ひさしぶりに安倍さんを国際会議で見るとほっとしますなぁ。
重量級のスターが戻ってきたような気分は、私だけではなかったようで、この会議に参加した長島昭久議員はこんな正直なことを書いています。

「とりわけ、安倍前総理のゲスト・スピーチは圧巻でした。台湾海峡をめぐる地政戦略・経済安保の核心をノー原稿で簡潔に語られました」Facebook

ここらへんでしょうかね、菅氏がいつまでたっても官房長官から抜けきらないのは。けっこういいこともしているんですがね。
菅さんは役人のペーパーを読んでいるのに対して、安倍氏は自分の頭で組み立てた理念を自分の言葉で語りかけることができます。
だから、聞いたほうは安倍氏が3度目の復活をすることを念頭にして、これが近未来の日本政府の外交方針だと考えてしまうというわけです。
レームダックになりかかっている菅氏の一言より、安倍氏の言葉のほうが比較にならないほど迫力があるのです。

それはさておき、この演説の中で、安倍氏はかなり突っ込んだことを言っています。
それは台湾に対してのTPP参加の呼びかけです。安倍氏はサラッっと言っていますが、現職総理時だとこんなことを言うと、外務省が血相を変えて官邸に飛び込んできたことでしょう。

なぜって?そりゃ、このTPPの参加対象は「国家」だからです。
ですから、TPPに参加することは、イコール国家、ないしはそれに準じるものと国際社会が認知したことになります。
もし認められれば、中国は歯ぎしりして悔しがるでしょうが、オリンピックやWHOと違って中国とは無関係ですから拒否できません。やーいやーい。

そしてその次に安倍氏が用意しているのは、台湾のクアッドプラスへの招聘です。
それはすでに産経とのインタビューで安倍氏は口にしています。

「首相として「自由で開かれたインド太平洋」を提唱した安倍氏は、「欧州にあった冷戦時代のフロントラインが中国の台頭で太平洋に移った。これを支えるのは日米と民主国。(中国に近接する)台湾は地政学的に重要だ」と強調した。
李氏が重視してきた日台関係の今後については、「日本と台湾は双方が親近感をもっており、特別な関係だ。交流を続けていくことに加え、日本としては、台湾が国際社会の中で地位を確立するために支援していく」と述べた%(産経7月28日)
李登輝氏死去1年 安倍前首相「状況許せば訪台」 - 産経ニュース (sankei.com)

TPPとクアッドの枠組みに参加することは、表面的には台湾の独立とは無関係にみえますが、実質的にひとつの国家として台湾を国際社会が認知し、自由主義陣営に加えたということになります。

安倍さんは無役の時に、できることはみんなやってしまおうと考えているようです。
そのうえ安倍氏は二階や山口が聞いたらジョーっとなるようなことを言っています。
それは訪台です。これについても安倍氏はその意欲をはっきりと口にしています。

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李登輝氏死去 安倍晋三首相が哀悼の意 「痛惜の念に堪えない」 (2020年7月31日) 

「台湾の民主化を進めた李登輝(り・とうき)元総統が昨年、97歳で逝去して30日で1年となる。これに先立ち、安倍晋三前首相が産経新聞のインタビューに「世界の中でこれほど日本のことを思ってくれたリーダーは(李氏以外に)存在しなかった。諸般の状況が許せばお墓参りをしたい」と述べ、新型コロナウイルス感染症の動向などを見極めながら台湾を訪問したい意向を表明した。李氏は台北郊外の公的墓地に埋葬されている」(産経前掲)

残念ながら1周忌には間に合わなかったようですが、台湾外交部は諸手をあげて歓迎したいと述べています。

台北中央社)安倍晋三前首相が日本紙の取材に対し、李登輝(りとうき)元総統の逝去から30日で1年を迎えるに当たり、台湾を訪問したい意向を示していることについて、外交部(外務省)は28日、安倍氏の訪問を強く歓迎するとし、必要なことがあれば全力でサポートするとの姿勢を示した。(略)頼清徳らいせいとく)副総統は28日、日本語でツイッターを更新。安倍氏が訪台の意向を示していることに「とても感動しています」として歓迎する考えを示した」(フォーカス台湾7月29日)

もし安倍詩が訪台すれば、中国は狂ったように非難するでしょうが、知ったことではありません。


※改題しました。

2021年8月 2日 (月)

河南省大水害・中国の易姓革命のガスは溜まる一方です

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今、習近平はまったく余裕ナッシング。
せっかくチベットまで遠路でかけて内政が順調なことを誇示したと思えば、河南省で空前の大水害ですべてが台無しです。
それもこともあろうに共産党100周年ですぞ。

習は、よりによって記念日直後に、河南大水害なんか出しやがって、とそこら中のものを蹴飛ばしたくなったことでありましょう。
なぜなら、唯物論者を自認している習はそう思いたくはないでしょうが、多くの中国人はこれを易姓革命の天命と考えるからです。
易姓革命とは、徳がない指導者が権力に就くとき、天がそれを罰して起こす宮廷革命のことですが、日本人にはご冗談をですが、中国人にとっては冗談事ではありません。

中国は上海のピカピカの摩天楼など見ていてはわかりません。
中国人の大部分が住む世界は、今なお古いザーサイ瓶のようなものなのです。中はドロドロ、底は見えない。
そこでは中国共産党すら土俗宗教化して受け入れられています。
下の写真は先日もご紹介しましたが、今でも地方の農村に行けば、習はご利益を生む「神」として祭られていることを示しています。
その世界ではいまなお個人崇拝が生きており、習は毛沢東と並んで拝まれる土俗的「神」なのです。

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「天は己に成り代わって王朝に地上を治めさせるが、徳を失った現在の王朝に天が見切りをつけたとき、革命(天命を革める)が起きるとされた。それを悟って、君主(天子、即ち天の子)が自ら位を譲るのを禅譲、武力によって追放されることを放伐といった」(wiki)

この易姓革命論に従えば、武漢から世界パンデミックを引き起し、河南大水害を引き起こしたような男は「放伐」されねばならないと、天がお命じになるだろうということになります。

河南大水害は今なお死亡者数すら明確にならない様子で(いつものことですが)、南の大水害の死者は公式発表で27日の段階で71人、しかし市民はそんな数はまるで信用していません。
おそらくはほんとうはその10倍、いや100倍の死者が隠蔽されているのではないか、という声のほうが一般的です。
そりゃそうだ。あれだけ水没している農村部が大量に出て、しかも、河南省全体で150県市区で1300万人以上が被災しているっていうのに71人はありえません。

 しかもこういう時の中国当局は、中央からそう命じられなくとも自動的に完全な報道統制を敷いてしまいます。
現場を封鎖し、外国メディアには取材を許さず、国内メディアは報道規制をするので、かえって疑惑が拡がっていきます。
惨憺たる現状は昔と違い、今は微博(ツイッター)でたちまち拡散していきます。
武漢のCOVID-19感染爆発の時と同じ構造です。
皮肉にも、一般ピープルは隠すから現れると思います。
権力がひたすら隠蔽しているからこそ、そこにこそ真実があると思うのです。

そして一端ヒトの口の端に登った真実のかけらは、たちまち増殖して奇怪なものに姿を変えていきます。
それは真実そのものではありませんが、真実のまがうことのない一部なのです。
全体主義国家というのは常にそうやって真実を隠す通すことで秩序を維持しようとし、しかし隠すことによってかえって統治者の徳を疑わしめ、易姓革命 のエネルギーをため込んでいくというわけです。

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中国、鄭州市の長さ4kmのトンネルが5分で冠水、6000人死亡

この河南省大水害で、人々が目の当たりにしてしまった光景は、上の写真の河南省鄭州市の長さ4kmのトンネルの瞬間的水没です。
わずか5分で冠水し、6000人が死亡という情報が中国のSNSで拡散し、さらには深夜にトレーラーが遺体を運び出している動画も出回りました。

「北京-広州北路トンネルは、鄭州市の南北を貫く交通の要所であり、本線は全長1835メートル、トンネルの高さは6メートルです。 本土メディアによると、7月20日午後、約30万立方メートルの水がトンネルを満タンにし、3時間も経たないうちに浸水した。
「7月20日15時~16時頃、各トンネルの入り口が次々と閉鎖されました」と、鄭州市都市トンネル総合管理保全センターの責任者は語った。 当時、道路は水が溜まり始めており、トンネル内にはまだなかった。 入り口に分離杭、ガードレールを設置し、車両が入るのを防ぎ、LED大画面も「トンネルが閉じている、迂回してください」と合図した。 同時に、雨水の逆流を防ぐために、入口と出口に遮水パネルが設置した」
(ラジオ・フリー・アジア原文中国語)
https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shehui/xx-07272021131931.html

つまり当局は、水没しかかっているトンネルに大勢の人が車中に閉じ込められていることを知りながら、遮水板で出口を閉じてしまったということになります。
本来は、直ちに優先して人を避難誘導させるべきところを逆に出入り口を封鎖して閉じ込めたら、もはやこれは人災です。
しかも地下鉄すら浸水する状況で運行させて水没させ、当局発表で14名が亡くなっています。

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地下鉄が川のように・・・“車両浸水”胸まで水 中国(2021年7月21日

「河南の暴雨は7月16日から始まり、深刻な洪水、冠水を引き起こした。鄭州は20日、1時間あたりの最大降水量、201.9ミリを記録、地下鉄5号線で14人の死者、京広トンネルで6人の死者を出した。
この死者数は遺体が確認されただけの数で、今後も増えるかもしれない。
多くの大衆は、気象当局が十回も赤色警告(レッドアラート)を出しいるにもかかわらず、なぜ鄭州地下鉄が運行を止めなかったのか、トンネルを閉鎖しなかったのか、なぜ学校を強制休校にしなかったのか、会社を強制休業にしなかったのかなどなどと不満に思っている。7月19日の段階で、鄭州市党委員会書記の徐立毅は「重要交通機関は中断できない」と公言していた」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.391 2021年7月29日)

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pelicanmemo 様より引用させていただきました。ありがとうございます。

この上の多数の水没した車の残骸がある写真の場所は特定されていて、鄭州市「京広北路トンネル(京广北路隧道)」南側出口です。
この京広北路トンネルは南北に走るバイパス道で、上下3車、計(計6車線)という幅の広いトンネル道路です。
ほぼ約4キロだと推定されます。
ここに車両がぎっしりと渋滞した状態で水没した場合、1車線あたり約500台~600台、それが上下6車線で3000台~3600台となります。
一台につき最低で1名としても3000人~3600人、おそらく1名ということはありえないでしょうから平均2人とするとその倍の6000人~7200人となります。したがって、あながち6000人死亡説はヨタとはいえないわけです。
逆に、中国当局が死亡者6名などというガセを流すものですから、かえって6000人説が信憑性をもってしまうのです。

「河南の独立系メディア人、朱順忠は26日、実名のSNSで中央に鄭州の書記の更迭を洪水対策の責任能力不足を理由に求める呼びかけを開始。そうしなければ「民の憤りは静まらず、亡霊も安らかにならない」と訴えた。この呼びかけに瞬く間に10万人以上のイイネがついたが、この投稿はすぐに削除された」(福島前掲)

こんなことばかりやっているようだから、易姓革命近し、なのかもしれません。
習皇帝に安らかな夜はないようです。


 

2021年8月 1日 (日)

日曜写真館 向日葵に人の笑顔の及ばざる

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向日葵の十四花ゴッホの場合の如く 山口誓子 

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向日葵に天よりあつき光来る 橋本多佳子

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向日葵にながき銷夏の日を迎ふ 百合山羽公

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しづかなる向日葵黄土より立ちき 加藤秋邨

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ひややけく向日葵立ちぬ諦めぬ 岸田稚魚

 

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