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2021年8月14日 (土)

米軍「夜逃げのような逃げっぷり」、たちまちアフガン政権崩壊の危機へ


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アフガンが南ベトナム化しています。
米軍の撤退の声を聞くやいなやで、かつての南ベトナム崩壊の速度をはるかに追い抜いてしまいました。
首都カブールからわずか150キロの距離にあるガズニ州の州都ガズニが制圧されました。
米国は最低でも2年、悪くても半年ていどは持ちこたえると思ったようですが、米軍撤退が完了しないうちから、34州都のうち3分の1の10州都が陥落してしまいました。
米軍当局は6月下旬の時点で、カブールについて「8月末が期限の駐留米軍撤収から6カ月以内に陥落する可能性がある」と予想しましたが、当局者の一人はワシントンポストに「すべてが悪い方向に進んでいる」と述べ、従来の見通しが甘かったという認識を示しているそうです。
バイデン政権は30万人規模のアフガン政府軍は大半が首都カブール周辺に集結しているとし、簡単には陥落しないとしているようです。

しかし政府軍の士気は最低であり、逃亡が相次いでいます。
今まで北部同盟と共闘することを拒んでいたガニ大統領も、とうとうドスタムとの協議を開始し始めたようですが、いかんせん遅すぎます。
ドスタムが握るマザリシャリフが陥落すれば、長年にわたり反タリバンの根拠地だった北部での政府支配は完全崩壊する恐れがあります。
「イスラマバード、ワシントン共同】猛攻を続けるアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは11日までに、全34州都のうち9州都を制圧した。2001年の米中枢同時テロ後に米軍などの攻撃を受けてタリバン政権が崩壊して約20年。駐留米軍撤退完了が今月末に迫る中、タリバン幹部は首都カブールに向け進撃しているとし「3、4週間で首都を占領する」と述べた。
米軍の後ろ盾を失ったアフガン政府は
防戦一方。約6割の地区をタリバンが支配し、この数カ月で戦闘地域から数十万人が避難した。米紙ワシントン・ポストは10日、カブールが3カ月以内に陥落する可能性があるとの米軍の分析を報じた。」(共同8月11日)
支配地域の色分け図をみると、タリバンを表すドス黒い赤で染め上げられています。
ここまで戦線が崩壊してしまうと、もう和平交渉の余地はありません。
二度と米軍が戻ってこないことが明らかな以上、アフガン政権には挽回の余地がまったくなくなったからです。
タリバンにとって譲歩する意味がまったくなくなった以上、一気にカブールを陥落する所まで突き進むでしょう。
遠からずタリバン政権が樹立されるでしょうが、欧米は承認せずとも中国とロシアが承認し、正統政権と認めるはずです。
そして今後タリバン政権には色濃く中国の影が覆うはずです。
本来は共産主義とイスラム原理主義は不倶戴天の敵のはずですが、敵の敵は味方ということです。
中国はその伝でイランとも親密な関係を築いているようです。

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共同


もう少し詳しくみていきましょう。
8月8日、アフガニスタン政府軍の兵士数百人が、集団でクンドゥーズ近くでタリバンに投降しました。
クンドゥーズ は州都であるだけではなく、2001年に米国と共闘した北部同盟によってタリバンが追い払われた象徴的な都市であり、ここの奪還は、タリバンにとって天王山を制したことになります。
このクンドゥーズ攻略にあたってタリバンは、クンドゥーズ 州の周辺部を支配下に置き、3カ月掛かりで陥落させています。

クンドゥーズ、アフガニスタン、8月9日(AP)― アフガニスタンの反政府組織タリバンは8月8日、同国北部でタジキスタンと国境を接するクンドゥーズ州の州都クンドゥーズのほとんどを手中に収め、同市の空港を巡って政府軍部隊との戦闘が続いている。
首都カブールからほぼ真北に約200キロの位置にあるクンドゥーズは、アフガニスタン北部東西南北の主要幹線道路が交わる要衝。
戦闘は州知事官邸と警察署を中心に展開し、タリバンが両方の建物に加えて、同市にある刑務所も制圧し、州都を押さえるのも時間の問題だ」(AP 8月8日)
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タリバンは既に大部分の州都を制圧しており、政府軍は隣国に逃亡する部隊が相次ぎました。
「また北東部バダフシャン州ではタリバンの攻撃で、政府軍兵士が戦わずして戦線を離脱し、千人以上が隣国のタジキスタンに越境逃亡した。米ワシントン・ポストによると、中国、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン各国と接する北部地域の国境地帯はすでにタリバンが制圧し、検問所での関税を徴収しているという」(WEDGE7月12日)
タリバン、アフガン全土で攻勢、米撤退加速、大使館員の“脱出”が焦点に(Wedge)
その時、膨大な米軍装備が置き去りにされており、今やタリバンはハンビーに打ち跨がり、米軍制式自動小銃を装備しているありさまです。
次の焦点は、第2の都市カンダハルですが、この都市はいまだ攻防が続いていますが、もはや時間の問題だと見られています。
この膨大な米国兵器の遺棄も、かつてのベトナム戦争終了時と酷似しています。
今や、カブールの米大使館員の撤収が注目の的にすらなっており、米大使館員の撤退が始まれば、各国は遅れてはならじとその後に続き、カブールはまさに1975年4月30日のサイゴンと化します。
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このような戦線の雪崩的崩壊はバイデンの命令によって引き起こされたものです。
「米国防総省によると、4月から始まった撤退作業はこれまでに「90%が完了」した。2500人いた駐留軍のかなりの部分がすでに撤収したと見られている。現地からの報道によると、米空軍の主要な拠点だったバグラム空軍基地では、5日未明に撤収が完了したが、最後の部隊は基地を引き継いだ政府軍に通告することもなく、“夜逃げ”するように基地を後にしたという。
政府軍側は米軍が撤収して2時間以上経って初めて米軍の姿が消えたことを知ったという。しかも、米軍が撤退して政府軍が基地に入る間に、何者かが基地内に侵入し、米軍の残した軍事物資の一部を略奪するというおまけまでついた」(WEDGE 前掲) 
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この慌ただしい米軍の「夜逃げのような逃げっぷり」には理由があります。
新政権が誕生したおり、5月1日までに約2500人の駐留米軍を完全撤退させ、アフガニスタンが不安定化するリスクを取るのか。もしくは5月1日の期限後も駐留を続けることでタリバンのほうから合意を破棄され、アフガン政府とタリバンの間でようやく始まった和平プロセスを断念するのか──」(ニューズウィーク 2021年3月31日)
このアフガン撤収は、民主党-共和党を超えた超党派的合意でした。
国防総省の資料では、20年間にも及ぶアフガン駐留における米軍の戦死者が2200人、負傷者が2万人以上。
さらにイラクでは、米兵4500人以上が死亡し、3万2000人以上が負傷したということです。
そしてアフガンには常に1万1000人の大部隊を常駐させねばなりませんでした。
東アジアでは、朝鮮半島の陸軍第2師団や、沖縄の第3海兵遠征軍は、常に部隊を抽出され続けて、満足な定員に達したことがない有り様だったようです。
陸軍は州兵にまで動員をかけてなんとかアフガン戦線に手当てしている状況で、これでは中国と対峙するどころではありません。
ですから、中国と真正面から対抗するには、アフガンからの完全撤収が急務だったのです。
かつてのベトナム戦争でも、米軍の撤退直後に、その軍事的空白を狙って中国が南ベトナム領西沙諸島に侵攻しました。
同じように、このアフガン・イラクでの出血の20年間来の時期に、中国は南沙諸島の軍事基地化を完成させてしまいます。
この愚かなアフガン介入がなければ、米国が中国の台頭を易々と許すことはなかったでしょう。
中国の脅威にいち早く気がついたトランプが、一刻も早くアフガンからの足抜きを考えたのには、そのようなわけがあるのです。
アフガンを清算し、戦線を縮小し、中国への台頭に備える、これはいつどうやってという時期と方法だけの問題に絞られており、今年中にアフガン撤退を開始するのは既定路線でした。
一方戦費も6368兆円にも登るという試算がでています。
「米国のアフガニスタン、イラク、シリア、パキスタンでの戦費が2001年の戦争開始以降で5兆6000億ドル(約638兆40000億円)に上っているとの新たな試算が明らかになった」(ウォールストリートジャーナル 2021年8月12日)
これは将来の米国に大きな負の遺産として残すことになりました。

「(ブラウン大学クロフォード氏は、国防総省は戦費をごまかそうとしているわけではないが、その試算は戦争の「真の費用」をまったく反映していないと指摘。例えば、国防総省の医療費は、戦地での負傷の手当てと、その直後の治療が中心で、長期的な治療や退役後の継続治療は十分考慮されていない。
 ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)のトッド・ハリソン上級研究員は、退役軍人の将来の医療費がどの程度になるのかは分からないが、巨額に上るだろうと話す。イラクやアフガンでの戦争だけでなく、高齢化するベトナム戦争の退役軍人の医療費も増加しており、復員軍人省の予算は急増している。
ハリソン氏によれば、同様にして向こう数十年間イラク、アフガン戦争の退役軍人も増加していくため、医療費は増加の一途をたどる公算が大きい。「退役軍人の医療費がどこまで膨らむのか皆目見当がつかない」とハリソン氏は話す」(WSJ前掲)
米戦費、中東・アジアで約640兆円=民間試算 - WSJ

トランプはいち早く撤退を今年5月1日に定めましたが、これを引き継いだバイデンが考えたのは、5月1日の期限を少しだけ延長し和平交渉に持ち込む時間稼ぎでしたが、これに失敗。
ふたつめは、タリバンとアフガニスタン政府から何らかの和平を取り付けることでしたが、これにも失敗。
もちろんアフガン政府に巨大な軍事支援を与え、空から爆撃をで支援するといった、これもまたかつての「ベトナム化」路線にそっくりなこともしたのですが、これがなんの役もたたず、かえってタリバンの戦力を近代化してしまったのは皮肉なことです。
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かくして残されたバイデンの選択肢は、「夜逃げのように逃げる」ことだけだったようです。
おそらくこの秋にはタリバン軍はかつての北ベトナム軍のように、意気揚々とカブールに入城することでしょう。
そして不毛なアフガン戦争は、ベトナム戦争に並ぶ米国のトラウマとなることでしょう。

 

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コメント

素晴らしい解説です。

それにしても、米国は何故ベトナム戦争と同じ道を歩む事になったんでしょうかね?

結局、価値観の説明が出来なかったから?

話しは違いますが、アフガン戦争が、ベトナム戦争に並ぶ米国のトラウマになるのか?というと、時代性が違うから、どうかな?と感じます。

というのは、当時の共産主義は米国を脅かす思想でしたが、タリバン、つまりイスラム思想が米国を脅かす思想たるとは思えないからです。

ただ、責任追求の声は大きくなって、それは米国の分裂をさらに深める要因になるかもとは思います。

 EUや国連は即時停戦や和解を勧める方向で声明を出してますが、やがて国連が規定したテロリスト集団であるタリバンが政権を取る事になるでしょう。
兵の人員は国軍が多い上に米国からの武器調達が豊富であるからという理由で、簡単には落ちないと言ったリベラル側の主張は間違いです。
王毅は会談でタリバンを正式政権として認める方向を示していて、人権蹂躙OK国家の樹立は目の前です。

南シナ海に軍事資源を集中したい米軍の意向は本当だと思いますが、米国が築いた世界秩序の一端は崩れた気がします。
ですが、その責任は米国よりもEUの方により重い責任があると思います。

バイデンとトランプ、民主党と共和党のアフガン撤退支持の理由は根本で相違します。EUが米国を非難する事で立ち位置を確保して来た現代において米国人の血と税金を垂れ流す意義を失ったのが共和党で、米国の衰退を受け入れて多様性の美名の下に自信喪失して退くのが民主党流です。

ただ、中共のタリバン寄りの姿勢も結局は上手く行かないと思います。
タリバンのような宗教原理主義が国家としての実力を着けたなら、それは容易に国境を越えます。中共はタリバン政権容認を、そのパワーがウイグル自治区に及ばない事を条件としているようですが、約束してもそんなことは狂信者には関係ない事です。混沌を世界にふりまくのが中共の目的なら「成果アリ」ですが、長期的には中共の大失敗となるでしょう。

ウィグル自治区は、中国に対し散々暴動を起こしたイスラムの国です。
中国のタリバンへの接近は、イスラムのテロがウィグルに飛び火しないようにしたのでしょうが、どうでしょうか。
貧しいアフリカ諸国は、金で蹂躙できますが宗教に基づく思想は絶対に弾圧できません。中国は同じイスラム国のチェチェンを制圧したロシアとも接近しています。北方領土の交渉の難航で日本から経済支援を引き出せないロシアにもメリットがあります。最近のロシアの北方領土に対する強硬姿勢もそのためでしょう。逆にロシア、中国はイスラム勢力に危機感を強く感じているのが理解できます。
アメリカは、ウィグル自治区弾圧に抗議する声明を出し強制労働で作った製品の輸入を禁止しました。
アメリカが中国と対峙する前に、イスラムとロシア、中国を対立させる。
そこまでアメリカに思惑があるなら、逆にすごいと思います。

アフガニスタンをテロ組織が支配かー、と残念ではありますが。

アメリカの今後の戦略は、テロ組織に支援などして中国のアフガニスタン支配に苦労させるのが良いと思います。

それと、遺棄した兵器には、燃料タンクに角砂糖を入れるとか、使えなくする方策を行ったのでしょうねえ??

Twitterで朝日新聞の峯村記者が先月のロイター記事をリツイートしていました。
https://jp.reuters.com/article/afghanistan-conflict-biden-idJPKBN2EI0F5
今撤退がうまくやれているかどうかは別問題として、バイデン大統領のアフガニスタン政府への不信感は長年のものだったようです。

中国共産党とタリバンがこのまま蜜月へと向かえるかどうかは大いに疑問ですが、帝国の墓場との異名を持つアフガニスタンに手を突っ込む事は習近平の帝国志向と合致していますね。
シリアに向かったウイグル人がタリバンへ一定数周回しているという話ですし、アフリカ大陸のムスリム国で札びらで頬を張ってやったように好きに投資や利権確保とは、いかないと思います。

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