アフガン自衛隊機派遣、グッジョブ岸大臣!
アフガン邦人救出に向かった自衛隊輸送機がパキスタンのイスラマバードに到着しました。
無事に帰国されることをお祈りします。
「C2輸送機、パキスタン到着 後続2機と輸送活動へ
イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人らの退避支援のため、24日未明に鳥取県の美保基地を出発した航空自衛隊のC2輸送機は日本時間の同日夜、アフガン隣国パキスタンの首都イスラマバードの空港に到着した。関係者への取材で分かった。
C130輸送機2機も埼玉県の入間基地から那覇基地経由で出発。3機はイスラマバードを拠点として週内にも邦人輸送を始めるとみられる。C130は、アフガンの首都カブールの空港とイスラマバード間をピストン輸送する。C2は、拠点整備に当たる隊員や機材の運搬などを担う。
政府は政府専用機1機の追加派遣を調整している」(共同8月24日)
フォト特集】C-2輸送機、アフガンへ 入間基地離陸 - 産経ニュース
アフガンがタリバンの手に落ち、、外務省職員は国外脱出しましたが、まだJICAなどの職員を始めとする多くの日本人と、大使館に勤めていた現地雇用のアフガン人が残されたままでした。
今回の自衛隊機が飛来する予定のカブール空港まで残留者たちを保護しながら誘導するのは、JICAがすることになっているようです。
おいおい、それをするのが大使館の仕事だろう、邦人置いて自分らだけ真っ先に逃げてどうすると思いますが、外務省には期待することは少ないので先に進めます。
欧米政府はいち早く救援機を派遣していますが、わが国は国内法に縛られるとどうなるか心配していましたが、さすが岸大臣、グッジョブ!
「岸防衛大臣は「現地の邦人や大切な仲間である大使館の現地職員などの安全確保が極めて重要な責務だ。自衛隊が、こうした方々を退避させることが不可欠で、一刻も早く退避できるよう任務を果たしてほしい」と述べ、国際機関の日本人職員や大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを退避させるため、自衛隊法84条に基づいて自衛隊機による輸送を命令しました(NHK8月23日)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/66149.html
岸大臣と共に日本政府が雇用してきたアフガン人も救出させるとしていますが、外国人も共に救出するのは初めてのことです。
「「人道的観点から、退避させることは極めて重要な責務だ」 岸信夫防衛相は23日、記者団にこう語った。
対象者として現地職員の家族も含めて数百人規模を想定している。自衛隊法84条の4で規定された措置で、外国人を同乗させれば初めて」(ZAKZAK8月24日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210824/pol2108240002-n1.html
岸防衛大臣 NHK
今回、新鋭機のC-2も投入されたのは、従来のC-130と比較して圧倒的に航続距離が長いからです。
C-2ならば、無給油で日本本土からカブール空港に飛行できます。
ただしC-130のパイロットらは、今まで海外の台風などの災害派遣で多くの国外運用の経験がありますが、C-2は国外運行すること自体がニュースとなるような初期段階なので、いきなりアフガンに投入するかどうかは微妙です。
おそらく経験豊富で小回りが効くC-130がカブール現地に飛び、そこからピストン輸送でC-2が待つ近隣国(イスラマバードか)に引き継ぐのかもしれません。
さて、今回の自衛隊機派遣は防衛省が、外務大臣代理から派遣要請を受けた形を取っています。
代理ということは茂木大臣ではなかったようで、かえって結構でした。
こういう時、外務の相方が防衛大臣の経験もある河野氏だったらと思いますが、しょうがない。
外務省からの要請の御墨付きをもらった岸大臣は直ちに関係幹部会議を開き、自衛隊機の輸送命令を発出しました。
そして発令されたその晩には飛び立っていますから、自衛隊は既に準備をスタンバっていたようです。これまたグッジョブ!
岸大臣はタリバンがカブールを制圧する前後から、自衛隊や外務省と検討に入っていたと思われます。
当初救援機派遣は難しいと言っていたのは、初めから行くぞと言っていると与党内部からも邪魔が入るので、フェイントだったようです。
(おしらせ)
令和3年8月23日 防衛省
在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等の輸送の実施について
1 アフガニスタン・イスラム共和国情勢に鑑み、本日、外務大臣臨時代理から、防衛大臣に対し、同国に滞在する邦人等の輸送について依頼がありました。
これを受けて、本日、防衛大臣から、当該邦人等の輸送の実施を命じました。命令の概要は、以下の通りです。
現地における情報収集・関係機関等との調整のため、アフガニスタン・イスラム共和国に現地調整所を設置
航空支援集団司令官を指揮官とする在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等輸送統合任務部隊を編成
現地には、中央即応連隊長を指揮官とする、空輸隊、誘導輸送隊等からなる在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等輸送派遣統合任務部隊を編成し、邦人等の輸送及び輸送支援を実施2 本命令を受け、早ければ本日夕刻、航空自衛隊の輸送機をはじめとする自衛隊部隊を現地に向け出発させる予定です。
この防衛省の「お知らせ」にもあるように、外務大臣からの要請という形にこだわったのは、自衛隊法84条の3と4にその既定があるからです。
これは2016年に追加改正されたもので、まだ発令実績がありませんでした。
「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)と「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)という法律は整備されていましたが、ネックがいくつかありました。
それはPKO5原則にもあったように現実離れした「安全」の縛りが大きかったです。
自衛隊法84条の3を押さえておきます。
自衛隊法 (doshisha.ac.jp)
●自衛隊法第84条の3
在外邦人等の輸送
第八十四条の三 防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。
そもそも民間航空機ではなく自衛隊機を出さねばならないような在外邦人等輸送は、外国での災害や暴動といった緊急事態が起きているからで、安全なわきゃありませんがね。
南スーダンでは「戦闘」と日報に書いたら、野党から「戦闘が起きている地域に自衛隊を出したか。これは違反だ。撤収させろ」とワーワーやられました。
今回のアフガンのケースのように、現地政権が崩壊してしまって、その次の政権が国際的に承認を受けていないという空位というケースすらあります。
ところが、法的筋立てでいえば「現地政府の許可と連携」が必要となるのですが、その許可を求めるべき相手国政府がいなきゃどうしようもありません。
実際に今回のように大使館が脱出してしまうようなケースでは、現地政府が機能停止してしまっていることなどザラにあるわけです。
この問題を、上の防衛省の「在アフガニスタン・イスラム共和国邦人等の輸送の実施のお知らせ」とあるように、アフガン・イスラム共和国というカブール政府から許可を得た形にしてクリアしました。
きっとのちに国会で立憲共産党からネチネチやられるでしょうが、目の前に救助を求めている邦人を見殺しにするのか、という話です。
派遣先国の同意について聞かれた加藤官房長官はこのように答えています。
「本件輸送は、現在のアフガニスタンのような例外的な状況において、緊急的な措置として人道上の必要性から、安全が確保されている状況で自国民などの退避のために輸送を行うものであることから、仮に明確な同意がとれていないとしても国際法上問題ない」
世界各国が既に急延期を派遣している現状を見て、国際法上問題がないとつっぱねる気のようです。
まったくそのとおりで、派遣機を出さないほうが国際社会で異常なのです。
また、法改正前までは、自衛隊は自分自身と、自分の管理下に入った人の生命を守るための武器使用(自己保存型武器使用)まででしたが、2016年の法改正で、保護措置に際してはこれに加えて任務の実施を妨害する行為を排除するための武器使用(任務遂行型武器使用)が認められるようになりました。
これもあまりにも当然な法改正で、従来法では自衛隊は輸送機周辺で警備して来るのを待つだけに任務が限定されており、空港までの道中の安全確保ができなかったのです。
邦人が武装集団に追いかけられながら空港のフェンスまで来て助けてくれ、と自衛隊に叫んだとしても、自衛隊は救援の手をさしのべられなかったわけです。
今回、陸自は邦人保護のために主力の中央即応団100名に加えて避難誘導専門部隊と専用車両も派遣しているはずで、状況時代ではカブール市内にまで出て、邦人保護をする可能性もありますが、現地の状況次第です。
現時点ではしないとしていますが、いかがなものでしょうか。
タリバンは一応外国人の脱出は認めていますが、アフガン人に対しては出国を認めておらず、また規律もいいかげんなので、自衛隊による避難警護が必要だと思われます。
https://trafficnews.jp/photo/82512#photo18
まだどのような展開になるのか予断を許しませんし、柔軟に対応せねばなりませんが、やるね岸さん。
こういう時のために政治家がいるのです。
今回の場合、政治家がただ官僚に「自衛隊機を出すべきだろうか」、などと聞いてはいけません。
彼らは前例踏襲・因循姑息ですから、必ず「自衛隊機を出すためには現地政府の了解と連携が必要です。タリバンとは接触もできていません」と答えるでしょう。
ここでそうですか、やっぱりダメですか、日航に問い合わせましょう、と引っ込めば政治家はいらない。日本の舵取りはすべてお役人が差配すればいいだけのことです。
本気で世界のどこにいようと同胞を救助する気が政治家にあるなら、「知ったことか、そんなものは放っておけ」と言って、目標に向けてその手段を講じるはずです。
8月21日付け産経によれば、菅氏は日米首脳会談を控えた外務省幹部との打ち合わせの席でこのように言ったそうです。
「「そんなもの、放っておけばいいんだ」
4月の日米首脳会談を間近に控え、首相は、「共同声明に『台湾』を盛り込めばハレーションが起きる」と説明した外務省幹部にこう語った。当時、声明に「台湾」を明記する案が報じられ、与党内に台湾問題を「内政問題」とする中国政府の反発を懸念する声があった。外務省幹部がそうした状況を話したところ、首相は言下に突き放した」
菅政権「台湾重視」鮮明 閣僚級接触模索 香港「有事」警戒、半導体供給網維持… - 産経ニュース (sankei.com)
菅氏の胆力に感嘆します。
今回も岸氏は菅氏のこの後ろ楯があったからできたことです。
このような強い指導力を持ちながら、国民に理解される「言葉」を持たないとは。
この腹を括れる力業を持てる者だけが政治家と呼ばれるのです。
« 菅氏はいい味出していましたが、この先は厳しいでしょう | トップページ | 馬鹿が始めて、馬鹿がめちゃくちゃにしたアフガン戦争 »
コメント
« 菅氏はいい味出していましたが、この先は厳しいでしょう | トップページ | 馬鹿が始めて、馬鹿がめちゃくちゃにしたアフガン戦争 »
今回のエントリーにあるように菅政権は本当によくやっているかとは思います。
ただこちらの記事にもあるように
https://www.sankei.com/article/20210825-EZZU5R7RWRK75LG5UNJGKRFZR4/
説明力が無いと、難しい世の中でしょう。
もったいない。
投稿: 田中 | 2021年8月25日 (水) 07時09分
南スーダンの時は本当に危なかったようですね。
あれを派遣決定した当時の政権って···誰でしたっけ?
今回も自衛隊の即応能力に目を見張るばかりか、コロナ禍やパラリンピックがあって選挙も近いのに、これだけの腹芸の出来る政治家がいるんだなあ。と感心しかり。
皆さんご無事で帰って来られるように祈ってます!
投稿: 山形 | 2021年8月25日 (水) 08時02分
田中さんへ
今回の件も岸大臣の独断では決定出来ない案件ですし、総理の力もあってこそ迅速な派遣が可能になったのは間違いないのにそのあたりが全く発信されないのは不思議でなりません。
菅総理肯定派の自分でも「総理は次の総裁選で誰かに総理の椅子を押し付けたいのか?」と思うくらいに覇気を感じません。
支持率が低下している一番の原因はコロナ対応うんぬんよりも、この発信しない事から生じる漠然とした不安ではないかと思っています。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年8月25日 (水) 09時10分
菅さん、頑張って欲しいですね。
安倍さんや麻生さんたちが菅続投で行くぞいと言えば成るかもしれませんが。
テレビでやってましたが、アメリカなどのアフガニスタン脱出のタイムリミットは今月末日なのだそうです、タリバンの人の言うことにゃ、当然に31日を過ぎた自衛隊の活動は想定していない。
1週間しか時間がありません、現地雇用の方々までとなると大変さがマシマシに。
皆さん無事に脱出できますように祈念致します。
投稿: 多摩っこ | 2021年8月25日 (水) 09時21分
金と利権と提灯メディア、そして右肩上がりの好景気のどれひとつ持たないなかで、強い指導力を持ちながら、国民に理解される「言葉」を持った総理大臣が今までいたでしょうか。
逆にいえば今までのリーダーの強い言葉は応援メディアがいたから一般国民には届いていたのです。
一部ネット界隈で言われている「菅は電波利権に手を入れる宣言をしてから総攻撃を受けている」は私は信憑性が高いと考えています。
ここのコメント欄の方々は「メディアスクラムはトランプはひっくり返したぞ」と思うかもしれません。が、そもそもキャラ違いではありますが敵を名指し直接発信する手法は分断リスクがあり、だいいち心を一つにする天皇陛下の大御心に反します。
私は所謂保守論客達がないものねだりをしすぎていると年々感じてうんざりし始めています。
電波利権に体当たりで大穴を開けないと、政治の声なんて奴らの調理済みのクソ不味い皿でしか提供されていないのです。産経だろうが読売だろうがです。
会見の声だって音量絞ったり画像青っぽくしたり目線下向きの時間しか写さないとか、安倍政権時代にも増してやってますけど、なかなかニコニコの動画全部観る時間もないですからねえ。
投稿: ふゆみ | 2021年8月25日 (水) 12時26分
2013年にアルジェリアで日揮の社員10名がアルカイダ系のテロ集団に殺害された事件がありました。その反省から安倍政権の手で自衛隊法改正になったのですが、それが今回生きました。
「当事国の了解~云々」の解釈は当然にしても、現地人の協力者も含めて救助する事は国際的には人道上必須の行為です。党の方針や熱心な保守派の応援を受けたとはいえ、ここまで踏み込んだ決断をすることが出来る菅総理の肝っ玉はかなり据わっていると言えます。
この事は、台湾防衛に関する部分でも同様に感じました。
ところで、お先にちゃっかり英軍機で12名の職員を脱出させた外務省ですが、当初は「自衛隊に派遣要請をせず、友好国の協力を請うべき」との方針を示していました。何の為の法改正だったか!と怒鳴りたくもなりますが、主体性と実行力のない総理大臣だったなら、外務省を押し切る事は出来なかったと言えます。
なお、横浜市長選後の政党支持率はまだテレ朝しか出ておりませんが、自民党は4%強上昇して、立憲は下落傾向のようです。この意味は俄かに分かりかねますが、各社同じように出そろってくれば「菅外し」は困難でしょう。
しかし、二階とセットでは非常に困ります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年8月25日 (水) 17時24分
菅さんにとって惜しいのは、やっぱり有能な親友・仲間がいないことに尽きる
と思いますわ。「ガースー、そのやり方じゃダメだわ、こうしなよ」「おうよ、それ
は俺にまかしておけって、ガースーは自分の総理としての仕事に集中しろよ」
「そりゃ、またヤベー事になったもんだ、俺が矢面に立つわ、ガースーは知ら
んプリしてりゃいいっからよ」とかとか、そんな面々がいたら良かったのに。
でもまあ、そんな面々がいなかったからこそ、総理のイスが回って来たとも言
える(二階さんが何か企んでた?)んで、今に至っては結果を出すのみですわ。
菅さん、コロナで厚労省のヤクニンに煮え湯(特にワクチン接種の遅れ)を飲
まされたんだろう、ここに来ての、「そんなもの、放っておけばいいんだ」の言、
良い意味での開き直りは嬉しい限りです。しょせんサラリーマンのヤクニン共
には、国は動かせないんですわ。
「再選が無いというのなら、俺りゃあ、好きにやっからよ!」で、これから、菅
さんらしい言動を見せつけて欲しいですわ。一度、野党幹部とケンカ腰でマジ
激論するのも見てみたい。元々はそんなキャラの菅さんだったし、私などは、
そんな総理を期待していたのだから。もう、失うものは何も無いんですわ、好
きなようにやってみなはれ、ですわ。
案外、コロナ第5波はピークを迎え、これから爆発的感染拡大の反動で、坂
道転がり落ちる感染縮小となり、「おお、ガースーすげーじゃん、第5波終わ
ってみれば、又々日本は大勝利の、外国の被害の二桁減ですんだじゃん!
オリパラもやったしな」と、まあ私ら一般平民は現金なもんで、手のひら返す
ようなガースー人気になるかも知れませんわ。人気なんて、そんなもん。
投稿: アホンダラ1号 | 2021年8月26日 (木) 00時03分