中国、コロナ封じ込めに失敗した模様
1週間前に一回アップしたところ、アフガン情勢急変で差し替えられてしまった可哀相な記事です。
今アップしておかないと時期を失するので、再挑戦ということで。
なお、大幅に加筆してあります。
~~~~
ゼロコロナ戦略をとっていた中国が、コロナの封じ込めに失敗したようです。
「米国などの国々と比べれば新規感染者数は極めて少ない。ただ「感染者ゼロ」を目指す中国の戦略の下では厳しい対策が求められており、住宅街のロックダウンや公共イベントの中止などにも踏み切っている。エコノミストらは、感染拡大を早期に抑え込めなければ、こうした対策が中国の経済成長に深刻な影響を及ぼす可能性が大きいとみている。
北京市当局は先週、毎年恒例の北京国際映画祭を延期すると発表したほか、各種展示会を含む大型イベントの中止を決めた。8日には、コロナ流行地域から航空機や列車の市内乗り入れを一時停止した。
7月下旬にデルタ株が最初に見つかった南京市では、市民920万人が数週間の間に感染検査を受けた」(ウォールストリートジャーナル8月4日)
中国の厳しいコロナ対策、経済回復阻害のリスク - WSJ「厳しい国境封鎖を敷く中国だが今月に入り30を超える第1級行政区(省・直轄市・自治区)の半数余りで感染力の強いデルタ変異株が確認され、対象を絞ったロックダウン(都市封鎖)や移動制限、集団検査など新たな一連の対策実施を余儀なくされた」(ブルーミングバーグ2021年8月10日)
今の時点では表に出てくる感染者数は8月9日の新規感染者数が1週間前の倍以上の143人となったていどで、たいしたことはありませんが、情報隠蔽が常態のあの国ではこれはごく一部だとみるべきです。
しかも全国各地で発生しています。
WSJ
ところで、中国は典型的なゼロコロナ戦略をとってきました。
「世界では多くの国が新型コロナウイルスとの共生に軸足を移しつつあるが、中国はコロナを一切容認しない政策を堅持しており、世界2位の経済大国が今後何年も孤立しかねないリスクが生じている」(ブルーミングバーク前掲)
「コロナを一切容認しない政策」、これが「ゼロコロナ」政策ですが、どこかで聞いことがありませんか。
今、立憲が言っていることです。
立憲は法定伝染病並にコロナを撲滅しろといっていますから、あんがい中国を手本にしたのかもしれません。
その中国は、当初ロックダウン(都市封鎖)一本でコロナを乗り切ったと豪語した国です。
感染確認された地域を物流も含め完全に封鎖し、その上で絨毯爆撃のように市民の老いも若きも全員にPCR検査を行い、感染者の洗い出しをします。
あぶり出された感染者を完全に隔離し、接触を断ち、移動できなくして感染者がいないことが確認された時点で封鎖解除する、というものです。
この方法に憧れをいだいたのか、全数PCRこそ日本がとるべきだ、やらないのは政府の感染隠しだ、と日本でヒダリ方向やワイドショーが盛んに煽っていましたね。
実際にデニー知事や、元中学生過激派だった世田谷区長がやって、結局失敗した方法です。
そもそもPCRって、なんども書いてきましたが、プラスにもマイナスにも3割近く間違いが出る方法なのですよ。
だから1000人検査すれば、偽陽性を300人も出してしまいます。
しかも日本はコロナは2類感染症指定ですから、一回陽性と判定されればなんらかの隔離をせねばなりません。
これを丸ごと医療機関に収容すれば間違いなくパンクします。
また2類指定したために、専用病床を持つ病院だけしか患者を受けいれることが不可能になりました。
2類は結核などと同じですから、厳重な隔離施設を持ち、特別な訓練を受けた医師と医療スタッフが必要なのです。
多くの病院は尻込みし、コロナ特別病棟を増設することを嫌がりました。
政府は増設を「お願い」し、その予算もつけてあったのですが、いっこうに去年から専用病床は増えず、今頃になってアップアップしかけているわけです。
この医療問題についてはまた別の機会に書くかもしれません。
とまれ今のように信頼できる有効性の高いワクチンがあれば、国民の負担が大きい都市封鎖や非常事態宣言に頼るべきではありません。
しょせん緊急事態宣言や都市封鎖など、ワクチンがない時期の時間稼ぎなのです。
ヨーロッパで去年やった都市封鎖は、たとえば英国などは家から出られる人数は1名に限定し、それも食料品買い出しに制限しました。
表に出られるのは一家で1名、それも時差をおいての散歩だけ。会社もほとんどが閉鎖になっています。
どこぞの放送局のように明け方までカラオケに興じたり、BBQなんかしたら大変な罰金をとられました。
知事会は都市封鎖をしたいと盛んに言っているようですが、この覚悟がおありでしょうか。
あいまいな覚悟のままやったら、今の非常事態宣言と変わりありませんし、本格的都市封鎖をすれば、いまでも充分にくたびれきっている国民はワクチンの副反応より、行動制限による副反応で国民が参ってしまうでしょう。
ところで、この都市封鎖という強権的方法に中国は長けていました。
そりゃそうですとも。常に国家が国民全体を監視しているデジタル共産主義の国ですから。
ウィグルでは民族主義者をウィルスと見なして、彼らをありとあらゆる方法であぶり出し、接触を遮断するために隔離し収容所に入れました。
この方法と同じことをコロナに応用しただけのことです。
そんな国を、世界最速で感染拡大を止めた、さすがは共産党、危機に強い、と絶賛する人がうちの国にも大勢出たのには驚きました。
日本のような民主主義国家で、簡単に中国をまねできると思っているほうが異常です。
ブルーミングバーク
大きな誤解があるようですが、都市封鎖でCOVID-19ウィルスがこの世から消滅するかといえば、残念ながらそんなことはないのです。
都市封鎖をしたところで一時的には感染を抑えこんだように見えても、ウィルスは必ず社会のどこかに潜伏し、時間をおいて条件が整えば復活します。
仮に国内がゼロコロナになったとしても(ありえませんが)、世界全体を見れば各地に感染が燃え盛っている現状ですから、鎖国でもしない限り、必ず流入します。
そのとき国民に抗体がなければ、再び感染が燃え盛ることになるわけです。
だから抗体を作り出すワクチン接種が最優先なのです。
またこの都市封鎖によってゼロコロナを一時的に達成できますが、感染力が高い変異株へ変異することは止められません。
あくまでも都市封鎖が有効に見えるのは、ワクチンがなく、治療薬がないという初期の絶望的状況においてだけなのです。
ところが、今はワクチンもあれば、年内に有効な治療薬ができるところまでたどり着いています。
都市封鎖などにすがる必要はまったくありません。
こんなことをしたら、経済のダメージと国民への打撃は計り知れないものとなります。
中国に話を戻します。
中国は都市封鎖でゼロコロナをめざし、習の政治的思惑で解除を決めてしまいました。
習が一声、「感染は終わった」と言えば、あら不思議コロナ感染が完全になくなってしまうという珍しい国のようです。
内実は習のメンツのための政治的解除でしかなく、武漢を中心に各地に大量にCOVID-19ウィルスは潜在していたはずです。
そして中国が早期に解除を可能にした理由は、中国製ワクチンができたからです。
ワクチンはメンセンジャーRNAワクチン技術を用いない限り、普通は数年くらいかかるものなのに、手品のように半年くらいで作って見せました。
これをろくな治験もせずに、いきなり人間に接種したのですからたいしたタマです。
そもそも2019年9月くらいに作り始めているんですが、まぁこれは置いておきます。
中国ワクチンについて、中国の保健当局であるCDC(←米国CDCのまね)は、これが有効性を持たないことをかなり前から知っていたようです。
こんな発言を中国CDCのトップが言って物議をかもしたことがあります。
「中国疾病対策センター(CCDC)トップの 高氏は10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べた。
また、効果を高めるため、新型ウイルスのいくつかのワクチンを混合させることを、政府として検討していると示唆した」
(BBC2021年4月12日)
中国製ワクチンは「効果小さい」 中国当局者が発言、すぐ修正 - BBCニュース
中国CDC自身、たぶん5割効けば御の字と思っているはずです。
産経
いまや中国ワクチンを供与された国々(ただじゃありませんからね)は、一斉に接種を中止し始めています。
「ザ・ディプロマットが伝えたところでは、ゲブレイエススWHO事務局長が世界保健機関による前回調査の報告書に反する意見を発したのは、これまで中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンに頼っていたマレーシア保健省がいずれ同ワクチンの接種を中止するという方針を表明した直後であった。
ザ・ディプロマットによると、マレーシア保健省がこの決断に達したのは、伝染性の高いデルタ株に対して科興控股生物技術製ワクチンの有効性が低いことを示唆する裏付けがあるためである。
マレーシアは人口の70%に投与するのに十分な4,500万回分のファイザー、ビオンテック製ワクチンを確保したと、ザ・ディプロマットは報じている。(略)
複数の報道によると、インドネシアでは中国製ワクチンの投与を受けた医療従事者が新型コロナウイルス感染症検査で陽性となり、一部が死亡する事例が発生したことで、科興控股生物技術製ワクチンの接種者に追加免疫接種(ブースター)を行うことを予定している」
Indo-Pacific Defense Forum (ipdefenseforum.com)
しかもシノバックは武漢株に対応していると称しているだけで、今、世界を席巻しているデルタ株にはまったく無力のようです。
無力どころか、接種済みとカウントしてしまうために、対策がザルになる分かえって危険性が増します。
これは一見「ブレークスルー感染」のように見えますが、元々ただの水ですから、そう呼んでいいものやらどうやら。
ですから中国CDCは、今頃になって米国製ワクチンでブースト(追加)接種をしなければならないと考えたようです。
「複数の報道によると、中国保健当局自体が自国製ワクチンを投与した中国国民に対する外国製ワクチンの追加接種の必要性を検討している。戦略国際問題研究所(CSIS)グローバルヘルスポリシーセンター(GHPC)の上級副社長兼局長を務めるスティーブン・モリソン(Stephen Morrison)博士はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、「これで中国自体が自国製ワクチンを信頼していないことが暗に示されることになった」と述べている」
Indo-Pacific Defense Forum (ipdefenseforum.com)
そこで恥も外聞もなくファイザーを1 億回分輸入して、共産党幹部にだけ優先接種したようです。
大部分の国民はそんなことを知らないし、仮に知ったとしてもどうにもなりません。
したがって、コロナはかならず全国各地で再拡大します。
今、その感染再拡大が始まったところのようです。
そこで再び登場したのが、得意の都市封鎖です。
「高強・元衛生相は、中国は厳しい規制措置を撤回すべきではなく、米国や英国の緩い封じ込め戦略という失敗を回避すべきであるとの見解を表明」した。」(WSJ前掲)
これやると、経済が一気に冷え込みます。
既にその兆候が出ており、中国の景気回復は腰折れし始めました。
「コロナ一掃に向けた中国の取り組みは、投資家にも影響を及ぼしている。しかも多くの投資家は、テクノロジー企業に対する政府の徹底的な締め付けで中国株から一時1兆5000億ドル(約165兆円)の価値が吹き飛んだことで、既に打撃を受けている。
インフレ圧力が高まる一方で成長は鈍化する見込みで、年後半の経済リスクは積み上がりつつある。ゴールドマン・サックス・グループと野村ホールディングスは今月、中国政府のコロナ対策を理由に中国の成長見通しを引き下げた」(ブルーミングバーク前掲)
習は、巨大民間企業を叩き国有化を進めるという再共産主義化に熱心ですから、これで多くの民間企業が経営難に陥って国営化できるのは、むしろ願ったりかなったりかもしれませんが、中国の経済回復が福音だった国際経済にとっては迷惑なことです。
« 日曜写真館 ふところを風吹き過ぎてゆく晩夏 | トップページ | 菅氏はいい味出していましたが、この先は厳しいでしょう »
コメント
« 日曜写真館 ふところを風吹き過ぎてゆく晩夏 | トップページ | 菅氏はいい味出していましたが、この先は厳しいでしょう »
自分が蒔いた種で自分をも毒する。
生物兵器って厄介ですよね。
投稿: 田中 | 2021年8月23日 (月) 07時02分
近藤大介さんの8/6の記事で「日本のコロナ、ヤバい!」(中国人が先を争い日本脱出中)というのがありました。
7/28までにFNNなどは、中国の公式発表によらないで中国のロックダウンなどの現状を報じはじめていて、近藤大介さんの記事は「ロックダウンなどの強制的措置を取れない日本国内にいては大変な事になる」と考えた中国人が成田で列をなして出国している、というものでした。
中国は始めのベータ株をロックダウンで抑え込んだと言われていて、しかし感染力が高まったデルタ株にはPCR検査にもとづいた隔離措置やロックダウンでは対処不可能なのが現状です。
ブルームバーグの8/10の記事「中国の脱コロナ戦略、国際的孤立深める恐れ」では、ワクチン接種後のコロナ共生戦略にカジをとる世界標準とかけ離れて、中国が「コロナを一切容認しない政策を堅持」している事に警鐘を鳴らしています。
しかし一方では、中国の統計数字を信じる親中経済人的立場の和田清氏は日中論壇の中で、「なぜ中国では新型コロナウイルスが終息しつつあるのか」などとする記事を書いています。
事実認識において違いがあるので参考にすらなりませんが、「ワクチン接種後の共生」にカジをとる世界標準ではなく、「もっと中国を見習おう」という趣旨ですね。
ただ、本日記事でもあるように、中国も早晩出口戦略を変えて来ます。
それは、中華ワクチンのブースターショットによる考えかも知れませんが、塩野義の新ワクチンだったりするかも知れません。
そうした趨勢を見ずに日本の地方はロックダウンを今さら望むのですから、何ともピントが合わない感がします。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年8月23日 (月) 08時28分
ロックダウンとは何なのか?
知事会をはじめ訴えてる人達は理解なさってるんでしょうかねえ。
法的にも全く怪しいことだから政府は「お願い」の形で緊急事態宣言してるんですけど···
緊急事態宣言の拡大に、そんなのは効果が無い!ロックダウンするべきだ!とコメントしてる人々は、実際にロックダウンなんかしたら「個人の自由がー!」「基本的人権がー!」「ケンポーがー!」と叫ぶんでしょうねえ。。
投稿: 山形 | 2021年8月23日 (月) 09時06分
今から決めることでもないだろうに、
中国の国際的スポーツ大会は、F1もフィギュアも中止です。
そういう大会は本番の動線のコントロールのとても良い予行演習のはずなのに。
無観客も選択肢になかったのですね。
選手もマスコミも外国から入れたくない何かがあるのでしょう。
ワクチンも共産党幹部優先ですか。
北京五輪はその人たちだけ観客動員して、
大成功を取り繕う未来が見えます。
投稿: プー | 2021年8月23日 (月) 14時52分
今の日本の感染状況で中国を嗤ってる場合ではないと思いますが…
投稿: aks | 2021年8月23日 (月) 20時42分
日本のコロナの実態は毎日報道されるのでよくわかります。
但し、何人が検査を受け、何人が陽性でそのうち何人が重体なのかは、報道ではわかりません。検査数が増えれば当然陽性者も増えます。
中国の実態は、はっきり言ってわからないですね。
先日も、一人の感染者が確認されたマンションを丸ごと閉鎖。
デリバリーの店員も、運悪く閉じ込められた。
習近平が、コロナを制圧したと発表すれば、地方は感染者が出ました。などと報告を上げない。その隔離された中で何が起きているのか実態が分かるのはまだ先です。そういう隔離された地域が中国全土にある。
今日、かみさんの2回目の接種に付き合いました。私は職域接種ですでに2回目接種が完了しています。接種会場は意外と空いていていて、15:00の予約が14:30には完了しました。菅総理がおっしゃったように11月までには希望する人全員に接種が終わると思います。もう少しの辛抱です。
前にも書きましたが、マスコミは救える命も救えなくなる。と報道しますが、私の住んでいる街に限っては、病院は平常通りです。妊婦も老人もいつものように病院に来ています。私が仕事でちょっとケガをして病院で見た光景です。
但し、入り口で検温があり37.5℃以上の方は診察が受けられません。
今度のコロナ騒動で、問題点も見えてきました。
今回のような有事の際、国がコントロール出来る病院が必要です。
投稿: karakuchi | 2021年8月23日 (月) 22時48分
中国については何人どうなってるのかわからな過ぎて断定はできないものの、記事にあるような「きっととんでもない」状況なのでしょうね。隠し事だらけの国で開く冬季五輪、ボイコットの形がどうなるのか、パラリンピックが終わって秋には諸外国がアクションを始めることでしょう。
本筋からズレますが、日本は新型コロナを当初は結核と同じ2類ではなく指定感染症の1~2類「相当」として扱い2021年2月からは「新型インフルエンザ等感染症」に変更して現行運用に至ります。
変更に伴いこの枠の中で感染抑制に合わせた規制解除を可能に出来、発熱外来や緊急受け入れ等で既にエクモを操れるとか気管挿入ができるなどの技術の有無は別とした医療体制拡大が可能になり、やれるところはやっています。足りませんが。
私は5類に指定変更ではなくこのまま5類相当や季節性インフルエンザと同じレベルまで下げていき、きちんと段階根拠を事後でもいいので開示して、次にもありうる新型パンデミックの対策モデルにすべきだと思っています。
多くの病院が尻込みし、コロナ特別病棟の増設が叶わない事についての記事がアップされたらまた勉強しつつ拝読したいです。
投稿: ふゆみ | 2021年8月24日 (火) 00時31分