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2021年9月

2021年9月30日 (木)

妥当な岸田氏と躍進する高市氏、没落する小石河連合

  185   

昨日は仕事を早く切り上げて、総裁戦観戦デーとなってしまいました。ああ、くたびれた(笑)。
予想どおり岸田文雄氏が総裁に決定しました。
これ自体には驚く要素は少ないのですが、その途中経過が面白い。
自民党は最後まで選挙はエンタメだと考えて脚本を書いたようです。

まずは第1回目の結果。

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メディアでも、岸田氏1位となることを予想した所はなかったのではないでしょうか。
いまや政治評論家になってしまった橋下氏は、こんなことをぼやき節を言っています。

「さらに橋下徹氏は「あと、僕、これだけは言いたいのはね。2週間、僕も含めて、総裁選にずっとコメントしていた政治コメンテーター、本当に無駄でしたね。全然、何の役にも立ってないですからね」と虚無感におそわれたような表情。司会の宮根誠司も「そうですね。見なきゃよかった。だいたい、1位河野さん、2位岸田さん、3位高市さん…岸田さんと高市さんが組んで…というのをずっと、やってましたからね」と同調した」(9月29日デイリースポーツ)
橋下徹氏が反省「政治コメンテーター本当に無駄でした」総裁選の1回目投票の予想外れ(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

前日までメディアの予想は、河野優勢、高市70票でしたからね。

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  日テレ

たった1票ですが、河野氏を押えて岸田氏が1位となったまでは、なるほどねーと思ったていどでしたが、なんと議員票で高市氏が114票、河野氏と差をつけること28票にはたまげました。
泡沫候補にすら入れてもらえなかった早苗ちゃんが、堂々の2位です。
これがスタジアムだったら、私はキャッホーとスタンディグオベーションでした。
これで高市氏と、それを応援し続けた「尊厳と国益を護る会」の党内のポジションは完全に確定しました。
 護る会は組織的応援ではなく個別参加ですが、高市氏自身もその会員であり、推薦人にも何人かが名を連ねています。
またその主張は、高市氏の見事なディベートで、河野、岸田両氏を牽引しました。
そしてその背景には、安倍大魔神の威力があることを、党員だれしもが思い知ったことでしょう。

それにしても党員票を河野氏に誘導しているのは、なんなのでしょうかね。
ここまで河野氏に大きな票をやってしまった地方組織が、かえって心配になります。
消費大増税します(撤回)、原発止めます(半撤回)、女系天皇認めます(撤回)という人を一推してどうなるのでしょうか。
持論を出しては撤回することをし続けた候補に、総選挙の指揮をとらしてどうするのです。

自民の地方組織はSNSを少しでも見ているのでしょうか。
下のグラフどおり、一貫して話題の中心は高市氏でした。
河野氏は、本来得意だったはずのツイッター戦で負けっぱなしでした。
初めから最後まで一貫して議論をリードし、その発信力で圧倒していたのは高市氏だったのは、NHKすら認めています。
いかにSNS民の大多数を占める青年層から河野氏が嫌われていたのかが分かります。

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自民党総裁選 4候補へのツイッター上の関心は? | 2021自民党総裁選

そりゃそうでしょうとも、かんじんな政策がボロボロです。
私も、もう少し河野氏は政策通だと思っていたのですよ。
最大の争点だったエネルギー政策などもう悲惨で、まるで脱原発団体のアジビラのレベル。
再稼働はみとめるが、核燃料リサイクルは中止にするという、狡猾な言い方で脱原発は貫徹。
再エネを100%にするのは絵空事ではないなどとも行っていましたが、絵空事そのものです。

そんなことをしたら安倍氏ではありませんが、「国がめちゃくちゃくちゃ」になります。
当初は静観の構えだった安倍氏が、高市支持に回って大きく流れを変えたのは、この河野氏のエネルギー政策があまりに暴走していたからですし、岸田氏と高市氏が手を結んだきっかけも、河野氏のエネルギー政策が目に余るものだったからだと言われています。

あとは年金改革は消費増税でやれ、などということまで言い出し、では消費税の数字はと問われると、慌てて取り消すていたらく。
さすがに見かねたのか出身派閥ボスの麻生氏が、選挙期間中にもかかわらず、自派閥の候補の言説にこう述べています。


メディアは河野氏推しでしたから目こぼししていましたが、これは後に引く疑惑となるでしょう。
こんなことが暴露されるなら、総裁選に焦って出るべきではなかったですね。
かくして岸田政権がいくら挙党一致・ノーサイド内閣だなどといっても、河野氏が外務・防衛・経産の大臣になる可能性は消えました。

議員票が高市氏を下まわったのは、議員が衆院選の顔には河野氏はふさわしくない、高市氏のほうがパンチがあると思ったからです。
パンチといえば、ヘビメタやってカワサキ・Z400GPで゙六甲のコーナーを攻めていたという高市氏の姿を、今後も見続けていたいものです。
国難続きの日本に、このような女性政治家を与えてくれたことに感謝します。
次回は高市氏のものです。

さて、もはや消化試合となってしまった決戦投票ですが、最終結果はこうです。

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岸田氏は、かねての約束どおり共闘関係に入った高市陣営114票(とりこぼし11票)を援護射撃されて249票に積み上げました。
一方、河野氏は1回目で議員票3位という衝撃から立ち直れないまま積み上げられたのはわずか45票。
たぶん野田氏の34票が流れたのでしょうか。
岸田氏の52%という惨敗でした。

ゲル氏と組む者は天誅殺となるというGの法則どおりでしたが、石破氏はこんな愚痴を垂れています。

地方と国会議員の意識の落差については党全体で考えないといけない。党員と国会議員のウェイトは半々であるべきではないか。党員の意向をもっと反映できる仕組みを岸田新総裁のもとでもやっていくべき」(TBS9月29日)
石破元幹事長「地方と国会議員の意識の落差考えるべき」|ニフティニュース (nifty.com)

はいはい、ご説拝聴しました。
自分の党に説教を垂れるより、人気者三羽カラスと思っていたら、束になっても高市氏ひとりに敵わなかったことを反省してからにしてくださいね。

 

 

2021年9月29日 (水)

難破船だった改憲を救い出した高市氏

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さぁ、いよいよ総裁選がの決戦日です。
決戦前夜の産経記事は衝撃的でした。
山路さんからもコメントで教えていただきましたが、ほんとうだったのですね。
「自民党総裁選に立候補している岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務相の両陣営幹部が28日夜、東京都内で会談し、決選投票で岸田氏と高市氏のどちらかが河野太郎ワクチン担当相と対峙(たいじ)することになった場合、両陣営が協力することで正式に合意した。両陣営の関係者が明らかにした」(産経9月29日)
<独自>決選投票での共闘 岸田、高市両陣営が正式合意 - 産経ニュース (sankei.com)
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https://www.sankei.com/article/20210929-WCUAUSVYTNP7ZCKYIE62RJDI7I/
これでほとんど決まりです。河野氏が勝てる確率は1%以下となりました。
河野氏に入れて下克上の気分を味わいたかった若手や無派閥の連中は頭から冷や水をかけられ、河野氏になびきかけていた派閥はドン引きしたはずです。
そんなことをしたら閣僚人事で干されます。
また政策合意済みの共闘なので、これは岸田氏が勝っても高市氏が勝っても共に重職につけるということを意味します。
この岸高共闘の仲人は、双方に強い影響力を持つ安倍氏と麻生氏の意志を受けた甘利氏だと言われていますので、どちらが勝っても安倍後継政権になるでしょう。
安倍氏を三顧の礼で副総理兼外相に迎えないかな。まぁ無理でしょうが。
私はかねがね党員地方票での河野氏が伸びはないと見ていました。
あのいばりキャラで地方は無理(笑)。
河野氏が選ばれたら、おまけにゲルとセクシーがついてきます。
まるで三馬鹿大将ですが、このメンツでは党をまとめきれません。
やはりゲル氏と組んだのが、河野氏のミッドウェイでしたね。

またメディアは、初めこそ拍手喝采で御祝儀報道をしてくれますから衆院選には勝利するでしょうが、その後は野党とメディアのスクラムによって日本端子疑惑があぶり出されて、モリカケのようなバッシングが始まります。
そして来年には支持率がガタ落ちし、その結果参院選に敗北する可能性となります。
するとねじれ国会という、かつて第1次安倍政権が味わった不安定な政局が続く事になります。
いちばんこれを歓迎するのは中国でしょう。
その意味でも首相は岸田氏が適任、それを補佐して官房長官に高市氏という布陣が望ましいと思いますが、私はただのヤジ馬でした。
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ところで、今回の総裁選はホントに面白い。
だって、まるでブレーンストミーングを毎日見ているようなかんじとでもいうんですかね。
しかもやっているのが、言いぱっなしの評論家や学者センセではなく、明日にでも次期首相になろうかという面々ですから、たまらん。
その過程で、初めは凛々しく見えた河野氏が日増し劣化していき、今や父親譲りのゴム仮面へと変身
さえない公務員風に見えた岸田氏が、グンといぶし銀のごとき重厚さに見えてくるのですから、ヤジ馬とは勝手なものです。
高市氏に至っては私もよー知らなんだが、こんなすごい人いたのね。
これが丸々2週間も大討論会をするんですから、面白くないはずがありません。
たとえば憲法改正問題でははっきりと違いが出ました。
圧倒的におもしろいのは高市氏です。
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「個人的に私が大変あの興味がありますのは、12条の解釈ですね。この憲法が国民に保障している自由や権利、これに対して一定の制約がかかるとしたら「公共の福祉」という言葉が出てきます。でもこの「公共の福祉」っていう言葉がどうも中途半端でわからんばっかりに、これはできたらの公益及び公共の秩序という風にしてですね、本当に国民の皆様の命に関わるような場合、財産を奪われてしまうような場合、国家の主権にかかわるような事態が起きている時に、一定程度の制限ができる、そういった形をはっきりとさせたいなというのが私の希望です」
なんと高市氏は、9条ではなく12条から改憲を語っています。
高市氏は明示は避けていますが、明らかに緊急事態宣言で問題となった第12条の「公共の利益」、すなわち私権の制限との関係で提起していると思われます。
「改憲」というのは難破船のようなもので、かつてこの党が出来た頃は、吉田茂などは改憲する意志を強く秘めていたのです。
しかし時が立ち、日米安保という安楽椅子にどっかりと座ってしまうと、その必然性が薄れました。
やがて冷戦が終結すると、もう戦争は起きない、日本はあえて改憲という茨の道を歩む必要がないと、日本人の多くはそう思ってしまったのです。
このままでもいいじゃないか、困るのは自衛隊だけだし、無理にすると野党との対決事案となってメディアから極右扱いされてしまう、それが自民党議員たち大多数の本音でした。
それは野党とメディアの憲法の神格化と見事に平仄があった合わせ鏡のようなものでした。
自民党は改憲を9条2項を削除するのしないのという抽象的な神学論争の中に閉じ込めてしまい、永遠の先延ばしをし、野党は憲法審査会すら開かせないありさまです。 
この自民党の堕落を、現実に引き戻したのが安倍氏でした。
そしてさらに今、現実に則した形で憲法を変革しようとしているのが、この高市氏です。
今求められているのは、抽象論議ではなく現実に起きている事象に、いかに憲法を対応させるのかという作業です。
現実が憲法を追い越し、変革を求めている、今がそういう時期なのです。
やっと生まれたリアルな改憲論の登場です。
高市氏の切り込み方は、なんと9条ではなく、憲法12条でした。
●日本国憲法第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。


12条は国民に自由を保証するが、「公共の福祉」を乱すような濫用は慎め、と諫めているわけです。
ここで登場する「公共利益」という文言は、13条、21条、22条、29条にもあります。
憲法学者たちは、自由をはき違えるなという私権の制限で解釈せずに、ねしろ逆に国家は「公共の利益」を濫用するな、という国家権力の制限としてこれを解釈してしまいました。
自民党改憲草案では、この「公共の利益」を「公益及び公共の秩序」と修正しています。
今回の高市氏の発言は、この自民党改正案を踏まえたものです。
●自民党改正案 (国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
憲法学者たちは、「公共の利益」という曖昧模糊とした概念をこのように解釈しています。
① 権利行使が他者に害を与える場合。
②権利行使が他者の正当な権利ないしは利益と衝突する場合。
③権利行使が社会全体の利益にとってマイナスになる場合。
憲法学者が想定している状況はこのようなことです。
①は、街宣車がフルボリュームで走って日常生活の静穏が乱される場合は、表現の自由は「公共の福祉」の濫用にあたる場合がある。
②は、有名人のプライバシー報道が過度になる場合、「公共の福祉」は言論の自由に優先する場合がある。
③は、空港や、基地、道路を作る場合、「公共の福祉」によって地権者の財産権は制限を受ける場合がある。
彼らの頭には、
日本全体が感染症拡大の巷と化すなどという非常事態の想定は含まれていませんでした。
ところがコロナの感染拡大は、現実に国民の移動の自由を制限をせねばならない状況に突き当たったのはご承知のとおりです。
ほんとうに
国民の命に関わるような場合が起きたのに、現行憲法では生命を守りきれないという苦い体験です。
よく勘違いされていますが、日本の緊急自体宣言は諸外国のそれとは本質的に違っています。
緊急事態法で可能なこと
①外出の制限(45条1)
②イベント・集会などの制限(45条2)
③施設使用の制限(同上)
④予防接種(46条)
⑤医薬品・医療器材の確保・隠匿の罰則化(47条)
⑥医療施設の臨時開設(48条)
⑦医療施設開設目的の土地・施設の収容(49条)
⑧必要な物資の生産・集荷・販売・保管・輸送物流・管理の収容(55条)
⑨墓地・埋葬の特例(56条)
⑩金銭債務の延期(58条)
これらは自治体の「お願い」にすぎません。
かろうじて罰則既定があるのは47条の医薬品・器材の隠匿だけにすぎません。
しかも主体はあくまでも自治体首長であって、国は自治体からの要請を受けて了承を与えるだけのものにすぎません。
自治体首長は自分が泥をかぶるのがイヤで、国への要請で逃げているだけのことです。
宣言の発令から解除まで、すべて首長が決めることが可能です。
首長の能力や見識によってうまく運んでいる自治体がある反面、PCRを「いつでもどこでも何回でも」というポピュリズムに走って全国最悪の感染状況にあえぐ沖縄県のような例も出ました。

あくまでも日本版緊急事態宣言とは、自治体が強制力なしに市民にお願いするだけの、なんちゃって緊急事態宣言ですから仕方かないのです。
そんな無能な首長の県の民が苦しんでいても、国は手を出せません。
結局、ワクチン接種という決定打が始まるまで、結局コロナ対策はたるんでいるんじゃないぞ、引き締めていこう、という精神論を一歩も出られなかったのです。

またわが国では、医療施設を世界有数に保有しておきながら、コロナ専用病床が不足し医療逼迫が叫ばれるといった信じがたい事態も生じました。
民間病院が、専門看護士を置き、専用病床をつくらねばならないコロナ患者を抱え込むことをいやがったからです。
本来病院がすべき診療のツケは保健所に押しつけられ、在宅治療での死者が急増することになりました。

諸外国では、政府がコロナ専用病床を作ることを命じることができます。
しかし我が国は予算をつけて、政府が「お願い」するするしかなかったのです。
では、諸外国はどのように対応したのでしょうか。
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たとえばフランスを見てみましょう。
フランスではマクロン大統領が3月16日夜、国民向けのテレビ演説で外出禁止令を発表し、翌日正午から実施された。
 この政令は、(1)仕事で必要(2)生活必需品の買い物(3)自宅付近での運動-などの用件を除いて、外出を禁止した。外出の際は、自己申告の証明書携帯が義務。違反者には最大135ユーロ(約1万6千円)の罰金を科した。大統領は16日の演説で、「われわれは、ウイルスという『見えない敵』と戦争している」と述べ、強硬措置への理解を求めた。
 政府は23日には禁止令の強化を発表した。30日以内に4度違反を重ねると、3750ユーロ(約44万円)の罰金および禁錮刑を科すことになった。仕事上の外出も「テレワークができない場合」「延期ができない場合」に限定。運動は自宅から1キロ以内と、詳細に条件を示した」(産経2020年4月2日)
コロナ緊急事態 各国はどう動いているか(1/4ページ) - 産経ニュース (sankei.com)
諸外国では移動制限は罰金つきですが、わが国は国民の民度に期待するしかなかったのです。
その理由は、憲法の私権の制限に引っかかったからですが、国民の生命を守るためにはここから変えていかねばなりません。

そしてもう一つの高市氏の想定は、「財産を奪われてしまうような場合、国家の主権にかかわるような事態が起きている時」とは、いうまでもなく外国の侵略を受けた場合を考えています。
たとえば、今現実性を帯びている中国による沖縄県先島諸島への侵攻があった場合、緊急に住民のために退避を要請したり、その保護施設を建設せねばならない状況も生じます。
あるいは、医療品などの供出、陣地・野戦病院なぎの防衛施設を緊急に構築する必要が生じるかもしれません。
国が責任を持って財産権や移動の自由といった私権を、一時的に制限する必要があります。
これをはっきりと国家の権限として憲法に位置づけたい、というのが高市氏の改憲案です。
一歩踏み込んだ改憲案で、ゲル氏好みの9条2項うんぬんという神学論争から、より現実に対応した提案だと高く評価できます。

これに対し、河野氏の見解は、今まで通り曖昧で、本気でやるとは思えません。
「自由民主党が4項目について提案をしています。ちろん野党は野党でさまざまな提案があるんだろうと思いますので、国会の場でしっかりとそうした項目に議論をして、なるべく合意がまとまったものから順次、国民投票にかけていくということになるんだろうと思います。
4つのうちのどれが一番まとまりやすいのか。これは議論をしていかなければあの分からないところはあると思いますけども、この4つをしっかりとテーブルに乗せて、改正に向けて議論をしっかりやってまいりたいと思います」 
あ~あ、なにがしっかりだ、ゼンゼンやる気ないくせに。
憲法のなにを変えたいのか、どのような状況だからどうして憲法を変えねばならないのか、肝心な核心が分かっていないから、こういう「国会の場での議論」などに丸投げするのです。
河野氏の見解は、「党として案は出しているから、国会で議論してくれ」と言っているだけのことで、こういうのを空約束といいます。
自分が今ワクチン担当をしているのですから、あってしかるべきコロナ対応の総括もありません。
ただ「国会で議論していく」ですが、野党が憲法審査会の出席すら拒んでまったく進まない状況をどう「突破」するというのでしょうか。
岸田氏は「任期中にやりたい」と言っているのでややましですが、これも具体論が欠落しています。

2021年9月28日 (火)

太陽光が原子力より安いだって、少しは調べてからいいなよ、河野さん

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混沌としたままゴールです。
たぶん党員票は河野氏が勝つ可能性があります。
河野氏にとって幸いにも、候補者間の議論によって主張が各所で決壊する前に投票を済ましてしまった人も多いからです。
特に河野年金改革案でやると16~20%もの消費増税になるという岸田氏や、他ならぬ麻生氏がそれは大昔の民主党政権案だ、野党時代のオレらが潰してやったんだ、馬鹿め、という罵声は効いたはずです。
ウィグル非難決議など、いままでダンマリを通してきたことに明解な答えをせねばならなくなったりしています。
とどのつまり、河野氏が描いた改革推進で若武者ぶりをアピールし、都合の悪いことには答えないで逃げきり、小石河連合の「人気」で党員票の大部分をかっさらって、議員票の劣勢を跳ね返して一気に1回目で過半数を押える戦略はすでに破綻しています。

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詳しくわかる】自民党総裁選2021 日程 仕組みをわかりやすく | NHK政治

各メディアの調査によれば、党員票は4割ていどは河野氏が押えるでしょうが、議員票は岸田氏が優勢で、僅差でこの両者が争うと思われます。
たぶん双方とも230~280票前後ではないでしょうか。
双方ともに、過半数どころか4割にも足りません。

一方、高市氏は素晴らしい健闘で猛追しています。
今や保守の国民的スターが誕生したと言えるほどの素晴らしい戦いぶりです。
政策立案能力が精緻にして隙がない、じっくり長い時間をかけて調査されています。
私とはいくつかの点で違っていますが、これほど聞き応えがある総裁候補は初めて見た気がします。

この高市氏の健闘を支えたのが、ご承知のように安倍氏です。
安倍氏はいわゆるキングメーカーになることを嫌がるタイプでしたが、河野氏のあまりの馬鹿っぷりが彼の腰を上げさせてしまったようです。
いったん腰を上げたとなるとこの人物のパワーはやはり党内随一で、高市氏を押し上げたばかりか、財政規律派の岸田氏に財政拡大を誓わせ、河野氏にはモリカケ桜をやらないことを言わしてしまいました。

「もっとも河野も安倍を含めた長老まわりをしている。派閥の首領・麻生太郎に「安倍氏の了解を取れなきゃダメだ」と言われたこともあってか、安倍のもとを訪ねては「ご懸念には及びません」と安心させようとしたという(サンデー毎日9月26日号の鈴木哲夫による記事)。  そうした場で河野は原発の再稼働の必要を認め、また「女系天皇を容認すると言ったことはありません」とかつてブログで主張したことを否定するのだが、それでも安倍は「あぁ、河野は認められないね」と言うのであった(週刊文春9月23日号)」(文春オンライン9月27日)

昨夜あたり、安倍、麻生、茂木氏などで話しあいがもたれているはずで、2回目投票の動向はここで決せられるはずです。
河野氏にとって決戦投票は想定外、岸田氏にとっては戦略の内だったはずで、布石は打ってあるはずです。
それがどのようになるか私には知るよしもありませんが、仮に岸田氏に集中となると、高市氏を組閣で重要閣僚に据えるか、あるいは幹事長ポストていどを用意しなければ安倍氏が納得しないでしょう。
高市氏は総務会長を歴任していますから、党要職でつけるとなると幹事長くらいしかありませんからね。

また岸田氏が総理になった場合、かなりの長期政権になるはずですから、高市氏は外務、防衛などの重要閣僚としてじっくり力を蓄えていけばよいと思います。年齢的にもまったく焦る必要がないのが、彼女の強みです。
むしろ今総理になって靖国問題で政治的リソースを使ってしまうのは、あまりにもったいない。
岸田-高市政権となるくらいの気持ちでやっていただきたい。

え、河野氏ですか。どーでもいいですが、ま、ゲル氏と仲良くやるんですな。
安倍氏に「国がめちゃめちゃになる」とまで言わしてしまった河野氏ですから、行く道は自ずと狭いもの
になることでしょう。

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再生エネ普及へ規制総点検 河野規制改革相|ナウティスニュース

さて、いまや投票日前にズタボロの観がある河野氏ですが、身から出たさびです。
私がこの人物を評価していたのは、内閣に入ればその内閣の既定路線に忠実に従うという点でした。
政府内部で見解に分裂があってはなりませんし、自らの意見が違うなら「封印」しておかねばならないからです。
だから女性週刊誌的人気をホンモノだと思ったセクシー氏が、管轄外の処理済水の海洋放出に口出しするのは政治家としての見識に欠けるのです。

その点河野氏は合格でした。脱原発の発言をさせたくてうずうずしているメディアを、「管轄外です」の一言で「封印」した姿勢は合格でした。
しかし私はヒイキの引き倒しで「封印」したことを買いかぶっていました。
「封印」している間に、さまざまな見解を調べ、専門家と意見交換して持論を発酵させているとばかり思っていたのです。

違っていたことが、この総裁選のもろもろの発言でよく分かりました。
この人は、便法として「封印」していたにすぎず、あいかわらず反原発団体のアジビラていどのレベルから一歩も出ていないのです。
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すぎ世すぎで「封印」していただけだったのです。あちゃー。

ですから、今回、私は河野氏がもう既に3つか4つ自分の持論を撤回していますが、まったく信用していません。
ただの身すぎ世すぎですから、その制約がなくなればまた同じことを言い始めます。
あるいは核燃料リサイクル中止のように搦手から来ます。

河野氏は、勝利した暁には最大の論功報奨を小泉ジュニアとゲル氏に進呈するしかありません。
小泉ジュニアは経済産業相に、ゲル氏は再び幹事長に抜擢されるかもしれません。おお、今、背筋に悪寒が走ったぞ(笑)。
すると出来上がる政権は、一見すると保守政党ですが、中身は限りなく立憲です。
憲法改正は、自分の政権の間はやらないと公言し、原子力に対しては表面的には容認しつつも、内実は更に規制委員会の権限を強化することで、事実上再稼働を不可能にさせ、早期に廃炉に追い込んでいきます。
核燃料リサイクル施設は解体され、核のゴミは原発施設に返却されて半永久的に冷却され続けることになります。

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西日本新聞

太陽光と風力をはじめとする自然変動電源ノ根本的欠陥は、恒常性がないことです。
風任せ、お日様任せですから。
ですから、発電の時期を人為的にコントロールすることができないため、電力の需要と供給のタイミングが一致しないことがよく起きます。
たとえば、真夏の盛りに電力受容がピークを迎えたが、曇っていた、風が吹かなかったというケースもままあるわけです。
その場合、火力や原子力などが対応して穴を埋めています。
必ず再エネには火力ないしは原子力の恒常的に発電可能な電源がついて、送電量を一定に保っています。

逆に、風が順調に吹いて風力が多く電源を作りすぎた場合には、電気を一時的に貯めて後ほど売却するピークシフトが行われています。
しかしこれには大きな問題がつきまとっていました。
それは電力は生ものだということです。基本的には貯めておけないで、すぐに送電するしかないのです。
今までは需要超過分の電力は捨てて出力制御をしていました。

捨てるなどというもったいないことをしないためには、再エネ発電所にその制御を行う付帯施設が必須です。
これを忘れて、電力料金を高いの安いのということは無意味です。

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河野規制改革相、注目の発言は?: 日本経済新聞

これも河野氏はまた先日になって、「原子力より再エネのほうが安い」という主張を言い出しましたが、根拠は去年の経済産業省の7月の試算です。

「政府、割高でも原発延命 再生エネ、発電コスト減政府が12日に示した2030年時点の各電源の発電コストの新たな試算で、政府や電力業界が原発推進のよりどころにしてきた「安さ」の根拠が揺らいでいる。安全性に続き、また一つ「原発神話」が崩れたことで、原発を重要な電源と位置付けてきた政府の方針や今後のエネルギー政策はどうなるのか。原発の1キロワット時あたりの発電コストが、前回15年試算時の「10・3円以上」から「11円台後半以上」に1割程度上昇したのは、敷地外への放射性物質の拡散防止といった安全対策費が、1基当たり約1369億円と15年試算時(約601億円)から倍増したためだ。
11年に起きた東京電力福島第1原発事故の処理費用の見積もりが15年の「12・2兆円以上」から「23・8兆円以上」に膨らんだことも響いた。他の電源はコストの上限も算出されているが、原発だけ上限がないのは「事故処理費用がどれだけ増えるか見込みづらい」(経済産業省幹部)ためだ。
一方で、再生可能エネルギーは技術開発や普及によるコスト低減効果を織り込み、事業用太陽光(8円台前半~11円台後半)を筆頭に、住宅用太陽光が9円台後半~14円台前半、陸上風力が9円台後半~17円台前半などと軒並み下がった。前回15年の試算から上昇したのは、原発のほか、二酸化炭素(CO2)排出の対策費用がかさむ石炭火力などにとどまった」(毎日2020年7月29日)

この毎日の記事はまるで再エネ賛歌とでもいうべきもので、最後に申し訳ていどに「このコストには電源として安定化するための機能・設備は含まれていない」ということが添え書きしてありました。これがミソです。
実はこの7月の発表に、脱原発団体が小躍りしてしまい、そこかしこに「原子力より安い再エネ」と触れ回ったようですが、実は経済産業省の試算はもう一つあります。
経済産業省は、この7月試算に継いで翌月の8月に再度「電力供給を安定化するための設備」を加えたもうひとつの試算を公表しています。
それが8月3日に出されたリアルな「統合コスト」と呼ばれるもう一つの試算数字です。
8月発表では、再エネ発電所に付帯する緒設備を含めて電気を安定的に需要家に届けるため必要になるすべてのコスト(統合コスト)も含めて計算し直しています。

ちなみに、読売と産経は、8月の統合コストの数字から太陽光を割高とし、朝日、毎日、日経は7月の数字で発電コストだけを見て再エネは原子力より安いという見出しにしています。
官庁から直接にレチクャーを受けられるはずの現職閣僚がこんな脱原発運動家みたいなことを言っていてはシャレになりません。
この人の脱原発論はほとんど全部この調子です。



そこで統合コストで算出し直したのが下図です。
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ご覧のように太陽光がもっとも高い電源で、LNG火力がもっとも安い電源だとお分かりになるでしょう。
ですから太陽光ならば、この「電源安定化の付帯設備」を持たないものは、日中しか使えない電源で、夜になるとモノリスになってしまう施設だということになります。
メガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電所も、蓄電施設が高価なためにつけていない施設も多く残されており、このような不安定な再エネ電源を、日夜休まず発電する安定電源と並列して比較すること自体がナンセンスです。

河野氏におかれましては、再エネ施設すべてに電力の安定的供給を可能とする施設をつけることを義務化していただきたいものです。
いや、その前にこの不勉強の中坊のような再エネ万歳論をどうにかして下さい。

 

2021年9月27日 (月)

河野氏は脱原発を止めたわけではない

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現時点での総裁選の状況です。(読売9月29日)

●国会議員票382票中
・岸田・・・127票※岸田派(46人)をまとめ、細田派(96人)、麻生派(53人)のベテランを中心に支持を拡大。竹下派(51人)の4割にも浸透。
・河野・・・103票※麻生派の5割強から支持。二階派(47人)の3割強、菅首相に近い無派閥の衆院議員グループと石破派(17人)の大半も支持。
・高市氏・・・82票※細田派の5割以上を固め、二階派、竹下派でも支持を拡大。
・野田・・・21票※推薦人20人からの上積みに苦戦

「読売新聞社が18~19日に行った党員・党友への電話調査を基にした党員・党友票(382票)を加えると、河野氏は280票、岸田氏が221票、高市氏168票、野田氏46票で、トップの河野氏でも合計で4割に達していない。岸田氏は3割弱、高市氏は2割超となっている」

この読売の調査は、私が先日あげた三つのシナリオの②に相当します。

・シナリオ① 河野・岸田・高市・野田
・シナリオ② 岸田・河野・高市・野田
・シナリオ③ 高市・岸田・河野・野田

この場合でも過半数を岸田氏が征することが不可能な以上、決戦投票となりますが、決戦投票は派閥の力が左右します。
岸田氏には、岸田派、細田派、竹下派に加え、麻生派、二階派も加わる可能性があります。

河野さん、花田編集長も言ってましたが、開票日前なのにメッキがどんどん剝がれる候補は珍しいですね。
候補者間の論争はメタメタ、主張も取り下げが相次ぐとは情けない。

河野氏の政策を簡単にまとめておきます。
ただし河野氏の特徴は簡単に前言撤回を繰り返すことで、年金問題でもすぐに引っ込めました。
ですから簡単に言い出し、簡単に引っ込めるので、また簡単に蒸し返すことでしょう。
顔に似合わず軽い人です。
しかしこうして並べると、この人、立憲に片足突っ込んでいたことを改めて確認しました。

●河野候補政策のまとめ
①金融緩和は消極的で、金融政策に対する無理解がまた蒸し返される可能性がある。
②財政政策は消極的。財政規律論を蒸し返す可能性がある。
③年金に消費増税を当てる。実現すると16%の消費勢となる可能性がある。→撤回。
④規制緩和推進論者。
⑤尖閣における領海法を提唱。
⑥安全保障には消極的。敵基地攻撃には反対。イージスアショアを中止した防衛大臣。防衛費増加にも反対。
⑦国土保全、経済安保には無関心。
⑧靖国参拝反対。
⑨原発反対・再エネ推進。→撤回※再稼働は容認に転換。核燃料リサイクルには反対。
⑩中国に対しては宥和的傾向。ウィグル非難決議には渋々賛成。日本端子問題が浮上。
⑪党改革。部会を廃止し、大臣、副大臣、政務官3役に集中させる。→撤回。
⑫女性宮家論者。→撤回。

今からこの調子だと、仮に勝っても長続きせんだろうな、河野政権。

                                                                      ~~~~~

さて河野氏に絶対に止めて欲しい最たる政策が脱原発ですが、いったんは取り下げたもののまだ執念深くこんなことを言っています。

「自民党総裁選に立候補表明している河野太郎行政改革担当相は11日の読売テレビ番組で、使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」に否定的な見解を重ねて表明した。厚生労働省に関し所管業務の範囲が広いとして「かつてのように厚生省と労働省に分けることも一つの考え方だ」と述べた。
高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を受け、巨額の費用がかかる核燃料サイクル政策はきちんと止めるべきだと指摘。「そろそろ核のごみをどうするか、テーブルに載せて議論しなければいけない」と強調した。」(東京9月11日)

また「議論」ですか。好きですね、この人これが。
そのくせ実際やると、ことごとく議論に耐えられないものばかりなのですが。
この河野氏の核燃料リサイクル反対論など、あのNDが言っていることと一緒です。
『再処理のコストとその負担 ー核燃料サイクルをめぐる無責任の構造ー』
https://www.nd-initiative.org/research/9692/
NDとは、例のデニー知事の談合疑惑で有名になったリベラル系運動団体です。

さて核燃料リサイクルは、原子力政策の根幹です。
原発自体は、規制委員会の基準に適合しないものは廃炉になっても致し方ありませんが、核燃料リサイクルを潰せば、原子力政策は根底から崩れていきます。
だから、反原発感動家らは執拗に核燃料リサイクルを潰そうとしているのです。
河野氏が言っているのは、ただいますぐの原発再稼働は認めても、核廃棄物の出口は止めてどんどん貯めていくという意味ですから、ある意味で単純な再稼働反対論よりたちが悪いのです。

私は、もし原発に替わりうるエネルギー源が現れ、それが原子力と同等の価格で供給可能ならば、今、直ちに全基を廃炉プロセスに入れるべきだと思っています。
それが核融合になるか、メタンハイドレートとなるか、あるいはもっと別のものになるかはわかりませんが、それまで約3割のエネルギー源は原子力でまかなわねばならないのです。
現時点でそれが新たな電源に切り換えられるかと言えば、ハッキリ言って不可能です。
第1に、原発に替わる30%もの電源を代替できないからです。
再エネは話にならない非効率かつ、不安定な電源である宿命から逃れられません。

コンバインドサイクルは有望な技術ですが、巨額な投資が必要であって、今の老朽化した火力発電所に置き換えていくまでには、相当な時間がかかります。
また、結局コンバインドサイクルも、石油依存のエネルギーであることは同じです。
常に政治的に不安定な中東から、これまた中国の海洋進出によって不安定化している南シナ海のオイル・ロードを辿って、輸入されるものです。

原子力がなぜ日本で重要視されたのかといえば、それは原油のように輸入に依存しない「国産エネルギー」だからです。

また、原発を完全になくしてしまうと、電力会社は経営的に立ち行かなくなることは目に見えています。
今の原油価格の高騰はによって数兆円の国富が海外へと流れだし、経済と社会を圧迫し続けています。
また電力会社を弱体化させてしまえば、電力供給が不安定化するばかりではなく、原発を廃炉にしていく主体とその費用負担を誰が負うのかという問題に直面するでしょう。
脱原発主義者は忘れているようですが、廃炉にするのは電力会社なのですよ。
その主体を弱体化させたり、ましてや潰してしまったら一体誰が原発ゼロの長い作業をするのでしょうか。

この廃炉問題は大きなテーマなので、別途に考えていきますが、結論だけ言えば、電力会社を潰した場合、廃炉にする主体と費用負担の先行きが見えなくなります。
電力会社の経営が安定して余裕があるからこそ、廃炉にできるのであって、そのためには原発を今は動かすしかないというパラドックスが、河野氏のような脱原発主義者にはどうも理解できないようです。 

そしてもうひとつの大きな問題があります。それは原発が、火力などと違って使用前の核燃料と、使用済み核燃料の二種類の核燃料を常に抱えていることです。

2011062303福島第1の使用済み燃料プール。すべての原発の原子炉に、これと同じものがあり、約2万8千トンもの使用済み燃料が存在している。これは再稼働とは関係なく、残り続ける。

今現在、日本の全原発の使用済み燃料プールには約2万8千トンに及ぶ核廃棄物が残ったままです。
これを常に使用済み燃料プールに入れて冷却し続けて保管し続けています。 
全原発を止めた場合、使用済み燃料をこれ以上増やさないことはできますが、核廃棄物は残り続けます。  

その意味で、河野氏が「核のゴミはどうするのか」という問い自体は正解です。
しかしその選択肢はふたつしかないのです。
再処理するか、埋却して保管し続けるかどちらかです。 

日本政府は、青森六ヶ所村の再処理工場で、ウラン酸化物+ウラン・プルトニウム混合酸化物と、高レベル核廃棄物の二つに分離して、後者のプルトニウムを除去した核廃棄物を300メートル地下の地層処分しようとしています。

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燃料のリサイクル|原子力発電の概要|原子力発電について|エネルギ                

プルトニウムは、半減期が2万4千年もありますから、これを別にして分離します。
このプルトニウムを分離することでもっとも危険な放射性物質を分離し、さらに核廃棄物の体積全体も3分の1に圧縮できるという利点があります。 
ですから、燃料リサイクル施設を中止するという河野案を採用すると、そのまま
プルトニウムを分離せずにウランと一緒に埋却してしまえ、という事になります。

聞いただけで、ずいぶんと乱暴なことを言うと思いますが、実際やるとなるとこういうことです。
再処理工程を省いて体積が大きいままのプルトニウム+ウラン入り核廃棄物を、そのままキャスクという特殊なドラム缶に入れて埋めてしまうことです。
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これを直接埋設するということは、プルトニウムの半減期の2万4千年間保管するという意味です。
しかも原発を止めても
、原発施設には今も2万8千トンも残っているし、河野氏が容認したように再稼働を認めれば毎年どんどんとその核廃棄物は累積していくことになります。

政府は、3.11前には、リサイクルしてMOX原子炉で使うつもりでいました。これを「核燃料サイクル」と呼びます。  Moxこれは、日本政府がひとりで決めたということではなく、国際的な義務でした。
というのは、日本は「プルトニウムを核兵器に転用しない」というIAEA(国際原子力機関)の国際公約を持っているからです。  
プルトニウムの核兵器転用禁止は、原発保有国に義務づけられている国際公約で、既に核保有国であることを宣言している国(常任理事国+印パ)を除いて、原発を持つ場合、そこから出るプルトニウムを余分に備蓄することは許されていません。
それを許すと、核兵器に転用することがまかり通ってしまい、核兵器の拡散を招いてしまうからです。

日本だけがプルトニウムを保管できるのは、日米原子力協定があるからです。 
もちろん河野氏はこのことをよく知る立場にあります。
なぜなら、2018年の日米原子力協定の改定時の外相は他ならぬ河野氏だからです。

「日米原子力協定が17日、発効後30年の満期を迎えて自動延長された。協定は原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理を認めるなど日本の核燃料サイクル政策の根拠となっている。ただ、自動延長後は6カ月前に日米いずれかが通告すれば終了できる。そのため政府内には「不安定になった」(河野太郎外相)との見方もある」(日経2018年7月17日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33032660W8A710C1NN1000/

日米原子力協定は1988年に発効し、核燃料サイクルで使用済み核燃料からプルトニウムなどを回収し、再び燃料として利用することを唯一の条件にして非核保有国で日本だけ回収が認められている根拠となっています。
トランプ政権は核拡散に対する懸念からプルトニウムの保管量を減らすことを要求してきました。
それに対してわが国はプルトニウムの保管量を削減することを約束しています。

「政府は3日に閣議決定したエネルギー基本計画にプルトニウムの削減を盛り込んだ。内閣府の原子力委員会も近く消費の見通しのないプルトニウムは回収しないなどとする方針をまとめる。菅義偉官房長官は13日の記者会見で、米側の懸念に対して「プルトニウムの利用を進めて、回収量もコントロールする」とし、「国際社会に対して丁寧に説明をしていく」と述べた」(日経前掲)

ここで菅氏がいう「プルトニウムの利用」というのは、いうまでもありませんが、核燃料リサイクルをちゃんと稼働させるという意味です。
この国際公約をした内閣の現職閣僚が、今になって「巨額の費用がかかる核燃料サイクル政策はきちんと止めるべきだ」なんてどの口で言えるのか。

河野氏が理由に掲げているのは、反原発運動家とまったく同じで高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が廃炉になり、六ヶ所再処理工場の完成が遅れ、プルサーマルも停滞している状況で、プルトニウムが48トンもたまっているから、核不拡散上問題だ、海外からも疑惑を持たれているから六ヶ所工場を廃棄せよというロジックです。
しかしこれは全くお門違いの言いがかりで、その
本当の狙いは六ヶ所工場を廃棄に追い込み、日本の原子力発電自体を葬り去ることです。

たしかに今は核燃料リサイクルは袋小路に入ってしまっているのは確かです。
しかし「もんじゅ」も中止にはなっても高速増殖炉計画は捨てられたわけではありませんし、
肝心の核燃料リサイクル施設である六ヶ所再処理工場が杜撰な設備管理で操業開始が遅れている状況こそが問題であって、これをきちんと軌道に乗せることは充分に可能です。

それをするのが政治家の仕事であって、「いずれ原発はなくなっていくだろうが、あした、来年やめろと言うつもりではない」(時事9月8日)などと 意味不明の寝言を言うのが仕事ではないはずです。
電力会社が福島事故後10年の期間と巨額のコストをかけて再稼働させている原発が、河野氏に言わせると「いずれなくなる」と言いますが、それはどのようにしてそうなるのか、明解に教えていただきたいものです。

ちなみに高市氏はこう言っています。

「止めたら”ただのゴミ”になってしまい、何のメリットもない。ただのゴミを青森県に置いておいて貰えないので、各原発に戻す事になる。そのまま置かれる事になれば、原発そのものが稼働しなくなり、安定的なエネルギー供給体制からも逸脱していく。しっかりと進めるべき」

まことにそのとおりです。

 

用語解説    

MOX燃料(モックス)
混合酸化物燃料の略称であり、
原子炉使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウム再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4~9%に高めたものである。
主として
高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉燃料ペレットと同一の形状に加工し、核設計を行ったうえで適正な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。(Wikipedia) 

プルサーマル
プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を、通常の原子力発電所(軽水炉=サーマルリアクター)で利用すること・を「プルサーマル」といいます。これはプルトニウムとサーマルリアクターを組み合わせた造語です。(日本原燃HP)

 

 

2021年9月26日 (日)

日曜写真館 この頃の空コスモスの色似合ふ

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このあたりコスモスに花蓼まじり 清崎敏郎

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コスモスに静の里を見すごしし 阿波野青畝

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コスモスの花ゆれて来て唇に 星野立子

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コスモスはどこにありても風少し 細見綾子

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コスモスや妻がやさしく子がやさしく 日野草城

 

 

 

2021年9月25日 (土)

さぁ、総裁レースが直線ストレッチに入りました

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・床屋政談です。できるだけ正確に書いているつもりですが、滑る可能性があります。

今月29日(水)の投票開票日まで残すところあと実質4、5日ていどとなりました。
さぁ、追い込みだぁ!この土日が天王山で、あとは一気にゴールです。
観客席は満員、いつもは自民党というとシニカルな顔をするメディアまでが、オレはこいつに張った、いやこれが本命だと大騒ぎ。
この異様な盛り上がりに、何を考えたのか枝野氏までがオレも入れてくれぇと言ったとか言わないとか(笑)。
なにぶん政策がモリカケ桜死守、今どき自民党農政派ですら言わない減反死守ですから、なんともかとも。

情勢としては飛び抜けて先行する馬はおらず、各馬一線で直線コースに入ったようです。
一般党員票も議員票も流動的なようです。
とはいえ、各候補の特色が現れているようで、ざっとこんな状況のようです。

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自民総裁選で急浮上「決選投票」の大逆転シナリオ | 国内政治 | 東洋経済

自民党総裁選は、派閥領袖同士の談合で決まる部分と、議員諸公の散兵戦に別れますが、今回は建前は自由投票ですが、領袖の意志は無視できません。
派閥の意志がおおよそ反映されているのは、推薦人の分布状況です。

●各派閥推薦人(多い順から)
・細田派(97人)・・・高市7、岸田4、 河野1、野田0
・麻生派(54人)・・・岸田4・河野3、高市2、 野田0
・竹下派(54人)・・・岸田4、野田4、河野3、 高市2
・岸田派(47人)・・岸田2
・石破派(11人)・・・河野2
・二階派(47人)・・野田8、 高市5、河野2
・谷垣派・・・河野3
・石原派、河野3
※無派閥・・野田8、 高市6、河野5、岸田4、

下図から判る傾向は以下です。ただし母集団の基礎数が大きく違いますので、ご注意下さい。

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・細田派・・・高市優勢
・麻生派・・・岸田優勢
・竹下派・・岸田優勢
・二階派・・・野田優勢
・石破派・・・河野優勢

ただし、状況は極めて流動的で、勝ち馬が見えるとそれに乗ろうとする雪崩現象が生じます。
負け馬に乗ってしまった議員たちは、いま気を変えれば助けるからと言う領袖に諭されて救命ボートに乗り移ることもありえます。
これも今日明日の動き次第です。

党員票の調査では、読売(18~19日)
・河野・・・41%
・岸田・・・22%
・高市・・・20%
・野田・・・6%

議員票の動向は以下です。

選挙コンサルタント会社「ジャッグジャパン」の調査(22日時点)
自民党議員全382人中、投票先が判明しているのが258人
・岸田・・・91人
・河野・・・80人
・高市・・・66人
・野田・・・21人
・未定・・・124人

個別に見ていきます。
岸田氏は、自分の岸田派と麻生派のベテラン勢をしっかり掌中に納めたオーソドックスな組織選挙を展開しています。
たぶんこれに諸派閥のベテラン勢が乗るでしょうから、鼻先ひとつ先行しているように見えます。
推薦人もバランスよく、岸田派、麻生派、竹下派、谷垣派、無派閥から2~4名を得ています。

次に河野氏ですが、俗にいわれる「小石河」という気色の悪い連合を組んだバクチが吉と出るか凶と出るか。
なんせセクシー+ゲル+日本端子が組んだんですからね。
吉と出れば、党員の人気者3人組ですから、票を熊手でごそっと持ってこれるはずだ、これが河野氏の読みだったはずです。
すでにその破壊力の一端は観測さていて、ゲル氏と犬猿の仲の麻生氏は河野支持を降り、麻生派内では少数派に転落してしまいました。

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自民党総裁選 菅首相は河野氏支持を表明 | 2021自民党総裁選 | NHKニュース

たぶん河野氏は菅氏がもっと強力に自分を推してくれるだろうと密かに期待していたのでしょうが、なんと菅氏は故意か偶然か、訪米しちゃったんですな、これが。お気の毒!
もちろんクアッド4首脳会談ですからはずせないのは確かですが、菅さんとしては、現職閣僚の河野氏に総裁レースの入場券を渡したら舞い上がってしまい、副総理である麻生氏に後足で砂をかけてゲル氏と組むとはなんたるハレンチ、と内心思っているのかもしれませんが、そんなことを気取られる人ではありません。
菅氏が積極的に河野氏を推したいようでもなく、天王山の土日に米国に行ったというのもなにやら意味深にみえてしまいます。

河野氏の最大の弱みは、所属する麻生派から3人しか推薦人が得られなかったことです。
石破派から3人もらっていますが、ほかは各派からパラパラで、最大は無派閥の5名です。

また河野氏が小石河連合という三派連合を組んだために、統一された選対が存在しないようです。これは痛い。
本来は河野氏にベテラン議員が軍師としてつくのが常識なのですが、ベテラン勢を敵にした「党改革」を叫べば、誰も助けません。
で、どうなるかといえば、岸田氏のような整然とした選挙活動は望むべくもなく、てんでバラバラに動く事になり、すべてが後手後手。
優勢を誇っていた側が負ける時のパターンですが、リカバリーできるかどうか。

そのうえに、あろうことか野田氏に出られてしまいました。
これもベテラン勢と連携していない失敗です。
ちゃんと党内に目配りが効いていれば、二階氏の動きはもう少し前に察知できて手が打てたはずです。
河野氏は二階氏の支持に期待していたのでしょうから、大誤算だったことでしょうね。
河野陣営としては野田氏と連合を組むことで、二階氏を呼び込み、彼が持つ郵政、JA、タバコ、建設など党員職域組織票を頂戴したかったはずです。
ところが野田氏が集まらなくて苦労していた推薦人の最後の2名を押し込んだのが二階氏だったのですから、河野氏にとってこれは衝撃でしょう。
なにもかも石破氏と組んだことから始まっています。
後に総括するなら、ゲル氏と組んだのがミッドウェイだったと言うことになるかもしれません。

あの食えないタヌキ親父が、どこまで真剣に野田氏を推しているかはわかりません。
データー的には野田氏にもっとも多くの8人という推薦人を出しているのが、二階派ではあります。
ただこのおっさん、高市氏にも5人出しているので、真意はつかめません。
ただ岸田氏にだけはゼロなので、前に幹事長を降ろされかかった恨みを忘れていないのかもしれません。
いや、あれはどうせ決戦投票になるんだから、キャスティングボートを握りたいからだよ、なんて政界通の見立てもありますが、素人の私にはなんともいえません。
私は二階の親父が負け組につくはずが無いと思っています。

残るのは高市氏です。
当初は泡沫候補にすら入れてもらえませんでしたが、瞬く間にダークホースとなり、やがて対抗馬に成長し、いまや本命を狙う勢いで、横一線のまま最終ストレッチに突入してしまいました。
いままでしっかり勉強してきただけあって、田中秀臣先生からも経済政策は満点以上というお墨付きを頂戴し、外交では台湾総統と直接電話をして励ましてもらうという凄さ。
対中外交、皇位継承、国土保全、経済安保など目配りが効きすぎて怖いくらいです。
このまま所信表明演説ができてしまうような安定したレベルの高さで、さすがに米国議員スタッフをやってきただけのことはあります。
内容的には、安倍ver.2と言ってかまわないと思います。

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安倍路線との距離はいかほどか? 自民党総裁選、立ち位置も争点

その上、安倍氏自身が影の選対本部長をしているのではないかと思われるほどのリキの入れようです。
文句なく安倍氏の後継者となるのは、資質的には高市氏なのは間違いありませんが、この安倍氏との近さが、吉と出るか凶と出るかなんともいえません。
少なくとも、朝日、毎日、東京にとってこれ以上ない悪夢でしょうね。
安倍氏はマメな人ですから、ただ推薦に名前を貸しただけではなく、自ら議員に電話をかけて、高市陣営への鞍替えを要請するだけではなく、党員の職域票の掘り起こしもやっているようです。

高市氏の強みは最大派閥の細田派をほぼ完全に固めたことで、既に7~9割を固めたと言われているようです。
推薦人にも7名の多くを出しています。
あの安倍さんからいきなり電話が来て、お願いされればグラつきますからね。
というわけで、いままで河野氏に流れてきた議員票や党員票が大きく高市氏に流れる現象も起きているようです。

いずれにせよ、今回の選挙はどの候補も過半数を制すことは不可能といわれていますから、2回目戦略が焦点となります。
二回目は党員票が47票に減り、圧倒的に議員票を征した者が勝利します。
1回目は、岸田派は別にして自由投票が建前ですが、2回目決戦はモロにその後の組閣でどれだけ自派から突っ込めるかを巡っての戦いになりますので、好むと好まざるとに関わらず、派閥選挙が復活します。

その場合、河野氏が仮に1回目で1位となったとしても、麻生派を裏切ったために組閣自体が難航することは目に見えています。
これでは論功行賞ができませんから、各派閥は1回目で河野氏がトップに立とうと、2回目で彼に入れる可能性は低いと見られます。
これは当人もよくわかっているはずで、だから一気に第1回で過半数を狙うために小石河連合というスター同盟を組んだわけです。

総裁レース決勝戦の組み合わせとしては、いくとおりかあります。
候補者名は順位です。

・シナリオ① 河野・岸田・高市・野田
・シナリオ② 岸田・河野・高市・野田
・シナリオ③ 高市・岸田・河野・野田
※野田氏が1位につくことは捨象しました。野田ファンの方、すいません。

①は河野氏トップで岸田氏が僅差で追うという場合です。
これがもっとも確率的には高いかもしれませんが、この場合3位の高市支持票は岸田にすべて流れるでしょう。
おそらくこれがもっとも可能性が高い本命シナリオです。
②は岸田氏がトップの場合ですが、2位の河野氏に3位の高市票が流れることは考えにくいと思いますので、結果的には①と同じく岸田氏の勝利です。

③は、トップが高市氏の場合ですが、この確率はそう高くはないでしょう。
2位に河野氏がつけた場合、岸田票は高市氏に集中するでしょうが、2位に岸田氏がつけた場合、保守票が分裂しますので複雑なことになります。
ここでキイマンとなるのは安倍氏で、彼が高市氏と岸田氏のどちらを選ぶかでかなりが決まってしまうことでしょう。

このように見てくると、誰が1位2位となるのかで、ほぼすべてが決します。
安倍-麻生同盟を敵にし、高市氏の善戦に追い上げられた河野氏に勝利はありえません。
したがって現時点で私は、岸田氏が勝利する可能性が7割以上と考えます。

2021年9月24日 (金)

河野氏に決定的に欠けている議論する能力

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何度か書いてきていますが、私はかつて河野氏を今よりずっと高く評価していました。
彼の政策のうち、そのいくつかは問題提起として大いに興味をそそるテーマだったからです。
もっとやれ、とことんやってみろ、その歯切れの良さで議論を吹きかけてくれ、というかんじだったでしょうか。
そういうイキの良さが彼の真骨頂だと思っていたわけです。

河野氏の女系統天皇論、弾道ミサイル防衛、対中政策、原子力発電、党改革など、河野氏が自民党の政策と必ずしも整合しないいくつかの突き出した論点を持っていました。
別にいいんですよ、自民党には定まった綱領なんてあってなきが如しですから。
責任をもってきちんと国民にわかるように議論を展開して、責任を取ってくれればね。

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安倍支配をぶっ壊す」河野太郎が首相になるためにはそう宣言する必要が ...

そういえば河野氏は「議論」という言葉が好きで、なにかと使っていましたが、総裁選になるや「回答いたしません」「ブロックします」、例の日本端子問題も「問題ありません」の一言で済まそうとしています。
とうとうコミュ障害じゃないか、といわれる始末。
つまり議論したくないということでしょうか、これから総理になりたいという人が大変にまずいですね。
そういう腰が引けた対応こそ、若き日の河野氏が一番嫌ったものではなかったのですか。
自分が総理になるに際して、いままでの持論が間違っていたというなら、それはそれでいいのです。
ただし、その説明ひとつない転換は困ります。
ならば国民はどう思うでしょうか。また権力を取ってしばらくしたらまた持ち出すだろう、しかもその時はいきなり政府の政策としてぶつけてくるだろうから否応なしだ、というイヤーな感じです。

しかも河野氏は官邸が暴走した場合、その歯止めとなるべき党の専門部会を否定し始めました。
河野氏が主張する党改革は、どうもこんなていどのことのようです。

「(政府の)副大臣、政務官のパワーアップが必要。(党の)部会でギャーギャー言っているよりも、副大臣、政務官チームを半ば非公式に作ったらどうかと思う」

自民党はそうとうにダメなところが多い政党ですが、よい点も少しはあって、それが全所属議員が原則として参加が義務づけられている専門部会でした。
ここが朝も早くから、夜遅くまで「ぎゃぎゃーうるさいだけの」議論をして政策を作って、ボトムアップしてきたのが、自民党の善き伝統だったのです。
だから幹事長たりとも、下から上がってきたものを紙屑扱いにできず、ウィグル非難決議でそれをしてしまった二階氏はルール違反と非難されたのです。

そんな下っぱが作る部会なんか邪魔だからいっそなくしてしまって幹事長に一括しろ、選挙民からの訴えも議員を通さず幹事長室で扱う、そう考えた幹事長がひとりいました。
それが小澤一郎氏です。
彼は民主党の幹事長となり、政権をとるやそれを現実に移し、部会を完全否定し、議員を採決の賛成票を投じるだけの要員としてだけ扱いました。
まぁ、これをやれば確実に党員のクォリティは急落し、党の政策能力はひたすら落ちていくのは必定です。
これをやった民主党政権は案の定、個別政策の勉強がまったく深まらず、高速道路無償化、農家個別所得保障、ダム建設中止、辺野古移転中止、脱原発などといったガラクタ政策に走り、わずか3年で自壊して果てました。

そのように見ると、今の河野氏はパワーダウンして、あく抜きしたニューモデルの小澤一郎といえないこともありません。
ただし、小澤氏ほど黒光する悪党ではないので、やることなすことが全部中途半端です。
議論も中途半端、立論は生煮え、政策決定は一見果断に見えて、責任を取らない、率いる派閥もなく、麻生派に戻れば小僧っこ扱いです。
できるのは、当選3回までの若手議員を集めてオダを上げることくらいで、そこで調子に乗って言っちゃったのが、先の部会無用論です。

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多くの河野氏の政策はただの思いつきにすぎません。
たとえば、女系天皇論(女性宮家)について、河野氏は有識者会議の結論に従うとあっさり引っ込めましたが、違うと思います。
有識者会議うんぬんではなく、国民は女性宮家を作ってしまったらどうなるのか実地問題で理解してしまったのです。
それが今、まさに進行している真子様の結婚問題です。
女性宮家を作るというのは、たとえば真子様が宮家を作って、天皇にお世継ぎがない場合、そのお子が候補になるという意味です。
するとその場合、小室氏が天皇の父親になるということを意味しますから、そこからヨーロッパ王室的表現を取れば歴代の皇統は途絶え、新たに「小室王朝」が始まることになります。

このように重大なことなのですが、河野氏は分かって言っているのでしょうか。

河野氏はまず、「天皇家は(父方に天皇の血を引く)男系で千年以上きている。続くなら男系がいい」と強調。その上で「(皇后の)雅子さまや(秋篠宮妃の)紀子さまを見て、皇室にお嫁入りしてくれる人が本当にいるだろうか。男の子を産めというプレッシャーがものすごくかかってくる」と述べた。男系男子に限った皇位継承のあり方に疑問をにじませた形だ。
さらに、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設を念頭に、「今は結婚すると女性は皇室から外れるが、女性も皇室の中に残す」と言及。それを前提に「(皇位継承資格のある男系)男子がいなくなった時は、(天皇家の長女)愛子さまから順番に、女性の皇室のお子さまを天皇にしていくというのが一つある」と語った」((朝日2020年6月28日)

河野氏のそれは、女性週刊誌好みの典型的な女性天皇論ですが、いかにも軽い、軽すぎます。
皇室に嫁いだ女性の男子を出産せねばというプレッシャーは雅子様でわかるように、まことに重くつらいことなのは国民誰しもが理解していることですから、心から同情いたしますが、しかし皇室は2千年に渡ってその重圧に抗して日本の中心を守ってきたという歴史があるのです。
その皇統を変えることも厭わないというなら、もっと具体的に議論を展開しないとリベラルの女系天皇待望論と同じになってしまいます。
さもないと、ただの伝統破壊、皇室破壊で終わってしまうでしょうし、実際、そうなっています。

また原子力もそうです。
原発の、すくなくとも今あるGE型は建造から40年以上が経過して廃炉にするか、更新して新しくより安全な原発にリプレイスすべきなのは明らかです。
しかし、河野氏は全原発の段階的廃炉を求め、その代替エネルギーについては再生可能エネルギーを考えているようです。
これも浅い。再エネがとんだヘッポコ電源で、とうていわが国のような世界屈指の先進工業国のベース電源とならないのはこの10年間やってきて明らかです。

その上に、CO2削減問題が国際社会で義務化される流れの中で、電力不安を起こさずに、いかにCO2を排出しない電源で置き換えていくのかを具体的に検討する時期に入っているのです。
高市氏が唱えている小型原発は妙案です。実現可能な対案です。
では、脱原発論者の河野氏がどうかといえば、ただ「とりあえずは稼働再開を容認する」ていどという意気地のなさです。
おいおい、あなたは対案を考えずに脱原発言っていたのかい、とため息がでます。

そして核燃料リサイクル計画を中止することに焦点を移したようですが、ある意味これもタチが悪い。
なぜなら、現状で核燃料リサイクルの建設を止めてしまうと、核のゴミの行き場がまったく決まらない以上、プルトニウムは溜まる一方だからです。
そしてプルトニウムを溜め込むことは、核兵器を作る意図があると諸外国から見られることを意味します。

イージスアショアの中止もそうでした。2020年6月に河野氏がイージスアショアを中止に追い込んだ時、私はとまどいと共にかすかな期待もあったことを思い出します。
イージスアショアは大変な金食い虫で、建てることよりその後の維持管理に膨大な負担をかけ、それは防衛費全体に重圧をかけます。
河野氏が言うように、ブースターのドンガラを敷地外に落下すていどのソフトを組み換えだけで、馬鹿げた出費がかさんでいるのですから、今の北がしたような軌道を変化させる曲者イスカンダルが配備されれば、また対応してソフトの更新をせねばなりません。
ですから、このイージスアシアの導入が可能な国は、防衛費世界一を誇る米国一国だけに限られていました。

また、現代の弾道ミサイルは多弾頭が常識であり、一基のミサイルが複数に分かれて飛来し、しかもその中にはデコイ(おとり)と呼ばれる偽物まで混ざっているという嫌らしさです。
こちらの迎撃ミサイルは一発に向けて2発撃ちますから、仮に北が数百発を同時に撃つ飽和攻撃を仕掛けられると、手持ちの迎撃ミサイルはまったく足りません。
しかもそのうち半分でも核弾頭を搭載していた場合、一発残らず撃ち漏らさないというのは、ほとんど不可能です。
その一発一発が広島・長崎を再来させるのですから、ゾっとします。

このようにイージスアショアは完全な答えではなく、とりあえずこれが現時点における最上の解決案だと思われる、ていどなのです。
だから河野氏の仕切り直し提案は私は危険なことをする奴だが、面白い提案に化けるかもしれない密かに思っていたのです。
当時、いまよりはるかに高く河野氏を買いかぶっていた私は、たぶん次のステップに進む腹があってやったことだろうと勝手に勘違いしていたのですね。
ところが、河野氏ときたら、なんの代案もなくただ潰しただけだったのですから話になりません。

かくして壊されたきりで放り出されたイージスアショアは、難破船よろしく右往左往、結局、もう一隻イージス艦を作る、という今や沈没寸前のありさまです。

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陸自と海自のどちらが受け持つ? イージス代替策に現場困惑

では、どうしたらよいのでしょうか?
先日コメントで、ではどうするのですか、と問われて時に私も正直グっと詰まりました。
実は、その方法はひとつしかないからです。
私は戦略的抑止を日本も採用するしか道はないと考えています。
ここでいう「戦略的抑止」とは、わが国を侵略する者は等価の報復を受けることになる、という意志を明確に示すという意味です。
そのためには、わが国の骨の髄まで染みついた「専守防衛」思考を完全に払拭せねばならなりません。

ところが河野氏は敵基地攻撃能力を完全に否定し、更に防衛費増額にも反対し、「日米同盟を高度化することが大事」だそうです。
これでイージスアショアも中止するとなると、米国に更におんぶでだっこしろ、それが「日米同盟の高度化」だということになります。
クアッドは日米同盟の単純な「深化」の先にあったから始まったのではなく、今や日本が自国防衛するには独自の戦略的コミュニケーションを発信せねばならないという外交戦略のコペルニクス的転換から登場したのです。
河野氏は、外務・防衛大臣という要職にありながら、それをまったく理解していなかったようです。

このように河野氏の政策はことごとく生煮えであって、ただの思いつきにすぎません。
ここをなんとか「大人の議論」に耐えるものにするために、まだかなり長い時間が河野氏に必要なようです。
総裁候補になるために、しっかりと勉強を重ねてきたことか判る政策通の高市氏、いままでの長い政治経験がいぶし銀のように光る岸田氏と比較され、ただの甘ったれた坊やにしか見えないようでは、総理・総裁にはまだまだ10年は早いと思わざるをえません。
総裁選に勝とうと負けようと、河野氏は自民の異端を石破氏のように歩むことになるでしょう。
ならば、いっそ議論好きなあなたは異論としっかり向かい合ってディベートせねばなりません。
平塚に住む旧友が、議員になったばかりの河野氏とたまたま街で出会い、いつのまにか1時間にも及ぶ議論になったことを話してくれました。
見ず知らずの市民ともざっくばらんに政治談義が出来るあなたに、旧友はぞっこんになってしまったそうですが、その初心をお忘れにならないように。
今のあなたは4候補の中でもっとも弱々しい発信しかしていません、それを惜しみます。

2021年9月23日 (木)

河野氏に中国疑惑浮上か?

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私も、かつてはこの男おもろいやっちゃな、と思ったことがある河野氏が大揺れです。
河野氏が献金をもらっている河野一族の会社が、中国と濃密な関係にあったことが暴露されてしまいました。
ネットですさまじい拡散がされているので、お読みになった方も多いかと思います。

かねてから篠原常一郎氏がユーチューブ(あの酩酊番組)で取り上げ、さらに文春が記事にしたことで一気に燃え広がったようです。
文春はこう報じています。やや長いですが、引用します。

自民党総裁選に立候補した河野太郎ワクチン担当相(58)。河野氏の政治団体が、父・河野洋平自民党総裁が大株主で、弟・河野二郎氏が社長を務める企業など“ファミリー企業”から、少なくとも6700万円の献金を受け取っていることが、「週刊文春」の取材でわかった。
当該の企業は、河野氏の選挙区・神奈川県平塚市に本社を置く「日本端子」。祖父・河野一郎氏が創業し、主に車載用端子などの設計・製造を手掛けている。2020年度の売上高は約170億円で、中国に傘下の子会社を持つ。
「河野氏も富士ゼロックス退社後の1993年から約9年間、同社の取締役を務めていました。現在は洋平氏が約30%の株を保有する大株主で、河野氏と二郎氏もそれぞれ2%の株を保有している。
いわば、河野家の“ファミリー企業”です」(事務所関係者)  河野氏が代表を務める「自民党神奈川県第15選挙区支部」の政治資金収支報告書によれば、日本端子は2012年12月4日付で、100万円を献金。この日は、自民党が政権復帰を果たした衆院選の公示日だった。同社は2014年にも計250万円、他の年にも数百万円の単位で献金している。

「また、日本端子は、河野氏の資金管理団体だった「新政フォーラム」にも毎年のように、100万円を超える献金を重ねてきた。」
 河野氏が初当選した1996年以降、日本端子から河野氏の政治団体への献金を合わせると、約3000万円に及ぶ」(文春9月21日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/49f9732de5a9bbc869fb9b4c4a5d20e9345db0fa

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news.yahoo.co.jp

これに対する河野氏の対応を、産経が記事にしています。

「自民党総裁選に出馬している河野太郎ワクチン担当相は21日の記者会見で、親族が経営する企業と中国企業との関係性から、首相に就任した場合の中国政策への影響を懸念する声がインターネット上の一部で出ていることについて「私の政治活動に影響を与えるということは全くない」と明言した。同社株の保有についても「資産報告を毎回しっかりやっており、何の問題もない」と答えた」(産経9月21日)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210921/mca2109211224008-n1.htm

例によってコミュ障もどきの木で鼻をくくったような答え方で、「政治活動にはなんの問題もない」とのことです。
文春が資金報告書の画像まであげているのに、ただ「なんの問題もない」といわれてもねぇ。
河野さん、ダメだろ、ちゃんと説明しないと。
河野氏特有の論点ズラしをしています。
問題は「資産報告」ではなく、資産の性格が問題となっているのです。
いままでよくあった政治家の政治資金報告書の記載漏れとは次元が違って、河野氏一族の家業とその資産がどう作られたのかを聞かれているのに、「毎回ちゃんとやっている」はないもんです。
地頭が悪いのか、それともはぐらかしなのでしょうか。

この総裁選について文春は、高市氏がネオナチと写真に移っていたなどとどーでもいいことを書いていましたが、政治家は誰とでも写真に収まるものです。しかしカネ問題は違います。一つ間違えると命取りになりかねません。
このへんが、地盤・看板・鞄といった銀の匙をくわえて生まれた政治家一族のサラブレッド特有の脇の甘さなのでしょうか。

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河野太郎ワクチン相 “ファミリー企業”から6700万円の献金を受けていた

上写真は文春に掲載された河野氏の政治資金収支報告書ですが、日本端子から200万、父親の河野洋平氏から100万を受け取っています。
文春によれば、この日本端子は河野家のファミリー企業で、中国でも事業を展開していました。
この日本端子と河野家の資産管理会社「恵比寿興業」などからの献金を加えると、少なくとも6700万円が河野氏に渡っているそうです。

この問題となっている日本端子はいわば河野一族の家業で、河野洋平氏が会長、実弟の二郎氏が社長で、河野氏自身もフジゼロックスを退社した後に数年の役員経験があります。

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日本端子の沿革は、1960年に東京都中央区に設立され、、1995年3月には早くも最初の海外支部として中国の北京市に営業所が開設しています。
そして同年12月には、中国との合弁会社「北京日端電子有限公司」が設立されました。

さてここまでは、一見普通の日本企業が下請けを求めて中国に進出したように見えます。
こんな企業は日本に掃いて捨てるほどありますから、どこが問題なのかと河野氏は言いそうですし、現に上念氏などはトヨタだってそうだろう、これを批判するのはJアノンだ、などと口汚く罵っているようです。
ちなみに上念氏が言う「Jアノン」とは、トランプを過激な支持者に「Qアノン」という男がいたことで、過激化した高市支持者も同類の陰謀論者だといいたいようです。
日本の分断を憂うみたいなことを言いながら、分断を進めているのはあなたのほうです。

では、果たして日本端子が進出した他の日本企業と「同じ」かどうか見てみましょう。
それは中国共産党との距離です。
その距離が端的に現れるのが、中国共産党からどれだけ「特別な配慮」を受けているかです。
それが判るのが、中国側との同合弁会社の出資比率です。
中国において、50%を超える海外企業の出資比率は認められていません。
しかし、日本端子が最初に中国で作った合弁会社である「北京日端電子有限公司」は、日本端子が60%、中国側のパートナーである「京东方科技集团股份有限公司(BOE)」が40%となっています。

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そしてこの合弁会社に中国側BOEから派遣された役員は、中国共産党の大物政治家である陳炎順でした。
中国共産党の党員が3人以上いる企業では、「会社法』と「中国共産党規約」によって、中国共産党組織を設置することが決められています。
外国企業との合弁会社には共産党支部が作られており、そのトップは総経理(社長)より強い権限を持っています。
特にBOEは共産党が直接に関与して国営企業として設立した会社のために、共産党そのものといってよいでしょう。

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京东方科技集团股份有限公司(BOE)中国共産党支部

おそらく資本比率では日本が6割を持ち、実際の経営権は中国のBOEが握るという合意が成立していたと思われます。
このBOEは元々は国営企業で、今も共産党系企業としてディスプレーをはじめ各種の先端的電子製品を製造しており、2011年11月には東京にBOEジャパンを開設し、米国にも進出しています。

このようなBOEが、日本端子に目をつけたのは、中国の国策が背後にあります。
中国は毛沢東時代から、伝統的に親中派政治家を育てるために、さまざまな中国利権をばらまいてきました。
古くは社会党系の友好団体に友好商社を作らせて中国利権を与え、鄧小平が改革開放路線を推進するにあたっては、積極的に日本企業との合併会社設立させ、技術と資本を呼び込んできた歴史があります。
まだ日本のODAが大きな力を持った1990年代には、それを呼び込むために旧竹下派に中国利権を与えていたのは有名です。
橋龍がハニートラップにはまったというみっともない事件すら起きたほどです。

いまもその方針は変化しておらず、中国は利権を餌にして親中派政治家を呼び込みます。
親中派の代名詞の河野洋平氏も例外ではなく、彼の作った日本端子は積極的に中国に進出して合弁会社を設立しました。
北京だけではなく、翌1996年に香港、2007年に江蘇州蘇州市、そして、2017年には広東省広州市にと次々に合弁会社を設立し、日本端子は中国ビジネスが柱の企業となっていきました。
ちなみに、この日本端子が中国に合弁会社をつくり始めた1996年に、長男の太郎氏は衆議院に立候補して当選しています。

それはさておき、この急速な中国展開に中国共産党の「特別の配慮」があり、日本端子はそれで太った会社だったのです。
たとえばもっとも新しい合弁会社である2012年に江蘇省昆日市で設立された「昆山日端電子科技有限公司」の日本端子の資本比率はなんと100%で、これは中国の中でも特筆されるべき「特別な配慮」でした。

なぜこのような「特別の配慮」を中国共産党から貰えたのかといえば、言うまでもありませんが、自民党元総裁にして衆議院議長だった河野洋平氏が「利用価値がある政治家」だったからです。
河野父は、かつて外務大臣時代に訪中の途上悪天候で台湾に降りた時、一歩も外に出なかったということを誇らしげに吹聴するような人物でした。
そして息子の太郎氏も、巧妙に親中姿勢は隠してきていますが、彼が掲げる目玉政策は実は日本端子の合弁事業と見事に重なることに気がついたでしょうか。
たとえば太陽光発電の拡大、ITデジタル化促進事業は、自分も株主である日本端子の事業そのものです。
日本端子の営業目録をみると、河野氏の目玉政策がそのまま載っています。

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そこでこの河野氏の日本端子問題で比較したいのが、バイデンの息子ハンター・バイデンのウクライナと中国にまつわる疑惑です。
ハイデンの息子であるハンター・バイデンは、ウクライナのエネルギー会社プリスマ社の経営に関わっていました。
そしてその不正が検察に暴かれそうになると、当時副大統領で、ウクライナ担当だった父親のジョーがウクライナの政府に圧力をかけて検察官を解雇させてしまいました。
こういうことができたのは、当時のウクライナ政府は、オバマがCIAに命じて転覆工作をさせて生まれたオバマの傀儡政権だったからです。
とうぜんのこととして、米国政府の影響力は強大で、ウクライナ担当をしていた副大統領が息子を送り込んで、エネルギー利権に関わらせたのですから、ウクライナ政府が「特別の配慮」をしたのはあたりまえのことです。

また中国ビジネスにおいては、バイデンはハンターをエアフォース2に乗せて中国を訪問するという露骨なサポートをしています。
下の写真は北京空港に降りるバイデンですが、後ろにいるのがハンターです。
まさに公権力の私物化そのものの景色です。

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当時、米国副大統領が中国に訪問した目的は、対米関税の引き下げと、尖閣に対する軍事圧力を止めさせることだったはずでしたが、そちらは収穫ゼロ。
一方ハンターの側は、この訪中の8日後に中国銀行が彼の未公開株式投資ファンドである「ライベート・エクイティ・ファンド」に10億ドルを払ってパートナーとして参画しています。

「中国では、中銀国際が支援する中国の企業であるBohai Industrial Investment Fund(渤海工業設備ファンド)とハーヴェスト・ファンド・マネジメントと共にBHRパートナーズを設立しています。
このファンドが、中国航空汽車工業有限公司(AVIC)と米国のハルデックス(Haldex)の全株式を総額5億7,200万米ドルで共同取得しています。中国航空汽車工業有限公司は、中国の国営企業で兵器産業を行っているところです。
つまり、アメリカの副大統領(買収は2015年)の関係者が中国の国営の兵器産業と組んで、アメリカの軍需産業の株を買収したということになります(宇田川敬介 2020年9月20日)
中国に握られた弱みの数々。バイデン次男ハンター氏の黒すぎる噂(MAG2 NEWS) - goo ニュース

このようにバイデンは、親族、ないしは自らの政治的な力を用いて外国で利益を上げています。
それが政治資金として政治家に還流された場合、責任は重大です。
しかもそれが一国の指導者ならば、なおさらのことです。

では河野氏のケースがこのハンターのケースに該当するかといえば、まだ決定的ではありません。
現時点で分かっていることは、河野氏は確かに親族が経営する日本端子から献金を受けており、その会社は中国共産党から「特別の配慮」を得ているという「だけ」です。
河野氏が、日本端子の事業活動に対して、自らの政治的力を利用したかどうか、まだ不明です。

河野氏は今まで巧妙に対中姿勢をカモフラージュしてきましたが、総裁選に出るに及んでさまざまな言い方で、対中姿勢を語り始めています。
たとえば、高市氏との敵基地攻撃能力の議論において、河野氏はこのように述べています。

「抑止力というのは日米同盟と中国の間でしっかりとメッセージを送りながら、安定させるということが大事で、敵基地なんとか能力みたいなものは、結局こちらが打つ前に相手が打たなければ、相手の能力が無力化されるわけで、かえって不安定化させる要因になる」

米国留学組とは思えない幼稚な考えで、もはや中国と北朝鮮に対する宥和姿勢と評してよいでしょう。
軍事力と外交メッセージ発信は不可分であって、こちらがあればこちらがなくてもいいという関係ではありません。
対中国との関係でいえば、中国に対して一定の敵基地攻撃力を保持しつつ、明瞭な外交発信も合わせて行うべきであって、メッセージを送れば「安定」すると本気で考えているなら、そのような首相の誕生を中国は大歓迎することでしょう。
裏付けとなる軍事的能力なき外交は無意味だからです。
こんな程度の浅い外交-安全保障に対する認識で、よく外相、防衛相が勤まったものです。

とまれ河野氏はこの一件をちゃんと説明しないと、総理になるならないではなく、そのエントリー資格すら危ぶまれることでしょう。
全候補の政策の比較表をみておきましょう。

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なお、台湾がTPPに正式申請しました。
中国からすれば、今まで「特別な配慮」を与えて育ててきた親中派政治家に期待したい時期でしょう。

 

2021年9月22日 (水)

オーカス作った米国がフランスと大喧嘩の模様

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米国がフランスと大喧嘩を始めました。
同盟重視がうたい文句のバイデンですが、なにが起きたのでしょうか。
なんと米国独立記念日200周年のよき日に、フランスは式典には出ない、それどころか大使と領事は引き上げさせる、とカンカンです。
米国独立戦争に、フランス(といっても、ルイ16世の頃ですが)が肩入れして、ラファイエット将軍を派遣したり、仏海軍が英国海軍と戦って独立に貢献しています。
その結果、フランス王国の屋台骨が巨額の出費で傾き、フランス革命の遠因になってしまったのですがね。
ちなみにニューヨークの自由の女神像は、フランスからの贈り物です。

さて、ことの起こりは、米国が英国と共に始めた新たなオージーとの軍事同盟であるオーカス(AUKUS)が原因です。
米国はなんと英国以外門外不出だったはずの原潜を、オージーに提供すると言い出しました。

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日経

「【シドニー=松本史】フランスの政府系造船会社ナバル・グループは16日、オーストラリア政府と契約していた次期潜水艦建造事業について「豪政府は次の段階へと進まないと決定した」として中止になると明らかにした。
豪州のモリソン首相は同日、米英の支援で原子力潜水艦を配備する方針を表明。ナバルは「大きな失望だ。我々は豪州に地域の中でも優れた性能を持つ潜水艦を提案してきた」とした。「5年間にわたり豪仏両国で我々のチームはベストを尽くし、すべての約束を果たしてきた」とも述べた。
豪政府は2016年、次期潜水艦事業の共同開発企業としてナバルの前身であるDCNSを選定した。同事業を巡っては日本とドイツも受注を目指していた。一方、ナバル選定後は保証期間などを巡る交渉が難航。豪政府とナバルの「戦略的パートナーシップ協定」の締結は19年にずれ込み、その後も計画の遅れが指摘されていた」(日経9月16日)

このオージーの新しい潜水艦計画は何度もケチがついている曰く付きのもので、日本もかつて受註競争に加わったことがあります。
これはオージーの潜水艦の老朽化だけではなく、中国がオセアニアの前庭である南シナ海や南太平洋海域を浸食してきたことに対する危機感の現れでした。

日本の通常動力型潜水艦の技術は世界有数の優れたもので、性能だけで競争すれば負ける道理がなく、受註すると思われていました。
日本が提供を申し出たのが実績が10年あって、その静粛性や長時間先行できる性能で世界一と評されている「そうりゅう」型でしたが、なんと土壇場で失敗。
実はこの時期、労働党政権のみならずオージー全体がサイレント・インベージョンかけられていたようで、中国が日豪が共通の潜水艦システムで繋がってしまうと、やっかいな水中の壁を作られることを嫌ったことが背景にあります。

実はこの時に受註合戦で日本の対抗馬だったのが、今たいそうお怒りのフランスでした。
フランスは、国ぐるみで受註を後押しし、国防相がわざわざ第1次大戦で豪州軍がフランスに出兵したアルバニーを訪れるという演出までしています。

「ル・ドリアン国防相は豪政府の主要閣僚とともに、100年前の悲しい出来事を称えた。「国防相はその重要なイベントに参加することを切望した。そこで豪州のジョンストン国防相、アボット首相と話す機会を得た」と、同行した仏関係者はいう。過去を共有することで、潜水艦の協議に向けた扉が開いたと同筋は振り返る」(ロイター2016年4月28日)
https://jp.reuters.com/article/submarine-australian-navy-idJPKCN0XP1BX

国際入札に不慣れなわが国の不手際も手伝って、結局フランスが受註してしまいました。
ところがフランスは原潜しか作っていないのですが、オージーには肝心の原子力産業がないため原潜の導入は無理と判断されましたが、、いやー原子炉抜いて通常動力型に直して提供しますよ、と安請け合いしてしまったのです。
で、2016年、現在のコリンズ級潜水艦6隻に代わる次世代のアタック級潜水艦12隻の設計・建造を仏ネイバル・グループに発注しました。
その受註総額は、900億ドル(9兆8400億円)ですからハンパありません。

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誰も責任を取らない? 政治利用された豪州のアタック級潜水艦が破綻 ...

ところが想像どおり、原潜を通常型に改修するのが簡単なはずもなく、価格は200豪ドルから900豪ドル(約9兆8千億円)まではね上がりました。
なぜ200億豪ドル台だったアタック級潜水艦のプログラムコストが、4倍になったのかオージー政府は詳しい説明を行っていませんが、オージーメディアによれば、当時の政権がネーバル社案が地場生産するために新規雇用を発生するという政治的理由のようです。

また性能的にも「そうりゅう」並の長時間潜行もむずかしそうで、完成しても「そうりゅう」型と比較にならないポンコツなのが分かってきました。

「さらに通常動力型として設計された潜水艦が提案されていたにも関わらず原子力潜水艦として設計されたシュフラン級を通常動力型の潜水艦に変更するという案は無駄にリスクが高く、フランスが設計したアタック級潜水艦に米国製の戦闘システム「AN/BYG-1」を統合するという作業も基本設計に遅れを招いている要因で「鉛蓄電池を搭載したアタック級潜水艦が完成することには時代遅れになっている」と嘆いている」(航空万能論2021年3月2日)

そしていつまで待てど暮らせど出来てこないわ、当初約束した地場生産を当初9割から5割りに下げるわ、と豪州政府をいらつかせていました。
また悪いことには、豪州政府側の大臣がくるくる変わり、元の約束がどうなっていたのか、誰の責任だったのかもはや藪の中、という事情も手伝ったようです。
案の定、仏ネイバル社が言ってきたのが、やっぱり原潜計画に変更したらどうかという申し出です。

「ネイバルはこのほど、ディーゼルエンジンが設計条件だった次期潜水艦「アタック級」12隻の一部について、原子力潜水艦に変更できると伝えていたという。個人的には、「やはり来たか」という気がした。以前この欄で、動力が将来ディーゼルから原子力になし崩し的に切り替わることが想定されるため、「原潜を唯一持つフランスが有利な出来レースだった可能性がある」(第99回「潜水艦と政治力」)と指摘したが、それが裏付けられるような思いがしたからだ。
だが、原潜への切り替えは膨大なコスト増が予想される。それにオーストラリアの国内生産比率や情報公開義務などにも振り回されるのは必至だ。日本はいらぬトラブルに巻き込まれないだけましだったのかもしれない」
(NNA豪州・西原哲也2019年10月18日 『【有為転変】第136回 混乱する潜水艦プロジェクト』)
https://www.nna.jp/news/show/1961449

おいおいですが、さんざん待たせて、契約時の約束は値切り倒し、結局原潜じゃどうだもないもんですが、これを見かねたのか登場したのが米国でした。
ここで冒頭の米仏の喧嘩に戻ります。
2021年9月15日、米国は、英国、豪州3カ国が新たな安全保障パートナーシップ(新防衛協定:a new defence pact・オーカス・AUKUS)を締結したと発表し、同日、豪州に原子力潜水艦を配備する技術と能力を提供すると発表しました。
日本も聞いていなかったことで世界がたまげたのですが、これによって豪州政府はフランスとの契約を廃棄することになりました。
といっても、原子力技術を持たないオージーですから、おそらくは丸ごと米国で製造してもらうにせよ、後々のメンテなど問題は山積です。
米メディアBreaking Defenseはこのように見ています。

「原潜建造には原子力技術者だけでなく放射能に精通した医療スタッフのバックアップ、完成したシステムが安全に作動するのか検査を行う特殊な専門家も必要で、多様な原子力関連のスタッフを1から育成するのは一朝一夕では不可能である。
さらに米海軍関係者も「原子炉を扱う技術者の育成には最低でも2年以上、原潜の運用に精通した指揮官や上級幹部を育成するにはもっと長い時間がかかる」と見ており、豪州が単独で原潜の建造や運用を行えるようになるまで10年~20年はかかると見られている」(Breaking Defense)

おそらくまったく基盤のないオージーに原子力潜水艦技術を移転することは、そうとうに困難、短期的には不可能だと思われます。
可能となるにせよ、10年単位の時間がかかってしまうようです。
すると潜水艦能力を空白にするわけにはいかないために、暫定的に米英から原潜をリースすることになりますが、米国でも年に1隻ていどのスローペースで建造しているために、オージーに回す余裕があるかどうか危ぶまれているようです。
これは英国も同じで、もっと余裕がないでしょう。

だから初めから日本の「そうりゅう」にしておけばよかったのです。
初めのボタンを欠け間違うと最後のボタンがはまらなくなる、という例えどおりです。
悪いことはいわないから、日本がすぐに提供できる「そうりゅう」型に戻りなさいって。

さらに悪いことに、この米豪政府の背信行為に対して、フランスの怒るまいことか。 素で怒っています。
そしてとうとうEUもフランスを支持すると言い出しました。
ピーンチ、バイデン!

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日経

「【仏外相「裏切られた」 豪側の契約中止に反発
パリ=白石透冴】オーストラリアが原子力潜水艦の開発を決め、フランス企業との潜水艦建造事業を中止すると表明したことについて同国のルドリアン外相は16日「豪州とは信頼関係を築いてきたが、裏切られた」と述べ、強い不満を表明した。豪州は次期潜水艦の共同開発の相手として仏企業を2016年に指名していた。
ルドリアン氏は仏メディアの取材に「乱暴で、予想がつかない決定だ。トランプ前米大統領によく似ている」などと強い口調で語った。「まだこの話は終わったわけではない」とも指摘し、契約の扱いについて豪側と話し合う姿勢を示した」(日経9月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR169GF016092021000000/

フランス政府にとっては、「トランプに似ている」というのが悪口になるようですが、せっかくバイデンが大統領になって同盟関係が元に戻ったと思ったら、てめーこんなまねしやがって許さねぇ、ということのようです。
ルドリアン外相は、米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)が取り組んでいる指針「戦略概念」の改定に今回の問題が影響するとも明言し、こと次第では世界戦略にも響くぞと警告しました。
今はフランスのNATO脱退の可能性は否定していますが、今後次第です。

私たちから眺めれば、クアッドとオーカスは一体のものですから歓迎すべき展開なのですが、さてバイデン、どう処理するでしょうか。
それにしても米国、この問題やりようによっては悪手です。
オーカスは、米豪英という性格からしてアングロサクソン同盟ですから、グアッドというインド太平洋地域というエリアの同盟であるクアッドの中に、もうひとつ英語圏の仕切りを作ってしまうことになりかねません。
それを見て、クアッド内で微妙な立ち位置のインドや、今後クアッドに加入を目指す立場のベトナムがどう考えるか、そこまで先を見越して米国がやったとは思えません。
フランスも南シナ海問題については艦艇や陸軍を派遣していますから、こじらせるとせっかく目がアジアに向き始めたNATO諸国が醒めてしまわないかと心配です。
オーカスについて蚊帳の外に置かれたわが国だって内心いい気持ちではないはずで、バイデン-ブリンケンもう少しうまくやって欲しいものです。
この問題、こじれないといいのですが。それにしてもバイデン、余計なことをしてくれる。

2021年9月21日 (火)

地頭が悪いのがバレ始めた河野太郎さん

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米国がオージーを対象として原潜まで提供しようとするAUKUS(オーカス)同盟を作ったのですが、明日に回します。
総裁選はまるで刺身みたいなもので、早く料理しないと次の生ものが出てしまいますからね。

さて日本記者クラブの討論会は、露骨に河野氏だけにスポットをあてたような構成でした。
高市氏にはほとんどしゃべらせないんですから、メディアが誰を勝ち馬にしたいのかよくわかります。

「各候補者の発言時間を算出しました。河野大臣が20分以上の発言時間が与えられていたのに対し、高市議員は11分未満です。全21問の質問のうち、後半7問は立て続けに高市議員不在で進行」(高市早苗政策後援会)
twitter.com/takaichi_sanae

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人気」の河野太郎氏に3候補の「包囲網」 自民党総裁選討論会 | 毎日

不公平極まる候補者討論会を主催した日本記者クラブは、「日本で唯一のナショナル・プレスクラブ」と称して公益社団法人の認定を受け、大メディアが会員加盟していますが、産経新聞は入っていないような偏った構造産経は加入していますが、この日の記者会見には参加していません。
フリージャーナリストは入会できないばかりか、要人記者会見の場にもでられないという多様性を全面的に否定した排外的組織です。
メディアが呪文のように言っている「多様性社会」は、自分らの足下には存在しないのですから笑えます。
ちなみに代表質問を行ったのは、読売、朝日、毎日、日経でした。

安倍氏には、そんな了見の狭いことをしていると、自分らの方の見識の浅さがバレますよ、といわれています。

「自民党の安倍晋三前首相は19日、党総裁選4候補による18日の討論会の感想をツイッターに投稿し、外交・安全保障政策に関して進行役の日本記者クラブ企画委員が高市早苗総務相を当てなかったとして批判した。「見識を示されたら困るのか、彼女をスルーする見識なき質問者まで出る始末(笑)」と記した」(時事9月19日)

まったくそのとおりで、毎日から候補者討論会に出た佐藤千矢子氏は、ハナから高市氏を「女性の敵」視しているので有名なご仁でした。
こんな記者をあえて出してくるのを見ただけで、毎日の意図が見え見えです。
ちょっと前に佐藤氏はこんなことを高市氏に言っていました。

「じゃあ高市さんがね、女性の活躍を推進するような、応援するような政策をとってくれるか、っていうと私はちょっとそこは疑問に思っていて、まあ有名なのは、やっぱり選択的夫婦別姓、高市さんは本当に反対の急先鋒として知られてますよね、でことし政府が、男女共同参画推進計画を盛り込もうとしたら、まあ自民党の、保守派の横槍で、それがなくなったとかですねえ」(佐藤千矢子TBS)

夫婦別姓推進しない高市は女性の敵だ、というようなことを敵意むき出しで上目選で決めつけるのですから、河野氏だったらキレてたな(笑)。
至ってクールに対応した高市氏は、女性活躍推進を夫婦別姓に矮小化してはならないと主張しています。
女性が活躍出来る社会と、戸籍制度を破壊し、家族制度を壊しかねない夫婦別姓推進とは次元が違うというのが高市氏の考えです。
その上に立って、旧姓を使用することが女性活躍の足を引っ張らないように広く認知させるなどが必要だとしています。
まことに妥当な考え方で、女性参画社会の実現=夫婦別姓推進という毎日のほうがよほどドグマチックです。

メディアは、初めから高市氏には当てない気だったようですが、では河野氏独演会となって有利だったかといえば必ずしもそうはならないのが面白いところです。
というのは河野氏は安全保障でも、経済対策でも、たいした見識を持っていたわけではないことが、だんだんバレてしまったからです。
私など、ゲル氏と同盟を結ぶまで河野馬券を少額買っていましたから、ああ、やっちゃった、またやっちゃった、もう知らんってかんじ。
たとえば今焦点の消費税について、河野氏はいかにも増税論者らしい素顔を丸出しにしてしまっています。

「16日、各新聞社の取材に対し河野大臣は、年金制度改革の必要性を説き「年金に最低保障は必要だ」とコメント。そして「年金の最低保障部分は保険料ではなく、税でやるしかない」と話し、「応分に能力のある人に負担してもらうことを考えると、消費税がいい」と語ったという。河野大臣はかねてから「年金の財源は消費税に」と主張してきた。
12年1月、自身の公式サイトで「基礎年金を満額、必ず支払うためには、保険料の徴収をやめ、税で基礎年金を支払う必要がある」とつづり、さらにこう続けている。「消費税を基礎年金の財源とする方式であれば、買い物をするたびに必ず消費税を支払うので、未納や免除は生じないので、全ての日本人が65歳になれば満額の基礎年金を受け取ることができるようになる。高齢者の生活保護も廃止できる」
(女性自身2021年09月19日)

大手紙は日経を先頭にしておおむね財政健全化論者ばかりですから、河野氏の年金欲しければ消費増税だ、というようなことを言ってもスルーしてくれますが、女性誌は手厳しい。
年金システムと消費増税をゴッチャにしていること自体が問題です。
河野氏の言うとおりにしたら、年金を磐石にするために消費税を並行して上げねばならず、いまのように少なくなる一方の若者が高齢者を支える歪な年齢構成になればなるほど、どこまでも消費税を上げねばならなくなります。
すると十数年後には消費増税には、とんと歯止めが効かない状態になります。
この消費税を年金の財源にするという河野氏の案には、討論会でも他の候補から手厳しい意見が述べられていました。

高市氏は、「基礎年金を全部税金で賄い、さらに生活保護も税金という制度は無理があるのではないか」「かなりの増税になると思う」と現実性がないとこき下ろされています。
また岸田氏からも、「民主党が(月額)7万円の『最低保障年金』を議論したが、自民党は『実現不可能だ』と攻撃してきた」「現役世代に混乱が生じる」「消費税でやる場合に実際何%上がるのか、はっきり答えてほしい」と切り込まれています。
グっと詰まった河野氏は「消費増税の数字をいうと一人歩きするから言えない」と受け身に終始していましたが完敗です。

結局、「今すぐ上げるということにはならない」といったあいまいな回答をしていますが、これは今はすぐに上げないが、やがてそう遠からず上げるという意味です。
さすがに総選挙を控えて「消費増税が私の公約です」なんてやったらオシマイですが、せめて「私が任期中は絶対にしない」ていどは言うかと思っていました。

たぶん来年には参院選が待っていますから、、それまでは黙っているでしょうが、仮に彼が勝つとこの人は「大胆な年金改革をやり抜く」とか言って大幅消費増税をする気でしょう。
さらに就任直後に決めねばならない補正予算も、緊縮財政論者の河野氏はどうせケチるでしょうから、困った人です。
補正予算はコロナ対策だけではなく、痛んだ経済の修復が目的ですから、これをケチられたらたまらない。

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2021自民党総裁選:討論会 「河野氏包囲」際立つ 3氏、党員票を

意外にというと失礼ですが、しっかりした受け答えをしていたのがベテランの岸田氏で、補正予算の規模も30兆円という満額回答を出し、消費税は10年上げないと言っていました。
岸田氏は財政健全化論者のはずですが、本心かどうか戦術的転換したようです。
岸田氏は日銀の金融緩和政策を批判して出口戦略を主張していましたから、彼がなったら金利引き上げをするかもしれないという危惧が出ていました。
現況の経済は、デフレを抜けていないところにコロナ禍がかぶった状態ですから、金融引き締めなんかされたら大変です。
去年の一律給付金にも30万円を選択的に配布する案を出して渋っていましたから、財政出動には消極的なことは予想がついていたので、補正予算30兆は驚きました。
かてて加えて、岸田氏は消費増税の必要性を強調してきた人なので、氏が政権をとると消費増税とワンセットで金融緩和の縮小が予想されていたのですが、とりあえず10年先送りということで合格です。
たぶん岸田派の知恵者である山本幸三氏あたりにレクチャーされたんじゃないかな。
この調子なら、高市氏の滑り止めで岸田氏もいいかなとこの私も思い始めました。

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狙い撃ち」された河野氏のカウンター「原発に頼った方がいいんでしょう 

さて河野氏という人は、よくも悪しくもポピュリストではないので、持論から逸脱すると口ごもるか、あさっての答えをしてしまう人のようです。
山口敬之氏など、都合の悪いことを聞かれるとイラっとする顔を見せることを、民主党のカン氏を思い出すとキツイことを言っています。
カン元総理並のイラチかもしれないというのは、文春の暴露テープでばれてしまっていますので、トップにするには心配な体質です。

この総裁選でも、質問にきちんと答えている高市氏に対して、逸らしたり何を聞かれているのかわかっていないボケた答えが目立っています。
この理解力のなさは、田中秀臣氏も言っているところで、彼は河野氏に2時間も金融政策と景気についてレクチャーしたのですが、まったく理解されなかったとか。
今河野氏は焦りに焦っているようで、案に相違して独走で一気に過半数どころか、決起集会には高市氏より少ない人数しか集まらず、出るはずがない野田氏まで出馬して票を分散させるのですから、そうとうに焦りが出ているようです。
麻生氏の忠告どおり、一回見送って、待望論を盛り上げたほうがよかったのに、こともあろうにジィ様が大嫌いなゲル氏と同盟するなんて、ま、しょうがない。

山口敬之氏は、河野氏はコミュ障害じゃないか、と評しています。

「全ての調査で支持率が頭打ちとなっている河野氏について、今注目されているのは「コミュニケーション能力の低さ」である。9/10の出馬会見では「ぬくもりのある社会」「汗をかいた人が報われる」など、つかみどころのない冒頭発言のあと、質疑になった。そのやり取りに、永田町では驚きの声があがった。記者の質問の意味を正確に理解できなかったのか、質問に答えなかったり、頓珍漢な返答をしたりするケースが何度も見られたのだ」(山口敬之9月17日)https://web-willmagazine.com/politics/U07tW

そういえば、ゲル氏と「保守の概念で一致した」と言っていましたが、その「保守」とは、河野氏のサイトによれば「保守」とはこのようなことのようです。

「自由民主党は、保守政党です。保守主義とは、度量の広い、中庸な、そして温かいものであると私は思います。そして、平等な機会が提供され、努力した者、汗をかいた者が報われる社会、勝者が称えられ、敗者には再び挑戦する機会が与えられ、そして平等に競争に参加できない者をしっかりと支える国家を目指すのが保守主義です」
https://sosaisen.taro.org/

何を言いたいのか、綺麗事すぎてさっぱりわかりません。
どうやら社会の格差是正とか敗者への再配分政策を言っているようですが、荒れ狂う「戦狼」を目の前にして言う台詞かと思います。
彼は米国留学組で、米国リベラルをモデルの影響を強く受けて帰国したようですが、同じ米国民主党議員スタッフだった高市氏にあまりその影響がみられないので、河野氏のリベラル体質は父親の遺伝のようです。
とまれ、中国の台湾進攻前夜のような今の時期に、「中庸で温かい」政策だけでは困ります。
もっとも「温かい政策」なんて言いながら、国民生活を直撃する消費増税を口にするので、わけがわかりませんが。

敵基地攻撃能力についても、高市氏を念頭にいて「あれは昭和の概念で、日米安保を強化する」なんていうありさまです。
おいおい、自分がやらかしたイージスアショア中止で、どれだけ弾道ミサイル防衛計画がうんぬまっているのか忘れたのでしょうか。
あの時にも、安倍氏には事後報告で済ませようとし、困った安倍氏は河野氏の大失敗を助けるために、当時まだ生煮えだった敵基地攻撃案を出さざるをえなかった経緯があります。
それを忘れて「昭和の概念」と切って捨てるとは、ほんとうに忘恩の徒です。

「昭和の概念」どころか、敵基地攻撃能力については、今まさに防衛省がスタンドオフミサイルなど、さまざまなプランを練っている段階です。
こんな時期に「昭和の概念」で切り捨てる人が、よく防衛大臣をしていたものです。
ならば保守政治家らしく対案を、イージスアショアの失敗を総括して出すべきでしたが、それをしないようだから、「地頭が悪い」と言われます。

とまれ、地頭の悪さが目立った河野氏に対して、意外にやる岸田氏とメディアが潰したくてムンムンの候補が高市氏だということがわかった候補者討論会でした。

2021年9月20日 (月)

中国がTPPに入りたいそうです

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総裁選が大変に盛り上がっているために、ほとんど日替わり総裁選定食となっています。
そのためか頭がえらいドメスティックになってしまいました。

中国がTPP申請をしたようです。
まぁ、去年11月頃から習はするぞって言ってたんですが、よもやほんとにするとは思わなかった。
今のTPP窓口事務局国はNZがしていますが、NZもどういう顔をしていいか、正直困ったことでしょうね。
この国はオージーと違って、微妙なスタンスを中国と取りたい国ですから。
ちなみに今はCPTPP(「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定・ The Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership )、あまり長いので加盟国11カ国で「TPP11」と呼ばれています。
なんか若き赤き血のイレブンみたいね。
そのうち、今申請中の英国が晴れて12番目の締結国になるのは確実ですから、若き赤き血の12となる予定です。

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ハフィントンポスト

2018年時点で、世界全体のGDPの13%、貿易額の15%、5億人の自由貿易圏となっています

「中国が包括的および先進的なTPP協定(CPTPP)への参加を正式に申請した。
17日の中国国営グローバルタイムズなど海外メディアによると、中国商務省は声明で、王文濤商務相がニュージーランドのオコナー貿易・輸出振興相にCPTPP参加申請書を提出したと明らかにした。双方は中国の正式申請後、後続作業について議論する遠隔会議も開いた。
グローバルタイムズは今回の参加申請を、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による衝撃と中国を孤立させようとする米国の努力にもかかわらず、世界貿易の自由化に対する中国の献身を見せる動きだと説明した。また、これは世界貿易で中国のリーダーシップの役割を強化すると同時に、CPTPP参加を避ける米国に圧力を加えるためのものだと、専門家らを引用して伝えた。」(中央日報9月17日)

イヤミったらしく韓国紙から引用しましたが、この韓国も中国の顔色を見ているうち時期を失してしまいましたが、いまやその当の中国が申請すると言い出していますから、どうするんでしょうか、知ったことではありませんが。
恥を忍んで申請しても、わが国と政治外交がらみですぐに貿易をからませるような国は難しいでしょうがね。

とうぜんのことなら、中国の申請が認められるハードルは極めて厳しく、タリバンが女性をトップに据えるていどの確率しかないと思われます。

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そもそもこのTPPは、アジア-太平洋で貿易のルールを統一して、中国の覇権主義から自由主義諸国を守ろうとするために始まっています。
私も当初は恥ずかしながら中野剛志氏の影響で、グローバリズムの加速化を心配していましたが、時と共に中国に対抗して作られたことがきわめて明瞭になっていきました。
ザ、クアッドの経済版がTPPです。

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もちろん、中国もそれを百も承知でオレも入れろと言っているわけですが、ハードルは極めて高いでしょう。

まず中国の有力企業のことごとくが国有企業であり、そこに対してさまざまな優遇措置が取られています。
国営企業の有形無形の優遇措置は、TPPがもっとも嫌うことで、ベトナムもこれで苦労しました。
また、中国では資本の移動が自由ではありません、海外企業が自らの利益を移転することが困難です。
その上、中国に投資した外国企業は、中国の国内法であるデータセキュリティ法によって、中国国外への持ち出しができません。
そして、その企業データーも、暗号法によって当局が恣意的に開けることが可能です。
またソフトウェアの設計図と呼ばれるソースコードも開示させられます。

中国は政府調達から外国企業を排除する「安可目録」が存在しており、外国企業は排除されています。

「さらに政府調達でも参加国のモノやサービスに差別的な待遇をとることも禁止する。中国では「安可(安全でコントロール可能な)目録」などといったリストが存在し、これにより外資排除が進められていると指摘されている。
中国にある日本企業で作る「中国日本商会」が2020年に出した建議には次のような記述がある。
「2019年より一部の日系企業より、政府調達において外資企業製品であることを理由に政府調達を失注、あるいは入札に参加できなかったとの声が多数挙がっている」(中国日本商工会)
この建議ではさらに「そもそもリストに関する正式な情報は外資企業には開示されておらず(中略)著しく外資企業にとって不利な状況という指摘もある」と綴っている。こうした水面下の規制が加入交渉で障壁になる可能性はある」(高橋史弥2021年09月17日 『 中国は本当にTPPに加入できるのか。データ移転、国有企業優遇、外資排除...予想される障壁は』)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6143e5b7e4b0d808bf26e57a

ですから、中国が加盟するのは極めて厳しいのですが、それに加えての決定打がウィグル・香港問題です。
欧州委員会では、中国当局による新疆ウイグル自治区のウイグル人住民への強制労働を批判し、強制労働で作られた製品が「欧州の店で販売されるのを認めない」としています。
TPPでも同じ問題が提起されはずです。

これだけではなく、だめ押し的にTPPには「加盟国すべての了解が必要」という条項があります。
早々と反対を打ちだしたのは、やはりオージーです。
テハン貿易相は17日に、「まずは2カ国間閣僚会議をするのが筋だ」と声明しました。
これは中国が、なにかにつけ中国に抵抗を続けるオージーの牛肉やワインに制裁関税をかけていじめたことを言っています。
中国が政治的外交問題を貿易を使って圧力をかけるのは定番外交手法ですが、最近も台湾のパイナップルに対してやりました。
あれを大規模にしたのが、オージーに対する貿易上の嫌がらせの数々でした。

ちなみにわが国は梶山経済産業大臣は、「TPPは高い水準の取り決めだから、果たして中国はクリアできるかしっかり見極めさせてもらう」と言っています。
ストレートにダメと言わないのがうちの国らしいですが、麻生さんは「条項をよく読んでみろ。今の中国が新規加入できるような状態じゃないだろう。受け入れ側としてもホントかという話だ」とハッキリ述べています。
高市氏は「他の締結国とも提携して対応にあたる」と正論を言っています。
高市さんは、どんな問題でもいつも真ッ正面に答え、妙なはぐらかしがないことが好感をもてます。
あ、そうそう聖子ちゃんも逆方向に真ッ正面で、「前向きに検討すべきだ」、といつもながら滑ってどこか遠くに飛んでいってしまいました。

この中国の動きは、安倍政権時が台湾をTPPに参加させようと動いてきたことに対するカウンターです。
台湾加盟はほぼ了解が得られていましたが、これに危機感を持った習が先にオレを入れろとゴネたといったところです。

それにしても、さっさと米国戻ってこいよ、TPPの意味はよくわかってんだろう。

 

 

2021年9月19日 (日)

日曜写真館 朝日彩湖 

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能面のごとき朝日や霧の中 長山あや


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白露に阿吽の旭さしにけり  川端茅舎

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旭の中や金粉こぼし囀れり 中村明子

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風になりたし鶴の絵本をひろげいる  酒井弘司

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朝日煙る手中の蚕妻に示す 金子兜太

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朝のはじめ辛夷の空をみていたり 酒井弘司


 

2021年9月18日 (土)

なぜ私たちは共産党に違和感を感じるのか?

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昨日に続いて共産党について考えてみましょう。
私は共産党との距離が、その政党を計る基準のひとつだと思ってきました。
共産党との距離は、実は民主主義をどれだけ理解しているのか、あるいは民主主義とどれだけ距離があるのかを計る計測器なのです。

すると今の立憲などはほとんど合体せんばかりですから、きわめて危険な立ち位置にいるのがわかります。
先日など、枝野氏は共産党についての今の政府見解を、政権をとったら変更すると言い出しました。

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産経

「立憲民主党の枝野幸男代表は16日、共産党が「敵の出方論」に立った暴力革命を選択肢から排除していないとする従来の政府見解について、衆院選で政権交代を実現した場合、変更する可能性を示唆した。国会内で記者に「枝野内閣で変更するのか維持するのか」と問われ、「少なくても私は、今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」と述べた」(産経9月16日)

おいおい、言う方向が違うだろ、と思います。
政府を取ったら政府見解を変えるのではなく、まず自分の同盟者の共産党に問えばいいだけことではありませんか。
志位さん、ほんとうにあなたの党は暴力革命論を放棄したのですか、政府の出方次第でまた変えようというんじゃないでしょうね、と。
まぁ、いちおう答えてはいるのです。

「一方、共産は8日の中央委員会総会で、暴力革命を排除していないとの受け止められるのを避けるため、過去に使用していた「敵の出方論」と呼ばれる表現を今後は使わないと決めた」(産経前掲)

また、これですか。いつもの詐術です。
変えるのはあくまで「表現」だけで、考え方の「中身」ではありません。
いままでも綱領のマルクスレーニン主義を「科学的社会主義」にすり替える手品をしてみせたように、こんども「表現」の言い換えで目先を変えようというだけです。
今までさんざんこういう言葉のすり替えで凌いできたから、きちんとした暴力革命論からの脱却ができなかったのではなかったのですか。
もういいかげんにこういう茶番は止めて欲しいものです。
というか、こういう詐欺に引っ掛かる立憲のほうが愚かなだけですが。

さて、八代氏が言っていたように共産党と組むことは劇薬、いや毒を飲むことと一緒です。
なぜなら共産党は一般の野党と違って、民主主義政党ではないからです。
そもそも近代的な「政党」ですらありません。 

共産党は「国民政党」ではありませんから、他のいかなる政党とも本質的に異なっています。
あらかじめ言っておきますが、私は共産党が左翼政党だからダメだと言っているのではありません。
主張の内容ではなく、この党の組織そのものが民主主義制度とは相いれないからです。

共産党は狭い意味での「結社」です。
結社は「特定多数の人がひとつの目的達成のために作った継続的団体」ていどの意味ですが、共産党の体質はむしろ結社の中でも「秘密結社」に近い性質を持っています。
しかも19世紀にロシアでその原型が作られたレーニン主義型秘密結社です。
このようなタイプの組織のことを、別名で
スターリン主義と呼びます。

共産党は結社特有の閉鎖主義なので、なかなか外からは分かりにくいのですが、それがかいま見られるのは、たとえば「党首」のあり方です。
普通の政党ならば、大敗すれば必ず党首の交代が話題になります。
しかしどんな負け方をしても、党首の責任が問われない唯一の政党があります。
それが共産党です。

というのは、党首選挙自体がないからです。
こんな政党は唯一産党だけです。
ですから、志位氏はなんと2000年から21年間も党首をしていて、辞めるのは老いさらばえた時だけです。
馬鹿げた長さですが、こんなに長期間党首の座に座っているのは、志位氏しかいません。
安倍一強どころではありませんし、辞めた後も宮本氏や不破氏がそうであったように院政を敷くのですから、ほとんど終生絶対権力者でいることができます。

志位和夫 - Wikipedia 

こんなことが可能なのは、共産党独特の仕組みに理由があります。 
それが「民主中央集権制」、あるいは「民主集中制」です。
民主主義的中央集権制度(Adobe PDF)

では、この共産党の体質を理解するために、日本共産党規約を見てみましょう。
日本共産党規約 

共産党規約によれば、何年かに一度開かれる党大会において、中央委員が選出されます。
中央委員候補は、前任の中央委員会による推薦制です。

        ●日本共産党規約第3章第13条
     「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。」

推薦するというのが味噌です。
一般の政党における指導部は全党員がなんらかの方法で選挙をして選ばれますが、共産党に限っては指導部が候補者を推薦、つまりは指名するのです。
 
すると指導部にとって都合のいい人物しか「推薦」されませんから、初めから誰が指名されるのか定まっています。
指導部に忠誠を誓う党員だけが執行部入りできるのです。
こういうのを俗にシャンシャン人事と呼びますが、こんな推薦で選ばれた党員にできることは、シャンシャンと賛成の拍手をするだけです。
下の写真は党大会の風景ですが、こういう100%全員賛成を不気味だと思わない者のみが、中央委員になれるわけです。
一般人の感覚だと、毎回毎回全員同じ方向を向いているのって気持ちが悪くなるものですが、それをなんとも感じなくなり、やがてこれこそ共産党の力強い前進する姿だと思えるようにならないと党員にはなれません。

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日本共産党 トヨタで生きる

共産国家の「選挙」とまったく同じですから、共産党は国家内共産国家をやっていることになります。
この指導部の「推薦」で選ばれた中央委員から、更に常任幹部会委員長が選ばれます。
これが執行部で、20人前後います。

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「●第23条 中央委員会は、中央委員会幹部会委員と幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長を選出する。また、中央委員会議長を選出することができる。」

この20人の常任幹部の互選で選ばれるのが書記局長です。今は小池晃氏がしています。
小池氏は東北大で、宮本-不破-志位と歴代委員長は東大と学歴エリートでないと幹部になれないようです。
安倍゙さんや菅さんだと共産党では出世できませんね(笑)。
また労働者の党と言っていますが、党幹部で労働者出身はいません。
それはさておき、この推薦で選ばれた中から互選で決まるのですから、委員長職を20年間もしていられるわけです。たいした「民主主義」です。

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小池晃 日本共産党参議院議員

とまれ、こうして志位氏は自分の息がかかった指導部を作り続けることが可能なのです。
志位氏は東大を出てから一度も普通の職場で働いたことがなく、35歳の若さで書記局長、46歳で委員長になっています。
共産党以外の世界を知らない純正の共産党的人間です。

もちろん「民主」という名がかぶっていますが、この民主集中制はまったく民主主義と相入れない組織です。
共産党はやたら「民主」という言葉を好み、民青、民商、民医連となにかと民主をかぶせますが、なにか隠したいものでもあるんでしょうね。

共産党における民主集中制とは、下図のようなシステムです。

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日本共産党等の動向

まず第1に、下級機関は上級組織に絶対服従することを求められます。
いったん決定した事項について、下級組織は上級機関の許可なくして論議すら認められません。
 
ピラミッドのように作られている共産党組織の下部組織は、疑問を発表することはおろか、持つことも許されません。
ただひたすら指令を実行あるのみです。
こんな組織が民主的なわけがありません。
この日本共産党の組織構造ですが、これを中国共産党と比較してみます。Dk_chinab2_100

 

世界最強の政党「中国共産党」の実像

各級の定員が違うだけで、そっくりなのがお判りでしょうか。
ですから、異論が出る余地がありません。
完全な上意下達、これが中国と日本を問わず共産党という組織の特徴です。

ちなみに共産党は中国共産党の支配下にあった時代もあって、その時代に暴力革命を本気でやって失敗しています。
今は「独立」したようですが、私からみれば兄弟喧嘩のようなものです。

一方、常日頃共産党が民主的ではないと罵っている自民党の組織構造はこうです。

 

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www.jimin.jp

今やっているように、共産党の委員長に相当する自民党総裁は、全党員の参加が可能です。
共産党でいう書記局長は自民党の幹事長に相当しますが、これは総裁の指名です。
しかしこの幹事長は、共産党と違って独裁権限は持たされていません。
部会で延々と議論を重ねたものが、総務会に上り、政調会長を経て幹事長に上がれば、幹事長はこれを拒否できません。
最近、外交部会から持ち上がったウィグル非難声明に対して、二階氏が拒否したことがルール違反だとして大問題となっているのはこのせいです。
共産党と対照的なボトムアップ型組織です。

しかも派閥ごとに考え方が違い、右から左までさまざまな議員がいます。
まさに日本そのもの。
もはや土俗的といっていいくらい、自民党は日本のリアルな現実そのものなのです。

第2に、共産党においては、組織人事もまた上級の承認なくして決定できません。
したがって、下級はシャンシャン大会で選ばれた上級指導部に絶対服従することが義務づけられています。
自民の派閥が密室だというなら、その密室さえも持てないのが共産党で、ピラミッドの頂点から降りて来る方針をひたすら実行することだけが下部の任務です。

第3に、党内部でなにが議論されているか、どう議論されたのかについて党外に情報公開してはなりません。

●第3章第17条
全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。」

共産党員は、党の方針と違うことを外部に言ってはいけないのです。
もし石破氏が共産党員だったらとっくに除名ですね。(笑)
国会だろうと、地方議会だろうと、はたまた、どんな運動の会議でも、共産党員は自由に個人の意見を言うことは禁じられています。
たとえば労組や大衆運動団体においては、共産党員は共産党員だけでフラクションと呼ばれる秘密組織を持ち、あらかじめこうしゃべるということを意志一致してから会議に出てきます。
全員が同じことを同じように、決められたとおりにしゃべるので、私たちには共産党員がクローンのように見えてきます。
違ったことを言えば、後から自己批判をせまられることになります。おお、しんど。

志位氏自身若き日に指導部にのし上がったきっかけは、この党の内部統制で功績を上げたからでした
時の絶対権力者であった宮本氏に見いだされて出世の糸口となったのが、伊里事件という陰惨な粛清事件でした。

伊里一智が1985年の日本共産党第17回大会に際して、東京都大会で代表となり中央委員会への批判を公表した。日本共産党中央委員会議長を務めていた宮本顕治の辞任を要求し、減少していた共産党の党勢を「立て直そう」と提案する。
これが所属の支部で可決され都大会の代議員として選出されるべく、東大大学院の他の支部にも働きかけ、6割の支持を得て可決された。
これに対し、当時
日本共産党中央委員会青年学生対策委員だった志位和夫は宮本顕治の直接の指示を受け、党の規律に背いて他の代議員に対し働きかけた分派活動と断定し伊里を1986年に日本共産党から除名し追放した。
この働きを認められ、宮本顕治による抜擢で
1987年(昭和62年)の第18回党大会で准中央委員に選出され、1988年(昭和63年)に書記局員に任命される。」(ウィキ)

当時宮本顕治氏が絶対的権力を握っていた共産党中央を、東京都委員会代表伊里氏が厳しい批判をしました。
これは都委員会で6割の支持を集めた合法的な批判でしたが、宮本氏は激怒します。
そして宮本氏の意を受け、伊里氏を分派活動として粛清したのが、他ならぬ志位氏でした。
異論を言うと、査問にかけられ除名。
戦前の非合法共産党時代となんらかわらない陰湿な粛清体質です。
これが志位氏が出世階段を登るきっかけとなったために、志位氏にとってこれが成功イメージとなったようです。
指導部に対する批判はどのような形であろうと一切許さない、これが志位氏の一貫した政治スタイルですが、その出発点は20代に既にあったのです。
下の写真は北朝鮮のものですから、比較して申し訳ありませんが、共産党と基本構造は一緒です。

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第4に、当然のこととして分派や派閥は禁止です。異論を出す場自体がないのですから当然です。

「第3条4
4 党内に派閥・分派はつくらない。」

党は頂点の委員長から末端まで一直線に上意下達の命令系統が貫徹する組織でなければならないから、分派などは異端。 
指導部に文句など言おうものなら、異端審問官に査問会にかけられ、メタメタにされて除名。
まるで軍隊ですね。 
比喩でなくそうなのです。共産党といちばんよく似た組織構造を持つのは、実は軍隊です。
軍隊は戦闘を遂行するために民主的手続を省きます。大枠ではシビリアンコントロールが効いていますが、軍隊内部では上意下達の命令系統がなければ、大変なことになります。 
敵軍を前にして、民主的に戦術を決めたり、指揮官を選挙していたら負けるに決まっていますからね。
同様に共産党もまた階級闘争をするための「軍隊」なのです。

共産党の目的理念は規約冒頭の第2条にこう書いてあります。

「第2条
日本共産党は、日本の労働者階級の党である(略)
終局の目標として、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす。」

これは共産主義という表現こそ使っていませんが、いうまでもなく共産主義社会の実現を指します。
共産党は共産主義を目指していると批判されると、そんなことは綱領に書いていないと言うんでしょうね。
マルクスレーニン主義だとは書かず「科学的社会主義」と言い換え、「共産主義」とは書かず「搾取のない、真に平等な社会」と書きますが、こういう言い換えにはうんざりさせられます。

この共産主義実現のために階級闘争という「戦争」を戦っているというのが共産党のアイディンティティですから、最高指揮官たる党委員長は絶対的な権限を持たねばならないのです。
その意味で、共産党は権限が上部に集中する、極端な階級社会だともいえます。
下世話な話、幹部は代々木病院の特別室に入院できますし、党から高級自家用車や豪邸、ボディガード、お手伝いさんもつけてもらえます。
宮本氏は一流好みで、銀座英国屋で背広を作り英国製の靴しか履かなかったと言われています。
全部噂にすきませんが、こういう体質ならばさもありなんと思ってしまいます。
つまり、かつてのオウム真理教が日本の中にオウム王国を作ろうとしたのに対して、共産党はミニ共産国家を作ってきたのです。

このように見てくると、共産党がいまでもこの100年間も愛用してきたアナクロの極みのような党名を変えないのは、変えてしまうと党外から一般の人たちが入り込んでしまって、この民主集中制を揺るがしてしまうからです。
だって党首選せにゃならんでしょう。そんなもんしたら、一気にいままで共産党を支えていた独裁の背骨がへし折れてしまいますからね。

こういう政党が第1党となって政権についた場合、党は政府の上に君臨する事になります。
かつて宮本氏は国会議員ではありませんでしたが、党外から党指揮していました。
このような党は、政権をとれば党の決定がすべてに優先します。
どこかで見ませんか、この風景。そう、中国と同じです。

 

Photo_6http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-07-13/09_0401.html

西欧最大の共産主義組織だったイタリア共産党は「左翼民主党」と党名変更して、しばらくして消滅してしまいました。
というわけで、志位さんは負けようとどうしようと、絶対にその「党首」の地位が揺らぐことはないのです。
このような組織体質を持つ党が、先進民主国家の政党として存在し、国会に議席を持っていること自体が驚きです。

上の写真は日本共産党本部ですが、首都の一等地に堂々たる地上11階のビルを構えていますが、共産党本部が首都に巨大ビルを構えている風景はわが国だけでしか見られないものです。

私は共産党は自らの党内ガバナンス(統治)を変えない限り、「政党」とは呼ばれるべきではないと思います。
共産党が米国で認められていないのは、こういう民主主義そのものを否定する体質があるからです。

 

 

2021年9月17日 (金)

共産党激怒、でもそれって身から出たサビですけど

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いやー、面白い、なんと野田聖子氏が出るとか。こりゃ驚いた。
もはや下手なエンターテイメントより面白い総裁選となってきました。

「あす告示を迎える自民党総裁選で、出馬に意欲を示していた野田聖子幹事長代行が、出馬の意向を固めました。立候補に必要な推薦人20人を確保したことを周囲に伝えたということです」(9月16日TBS)

野田さんの旦那が反社なのはかなり有名ですが、しかし出たい、出ます、出させて下さいの執念や見事。
野田氏は河野-ゲル連合支援に回るかと思っていたのですが、よもや自分からでるとはね。

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「支持を見込んでいた石破茂元幹事長に近い議員から協力を拒否されたが、他の陣営から支援を受ける動きが広がった。背景には、野田氏の出馬で票を分散させ、党員票で有利とみられる河野太郎ワクチン担当相の勢いにブレーキをかけたいという他陣営の思惑もありそうだ」(産経9月17日)

なくほどね。競合候補の票を分散させるために、あえて野田氏を推すという偽装野田派も混ざっているようですから、複雑怪奇。
一回目で過半数を押えないと、決戦でどうなるかわからないというのがミソです。、
この野田氏の日頃の主張は石破氏に一番近い人ですから、野田氏が出ることで、果たしてリベラル陣営を作ってしまった河野-石破派の票を分散させてしまうか、それとも同じ女性候補の高市氏に響くか、まだまだわかりません。

野田氏の登場と関係あるのかどうなのか、一回は反原発と女軽天皇容認論に蓋をした河野氏が、今度はチラチラ左を向いて夫婦別姓・同性婚容認を言い出し、さらにはモリカケもまたやるとかいいだしました。
一体、なんなの、これ。
諸派閥の支持を得たいとなると持論を捨て、ゲル氏につけば左旋回し、野田氏が出そうになるとさらに左にハンドルを切る。
腰が座らないダメ男ぷり全開です。

決然とした所作がチャームポイントだったんじゃないかな、河野さん。
それに調べるといいますが、赤木ファイルには安倍氏は無関係だと明瞭に記されいるし、赤木氏が自殺したのは財務省の内部問題です。
そしてその財務省の所轄大臣は誰だったのかな、あなたのボスでしょう。
もう後ろ足で砂をかけたから、徹底的にゲル状になるんだ、という宣言ですか。
でも麻生派の支持も欲しくて、自分の決起集会には顔を出さずに、派閥の会合に行ったんですからため息しか出ません。

さて、いきなり季節遅れの怪談噺みたいな日本共産党のお話です。
共産党が「暴力革命をめざしている」と中傷された、とお怒りのようです。
ことの起こりは、9月10日、お昼のワイドショー『ひるおび』での八代英輝氏の共産党をめぐる発言でした。

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「共産党はまだ『暴力的な革命』っていうものを、党の要綱として廃止してませんから。よくそういうところと組もうって話になるな、というのは僕には個人的には感じますね」

これに対して、恐れ多くも畏くも共産党トップの志位氏から直々の怒りのツイートが降ってきました。

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TBSはたちまち腰砕けして、八代英輝氏に謝罪させたのがこれ。

「先週の私の発言についてですが、私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした。一方、日本共産党はそれをたびたび否定していることも合わせて申し上げるべきでした。申し訳ありませんでした」

う~ん、いかにも局から頭下げさせられたから下げましたって、かんじムンムンですね。
ここでころんでもただ起きない八代氏が、「政府見解に基づいて」と政府に振ったので、アレは謝罪になっていないという声も上り、あるスポンサーがCMから降りたとか、降りないとか。

しかし私から見れば、八代さんは修正しておいたほうがいい点はありますが、大きくはハズしていないのです。
というのは、八代氏が言うように、こういう政府答弁が既にでているからです。

●閣議における答弁決定 2020年6月11日
「日本共産党は、昭和26年から28年にかけて、革命の正当性、必要性を主張し、党組織や党員が殺人や騒擾などの暴力主義的破壊活動を行った疑いがあります。現在においても暴力革命の方針に変更はないものと認識しており、破壊活動防止法に基づく調査の対象になっているものと承知しています」

そこで、共産党は矛先を政府に向けて食ってかかりましたが、それが加藤官房長官の答えです。

「加藤勝信官房長官は14日の記者会見で、共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った暴力革命の方針について、「変更ないものと認識している」と改めて政府の立場を説明した。これに対し、共産党の志位和夫委員長は「全く成り立つ余地のないデマ攻撃だ」と反論する談話を出し、政府見解について「到底許されない」と非難した」(時事9月14日)

つまり政府に言わせれば、共産党さん、きみら暴力革命方針をちゃんと捨ててないだろう、だからデマ攻撃には当たらないんだよ、ずっと監視をつづけるからね、ということです。
ま、そのとおりです。共産党は今に至るも暴力革命路線をあやまりであったとして完全に清算していません。
していないから、破防法調査団体指定からはずれないのです。

「公安調査庁はホームページで、共産党について「革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする『いわゆる敵の出方論』を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく現在に至っている」と指摘している」(時事前掲)

政府見解の根拠となっている公安調査庁の当該部分です。
一部だけ切り取られることが多いので、やや長いですが当該箇所を抜き出しておきます。
https://www.moj.go.jp/psia/habouhou-kenkai.html

●共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解 公安調査庁
(略)
共産党は,第5回全国協議会(昭和26年〈1951年〉)で採択した「51年綱領」と「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し,各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました。
 その後,共産党は,武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが,革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく,現在に至っています。
 こうしたことに鑑み,当庁は,共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。
共産党は,「(武装闘争は)党が分裂した時期の一方の側の行動であって,党の正規の方針として『暴力革命の方針』をとったことは一度もない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などとしていますが,共産党自身が5全協を「ともかくも一本化された党の会議であった」と認めています(第7回党大会中央委員会報告,昭和33年)

公安調査庁の共産党認識を整理しておきましょう。

①第5回全国協議会(5全協)で軍事闘争の開始を宣言して、各地で殺人事件や暴力闘争を行った。
②共産党は武装闘争は分裂した一方の派閥がしたことだとしているが、一本化された正式な会の場で決定された方針だったことは自らも認めている。
③事実、後の不破執行部も「全組織を上げて戦った責任ある行動だった」と述べている。
④不破氏は、「敵の出方次第で、武装闘争もありえる」(敵の出方論)という言い方をして、暴力革命論は否定していない。

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中核自衛隊 - Wikipedia

この5全協路線は、中国共産党が命令したもので、「中核自衛隊」や「山村工作隊」といったゲリラ部隊を作り、武器を取って敵権力を殲滅することを指令しています。
当時の文書ですが、むき出しの調子で暴力革命をせよ、と煽動しています。

「軍事組織の最も初歩的なまた基本的なもの、現在では中核自衛隊である。中核自衛隊は、工場や農村で国民が武器をとって自らを守り、敵を攻撃する一切の準備と行動を組織する戦闘的分子の軍事組織であり、日本における民兵ある。— 日本共産党第5回全国協議会「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」1951年(昭和26年)10月

なかなかスゴイでしょう。今の 共産党は一貫して平和闘争はしてきたとは言っていますが、実はこのような死人がでるような血なまぐさい闘争をしていた時期もあるのです。
もちろん失敗して自滅しかかって方針を転換します。
これを六全協路線と呼びますが、外に向けては「あれは分裂していた別の派閥がやったことだ」という言い訳をしました。
公安調査庁の先の見解は、そんな言い訳は通用しませんよ、と言っているわけです。

この苦しい言い訳を考えたのが不破哲三氏で、彼は志位和夫氏の前任者でした。
いまだ高齢ですがかくしゃくとしていて、共産党の奥の院に鎮座して院政を敷いているという噂の人です。

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不破哲三氏と宮本顕治氏

今の共産党の考え方の基本を作ったのが、この不破氏です。
志位氏は21年間トップを続けていますが、不破氏など48年間も君臨していました。
普通の政党では考えられないような長期政権ですが、なにぶん共産党はミニ共産国家ですから開かれた党首選などいまだかつて一回もしたことがありません。
もっとも不破氏自身も宮本顕治氏の院政に支配されていました。
このようにひとりに権力が集中しやすい構造も、共産国家によく似ています。

とまれこの不破氏が、弟の上田氏と書いた本が『マルクス主義と現代イデオロギー』で、ここに有名な「敵の出方論」が述べられています。

「『暴力革命唯一論』者の議論は,民主主義を擁護する人民の力を無視した受動的な敗北主義の議論である。
しかし,反対に『平和革命』の道を唯一のものとして絶対化する『平和革命必然論』もまた,米日支配層の反動的な攻撃にたいする労働者階級と人民の警戒心を失わせる日和見主義的『楽観主義』の議論であり,解放闘争の方法を誤まらせるものなのである」
(不破哲三著「日本社会党の綱領的路線の問題点」)

不破氏の文章は、左翼内にしか理解不能の隠語で書かれていますので、ナニを言っているのかすこぶる分かりにくいのですが、要はこういうことです。
暴力革命だけでなんとかなると思うな、かといって議会を通した平和革命にだけ甘んじるのは、敵階級に対する警戒心を失った日和見主義だ、そんなもんに染まるな、常に暴力革命をする準備をしておけ、ということです。
ですから素直に読めば、普段はおとなしく議会を通して勢力を伸ばすことに専念しても、革命の時来たらば、武器を手にして立ち上がれ、ということになります。

おお、なんてデンジャラス。まるで過激派じゃん、と思われるかもしれませんが、過激派のルーツは共産党です。
今の過激諸派はすべてが共産党から分かれたものです。
60年安保の後に飛び出した連中は、大部分が学生共産党員でしたが、共産党が暴力革命路線を放棄したこと日和見主義だとして飛び出したのです。
まぁ今から見れば、当時の共産党は、天皇は認めず、自衛隊も認めず、与党の言うことはあらかじめ全部反対、資本主義打倒、というバリバリの極左政党だったのですが、暴力闘争を止めたということで、今度は左翼業界内では日和見主義扱いにされたのです。
こういう左翼業界の空気が生まれたために暴力革命を全否定しないで、とりあえず今はやりません、ていどにボカしておいたというのが「敵の出方論」です。

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したがって、共産党が今は暴力革命など考えていないというのは、その限りでは間違いではありませんし、綱領に暴力革命と書いていないのもそのとおりです。
先の八代発言の間違いを強いて探せば、「綱領に書いてある」と言ってしまったことで、今の綱領には書いてありません。
では書いてないから、共産党にキッパリと暴力革命の要素はないかといえば、 それはウソになります。
だって、書き換える前まで自分はマルクスレーニン主義の党だと綱領で書いていたわけですし、この思想はそもそも暴力革命の思想のルーツなのですから。
これは共産党もわかっていて、76年の第13回臨時党大会で「マルクス・レーニン主義」という言葉を、「科学的社会主義」という造語に書き換えています。
ただしここでもマルクスレーニン主義を清算する、とはひと言も言っていません。
つまり戦前期と1950年代の暴力闘争は「敵の出方論」で化粧直しし、マルクスレーニン主義には言葉の言い換えで凌いだのが共産党なのです。

もう少し細かくみておきましょう。
戦前から戦後の5全協(全国協議会)までの共産党は、日本のマルクスレーニン主義のバチカンはオレ様だという宗主意識を持ち続けていましたから、ガチガチの暴力革命論者でした。
ちなみに日本共産党は、当時のソ連が日本に共産党をコミンテルン日本支部として移植したのです。
カネから方針まで丸ごとソ連直輸入でした。武器までもらっていたようですから、丸抱えです。

戦後も、先程述べたように中国共産党の指令で朝鮮戦争の後方だった日本でさんざん暴れ回り、爆弾や火炎瓶を投げていたのですが、結局国民から孤立して壊滅に追い込まれました。
当時、共産党が国民から大変に怖がられていたのはそのせいです。
この暴力革命に走った連中のクビを「分派」と呼んで切り捨てたのが、今につながる宮本-不破-志位の流れです。

きちんと清算し切れなかったのは、共産党の無謬神話が崩れてしまうためです。
オレたちは日本でいちばん古い老舗左翼だ、戦争に唯一反対した革命党だ、一貫して過ちを犯したことがない、というのが権威の源泉でしたからね。
なんといっても共産党とは、左翼の世界のバチカンで、そのトップは赤い法王なのですよ。
赤い法王が私は過ちを冒しました、なんて口が裂けてもとは言えないでしょう。

そこで苦しまぎれに出したのが先に述べた不破氏のひねり出した「敵の出方論」という便法です。
武装闘争は止めたとはいっているものの、それは「一時停止」にすぎず、議会だけに頼るのは日和見だ、敵の出方次第でまた暴力闘争もやるからな、平和的闘争だけで済ませようなんて日和見主義だ、と言っているのですから、まったく暴力革命路線に対する反省がありません。

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共産党に「アレルギー」? その正体とは | 特集記事 | NHK政治マガジン

もちろんこれは苦しい言い訳にすぎませんから、いままでも言われ続けてきました。
その都度反共攻撃だとか、デマ宣伝だとか言って噛みついてきたのでが、ならばきちんと清算すればいいだけのことです。
自分の暴力革命路線が日本では受け入れられず、国民から浮き上がって自滅したのですから、六全協が終わり宮本派に権力が移行した時点で、暴力革命決別宣言を出し、自分らがやらかした暴力闘争に対して国民にちゃんと謝罪して、二度と暴力は用いません、と言うべきでした。
ついでに「日本共産党」という血と暴力に彩られた党名も変更して、党改革を行い党首選挙が可能な執行部体制を作るべきでした。
そうすれば、晴れて新しい国民政党として生まれ変われたのです。

なぜできないのかと言えば、それは院政政治だからです。
不破時代には宮本氏が目を光らせており、志位時代には不破氏が頭の上に乗っていました。
だから変えられない。
「革新」勢力どころか自己変革がまったく不可能な、国政政党で最も古臭い保守的体質の持ち主がこの共産党なのです。

このていたらくですから、内部ではあいかわらずマルクスレーニン主義そのものの階級闘争論が幅を聞かせています。
元共産党区議だった松崎いたる氏は内部資料を公開しています。

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そこには古式ゆかしく左翼隠語を散りばめてこう述べられています。

「現在の警察は政治警察であり、二十六万の警察(敗戦時でさえ七万人)が、常時、日本共産党を監視下におき、攻撃の機会をねらっている。
警察法にいう「公平中立」など空文で、日本共産党対策こそかれらの本質。そもそも国家権力の支配の根幹に、権力としての強制力(警察、軍隊、装判所・監獄、徴税 機構)があることを常に念頭におく。「和解」できない階級対立がある」
(1992年版『選挙・政治活動と党防衛のたたかい』)
流出!日本共産党の教育資料を公開「警察は攻撃の機会を狙う、階級闘争の不可避、和解できない階級対立」

今どき権力=暴力装置論もないものですが、共産党内部ではいまでもそう考えているのです。
ズレきっているというか、国内の北朝鮮みたいですね。
私も大昔零細労組の書記長をしていた時に、共産党の勧誘を受けましたが、今まで覆面でいた人が急に名乗りを上げるんですから、ここは秘密結社Xかと思いましたよ(笑)。
こういう外部に開かれない秘密体質は革命党の名残りですが、いまだにぜんぜん変わっていません。

それはさておき革命党的体質でも、今は暴力革命はする気などありません。
だって、やるもやらないもできませんもん、そんな危ないこと。
党員も「しんぶん赤旗」も減る一方で、残った党員は見渡せば老人ばかり。
たまに青年が入ってくると、もう金の卵扱いです。
しかも親が共産党員という世襲党員です。
だからSEALDs が登場した時に、一番たまげたのは共産党でした。
共産党が把握していないところから飛び出したからです。

筆坂氏が言うには、一昔前は選挙といえば地区の民青が数百人集まったというのに、いまや片手の数も集まらないということです。
これで暴力革命なんぞできる相談ではない。
だから「敵の出方」もなにも、暴力革命なんかやりたくてもできない、というだけのことです。
私も何人か現役共産党員を知っていますが、みんな失うものは鉄鎖以外イッパイあるという人たちばかり。
支持者も何人か知っていますが、高級住宅地に住み、高級外車を乗り回しておられます。
彼らが銃や爆弾で武装するなんて、地球の回転が逆になってもありえません。

ならばイタリアのように共産党という重い看板を置いて、普通の左翼政党になればいいのですが、それもできない。

「筆坂)今まで一貫して、「変えたらどうか」という人がいっぱい出てきました。私がいたときは共産党の支持者ですら言いました。「名前を変えたら、俺たちは周りにもっと支持を訴えやすい」と。そういうことを言う後援者の人もいっぱいいました。でも共産党は必ずこう言っていたんです。「名前は変えません」と。「政党が名前を変えるのは、過ちを犯したときだけだ」と。「我が日本共産党は過ちを犯していないのだから、変える必要はない」と」
元日本共産党議員から見た、現在の共産党 | 須田慎一郎のニュースアウトサイダー | ニッポン放送 ラジオAM1242+FM93

「党が名前を帰るのは過ちを犯した時だけだ」って、ナニ言ってんのか、犯したでしょうが。
1950年代、暴力革命路線に走っていたのはどこの党だったのでしょうか。
1960年代の末、学園紛争でこん棒を握って内ゲバに狂奔していたのは、どこの誰だったのか。
つまりは名前を変えていないというのは、あれら暴力闘争はすべて正しかったということなのです。

というわけで、自己浄化ができないのでいつまでもフツーの国民政党に生まれ変わることができず、いまだに公安調査庁からは破防法調査対象とされ続けているのです。
まぁ、これも身から出たさびというものでしょうか。

 

2021年9月16日 (木)

高市氏の敵基地攻撃論について

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速報。北が弾道ミサイルを発射し、我が国EEZの外に落下したようです。
変則機動を描いたようです。
弾道ミサイルですから、国連制裁決議違反です。

「北朝鮮が15日午後に中部の内陸から朝鮮半島東側の東海に向けて発射した2発の弾道ミサイルは3月25日に発射されたものと同じもので、北朝鮮が改良を進めているロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版と呼ばれる「KN23」だったことが複数の韓国政府筋の話で分かった。
3月に発射された短距離弾道ミサイル2発は、東部の咸鏡南道付近から東海上に向け、約600キロ飛行した。高度は約60キロだった。軍関係者は当時、同ミサイルをKN23であると分析した。
軍当局は北朝鮮がKN23の射程距離を伸ばし、精度を上げるなど、改良を続けているとみている。
この日発射された短距離弾道ミサイルは、約60キロまで上昇し、800キロ飛行した」(聯合9月15日)

さて高市氏がなんと、選対本部の立ち上げ発足式に国会議員39人、代理出席合わせ71人が参加しました。
これはすごい。しかも駆けつけた面々が、古屋圭司、有村治子、山田宏、長尾敬、山谷えり子、城内実、杉田水脈などの猛者ばかり。
すでに青山繁晴氏は推薦人として名を連ねていますから、党内保守の総結集という壮観な眺めです。
この人の中には選挙の顔になるから支持するなんていう、自己チューはいません。
「出たからには勝つ。覚悟を持って戦う」とは高市氏の弁。 

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この71名は中間集計であって基礎的数字ですから、まだ半数以上の議員票が固まっていない状態でのこの数字の意味は大きいと思われます。
一部では議員票を100票以上を固めたという情報もでており、党員票も地方票も16%(約100)という数字を合わせると170票となります。
なんとか2位につければ、決選投票に望みを託せます。

一方河野氏は、石破氏と同盟を組み、それに小泉ジュニアが乗るという勘違いカルテットトリオが結成されました。
全員揃って鬼っ子ぞろい、というのも微苦笑させられます。
河野氏は麻生派から追い出されかかっている嫌われっ子、石破氏はもっとスケールが大きく自民党全体の嫌われっ子、小泉ジュニアは細田派の嫌われっ子、そして全員自分は人気者だと勘違いしているメンツが見事に勢揃いしたわけです。
全員太子党エリート揃いというのも、なかなか毛並みがよくてすんばらしい。
気になるのは連中が二階氏にすり寄っていることで、もし河野氏が勝利すると、河野-ゲル-二階という悪夢のトライアングルが完成する事になります。

気の毒なのは、河野氏と高市氏の狭間で埋没しかけている岸田氏ですが、面白いことに徐々に中間派からジリジリと右にシフトし始めています。
こうまで露骨にヒダリ陣営を河野-ゲル連合に作られると、対抗上岸田氏も本命の座を守るには高市氏と似たことをいわざるをえないようです。

河野-ゲル連合も、反原発や女系天皇論なんか言っていると議員票が逃げますから、せっかくの目玉政策なのに封じるはめに。
もういっそイージスアショアを潰したのはオレだ、北の弾道ミサイルの守りを裸にしたのもこのオレだ、とアピールしたらいかが。
野田氏がでるそうなので、河野支持が分裂してしまうかもしれません。悩ましいですね。

ちなみに、中国外交部報道官は「総裁選で中国をテーマにするな」と怒り、韓国メディアはもっとも好ましい総裁候補は石破氏で次が河野氏だそうです。はい、とっても参考になりますね。 (笑)

※高市氏の政策についてはこちらから。
【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗 | Hanadaプラス (hanada-plus.jp)
「新型コロナ対策、私ならこうする」→https://hanada-plus.jp/articles/795
「中国に日本の技術を盗まれないために」→https://hanada-plus.jp/articles/792
我が「NHK改革」具体案→https://hanada-plus.jp/articles/777

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さて高市氏の安全保障政策は合格です。
とくに経済安保について言及しているのが素晴らしい。
ただし一点、言いたいことがあります。
9月10日、自民党総裁選に出馬表明した高市早苗・前総務相はテレビ朝日の番組で敵基地攻撃論に関連して「電磁波で敵基地を無力化する」と語り、その具体策のひとつとして持ち出したのがEMP(電磁パルス)攻撃でした。

「自民党総裁選に出馬表明した高市早苗前総務相は10日のテレビ朝日番組で、 弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」の保有を巡り
「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」と述べた。
 同時に「向こうから発射の兆候が見えた場合だ。こちらから仕掛けたら駄目だ」と強調。
その上で「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」とも語った。」https://news.yahoo.co.jp/articles/7c02c0171b0a2fb8ac9ff5ffb486df9d1370ec9a

電磁パルス攻撃とは、EMP弾を念頭に置いているようです。
高市氏がどこで仕入れたのか分かりませんが、処理水もそうでしたが、これも一知半解です。
あなたにはこのような個別の兵器についてではなく、もっと大きな視野に立っての議論をお願いしたいのです。

まず根本的に勘違いなさっているのは、敵基地攻撃で北の弾道ミサイルを潰せないことです。
敵基地攻撃能力について言及しはじめたのは安倍氏の頃からですが、彼は具体的な方法についてはあえてふれずに大枠の議論をしようとしていました。
というのは個別具体論にはまってしまうと、すぐに無理だとわかってしまうからです。

敵基地攻撃というとイメージするのは、下の写真のような状況を事前に察知して攻撃し破壊するというものです。

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北朝鮮・咸鏡北道花台郡舞水端里の東海衛星

しかしこのような大規模な発射台を建設して、長い時間をかけて燃料注入するようなものは米国に届くような大陸間弾道弾(ICBM)であって、わが国を狙っているのは射程3000キロから5500キロの中距離弾道ミサイル(IRBM)です。
北のノドンやムスダン、中国のDF-21などがそれにあたります。
ノドンなどは小型のために移動式発射装置(TEL)からの発射が可能です。

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ノドン ロイター

上の写真がノドンですが、打ち上がれば米国のミサイル監視衛星がキャッチして通報しますが、その時には残り時間わずか数分で日本上空に到達しているはずです。
ですから、「敵基地攻撃能力」という言葉は本来不適当なのです。
基地という概念は固定目標ですが、現実のノドンは移動式発射装置に載った地上移動目標です。
常日頃は山中深く隠していますから、衛星による上空からの発見はほとんど不可能です。
したがって、それを発射前に撃破することは時間的猶予があまりにも少なく、技術的にほぼ不可能です。

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SCUD ALERT:スカッドハンター(湾岸デルタの軌跡その1)

実際に1991年の湾岸戦争では、中距離弾道ミサイル狩り、俗にいう「スカッド狩り」が行われましたが、延べ40日間継続され戦闘機が延べ約1500回出撃しましたが、結局88発がサウジ、バーレーン、イスラエルに発射されてしまいました。
戦後の調査では、これでもなお62発の弾道ミサイルと19両の移動発射機が発見されています。
このスカッド発射装置を発見するために、米英はSASやデルタといった精鋭の特殊部隊を送り込んでいます。

日本もこの教訓を踏まえるなら、山中の洞窟に隠匿されている弾道ミサイルをあらかじめ見つけ出さないといけません。
そのためには、レーザーで目標指示をする特殊部隊を投入しなければなりません。
ところがこの北の日本にとを射程に入れた弾道ミサイルの数たるや、下図のとおりで、ゲンナリします。

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 出典 Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea 2012 - U.S. Depertment of Defense
邦訳 http://obiekt.seesaa.net/article/358829852.html

日本向けとされるノドンだけで50基未満。しかもこれらは険しい北の山岳地域に陰徳されているのですから、どうやって見つけようというのでしょうか。
見つけ出さないことには、どこにEMP弾を撃ったらいいのかわかりません。
これらの発射基地を見つけ出すために、陸自の虎の子である特殊作戦群を事前に潜入させておくことが必要で、1ミサイル基地に1個分隊10人としも500人。
予備・潜入・帰還支援まで加えると、陸自の特殊作戦能力1000人の大部分を投入せねばなりません。
しかも彼らのかなりの部分は未帰還となるでしょう。
本来この特戦群がある目的は、国内のゲリラ・コマンド攻撃への対処、あるいは離島防衛や、邦人救出などの緊急の海外展開に備えるものであって、北の山岳ですり潰すためにあるのではありません。

また仮に発射拠点を発見したとして、EMP弾をどうやって北まで運搬するのでしょうか。
空自でその能力をかろうじて持っているのはF-2ですが、空中給油機や対レーダーや対空ミサイルを潰すワイルドウィーゼル(地上目標攻撃チーム)を含んだ日本版ストライク・パッケージを構成せねばならなくなります。
米軍の場合、このストライク・パッケージには1目標で約60機が使われますから、最低限で数百機を投入するストライク・パッケージが必要となります。
これは今の空自の能力全てに等しい規模ですから、日本の空ががら空きになります。
このように敵地攻撃は言うに易く行うに難しで、まじめに考えると空自と陸自の特殊作戦群のすべてを投げ込む覚悟が必要なのです。

ですからこんな中途半端な「攻め」を考えるより、弾道ミサイルが飛んで来るものを「待って」落としたほうがはるかに効率的かつ現実的なのです。
ところが河野のアホウがイージスアショア計画をブースターのドンガラが敷地の外に落ちるというくだらない理由で木っ端みじんにしてしまいました。
河野氏がしたことは、言葉の正確な意味で売国的です。
ちなみに石破氏は、F-2の生産計画を中座させ、防空に大穴を開けてくれました。まったくどうしようもないコンビです。

なお河野氏は敵基地攻撃については、移動式なので敵地攻撃は無意味だと言っていますが、そのこと自体は正解です。
ただならばイージスアショアをなぜ中止しにしたのか、その決断との整合性が問われます。
これでは河野氏はアレもダメ、これもダメといっているだけにすぎません。

高市さんにぜひ理解していただきたいのは、自衛隊にもっとも欠落している能力が、この戦力投射能力(パワープロジェクション)だということです。
自衛隊は世界的にみても上位にランキングされる実力を備えていますが、ひとつだけ大きく他国の違うのが戦力投射能力です。
遠距離への兵や物資の輸送能力、長距離爆撃機、戦略原潜などの保有が禁じられてきました。
海自は米海軍の補完的対潜水艦部隊であり、空自は防空に特化し、陸自はひたすら本土に上陸した敵を米軍来援まで凌ぐ、といった歪な「9条の軍隊」でした。

しかし現在の世界情勢は、国境内に引きこもっていればなんとかなるような硬直した考えでは、どうにもならなくなりました。
たとえば海自は南シナ海のパトロールを米国・豪州、さらには英国と組んで行おうとしていますし、すでに先行した試みが始まっています。
陸自も米国はもとより、英国、フランス、豪州などと共同訓練を行っています。
空自はいまや英国、豪州、インドとの共同訓練まで始めています。

このように新しい安全保障の流れは国境をいやがおうもなく超えて展開しているのです。
その時、自衛隊に要求される新たな能力こそ戦力投射能力です。
これはEMP弾という兵器ひとつで解決するものではなく、自衛隊のあり方全体についての再検討を含む大きなテーマです。
高市氏が安全保障問題の枠を経済安保まで視野を拡げられたことは画期的です。
ぜひこの大きなテーマを、狭くハードだけにこだわらず俯瞰で捉えていただきたいのです。

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「EMP弾構成システムの研究」 令和3年度 事後の事業評価:日本防衛省

EMP弾は、防衛省自身も述べているように、元来が狭い戦域でピンポイント的に使うものですから、離島防衛用であって、弾道ミサイル潰しに用いるものではないのです。
またEMP弾と衛星と言っていますが、意味不明です。衛星からの攻撃兵器などわが国は計画すらしていません。
敵地攻撃能力とは、こういう新しいハードでなんとかなる問題ではないのです。

いうまでもなく敵基地攻撃能力の議論は絶対に必要ですが、そのハードルは大変に高く、60年もの長きに渡って9条下にあった従来の自衛隊の能力を大きく超えています。
ただし、敵基地攻撃能力の議論とはすなわち戦力投射能力の問題のことですから、それ自体に抑止効果があります。
日本は絶対に反撃してこないとなめきっている国々に対して、わが国がそれを事前に食い止めたり、あるいは相応の報復を覚悟せよ、というメッセージを送ることには大変に意味があります。

ぜひこれに懲りることなく、外交・安保部会の議員たちと検討を続けて下さることを期待します。
そうして安全保障のよい専門家スタップを、ぜひ陣営に加えることをお勧めします。
3人の候補中で、唯一まともな安全保障論議ができそうなのは、貴女ひとりしかいないのですから期待しています。

 

2021年9月15日 (水)

河野氏がやったあまりにも彼らしい失敗とは

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北朝鮮がトマホーク型の巡航ミサイルの発射実験に成功しました。
北朝鮮は9月13日、国防科学院が9月11日と12日に新たに開発した新型の長距離巡航ミサイルの試験発射に成功したと発表しました。
発射された巡航ミサイルの機動は、楕円と8の字型の2種類で、2時間6分20秒かけて1500kmを飛行し目標に命中したと発表されています。
推進機はターボファンジェットエンジンで、速度は亜音速です。

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北朝鮮、新型の長距離巡航ミサイル発射実験に成功…朝鮮中央通信

発表された写真をみるとトマホークに酷似しており、どこかで現物を手に入れてリバースエンジニアリングでコピーしたのかもしれません。
おそらくは米国から盗んだ中国版トマホークの技術流出のようです。
コピー品のそのまた孫の海賊品というわけですが、独自の手直しをしているはずです。

とまれ北は、これでリクツのうえでは日本全土を精密攻撃できる巡航ミサイルを手にしたことになりますが、実用になるかどうかはこれだけではわかりません。
また、発射装置は上写真左に見えるように装輪移動式発射装置(TEL)で、5つ発射筒がついていますから、北の国内のどこからでも撃てます。
明日の記事で敵地攻撃能力について書く予定ですが、この移動式が北の発射方式だということを頭に入れておいて下さい。

なんのために国民にメシも食わせられない国がこんなものを作っているかといえば、彼らなりの合理性があるようです。
ひとつには、いまやアフガン、南シナ海、尖閣の緊張で、すっかり埋没キャラになっている北を、米国に思い出してもらうことがひとつでした。
あいにくバイデンには、「挑発とは思わない」と早々とコメントを出してしまい、ガン無視されてしまいました。
まぁ、自分の国のコピー品飛ばして脅されてもねぇ。
それにトマホークに搭載できるほど核兵器の小型化は進んでいないはずですから、破壊力もたかがしれています。

もうひとつは、たぶんこちらが主要な動機のはずですが、国内を引き締めるためです。
北という国は、常に米国と緊張関係を作っていないと体制が持ちません。
すべてが戦争を目的として作ってしまった軍事優先国家のために、敵から相手にされないのが最も困るのです。 
なんのことはないだだっ子と同じですから、黙らせるにはトランプのように直接会談してやって核兵器開発を凍結するしかないのです。
この間、正恩がおとなしかったのは、トランプがかけた3回目会談の魔法が効いていたからです。
やれば御破算ですから、長距離弾道ミサイル実験はしません。
だから、またやってくれないと、スネちゃうぞといったところです。
それにしても、北も南もうるさい半島です。少しは静かに生活できないのか。

 

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河野防衛相「イージス・アショア」配備断念|日テレNEWS24

さて、このところ忘れられていたようですが、総裁選ではからずも再浮上したのが、弾道ミサイル防衛(MD)です。
河野氏はかつてのイージスアショアを中止したこと、高市氏は弾道ミサイル発射基地を潰すための電磁パルス弾を上げたことでした。
高市氏については明日に回しますが、河野氏のほうはいまでも説明を果たしていないという批判を浴び続けていました。

「河野大臣は「当初、防衛省としては、ブースターを演習場内に確実に落とせると認識していた。その後、日米の協議の中でどう変わっていったのか、プロセスはきちんと確認しなければならない」と述べ、断念に至った経緯を検証する考えを示しました。そして「日米の技術的協議なので、文書は機密扱いになっている。どう国会に説明するかは考えさせてほしい」と述べました」(NHK 2020年7月20日)

防衛省は、それまで山口県萩市にある陸自むつみ演習場に配備される予定のイージス・アショアについて、SM-3ブロック2Aが発射される際に切り離されるこのブースターが周辺の民家などに落下しないよう、風向きなどを計算したうえで軌道を修正し、むつみ演習場の敷地内に落下させると説明してきました。
しかし敷地内にブースターを落下させるためには、SM-3ブロック2Aに対する本格的な改修が必要で、そのための改修費用や期間を検討した結果、配備プロセスの「停止」したと河野氏は説明しました。

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陸上イージス、計画を停止 河野防衛相「コスト鑑みて」:朝日新聞デジタル

実際は「停止」ではなく中止で、ただ言葉を柔らか言い換えただけのことですが、これで日本のMDは御破算となってしまいました。
こんな大きな防衛案件をぶっ止めたのですから、しっかり代案をがあるのかとともいきやなし。
その時はもう河野氏は防衛大臣は辞めて、ワクチンにまっしぐらで、どこ吹く風のご様子。
ぶっ壊しておいてしらんぷりはないでしょう、河野さん。

彼が辞めた後に、海上にSM-3ミサイルの発射基地を置こう、いや専用のMD艦を配備はどうだ、いやいやイージス艦をもう一隻作るべきだ、と迷走したあげく、いずれも帯に短し襷に流しで、決定打に欠けたままです。
一番有力なのが、ならばいっそもう一隻イージス艦を作るという案らしいですが、元海自海将の伊藤俊幸氏にいわせると、「こんなプカプカ海上砲台みたいに浮いていると、船乗りの能力が落ちるだけ」なのだそうで、イージス艦のもっとも非経済的、かつ馬鹿げた使い方だそうです。

そりゃそうでしょう。こんな新鋭艦を離島防衛に使わず、いつ来るかわからない北の弾道ミサイルに備えて、いつも日本海に浮かべておくのですから、ああ、なんてゼータク、いやもったいないこと。
だからいろいろとクリアせねばならない課題があったとしても、最初の陸上配備型イージス(イージスアショア)がもっとも優れた案だったのです。

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イージス・アショア配備停止「地元や国民におわび」河野防衛相 |

そもそも河野さん、核ミサイルが落ちたら、瞬時に数十万の人が死ぬという時、ブースターのドンガラが敷地から外に落ちるほうが大事でという神経がとち狂ってます。
これではまるで安全安心が一点でも曇ったら、築地移転は撤回だと言った某知事と同じレベルです。
河野氏の前任者だった小野寺五典・元防衛相はこう述べています。

「(小野寺元大臣は)「飛んでくるミサイルを打ち落とす際、ブースターや破片などがどこに落下するかは通常、考慮されない。ミサイルや爆撃機が落とす爆弾と、打ち落とした後の破片などとどちらが怖いのかといえば、当然、前者だろう」と指摘している。
また、いざ情勢緊迫の有事の際は、ブースター落下の危険性のある地域住民に対し、避難用シェルターを準備し、事前に避難してもらうというオーソドックスな代替策は考えなかったのか。 
筆者が東京特派員を務める英軍事週刊誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』のロンドン在住のベテラン編集長やデスクは河野防衛相の説明を聞き、「ブースターの落下問題が中止の理由とは信じられない」と一様に声を上げた。他に、元米海兵隊出身の知人も「イージス・アショア中止の決断の理由は他にあるはず」と今も疑っている」
(高橋浩佑 論座2020年6月30日)
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020062900004.html?page=2

ブースターが演習場敷地内に落ちるの落ちないのって、あんた原爆が頭に落ちて来る時に、空ッポのブースターのほうが心配だからイージスアショアの全計画を中止するというのですから、力なく笑うしかありません。
だれがそんな権限を彼に与えたのでしょうか。

理由自体がまちがっています。
そもそもその時には周辺市街地は無人なのです。
頭の中で、イージス・アショアからSM-3ブロック2Aが発射されるのはいつか考えて見てください。
それは日本に対して弾道ミサイルが飛来すると予測された時点ですね。
突然、いきなり飛来するということは考えられません。
それは日本に対して武力攻撃が行われるという事態が発生したときです。
軍事攻撃、特に核攻撃はこういった段階を踏んで始まるとされています。

●国民保護法が準備される段階 防衛省
①国際情勢の緊迫化。
②警戒している対象国が軍事行動の準備に入ったと確認。
③日本に対しての攻撃が予想。

これらの条件が認められれば、日本政府は国民保護法などに基づいて、攻撃を受けるおそれがある都道府県の知事に対して住民の避難措置を命じます。

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防衛省

つまり、このイージス・アショアが使われる時は、予定地の周辺市街地は無人なのです。
仮に約70㎏のMk72ブースターが敷地外に落ちても、落ちる場所は無人で誰もいません。
ブースターの殻が落ちると騒いでいたのは、市民団体なのです。
反対派の理由を丸呑みして、それを中止理由にするとは呆れます。

河野氏は敷地外にブースターの殻が落ちないように改修するためにはウン百億かかって、時間もかかりますと官僚から言われて、例のプッツン病を発症したのでしょう。
そして元来が緊縮財政体質ですから、こんな金食い虫なんかいらんと短絡してしまったといったところでしょう。
他にも理由があったという説はありますが、そもそもこういう基幹的な安全保障事案を、いかに所轄の大臣だろうとひとりで勝手に白紙にすることは許されません。

白紙化したいなら、まずは河野氏よりイージスアショアについてよく経過を知り、該博な知識を持っていた前任者の小野寺氏と相談すべきでした。
そして党内の外交-安全保障部会にかけて討議してもらうくらいは常識です。
同時に防衛官僚や制服組と討議を重ね、その結果を持って時の首相の安倍氏に話をするていどはするべきだったでしょう。
まぁ、そういう順序を踏むと絶対に大反対されたはずですが。
そのプロセスを全部飛ばして、いきなり記者会見で中止ですから、こうまで政府の意志決定プロセスを飛び越える人を見たことがありません。

非常に独善的な怖い体質です。
よく安倍氏が解任しなかったな、と思います。
盟友の麻生氏の秘蔵っこだから目をつぶったのかもしれません。
だとするといま安倍氏の目に、盟友の制止をはねのけ、政敵と同盟を結んで突っ走る河野氏はどう写っているのでしょうか。

というわけで、河野氏が自慢する「突破力」が悪く発揮されるとこういうことになります。
とうぜん党内ではボロカスで、特に自派閥のベテランたちから、だからお前はダメなんだ、総裁選なんか10年早いと怒られたようです。
これは正しい指摘ですから、これを古参vs若手の対立にすり替えてはいけません。
河野さん、こういう悪い癖を直さないと宰相にはなれませんし、なっても短命ですよ。

それにしても河野氏が総理になったら、初めの一年はおとなしくしていても、2年目くらいから六ヶ所村の核燃料リサイクル施設の解体くらいはやりそうです。
しかも与党に計らず、いきなりある朝突然に、です。

 

2021年9月14日 (火)

河野・石破同盟、結成さる

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河野氏が石破氏に協力を要請したようです。
これで河野氏は無派閥となりました。
麻生派の支援と石破氏人気を秤にかけたのでしょうが、この判断どうなることやら。
憮然とする麻生氏の顔が目に浮かびます。
これで麻生氏は、次には首相にしてやるかくらいに考えていた河野氏と手切れをしたことになります。
麻生爺さんが大嫌いな石破氏と組まれてはヘルプレスです。

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速報】河野氏が石破氏と会談、総理就任した場合の協力要請|TBS NEWS

自民党総裁選への立候補を表明している河野太郎行政改革相は13日、立候補を検討中の石破茂元幹事長の衆院議員会館事務所を訪ね、支援を依頼した。20分の会談後、河野氏は周囲に「(石破氏に)総裁選後は衆院選参院選もある。『もし私が総理総裁になったら力をお貸し下さい』と伝えた」と打ち明け」(朝日9月13日)

河野氏は石破氏との会談で「党運営や保守のあり方について完全な一致をみた」そうでから、もう捨て身ですね。
「同盟」を結ぶことで、党内左派を形成したとはっきり他派閥から認識される事になります。
これで保守の高市-中間派の岸田-左派の河野という色分けができてしまいました。
このような色分けが、果たして若さと突破力を売りものにする河野氏にとって、得か損か、よく考えてみることです。

とまれこれで河野氏は石破氏に大きな借りを作った事になり、仮に当選した場合、石破氏を幹事長か副総理待遇で入閣させねばならなくなりました。
これはかつての第2次安倍政権の麻生氏の位置です。
これで河野氏は麻生派はもとより、自民支持の保守層のすべてと、自民党議員の過半数を敵にしてしまいました。
私も少額買っていた河野馬券を全部捨てます。ゲルがついてくるなんて冗談ではない。

石破氏は、自分は出馬を断念したようですが、それはたった20人の議員の推薦も集まらなかっただけのことです。
党内で極端に不人気だからです。
だから、出る出ないをジリジリ延ばし、党内で孤立無縁となりそうな河野氏の焦りを引き出し、晴れて「同盟」にこぎ着けたというわけです。
さすが泡沫派閥で、党内敵ばかりの中でサバイバルしてきた男らしく実に周到、かつ陰険なやり方です。
こういう陰湿なやり方をするからあなたは嫌われる。

その上に、麻生ジィさんに何度も止められたのに出たことで、ただでさえ悪かった自民党ベテラン勢からは、もうあいつだけはお断りだという空気が支配的だそうです。
同時に彼らは高市氏もライトすぎるとみているようで、岸田氏の可もなく不可もなく微温的なスタイルは「安定感がある」ということのよう。
となると大勢は、生意気な河野、右すぎる高市、結局、岸田支持が予定調和に支持を固めていき、一位となるのは確定的かもしれません。
すると、顔つきまで谷垣氏に似ているといわれる岸田氏ですから、あれに似たリベラル増税緊縮政権ができそうです。
う~ん、つまらん。

といっても党員投票では河野第1位という報道もありますから、まだなんとも言えません。
党員票は383票で国会議員票と同じですから、けっこうあります。

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「日本経済新聞社とテレビ東京は菅義偉首相の退陣表明を受けて9~11日に緊急世論調査を実施した。事実上の次の首相となる自民党総裁に「ふさわしい人」を聞くと河野太郎規制改革相が27%で首位だった。2位は石破茂氏の17%、3位は岸田文雄氏の14%で、高市早苗氏は7%の5位だった」(日経9月1日)

単純計算で河野氏は103票、岸田氏は53票、高市氏が29票となります。
これに石破氏の65票が乗ると168票となります。
そしてさらに若手議員票が丸々70票乗ると、308票で過半数は取れないものの、第1位ということもありえるかもしれません。
もちろん机上の計算ですから念のため。

仮に総理になれても、母体であった麻生派とは完全に断絶。
麻生氏は当然閣外に降り、派閥は入閣させないでしょうから、組閣は難航します。

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産経

またNNNの世論調査では、なんと高市氏が追い上げています。
これは日本テレビが実施した自民党員・党友を対象にした世論調査ですから、無関係な国民一般対象の世論調査数字とは違っています。
前出の一般的世論調査では、河野氏トップで27%は変わらないものの、7%の高市氏が一気に16%にハネ上がり、岸田氏に3%差まで迫りました。

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まぁいずれにせよ、高市氏はもとより、岸田氏、河野氏も一発で過半数は押えられないでしょうから、決戦投票は覚悟しておかねばなりません。
決選投票でものを言うのは派閥です。自由選挙は決戦投票までのこと。
決戦になっても所属議員にやりたい放題にさせていたら、派閥の存在理由がなくなります。

ですから、まず勝つために国民の後押しが要ります。
国民の間に風が吹かねば、党員票を獲得することができません。
ただ顔を売るだけではなく、政策討論会を何回もやって、自分の政策をしっかり国民に提示し続けるのが王道です。
ディベート力だけではなく、政策がただの総花的思いつきではないことを見せていただきたい。

特に耳をカッポじって候補者ディベートを聞くべきは、当選3回までの若手の連中です。
この人らが、なにを考えたのか派閥横断の会を作ったようです。
派閥を辞めて来るならそれなりにインパクトがありますが、半身のままでなにをやろうとしているのでしょうか。
発起人は福田元総理の息子の福田達夫氏。
祖父赳夫氏はあの「生命は地球より重い」と言ってテロリストを世界中にばらまいた人、父康夫氏は短期政権でなにもできずにやったのは中国寄りの外交だけといった情けない首相でした。
名前を聞いただけで、気持ちも萎えようというご先祖さんたちです。
父親や祖父は思いっきり中国寄りでしたが、なぜかその孫が安倍氏が率いる細田派にもぐり込んでいたから驚きました。
安倍氏は福田パパの政敵でしょうが。
今回、ジュニアがしたのは細田派の分断です。
なんと言って誘ったのかわかりませんが、16人を引き抜きました。
これだけ細田派の高市票をもぎとったのですから、中国は手を打ってお喜びでありましょう。


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その福田ジュニアが所属するのは細田派ですが、「党風一新の会」と自称し、このような謳い文句を掲げています。

「かつて政権の座を奪われ下野することとなったわが党は、その反省の下、党改革を実行し、 国民の信頼回復に努め、平成24年12月に3年3ヶ月ぶりに政権を奪還した。しかし、その後の安定政権が続く中で、 強引ともとられる政権運営や、 国民意識と乖離した言動や行動も散見されるなど、 「自民党はかつての反省を忘れて再び驕りが生じているのでは」 との批判も聞かれるに至った」

ナニを言っているのか分かりにくいので、翻訳します。
平成24年12月に勝利するまで、自民党は党改革を続けて民主的に運営されるようになったが、安倍が率いるに至って暗転した。
安倍は、「強引とも取られる政権運営」や「国民意識と乖離した言動」をして、党内を暗黒時代に落としたのであった。
しかしこの暗闇の中、密かにレジスタンスに燃えた若者らが連絡を取り合い、今ここに立ち上がったのであった、見よこの勇士、ジャジャン。(音楽高まる)

ただ惜しむらくは陳腐なんですな。
もちろんこれは安倍政権に対するよくあるあてこすりで、ゲル氏や野党が年中言っています。
福田ジュニアはモリカケサクラをやりたいのでしょうかね。
つまり、安倍独裁反対、モリカケサクラの説明責任を果たせと、ここまでは石破氏の主張とまったく同じで、ならばいっそ石破さん出馬して下さい、お願いしますと連呼すればよかった。

いや、いっそうそんなまだるっこいこと言わずに、自分から石破氏か河野氏の推薦人になったらいかがでしょうか。
推薦人は資格は党内規約ではこうなっています。

  • 2)立候補には国会議員20名の推薦が必要です
  • 総裁選挙に立候補できるのは、自民党所属の国会議員だけです。
  • 立候補には、党所属の国会議員20名の推薦が必要です。

と、これだけですから、20人くらいすぐに集まりそうなものです。
しかし、そこまで煮え切らない。
派閥横断して派閥的動きをしたら自己矛盾だというのもあるでしょうが、実際にそれをやってゲル氏が負けたら元の派閥にも戻れず、そもそも落選しているでしょうから関係ないか。
結局、これだけ集まっても決まったことは、派閥に押しつけられた特定の候補は押さない、オレたちは自由に選ぶ権利があるぞ、と言うだけのことです。
別に初めから自由選挙なんですけど(笑)。

この会の構成は、多い方から細田派16人、岸田派13人、麻生派と竹下派から各10人、二階派から6人、石破派4人、石原派1人、無派閥10人の計70名です。
ということは、細田派から16名が高市氏支持から脱落し、麻生派は逆に10名が河野氏に加わり、岸田派から13人が岸田支持をしないことになります。
つまりは高市不利、岸田不利、河野有利に動くわけで、となるとその心は河野さんガンバッてぇーということでしょうか。

やれやれ、困った坊やたちだ。
自分らが安倍氏が吹かせた風で当選した「安倍チルドレン」なくせに、安倍氏が磐石な党運営をしているときには押し黙り、こういう時になると一斉に「蜂起」する。
それもちゃんとした政治主張があればよいのですが、オレらは当落スレスレのDランクだから、「総選挙で勝てる顔にしろ」と言っているだけです。
それがこの坊やたちのいう「党改革」とやらの内実です。
なんて勝手で、腰が定まらない人たちだこと。

なんかこの連中、深いところで勘違いしているようです。
国民が総理・総裁に望むのは、「選挙の顔」じゃありませんし、「党改革」の顔でもありません。
そんなことは自民党の内部の事情。ただのあんたらの利害。国民の利害ではありません。
国民が望むのは、日本を愛し、慈しむ心を持ち、コロナを終息させ、経済をデフレから救い、中国の横暴に立ち向かうことのできる毅然とした人物です。

新人議員諸公が落ちようとどうしようと知ったことではありません。
今の衆議院議員は任期満了という珍しい経験をしてきたですから、少しはその間に地元で地道に基盤をつくればいいだけのことです。
福田ジュニアのように、地盤・看板・鞄を全部ワンセットで天与のものとできる人は例外中の例外。
こんなハーメルンの笛吹き男福田ジュニアが吹く反安倍の笛に率いられるていどのレベルなら、いっそこんな「風」で当選したような連中など全員落ちてくれたほうが国民のためです。

 

 

 

 

 

 

 

2021年9月13日 (月)

高市早苗氏への忠告

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忠告シリーズ2回目です。
高市さんだから、言っておくことにします。
福島の処理水放出の件は反対だそうです。高市さん、なんか勘違いしていませんか。
これが河野氏なら、さもありなんでオシマイですし、セクシー小泉は実際にもう言っています。
あらかじめお断りしておきますが、私は岸田、河野、高市の三候補の中で、高市氏がいちばんしっくりきます。
しかしだからと言って、なにもかも盲目的に支持する気はありません。

今回、増税うんぬんは、とりあえずまぁいいかにします。
というのは、コロナ禍の中で、増税できるような環境にないことは財務省ですらわかっていることです。
高市氏自身も「2%のインフレ目標を達成するまでは、プライマリーバランスを考えない」と言っています。
私もなんでもかんでも増税はダメと言っているわけではなく、景気が過熱気味になれば冷却剤としての金融引き締めや多少の増税もありえると考えています。デフレやコロナの時にやるなと言っているだけです。
ですから、とりあえず増税については置いておきます。

ところで、処理水以外の高市氏のエネルギー政策は大変に優れています。
高市氏は、原発の活用を明確に打ち出し、さらに天候で発電量が左右される気まぐれエネルギーである再生エネを否定しつつ、さらに今各地で問題となっている使用期限を過ぎた太陽光パネルの廃棄問題まで触れています。
そして火力や原子力の必要性を強調し、その原子力も地下に建設可能な小型炉や核融合炉などの開発に向けた大型投資を打ち出しています。
パチパチ。満点です。
※参考 高市早苗前総務相 自民党総裁選出馬会見 - YouTube

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朝日

ところがここまで旗幟鮮明にしておきながら、なんとしたことか福島第1の処理済水の海洋放出には消極的な態度をとってしまっています。
海洋放出は、政府の考えひとつですぐにでもどうとでもなる案件ですから、もし高市氏が今の考えのままで首相になられたら大変に困ります。
高市氏の反対理由は、「風評被害を払拭してから海洋放出をする。今の政府方針は順序が違う」ということのようです。
つまり説明をちゃんとしていないから、ダメだというのです。

高市氏の生の発言を聞いてみましょう。
※ニッポン放送「飯田浩司OK! Cozy up!」(9月10日放送)

高市氏は、飯田アナの「風評被害を払拭するための外交が先だ、とおっしゃっていますが、具体的に“ここまでやれば放出できる”というようなお考えはありますか?」という質問に答えて、こう返答しています。
正直これが分かりにくい。

「高市 いま、毎日水が流れて来て、汚染水になって行くという状況が続いています。そこで建屋に直接、止水工事を行う。雨が降りますと、上からまた水が入って来てしまうのです。そのために汚染水が増え、それをまた処理しなければいけないという状況が続いていますので、まず屋根の上にテントなどを張り、上から降って来るものを止める」

つまり高市氏は、施設に日々流入している水を止水しないとダメだと言っているわけです。
それもどうやら想定しているのは空からの雨のようですから、あれまぁ、というところです。
う~んそもそもそこから違うと思うぞ、高市さん。
建屋にいくらテントを張っても無駄です。
だって水は「上から入ってくる」んじゃなくて、「下から湧き出してきている」のですから。

水の出所は3カ所です。

①原子炉の冷却系の循環水
②汚染水貯蔵タンクからの漏水
③流入する地下水

高市氏か問題視する「上からの水」(雨水)の割合がどれだけあるか知りませんが、圧倒的に多いのは間違いなく地下水です。
あいにく福島第1原発は、山系から湧きだす豊富な地下水がある場所に建てられています。
建設時に地表から15メートル掘り下げて建設されたために、いっそう地下水が湧きだすことになりました。
平時はそのまま海に流せばいいだけのことですが、事故処理となると大きな問題となりました。
放射能がふくまれているからです。

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河北新報

ではどうするかといえば、今やっているのは施設手前に井戸を掘ってバイパスルートを作ること、施設を囲む凍土壁を作ってブロックすることでしたが、あまりにも地下水の流入量が多いために失敗しました。
どうやら高市氏は上から建屋に降ってくる水が重要だと思っているようですが、水のほとんどは地下水なのです。
それとも高市氏は、雨水を止めないと汚染水が増えると言いたいのかしら。
そうであったとしても、集まってさまざまな経路を経て行く場所は一カ所、それが汚染水タンクですから同じことです。
とっくに満杯になってしまったので、そこの処分をどうしようと言っているのですから、いまさら雨水がどうとか言われてもねぇ。

そして防水処理でなんとかなるというのも勘違いです。

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高市早苗氏の政策・世界観を分析する──「保守」か「右翼」か

「高市)建屋に直接、止水工事をするということは、技術的に可能であり、東京電力や事業者にも確認しています。これ以上汚染水を増やさないという取り組みを、まずしなくてはなりません。これが第1です」「止水をしていれば、2年間でタンクが満杯になるということはありません」

う~ん、違うと思うぞ。いままで、東電の技術陣は施設をぐるりと囲む凍土壁を作ったりしましたが、それでも満タンになってしまうのは、流入してくる水量が想定以上に多かったからです。

「東京電力福島第1原発で発生する汚染水が1日300トンから600トン程度に増加していることが18日、分かった。汚染地下水の海洋流出を防ぐ海側遮水壁の完成後、岸壁に近くトリチウム濃度が高い井戸「地下水ドレン」の水位が想定を超えて上昇。くみ上げて原子炉建屋に移送する量が増えたのが原因という」
(河北新報(2015年12月19日)

6年前には一日400~最大600トンの水が流入していましたが、今は確実に一桁減少しています。

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日刊工業 凍土壁

「東京電力は1日、福島第一原発1~4号機周囲の地中に氷の壁を造る「凍土遮水壁」について、放射能汚染水の減少効果の試算を公表した。2017年12月~18年2月初めの汚染水発生量は1日93トンだったが、凍土壁がない場合は189トンと試算し、発生量を半減させていると見積もった。
15年度冬に1日約490トンだった汚染水発生量の実測値は、凍土壁など複数の対策の結果、17年度冬には同約110トンと4分の1に減っている。」(日刊工業2021年9月13日)

高市氏は現地の福島第1の廃炉工事現場を訪問して、作業関係者と話をしたことがあるのでしょうか。
あれば雨水を止めることが現実的に緊急に必要なことなのかどうか、それは海洋放出に優先するかわかったはずです。

また、高市氏は漁業関係者の理解が得られないとも言っています。

あとは科学的な説明です。これはまだ皆さんに行き渡っていません。しっかりと処理した水について、放出が永遠にダメだということではなく、いまのままの状況だと、直接的な止水をしない限り、ずっと流し続けなければいけません。
これは全国の漁業者、下手をしたら農林水産業全体に大きな影響が出るので、納得感を得てからということです。納得が得られる科学的な説明がないまま、いきなり処理水の発表をしたものですから、全国漁業連合会も怒りますよね」

う~ん、これも実際に現地の漁業者と話あって、こう言っていますか。
魚連じゃないですよ、あそこは立場上言うことが決められていますから。

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処理水 海洋放出方針 福島県漁連「非常に驚がく」 改めて反対

福島第1付近の海水と魚のモニタリング数値は公開されていますし、「納得が行き渡っていない」といいますが、漁連は反対のボジション・トークをしているだけのことです。
魚連はとっくにタンクが満杯で、いつか放出せねばならないことくらいわかっていたはずです。
もしわからないで突然のことに寝耳に水だったら、現地を預かる生産団体としての適格性を疑われます。
しかし「非常に驚愕」して見せ、そのうえで風評対策を求め、なんらかの補償をもぎとらねばなりません。
それが魚連の仕事だからです。
そのためにまず反対を表明し、交渉のハードルを上げて見せたのです。

一方、口では言いにくいでしょうが、現場の漁業者は実は放出されても安全だとよくわかっているはずです。
私自身、すさまじい風評被害を受けた生産者のひとりでしたから、肌感覚で分かります。
私は2011年から12年にかけて、土壌や生産物の検査をし続けました。
福島の生産者に至っては、実に10年間の長きに渡って検査を継続しています。
これだけ長期でモニタリングしている現場生産者は、そんじょそこらの放射線の専門家以上の知識を実践的に持っています。
その福島の生産者が、トリチウムがなんであるか、IAEAの海洋放出基準がどんなものか、どのような影響が出るのか出ないのか、すべて分かっていないはずがありません。

彼らが反対しているのは、福島事故時に起きたメディアと反原発団体による風評被害で徹底的に痛めつけられたからです。
だから風評被害対策が必要なのは、わかりきっています。
ただし必ず騒ぐ者は騒ぐ。
一定数の人たちや、朝日、毎日、東京らのメディアが騒ぐのは避けられないのです。
かつて「福島に行ったら被曝します」「また奇形が出ました」と言っていたような「市民団体」に、いくら「科学的説明」などしても無駄です。
つまり漁業関係者はわかっているから、これ以上の「科学的説明」をしても無駄。
風評を流す運動家たちは、初めから聞く耳を持っていないからこれも無駄です。

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ましてや中韓に至っては、ジャパンディスカウントをしたいとい政治的思惑だけで言っているだけのことで、理解を求めること自体ナンセンスです。
他の徴用工訴訟や慰安婦問題と一緒で、放っておくしかありません。
やや問題となるのは、高市氏も言っている米国も拒否しているということです。

「高市)それから第2は、ステークホルダーの理解を得ることだと思っています。漁業者だけでなく、農林水産品全体に対して、世界各地で日本からの輸入制限をかけている国があります。
同盟国のアメリカに至っては、残念ながら輸入禁止ということで、それも南関東や東海にまで及んでいます。まず、この風評被害を払拭する。私たち日本人が美味しくいただいているものに対する風評被害を払拭するために、相当強力な外交が必要です」

米国がこういう馬鹿な措置をしているなら、外務省が抗議し続ければよいだけのことで、反対理由にはなりません。
高市氏の言い方だと、誤解されるのは自分が悪いからだ、と言っているようなものですから。
同盟国だから逆にしっかり抗議するべきなのです。
高市氏は米国議員のスタッフをしていたのですから、しっかりと理不尽には泣き寝入りせずに抗議することのほうがリスペクトされることをよくご承知でしょうに。
こういう人や国には、データーをきちんと公開して、このどこに問題があるのだ言ってみろ、と腹をくくらること、それだけです。

自分の知らないところで名前を使われたから傷ついた、みたいなヤワなことを言わないで下さい。
そんなことは政府内の連絡ミスでしょうし、政府方針に反しているのはあなたのほうです。

「高市)別の選択肢も含めて、きっちりと対応する時間はあります」

そんな時間はありません。ないからIAEAも放出を認めているのです。
この問題に関して高市氏にリアリティを感じません。現場の匂いがしないのです。
ぜひ高市さんは現場にいかれることをお勧めします。
廃炉作業を見て、現場が抱える問題を直に聞いていただきたい。
漁業者にも会っていただきたい。
その上で、処理水について発言する、それが保守政治家としての筋です。
高市さん、あなたは優秀なリアリストなのですから、こんな小泉ジュニアみたいなどこかで聞いたふうな空論を言わないで下さい。

 

2021年9月12日 (日)

日曜写真館 山頭火と歩く彼岸花の道

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この旅、果もない旅のつくつくぼうし  種田山頭火

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おのれにこもればまへもうしろもまんじゆさげ 種田山頭火

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うつりきてお彼岸花の花ざかり 種田山頭火

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いつまで生きる曼珠沙華咲きだした 種田山頭火

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ここを墓場とし曼珠沙華燃ゆる 種田山頭火

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なかなか死ねない彼岸花さく 種田山頭火

 

 

2021年9月11日 (土)

米国の徒労感と菅氏の辞任直前の訪米の意味

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河野氏やっぱり出るようです。まぁなるようになるさ、です。
高市氏が福島第1の処理水放出問題で中韓に利用されています。早く修正しないといけませんよ。

さて、菅氏が訪米するようです。

「菅総理大臣は、日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組みによる首脳会合への出席を念頭に、今月下旬にもアメリカを訪問する方向で調整に入りました。菅総理大臣は今月29日に投開票が行われる自民党総裁選挙への立候補を断念し、今月末に総裁の任期が満了するのに伴い退任することになりました。
こうした中、政府関係者によりますと、菅総理大臣は「クアッド」と呼ばれる日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組みによる首脳会合への出席を念頭に、今月下旬にもアメリカを訪問する方向で調整に入ったということです。
4か国の枠組みによる首脳会合はアメリカのバイデン政権が開催を調整しており、開催されることになれば、自由で開かれたインド太平洋の実現や新型コロナウイルス対策などをめぐって意見が交わされる見通しです」(NHK9月9日)

なぜ、今頃いくんだぁ、なんてや野党とメディアが騒いでいますが、決まっているじゃありませんか。
菅氏は総裁選の仕掛けはしっかりできて、予定どおりシナリオが動いているから行くのです。
これがうまく行かず派閥選挙になったり、岸田氏独走となったら、ちょっと見合せとなったかもしれません。
菅氏としては、ちゃんと河野氏に総裁レースの切符をプレゼントしたし、安倍氏は高市氏にも渡していますから、「横一線自由競争」の構図ができました。

そして予想どおり、いや予想を超える大盛況で、立憲なんかどこかにかすんでしまいました。
なんでも政権公約はモリカケ調査庁を作り、初代長官にゲル氏を当てるそうです。(うそ)
せめて、同時期に立憲が共産党、社民と合併して、党首選するくらいの芝居っけがあってもよかったのに、ああ残念。
枝野党首、レンホー副党首、志位幹事長、ミズホ政調会長、う~んナイスです。
とまれ昔のモリカケ一発芸を、いまでもやっている売れない芸人のようで、ああ、痛ましいこと。

いままでコロナと菅氏をくさすことしかしなかった、ワイドショーも自民総裁選一色。
誰がなっても、総選挙で自民が負けることは考えにくくなりました。
だから菅氏は、こころ安らかに最後の仕事を仕上げに訪米できるのです。

最後の仕事とは、いうまでもありませんが、対米関係の安定とクアッド固めです。
今回ただの訪米要請ならば、なんせコロナだからリモートでとか、いやおたくの国の大統領選と同じ総裁選のまッ盛りですから、などと言い訳ができたでしょうが、他ならぬクアッド4カ国首脳が直に顔を合わせる席に欠席というわけにはいきません。

もちろんバイデンがこの時期に、ザ・クアッドの首脳らを集めたのには訳があります。
アフガンの大失敗をリカバリーしたかったからです。
今や、バイデンは米国内で超党派的四面楚歌です。
いくらなんでもひどい、撤退は前から分かっていたが、あれでは20年間流され続けた米兵の血が報われないだろう、9.11のテロをさせない誓いはどこに行った、という素朴な国民の声で支持率は急降下してしまいました。

ただこのバイデンのアフガンの失敗が、彼固有の失敗かといえば、それは少し違うのではないかという見方もあります。
慶応の中山俊宏氏(国際政治学者)はこう述べています。
(『ぽきっと折れた アメリカの理想~アフガニスタン撤退で世界は?』 NHKウェッブ特集9月7日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210906/amp/k10013238831000.html

「これまでアメリカは「アメリカが介入すれば、介入された国を少しでもよくしていくことができる」という前提で、他国への介入を続けてきた。「市民社会を支え、人権といったもろもろの概念を定着させて、もちろんアメリカと同じような国に作りかえることはできないが、少しはよくすることができる」という発想自体は、非常にナイーブなものだが、その「ナイーブさ」がアメリカを国際社会に引きずり出していたとも言える」(中山前掲)

ここで中山氏は、「アメリカと同じような国に作り替える発想を持った米国」という言い方をしますが、私はその流れは米国型民主主義の輸出を続けた民主党特有の発想だと思っています。
元来、そのような誇大妄想的発想を共和党は持ちませんでしたが、それが持ち込まれたのはブッシュ・ジュニア時代にネオコンが持ち込んだ時期です。
ネオコンは元々極左だったような連中で、こんな輩を近づけるブッシュが馬鹿なのです。

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9.11米同時多発テロ 写真特集:時事ドットコム

そんなブッシュの時に9.11同時テロが起きてしまったために、ブッシュは大きく対テロ戦争にのめり込んでいくことになります。
これは正統的な共和党の考えからほど遠く、むしろ民主党の「米国流民主主義の輸出」路線をもっと極端にしたものでした。

同じ共和党でも、もしトランプだったら、と考えてみましょう。
トランプならアルカイダを追い詰め、ウサマビンラディンを抹殺するところまではブッシュやオバマと似たことをしたかもしれません。
3千人も殺されたテロに対して報復をしないわけにはいかないからです。
もししなければ、更に大きなテロを招き、多くの米国人がテロで死ぬことになります。
だから、ここまでは誰が大統領であろうと、やることは一緒です。

しかしその後にブッシュから対テロ戦争を引き継いだオバマが2期かけてやったのが、アフガンに米国流民主主義を移植することでした
これが余計です。
たぶんトランプならこんな算盤に合わないことはしなかったでしょう。
トランプにとって、アフガンの国づくりなどにはなんの関心もなかったはずです。

「2001年の9月11日以降は、非国家主体が提起する脅威にアメリカを中心に対処していかなければならなかった。相手は暴力的で過激主義を掲げる組織なので、力でねじふせてきつつ、その暴力的・過激的な主義が育つような土壌を少しずつ変えていく。ストレートに言うと、民主化とか人権という概念を醸成していくということ」(中山前掲)

このアフガンに「民主主義の土壌をつくるため」ために、米国が費やしたのはざっと2兆ドル(200兆円)!
大量の武器を与え、政府軍兵士を訓練し30万の軍を作ったと豪語しましたが、雲散霧消。
いかなる国よりも巨大な支援を与え、ひとりでメシが食えるようにと地下資源の開発まで含んだ経済計画まで作ってやっていますが、その利権はいまや中国の手に。
その成果は都市部における女性の人権が伸びたことくらいで、アフガンは少しも変わりませんでした。

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アフガニスタン南部カンダハル州で、…:アフガニスタン~泥沼の戦場 

そしてこんなことに国力を費やしていたために米国の脇腹からは出血が止まらず、今まで米国が守護神を努めてきたはずの海洋の自由航行すら、気がつけば中国が南シナ海を我が物で独占しようとしていました。
まったく脱力しますが、いくら戦略的要衝であり、かつ対テロ戦争で引っ込みがつかなくなったとはいえ、アフガンにかまけていたために中国の軍事侵攻を許してしまったのです。
ここまで中国に軍事超大国になられると、軍事バランスはそうそう簡単に元に戻りません。
いったん軍事的に実効支配された人工島は、軍事的に破壊しないかぎりなくなりません。
ウサマビンラディンを抹殺した10年前の時点でアフガン介入から離脱していれば、まだ中国の海洋進出は止められたのです。

中国が南シナ海に埋め立てに着手したのは、2013年のフィリピン領ジョンソン南礁が初めでした。
 時系列で追ってみましょう。

●中国の南シナ海人工島建設推移
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・2013年、フィリピン領ジョンソン南礁の埋め立てを確認。
・同年、建造物を確認。軍事基地建設か始まる。
・2014年11月、ファイアリー・クロス礁にも滑走路などを備えた人工島を建設開始。
・2018年9月、ミスチーフ礁には3本目の滑走路が完成。
・同年10月、ファイアリー・クロス礁、ミスチーフ礁、スビ礁で「気象観測所」運用開始を確認。

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          ファイアリー・クロス礁

このようになってしまっては、駆逐艦1隻2隻が中国が主張する領海を航行したとしても原状回復は非常に困難です。
人工島を撤去できたチャンスは、まだ建設端緒にあった2011年当初でした。
この時期に米国が断固とした対応をしたならば、中国は引っ込むしかありませんでした。
当時の中国の海上軍事力では、とうてい米海軍と対抗できなかったからです。
ウサマビンラディン追跡が一段落した2011年時点で、厳しい対応をすれば間に合ったのです。

今や対空ミサイル基地、爆撃機が離発着できる滑走路、空母が接岸できる軍港、そして無数の兵舎群、スポーツ施設まで完備した要塞島にまで成長してしまいました。
下の写真は2016年に撮影された中国が実効支配する南シナ海のパラセル諸島・ウッディ島の衛星画像です。
わずか3年間で中国が実効支配を完成させてしまったのがわかるでしょう。
同時期、
中国は大海軍の建設を開始しています。

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オーストラリア、中国の南シナ海領有権主張に「法的根拠ない」 正式

またこの時期、中国は軍事支出を膨張させ、米国に次ぐ軍事大国にのし上がります。

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防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|2 軍事

「中国は、2019年度の国防予算を約1兆1,899億元と発表した。これを前年度の当初予算額と比較すると約7.5%(約829億元)の伸びとなる。中国の公表国防費は、1989年度から毎年速いペースで増加しており、公表国防費の名目上の規模は、1989年度から30年間で約48倍、2009年度から10年間で約2.5倍となっている。
中国は、国防建設を経済建設と並ぶ重要課題と位置づけており、経済の発展に合わせて、国防力の向上のための資源投入を継続しているものと考えられるが、中国経済の成長の鈍化が今後の国防費にどのような影響を及ぼすか注目される。また、中国が国防費として公表している額は、実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられている」(防衛白書零羽元年版)
防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|2 軍事 (mod.go.jp)

続いて、米軍のアフガン介入の兵員数の推移を見てみましょう。
2010年前後にピークがあります。

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アフガニスタン戦争:米軍事介入の20年 写真3枚 国際ニュース ...
※クリックすると大きくなります。

よく「アフガン戦争20年」と呼ばれていますが、2001年から介入が開始されていますが、時系列で見たのが上図です。

●米軍アフガン介入兵力の推移
・2001年、12人
・2005年、2118人
・2010年、2784人
・2014年、3709人(ピーク)
・2020年、3035人

米軍の戦死者と民間の被害者も、同様に2010年前後にピークをつけています。

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アフガニスタン戦争における犠牲者数

そこで先ほどの中国の南シナ海侵攻の時系列表と重ね合わせて見て下さい。
中国がファイアリー・クロス礁人工島を建設したのと、米軍のアフガン投入がピークをつけたのが共に2014年です。
つまり、中国は米国がアフガンで深間にはまるのを慎重に見極めた上で、南シナ海の進攻を決意したのです。

ちなみに、2009年1月から2017年1月までがバイデンが副大統領を務めたオバマ政権です。
見事にアフガン介入のピーク時期と、その裏で進展していた中国の南シナ海人工島建設時期に重なっています。

このようにして、今や中国は米国史上最大の敵にまで成長してしまいました。
これもアフガンに首まで漬かり、南シナ海の要塞化を等閑視していたためです。
だから遅きに失したとはいえ、太平洋に戻るというのは、海洋国家米国としてまったく正しい選択なのです。
しかしいかに正しい選択であすうと、こともあろうに、「ポッキリり折れた米国」という形でやってしまったのが、余人ならぬバイデンというのもなにかの縁というべきでしょうか。

「アメリカは大きな「民主化プロジェクト」を、地球規模で放棄したとは言わないが、少なくともアフガニスタンでは放棄した。アメリカが理想として掲げてきたものが、「もうそれはやらないんだ」と、ぽきっと折れた。このことはアメリカ自身の「自画像」を、そして国際社会がアメリカを見る目線というのを大きく変えていくことになるだろう」(中山前掲)

バイデンがやらかしたのが、20年の泥沼が数カ月で足抜けできるはずがないのに、いたずらに撤退の功を焦ったことでした。

「“よいタイミング”ではなかったと思うが、バイデン大統領は、「自分のあとの大統領には引き継がない。いま終わらせるんだ」という強い信念で終わらせた。
国際的な問題について、「すべての責任を単独で引き受ける」という機運が、今のアメリカ社会では非常に弱くなっている。これはバイデン政権だけではなく、おそらくオバマ政権のときも、そしてトランプ政権でもあったことで、3つの政権を通じて見られる共通要素だろう」(中山前掲)

「強い信念」で、夜逃げのように逃げたからおかしくなったんです。
「民主化プロジェクトは米国の理想」ですか、うーんこれは主語が間違っています。
それはあくまでも民主党の理想であって、米国全体の主語ではありません。
それが失敗するべくして失敗して「ぽっきり折れた」てしまったのが民主党で、「今終わらせる」ことを急ぎすぎて失敗したのもまたバイデンです。

この海外に過剰に介入することを好む民主党と、それを拒否し米国の国益を第1と考える「アメリカファースト」の対立は今に始まったことではなく、第2次大戦の時にも、ベトナム戦争の時にもあった伝統的対立軸です。
 戦争をしたがるルーズベルトに対抗して、欧州の戦争に非介入を主張した共和党系きキャンペーン組織は、その名も「アメリカファート委員会」でした。
ベトナム戦争も始めたのは民主党のケネディで、終結させたのは共和党のニクソンでした。
そういえば、冷戦も終結させたのは共和党のレーガンでしたね。

トランプは、この民主党の、世界は改造しえるという迷妄と一線を画そうとしました。
トランプは民主党政権によって、米国が富と血を流出し続け、国力を著しく消耗してしまったと見ました。
トランプが「アメリカファート」と言って登場したのは、このような過剰なアフガン介入を終わらせるためでもあったのです。

「アメリカは特別な国ではないし、他の国と同じようにむき出しのナショナリズムで国益を追求させてもらう、アメリカが特に悪くなったのではなく他の国と同じになった」というのが、(トランプ大統領の)「アメリカ・ファースト」のメッセージの根底にあった」(中山前掲)

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カブール空港で大混乱 タリバンを逃れようと飛行機にしがみつく人たち

外交のど素人、デタラメばかりの野卑な奴と外交官上りの評論家から罵倒され続けたトランプのほうが、よほどましな国際感覚をもっていたわけです。
しかしそれはたった4年間で終り、引き継いだのが人もあろうにアフガンの泥沼に浸ってアジア・太平洋を省みなかったオバマの副大統領だったバイデンだったのは悲劇でした。
同じ民主党でもこの男でなければ、もっとましな撤収ができたはずです。
バイデンのアフガン撤収の失敗が後々米国史に特筆大書されるような類だったために、米国民に残されたのがなんともいえない徒労感であったとしてもあたりまえです。
今日の9.11同時テロ20周年式典に、バイデンがどのつら下げて遺族の前に現れるのか見たいものです。

そもそも論ですが、アルカイダのビンラディンを匿ったタリバン政権を許さないとしてアフガンに介入したこと自体が誤りでした。
タリバンはタリバン、ビンラディンはビンラディンです。
ビンラディンを草の根を別けても探し出し報復するところまではいいとして、どうしてそれを匿っただけのタリバンまでも敵として、20年間アフガンに関わらねばならないのか、私には理解できません。
ましてアフガンの国家改造をするなど余計なお世話です。
アフガン人にはアフガンの論理があり、いかにイスラム法が米国人から見て歪んだものであろうと、米国には無関係なはずです。

あげく、タリバンを軍事的に制圧できず、国家改造にも失敗し、タリバンに政権を譲って追い出されるハメになってしまいました。
これで徒労感が生まれ、米国民に「一体オレたちはこの20年間何をしてきたのだ」という虚無感が出ないほうが不思議です。

この米国を覆う徒労感をなんとかしないと、民主党がどうのではなく、米国という世界に責任をもつべき国家のアイデンティティが崩壊してしまいます。
バイデンもさすがこれに気がつき、大統領選時期には軽視していたクアッドに全力で当たることを宣言せざるを得なくなったのです。
それがリモートでできる4カ国首脳会談を顔をつきあわしてしようとしている、バイデンの下心です。

ただしだからといって、これは私たち日本にとっても悪い話ではなく、むしろアフガンの泥沼にどっぷり漬かってアジア・ピボット(アジア回帰)なんて言いつつなにもしない、オバマのほうがよほど悪質でした。
だから、いまはこのバイデンのSOS信号に乗ってやり、クアッドを固めることに力を貸すことが必要なのです。
元々安倍氏が構想したセキュリティ・ダイヤモンドが発展したのがクアッドですから、菅氏はよく理解していますからね。
菅さん、最後の仕事を頑張って下さい。
それにしても最後の最後まで、仕事師だね、菅さん。身体を壊さないように。

 

 

2021年9月10日 (金)

河野太郎氏への忠告

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床屋政談です。ところどころ滑っていますのでご注意ください。

さて河野氏が、麻生氏と3度会ったの会わないのとメディアで報じられる一方、麻生派の若手には河野待望論がフツフツと沸きだしているそうな。
これが河野さんの演出だとしたらなかなかです。
これでは麻生さんが、若い麒麟を馬小屋につないでおきたい因業ジジィに見えちゃいますからね。
ですから、麻生氏がうんにゃといえばいうほど、河野待望論はメディアが増幅し膨張していきます。

現に若手議員らの河野応援会合もあったようで、彼らからすれば、くすんだ印象の岸田氏や知名度が低く安倍氏に近い高市氏よりも、さっそうとしたところのある河野のお兄ちゃんになってほしいんでしょうね。年齢も近いし。
自分の選挙が楽になるし、派閥の小姑たちがうっとおしいからでしょうか。

一方ベテランは、自民党の総裁ルールを知らんのか、お前が今回手を挙げたら一気に若返りってしまって、オレらには未来がないって事になぜ気がつかんのか、バカヤローってなもんです。
ただ彼らの言うのも一理あって、ただの自分の保身だけではないのです。

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もし仮に、河野氏が派閥の反対を押し切って候補となり、晴れて当選したとしましょうか。
一体誰が政権の御輿をかつぐのでしょうか、麻生氏の反対を押し切って来ちゃうと麻生派の支援は受けられませんからね。
麻生の爺さんは当然のこととして副総理・財務大臣から降りるでしょうし、麻生派は閣僚をひとりも出さないかもしれません。
若手議員の御輿に乗っても、彼らは1回から3回議員ですから、閣僚適齢期はひとりもいません。
若いのはイキがいい分無責任なんです。

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若手議員、派閥締め付けNO 自民党総裁選「選挙の顔」熱望 - 産経ニュース

ヒヨコ議員らが集まって決めたのは、派閥に拘束されない自由選挙を要求だなんてナニを今さら。もうそうなってますって。
今回の総裁選挙の大特徴は、「派閥が統制しない横一列の自由選挙」なのですから。
そういうシナリオを菅さんが作っておいたのです。
第一、若手議員が団結してひとりを推したら、もう派閥になっちゃいますよね。あれ、変ですね、自己矛盾です。

というわけで、河野さんはめでたく総裁になれても、組閣に苦労します。
麻生派が難しいので、他の派閥から借りてくるしかないでしょうが、多派閥から借りるというのは借りを作ることてす。
その借りはなにかにつけて返済しなければなりません。
それは河野さんが自分の政策を進める時、折々に重荷となってくるはずです。

実はもう既に始まっていますが、自覚していますか。
昨日、河野氏は女性宮家を否定し、旧宮家の存続で異論がないと言うしかありませんでしたね。
また原発再稼働も容認に転じました。
これで河野さんの特徴的な政策は、ふたつとも消えてしまったことになります。
なぜでしょうか。それは他派閥の力を借りるには、持論を諦めるしかないからです。

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岸田氏、「改憲をしっかり考えていく」 - 産経ニュース

他の候補も似たようなもので、リベラル寄りだった岸田氏もモリカケ再調査を引っ込め、改憲を言うなどジリジリ右へ寄ってきています。
高市さんも増税なんて言えなくなるはずです。
このように総裁選で自由選挙に徹すればするほど、候補者間の政策の差異が消え、一種の平準化がなされるのです。
無責任に言えるのは石破氏のみ。
ナニを言おうと、自民党内での影響は皆無で、嫌われるだけのことで、出られないから好き放題言えるだけのことです。

というわけで、持論を通したければ「強い総理」になるしかないのです。
自分の派閥から推されず、ヒヨコ議員に押されるような総裁では、総理になっても自分の思うことはできません。
無派閥だった菅氏が支持母体がないためどれほど苦労したのか、河野氏は身近で見ているはずです。
最後に解任しようとした二階幹事長だって、彼の専横を誰も止められない菅氏が「弱い総理」だったからです。
弱い総裁が強い幹事長派閥に担がれてしまっていては、クビを切れません。

一強とまで言われた安倍氏を例にとりましょう。
安倍政権がどうして2822日も続いたのか考えたことがありますか。
もちろん政治家として傑出した手腕を持ち、特にほとんど天才的な外交手腕を持っていたからですし、女房役の官房長官が恐ろしいまでに優秀だったからでしたが、それだけではありません。
「敵を腹中に入れる」ことができたからです。

彼の任命した幹事長を見て下さい。
石破氏しかり、二階氏しかり、思想信条は正反対、政治家としてのタイプも真逆で政敵といっていい人たちばかりでしょう。
また閣僚も岸田派のオーナーでしたが、実に5年間も重要閣僚の外相に起用し続けています。
激務の外相をよくあれだけ続けられたと思います。
いつもはやや批判的な岸田氏ですが、それは評価しています。
安倍さんもたぶんその功績を認めていたから、後任に一時は考えたんでしょう。
それはともかく、安倍氏は彼ら政敵を重要閣僚や幹事長といった、やりようによっては危険なポストに使い続けます。

彼がこういう多派閥のオーナーを腹中に入れられたのは、彼が「強い総理」だったからです。
そのパワーの源泉は、自派閥である細田派の100人弱の勢力と副総理に据えた盟友の麻生氏が同盟を組めたからです。
二階派(47人)と岸田派(47人)を足しても細田派(97人)にかないません。
これではおとなしく安倍氏に仕えるしかないわけです。
安倍さんが首相だった時には、喰えない爺さんの二階氏も借りてきた猫みたいでしたね。
彼がイヤったらしい親中派体質をむき出しにしたのは、相手が菅氏だったからです。

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総理になる気持ちのない二階氏はともかく、岸田氏はなる気ムンムンでしたし、ゲル氏が総理の野心をもっていることなんか誰も知っていました。
しかし閣僚になった以上、安倍氏を支えるしかないのです。
ゲル氏さえあの気色の悪い声で、「私、安倍総理にお仕えしている身でございますから」なんて殊勝なことを言っていましたっけね。
この安倍氏の「悪企み」に気がついて、石破氏は幹事長を蹴ったわけです。
下手すりゃ飼い殺しになるかもしれませんからね。
こういう「悪企み」ができてしまうのは、ひとえに安倍氏が最大派閥のボスだったからです。

ことほど左様に、力のない総理は悲惨です。
菅氏のように実務が出来ても、誰も支えてくれません。
幹事長さえ党内ルールを守らないで好き放題をやり始めます。

麻生氏が河野氏に言った言葉がも伝わっていますが、ただダメといっているんじゃありません。
麻生氏は「短命に終わるぞ」と言っているそうです。これは重みがあります。
なんせ言った麻生さん自身がそれで涙呑んだ人で、その後に同じ負け組総理だった安倍氏と鉄壁の同盟関係を組んだ当人ですから。
河野さん、これは素直に親心ととるべきでしょう。
麻生氏は人情家ですから、こじらせると可愛さ余ってなんとやらになりますよ。

今回、石破氏という麻生の親父が大嫌いなキャラの支援をもらい、ヒヨコ議員の応援で総理になったとしても、どの派閥も新政権を担ぎません。
下手すりゃ丸裸。応援してくれるのは実力のない若手らと、議員と保守支持層から蛇蝎のように嫌われているゲルや野党とメディアくらいなものです。

総理になると、自民党ルールではだいたい政治家すごろくの上りと見られて、総理室に額が掛かるだけのポジションとなってしまいます。
つまり隠居。
ですから短命政権を若くしてやらかすと、後の長い人生を縁側で猫を抱いて過ごさねばならなくなるのです。
私は河野氏のキャラがけっこう好きですし、ネットでいわれている「左翼」という批評は間違っていると思っています。
うまくすると大化けするかもしれませんから、ここで短命総理でポンっと花火で終わって欲しくはありません。
まだ若いのですから、チャンスは今回限りだと思わないことです。

 



2021年9月 9日 (木)

タリバン内部抗争勃発

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私が床屋政談をしているうちに、アフガンではタリバンの内紛が始まってしまったようです。
やっぱり始まったか、ってかんじです。
一般的に言っても、米国という共通の敵を失うと、こういう武力にのみ頼ってきた連中は内部抗争に突入します。
おまけにこのタリバン諸派は、いずれも頭がガチガチな原理主義の輩ですから、その狭い「イスラム法」の真実の幅を争って血を流すことになります。

なぜなら、自分こそが「正義」であり、それを実行しているだけだからです。 
タリバン
は、一種の朱子学の名分論と似た発想をとります。
名分論とは、正邪の区別が何かを明らかにする考え方ですから、己の正義を相対化して考えることをしません。  

「朱子学がお得意とする大義名分論というのは、なにが正でなにが邪かということを論議することだが、こういう神学論争は年代を経てゆくと、正の幅がせまく鋭くなり、ついには針の先端の面積ほどにもなくなってしまう。その面積以外は邪なのである」
(司馬遼太郎 『街道をゆく(28)耽羅紀行』 )

つまり、自分たちが信じる「針の先端ほどの正義」以外は、すべて邪悪な間違いなのだから、間違いである以上は正さねばならない、それがイスラム法の正義を実行することだ、と思う教義が、タリバンらいわゆるイスラム原理主義者には元来あるのです。 

そのせいもあって、かねてから、タリバンは一枚岩とはほど遠いモザイク組織だと言われていました。
そして彼らタリバンは、アフガン独特の広大な土漠と険しい山岳の荒野に、点々と住んでいます。
部族が違えば、言語・風習も違います。
いちおう部族多数派のパシュトーン族が主導権を握っているようですが、対立する部族は好き放題に割拠し、それに加えて中東から逃げてきたISISやアルカーイダなど危ない連中まで武器を手放さないのですから、平和な統治なんてできるはずがありません。

当然のこととしてタリバン新政権の組閣はもたつき、報道官は早く国家承認を受けようと民主主義でやりまーす、女性の人権は守りまーす、ただしイスラム法の枠内で、などと言わねばならなくなっています。
まぁこのイスラム法自体がまったく女性の人権なんぞ認めていないので、つまりは認めないんですがね。
といっても、カブール市内ですら女性に笞打つ風景が目撃されていますが、日本のメディアによく登場する中東専門家たちは「新しいタリバンだ」なんてホロホロと喜んでいるようです。

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タリバンが「女性蔑視思想」を築いた3つの背景 | アジア諸国 | 東洋経済 ...

とまれなんせ今のタリバン政権を認めているのは、中国を筆頭に、パキスタン、イランなどのいかにもいかにものメンツばかりで、これではとても国際社会が認める国家要件を満たさないために「政権」づくりに懸命です。
ただし、一部のタリバンだけですが。

ちなみに組閣はこのようです。
首相は3代目指導者ハイバトゥラ・アクンザダです。この人物はイスラム法学者です。

「1996年から2001年にかけてタリバンがアフガンを支配した際、女は家にずっといろ、女は学校に行くな、女は仕事に行くな、家事と子育てだけやっとけ等々について、それがイスラム法的に正しいとお墨付きを与えてきたのがこのアクンザーダだと言われています」
(飯山陽note 9月8日)

バルダルが副首相、ハッカーニがなんと難民担当相手です。
今までアフガン難民を作りまくって来た男がね。
飯山氏はこのタリバン政権を、ズバリ「テロリスト政権」だと断定しています。

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ひとつの派が政権を作るために交渉をしていると、他派は交渉なんぞすること自体が背教だと決めつけ襲撃する。
政権を作って統治体制をととのえようとすればするほど、さらに過激な一派は不信を深めて、アルカイーダやISISなどに流れていくことになります。

そもそもタリバン指導体制でナンバー1の地位にいると見られるハッカーニ・ネットワーク(HQN)の指導者セラージュッディン・ハッカーニと、タリバンナンバー2のアブドル・ガニ・バラダルが不和でした。
このハッカーニは最凶最悪のテロリストで、アルカイダ系タリバンと呼ばれている武闘派です。
いままでこの男は、数えきれないほどのテロを行い、大量の人々を殺し続けてきました。
米国は指導者のハッカーニを長年追いかけてきましたが、とうとう下の写真のようにカブールに凱旋してしました。
まさに悪党の凱旋です。米国の腹は煮えくりかえったことでしょう。

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ジャラールッディン・ハッカーニ
カブールの路上で見られるテロリスト

公安調査庁のサイトによれば、ハッカーニはこんな人物です。

「シラージュッディン・ジャラールッディン・ハッカーニ(Sirajuddin Jallaluddine Haqqani)
3人いる副指導者の一人(2015年7月就任)。1973~1978年の生まれ。パキスタン北西部・KP州北ワジリスタン地区ミランシャー又はアフガニスタン南東部・パクティア州出身。パシュトゥン人カルラニ部族連合ザドラン族の出自。「ハッカーニ・ネットワーク」(HQN)(後述)指導者も務める。HQN創設者のジャラールッディン・ハッカーニの息子。
20代前半までは目立った活動はなかったが,その後,積極的に武装闘争に関与してきたとされ,現在も「アルカイダ」との関係を維持しているとされる。
国連安保理「アルカイダ」及び「タリバン」制裁委員会は,2007年9月,同人を制裁対象に指定した」https://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/SW_S-asia/taliban.html

一方バラダルは、タリバンの政治担当で、米国との撤退交渉を進めた人物です。

 

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バラダル

「バラダル師は2010年にパキスタンで逮捕され、身柄を拘束されていたが、アメリカの働き掛けで2018年に解放され、カタールへ出国しました。そこでタリバンの政治部門トップに任命されると、アフガニスタンに駐留する外国軍撤退に関する米軍との和平合意調印を見届けた」
(ベトナムの声放送8月22日)タリバン共同創設者バラダル氏、アフガン首都入り (vovworld.vn)

ハッカーニが純粋なテロリストならば、こちらのバラダルは政治交渉もできるタイプです。
米国との交渉の場に出てきたのは、このバルダル派です。
ここで勘違いしていただきたくないのは、日本の中東屋の多くがバラダル派のことを「穏健派」と呼び、女性の人権にも理解があるなんてトンチキなことを言っていますが、間違いです。
バルダル派も、ハッカーニ派と同じくにガチガチのイスラム原理主義者にして暴力の信奉者であることは一緒です。
ただ向きが多少違うだけです。バラダル派は交渉もできるタイプのテロリストだというだけのことです。

飯山陽氏はこう述べています。

「バラダルは筋金入りのテロリストです。米軍やアフガン政府軍との戦闘中、タリバンの上級指揮官を務めていました。2010年にパキスタンで逮捕、投獄され、2018年に釈放された後、ドーハのタリバンの政治事務所の責任者となり、アメリカとの交渉に当たってきた人です。
でも朝日のように単に「米国との交渉役を務めてきた」と書けば、なんだかむしろまともそうな、話の通じそうな人、という印象を受けますよね。
これを一般に「印象操作」と言います。私のように「バラダルはアメリカとの戦いでバリバリの司令官をつとめ、パキで逮捕され投獄されていた、正真正銘の筋金入りのテロリストです」と書けば、読み手の印象は全く異なるはずです。
そうそう、バラダルはモッラー・オマルから「兄弟バラダル」と呼ばれていたそうで、それぐらい寵愛を受けていたようです。なぜって?そりゃー、バリバリのテロリストだからですよ」(飯山陽note 前掲)

このふたりが9月6日、マスードの息子が指揮する国家抵抗戦線(NRF)が立てこもっているバンジシールの鎮圧を巡り激しく対立して、お約束の銃撃戦にまで発展しました。
ちょっとした方針対立ですぐに銃撃戦になるというのが、いかにも彼らテロリストらしいところです。
一般人なら意見対立したくらいで、すぐにドンパチやりませんからね。
そしてこの銃撃戦で副首相に指名されていたはずのバラダルが重傷を負い、どうやらパキスタンに治療のため輸送されたようです。
この両派の銃撃戦のために、9月3日に行われると言われていた新政府内閣の発表日程が延期されました。

「タリバンがアフガニスタンで政権を樹立しようとは、様々な派閥間の戦闘の報告に悩まされている。報道によると、グループ共同創設者のムラー・アブドゥル・ガーニ・バラダルは、金曜日の夜にカブールのハッカニ・ネットワークの戦闘員との銃撃戦で負傷した。一部の報道は、戦闘が報告される直前に、肉屋のバラダルとして知られるバラダルがカブールの新しいタリバン政府の長になると言っていた」
(インターナショナル・ビジネスタイムス9月7日 原文英文)
タリバンの指導者バラダは、カブールのハッカニネットワークとの戦いで負傷した (ibtimes.com)

どうやらバラダル派は、バンジシールのNRFと交渉による解決を望んでいたようですが、それにパキスタン情報部の後援を得ているハッカーニ派が反対して情け容赦ない武力鎮圧を命じたようです。

「報道によると、ムラー・バラダは同胞と戦いたくないが、パキスタンのスパイ機関インターサービス・インテリジェンスの後援を享受するハッカニ・ネットワークは抵抗を打ち負かしたいと考えていたという」(インターナショナルビジネスタイムス前掲)

NRFが立て籠もるバンジシールは、アフガンの中でも特別な地域です。
ここがソ連の侵攻に対して最も頑強に持ちこたえ、やがてソ連を追い出す原動力になる国民的抵抗の拠点となったからです。
バンシールの3000mの峰々でソ連軍と戦ったのが、マスードでした。
この国民的英雄については別の機会に譲りますが、マスードが生きていたら今のような混乱の地にはならなかったはずです。

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「険しい山の谷であるパンジシルには、15万人から20万人が住んでいます。アフガニスタンが1980年代にソ連占領下にあった時、そして1996年から2001年の間にタリバンの前の支配期間の間に、それは抵抗の中心でした」(BBC 9月6日)
アフガニスタン:抵抗指導者はタリバンとの和平交渉にオープンと言う - BBCニュース

さてこのタリバンのナンバー1と2の銃撃戦によって大統領に擬されていたバラダルが重傷を負ったことに驚いて仲介に走ってきたのが、パキスタン情報部でした。

「【ニューデリー時事】アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンに強い影響力を持つパキスタン軍情報機関、3軍統合情報局(ISI)のハミード長官が4日、代表団を率いてアフガンの首都カブールに入った。タリバンをめぐっては、新政権の閣僚人事の発表が間近とみられる一方、内部対立も伝えられており、ハミード氏が仲裁に当たるもようだ」(時事9月4日)
タリバンの内部対立仲裁か パキスタン高官がアフガン入り:時事ドットコム (jiji.com)

ここで登場するパキスタン軍統合情報部(ISI)という組織はとんでもない曲者で、タリバンを育成し、アルカイダを操っていた黒幕です。
情報部といいながらほとんど政府から干渉を受けない国家内独立王国で、かつてその庇護の下に逃亡している
アルカイーダのウサマ・ビン・ラーディンを匿っていました。
米国は初期に対ソ連で彼らを援助していた関係から、このISIとタリバン・アルカイダとのつながりについてよく知っていました。

「米上院軍事委員会の公聴会で証言したマレン議長は、パキスタン軍3軍統合情報部(ISI)が武装組織「ハッカニ・ネットワーク」を積極的に支援しており、同ネットワークはISIの「正真正銘の片腕」として行動していると名指しで非難。かつてなく厳しい口調でパキスタン政府を批判した」(CNN2011年9月11日)

聞き慣れない名前が飛び交って頭がグルグルされたでしょうから整理すれば、アフガンには3派の過激派とそれに抵抗する組織が一つあります。

①タリバンバラダル派・政権主流派。大統領となる予定のバルダルが②に殺されかかる。
②タリバンハッカーニ派・アルカイダと連携し、構成員もかぶる最凶過激派。創始者の息子が指導者。
③ISIS-K(・タリバンが異教徒と交渉したことを背教者と呼び、①を敵視する最凶過激派。カブール空港自縛テロ犯人。
国家抵抗戦線(NRF) ・新北部同盟。マスードの息子らが急峻な山岳に立てこもって戦いを継続している。インドと西側が支援。

①から③は決して一枚岩ではなく、部族ごとに分かれており、地域軍閥と呼ぶほうが近いと思われます。
したがって戦闘員も今日はこちら、明日はアチラと流動的で、これでは今後タリバンが政府もどきを作っても行政組織はおろか正規軍などは生まれようがないでしょう。
というわけで、まだタリバン政権が始まりもしないうちからもう武装抗争の勃発です。
日本のメディアが待ち望む、「新生タリバンの民主主義の国」などどこにあるのでしょうか。
 

2021年9月 8日 (水)

河野氏の危ないエネルギー政策

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石破氏が降りたようです。

「自民党の石破茂元幹事長が17日告示―29日投開票の党総裁選への出馬に慎重姿勢を示していることが6日分かった。石破派内で河野太郎規制改革相を支持する声も広がる。石破氏が不出馬なら、総裁選は岸田文雄氏、河野氏、高市早苗氏の3氏を軸に争う見通しとなる。
世論調査で支持が多い石破氏が立候補しなければ、党員・党友票が河野氏に流れて優位に立つ可能性はある 」(日経9月7日)

日経によれば、石破氏が降りて、河野支援に回るため、人気1位2位連合ができて、河野有利という見立てです。
石破氏としてはこうするしかなかったのでしょうね。
出ればボロ負け必至ですから、党内に影響力を残すには河野馬券を購入して、最初の勝ち馬乗りになりたいということです。
そして狙いは幹事長狙いだそうです。うひゃー。

「世論調査の上位2人が組むインパクトは大きい。もし、河野政権が誕生すれば、石破氏は幹事長や主要閣僚で処遇される可能性がある」ZAKZAK9月7日)

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ポスト安倍」石破氏推しってどんな人たち? 異彩放つ河野氏支持層

そしてあわよくば幹事長になったら、やることはこれ。

「石破氏は6日夜、BS-TBS番組に出演し、立候補に必要な推薦人20人の確保にめどがついたことを明らかにし、次のように語った。私の目的は嘘やごまかしがなく、説明責任を果たす政府を作ることだ。やってくれる人がいれば協力する」
(ZAKZAK前掲)

なんすっか、この「説明責任を果たす政府」って。
もちろんアレ、この人物がズッと言ってきたモリカケサクラの「説明責任」のことです。
「枝野内閣最初の一手発表」(時事)だそうで、やることは真っ先に森友究明チームを作るんだそうですから、ゲルちゃん、いっそ一緒におやりになったらいかが。いつまでも閣外協力もないでしょうに。
あんたが自民に居ること自体が「嘘やごまかし」なんですから。
そしてもうひとつが、習近平の国賓招待ってところでしょうか。
二階氏より筋が悪い幹事長の誕生なるか。

ただこの人、かつては小澤一郎を勝ち馬だと信じて脱党し、悲惨なメにあった経験があるので、彼の勝負勘をどこまで信用してよいのやら。
前々から言ってきましたが、石破氏に憑依されたら河野氏は党内保守系の票だけじゃなくて、麻生さんの支持も一緒に失いますからご注意下さい。
それにしても河野が首相なったら、石破がおまけでついてくるじゃあ興ざめだなぁ(苦笑)。
ただ自民党員票はゲルがいちばん多いので、彼がつくと河野氏の有利となるのは確かです。

そもそも河野氏は足元を固めきっていません。
出るなら最低限で麻生さんの支持を取り付けるべきでしょうが、なんど面談しても麻生さんの答えはうんにゃ。
そのうち麻生派幹部の甘利氏が出馬反対を明確にし、加えてなんと同じ閣内の加藤官房長官もこんな微妙なことを言い出しました。

「加藤氏は、河野氏がワクチン担当大臣として高齢者向けの接種完了目標や、菅義偉首相が掲げる「1日100万回接種」の達成に向けて貢献してきたと評価。党総裁選への出馬については、「それぞれが判断されることだ」と述べた上で、担当大臣として「職にある限りは、任されている仕事は責任を持って行っていくことが大前提だ」とも注文をつけた」(朝日9月6日)

これって首相がコロナ第1で総裁選辞退したのに、肝心要のワクチン担当が総裁選でうつつをヌカしてどないするんじゃ、という意味です。
たしかにこれは言える。コロナ対策は今が山場です。ここでワクチンを一気に国民の5割、6割に打たねばならないわけで、その指揮官が自分の選挙で時間を取られていては話になりません。
麻生氏、甘利氏、そして加藤氏と、こうまで同じ派閥から否定的な意見が出続けると、もう諦めるか、あるいは最後の手段として他派閥の推薦をもらうかになります。
後者を選択すると、麻生派としては最悪出て行けということを通告をせねばならなくなります。
また、こういう形で後ろ足で砂をかけて出て行くと、他派閥は迎える所がなりますし、仮に浮動票をかき集めて勝利して総理・総裁となっても党内ガバナンスは大変に難しくなることでしょう。
少なくとも麻生派は人を出さないし、当然麻生氏も副総理から降ります。
さぁどうする、河野さん、ピーンチ!

後の出そうな候補は竹下派の茂木氏ですが、自分の派閥もまとめきらないでしょう。
加藤氏、野田氏はでてもいいですが、出ても惨敗しますから、賢ければ出ません。
したがって、候補は岸田、河野、高市の3氏にしぼられてきました。

さて、昨日、私は候補者選びとして3点をあげました。
①国家・歴史観②経済政策③社会政策の3ツでしたが、もう一点だいじな点を忘れていましたので追加しておきます。
それは④エネルギー政策です。
地味なテーマですが、経済のみならず国家の安全保障にも大きく関わってきますから、ここをあだやおろそかにするとバチが当たります。

私は菅政権をおおむね評価しているのですが、一点だけいただけないものがありました。
それがカーボンニュートラルや二酸化炭素半減計画といった、一連の地球温暖化阻止関連のエネルギー政策でした。
この旗振り役が、小泉ジュニアだというのはつとに有名ですが、河野氏もごたぶんに洩れずこのテーマが大好きなようです。
菅氏はヨイショ役に頭の軽いジュニアを選んで環境大臣に据え、実務ができる河野氏に第6次エネルギー計画策定に関わらせたようです。
なぜあの合理主義者の菅氏が、CO2削減政策に熱を入れたのか私にはよくわかりません。

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河野太郎大臣、貧しさの責任は母親たちではなく政府にこそある

もちろん候補者の中で、危ないエネルギー政策のアクセルを一番踏みそうなのは河野氏です。
例のパワハラで騒がれた文春記事も相手はどうやら経済産業省だったようで、オレのいうことがわかんねぇのか、日本語わかる奴連れてこい、なんて育ちがいいくせにタンカ切ってしまったようです。

悪い予感ですが、政権を取った河野氏は、従来の持論だった反原発の封印を解く可能性があります。
なんせ超党派の反原発議連を作った人で、あの山本太郎ともこのことでは息が合ったという人ですから。
いままで安倍氏や菅氏の下で閣僚をしていたので、これについては黙っていました。
これが賢明さ故なのか、ただの擬態なのか判然としません。
ただの擬態だという人も多ければ、私のように賢いから封印したのだ、と見る人もいます。

今まではともかく、頭を押える者がいない首相となった場合、どのように変化するかです。
封印を切る可能性はあります。
その場合、反原発を首相職の政治家が言ったらシャレになりませんから、別の言い方に差し替えます。
それがCO2大幅削減です。

あのクレージー・カンですら、反原発まで踏み込めず、「全部の原発を止めて安全検査をお願いしまーす」なんて言うに止まりました。
しかしそのことで日本のエネルギーは極端な火力依存となり、化石燃料の輸入が激増し、その燃料コストの増大によって日本の富が流出し続けました。
しかし、電源会社は初代規制委員会田中氏が、この基準を満たすのは経営的にむりでしょうね、と言っていた世界一厳しいハードルを乗り越えて、ポツリポツリと再稼働に漕ぎ着ける原発を増やしてきました。

そんな時に降って湧いたのが、地球温暖化説によるCO2 悪玉説です。
なんせ大は火力発電所、小は牛のゲップまで規制するってんですから、冗談ごとではありません。
日本を含めて、先進国は軒並み2030年までにCO2を半減すると宣言しています

しかし日本だけが半減させても無意味です。だって、中国が世界の半分出しているんですから、ここを締めないとCO2は減らないのです。
わかりきった話ですが、なぜか中国だけはいままで「開発途上国」と自称して削減を拒んできました。
ある時は世界の覇権国、ある時は発展途上国ですからね(笑)。

日本と中国のCO2 排出量を比較してみましょう。

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「上図で2020年の数値はWRIの最新情報に基づくもの。CO2「等」としているのは、CO2にメタン等を加えた温室効果ガス全体の意味である。
中国の排出量は2020年に124億トンだったものが2025年には136億トンになる。この増分は12.4億トンで、日本の現在の年間排出量である11.9億トンよりも多い」(杉山大志2021年3月21日) 

次にCO2 年間排出量を世界各国を合わせた量と比較します。単位は億トンです。

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James Eagle China’s CO2 emissions almost surpass the G7

上図の縦軸は年間のCO2排出量で単位は100万トン。左が中国、右は先進国(G7である米国、英国、カナダ、日フランス、ドイツ、イタリア、日本、およびその他のEU)です。
おそらくこの中国の伸びからみれば、2021年には追い抜いているはずです。

わ、はは、もう笑っちゃうでしょう。
世界全部の国の炭酸ガス排出量と中国の搬出量はイコールなのですぜ。
しかも今後5年の中国の増加量だけで、日本の年間排出量に匹敵します。
つまり中国の炭酸ガス排出をなんとかしなければ、地球温暖化阻止もクソもないわけです。
やっとこのことに世界も気がついて、スエーデンの環境少女が中国も批判するようになったのです。

中国は今年3月5日に発表された中国の第14次5ヵ年計画で、CO2排出量は2025年までの5年間で「GDPあたり18%削減する」としました。
このへんの言い方、さすがはチャイナ、ズルいぞチャイナ。
というのは、日本などの自由主義諸国は「CO2 排出量を半減させる」と言っているのであって、GDP当たり削減するのとはまったく意味が違います。
あくまでも「5年後にGDPの18%削減」ですから、その分経済成長すればトントンです。
いや、公称8%の経済成長を維持すれば、むしろ増えてしまうくらいです。

そして、世界各国は自分の国の経済を痛めつけまでもまじめにCO2削減なんぞする気はありません。
国内に有力な炭鉱を持つ国ならなおさらそうです。
たとえばバイデンは執着していますが、共和党は地球温暖化説自体に懐疑的であり、トランプはパリ協定に反対して離脱しました。

「米国は化石燃料大国である。世界一の産油国であり、世界一のガス採掘技術を擁しており、世界一の石炭埋蔵量を誇る。
 化石燃料産業は多くの雇用を抱えており、民主党議員であっても自分の州の産業保護のためには造反し、共和党議員と共に温暖化対策に反対票を投じるこのため温暖化対策の法案は過半数の支持を得られない」(杉山前掲)

これを知ってか知らずか、中国だけを野放しにし、自由主義諸国だけ削減するというのは、一方的な自由主義圏の国力削減に等しいことです。
私はCO2削減の流れは、中国が仕掛ける超限戦の亜種だと考えるようになっています。
それを本能的に察知して、トランプはこの危険なCO2削減ゲームからいち早く降りたのです。
ですから、2050年までにCO2を半減させるなどという無謀な政策を取ってはならないのです。

さて、話を総裁選に戻します。
河野氏が賢ければ、総裁選では反原発なんんていう刺激的で産業界を怒らせるような看板は掲げないでしょう。
彼の良さでもあり怖さでもあるのが、言うことと本心の乖離です。
そんな彼は、総裁選でリベラルのスローガンである反原発を言い出すほどノーテンキではありません。
代わりに掲げるのは、地球温暖化阻止のためにCO2削減という、いまや誰も反対できない一見ソフトに見える政策です。
ただやることは、反原発だろうとCO2削減でも一緒なんです。

あの安倍氏ですら原子力について口を閉ざしてきました。
それほど福島事故による原発アレルギーは強烈でした。
現実主義者の安倍氏は、すべてをカン時代に作られた規制委員会に丸投げし、その判断を尊重するという建前に逃げました。
結果としてポツリポツリと再稼働する原発が出ると同時に、裁判所までが再稼働に介入できる権限のあいまいさのために、一回再稼働してみても「市民」の訴訟でまた止められるというような事態が続きました。

カン政権は代替エネルギーとして再生可能エネルギーを出してきたのですが、これがものの役にたたないのはこの10年で実証済みです。
そして3分の1の電源を支えてきた原子力を封じられた日本は、現実的に火力に依存する以外ありませんでした。

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2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報) | ISEP 環境エネルギー ...

この生き残った唯一の現実的エネルギー源であるはずの火力を、更にズタズタにしようというのがCO2削減計画です。

イヤな予感ですが、河野氏は第6次エネルギー計画の中にCO2大幅削減を書き込み、しかもそれをしっかりと実現しようとするでしょう。
野党などが電力総連や金属労連を抱える連合に配慮して中途半端な脱原発政策しか出せないのに対して、はるかに過激にCO2排出量のハードルを高くするかもしれません。

この点について、他の候補は高市氏は問題がありません。
岸田氏も官僚との折り合いをつけたがる微温的な人柄なので、大丈夫でしょう。
つまり、エネルギー政策でアブナイのは河野氏ひとりという事になります。

河野氏はたぶんこのCO2削減について、他の候補から攻撃されるはずです。
特に高市陣営としては、ここを争点化したいはずです。
安全保障や対中政策では河野氏との差別化がしにくいですからね。
その時彼がどう答えるかが、総裁選のゆくえにも絡んでくるでしょう。
狡猾ならば、一貫して黙っているか、はぐらかすはずです。
はぐらかして、岸田氏に矛先が向くようにすればよいだけですから。
はぐらかしきったままゴールに飛び込めれば、河野氏に勝機があるかもしれません。

高市さん、ぜひ河野氏に彼のエネルギー政策を問い質して下さい。

 

2021年9月 7日 (火)

総選挙プロデューサーは菅氏だった?

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床屋政談ですので、できるだけ間違わずに書くつもりですが、ところどころで滑っていますのでお許しを。

多くの人の心にずっと引っ掛かっていた疑問は、なぜ菅氏はこんな辞め方をしたのだろうか、ではないでしょうか。
火中の栗とでもいうべきコロナとオリンピックをあえて拾い、本来自らのやりたかったはずのIT化などにまったく手つかずで去る口惜しさは想像に難くありませんでした。
私もそのひとりです。だから、最初に彼の「辞任」(正確には任期満了辞職)を聞いた時、ああ、もったいないという悲鳴に似た感想が浮かんだものです。

イメディアはモッパラ凋落する人気を回復しようとして二階氏を降ろし、河野氏か小泉ジュニアを据えようと悪あがきし、墓穴を掘って辞任に追い込まれた、という説を流布しています。
たとえば、フォーサイトはこう書いています。

「首相は2日夕、党本部で二階幹事長と面会した際、「総裁選に出ない選択肢など許されない」と語り、出馬に強い意欲を示していた。ただ、自民党幹部は、「再選しようと悪あがきして『膨大なエネルギー』を使い果たした結果、首相の命運は2日夜には尽きていた」とも語る。
 当初、首相は東京五輪・パラリンピックの成功などを武器に9月中旬にも衆院を解散し、総選挙後に総裁選の無投票再選を果たす戦略を描いていた。
 しかし、ワクチン接種の遅れなどで政府の新型コロナ対策への批判は収まらず、五輪開幕後の8月に入っても内閣支持率は2~3割台前半に低迷地元の横浜市長選(8月22日投開票)では、首相が全面支援した小此木八郎前国家公安委員長が立憲民主党の推薦候補である山中竹春氏に大敗した」(Foresigh9月4日)
https://www.fsight.jp/articles/-/48228

記事に登場する「与党幹部」って誰でしょうか。本当にいるのですかね。
いやいても何人かの政治家が無責任に漏らした言葉の端々をつなぎ合わせ、メディアが味付けしているだけでしょう。
上のフォーサイトの記事でも「ワクチンの遅れによる国民の批判」とあたりまえの前提みたいに書いていますが、ほんとうにワクチンは遅れていたのでしょうか。
一国の首相が辞任に追い込まれるほど国民の批判を浴びていたなら、ワクチン担当大臣の河野氏なんかとっくに総裁の芽はありませんものね。
しかし人気第1位だそうで、こりゃいかに。

実際は、驚くべき速さで既に1億回接種をなし遂げました。できっこないと嘲笑していたのはメディアだけです。
今や日本は世界のワクチン接種上位に入り、今累計5位くらいだったっけか。

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世界のワクチン接種状況|NHK

100人あたりでもこんなかんじ。日本はオレンジ線です。急激に延びているでしょう。

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たぶんこのペースだと、今月の末か来月には米国を抜きます。
始まりこそ製薬会社が自国に集中失出荷したために遅れましたが、7月ころからは着実に接種を増やしてきました。
それも必要充分なワクチンを確保できていたからこそできたことです。
なかなかワクチン早く寄越さないファイザーに、訪米の折に社長と直談判して1億回分吐き出させ功労者は誰でしたか。
打ち手が不足していた時に、渋る医師会の頭越しに歯科医師会などに声をかけて問題解決したのは誰でしたか。
こういうことを委細無視して、あたりまえのように「ワクチンの遅れが政権批判を招いた」なんて書く奴の神経がわからない。

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菅義偉氏が自民党総裁選で圧勝、任期は2021年9月末まで

デルタ株の感染拡大も、明らかにピークアウトして下降局面に入っています。

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ただメディアが毎日飽きもせずに流し続ける不安情報によって、政権基盤が削られたことだけは確かでしょうが。
わずか1年にも満たない期間でしたが、菅氏が成し得たことは数え上げればその多さに驚くことでしょう。
しかし、菅氏は黙して己の功績を誇らなかった。
日本が苦難に陥っている時期に政権を引き継ぎ、やるべきこと地道に成し、他人がやりたがらないことまで泥を被り続けた稀有の人でした。

彼が元々長期政権狙いではなく、リリーフのつもりだったという見立てをしているのが、高橋洋一氏です。
高橋氏はユーチューブで、菅氏「辞任」の説明をしていますが、大変に興味深い内容になっていますのでご覧下さい。
高橋洋一チャンネル youtube

メディアの記事はえてして、彼らがあらかじめ用意した絵に沿って、「与党幹部」の言っていることを切り貼りしたものにすぎません。
菅さんがいつもどおり寡黙でなにも言わないことをいいことに、勝手な憶測と嘘で塗り固めます。
それに対して、菅氏の懐刀として生身の彼をもっとも知悉していたのがい、高橋前内閣参与でした。
しかし彼もまた、政権の内幕を職業倫理としての沈黙を続け、ようやく辞任となって菅氏が何を考えていたのか語り始めています。

高橋氏は、まず菅氏が派閥をもたない政治家であることをあげています。
派閥とも言えない少数のグループを持つだけで、それも彼の面倒みのいい小父さん気質を慕ってきた者ばかりです。
ですから、そもそも自分が政権を取ろうなどとは思っていませんでした。
思っていたなら、どこかの大手派閥に入るか、自分で派閥を作るでしょう。
どこの派閥でも、彼のような野心を持たず実務家肌の政治家なら喜んで入れてもらえます。
それをあえてしなかったのは、彼が政権取りに関心がなかったからです。

彼がやむなく首相をやらされたのは、あくまでも安倍氏が倒れたためにすぎません。
望んで首相になったのではなく、官房長官として7年間支え続けた安倍氏が敷いた道を、ここで途切れさせたくはなかったからです。
たぶん安倍氏から懇願されたのかもしれません。
ですから、初めからワンポイントリリーフのつもりでした。

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スキャナー]世論、自民党総裁選に影響 : 政治 : ニュース : 読売新聞

そしてそのような彼が考えた総選挙勝利の戦略が、高橋氏によれば「できるだけ多くの候補を出して投票日まで盛り上げ続ける」ことだったようです。
17日の公示まで、テレビや新聞は自民党の候補者選びで二転三転の大スペクタクルで満杯になります。
昨日まで泡沫ですらなかった高市氏が、一気に対抗馬となるかと思えば、河野氏も負けずに出っぱなし。

石破氏などいうとっくに死んでいるゾンビまでもが色気づいて、現世に戻ろうかと迷い続ける始末です。
結局七転八倒したあげく出ないようですが、このゾンビゲルが、誰をとくっついて共闘をくむのか、そのジョカーを引くのは誰かと思っていたらなんとこれが河野氏(笑)。
うひゃー、産経は「石破派、河野氏支持の構想浮上 」なんて報じていますが、こんな太ったゾンビに憑依されたら勝てるものも勝てなくなります。
河野氏のよさは右にも左にも、オレの味方だと錯覚させるウィングの広さですが、ゾンビゲルにくっついてしまうと、メディアは大喜びでしょうが、保守系は全部去っていってしまいます。
河野馬券を少額買っている私も、これだけはヤメテくれと忠告します。

とまれ横一線なので誰も過半数は取れそうにありませんから、決選投票での2位2位連合というドンデン返しも見られるかもしれません。わくわく。
派閥領袖が岸田氏ひとりしかいないので、従来の派閥選挙にはならずに自由投票となるでしょうから、いくら安倍氏が高市推しだとしても、細田派全部が右へ習えというわけでもありません。
あくまでも安倍さんはプロデューサーの菅さんの演出趣旨を理解して、高市氏にこのスペクタクル・レースの出馬券をあげただけなのです。

同じように麻生さんも「自分の好きにしろ」と河野氏を突き放して盛り上げてみても、自分の派閥を統制しようなんてさらさら思っていません。
ほらその証拠に麻生派の重鎮甘利氏から「河野はダメだ。オレは岸田を応援する」なんて言わせて、いっそう盛り上げてくれました。
憎い演出。

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自民党総裁選が実質スタート、序盤の動きから各候補の狙いを分析

今後、各派閥の政治家たちが、勝手にオレは河野だ、オレは岸田だ、いや高市だと言い出して、もうウルトラスペクタクルを見せるはずです。
もちろん連日、ワイドショーは暗~いコロナ報道をやめてにぎやかな自民党総裁選挙一色になるはずです。
NHKなんかは絶対にテレビ討論会をやるでしょうしね。
かくして、政治家は出たがりですから我も我も声を上げ、自民党の政治家がこんなにいたんだと国民は驚くことになります。
国民にとって生きた政局そのものですから、コロナ禍で娯楽に飢えた国民にはこたえられない面白さのはずです。
派閥拘束がないのが分かってきたので、もうバトルロイヤル的展開が確定。
これがかつての三角大福(なんのこっちゃ)時代のように派閥抗争で決まっちゃうと、国民の興味は半減しますからね。

一方気の毒にも、野党は完全に蚊帳の外。
ちょっと前には枝野氏などが政権奪還なんて言っていたのが、まるでウソのようなお通夜の展開。
あれよあれよという自民の展開に、呆然とつっ立たっているだけです。
立憲が共産党と手を握ろうが、レンホーやミズホが「高市なんか女じゃな~い」なんてキイキイ叫ぼうと見向きもされません。
だってこの人ら、まともな政策論争ひとつしないで立憲・共産・社民で小さくまとまっちゃうんですから話になりません。
ガンガン議論して、お前の党が10年前やった政権の失敗の原因を言ってみろとか、なにを17年間党首選しないのはてめーだろう、とかやってこそ国民を楽しませることができるですが、まったくわかってないな。
選挙は国民の娯楽なんですよ。

株価は3万円の大台近くまで高騰しました。
だって、これで枝野首相、辻本幹事長、レンホー外相、福山財務大臣なんて政府を見ることがなくなったからです。

この盛り上がりを維持したまま総裁選→新総裁誕生→首班指名→組閣→解散というシナリオで走り続ければ、総選挙は誰が総裁になろうと自民党の圧勝で間違いありません。
そして圧勝した新政権は、国民の信任を背中に背負っていますから、シブチンの財務省も増税なんて言うことはできません。
ちなみに高市氏が増税を言っているとか、岸田氏や河野氏も増税派だとか言っていますが、今のコロナ禍時期にそんなことはとてもじゃないが言えないはずですからご安心を。

ひとつご忠告したいのですが、自分の政治的クローンを求めないで下さい。
政治家選びにはいくつか切り口があります。
大雑把には、①国家観・歴史観、②安全保障・外交政策、③経済政策、④社会政策などです。
たとえば今赤丸急上昇中の高市さんは、私からみれば①②は満点ですが、③はおいおいです。
ちなみに青山繁晴氏も高市氏の推薦人に名乗りを上げたようです。ちょっとスゴイね。
メディアがトップだという河野さんは、①が怪しいが②は大丈夫です③はダメです。まちがってもゲルを推薦人にしないように。
岸田さんは①から③まで全部ダメ。
となると全部一致の人はいなくなりますが、7割でいいことにしましょうや。
世の中そんなもんだと割り切りましょう。

とまれ自民の進撃というスゴイ脚本ですが、一体だれが考えたんでしょうか。
私は、あんがいこれは菅氏と安倍氏の共作のような気がします。

 

2021年9月 6日 (月)

なんと早々、安倍氏が高市氏支持を打ち出す

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床屋政談で全国が沸き返っております。
ええ、常日頃は政局は好きじゃない、とか言いながらこの私も(赤面)。
あくまでも素人談義ですから、軽くお読み下さい。

大混戦とメディアは報じていますが、頭数が多いだけで石破、野田両氏はハナから無視していいでしょう。
ゲルちゃんは、そんなに党首選に出たいなら立憲から出なさい。

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石破氏「出馬は白紙」 自民総裁選 - 産経

そもそもあの人、本気で出る気はなかったはずです。
国会議員票が恥ずかしいくらい集まらないのは自分でも分かっていますから、フルスペックの総裁選はするべきではない、なんて事実上の不出馬宣言をやらかしています。
元幹事長にして政界のご意見番くらいのスタンスで一生食っていくつもりなのに(サンモニに出そう)、出ちゃったら数字で実力がバレちゃうじゃないですか。

だから9割の確率で出馬はしないはずです。5回負けたらもうシャレにならへん。
一部では二階氏が石破氏に推薦人を出してもいいと、言ったとか言わないとかが噂になっているようですが、二階のおっさんは負ける勝負はしない人です。
だから幹事長にまでのし上がれたので、ただのフェイントにすぎません。
二階氏は石破氏と思想信条(そんなもんがあればの話ですが)は似ているのかもしれませんがね、そんなことで選ぶ相手を間違えるような可愛いタマじゃありませんから、考えが正反対の安倍氏の幹事長にでもなれたのです。
安倍氏と政策が一致したからでも、政治観が一致したからでもなく、自民最強だったからにすぎません。
それがなにが哀しくて、今さら落ち目の三度笠のゲルちゃんとくっつかにゃあならんのですか。ありえません。
野田氏に至っては、論評するのも馬鹿げています。

さて、私は岸田-河野が競り合う二択だと勝手に読んでいましたが、素人の悲しさ、たちまちハズしてしまいました。すいませーん。
ぬぁんと驚いたことには、安倍氏が高市氏推しを派閥に伝達したとのことです。

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安倍氏が高市氏を支援へ 麻生氏も支持に回る可能性(テレビ朝日系(ANN

「総裁選での動向が注目されていた安倍氏は3日、自身の出身派閥で党内最大派閥の細田派の幹部に対し、立候補に意欲を示す高市氏について「信条的に近い」と述べ、支援する考えを伝達。閣僚経験者には、高市氏に同派から推薦人を出させる考えも伝えたという。ただ、同派では、所属する下村博文政調会長も出馬を検討しており、派閥としての対応は定まっていない」(朝日9月4日)

正確には安倍氏はこう言ったようです。

「細田派幹部は4日朝、「安倍氏は、今回の総裁選について、『派閥で行動は縛らない方がいい』『複数の総裁選とすべきだ』という意見とともに、『私は、女性でビジョンがしっかりした高市さんを支持するつもりだ』と語っていた」と夕刊フジに明かした」(ZAKZAK9月5日)

いずれにしても、すさまじい起爆力です。
誤解をおそれずに言えば、安倍氏は高市氏を後継指名したのです。
ま、考えてみれば、高市氏はかつて細田派(今は無派閥)ですし、共に「保守団結の会」の顧問です
http://totalnewsjp.com/2021/09/04/takaichi-11/
政策的には、安倍氏の政策をほぼ全面的に継承するとしているのですから、当たり前と言えば当たり前なんですけどね。
それにしても早い。早すぎるのが憶測を呼ぶくらいです。
朝日の行間には、下村出ろ、出てくれぇ、そうすりゃ細田派は分裂だわい、という声が漏れてくるようですが、たぶん下村氏は出ません。
となると、最大派閥の細田派は高市氏推しで決定ということになります。

ところで、好むと好まざるとに関わらず、総裁選挙は派閥のパワーバランスで8割方決します。
そこが通常の国政選挙と決定的に違うところです。
ついでに公職選挙法の枠外ですから、なんでもありです。

よく派閥談合で決める密室政治だ、と批判されていますが、わかってないな、これは私党の党首選挙なんですったら。
そもそもそんなことを言い始めたら、党首選挙自体やったこともない共産党みたいな党なんかどうなるのです。
派閥は法的に定められた制度でもありませんし、自民党の党則にもない組織で、建前は政策に関する任意の勉強会にすぎません。
だからナントカ研究会と名乗っている派閥が多いのです。
たとえば細田派は「清和政策研究会」、岸田派は「宏池会政策研究会」です。
大規模なものになると事務所があり、専任の職員を雇っていたりしますが、小さなものではゲルちゃのところのように「ゲルとその愉快な仲間たち」というクラブもあります。(←ウソ)

昔、昔、角栄さんがふんぞりかえっていた当時は、派閥の領袖がカネを集めて選挙の時や盆暮れにバラまくのがしきたりでしたが、自民党の近代化で幹事長にその権限が集約されました。
しかし派閥から総理・総裁が出れば、ポストを得られるかもしれないということで、いまだに派閥は隠然たる力を持っています。

こんな陰湿なのはイヤダ、総理は国民が選ぶ方式にしろという意見は昔からありますが、現実にそれをやると、選ばれた首相は元首となってしまい、天皇陛下を元首とする憲法に抵触しちゃいますからね。
ちなみに、米国民主党は日本版のサルまね政党が出ましたが、日本版共和党がないのは元首は天皇で不動という日本政治の礎を揺るがすからです。

おっと、前置きが長くなりました。今の自民党派閥はこのようになっています。

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ひとめでお分かりのように、第1派閥が細田派、すなわち安倍派で97人、第2派閥がその盟友である麻生派で54人、これだけで151人で、自民議員全体が383人としてその約40%を占めます。
ですから、安倍氏と麻生氏のように、政治理念で一致し、しかも何回もの試練を共にくぐり抜けた盟友関係を作られると他派閥はそうとうに厳しい。
後は、諸派がどのように判断するか、あるいは派閥が分裂選挙となるくらいが、変数となるていどです。
言い換えれば、安倍-麻生の両派の支持をどう取り付けるのかが総裁選勝利の鍵となります。

 では、各候補の現状を見ていくとしましょう。
まず、メディアが一押し大本命岸田氏ですが、しょっぱなから左にオーバーランしてしまいました。
こともあろうに、こんなことをテレビで言ってしまったのです。

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岸田氏、森友学園問題「国民が納得するまで説明」: 日本経済新聞

自民党総裁選に立候補を表明している岸田文雄政調会長は2日、TBSのBS番組で、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題について、「調査が十分かどうかは、国民が判断する話だ。国民が足りないと言っているので、さらなる説明をしなければならない課題だ」と述べた。
 岸田氏は番組で、改ざん問題に「国民が納得するまで説明を続ける。これは政府の姿勢としては大事だ」とし、菅義偉首相が否定している再調査については、「国民が納得するまで努力をすることは大事だ」と語った。安倍晋三前首相側からの前夜祭への費用補塡(ほてん)が明らかになった「桜を見る会」の問題については、「検察で今取り扱われているので、その判断をしっかり待つ」と述べるにとどめた」(朝日9月2日)

ア~ウ~ト~!一発レッド。
私はこの発言を聞いた時、この見た目は賢そうな人物の頭の中が、実はオガ屑が詰まっていると確信しました。
あんた、どっち向いてしゃべってンの。
首相公選なら、かつての石破氏のようにペラペラとかんな屑のように野党まがいのことを言ってなさいよ、野党とメディアが大喜びして国民人気ナンバー1にしてくれるから。

しかし、これはあくまでも自民党という党のボス選びなんです。
モリカケサクラでどれだけ長い間自民全体が苦しめられたのか、もちろん分かって言っているよね、岸田さん。
そしてその疑惑とやらが、実はなんもなかったのも知っているよね。

そして何より、こんなことを言っちまったら、細田・麻生両派にケンカを売っているようなものだと気がつかないほうが不思議です。
岸田氏は真っ先に手を上げた時、安倍はオレを支持するはずだ、と見込んでいたはずです。
実際、ある時期まで安倍氏は岸田氏に禅譲する、とまことしやかに言われていた時期がありましたからね。

しかしこれで間違っても細田・麻生両派が岸田氏を推すことは、絶対にありえなくなりました。
自分が首相になったらお前のボスをリンチにかけてやるからな、なんて公約する奴を誰が応援するかって。
まぁ第1派閥と第2派閥を敵に回して勝てるつもりですから、相当の自信家なんですなぁ。
今頃になって、ヒダリに行き過ぎたことをやっと悟ったのか、自衛隊法84条変えるって言われてももう遅い。
84条がダメダメなのは常識ですから、そんなこと他候補も言いますって。

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突然の“二階はずし”岸田氏の総裁選目玉政策を上書きする狙いか?自民党

その上に岸田さん、二階氏もハズすと公言してしまいました。

「突然の“二階はずし”の波紋。30日、菅首相は自民党の二階幹事長と会談した際、幹事長の交代を含む党役員人事を刷新する考えであることを伝えた。しかし、二階派幹部からは「あり得ない」などと反発の声が出ており、波乱含みの展開も予想される」(FNN8月30日)

なんでも幹事長職を任期制にするんですと。
まぁ二階氏をハズしたいのは国民の悲願(オーバー)ですが、先ほどのモリカケサクラと一緒で、ただの人気取りなのです。
これで二階派は金輪際、岸田氏を支持することなどありえなくなりました。
二階氏は菅氏にいわれるなら渋々呑んでも、岸田ごときに言われたくはないと思っているはずですから。
あの二階のおっさん、怒らせたら怖いぜ。

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産経

次に今まで対抗馬だった河野氏ですが、この人も致命的なミスをしてしまいました。
出身派閥の麻生氏の完全な支持をえないまま、立候補宣言しちゃったのです。 

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河野大臣 総裁選に立候補する意向を固める|日テレ

「麻生氏の悩みの種は、出馬の意向を固めた河野太郎行政・規制改革相への対応だ。
 麻生氏はかねて、「河野氏に本格的な長期政権をやらせるのはまだ早い」との立場だった。新型コロナウイルス対応に加え、来年には参院選も控えており、麻生派としては「首相候補カード」として温存する方が得策との声が根強かった。麻生氏は3日の河野氏との面会で、こうした考えを伝えたものの、「最後は自分で決めろ」と出馬に理解を示した」(読売9月4日)

麻生氏は河野氏を自派閥だということも含めて可愛がってはいますが、だからこそやるなら自分のように短期政権ではつまらないゾ、じっくり長期政権が出来るようになるまで力を蓄えろと、親心で思っていたのです。
つまり、「最後は自分で決めろ」と麻生氏が言ったのは、今回は立候補は見合わせろというシグナルで「最後は自分で決めろ。オレの派閥は応援しねぇぞ。頭を冷やせ」」と突っ放す意味だったようです。

それを勇み立ったもうひとりの若いほうの太郎ちゃんは「そうか、オレが決めていいなら、でるぞ」と取ってしまいました。
その上、河野氏は安倍氏のところにも挨拶に行って、同じことを言い、同じように答えられたそうです。
自分の判断でしなさい、と麻生、安倍両氏から言われたら、そりゃ出るなという意味以外ありえないっしょ。
でも出てしまう。なかなかです。私はこういう少年っぽいところが好きなんですがね。

しかしいかんせん、若い!青すぎ!
あんた首相やるのまだ10年早い。出身派閥がこれでついてこられると思ってンの。
どうしてじっくり周囲と話あって決断しないの。
なぜ地上配備型イージスをなんの根回しもなく、独断で止めたようなまねをまたやるの。
私、この人ややファンだから、かえってイライラするのですよ。

そうじゃなくても、河野氏の危ない政策のひとつが、反原発であることはつとに有名です。
河野氏は反原発議連を作った人ですが、さすが小泉ジュニアよりずっと頭いいので真面目に考えてはいるのですがね。
ただ首相職やらせるには、危険過ぎる爆弾です。
まぁもっとも河野氏には小泉ジュニアと違って、内閣に入れば持論をピタリと封印するだけのバランス感覚がありました。
またもう一つの爆弾の女系天皇容認論も、麻生派の大人に受けが悪いものでした。
これも現実には、政府の 有識者会議で拒否されていますから、やりたくてもできません。
つまり爆弾の信管には、ふたつとも安全装置がついてはいるのです。

ただ、諌めたのに出られてしまったジィさんの太郎ちゃんからすれば、内心はこのガキなにも分かっていねぇと苦虫を噛みつぶしたはずです。
ですから、麻生派は河野を応援したい奴はしろ、ていどで分裂選挙になります。
若手はひょっとして河野氏に流れるかもしれませんが、主流の大人は河野にはいい勉強だ、くらいで安倍氏との連携を重視するでしょう。

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自民党総裁選 構図はどうなる 推薦人確保に向け動き本格化 | 2021

そこで、いきなり河野氏に替わって対抗馬に躍り出たのが、高市氏です。
当初は泡沫扱いで知名度は最低。名乗り出ても、知らない人のほうが多かったかもしれません。
実際、候補者の中に入れていないメディアが多かったくらいで、上の関係図にも顔を出していません。
しかし安倍氏の一言で、一気に本命岸田に追いすがるポテンシャルを持つ候補となりました。
安倍氏が支持し、盟友の麻生氏が連携し、二階氏が推した場合、これだけで198票、全自民党国会議員の5割を押えたことになります。
ただ安倍の氏が推したために、アベガー陣営からは徹底的にバッシング対象とされますのでご覚悟を。
彼女の政策についてはここをご覧ください。
【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗 (4/9) | Hanadaプラス (hanada-plus.jp)

一度このような力関係が明らかになると、バンドワゴン現象が生じます。つまり勝ち馬乗りというやつです。
誰も負け組にはなって干されたくありませんからね。
独自の総裁候補がなくいまやかつての隆盛がみるかげもない竹下派も、かつての安倍総裁選の時と同じように乗るかもしれません。
岸田氏に圧倒的な人気があり、国民から愛されるキャラで、しかも自民党をうならせる政策をどんどん出しているならともかく、今の彼にそれだけのパワーがあるかといえば、どうなんでしょうか。
地方票が47票ありますので、今後、岸田さんが広島県連以外どれだけ票を伸ばせるかが注目ですが、自分の広島の選挙さえまとめきらない人で、国民的人気もないくすんだキャラですから、たいして見込めないと思われます。
というわけで高市氏優勢。これが一番楽観的なシナリオです。

ただし、これで決まりかと言えば、違います。そんなに簡単ではありません。
最大の不確定要因は、今回は安倍氏が「組織で縛らないほうがいい」と言っているように、派閥の統制が効きにくい選挙になると思われていることです。
麻生氏も河野氏を推すともなんとも言っていません。
細田派も一丸となって高市氏を推すと決めたわけでもありません。
二階派に至っては、確率は低いものの石破氏を推すかもしれません。
すると、前述した楽観シナリオどおり3派推しという構図となるかどうかなんともいえません。

派閥の領袖が出てこそ派閥はやる気になるのですが、今回の候補は岸田氏を除いて全員がそうではありません。
岸田氏の強みは、なんといっても自分の派閥(47人)のオーナーだということです。
全体としては、派閥統制が効きにくい自由選挙となるでしょう。
河野氏もあんがい各派閥からまんべんなく若手の票を取り込んで支持を膨らます可能性がありますし、高市氏は保守団結の会が頑張るでしょう。

シナリオで整理すると3択です。

●シナリオ1・岸田氏僅差で過半数を征して勝利。
●シナリオ2・河野氏、2位で岸田氏当選を阻止。
●シナリオ3・高市氏、3位。

シナリオ1は、先週まで圧倒的に信じられてきたシナリオでした。
シナリオ2は、今のメディアが好んで伝えるものです。
シナリオ3は、高市氏が無所属だということを考慮しています。

するとどうなるのでしょうか。
第1回で過半数を押える候補が出ない可能性が高いと思われます。
総裁選は、議員票と党員票を合わせた全投票の有効投票の過半数を超えた候補が当選します。
いずれも過半数に満たなかった場合、上位2名の決選投票となり、国会議員票383票と都道府県連票47票の計430票で得票数の多い候補が当選する仕組みです。

ここで上位2人の決選投票になった場合、力を持つのが派閥です。
2回目では、派閥が自由投票にはしないでしょう。
はっきりと勝つべき候補を明確にして、それに票を集中することを確認します。
仮に岸田氏が奮闘努力の甲斐あってトップに立っていた場合、その時誰が2位につけているかわかりませんが、細田・麻生・二階の3派は2位候補に票を集中することでしょう。
そこで、もう一つのシナリオ。

●シナリオ4・どの候補も過半数を押えられず、決選投票で2位3位連合で勝利者が決定する。

それが河野氏となるか、高市氏になるかは、神のみぞ知るです
今週半ばまでにはそうとうに明瞭になってくるでしょう。
あくまでも素人の床屋政談ですので、あしからず。

 

 

 

2021年9月 5日 (日)

日曜写真館 祈りたき程の朝焼け

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はからずもこの朝焼の雁のこゑ 加藤秋邨

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朝焼にまづ潮目から燃えはじむ 能村研三

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朝焼や天牛むかっとしていたり はやし麻由

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湖の朝焼けモネの女ら霧に消える 八木三日女

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朝焼は雨の兆と綿摘まず 斎木濤花

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また眠りたれば朝焼すでになし 下村槐太

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しづかに網張れり朝焼の中 種田山頭火 


2021年9月 4日 (土)

菅氏不出馬

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菅さんが辞任任期をもって退任するようです。びっくりしました。
一言で言えば、ああ、もったいない・・・。
結局、当初予想したようにワンポイントリリーフでした。

「菅総理大臣は、自民党の臨時の役員会で、今月行われる自民党総裁選挙に立候補しないことを表明しました。
これにより、今月末に総裁の任期が満了することに伴い、総理大臣を退任することになります。
自民党は、午前11時半すぎから、党本部で臨時の役員会を開き、およそ10分ほどで終了しました。
出席者によりますと、この中で菅総理大臣は「新型コロナウイルスの対策に専念したいので、総裁選挙には立候補しない」と述べ、今月17日告示、29日投開票の日程で行われる自民党総裁選挙に立候補しないことを明らかにしました。
これにより、今月末に総裁としての任期が満了するのに伴い、総理大臣を退任することになります。
また、来週6日に行いたいとしていた党役員人事についても実施しない考えを示しました。
3日の臨時の役員会は、菅総理大臣に人事の一任を取り付けるためのものでしたが、それを断念した形となり、午後1時半から予定されていた臨時の総務会も開かれないことになりました」(NHK9月3日)

去年6割の支持率を持っている時に、一気に総選挙をかければよかったのにと悔やまれます。
安倍さんは密かに去年選挙やっちゃったらと勧めていたはずで、解散の好機を自ら捨てて仕事に専念した菅さんを見て、ああ彼らしいな、と思っていたことでしょう。

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菅首相「コロナ対策と選挙活動、両立できない」 総裁選不出馬を語る

仕事はできました。
コロナと五輪が最大の懸案でしたが、あの誰もひるむだろう悪条件の中でよくやりきったものです。
ワクチン接種も彼でなければここまで進展しなかったはずで、おそらく10月から11月には国民全体の接種率は6~7割に達するはずです。
デルタ株は東京の実効再生産数が0.8ですから、ピークアウトしているのは明白で、以後下降を続けるはずです。
すると10月には、その双方の効果がはっきり見えて、国民は1年10か月ぶりに青空を見ることができるはずです。

ただし残念ですが、菅さんはコロナ対策で尾身氏を重用しすぎました。
彼はあくまでも感染症学者であって臨床医でもなければ、ましてや経済などまるで分かりません。
ですから学者にとって気分のいいゼロコロナで突っ走り、緊急事態宣言の延長、また延長、またまた延長という泥沼のような行動制限に頼りすぎました。゙
そのことによって、飲食店・宿泊業に代表される商工業者の怒りと国民のイライラが、菅氏ひとりに浴びせられる結果になったのは気の毒でした。
そしてその成果が見え始めたところで、
その成果は次の総理が丸取りし、菅氏の功績は忘れられることでしょう。

誰もやりたがらないつらいところをやって、成果は他人に差し出す、そういう損な性分の人です。
は実力があり、いざとなれば腹をくくることができるし、官僚も使えますが、勝負師ではありませんでした。
というか、そもそも勝負が嫌いな農民的体質の人なのです。
ですから、勝負師に必要な国民をうっとりさせる熱い弁舌と、ここ一番に全部を賭ける勘が欠落していました。
そう言えば、衆参両院ダブル選挙を安倍さんが言い出した時、本気で反対していましたっけね。
いい意味でも悪い意味でも、堅実にして堅牢な実務の人なのです。
世界最高の官房長官、そして陰徳首相、と私は銘します。

さて、これで本命が降りた総裁選となりました。
消去法で考えます。
心情的には高市さんを推しますが、無理だろうな。
新内閣の右サイドバックに滑り込んでいい仕事を見せて、次を狙って下さい。
石破氏はとっくに終わった人で、絶頂期(そんなのあったっけ?)ですら勝てませんでしたから、もはや論外です。
茂木氏、下村氏は出ないでしょうし、野田氏に至っては話題に登るほうが不思議です。

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自民・岸田氏、森友問題「さらなる説明を」 TBSのBS番組で:朝日新聞

これで一気に本命に躍り出たのが岸田さんですが、いかんせんこの逆風選挙の顔にするようなキャラ的な華がありません。
発信力がないのは菅さんといい勝負ですから、この逆風選挙では岸田氏だとまず大敗します。
党員諸公、負けていいなら岸田さんに入れることです。

岸田氏は政策的には、経済政策は財務省御墨付きの増税・緊縮派で、対中政策は弱腰リベラルの人ですから、習近平の再来日くらいはやりそうです。
官僚、特に財務省と外務省の受けはいいはずです。というか、彼らのいい子ちゃんです。
ただし今後誰が首相になろうと、これだけコロナで国民が疲弊している時期に増税するほど馬鹿ではありませんし、米国に楯突いてクアッドを壊すほどの度胸もあるとは思えません。米民主党政権との相性はいいでしょう。
とまぁ、表面的には波風立てずに無難にやっているつもりで、必ず破綻するでしょうが。

築地や竹橋の新聞社や渋谷・赤坂の放送局はモリカケを更にやるといっている岸田氏になってくれぇと、神様仏様に祈っていることでしょう。
当分の間、メディアの露骨な岸田上げ、対抗馬下ろしを見せられることになりそうです。
というわけで歯切れが悪く、可もなく不可もないリベラル政権がひとつできるかもしれませんが、これでコロナでボロボロになった経済を建て直し、「戦狼」に対抗できるかというと、なにも期待しない方が無難です。

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河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ

となると、最後に残る有力な対抗馬は河野さんで、総裁選は事実上この岸田-河野の二択となります。
菅さんも推しているそうで、麻生派の人ですから麻生派-安倍派(細田派)の支持を受けられるかもしれません。
安倍さん
の考えひとつでしょうか。

政治家としては、私はかねがね面白い人だとは思っていました。
あの悪名高き父親のハンディをよくここまで払拭したものですが、保守かリベラルか定かならぬところが魅力と言えば魅力、不安と言えば不安です。
彼には岸田氏にない歯切れのよさと華がありますから、総選挙は大敗を回避し、現状維持か少し勝てるかもしれません。
経済政策はいまひとつ不明ですが、安部さんに支持を受けたらアベノミクスの継承を掲げざるをえないでしょうし、外交・安保政策は実証済みです。
若いので重量感に欠けますから、いっそ安部さんに外相を請い願ったらいかがでしょうか。

菅さん出馬で楽勝気分で浮ついて、またもや政権交代なんて言い出した(笑)立憲・共産にしてみれば、河野さんに出られるのがいちばんいやでしょうね。
中韓も右に同じでしょうから、この人たちにいちばん嫌がられる人を総裁にするのか正解なのです。

なお、参考までに自民派閥はこのような力関係になっています。

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朝日

細田派は安倍氏が首相に就いていたために離脱していましたが事実上の安倍派で、自民最大派閥です。
安倍氏が思想信条だけではなく、モリカケを再度蒸し返すことを表明している岸田氏を支持するかどうか。
なお、河野氏は麻生派に属しています。
菅氏が出馬する際には、細田派、麻生派、二階派、竹下派が支持表明をしていました。
これだけで260票を超えますが、このまま河野氏に支持に回るかどうかは来週にならないとわかりません。

 

※当初予定していた「カブール政権崩壊の内幕」は別にアップします。またお蔵入りが増えしまった(涙)。

                                               

2021年9月 3日 (金)

アフガン避難作戦失敗、何よりも駄目な外交貴族

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今回のアフガン邦人救出オペレーションの「失敗」について、少し整理しておきます。
前にも書いたように、いいかげん邦人救出のひとつも満足にできないと、アジア有事になったらパニック必至です。
アジアだけで、これだけの邦人がいるのです。

●アジア・オセアニアの邦人数
・中国・・・124,162
・タイ ・・・72,754 
・韓国・・・39,778
・台湾・・・21,054
・豪州・・・97,223

韓国で約4万、台湾で約2万、中国に至っては12万人もの人たちを救援しなければならないわけで、500人規模のアフガンで1名しか救出できなかった現況を見ると、絶望的気分になるのは確かです。
それに韓国への観光客がコロナ前の2019年で約300万人、台湾の観光客は同じく19年で200万人です。
しかも 自衛隊による海外の邦人救出は、受け入れ国の同意を前提とするために、韓国政府は自衛隊の受け入れに難色を示し、ムン政権は協議にも応じていません。
自衛隊は港にも空港にもはいることができず、逃げてくる邦人を公海上で待つことになります。
一方台湾は友好的ですが、日本は一つの中国に囚われて台湾を国として扱っていないために、法律上は「地域」というあいまいな形になってしまっているために、避難協議について政府間協議の場すら持てない状況です。

そして憂鬱になることには、この二カ国が世界でもっとも発火点が低い地域なのです。
仮に台湾有事、あるいは韓国有事、あるいは最悪の事態として米中対立が軍事紛争にまで発展した場合、これらの国の邦人を安全な地域にまで避難させねばなりません。
今の現状ではまったく不可能で現地にいる邦人は国から見殺しにされたまま、戦火の中をさまようことになるでしょう。

ですから、韓国有事、台湾有事で自衛隊がどう動くのかなどかんがえるより、まず自分の足下から見たほうがよい。
邦人救出ひとつできない国が、周辺事態として自衛隊出動うんぬんなど笑止ですからね。
というわけで、今回のアフガンの「失敗」を簡単にケーススタディしておきます。
なお「失敗」とカッコをつけたのは、明らかな失敗の部分と、それを打ち破ろうとする努力がない交ぜになっているように見えるからです。
まずは、経過を時系列で見てみましょう。 

・8月初旬、アフガニスタン主要都市が次々と陥落。
・8月14日、現地状況悪化を受けて外務省から防衛省に避難輸送の要請があった。
・8月15日、タリバンが政権掌握宣言。ガニ大統領逃亡の事態を受けて、外務省要請を引っ込める。
この時点で外務省は大使館に撤収命令を出していると思われる。

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タリバンがカブールを掌握、大統領府を襲撃|ARAB NEWS

・8月17日、日本大使館員12名が英軍機で退避。残留日本人が取り残される事態に。カブールの空港が避難民で混乱。
・8月20日、各国の輸送機が救援に向かっており、空港に集まる状況を見て、外務省から自衛隊に再要請。
・8月21日、防衛省、救援を発令。
・8月23日、C-2輸送機3機、自衛隊員約200人が日本を出発。

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アフガン邦人退避へ航空自衛隊のC130輸送機「第2陣」が出発

・8月26日、空港周辺でISIS-Kによる自爆テロ発生。米兵16人と市民約200人が死亡。バス10台に乗った日本人とその関係者が、空港に近づくが、この日に発生したテロによる通行止めと混乱で断念して引き返す。
・8月27日、自衛隊カブールから撤収。救出数は邦人1名とアフガン人14名。この時点でJ I C Aなどの関係者も脱出し、残留邦人数は6人。
・8月31日、米軍、全兵士の撤退を発表。米国大使もこの時点で脱出。

この救出とペレーションの最大の失敗は、8月14日に外務省が一度避難輸送要請を出してから、実際の輸送機出発まで実に10日間もかかっていることです。
この失われた10日間がなければ、自衛隊機は15日にはカブールに到着していたはずでした。
この遅れの原因は、14日に外務省が防衛省に輸送要請を一度出してから引っ込めるという信じがたいことをしたためです。

例の自衛隊法84条にそぐわないので、自衛隊機に替えて民間機をチャーターしようとしたのです。
まったく愚かな話で、「危ない場所だから民間機に行かせる」という、当時既に多くの空軍機を出していた諸国からみれば頭がヘンになったんじゃないかという右往左往ぶりです。
カブールにタリバンが入ろうとどうしようと、ガニが逃げようとどうしようと、いやむしろそうだからこそいち早く自衛隊を派遣すべきでした。
自衛隊はとうの前にすべての準備を終えて、いつでも飛び立てる準備をしていたのですから。

この体たらくを見ると、外務省の中東屋界隈にはびこっていると見られる、タリバン宥和主義の影響を考えないわけにはいきません。
これは別個に記事として取り上げるつもりでいますが、典型的なのは元アフガン大使の高橋博史氏の発想です。
元大使からしてこんなことを言い出し、それを宮家邦彦氏などは「目からうろこだ。すべての人はこの認識を知るべきだ」なんて言っています。

「まずですね、タリバンとアフガンっていうのは一緒なんですよね。まず。タリバンという特別な考え方を持ってる人たちがいるわけじゃなく、アフガン人自身がああいうような考えを持っているわけです。
要するに、女性の権利は認めない、だからアフガン人っていうのはタリバンそのものなんです。そこはみなさん、大きな誤解をしているところがあるんですね」(飯山陽note)

この考えを敷衍すると、すべてのイスラム教徒はタリバンであリ、アルカイーダであるという事になります。
そしてタリバン善人論ですから、タリバンから日本とは友好を維持したいとい言われば舞い上がってしまい、多くのアフガン人や現地スタッフらがなぜ必死に国外脱出しようとしているのか理解できなかったねけです。
なにせこの高橋氏にかかると、アフガン避難民はただの「経済移民」だそうですから。
これではタリバンの急進撃を予想できるはずもないし、諸外国が緊急でピストン輸送している様子を高見の見物を決め込んでいたのでしょう。
かくして、こんな外務官僚に囲まれた茂木大臣が岸大臣に救出要請を撤回したために、貴重な10日間という時間を失いました。

自衛隊の海外派遣は外務省の要請がなければできません。
そして要請を出すには、自衛隊法84条によって「当該政府の了解と連携」、「安全が確保されている」という2点がクリアされねばならず、官僚も政治家もここでほぼ断念しかけていたようです。
それはいままでさんざん南スーダンPKOなどで「戦闘」があったかなかったか、日報にそれを書いたかどうかなどと、グジグジと野党から追及を受け続けたトラウマがあったためです。
もちろんこれは自衛隊法の不備と、自衛隊を軍隊と認めない戦後憲法から来ているのは自明ですが、今はこの問題は横に置きます。

おそらく8月15日前後から自衛隊機の派遣が発令される23日まで、水面下で派遣を求める岸防衛大臣と外務省がもみ合ったと思われますが、結局、菅氏が腹をくくって自衛隊機の派遣を決断しました。
ただし今回の自衛隊機派遣は、法解釈的には自衛隊法84条を超越しています。つまり超法規でした。
防衛省は「アブガンイスラム共和国」、つまりガニ政権が存続しているという虚構の上に立って外務省から要請を受けた形で出したようです。
このような国民の生命が関わることを、超法規でしなければならない仕組み自体が間違っています。
このことは立憲・共産党がつついて来る可能性がありますが、自分らがハンタイハイタイで縛ってきたからこうなったのですがね。

しかし自衛隊法84条が当然の前提としている相手国が消滅するという事態は、今後いくらでも起こり得るでしょう。
アフガンの場合、当該相手国政府は雲散霧消、かといってタリバン政権は出来ておらず、仮にできても承認するしないという問題があるために、権力の空位、すなわち無政府状態でした。
今回のことから苦い教訓を取り出すなら、邦人救出は相手国が無政府状態であることも視野に入れねばならないということ、そのためには当該国の「了解と連携」の一文を84条から削除することです。

危機管理は時間との戦いです。
いくら自衛隊がカブールまで一気に飛行できる新鋭輸送機を保有し、避難のために厳しい訓練を重ねた隊員を持っていたとしても、時期を失すれば今回のように空振りに終わってしまいます。
本来ならば諸外国のように、ガニ政権が崩壊を開始し始めた7月下旬から避難活動を始め、8月15日前後はもうラストチャンスだったのです。

下図が、7月9日から8月15日のアフガンの状況です。

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BBC

上図の右側が8月15日の状況ですが、前述したようにこの日に、外務省は防衛省への避難輸送要請を引っ込めてしまったのです。
まだこの時点では、アフガン政府は形だけとはいえ残存していました。
ロイター通信は15日、アフガニスタン内務省当局者の話として、タリバンが首都カブールに進攻を始めたと伝え、タリバンは既にカブール以外の国内主要都市を落とし、カブールへの進撃を開始した可能性があると報じました。
一方で、タリバンは15日の声明では、「力や戦闘でのカブール入りは望まない」とし、政府側と平和的な協議が進行中だとも主張しています。
そしてタリバンは、戦闘員に「カブールの門の前にいて、都市に入らないよう指示した」とも述べていました。
カブール入城を前倒ししたのは、ワシントンポスト(8月28日)によれば、市内の治安が一気に悪化して略奪が横行したからだと報じています。
"Surprise, panic and fateful choices: The day America lost its longest war"
https://www.washingtonpost.com/world/2021/08/28/taliban-takeover-kabul/

つまりこの8月15日までなら、アフガン政府は形式的には存続してのです。
したがって、この半月間の間にカブール政権から自衛隊機による避難の「了解と連携」の言質をとれば、法的にはよかったのです。
それを現地大使館は、15日には英軍機に乗ってちゃっかり大使以下全員が逃げてしまっています。
もちろん勝手に現地大使館がにげるわけにはいかないので、本省が指示を出したのです。
満足な情報収集を怠って、タリバンの進撃状況を伝えず、自分は逃げることで頭が一杯、こう評されても致し方ありません。

8月15日にはもうタリバンはカブールに入城し、17日には空港付近に検問所を設けています。
下の写真はタリバンの検問所ですが、こうなってしまっては実効支配権を握ったタリバン相手に直接交渉するしかありません。
あるいは、タリバンと協定を結んだ米国を通して避難交渉するしか選択肢はなくなります。
驚いたことには、外務省は米国がタリバンと避難協定を結んでいることをどうも知らなかったようです。
あるいは知っていても、なぜかそれを使おうとはしなかったのです。

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タリバンが空港前に検問所 市民の国外退避を阻止 - SankeiBiz

ここを巧妙に動いたのが韓国大使館でした。
韓国は一回国外に脱出した大使館員を呼び戻して、避難に当たらせています。
今回は韓国政府のやり方が正しいのです。韓国は25日の段階で、国民と関係者390人全員を出国させましたが、いち早く韓国政府は日本と違っておかしな法的縛りがないぶん直ちに軍輸送機と特殊部隊を現地に向かわせたようです。
それも特殊部隊を投入したようですから徹底しています。
同時に、現地大使館員は米軍と交渉し、米軍が押さえていたバス6台を別けてもらい、それに米軍人にバスの同乗を依頼し、一気に390人を乗せて空港まで運んでしまいました。作戦名は「ミラクルバス」と言うのだそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASP8V75LHP8VUHBI01H.html
米軍人をバスに同乗させたのは、市内のタリバン検問所を通過するには、協定がある米国の顔を使うしかなかったからです。

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アフガン現地スタッフに長期滞在ビザ発給 関連法令改正へ=韓国 | 聯合

「韓国政府はアフガンの政権崩壊直後に輸送機3機と特殊部隊66人を現地に向かわせると同時に、現地の大使館員が米軍と交渉して米軍が押さえていたバス6台に350人あまりを乗せて空港まで運びました。米軍のバスはタリバンとの合意で空港との間を移動できることになっており、韓国側は米軍人をバスに同乗させてタリバンの検問所を通過したのです。
脱出したのは在アフガニスタン韓国大使館や韓国政府が運営する病院、職業訓練施設などで勤務していたスタッフとその家族390人。韓国政府は「特別功労者」として当初は短期ビザを発給、さらに就職が可能な長期ビザへの切り替えを可能にする法整備も進める方針です。全員が27日までに新型コロナウイルスの検査を受けた後、政府施設に滞在する予定とのことです。
作戦に参加した特殊部隊の隊員は「大韓民国政府に協力し共に働いたアフガンの職員たちとその家族たちを、無事に国内へと移送する任務に参加することができ光栄だ」と述べています」(小川和久 ニュースを疑え9月2日)

初めて韓国を褒めますが、見事です。
一方、日本大使館は情報収拾を怠り、米軍との共同行動をしませんでした。
当時、カブールで唯一頼りになるのは、タリバンと避難協定を結んで安全を確保している米国しかなかったにもかかわらず、です。
外務省が大好きな日米同盟はどこに消えたのでしょうか。こうういう時に使わないで、いつ使うのか。

こうやって書いているだけでイライラしてきますが、要は大使館の情報収集が致命的に甘く、いかなるパイプも現地で構築していなかったようです。
アフガン情勢が緊迫しており、ガニ政権地域がみるみるうちに陥落し始めたことを、NATO軍関係の国々はすべて知っていました。
だから7月下旬から8月にかけて、一斉に自国民と現地スタップの避難のために輸送機を送っていました。
にもかかわらず、昼寝をしていのが日本大使館です。
また、先述したようにタリバン-米軍協定も知らず、バス10台の車列で市中をうろうろし、自爆テロでまた引き返すということをしてしまいました。
しかもこの指揮をとったのは、大使館員ではなくJICAときていますから、どうしようもない外交貴族たちです。
彼らに欠落していた最大のものは、自国民をなにがなんでも救わねばならない、そのために国家があるのだ、という気概です。

問題点を整理すれば、

①日本政府の避難輸送発令の遅れ。
②自衛隊による避難輸送の障害となっている自衛隊法84条の改正の必要。
③現地大使館の情報収集能力の著しい欠落。
④外務省の度し難い無能と怯懦。

というところでしょうか。

 

2021年9月 2日 (木)

バイデンの「類いまれな勝利」とは

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毎日眠たい男の話題で恐縮ですが、バイデンが「撤退勝利宣言」を出しています。

「アフガン戦争終結を正式宣言 駐留軍撤収「類いまれな成功」 米大統領
バイデン米大統領は31日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、2001年から続いたアフガニスタン戦争の終結を正式に宣言した。
民間人の退避と駐留部隊撤収について「類いまれな成功だった」と自賛。アフガンへの軍事関与を続けるのではなく、中国など今後の脅威への対処に国力を傾けるべきだと訴え、アフガン戦争
に幕を引いた決断を正当化した。
バイデン氏は約25分間の演説の冒頭、「米史上最も長い、20年に及ぶアフガン戦争を終わらせた」と表明。これまでに莫大(ばくだい)な資金を投じ、計80万人の兵士を送り込んだが、その対価として多くの機会を失ったとして、「もはや国益にかなわない戦争を続けることはしない」と理解を求めた。
一方、イスラム主義組織タリバンが全権を掌握したアフガンから現地協力者ら12万人以上を退避させ、出国を希望する在留米国人の9割を救出したと強調した。「米国だけがこの退避作戦を遂行する能力を有していた」と胸を張った」(時事9月1日) 
アフガン戦争終結を正式宣言 駐留軍撤収「類いまれな成功」 米大統領(時事通信)

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アフガン撤退は「米国に最善の決断」 バイデン氏演説

へー、そうなんだ。勝ったんだ、知らなかった(爆笑)。
平均年齢20歳の米軍兵士16名と200名を超えるアフガン人の死亡者を出した自縛テロを受け、ブリンケンも認めているようにまだ百人以上の自国国民と、数万人規模のアフガン人脱出希望者を残しておいて、そうか、これは「類いまれなる成功」であったのかぁ。(遠い目)
今残されている米国人は事実上タリバンの人質扱いで、今後取り返すのが大変ですが、バイデンに言わせると「9割退避させた。エライだろ」のようです。
米国人以外にも、米軍に関係したアフガン人は少なく見積もっても8万人。いまだ6万人前後が国内に隠れていると言われています。
見つかり次第処刑されるでしょう。

ちなみにアフガン人は皆タリバン、だから逃げるアフガン人はただの経済移民です、なんて妄説を振りまく高橋博史元アフガン大使と元外務省の宮家邦彦さん、そりゃタリバンの言いぐさですよ。
この元外交官コンビのロジックでいくと、アフガン人=タリバンなんだから、ひとりの現地の人も避難させる必要がないことになります。
ああ、だから日本大使館は真っ先に逃げたのですかね、これでわかりました。
この人らについては、別記事でとりあげるかもしれません。

それはさておいても、バイデンはこの「20年間にわたる戦争を終わらせた最大の功労者はオレだ」、と言いたくて8月31日なんてムチャクチャな撤退計画を立てたのでしょうから、どんなに人が死のうと、置き去りにしてこようと、アフガンを中国に譲り渡そうが、言うことは決まっていたのです。
ただし、バイデンがなんと言おうと、民主主義を支持するアフガン人は、米国が彼らを保護し、避難場所を提供してくれると思っていました。

同じように見える米軍撤退であっても、ベトナムは米地上軍が撤退して「現地化」が図られるところまでは同じでも、そこから2年間の余裕がありました。
その間に、自国の行く末をはかなんだ者は、米国なりフランスなりに逃げる時間がたっぷりあったわけです。
そして1975年5月の南ベトナム政府の崩壊に際しても、米国は全力で米国支持者らを救援し、米国で永住権を与えました。
だから負けても、後々まで米国の信用という無形の資産として残されたわけです。
米国に協力しても、失敗したら捨てて逃げるでは誰も信用しませんからね。

しかし今回はまったく違います。
8月末撤退完了を命じたホワイトハウスに、国務省はこんなに短期での撤退は無理だ、ビザ申請の処理だけで12〜18か月かかると答えたといわれています。
ですから、民主主義を支持したアフガン人を国外に脱出させるには、最低で1年半、可能ならば2年の時間の余裕が必要だったのです。
それを数カ月でやれというのは、初めから現地協力者は切り捨ててかまわない、と命じていると一緒です。
つまり、はイデンは初めから夜逃げ撤退作戦をする気だったのです。

この撤収期間、米国は主力が撤退したとしても、最低でも緊急対応可能な特殊部隊と空軍をアフガンに残しておかねばならなかったはずです。
その拠点としてバグラム空軍基地は絶対に押さえ続けておくべきでした。
撤収だから放棄するのではなく、秩序ある撤収をするには軍事的担保が必要なのです。

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BBC

このバグラム基地は、2001年以来最大の軍事拠点であると同時に、米国のビヘイビア(行動)の象徴でした。
この基地は、旧ソ連軍が1980年代にアフガニスタンに侵攻した際、基地として建造され、米軍が2001年12月に基地に入り、最大1万人の駐留が可能な巨大基地へと作り変えました。
2001年12月の基地改築着工時には、同時多発テロで破壊されたニューヨークの世界貿易センタービルのがれきを、遠くニューヨークの消防士と警察がバグラムまで運び、下写真の礎石として埋め込むセレモニーがあったそうです。
その意味で、米国民の9.11テロへの怒りの象徴でもあったわけです。

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アフガニスタンのバグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収 - BBCニュース

ところが下の写真をご覧ください。これは米軍撤退直後の7月初めに撮られたものですが、そこかしこに車両は散乱し、食料や備品も置き去りにして米軍は「夜逃げ撤退」をしてしまいました。
この撤退直後、包囲していたタリバンが素早くこの基地を接収し、いまは彼らの軍事拠点になってしまいました。
これでは米国の威信もへったくれもありません。
いくらバイデンが「類まれな勝利」と言い募っても、ただの敗走にすぎません。

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車放置、食料散乱…米軍ひっそり撤収 アフガン・バグラム空軍基地

米国がこのバグラム空軍基地とそれを守るアウトポスト(前哨基地)だけでも維持し続けて、その上で撤退作戦を2年かけて秩序ある撤退を実施していたなら、こんな阿鼻叫喚の事態は起きなかったでしょうし、自爆テロもなかったはずでした。

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カブールの空港に人々が殺到。アフガニスタンから脱出を求め混乱状態

結局、この「夜逃げ撤退」がタリバンの一斉攻撃の号砲となり、アフガン政府はあれよあれよと崩壊の憂き目に。
もちろんポンペオがFOXとのインタビューでも言っているように、大統領のアシュラフ・ガニは私腹を肥やすことにのみに専念し、支援の増額を求めるためにワシントンでのロビー活動に明け暮れていたのは確かでしょう。
しかしそれでも米国が時間の余裕を持った撤収計画を立て、その軍事的担保としてバクラム空軍基地に一定の部隊を残留させていればこんな馬鹿なことにはならなかったはずです。
そしてそれはホワイトハウスの意志ひとつで充分に可能だったのです。

大戦略として、米軍の軍事力を南シナ海とインド・太平洋方面にシフトすることは正しい選択ですが、それが半年一年遅れてもなんの支障もなかったはずです。
むしろここでアフガンにおける米国の敗北を世界に宣伝してしまい、アフガンを中国に「割譲」するパワーバランスの崩壊のほうがよほど大きな外交的ダメージだったはずです。
しかも、当該国とも、はるか離れた辺境アフガンにまで兵を送った同盟国と協議もしないで撤退してしまったために、同盟国との亀裂を作りました。
英国など、「スエズ動乱以来最大の裏切り」と激怒し、バイデンが「自国を守る意志がない国は守らない」などと時と立場をわきまえない発言をしたために、いらぬ同盟国の動揺まで引き起しました。韓国が本気でびびっていたのはご愛嬌でしたが。
さてさて、バイデンは外交上手だから安心だ、なんて言ってた元外交官はどこの誰でしたっけね。

ところで、米国は世界有数の民間人撤退計画を有する国です。
そのためにNEO(非戦闘員避難作戦)を持ち、常々訓練をしています。
これはその地域が戦闘地域となる予想がある場合、あらかじめ自国の民間人を撤退させておく必要があるからです。
たとえば、北との緊張が高まった2017年には韓国でNEO訓練を実施しています。

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在韓アメリカ人にとっては常識!軍事行動に先駆けて行われるNEO

現在、韓国にはアメリカ人が約14万人、そのうち米軍関係者が約2万8500人在住している。国外退避までには(1)退避情報が入る(2)身支度・準備(3)登録手続き(4)南へ移動(5)韓国国外へ退避、という5つのステップがあり、韓国南部への輸送は民間業者によって行われ、アメリカ軍はその警備を担当。そして米軍が準備した航空機でグアム・沖縄へ脱出させる。軍事アナリストの小川和久・静岡県立大学特任教授によると、米軍は平時から陸上輸送の民間業者や25機前後の民間旅客機をおさえており、準備は開戦の1カ月前からスタートし、退避10日から2週間ほどで完了させるのだという」(ABEMAタイムズ2017年12月7日)

このように米軍は非戦闘員避難作戦に非常に熟達しており、アフガンと同じ広さの地域を対象とする場合を想定すると、統合参謀本部が上手に各方面に調整を行い、国務省が安全な第三国に難民収容施設を確保できさえすれば、30日から45日程度で計画から準備まで可能と言われています。
しかし、「夜逃げ撤退」をしてしまえば、タリバンがカタールでの和平協定を守るはずもなく、一気にカブールへの道を開いてしまったわけです。もう、はちゃめちゃ。
だからタリバンに協定を遵守させるために、バグラム基地を押えつづけていなければならなかったのです。

こうして米国はしないでいいドタバタ逃亡劇を演じ、多くの米国に助けを求める人々を置き去りにして、バイデンが言う「類まれな勝利」をつかんだというわけです。

 

海外に逃れたアフガニスタン人の生の声
海外に逃れたアフガニスタン人の生の声
最大民族はパシュトゥン人で人口の4割を占め、タリバンの9割を占めると言われる。ハザラ人は多数派のパシュトゥン人らから差別され、迫害を受けてきた歴史がある。

2021年9月 1日 (水)

眠たい男の眠たい報告書

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バイデンが情報機関に提出を命じた、COVID-19の起源についての報告書が明らかになったようです。
気になるでしょうから、結論から言えば最悪の報告書です。
いかにも眠い人が出した報告書(以下バイデン報告書)だけあって、いちおうは追及しているふりはしています。

「バイデン大統領が米国の情報機関に命じた新型コロナウイルス起源の報告が27日に明らかになった。新型コロナウイルスの起源問題は依然としてグレーゾーンが多いが、専門家たちはいかなるゲノム操作の可能性も排除し、また新型肺炎が生物兵器である可能性も排除した。
同時に、実験室漏洩であるか、人と感染動物との自然接触によるものか、この二種類の理論にはともに合理性があるとした」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ) NO.412 2021年8月29日)

「いかなるゲノム操作の可能性も排除し」とは、このCOVID-19が天然由来のものだという事になります。
つまりピーター・ダザックと石正麗がやっていたことが証明されている、コウモリのウィルスを使った機能獲得実験はこのCOVID-19とは無関係だとバイデンは言っていることになります。
とんでもない後退です。こんなものなら、出さなかったほうがよほどましでした。

その上に「新型肺炎が生物兵器であることを排除した」とは、ダザックと石、そして武漢ラボのオーナーの人民解放軍は世界の人々の健康のためにこのCOVID-19と97%同一の新型ウィルスを作成していた、ということのようです。
おお、中国共産党とその軍に栄えあれ!

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ピーター・ダザック

人民解放軍のウィルス研究所は、生物兵器に転用するなんて悪しきことは夢にも思わず、ひたすら人類の福祉のために日夜戦っていたのだと、ほかならぬ米国大統領閣下自らが裏書きしたのですぞ。パチパチ。
しかし解せないのは、人類福祉のため営々と作ってきたはずのCOVID-19のはずなのに、武漢ラボはこれを中国共産党に知らせていなかったというのですから、これいかに。

「中国政府がこの感染の大流行前にこのウイルスについて、おそらく知らなかったであろうと強調している」(福島前掲)

中国政府、ないしは共産党が配下の解放軍系ラボが何を研究しているのか知らないなどということは、まずありえません。
知らなければ政府は予算配分もできないはずで、バイデン報告書によれば中国政府は今まで石グループが費やしてきた巨額の費用の根拠を知らずに支出していた、武漢ラボが勝手に独走していた、ということになります。
一般の国でもそんなことはありえませんが、中国のような全体主義国の仕組みをまったく知らないとしか思えません。

またバイデン報告書は人工的にコウモリウィルスを改変した形跡がないと言っていますが、自然界のコウモリにはCOVID-19と同一のウィルスは見つかっていないのです。
もしそんな都合いいウィルスが見つかっていたら、ダザックと「コウモリ女」の石正麗はわざわざ長い時間と巨額の費用をかけて機能獲得実験などに取り組む必要などなかったはずです。

発生源の武漢海鮮市場ではコウモリは売られていませんでしたし、新型コロナウィルスと近似したウィルスを持つとされるキクガシラコウモリも武漢から遠く離れた雲南などにしか生息していないのです。
キチガシラコウモリのように飛翔力が弱い生物が、パタパタと武漢ラボまで飛んできたとでもいうのでしょうかね。
もちろん違います。石たちのグループが、コウモリランドができるほど大量に捕獲し、そこで改変実験をしたからです。

それについて石は論文を出しています。
FOXニュースの『ネクスト・レボリューション』の新型コロナウイルス「研究所流出説」によれば、アンソニー・ファウチのNIAID(米国立アレルギー感染症研究所)のために武漢研究所が行った作業は、2017年の助成プロジェクトの発表論文に詳しく説明されています。
この「中韓報告」の共同執筆者こそピーター・ダザックと石正麗で、彼らは「遺伝子変異体を構築した」と堂々と書いているのです。

「単一個体のフンのサンプルから、更に新型のSARS関連コロナウイルスRs4874の培養に私達は成功した。(中略)WIV1をバックボーンとする感染性細菌人工染色体 (BAC) のクローン群と、8種類の異なるコウモリSARS関連コロナウイルス由来のS遺伝子変異体を私達は構築した。(中略)Rs4231とRs7327の感染性クローンのみが変異後にベロ6細胞における細胞変性効果に至った」
(胡犇、ピーター・ダザック、石正麗 PLoS Pathogens誌2017年11月30日)

機能獲得変異研究について簡単に説明します。
これは実験室で反復し、より強力さと威力を持たせるように遺伝子コードを操作し、ウイルスが新たな機能を獲得する研究です。
このことによって、感染力が極めて強く、致死性の高いウイルスを実験室内で自由に設計でき、あらかじめ実際の流行前に治療法やワクチンを作っておくことが可能です。

この実験は一度誤ると感染力が強く、しかも致死性の高い新種のウィルスを作ってしまい、万が一流出すると大惨事になります。
なにせここで作り出された新型ウィルスは、自然界にあるものではなく、強力に感染し致死率が高くなるように人工的に作られた悪魔だからです。
転用すればウィルス兵器として絶大な効果を発揮することは、この1年8カ月を見ればわかるでしょう。

つまり彼等は、実験室でヒトの細胞をそれらに感染させ、自作の人工ウイルスが機能的ウイルスとして自己複製できる事を示したというわけです。
そしてこれにカネを出していたのが、他ならぬ民主党がホワイトハウスに連れてきたアンソニー・ファウチでした。

私はファウチやダザックが、中国の生物兵器製造を手助けしたとは思っていません。
おそらく機能獲得実験が、新しいウィルス感染の防疫に役立つはずだと考えたのでしょう。
ところが米国内ではウイルス漏洩事件が起きて実験が禁止され、やむなく武漢ラボの石グループと提携することにしたと思われます。

石は軍籍を持っている研究者で、武漢ラボ自体からして人民解放軍管轄の組織です。
中国の科学研究は、すべて軍事転用することを前提にしています。
とうぜん武漢ラボの石らは、米国のふたりとは違って生物兵器になりうるものとして研究をしていたはずです。

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アンソニー・ファウチ

米メディア「USAトゥデイ」などの昨年の報道によると、米国立衛生研究所(NIH)は2015年以降、コウモリ由来コロナウイルスの研究のために、このダザックのエコ・ヘルス・アライアンスに370万ドル(約3億8702万円)の助成金を提供しています。
この関連性を否定してしまえば、ファウチからダザックを通じて武漢ラボに多額の米国政府が助成金を出していたことに触れないで済みます。
ファウチはバイデンのホワイトハウス医療顧問ですから、ファウチまで伸びる疑惑は、バイデンを直撃する可能性があったのです。

ただし、こんないいかげんなものを出したら議会でメタメタに批判されているのは目に見えているので、とりあえず「実験室漏洩か、実験動物との接触はありえる」と言い訳のように書き添えたというわけです。
実験室からの漏洩でも実験動物との接触でもいいですが、ウィルスが洩れたのは当たり前で何をいまさら。
問題は漏れた漏れないというレベルではなく、いまの探求は中国が生物兵器として意図的に使用したのか、あるいは過失による漏洩か、に移っているのです。

トランプとポンペオはその可能性があると明言していましたし、前政権で国務長官特別顧問として新型ウイルス発生源の調査を進めていたデビッド・アッシャーは、報告書で、武漢ラボを名指ししています。
アッシャーは、生物兵器を含む大量破壊兵器の拡散防止や国際テロ対策の専門家で、現在はハドソン研究所の上級研究員をしており、今年5月に「中国政府の新型コロナウイルスの悪用に対する正しい対応」と題する報告書を同研究所を通じて発表しています。
その中で、武漢地域でのコロナウイルスの一般感染が知られるようになる直前の2019年11月頃に、武漢ウイルス研究所の所員3人が同ウイルス感染の症状に酷似した感染症にかかっていたことを、米国情報機関の情報として明らかにしました。

アッシャーはそのうえで、「100%の証拠はないが、今回の新型コロナウイルスは、武漢の研究所で進めていた生物兵器開発の途中でウイルスがまず所員に感染し、その後、市街へと流出したことが確実だ」と述べています。
そして武漢ラボのウイルス研究などに対して、米国の官民から資金援助があったことも記しています。
この「米国の官民」が、とりもなおさずファウチの米国立衛生研究所とダザックのエコヘルス・アライアンスのことです。
米国は意図しなかったとはいえ、こともあろうに新型ウィルスを用いた中国の生物兵器製造の研究を手助けしてしまったのです。

ただし、そのことで米国側に多数の証拠を残していってしまいました。
なにも武漢ラボを調べなくても、米国内に証拠の山があるのです。
ダザックとファウチを徹底的に調べれば、米国側の足跡(フットプリント)がでてくるはずなのに、バイデンの情報機関とやらはなにをしているのか。
私はここを調査するのかと思っていましたが、手をつけなかったようです。やれやれ。

そのうえ、バイデン報告書は「中国政府がこの感染の大流行前にこのウイルスについて知らなかった」とあらかじめ無罪を宣告してしまっています。
極論すれば、中国政府が知ろうが知るまいがどちらでもいいのです。
問題は、あくまでも人民解放軍が管理するウィルス研究所が新型ウィルスを作ってしまったことであり、それをこともあろうに流出させてしまった中国政府の責任なのです。

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バイデン米大統領 イスラエル首相との会談中に居眠りか? - Sputnik

ここまで腰が引けた無意味な報告書を作っておきながら、バイデンはこんな声明を出しています。

「この起源調査はバイデン大統領の要請で行われた。米国大統領がこの報告が出たあとに出した声明では、中国の透明性の欠如と情報の隠蔽について非難し、北京が国際的専門家チームの現場調査を許可すべきだと呼びかけた。「我々の監査任務が完了したとしても、この感染症の真相を追求することをやめない」とした」(福島前掲)

中国はWHOについても追加調査しないという念書を取っているのに、米国も含む国際調査団の現場調査なんか認めるはずがないでしょうに、バイデンはできるはずがないのを充分知っているくせに、自分の面子を繕うためだけにそう言っているだけです。
本気でそう思っているなら、バイデンが好きな国際的同盟で調査をするように圧力をかけたらいい。
それもしないでおいて、なにが「北京に呼びかけた」ですか。とんだ茶番です。

ちなみに、このバイデン報告書は情報機関が作ったという事になっていますが、関わった5機関の評価はバラけました。

「ボイスオブアメリカによれば、米国の情報機関のうち四機関が「ウイルスが動物から人類に感染した自然発生的な武漢にものである」とすることに「低い信頼度」を示したという。五番目の情報機関は「最初の人類感染と実験室が関係ある」とすることに「中程度の信頼度」を示した」(福島前掲)

大山鳴動ネズミ一匹の典型となりました。
こんな人物が大統領の椅子に座っているかぎり、大統領命令による調査のこれ以上の進展はないでしょう。
ただしこんな下院マッコーネル報告書に遥かに劣る内容で、議会が民主・共和に限らず満足するとはとても思えません。
議会を中心とした報告書が作られる動きが出ることを期待します。

なお、中国外交部は、米国がこのリポート結果を発表する前から米国の調査を攻撃し、中国側はWHOに、米陸軍のフォートデトリックのウイルス研究所を調査させよと主張しているそうです。
あ、そうそう、米軍が軍人オリンピックで武漢に新型ウィルスを持ち込んだからパンデミックになったんでしたっけね(笑)。

 

※ブログデザインが狭くなってしまっていることに気がついたので、通常サイズのものに変更しました。

 

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