中国がTPPに入りたいそうです
総裁選が大変に盛り上がっているために、ほとんど日替わり総裁選定食となっています。
そのためか頭がえらいドメスティックになってしまいました。
中国がTPP申請をしたようです。
まぁ、去年11月頃から習はするぞって言ってたんですが、よもやほんとにするとは思わなかった。
今のTPP窓口事務局国はNZがしていますが、NZもどういう顔をしていいか、正直困ったことでしょうね。
この国はオージーと違って、微妙なスタンスを中国と取りたい国ですから。
ちなみに今はCPTPP(「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定・ The Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership )、あまり長いので加盟国11カ国で「TPP11」と呼ばれています。
なんか若き赤き血のイレブンみたいね。
そのうち、今申請中の英国が晴れて12番目の締結国になるのは確実ですから、若き赤き血の12となる予定です。
ハフィントンポスト
2018年時点で、世界全体のGDPの13%、貿易額の15%、5億人の自由貿易圏となっています
「中国が包括的および先進的なTPP協定(CPTPP)への参加を正式に申請した。
17日の中国国営グローバルタイムズなど海外メディアによると、中国商務省は声明で、王文濤商務相がニュージーランドのオコナー貿易・輸出振興相にCPTPP参加申請書を提出したと明らかにした。双方は中国の正式申請後、後続作業について議論する遠隔会議も開いた。
グローバルタイムズは今回の参加申請を、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による衝撃と中国を孤立させようとする米国の努力にもかかわらず、世界貿易の自由化に対する中国の献身を見せる動きだと説明した。また、これは世界貿易で中国のリーダーシップの役割を強化すると同時に、CPTPP参加を避ける米国に圧力を加えるためのものだと、専門家らを引用して伝えた。」(中央日報9月17日)
イヤミったらしく韓国紙から引用しましたが、この韓国も中国の顔色を見ているうち時期を失してしまいましたが、いまやその当の中国が申請すると言い出していますから、どうするんでしょうか、知ったことではありませんが。
恥を忍んで申請しても、わが国と政治外交がらみですぐに貿易をからませるような国は難しいでしょうがね。
とうぜんのことなら、中国の申請が認められるハードルは極めて厳しく、タリバンが女性をトップに据えるていどの確率しかないと思われます。
そもそもこのTPPは、アジア-太平洋で貿易のルールを統一して、中国の覇権主義から自由主義諸国を守ろうとするために始まっています。
私も当初は恥ずかしながら中野剛志氏の影響で、グローバリズムの加速化を心配していましたが、時と共に中国に対抗して作られたことがきわめて明瞭になっていきました。
ザ、クアッドの経済版がTPPです。
もちろん、中国もそれを百も承知でオレも入れろと言っているわけですが、ハードルは極めて高いでしょう。
まず中国の有力企業のことごとくが国有企業であり、そこに対してさまざまな優遇措置が取られています。
国営企業の有形無形の優遇措置は、TPPがもっとも嫌うことで、ベトナムもこれで苦労しました。
また、中国では資本の移動が自由ではありません、海外企業が自らの利益を移転することが困難です。
その上、中国に投資した外国企業は、中国の国内法であるデータセキュリティ法によって、中国国外への持ち出しができません。
そして、その企業データーも、暗号法によって当局が恣意的に開けることが可能です。
またソフトウェアの設計図と呼ばれるソースコードも開示させられます。
中国は政府調達から外国企業を排除する「安可目録」が存在しており、外国企業は排除されています。
「さらに政府調達でも参加国のモノやサービスに差別的な待遇をとることも禁止する。中国では「安可(安全でコントロール可能な)目録」などといったリストが存在し、これにより外資排除が進められていると指摘されている。
中国にある日本企業で作る「中国日本商会」が2020年に出した建議には次のような記述がある。
「2019年より一部の日系企業より、政府調達において外資企業製品であることを理由に政府調達を失注、あるいは入札に参加できなかったとの声が多数挙がっている」(中国日本商工会)
この建議ではさらに「そもそもリストに関する正式な情報は外資企業には開示されておらず(中略)著しく外資企業にとって不利な状況という指摘もある」と綴っている。こうした水面下の規制が加入交渉で障壁になる可能性はある」(高橋史弥2021年09月17日 『 中国は本当にTPPに加入できるのか。データ移転、国有企業優遇、外資排除...予想される障壁は』)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6143e5b7e4b0d808bf26e57a
ですから、中国が加盟するのは極めて厳しいのですが、それに加えての決定打がウィグル・香港問題です。
欧州委員会では、中国当局による新疆ウイグル自治区のウイグル人住民への強制労働を批判し、強制労働で作られた製品が「欧州の店で販売されるのを認めない」としています。
TPPでも同じ問題が提起されはずです。
これだけではなく、だめ押し的にTPPには「加盟国すべての了解が必要」という条項があります。
早々と反対を打ちだしたのは、やはりオージーです。
テハン貿易相は17日に、「まずは2カ国間閣僚会議をするのが筋だ」と声明しました。
これは中国が、なにかにつけ中国に抵抗を続けるオージーの牛肉やワインに制裁関税をかけていじめたことを言っています。
中国が政治的外交問題を貿易を使って圧力をかけるのは定番外交手法ですが、最近も台湾のパイナップルに対してやりました。
あれを大規模にしたのが、オージーに対する貿易上の嫌がらせの数々でした。
ちなみにわが国は梶山経済産業大臣は、「TPPは高い水準の取り決めだから、果たして中国はクリアできるかしっかり見極めさせてもらう」と言っています。
ストレートにダメと言わないのがうちの国らしいですが、麻生さんは「条項をよく読んでみろ。今の中国が新規加入できるような状態じゃないだろう。受け入れ側としてもホントかという話だ」とハッキリ述べています。
高市氏は「他の締結国とも提携して対応にあたる」と正論を言っています。
高市さんは、どんな問題でもいつも真ッ正面に答え、妙なはぐらかしがないことが好感をもてます。
あ、そうそう聖子ちゃんも逆方向に真ッ正面で、「前向きに検討すべきだ」、といつもながら滑ってどこか遠くに飛んでいってしまいました。
この中国の動きは、安倍政権時が台湾をTPPに参加させようと動いてきたことに対するカウンターです。
台湾加盟はほぼ了解が得られていましたが、これに危機感を持った習が先にオレを入れろとゴネたといったところです。
それにしても、さっさと米国戻ってこいよ、TPPの意味はよくわかってんだろう。
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総裁選の最中に打ち上げた大きめの観測気球、と見てます。マスコミは必ず質問しますからね。
このTPP参加申し込みは、『AIIB』『一帯一路』と同様、新総裁を『バスに乗り遅れるな』の声に晒す為の布石の意味合いを含んでいると思います。
彼の国にとって有為な政治家は誰か。日本経済界へ秋波を送りつつ、経団連から評価されている岸田さんへのアシスト、そして押しに弱そうな岸田さんへの影響力(経済界からの)を担保しときたい、てとこでしょうか。彼の国は高市さんになることが嫌でしょうからね。
外交は囲碁と全く似ています。五手、十手、果ては百手先に相手を押し込む可能性があるなら、彼の国は必ず懐に打ち込んで来ます。
その意味において、安倍さんは稀有なプレイヤーでした。(ご本人が囲碁を打てるかどうかは存じ上げませんが)
河野さんは懐に攻められたら頭がいいだけに石を捨てるでしょう。岸田さんは押し込まれたら、受け側に回ってズルズル押し込まれ、下手すりゃ失着しかねません。その点、高市さんならキッチリと『攻め込ませない』打ち方に徹すると思います。
投稿: osyou | 2021年9月20日 (月) 07時02分
いつも楽しみに拝読しております。
中国、凄いですね。「厚顔無恥」とい四文字熟語の説明に使える事例になりそうです。せっかくご申請いただいたのですから、中国の国内的には受け入れがたい理由を、事例を挙げて事細かかつ真摯にご説明し、加えてそれを大々的に公表して差し上げるのがよいように思います。
TPP11でどんな議論になるのか、ちょっと楽しみにしています。
投稿: 都市和尚 | 2021年9月20日 (月) 09時48分
ここの人たちはトランプ外交を手放しで高評価していたがTPPから脱退して日本の説得にも乗らなかったのはトランプ。反中包囲網を形成したのは高く評価できるけどそういうところに詰めの甘さを感じた。
投稿: 哲也 | 2021年9月20日 (月) 09時54分
若き血のイレブン→X
赤き血のイレブン→O
梶原一騎先生にあやまります。
投稿: ひかりちょういち | 2021年9月20日 (月) 12時54分
各国が親中・反中かは関係なく、ルールが守れる訳がないのだから加入も認められる訳がない、のは流石に中共も分かっているのは間違いないのに。
ただ単に「嫌われ者が仲間に入れろと威張って近づいてきて、案の定断られた」という間抜けな絵にしかならないのに、何故こんな訳分からんアプローチしてるのでしょうね。
・プーさんは本気で耄碌していて、断られる訳が無いと信じきっている?
・プーの側近がワンチャンあるんじゃないかと勇み足でアプローチしちゃった?
・何らかの汚い根回しで、既に日本含めて全部の国から承認を得る手筈が整っている?
投稿: ねこねこ | 2021年9月20日 (月) 17時14分
朱建栄さんもビックリのTPP加入申請ですが、中国外交が麻痺している事の証左となる事件です。
事の本質は加盟小国への個別撃破や揺さぶり、同じ社会主義国ベトナムと比較してのいちゃもんなど、戦狼ぶりを発揮すべく諍いの種まきをしたという事。嫌われ者のジャイアンが、身を挺して破壊行動に出たものと思えばそんなに間違いじゃないでしょう。
日本や豪州は他の加盟国にさきがけて「絶対反対」の意思表示を早急に、かつ断固として行うべきです。
ただ中共に親族企業を人質に取られている河野太郎が新総理なら、この面でかなり心配です。
米国では台湾呼称の公式化が実現するかも知れず、しないまでも米台経済連携は既定路線です。そうすると記事の指摘のように、つづく台湾のTPP加盟は自然の流れになります。
赤っ恥かく前にクギを刺した意味合いも強いですね。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年9月20日 (月) 18時35分
高市氏以外が総裁になったら、日中友好の美味の下、日本が積極的に中国のTPPを推進するかもですね。
投稿: 田中 | 2021年9月20日 (月) 20時38分
トランプ親ビンが米国を脱退させたのは、国連のように超大国USA
さえも弱小国と等しく1票扱いする(拒否権はあるにせよ)ので、「経済
協力は民主選挙じゃねぇぞ、株主総会のように、よりカネを負担した
者には差(なんか特権)をつけろや、さもないと巨大市場を持つ米国が、
弱小国どもの好きなように蹂躙されてしまうわ!」との、不公平感から
でした。
中共はこれを逆手に取って、「オラオラ、14億人だよん、消費者の数
だよん、この巨大市場をTPPの理念通りに開放するって言ってるの
に、お前ら反対するなんて、そんな脳タリンのスカタンじゃないよな?」
と、米国に当てつけながら、『据え膳食わぬは男の恥』とばかりに餌
を撒いてきたのだと思いますわ。日本の財界人の多くは、正直ヨダレ
がダラダラ垂れてしまったと推測します。他加盟国もそうでしょう。
もちろん最初は、中共得意の猫なで声で中国の加盟を施し、加盟が
許されると、香港のように「約束なんてクソくらえ!TPPはオレのモノ
だぜ、ええかお前ら、オレの言う事をよく聞けよ、聞かないと殴るよ」
と、今現在、国連を好きなようにしているように、TPPを支配する魂胆
ですわ。コロナでもWHOを支配して、コロナを全世界に撹拌した大犯
罪も知らんぷりですわ。同じく、TPPの乗っ取りですわ。
以上のように思うので、私は中共のTPP入りは可能性は少ないなが
らも、あるかも知れないと思います。人間、カネにはホントに弱いん
で、理性を振り絞って、中共のTPP加盟を阻止して欲しいですわ。
米国が、「中共入れるのなら、オレが加盟してやる。だから、それだ
けはカンベンしてくれ!」と戻って来たら、それが一番ですけど、バイ
デンさんやハリスさんはワカラナイ人ですから、なんとも・・
投稿: アホンダラ1号 | 2021年9月20日 (月) 22時40分
須田氏が解説していた
「中国はこの申請を通す気はサラサラ無く、真の狙いは中国が申請をはね除けられた事を持って台湾をTPPに加盟させない流れに持っていく事」
これを聞いて腑に落ちました。
向こうの理屈から言えば「お前らは台湾を国として認めないのだから中国を除外する=台湾も除外だよな」と言う事です。
そういえば須田の叔父貴の本業は経済ジャーナリストだったなと思い出す見事な解説ですw
投稿: しゅりんちゅ | 2021年9月21日 (火) 01時12分
しゅりんちゅうさん。須田さんの見立ては見ていませんでしたが、まったく同じことを書いたつもりだったんですが、そう読めませんでしたか(汗)。最後のほうはそういう意味で書いたんですが。書き方が悪かったようです。
中国の目的はTPPの分断以外考えられません。もしうまく潜りこめれば、「一国の了解なくしては」条項を使って台湾を排除し、失敗してもTPPはこんな排外的性格のもので、域内最大の貿易国を排除しているぞ、と喧伝できます。
まぁ、いくとおりにも使えると思ったのでしょうが、かえってTPP11の結束を固める結果となることでしょう。
投稿: 管理人 | 2021年9月21日 (火) 03時25分