高市氏の敵基地攻撃論について
速報。北が弾道ミサイルを発射し、我が国EEZの外に落下したようです。
変則機動を描いたようです。
弾道ミサイルですから、国連制裁決議違反です。
「北朝鮮が15日午後に中部の内陸から朝鮮半島東側の東海に向けて発射した2発の弾道ミサイルは3月25日に発射されたものと同じもので、北朝鮮が改良を進めているロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版と呼ばれる「KN23」だったことが複数の韓国政府筋の話で分かった。
3月に発射された短距離弾道ミサイル2発は、東部の咸鏡南道付近から東海上に向け、約600キロ飛行した。高度は約60キロだった。軍関係者は当時、同ミサイルをKN23であると分析した。
軍当局は北朝鮮がKN23の射程距離を伸ばし、精度を上げるなど、改良を続けているとみている。
この日発射された短距離弾道ミサイルは、約60キロまで上昇し、800キロ飛行した」(聯合9月15日)
さて高市氏がなんと、選対本部の立ち上げ発足式に国会議員39人、代理出席合わせ71人が参加しました。
これはすごい。しかも駆けつけた面々が、古屋圭司、有村治子、山田宏、長尾敬、山谷えり子、城内実、杉田水脈などの猛者ばかり。
すでに青山繁晴氏は推薦人として名を連ねていますから、党内保守の総結集という壮観な眺めです。
この人の中には選挙の顔になるから支持するなんていう、自己チューはいません。
「出たからには勝つ。覚悟を持って戦う」とは高市氏の弁。
この71名は中間集計であって基礎的数字ですから、まだ半数以上の議員票が固まっていない状態でのこの数字の意味は大きいと思われます。
一部では議員票を100票以上を固めたという情報もでており、党員票も地方票も16%(約100)という数字を合わせると170票となります。
なんとか2位につければ、決選投票に望みを託せます。
一方河野氏は、石破氏と同盟を組み、それに小泉ジュニアが乗るという勘違いカルテットトリオが結成されました。
全員揃って鬼っ子ぞろい、というのも微苦笑させられます。
河野氏は麻生派から追い出されかかっている嫌われっ子、石破氏はもっとスケールが大きく自民党全体の嫌われっ子、小泉ジュニアは細田派の嫌われっ子、そして全員自分は人気者だと勘違いしているメンツが見事に勢揃いしたわけです。
全員太子党エリート揃いというのも、なかなか毛並みがよくてすんばらしい。
気になるのは連中が二階氏にすり寄っていることで、もし河野氏が勝利すると、河野-ゲル-二階という悪夢のトライアングルが完成する事になります。
気の毒なのは、河野氏と高市氏の狭間で埋没しかけている岸田氏ですが、面白いことに徐々に中間派からジリジリと右にシフトし始めています。
こうまで露骨にヒダリ陣営を河野-ゲル連合に作られると、対抗上岸田氏も本命の座を守るには高市氏と似たことをいわざるをえないようです。
河野-ゲル連合も、反原発や女系天皇論なんか言っていると議員票が逃げますから、せっかくの目玉政策なのに封じるはめに。
もういっそイージスアショアを潰したのはオレだ、北の弾道ミサイルの守りを裸にしたのもこのオレだ、とアピールしたらいかが。
野田氏がでるそうなので、河野支持が分裂してしまうかもしれません。悩ましいですね。
ちなみに、中国外交部報道官は「総裁選で中国をテーマにするな」と怒り、韓国メディアはもっとも好ましい総裁候補は石破氏で次が河野氏だそうです。はい、とっても参考になりますね。 (笑)
※高市氏の政策についてはこちらから。
【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗 | Hanadaプラス (hanada-plus.jp)
「新型コロナ対策、私ならこうする」→https://hanada-plus.jp/articles/795
「中国に日本の技術を盗まれないために」→https://hanada-plus.jp/articles/792
我が「NHK改革」具体案→https://hanada-plus.jp/articles/777
さて高市氏の安全保障政策は合格です。
とくに経済安保について言及しているのが素晴らしい。
ただし一点、言いたいことがあります。
9月10日、自民党総裁選に出馬表明した高市早苗・前総務相はテレビ朝日の番組で敵基地攻撃論に関連して「電磁波で敵基地を無力化する」と語り、その具体策のひとつとして持ち出したのがEMP(電磁パルス)攻撃でした。
「自民党総裁選に出馬表明した高市早苗前総務相は10日のテレビ朝日番組で、 弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」の保有を巡り
「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」と述べた。
同時に「向こうから発射の兆候が見えた場合だ。こちらから仕掛けたら駄目だ」と強調。
その上で「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」とも語った。」https://news.yahoo.co.jp/articles/7c02c0171b0a2fb8ac9ff5ffb486df9d1370ec9a
電磁パルス攻撃とは、EMP弾を念頭に置いているようです。
高市氏がどこで仕入れたのか分かりませんが、処理水もそうでしたが、これも一知半解です。
あなたにはこのような個別の兵器についてではなく、もっと大きな視野に立っての議論をお願いしたいのです。
まず根本的に勘違いなさっているのは、敵基地攻撃で北の弾道ミサイルを潰せないことです。
敵基地攻撃能力について言及しはじめたのは安倍氏の頃からですが、彼は具体的な方法についてはあえてふれずに大枠の議論をしようとしていました。
というのは個別具体論にはまってしまうと、すぐに無理だとわかってしまうからです。
敵基地攻撃というとイメージするのは、下の写真のような状況を事前に察知して攻撃し破壊するというものです。
しかしこのような大規模な発射台を建設して、長い時間をかけて燃料注入するようなものは米国に届くような大陸間弾道弾(ICBM)であって、わが国を狙っているのは射程3000キロから5500キロの中距離弾道ミサイル(IRBM)です。
北のノドンやムスダン、中国のDF-21などがそれにあたります。
ノドンなどは小型のために移動式発射装置(TEL)からの発射が可能です。
ノドン ロイター
上の写真がノドンですが、打ち上がれば米国のミサイル監視衛星がキャッチして通報しますが、その時には残り時間わずか数分で日本上空に到達しているはずです。
ですから、「敵基地攻撃能力」という言葉は本来不適当なのです。
基地という概念は固定目標ですが、現実のノドンは移動式発射装置に載った地上移動目標です。
常日頃は山中深く隠していますから、衛星による上空からの発見はほとんど不可能です。
したがって、それを発射前に撃破することは時間的猶予があまりにも少なく、技術的にほぼ不可能です。
SCUD ALERT:スカッドハンター(湾岸デルタの軌跡その1)
実際に1991年の湾岸戦争では、中距離弾道ミサイル狩り、俗にいう「スカッド狩り」が行われましたが、延べ40日間継続され戦闘機が延べ約1500回出撃しましたが、結局88発がサウジ、バーレーン、イスラエルに発射されてしまいました。
戦後の調査では、これでもなお62発の弾道ミサイルと19両の移動発射機が発見されています。
このスカッド発射装置を発見するために、米英はSASやデルタといった精鋭の特殊部隊を送り込んでいます。
日本もこの教訓を踏まえるなら、山中の洞窟に隠匿されている弾道ミサイルをあらかじめ見つけ出さないといけません。
そのためには、レーザーで目標指示をする特殊部隊を投入しなければなりません。
ところがこの北の日本にとを射程に入れた弾道ミサイルの数たるや、下図のとおりで、ゲンナリします。
出典 Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea 2012 - U.S. Depertment of Defense
邦訳 http://obiekt.seesaa.net/article/358829852.html
日本向けとされるノドンだけで50基未満。しかもこれらは険しい北の山岳地域に陰徳されているのですから、どうやって見つけようというのでしょうか。
見つけ出さないことには、どこにEMP弾を撃ったらいいのかわかりません。
これらの発射基地を見つけ出すために、陸自の虎の子である特殊作戦群を事前に潜入させておくことが必要で、1ミサイル基地に1個分隊10人としも500人。
予備・潜入・帰還支援まで加えると、陸自の特殊作戦能力1000人の大部分を投入せねばなりません。
しかも彼らのかなりの部分は未帰還となるでしょう。
本来この特戦群がある目的は、国内のゲリラ・コマンド攻撃への対処、あるいは離島防衛や、邦人救出などの緊急の海外展開に備えるものであって、北の山岳ですり潰すためにあるのではありません。
また仮に発射拠点を発見したとして、EMP弾をどうやって北まで運搬するのでしょうか。
空自でその能力をかろうじて持っているのはF-2ですが、空中給油機や対レーダーや対空ミサイルを潰すワイルドウィーゼル(地上目標攻撃チーム)を含んだ日本版ストライク・パッケージを構成せねばならなくなります。
米軍の場合、このストライク・パッケージには1目標で約60機が使われますから、最低限で数百機を投入するストライク・パッケージが必要となります。
これは今の空自の能力全てに等しい規模ですから、日本の空ががら空きになります。
このように敵地攻撃は言うに易く行うに難しで、まじめに考えると空自と陸自の特殊作戦群のすべてを投げ込む覚悟が必要なのです。
ですからこんな中途半端な「攻め」を考えるより、弾道ミサイルが飛んで来るものを「待って」落としたほうがはるかに効率的かつ現実的なのです。
ところが河野のアホウがイージスアショア計画をブースターのドンガラが敷地の外に落ちるというくだらない理由で木っ端みじんにしてしまいました。
河野氏がしたことは、言葉の正確な意味で売国的です。
ちなみに石破氏は、F-2の生産計画を中座させ、防空に大穴を開けてくれました。まったくどうしようもないコンビです。
なお河野氏は敵基地攻撃については、移動式なので敵地攻撃は無意味だと言っていますが、そのこと自体は正解です。
ただならばイージスアショアをなぜ中止しにしたのか、その決断との整合性が問われます。
これでは河野氏はアレもダメ、これもダメといっているだけにすぎません。
高市さんにぜひ理解していただきたいのは、自衛隊にもっとも欠落している能力が、この戦力投射能力(パワープロジェクション)だということです。
自衛隊は世界的にみても上位にランキングされる実力を備えていますが、ひとつだけ大きく他国の違うのが戦力投射能力です。
遠距離への兵や物資の輸送能力、長距離爆撃機、戦略原潜などの保有が禁じられてきました。
海自は米海軍の補完的対潜水艦部隊であり、空自は防空に特化し、陸自はひたすら本土に上陸した敵を米軍来援まで凌ぐ、といった歪な「9条の軍隊」でした。
しかし現在の世界情勢は、国境内に引きこもっていればなんとかなるような硬直した考えでは、どうにもならなくなりました。
たとえば海自は南シナ海のパトロールを米国・豪州、さらには英国と組んで行おうとしていますし、すでに先行した試みが始まっています。
陸自も米国はもとより、英国、フランス、豪州などと共同訓練を行っています。
空自はいまや英国、豪州、インドとの共同訓練まで始めています。
このように新しい安全保障の流れは国境をいやがおうもなく超えて展開しているのです。
その時、自衛隊に要求される新たな能力こそ戦力投射能力です。
これはEMP弾という兵器ひとつで解決するものではなく、自衛隊のあり方全体についての再検討を含む大きなテーマです。
高市氏が安全保障問題の枠を経済安保まで視野を拡げられたことは画期的です。
ぜひこの大きなテーマを、狭くハードだけにこだわらず俯瞰で捉えていただきたいのです。
「EMP弾構成システムの研究」 令和3年度 事後の事業評価:日本防衛省
EMP弾は、防衛省自身も述べているように、元来が狭い戦域でピンポイント的に使うものですから、離島防衛用であって、弾道ミサイル潰しに用いるものではないのです。
またEMP弾と衛星と言っていますが、意味不明です。衛星からの攻撃兵器などわが国は計画すらしていません。
敵地攻撃能力とは、こういう新しいハードでなんとかなる問題ではないのです。
いうまでもなく敵基地攻撃能力の議論は絶対に必要ですが、そのハードルは大変に高く、60年もの長きに渡って9条下にあった従来の自衛隊の能力を大きく超えています。
ただし、敵基地攻撃能力の議論とはすなわち戦力投射能力の問題のことですから、それ自体に抑止効果があります。
日本は絶対に反撃してこないとなめきっている国々に対して、わが国がそれを事前に食い止めたり、あるいは相応の報復を覚悟せよ、というメッセージを送ることには大変に意味があります。
ぜひこれに懲りることなく、外交・安保部会の議員たちと検討を続けて下さることを期待します。
そうして安全保障のよい専門家スタップを、ぜひ陣営に加えることをお勧めします。
3人の候補中で、唯一まともな安全保障論議ができそうなのは、貴女ひとりしかいないのですから期待しています。
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>しかも駆けつけた面々が、古屋圭司、有村治子、山田宏、長尾敬、山谷えり子、城内実、杉田水脈などの猛者ばかり。
このあたりいいですね。力強いです。
党員ではないので、外からワーワーするしか能がないのですが、
いまのこの世界情勢の中では高市さんしかいないと思っています。
投稿: やもり | 2021年9月16日 (木) 15時38分
野田さんが出ましたね。
裏にいるのは二階さんなのは目に見えてわかります。
野田さんがでて、高市女性票が割れるかどうか見極める。
割れなかったら、高市氏を支持しても良い。
割れたら、割れたで岸田氏、河野氏に恩を売る。
そんな感じでしょうか。
高市氏のEMPはブラフだと思っています。直接攻撃するとなると反対意見が噴出するから、人を直接傷つけないイメージのEMPを出して、少しずつでも的基地攻撃の有用性について話を持っていこうという方向なのだと。まぁわかりませんが。
投稿: 田中 | 2021年9月16日 (木) 20時03分
河野・ゲル・セクシーならカルテットではなくトリオでは…いや、あるいはさらにもう1人裏にやべー奴がいるのを読んでいるのか…はさておき、
ミサイル防衛の意味合いで(どうにかして発射台を見つけて)EMP弾を撃ち込んだとして、「しゃーない、新しい機器に交換してもう一回打つか。別に誰も死んでないし。次はもっと上手く隠して打ち上げよう」という、本当に純粋に無意味な時間稼ぎにしかならないですよね。週刊オブイェクトのJSFさんも、そんな記事上げてた気がしますが。
投稿: ねこねこ | 2021年9月16日 (木) 20時12分
管理人さん、記事にしてくださってありがとうございます。敵基地攻撃能力でなくても何か打撃力を持つという事はできないのでしょうか?それは戦力投射能力をすべて持たなければ相手に効果的な打撃を与えることはできないのでしょうか?例えばサイバー攻撃能力やマルウェアで相手のインフラシステムに障害を与えるなど素人の僕にはよく分からないところもあるのですがあるというのであれば教えて頂きたいです。
投稿: gym | 2021年9月17日 (金) 15時51分
gym様
イランの核施設のシステムを壊すために、スパイの人がわざわざ施設に入っていってUSB挿してウイルス入れたとかなんとかを以前聞いた事があります。
ネットと繋がっていないシステムだとマルウェアで相手の施設を攻撃するのは難しいでしょうね。民間施設、インフラ攻撃をするのは人道的にどうなんでしょう?
昆虫型ロボットをばら撒いて、その中の一匹でもシステムに侵入して破壊するというタイプなら何とかいけそうですが、まだ難しそうです。
本当の昆虫にタグつけて操るという研究がなされているという噂ですので、たとえばゴキブリ的なやつで侵入とかは可能かもです。
投稿: 田中 | 2021年9月18日 (土) 00時35分