このように中国の穀物の爆買いと土地爆買いは実は表裏一体のもので、中国農業の構造的な欠陥が原因です。
言い換えれば、中国はその「弱さ」故に海外に進出せざるをえないのです。
そして諸外国はその危険性に気がつき手を打ってきました。

しかしわが国はやっと重要施設周辺の調査に着手できる根拠法ができたばかりにすぎません。
ここでも私権の制限という憲法の制約が影を落としています。
よくメディアで中国の土地取得は投機目的だから安心しろという者がいますし、また自衛隊基地などの安全保障上の問題としてとらえる向きもあります。
しかし中国の土地爆買いの目的は、2016年頃からその目的を海外の食糧生産基地作りにシフトしています。
一帯一路もこの文脈で眺めると別の顔が浮かんできます。
彼らがアジア・アフリカの発展途上国から取り上げようとしているのは、港や空港だけではなく、食糧生産するための土地なのです。

中国は、国内の農業・畜産生産が限界に達していることを自覚しています。
原因は前回まで触れてきたような環境破壊や農民の流出などですが、もはや異業種参入でなんとかなる問題ではないところまで来ています。
これまでの強権的収奪政策によって、いまや中国農業は国家の重大なアキレス腱になってしまっています。
その対策として彼らは、単に国際市場から穀物や食肉を爆買いするだけにとどまらず、世界各所に穀物と畜産の生産基地を展開しようとしています。
まるでそれはかつてのナチスの「東方生存圏」( Lebensraum im Osten ) 構想のようです。
そしてこれは私たちにとっては、サイレントインベージョンそのものなのです。