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2021年10月22日 (金)

大きく開いてしまった米中中距離ミサイルギャップ

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このような抑止強化を語ると、決まって出てくるのが、そんなものを日本が持てばかえって中国から叩きのめされることになるという人たちです。
こちらが備えを厚くすると戦争に巻き込まれるといういわゆる「巻き込まれ論」ですが、国会審議にかけると必ずこういうことを野党やメディアは言い出します。

与党でも公明党は、「「敵基地攻撃能力というのは昭和31年に提起された古めかしい議論の立て方だ」などと言っていますが、 古めかしいのは公明党の方です 。 当時の中国は弾道ミサイルなど一発も持っていなかったはずで 何を寝ぼけているのでしょうか 。
よもや昭和31年当時と現在の安全保障環境を同一視するとは絶句します。こういう党が政権にいること自体が驚きです。
公明党は情勢分析が甘いと言う以前に、なにも見ていないようです。

こういう発想になるのは、すでに日本は中国の弾道ミサイルの脅威の下にあるという現状認識自体を知った上で発言していないからです。
中国は既に日本全土を射程に入れた中距離弾道ミサイルを約2千基配備しており、「ロケット軍」(旧第2砲兵)の配備地域は下図でわかるように日本に近い中国東北部です。

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北朝鮮よりずっと深刻、中国のミサイル脅威に直面する日本:朝日新聞

上図でわかるように、中国軍は北朝鮮軍の数十倍の規模で日本攻撃用弾道ミサイルと長距離巡航ミサイルを配備し、いつでも日本全土を焦土と化す態勢を整えています。
「東風21」の射程には下図のように完全に日本全土が入っており、この弾道ミサイルがなんのために作られたのか、どうして中国東北部に集中配備されているのか、その目的がわかるはずです。
また東風15の目標は、台湾、沖縄、ベトナムです。
それ以外にも、日本全土をピンポイント攻撃可能な「東海10」長距離巡航ミサイルを約500基以上保有していると言われています。

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朝日 同上

この状況を冷静に見れば、中国が一方的にわが国を弾道ミサイルで脅迫できる立場にいることがわかるはずです。
中国の強硬な対日発言の裏には、常にこの弾道ミサイルの「殴る力」が背景にあるのです。

つい最近も、中国は「日本が台湾を支援したら核の先制攻撃をする」と脅迫してきました。

それに対しての日本の反応は鈍いものでしたが、ヨーロッパでロシアが同じことを言ったとしたら、制裁が真剣に討議されていたかもしれません。
とまれ安全保障の初歩を学べば、「なぐり返す力」、すなわち戦略的抑止とはこちらから撃つためのものではなく、真逆に撃たせないためのものであることがわかるはずなのですが。

さて、注目すべきはあくまでも中国の中距離弾道ミサイルです。
これこそが日本の真の脅威です。

北朝鮮がICBMもどきを持とうと、水中発射型弾道ミサイルもどきを持とうと、そのようなものは当面は無視できるていどの力しか持ちませんが、中国のそれは北などより遥か上に、とうに実戦配備され、日々増強され続けています。

 

「米中の戦力バランスがもっとも非対称的かつ不安定であるのは、射程500~5,500kmの地上発射型中距離ミサイルである。米国は2019年まで米露間で締結されていた中距離核戦力(INF)全廃条約の制限下にあったため、中距離ミサイル戦力を(通常弾頭型を含めて)一切保有できず、そのあいだに条約に縛られない中国はこれらの戦力を増強し続けてきた」
(村野将・岩間陽子 『日本の「抑止力」とアジアの安定と日本に欠けている戦略的コミュニケーション』)
日本の「抑止力」とアジアの安定 | 政策シンクタンクPHP総研 )

米国とロシア(旧ソ連)は大陸間弾道ミサイルは戦略兵器削減条約(START により制限され、中距離弾道ミサイルに至っては中距離核戦力全廃条約(INF)により全廃されています。
米国、ロシア、共に文字どおり一発の中距離弾道ミサイルも廃棄し、新型を作る研究も止めてしまいました。

一方、この中距離弾道ミサイル軍縮条約が招いたものは、中国の著しい核軍拡でした。
中国はいかなる通常兵器の軍縮、あるいは核兵器の軍縮のテーブルにつこうとしない国だからです。

この中国に特徴的なのは、中距離弾道ミサイルに増強が目立つことで、核搭載可能な弾道ミサイルの少なくとも3分の1は中距離核戦力を増強し、新型を多く投入したことです。

 

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世界の核兵器、これだけある:朝日新聞デジタル

この中距離弾道ミサイルの分野で、米中に著しいミサイルギャップが生じてしまったことを重く見たトランプは、ロシアに喧嘩を売る形でINF条約を脱退しましたが、彼の本意がロシアではなく中国にあったことは明らかです。
この流れは幸いにもバイデン政権にも受け継がれました。

「バイデン政権は、米露間のICBM/SLBM/爆撃機を規制する新戦略兵器削減条約(新START)の延長に合意したものの、INF条約を復活させようとはしていない。ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官とカート・キャンベルインド太平洋調整官は、中国に対抗するために弾道ミサイルや巡航ミサイルへの投資を優先すべきと主張してきた。
また、会計年度2021年国防授権法で太平洋地域での軍事活動・能力開発への予算支出を定めた「太平洋抑止イニシアティブ」(PDI)においても、中距離ミサイルへの投資は最優先事項の一つだ。現在の米国には、対中抑止力強化の一環として、西太平洋地域に通常弾頭型の中距離ミサイルを配備することへの超党派的な合意が存在するのである」(村野前掲)

米軍は今まで開発してこなかった中距離弾道ミサイルを早急に開発し、配備をしようとしています。

「米インド太平洋軍(司令部・ハワイ)が九州・沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線に沿って対中ミサイル網を構築する計画を進めている。米国は配備先として第1列島線の延長線で中国に近接している日本国内を最有力候補地と考えており、実際に配備となれば、日本は米中対立の最前線として軍事的緊張を強いられることになる」
(朝日2021年7月8日)

このような米国の中距離弾道ミサイルの増強はわが国にとって歓迎すべきことですが、心配は残ります。
まず、今の米国にそれだけの体力が残っているかどうかです。
米国は中国と違って、すべてに優先して軍事費を増強できる国ではないために、コロナ禍対応の予算が大きくなれば、必然的に軍事費は削減されるか、頭打ちとなるでしょう。
下図は主要国の軍事費の伸びを比較したものですが、各国はおしなべて頭打ちです。
米国(青線)すら減少のトレンドに入っている一方、中国(赤線)一国のみは大幅に増えているのがわかります。

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米軍事費の推移

 

米国がいままでまったく白紙た中距離弾道ミサイルに注力できるかどうか、できても中国とのミサイルギャップを埋めることが出来るものとなるのか、不安が残ります。

その場合、米国は最大の利益享受国の日本になんらかの応分の負担もとめて来る可能性がありますが、わが国はそれを受けるだけではなく、さらに共同配備まで視野に入れた共同研究に踏み込むべきです。

ミサイル防衛計画では、すでにやられていることですから不可能ではありません。

 

第2に、中国と日米の不均衡はこれだけではないことです。
中国は、米国からの中距離弾道ミサイルの脅威を無視できるために、ミサイル防衛という恐ろしくコストと手間が掛かることから自由なのです。

「現状では、1,250発を超える中国の中距離ミサイルが、有事の際に自衛隊基地や米軍基地、前方展開する空母などを脅かすことが想定される。このため日米は、かぎられたリソースを高価なミサイル防衛や早期警戒能力に注ぎ込むことを余儀なくされてきた。
中国は、日米の中距離ミサイルによって攻撃されるリスクには晒されていない。無論、米軍の空母艦載機や爆撃機は脅威ではあるが、中国の中距離ミサイルには、在日米軍基地や空母、グアムなどを基盤とするこれらの航空機をミサイルの射程圏外に一時的に退避させる効果もある。
そうなれば、その分だけ米軍の作戦テンポを遅らせることができるから、中国側は防空能力の整備・運用コストを相対的に節約できているともいえる。もし、日本が米国とともに中距離ミサイルを配備できれば、中国に対してミサイル防衛などへの追加的なコストを強いることができる」(村野前掲)

このように見てくると、日本は米国の中距離弾道ミサイル配備に協力することを大前提として、自前の抑止力も強化せねばならないのは自明です。
自民党がえてして陥りがちなことは、米国の新たな配備計画が明らかになると、それを自治体との調整のすり合わせに矮小化してしまうことです。
結局、その自治体への予算配分の増額でお茶をにごし、その利権のおこぼれに預かる、これがオールド自民党のやり方でした。
こういう常にどこか他人事で、安全保障はすべて米国に丸投げできると思ってきたのがオールド自民党でした。

「日本にどのような打撃力を配備するべきかという問題は、米国のミサイルを受け入れるか否かという政治的な議論に単純化すべきではない。重要なのは、エスカレーション・リスクを管理するために、両国の打撃力をいつ、どのように、どの目標に対して使用するかという計画立案と実行プロセスに、日本が主体的に関与する責任と権利をもつことだからである。
現実問題として、実際の能力をもっていなければ、このような調整プロセスで日本の要望を反映させることは難しい。これは、対北朝鮮有事における米韓連合司令部との関係でも同様である。また、使用される可能性のほとんどない核共有を検討するよりも、はるかに日米の抑止力強化に繋がる」(村野前掲)

今回の中距離弾頭ミサイルについて、いままで骨身に染みついてきた受け身の対応は許されません。
これが琉球弧に沿って配備されることになるとすれば、その目的は日本を守ることだということを鮮明にすべきです。

したがって日本は主体的に配備について責任を負うだけではなく、強くその計画に関与せねばなりません。

そのことで日本は発言力を高め、日本の意見を強く反映させることができるのです。
もう一回続けます。

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コメント

公明党の見識は論外!
数十年経ったら「古臭い考え」になるとかいう観念的なもんじゃないでしょうに。
むしろ60年前には想像も出来なかった程に隣国の脅威が増しているのに、何を甘ったるいことを言っているのやら。

以前、日米の農産物交渉では米国は「食料安保なんていうのは古い考えだ!」なんて言ってきてましたけど、古かろうが新しかろうが安全保障に関わる問題は何も変わらずです。リアルな現実を見ろと。
それこそ穀物や肉などの輸入価格が上がってるだけですぐにニュースになるというのに。。それでもこの30年で食料自給率など上がらず、農水省はただの無用なデカいだけの官僚利権組織になりました。縮小できない。
おっと、農政の話では無かったですね。

ミサイルです。
米ソ冷戦時代のミサイルギャップやボマーギャップは米軍が予算を得るための詭弁でしたが、日本にとって重要なのはSTARTで規制かけた米ソのICBMではなく、中距離ミサイルにおいては昨年にトランプが脱退するまで80年代欧州を想定したINFで米国が一方的に縛られているうちに中国は大量配備が完成していて、さらに増強されそうだということです。
INF合意不参加もこれまたバイデンが賢いみたいな書き方をされてるとこもありますけど、トランプは口汚い(パウエル死去ニュースでもマスコミが伝えなかったイラク侵攻の張本人とか)けれども事実でありトランプの実直な商売人的センスの良さだと思いますね。

「>「日本にどのような打撃力を配備するべきかという問題は、米国のミサイルを受け入れるか否かという政治的な議論に単純化すべきではない。重要なのは、エスカレーション・リスクを管理するために、両国の打撃力をいつ、どのように、どの目標に対して使用するかという計画立案と実行プロセスに、日本が主体的に関与する責任と権利をもつことだからである。

 米国のミサイルを日本が受け入れるかどうかの次元の話ではなくて、米国のミサイルは当然受け入れるし、その上日本独自で同性能のミサイル開発・配備したい。米国が配備するミサイルには核装備をしてもよいこととし(核の傘論の延長として考えられる)、また日本開発のものには、核装備をするかどうかは今後の検討課題としてもよい。
 なにしろ、中国は1000発以上の核ミサイルを配備し日本に照準した状況なのだ。

 大変な議論が巻き起こるだろうが、国家の安全を計るためには、政治家も国民も腹を括って正面からこの問題を議論すべきではないか。

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