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2021年10月14日 (木)

中国の台湾侵攻は可能だろうか?

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いきなり台湾周辺がきな臭くなりました。
ご承知のように、中国は国慶節にぶつけた威嚇と、台湾のTPP加盟申請への牽制、そして南西諸島周辺での空母3隻を含む日米豪カナダ、ニュージーランド、オランダによる、過去最大機規模の海軍合同演習への当てつけとして、こちらも過去最大の防空識別圏(ADIZ )への侵犯を行いました。
その数、実に延べ150機で、その構成が実践的なことが西側専門家で話題になりました。
今まで足の速い戦闘機が多かったものが、今回はそれに長距離爆撃機、早期警戒管制機、空中給油機による編成に変化して、実際に台湾侵攻の能力を見せつけるものだったからです。

●台湾が設定する防空識別圏に進入した中国軍機の内訳(多い順・すべて延べ数)
・殲16戦闘機                    ・・・・100機
・スホーイ30戦闘機             ・・・20機
・轟6爆撃機                      ・・・16機
・運8対潜哨戒機                 ・・・7機
・空警500早期警戒管制機     ・・・6機

これは中国版ストライクパッケージが可能であることを示しています。
ストライクパッケージとは、西側が侵攻に際して用いる多機種編成の攻撃編隊のことですが、おそらく中国軍は台湾攻撃に際して同様のものを編成して攻撃が可能であることを示したかったのでしょうね。

これにもっとも敏感に反応したのは台湾でした。

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なぜ? 5日間で延べ150機 中国軍機が台湾防空識別圏に進入 | 中国

「台湾の議会にあたる立法院で6日、答弁した邱国正国防部長は、台湾海峡の情勢について「私が軍に入ってからの、この40年間で今が最も厳しい」という認識を示しました」(NHK 2021年10月6日 )
“2025年以降 中国が全面的な台湾侵攻の能力” 台湾 国防部長 | 台湾 | NHKニュース

同時にこれは軍事バランスの問題だとも邱国防部長は言っています。

「一方、中国による台湾侵攻の可能性をめぐっては、侵攻によって得られる利益と損害の大きさを比較して、利益が上回った場合、実行に移す可能性が高まるとの見方が出ています。
これを念頭に、邱部長は「2025年以降、中国のコストと損害は最低限となり、全面的な台湾侵攻の能力を持つ」と危機感を示し、抑止力の向上を急ぐ必要性を強調しました 」(NHK前掲)

台湾側は「2025年以降」と言い、米海軍側は「2026年以降」と述べています。

「3月10日 AFP】米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は9日、上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。
 デービッドソン司令官は「彼ら(中国)は米国、つまりルールにのっとった国際秩序におけるわが国のリーダーとしての役割に取って代わろうという野心を強めていると私は憂慮している…2050年までにだ」と発言。「その前に、台湾がその野心の目標の一つであることは間違いない。その脅威は向こう10年、実際には今後6年で明らかになると思う」と語った」
(AFP2021年3月10日 )
「中国、6年以内に台湾侵攻の恐れ」 米インド太平洋軍司令官 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News  

このデービッドソン太平洋軍司令官は、対中現場を預かってきた最高責任者であるだけに重みがあります。
中国軍機の挑発は台湾だけに向けられたわけではなく、この空域が米海軍の航行の自由作戦や台湾海峡を通過する米艦船を攻撃できる空域であることから、同時に米軍への牽制だとの見方もあります。

下図が侵入した中国軍機の航路ですが、中台の中間線を超えて台湾海峡を西から塞ぐように飛行しているのがわかります。

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NHK

またこれに合わしたように、中国は台湾を想定した上陸訓練の映像も公開しています。

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台湾への「上陸作戦」想定か 中国軍が訓練映像公開|テレ朝news-テレビ .

このような映像は中国が得意のプロパガンダであって、それに乗る必要はありません。
中国は台湾へ侵攻する意志はあり、それに向けて軍事力を大幅に強化していることは事実ですが、現実に台湾侵攻が可能かといえば、無理だと私は思っています。
このプロパガンダに乗って、明日明後日にも台湾に攻めてくるようにいうのは、中国の掌で躍ることになりかねません。

具体的に検証してみることにしましょう。
まず中国軍と台湾軍の戦力比です。
203万人対6万人で、台湾はこのサイズの国として必要充分な軍事力を保持していますが、いかんせん相手が世界最大規模の軍隊ですから比較になりませんし、戦闘機・爆撃機の数も1800機対470機では大人と子供です。

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政経電論

ただこの戦力比がモノをいうのは、広い中国大陸を戦場として広く大陸に分散している中国軍を一カ所に集結できたらという場合だけのことで、そのようなことは空想上の産物にすぎません。
戦車が5600台あるぞなんて威張っても、台湾にどうやって運ぶんだというお話です。
中台間で戦争が起きるのは、あくまでも、中国が攻め込むという状況しかありえません。
では、中国がいつでも台湾侵攻が可能かといえば、私はそうは思っていません。
いろいろな理由があげられますが、最大のネックは中台間に広がる幅130~180kmの台湾海峡の存在です。
台湾海峡は台湾にとっていわば最大の外堀であって、中国軍はがいかに強大であろうとこの海を超えない限り、台湾に戦力を投入できないのです。

この戦力投射能力をパワープロジェクションと呼びますが、おそらく100万人規模の侵攻軍が必要だろうと小川和久氏は見ています。

「中国側には台湾海峡上空で航空優勢(制空権)をとる能力がなく、1度に100万人規模の上陸部隊が必要な台湾への上陸侵攻作戦についても、輸送する船舶が決定的に不足しており、1度に1万人しか出せないのです。そしてなによりも、データ中継用の人工衛星などの軍事インフラが未整備のままなのです」
(NEWSを疑え!第995号(2021年10月11日特別号)

この小川氏の見立てでは100万人が上陸作戦には必要ということですが、これを踏まえて中国軍の上陸作戦能力を分析するとこうなります。

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上の写真は民間の1556トンのフェリーを改造して車両ランプをつけて26トンの水陸両用装甲車両ZTD-05の運用に対応できるよう改造したものですが、これで一度に運べる戦闘車両はせいぜいが数台にすぎません。
またこのような民間船が投入されるのは、第一波が橋頭堡を築いた後に本隊を送り込む段階に達してからのことです。

「中国軍が台湾侵攻時の海軍の揚陸艦の数量不足を補うため、民間の大型船舶を活用する方策を計画している。
軍事演習では実際に活用され、数十隻単位で存在が確認されている。こうした民間船は砲弾が飛び交う最前線ではなく、強襲上陸が成功し港湾を確保した後、後続部隊を輸送する任務を負うとされてきた。だが、上陸作戦用に改修された船が確認され、米台の軍事研究者が注目している」
(産経2021年10月11日)
【中国軍事情勢】台湾侵攻能力を補う民間貨客船 作戦用に改修も - 産経ニュース (sankei.com)

その第一波を送り込むのが強襲揚陸艦ですが、中国はこれを37隻保有しています。乗せることができる兵員数は最大で1600名ですので、それを40隻保有するとして約6万人程度ですが、実際は戦闘車両も共に乗せますので、はるかに少ない数のはずです。
075型強襲揚陸艦 - Wikipedia

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南海艦隊に同時就役した艦艇3隻を専門家が解説 (2)--人民網日本語

「中国の人民解放軍海軍は今年4月、初の強襲揚陸艦となる075型(推定排水量3万6000~4万トン)を就役させた。同型艦の建造を急ピッチで進めており、上陸作戦能力の向上を図っている。
ただ、米国防総省の20年の年次報告書によると、中国軍の揚陸艦は19年時点で計37隻。台湾の国防安全研究院の今年7月の論考は、強襲揚陸艦を含む中国の揚陸艦隊による「第1波」の輸送能力は約4万人で、「台湾の厳密な防衛(態勢)に対しては、まだ不足している」と分析している」。

このように見てくると、中国軍の渡海能力はこのようになると推測されます。

●中国の渡海能力
・揚陸艦艇の総数                                   ・・・約370隻
うち大型艦艇(大体満載排水量500トン以上)・・・約70隻
これによる輸送可能兵員数                        ・・・約2万数千人
・民間徴用船数・・・63隻
これによる輸送可能兵員数                       ・・・約3万~4万人
・ヘリコプター+落下傘降下兵員               ・・・数千人
・推定上陸作戦第1陣で可能な投入兵力計・・・約5万人~6.5万人

固く見積もって3万、最大で6.5万人です。
つまり仮に100万人が台湾軍制圧に必要とするとわずか3%~6%を保有しているにすぎません。
今までアジア地域における最大規模の上陸作戦は仁川上陸作戦で兵力は約4万でした。
これが現代戦の最大規模の上陸作戦ですが、精緻な計画と渡海能力が要求されますが、中国軍はこのいずれも持っていません。
仁川上陸作戦時に対抗した北朝鮮軍はわずかに6500人にすぎず、台湾軍の兵力はその数十倍にも登りますから、仁川を数倍する困難が上陸軍を待ち構えています。

しかも渡海軍は台湾海峡をわたる途中で、その相当数が打撃を受けて早々と戦力外となり、着上陸したわずかの部隊も個別に撃滅されると思われます。
現実には、この台湾海峡上空の航空優勢と台湾周辺海上優勢を巡って熾烈な空と海の戦いが展開されるはずで、それに対して米軍は台湾関係法に基づいて介入するはずです。
自衛隊も周辺事態対処としてとらえて、何らかの支援を行うはずです。

また、台湾は想像以上に大きい島で、面積は約3.6万平方キロメートル、南北約380km、東西100~140kmで九州とほぼ同じ大きさです。
島中央部には標高3000m級の山脈群が南北に走り、最高峰の玉(ユイ)山は富士山より高い3952mもあります。

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世界の山ウエブで放浪 (その22) 台湾の山脈(8)改訂版 海岸山脈

地形的に見ても台湾は大変に攻めにくい島です。
中国軍は西海岸から侵攻するでしょうが、仮にそれが成功しても台湾軍は脊梁山脈で執拗なゲリラ戦を展開しつつ、東海岸に主力を逃がすことでしょう。

しかし中国軍には山岳ゲリラ戦の経験もありません。
渡海作戦は国境内戦の末期に一度試みて惨敗した経験があるだけですので、そのノウハウ自体が欠落しています。
山岳ゲリラ戦に至っては、経験皆無です。

兵士の質も大きく変化し、かつての朝鮮戦争や中越戦争の時のように、損害をかえりみずひたすら押しまくるといった人海戦術などやりたくてもできません。
というのは兵士は、今や揃って一人っ子政策世代で「小皇帝」として育てられたボンボンばかりだからです。
彼らを数万単位で殺せば、政府批判は抑えきれなくなるからです。

実は中国軍は戦争好きなわりには実戦経験に乏しく、直近の大規模な実戦経験は1979年の中越戦争で、以後40年以上戦火をくぐったことがありません。
それがパレード用軍隊とか「人民抑圧軍」だと揶揄されるゆえんです。

このような実態を分かっているからこそ正面戦を諦め、サイバー攻撃に力を入れたり、首脳部をにテロを仕掛けるスネークヘッド作戦を考えたりしたのだと思われます。
あるいは中国軍は台湾の航空戦力を無力化し、台湾上空の航空優勢を確保することで、自在に空から攻撃をすることができることを誇示することも念頭にあるかもしれません。
多数の艦船で海上封鎖をして日干しにすることもありえます。
しかし、これらの方法はいずれも搦手であって、決定打たりえません。
習近平が、「祖国統一を達成した」と宣言できるのは、唯一陸上兵力が台湾を制圧した時のみだからです。

このように見て来ると、中国軍の台湾侵攻は備えねばならないのはいうまでもありませんが、今日明日あるという類ではないのです。
ただし、日本の尖閣や離島を侵攻するには充分すぎるほどの力がありますので、台湾のケースと一緒にしないようにしてください。

 

 

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コメント

キンペー中国の台湾進攻の可能性について、うちでも時々話題に出ます。

親兄弟、親戚がすぐ隣の沖縄本島に宮古、八重山に久米島に住んでいますので、

>このように見て来ると、中国軍の台湾侵攻は備えねばならないのはいうまでもありませんが、今日明日あるという類ではないのです。
ただし、日本の尖閣や離島を侵攻するには充分すぎるほどの力がありますので、<

このあたり、考えるだけで胃が痛くなって憂鬱な気分になります。

もし台湾がやられるとしたらまずは馬祖や金門あたりでしょうか?それでも軍備どころか人も住んでいない尖閣に比べれば侵攻するリスクは大きいかと思いますが。

台湾情勢に人権弾圧、ウイルス漏えい隠ぺい疑惑に国民への過剰な経済&文化統制強化等々…
こんな国であと4ヶ月後に平和の祭典が開かれるとか悪い冗談のように聞こえます。

現在、合衆国大統領には、台湾有事に武力介入実行の決断をする権限はありません。
そのことについて、10月11日付ワシントン・ポストが掲載した、民主党員で海軍退役軍人であり下院軍事委員会副議長のエレイン・ルリア氏による意見記事。
「議会は台湾についてのバイデンの手を解かねばならない」
https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/10/11/elaine-luria-congress-biden-taiwan/
・中共人を抑止する力、その力の採用を可能にする法的権限、この両方が必要
・レトリックや軍事支出の増加が中共を止められるわけではない
・中共の台湾侵攻を退け、全面戦争を抑止するために短時間で反応できる法的権限を大統領に
・「遅延」が低レベルの紛争からエスカレーションさせないことを妨げる

ざっとこのような内容です。
管理人さん仰る通り「それ」はすぐではなく、しかし、尖閣沖縄そして台湾、中共からの現状変更のアクションに対して、それぞれ今現在出来ることと出来ないこと、すべきことすべきでないこと、するのが望ましいこと、等々しっかりと整理し、なんならあけすけに議論して、状況に見合った実力と法的権限や根拠を整備する我が国であってほしい、と考えまする。

> この戦力投射能力をパワープロジェクションと呼びますが、おそらく100万人規模の侵攻軍が必要だろうと小川和久氏は見ています。

 沖縄戦において、米軍は20万人が上陸したと記憶しております。迎え撃つ帝国陸軍は約8万人と言われており、およそ帝国陸軍の3倍の米軍が陸上戦を戦ったことになります。制海権、制空権を米軍が保持する中での戦いでしたが、日本軍は敢闘し、その戦いはチャーチルをして第2次大戦で最も過酷な戦いと言わしめたものでした。

 中国侵攻軍が物量に圧倒的に勝るので台湾は簡単に攻略できるかというと、私は管理人さんが仰るようにそんなに簡単なものではないだろうと思うのです。台湾軍に十分な覚悟があり愛国心が強ければ、侵攻する中国軍は苦戦を強いられるのではないでしょうかね。

 昨年でしたか中国軍とインド軍の小競り合いがありましたが、勝負はどうなったのでしょうか。非常に原始的な戦闘でしたが、インド軍は結局退却はしておりません。そのことは、インド軍は勝ったと言えるのではないでしょうか?

 尖閣の戦いがあるとすれば、尖閣上陸に対しわが自衛隊は決してそれを許してはなりません。 自衛隊は防衛戦を戦うべきです。そして、国民は自衛隊を応援すべきだと思っております。

 尖閣問題は、侵略に対し日本が戦うかどうかが試されているのですね。

 トランプ政権時代の国家安全保障補佐官だったマクマスター将軍は、「現状で台湾独力でも、中国の台湾侵攻は不可能」としています。
小川氏の見解と同じですね。ハリネズミ化した台湾に対しては、人民解放軍に膨大な被害をもたらします。

また、「バイデンの台湾に対する曖昧戦略は現在でも有効で、一定の成果を上げている」としています。それは確かにそうで、「米国は中国に対して、100%の対立軸を打ち立てない」という幻想を抱いてもらっていた方が好都合というものです。

ただし、台湾の心配のタネは2025年に南・東シナ海の情勢が変わり、包囲される事です。そこをガードする担当が日本やアメリカ、英・豪など自由主義国の役割です。

また、先島含む尖閣方面から先手を打って来るかも知れない心配も残っています。
日本こそがしっかりしないといけませんし、こっちに先に回り込まれたら逆に台湾に迷惑をかける事になるかも知れません。

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