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2021年10月 4日 (月)

壊滅する中国農業その1 狭小な耕地面積、過大な人口

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[お断り]
悪質な荒らしにあったためにコメントを承認制にしてみました。
自由な討論とその水準の高さが定評でしたが、とりあえずやむをえません。
表示されるまで、かなりの時間がかかりますのでご了承ください。
ご不便をおかけします。

                                                                       ~~~~~

メディアは世界を震撼させている中国の穀物の爆買いを、「中国すごい、日本落ち目」というトーンで報じます。
実はこの心理傾向は日本商社にもあっても同様で、実際に話を聞くと、どうやってももうチャイナには勝てません、遠からず世界市場の覇者になるでしょう、いやもうなっている、とさえ言いだす始末です。
ある全農系バイヤーは、中国が買い控えをしない限り、日本にはやがて飼料が回ってこなくなる日が来るとさえ冗談めかして言う始末です。
かつて日本商社はシカゴ市場の値動きを仕切っていた時代がありますから、このバイイングパワーの衰えに対してなおさら敗北感が強いのでしょうが、私はまったく違う感想を持っています。

の穀物の爆買いこそ、中国の構造的弱みが激しく吹き出しているから起きる現象なのです。
今年、たまたま熱波や水害が起きたから食糧が足りない、ではなく常に食糧不足なのです。


中国人にとっては、まずは食べればよいとされた時代は終わり、いかにうまくて柔らかいものを食べるか、という点に食の軸足が移ってきました。
所得が向上し、国民が食べたいものはどこからでも輸入できるようになり、富裕化すればより高いものを食べるようになっていきます。
雑穀から白米、豚肉への食のシフトが起きたのです。

農業生産量は既に限界に達しているにかかわらず人口は増え続け、しかも高所得化して贅沢になっていきました。
ここに食糧の需給ギャップが生じます。
主要な穀物は生産が減産に転じており、特に中国人が好む豚肉生産に書かせない大豆の生産は破綻しています。
頼りになるのは、唯一海外産農産物の輸入だけです。

中国の三大穀物と大豆の4つをとって、この20年間の貿易の内容とその変化をみておきましょう。
下図は穀物供給事情が悪化していることをよく示しています。

高橋五郎氏による

この表は小麦、コメ、トウモロコシ、大豆、豚肉などの輸出量から輸入量を差し引いた結果です。
ご覧のように、2006年と比較すると今やすべての食品の項目で真っ赤で、すべての穀物がマイナスの輸入超過です。
特に大豆のはほとんどが輸入に頼りきっているといってもよいくらいです。
つまり中国の食糧不足は、一過性ではなく構造的だということです。

恒常的食糧危機の国、さらにはエネルギー不足のために火力発電が止まり始終大停電を繰り返す国、こんな国がほんとうの強国のわけがないではありませんか。
まったく正反対に、中国の最大の弱みこそ食糧であり、エネルギーなのです。

エドワード・ルトワックはこんなことを言っていました。

「私の考えでは、習近平は『強大になるほど戦略的に弱くなる』という戦略の逆説(ストラテジック・パラドックス)にはまってしまったのである」
(ルトワック『ラストエンペラー・習近平』 )

まさに言い得て妙で、習が居丈高に空母や弾道ミサイルを見せつけ、札びらで頬をはたくようにして世界の穀物やエネルギーを買い集める姿こそが、彼らの弱みの現れなのです。
では、なぜ中国が構造的食糧不足に陥っているのでしょうか。
そこから考えていきましょう。

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中国 食料不足への危機感 食糧自給低下による爆買いがもたらす影響

しかも先日ふれたように、輸入先は米国が多くを占めています。
これが米中対立の背景にあることは既に述べました。

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同上

米中経済戦争はほんの引き金にすぎません。
ほんとうの理由は、中国農業が滅びかかっているからです。
だから14億の民に食わせられなくなっている、それがわかるとなぜ習近平時代になって、この国が海外進出、いや侵略に乗り出したのか判ってきます。

ところで、中国の国土が「狭い」と言ったら、おかしなことを言うと思われるかもしれません。
14億の民、万里の長城、桂林などから日本人が受けるイメージは、ひたすら事物博大といった感があります。
たしかにデータ上では、中国の国土は約960万平方キロ、日本が約37万平方キロですから、ざっと約26倍の面積を誇っています。
しかし北京から少し出てみましょう。
西に重慶、成都に飛び、さらに新疆ウイグル自治区に旅すると、中国の「事物博大」の裏側がもう少し見えてきます。

長江付近の巨大な都市は人を溢れさせんばかりにしていますが、そこからわずかに奥に入った農村部では傾斜のきつい山肌にへばりつくように生きているのが分かります。
そして、そこからさらに奥に進めば、乾燥した強アルカリの土漠がどこまでも続きます。
人はわずかのオアシスの付近で生活を営んでいるにすぎません。
実は、このような地域が中国の大きな部分を占めています。
そこでは牧畜しかできないので、政府は砂漠化を恐れて定住政策をとっていますが、そのために人口が集中してかえって都市周辺の砂漠化が進むという皮肉な現象すら起きています。

中国で、農業に向いている地域は、東北部(旧満州)の吉林省、そして沿岸部の黒竜江省、江蘇省 、安徽省に集中し、後は山岳部の四川省、陜西省にわずかに点在するだけです。
にもかかわらず、人口が14億人といいますから、狭小な分母の上に、過大な人口を抱えるというのが中国の実態です。

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浙江省の黄杜村

これは、農家一戸あたりの平均耕作面積をみれば分かります。日本の農家の平均は約2ヘクタールですが、中国は約0.67ヘクタールです。
狭い狭い、だからお前らは国際競争力がないとなにかにつけて言われる日本の3割強ていどです。
ヨーロッパの平均はイタリアなどで約26ヘクタールですから38倍ですから、較べるべくもありません

ちなみに、米国は中国とほぼ同じ約963万平方キロの面積がありますが、作付け可能面積は国土の2割に当たり、中国の約2倍に達しています。

中国は斜度25度以上という土地で作る薬草、綿花、麻類栽培などの非食料栽培も含めて、国土の1割に満たない部分しか耕作可能ではないのです。
斜度25度とは、日本で言えば山間地農業ですから、そこまで入れて1割となると、中国農業の技術的レベルから考えれば、よく喰っているなという気分になります。
ですから、国民一人当たりに換算すると、耕地面積は米国の10分の1以下となります。つまり、人口は米国の3億人の4.3倍ありながら、米国の10分の1の耕地しかなく、それで食を支えねばならないわけです。
世界人口の22%を世界の耕作可能面積のたった7%で養っていることになりますが、いくら国民の6割が農民でもそれは無理だということで、輸入食糧は激増の一途を辿っています。

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中国 食料不足への危機感 食糧自給低下による爆買いがもたらす影響

「今後5~10年で、中国は世界最大の農産物輸入国となる」(中国国務院発展研究センター)

既に見たように、中国は現在、大豆と綿花に関しては世界最大の輸入国となっていて、シカゴ穀物相場を混乱させるモンスターと化しています。
このようなアンバランスな条件で、食糧自給などがそもそも無理です。
ひと頃日本の青果市場を征する勢いだった中国産農産物はめっきり減りましたが、それはもう輸出する余力がなくなったからです。
もちろん、安全性に疑いをもたれて日本の消費者が買わなくなったこともありますが。

ところで、私は外国に旅すると、哀しい職業病で、ついそこの国の農地を触ってみたくなります。手首まで土に入れてひとつかみ土を握り、手でほぐしてみればおおよそのことが分かります。
掴んだ土がにぎり寿司のように軽く握ればまとまり、力を抜くとはらりとほぐれればいい土質です。
そのような土は有機質や微生物を大量に含み、色も深い褐色をしています。ほのかな芳香すら漂います
私は成都で中国の土を採取してみましたが、粘り気がなく、乾燥してバサバサで、まるで砕いた灰色のレンガのようでした。芳香などは望むべくもありません。

率直に言って、私が今まで見た耕作地の中で最悪の部類に属します。こんな土になるまで放置しておいた農民の気が知れないというとすら思いました。たぶんただの一度も土作りをしたことがないことだけはたしかです。
失礼ながら、このひどい土を見て、中国産農産物がなんの味もしない無味乾燥な理由が分かりました。土の力で作物を作っているのではなく、化学肥料の力だけに頼って作っているのです。

聞けば、中国にはそもそも堆肥を作るという伝統がないそうです。この最悪の土の上で、過剰な人口を養うことを可能にしたのが、化学肥料と化学農薬の度はずれた多投です。

中国環境科学研究院のGao Jixi生態学研究所長はこう述べています。
China's agriculture causing environmental deterioration,xinhua
.net,7.5

「化学肥料と農薬の大量使用は厳しい土壌・水・大気汚染をもたらしてきた。中国農民は毎年、4124万トンの化学肥料を使っており、これは農地1ha当たりでは400kgになる。これは先進国の1ha当たり225kgという安全限界をはるかに上回る。」
「中国で大量に使われる化学肥料である窒素肥料は、40%が有効に利用されているにすぎない。ほとんど半分が作物に吸収される前に蒸発するか、流れ出し、水・土壌・大気汚染を引き起こしている。」

化学肥料は土を豊かにしません。
単に作物に成長栄養を与えるだけです。むしろ過剰な窒素は、作物をひ弱にし、植物が利用しきれなかった窒素は硝酸態窒素として、土壌に沈下し、そして水系に流れ込みます。
1985年から2000年の間に、1億4100万トン、1年当たりにして900万トンの窒素肥料が流出し、土壌や水系を汚染しました。
病虫害を抑え、見てくれをよくして商品価値を高める化学肥料を過剰に使用すれば、作物を化学汚染させていくばかりか、天敵生物を滅亡に追い込み生態系を破壊し、畑の外にまで汚染を拡げます。

中国の農薬使用量は年間120万トンにのぼり、年々増加する一方です。

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中国食品>世界一甘い残留農薬検査基準、農薬過剰使用による健康被害が

これは、日本も経験したことですが、害虫には農薬に対して耐性を持つようになります。
仮に100匹の害虫がいたとして、それに農薬散布して、仮に百回に一度農薬耐性を持つ個体が発生した場合、以後農薬の効果は急速に衰えていき、やがてまるで効かなくなります。

農薬耐性を持つ害虫は繁殖力も強いからです。人間は毎年より濃度を上げた農薬を散布するしかなくなり、その無限地獄が始まります。
現在の中国は、農業外からの工場排水に冒される前に、内在的に大きな問題を抱えていたのです。それは化学肥料と化学農薬の過剰投入という問題です。
結果、中国の湖沼の75%、地下水の50%が汚染されています。
その原因は工業排水、家庭用排水、そしてこの農業汚染であることは疑い得ないでしょう。

このように中国農業は、工業排水の最初の被害者でありながら、自らもまた化学肥料、化学農薬の多投による汚染源でもあるという加害者でもあったようです。
「狭小」な国土に過剰な人口、そして成長至上主義の農業政策からはその副作用として公害が吹き出てきたのです。
そしてこの公害は、中国を砂漠化し、更に耕作地を狭小化していくことになります。

                                                                                                                              (続く)

 

 

 

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コメント

2021.10.4 相模吾です。 現在の中国は好きになれない国ですが、何となく哀れに思える記事でした。食料を得るためには友好国を増やせばよいのに、正反対の国策の国です。
「ポツンと一軒家」というテレビを好んで見ていますが高齢の一人、二人家族のかたが山奥で林業、農業を継続しています。しかし彼らは自分の山から切り出した材木で家を建て、ある時は燃料にし、田や畑を耕作して遠くの家族やご近所にに収穫物を分けています。そしてまた彼らは農民でありながら機械の手入れ、家を建て、道路を整備し、家畜を飼い、水場を維持し、庭を造り等々何でも自分でこなしています。文字通り農民ではなく、お百姓さんです。
共通しているのは土地と自然環境に感謝しながら代々継承していることです。このお百姓さんの生きざまが、日本人を日本人にあらしめていると感じました。

初めて投稿しますが、今コメント欄が荒れているのは残念ですねえ。
半年前に放送していた笑ってこらえてという番組で土の研究家である森林総合研究所主任研究員の藤井一至氏が世界の土の分布図調査内容を見て、中国と東南アジアが意外にも作物を育てるのに不向きという話に衝撃を受けた覚えがありましたね。
確か中国は強風化赤黄色土と若手土壌が殆どでどちらも作物は育てられないこともないが、努力が必要な土という区分でした。
身近では冷や飯を食べるようになるくらいには食の安全が向上しましたが、その分より贅沢品を食べるようになり、昔ながらの食事は見向きされなくなり始めましたね。日本では人気な四川料理も都市部では油ばかりで不健康と健康ブームもあり、不人気なものになり、よりヘルシーで美味しいものに都市市民は目を向けるようになりました。しかしながら、その分のしわ寄せは来るだろうなと話を聞いてて思いましたが、ここ最近の穀物上昇でそれが顕在化したなあと個人的には感じますね。

>ひと頃日本の青果市場を征する勢いだった中国産農産物はめっきり減りましたが、それはもう輸出する余力がなくなったからです。

 このことは知りませんでしたね。中国には十分な耕地があり農家の所得が安いため農家の方々は一生懸命に働き安くニンニクなどを生産し日本へ輸出しているのだとばかり思っておりました。

>聞けば、中国にはそもそも堆肥を作るという伝統がないそうです。

 これも意外なことですね。日本の農業関係雑誌ではたい肥の様々な作り方などの記事が人気となっております。

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