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2021年10月23日 (土)

日米共同で中距離弾道ミサイルシステムを作れ

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日本が中国の弾道ミサイルの脅威に対して対抗抑止を持つために、どのようなことが可能なのか、今日はもう少し踏み込んでみることにします。
今日が最終回となりますが、今回も村野将氏の優れた論考を基にお話していくことにします。

●参考資料
※村野将・岩間陽子
『日本の「抑止力」とアジアの安定と日本に欠けている戦略的コミュニケーション』)
日本の「抑止力」とアジアの安定 | 政策シンクタンクPHP総研
※峯村健司『ミサイル増強すすめる中国軍、なのに具体的な議論ができない日本の問題』 朝日新聞グローバルプラスhttps://globe.asahi.com/article/13334397

結論からいえば、米国と共に中距離ミサイル戦力を共に作り、日米が一体化した体制を作る必要があります。
独自にできないのかという疑問もあるでしょうが、技術的に国力的にも不可能です。
しかし考える以上に日米の一体化は多方面で進んでいて、たとえば海自がもっとも力を入れている対潜水艦作戦において完全な米海軍との共同作戦が前提となっています。
この基盤の上に中距離弾道ミサイルシステムという新たな分野が増えるだけのことです。
むしろ最大の問題は日本人の意識です。
この共同抑止力強化は、日本人の多くがまだ浸っている専守防衛という昭和の香りのただよう迷妄から醒めねばできないことだからです。
ただしこれは政治の領域のテーマであって、今回のシリーズはそれをあえて切り放して考えてきました。

図表3:中国の潜在的な重要軍事施設と地上発射型中距離ミサイルの位置関係
村野氏による

さて上図は、中国軍の弾道ミサイル発射基地の分散状況を示しています。
一見してお分かりのように、中国軍の弾道ミサイル基地の大半は沿岸部に集中して配置されています。
大陸奥深く配備されているのは、彼らが全面戦争に備えた大陸間弾道ミサイルだけですからわが国はこれを無視してよいでしょう。
また同様に、航空基地、海軍基地、潜水艦基地、陸軍基地なども捨象します。
わが国にはそこまで広範囲を攻撃する力はないし、その必要もないからです。
私たちは中国と全面戦争するのではなく、私たちの頭上の刃を取り除くだけに集中すればよいのです。
長距離弾道ミサイルは米国に届くが故に、米軍の領域と割り切りましょう。

したがって、わが国が対抗せねばならないのは、この中国の軍事施設・重要拠点5万箇所のうち約70%が集中する沿岸から400km地点以内の弾道ミサイル発射基地群です。
具体的にはこれらは、日本から2000㎞以内に納まっています。
仮に九州に射程2000kmの準中距離弾道ミサイルを配備すれば、中国沿岸から約1000km以内の弾道ミサイル基地を13分以内に攻撃することが可能となります。
まず日本はこの沿岸部の中国ミサイル基地を攻撃可能な準中距離弾道ミサイルを保有すべきです。

現実問題として中国軍の中距離弾道ミサイルは、移動式発射装置に乗せられている場合が多く、これらを探知して破壊することはほぼ不可能です。
これを破壊するためには、目標を指示する誘導員を潜入させ、航空機でピンポイント攻撃をするしかありませんが、そのような能力は日本にはありません。
日本が限られた予算と時間しか持たない対抗手段の中で、このもっとも困難なラフロードに入ってしまうことはどう見ても得策ではありません。
おそらく現在可能なのは、敵基地の中枢である指揮命令系統・固定発射装置などに限定されるかもしれません。

日本ができるのは語弊がありますが、「日本が弾道ミサイルに対して対抗抑止を保有したという事実」です。
完全破壊を目指すのではなく、米軍と一体化した中距離弾道ミサイルの対抗手段を持ったという政治的宣言です。
これはわが国が中国に対して発する間違いようがないメッセージであり、戦略的コミュニケーションです。
この宣言を発しただけで、中国は、日本と米国が一体化した中距離弾道ミサイル戦力配備計画を立案していることを知っている以上、日本に対して今までのような対応をとることはできなくなります。

なお、この戦略的コミュニケーションには硬軟あって、このようなこちらの戦略抑止をデモンストレーションするものから、外交チャンネルを使った対話まで幅広く存在します。

ただしなにを対話するにしても、こちらが一方的に負けているような状況では話にならないということです。
いままでの日本は前者が欠落し、後者のみに頼ってきていました。
同様の中距離弾道ミサイルの増強を進めている国が、中国の進攻圧力を日常的に受けて続けている台湾です。

「【台北=中村裕】台湾の行政院(内閣)は16日、最大2400億台湾ドル(約9500億円)にのぼるミサイル調達の特別予算を組むための法案を閣議決定した。中国からの軍事的圧力が強まるなか、対中抑止力の向上へミサイルの大量配備を進めるのが狙い。ミサイルでは異例の規模の予算を計上し、中国に対抗する。
海空戦力提昇計画採購特別条例が同日、行政院を通過した。今後、議会承認のため立法院(国会)に送られる。議会では与党・民主進歩党(民進党)の議席が過半を大幅に上回っており、承認は確実だ。対艦や対空ミサイルなどの量産に充てられる。法案は2022年から5年間が対象。
台湾は現在、射程600キロメートルの中距離ミサイル「雄風2E」などを配備しているが数は少なく、大半は同40~200キロメートルの短距離ミサイルだ。中国への抑止力には足りず、特別予算の編成で中距離ミサイルの配備も急ぎたい考えだ」
(日経2021年9月16日)

台湾は1兆円弱の特別予算を組んで、この5年間で中距離弾道ミサイルの大増強を計る予定のようです。
おそらく台湾は軍事拠点のみならず、沿岸部大都市の政治・経済インフラまで攻撃対象に加えているはずです。

このような動きは米軍にとっても大きなメリットを生むでしょう。

「日本の防衛は、あくまで日米双方のもつアセットの総体による抑止力によって達成されるものだ。日米の計画立案レベルでの連携が深まれば、米軍の負担を減らすことができ、その分移動目標への攻撃など、より高度な任務に集中できるようになる。さらに、「米軍にさえ手を出さなければよい」と中国が日米(台)を分断(デカップリング)できると誤認するのを防ぎ、抑止力の強化にも貢献する」(村野前掲)

日米が協力して中距離弾道ミサイル配備計画をたてれば、もうひとつのよい副産物ができます。
それは日本が敵基地攻撃能力を保有することに対して、米国が事前協議を要求することに対する答えになるからです。
勝手に日本に戦争を始められては米国が意図しない戦争に引きずり込まれる可能性がでるために、このことは敵基地攻撃論を考えるうえでの難題でした。

しかし、十数分で飛んで来る弾道ミサイルに対しての報復は、 相手が 撃った瞬間に反撃を決意せねばならないわけですから、米国との事前協議など不可能です。
この問題を解決するには、中距離弾道ミサイルシステムを完全な共同運用にする以外ありません。
ヨーロッパで実施されているニュークリアシェアリングのようなものをイメージすればよいでしょう。
このシステムを共同で立ち上げ、共同で運用することは、日米の信頼の絆ともなります。
今回の中距離弾道ミサイルシステムは通常兵器を想定していますが、核弾頭へと発展する場合も、信頼の担保となるでしょう。

わが国がこの方法を取るためにやらねばならないことは山積しています。
ただしその大部分は政治の領域に属するものばかりです。
別の言い方をすれば、政治が責任を持って解決すべきことばかりなのです。
「抑止とは、軍事力のみによって達成されるものではない。危機に至るまでの緊張のエスカレーションの段階に日本社会が耐える能力、戦略的レジリエンスの強化も必要である。そこには「緊急事態」への法的・制度的準備も含まれるだろうし、民間防衛能力をあげることも含まれる。日本国民がパニックに陥り、社会システムが麻痺してしまうようであれば、それだけで中国側は低いコストで危機のエスカレーションを行なうことができる」(村野前掲)
いうまでもなく、この対抗抑止の強化は単独であるわけではなく、憲法改正、緊急事態条項、民間防衛、スパイ防止法など多方面の社会の強靱化を含む大きな課題の一角にすぎません。
これらはひとつひとつがかねてから議論されてきた大きな問題ですので、ここでは論じませんが、この中に中国の中距離弾道ミサイルに対する対抗抑止を加える時期が来たと思います。

それを先伸ばしして日米同盟の中で眠りこけてきた結果が、核の刃を振り回し恫喝の炎を吐く中国のようなモンスター国家を育ててしまったのですから。


 

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コメント

>いうまでもなく、この対抗抑止の強化は単独であるわけではなく、憲法改正、緊急事態条項、民間防衛、スパイ防止法など多方面の社会の強靱化を含む大きな課題の一角にすぎません。
これらはひとつひとつがかねてから議論されてきた大きな問題ですので、ここでは論じませんが、この中に中国の中距離弾道ミサイルに対する対抗抑止を加える時期が来たと思います。
それを先伸ばしして日米同盟の中で眠りこけていたきた結果が、核の刃を振り回し恫喝の炎を吐く中国のようなモンスター国家を育ててしまったのですから。

 おっしゃるとおりです。政治家の決断であり、国民の決断でもありますね。岸田首相にそれができるか です。

 配備による対中外交の深化・拡大だけでなく、外交不均衡の緩和も期待できます。中共の一時的な猛反発は「折り込み済み」と覚悟して、早急に進めるべきです。
台湾問題に対処するかたちで先島諸島への配備をまず先行して、やがて1000基程度には持って行くように。

今しか出来ないし、これが最後のチャンスだと思います。
これが出来なければ、今後は米中両属的な苦しみを長く被る事になりそうです。

 言葉の、表現悪いけど、今でも、死んだ子の年をかぞえてます。
トランプさんが、大統領でなくなったことが、現在でも、くれぐれも、
残念・・。中距離弾道ミサイルの条約の、対ロシアとの破棄、方面に
対中国への構築。いつも、一見乱雑のようにみえても、繊細的確な
そして、豪快な骨太な、交渉戦略(対北朝鮮等も)だったと思います。
でも、現在の置かれた布陣で、周辺喫緊の中、日本も日本なりの
最善の処方を、常に備えていかなければならない・・。

 私のような一般国民は、専門的な知識がないので、いろいろ教えて
くれるサイトを当たって、勉強していくしかないのですが、それでも、
大まかな意味での国の在り方は、こうしていかなければという思いは
啓発の中で、醸成されていきます。


 戦争や、原爆を、現実に味わうことは、人類として。
筆舌に尽くせない悲惨過ぎることだけど・・。けれども、それ故に。
現近の、日本の周辺国の、あまりにも、無謀で異常な、政治的思考状態と。
現実の行動を。素(ス)に ありのままに認識して、受けとめるのなら・・。
( なにが、現実にあっても、おかしくない、無法で 異常すぎる、! 暴走国家! ) 。

 どんな非難があったとしても・・。周辺国の 無法な暴発を、防止できるようにと!。
通常国家が持つ、反撃可能な法的整備を、為し。 敵基地への・・反撃能力を、為し。
現実世界の中で残されている、最終刃止めとしての抑止力、対抗反撃・核装備を 為し。
(シェアリングであっても)、核武装の 潜水艦配備・・等も、明確に、掲げ知らせ!‼。
周辺国に 常に周知させて‼、進めていくこと!。現実上、それ以外、対抗手段がない。


 被爆国にて、核装備を言及することは、余りに 残念過ぎて、不本意なこと。でも、
それが、21世紀日本: 対外存続のための、 尊厳国家としての、 [現実解] だと思う。
通常の、話し合いが通じる相手ではない・・! 余りに 無念過ぎて、 不本意なこと。
起きてしまっている時代を、情緒的な形で、巻き戻すことはできない。 (周辺対応) 。

 原爆を落とされた国だけが・・、世界の中で反撃抑止力を 本当は主張できる!。
 二度と、そうされないために!!・・。 自国をまもるための、、強い抑止力!。
 二度と、そうさせ得ないために!。 ・・あやまちは、繰り返させません、と!。

素人ですみません。

管理人さんの、
おそらく台湾は軍事拠点のみならず、沿岸部大都市の政治・経済インフラまで攻撃対象に加えているはずです。

ここが重要なのではないかと思います。
すなわち、上海を火の海にできる能力があれば最低限の抑止力になると。
もちろんそんな下品なことは公然とは言えないので、内陸部の発射台を攻撃できることを目指すと宣言するわけですが。

日本もそれくらいは出来ると思うのですが、どうでしょうか。

既に多方面で進んでいる日米の一体化に加えて中距離弾道ミサイルシステムを積む事自体に新たな法整備は不要なはずです。
中距離弾道システムを開発しながら、日本国内では沖縄基地の運用と併せて、より日本の自衛隊が担う割合を増やしていく準備にこれから入れば良いですね。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100200052.pdf

4月の菅–バイデン会談の共同宣言は今週の記事の後に読むと、具体的で強い発信をあちこちに読み取ることができます。というか、もうやるからって言ってるのと同じ言い切りぷりです。むしろ始めないことがネガティブな発信な位。

備えるべきはこれへのカウンターアタックである情報戦、沖縄広島他の基地核反対発信の激化と対応時に、また変に細かい個別論に落とし込まれて実現不可能な約束を地元民としない事です。関わる団体や業者の情報漏洩や不正報道も出ます。
たとえそれらが一旦あったとしても、だから日本はダメだとか無駄だとか全員が納得するまでご説明してからとか、全否定して凍結したり潔癖な高みを追求しないことです。
世界標準の「トライアンドエラー」を採用する機会を増やしていく事が大切です。
日本人のゼロリスク過敏症は、これ自体が歴年のメディアからのフリカケ情報戦略の賜物なのです。
今回のガースー退陣でも相当数が乗せられています。

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