なぜだかわからない、韓国感染再拡大
正直、どうしてこうなるのかわかりません。
韓国の感染再拡大のことです。
現在、韓国は深刻な医療崩壊の危機に遭遇しています。
感染者が1日3000人から4000人、重症者、死者も急増した結果、最悪の医療崩壊に直面しています。
保健福祉部の中央事故収拾本部によると、首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)は2021年11月26日午前0時の時点で、新型コロナウイルスの感染が確認されて入院を24時間以上待っている人が1310人に上るそうです。
下図は2020年1月から2021年11月現在までの韓国の感染者数推移を見たものです。
ニッセイ基礎研究所
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69457?site=nli
上図の右から3番目が2021年10月25日ですが、韓国政府はこの時点で規制解除をおこなっています。
この時点ではグラフでわかるように、1日の新規感染者数は依然1,500~2,200人に達していたわけですが、ワクチンの接種完了率が70%を超えたということを理由にして、経済活動を優先させる方向に舵を切り、11月1日から第1段階の行動制限緩和策を実施しました。
その結果、感染は再拡大してしまい、一気に過去最多だった前日(940人)から1日で370人急増し、初めて1000人の大台に乗ってしまいました。
新規感染者数の増加で空き病床がゼロになりつつあります。
問題はそのタイミングです。
まだ感染が収まり切っておらず、全国に大きなクラスターが点在する中でやってしまいました。
一方日本の感染者数推移をみてみましょう。
東京都の11月29日現在のものですが、新規陽性者数は14人で韓国とは2桁違います。
都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト (tokyo.lg.jp)
日本がこの状況で規制を段階的に緩めていることに留意してください。
朝日
韓国自身も原因がわからずに頭を掻きむしっているようで、中央日報はG20で防疫強度指数が最低ランクになったと叫んでいます。
こういう時にもまず外国と比較しないと落ち着かないのは、さすがではあります。
そんなことより国民のことを心配しろよ、と思いますが、まずは外国の視線なのね。
「韓国政府が推進している段階的日常回復(ウィズコロナ・with covid19・コロナと共存)が過度に防疫基準を低くしたという主張が出ている。韓国の防疫強度が主要20カ国・地域(G20)のうち厳格度指数(Stringency Index)で最下位水準という海外の研究結果が発表されながらだ。
11日(現地時間)、英国オックスフォード大学が発表した新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)厳格度指数をみると、韓国は100点満点中39.35点だ(11月8日集計)。G20のうち韓国より低いのはメキシコ(35.19点)・スロベニア(36.11点)だけだ。中央防疫対策本部によると、この日0時を基準として重篤患者は473人であることが分かった」(中央日報2021年11月12日)
この厳格度指数という聞き慣れない言葉は英国のオックスフォードが作ったコロナ対応の厳しさを判定する指数です。
https://diamond.jp/articles/-/238329?page=2
●厳格度指数
(1)学校閉鎖
(2)職場閉鎖
(3)公共イベントの中止
(4)集会に対する規制
(5)公共交通の閉鎖
(6)外出の自粛要請
(7)国内の移動制限
(8)海外への渡航制限
(9)国民への啓蒙活動
以上の項目について0~100までの数値で現し、風致が大きいほうが厳格だということになります。
・要請か拘束義務か
・効力の範囲が地域か全国か
ちなみに厳格指数ランキングはこのようになっています。
●厳格指数
1位・・・キューバ、エルサルバドル、ホンジュラス、クウェート(以上同率100)
5位・・・コンゴ、ドミニカ
G7諸国では60位くらいから130位台です。
・59位・・・フランス83.46
・107位・・・イタリア67.78
・109・・・ドイツ68.26
・108位・・・米国68.41
・135位・・・日本53.30
厳しいと思っていた韓国は日本の下で140位46.16、中国は121位で64.44でした。
わが国はあれだけなんちゃって非常事態宣言なので最下位かと思ったのですが、思いの外普通でした。やや意外。
実はこの厳格度ランキングをみると、上位にくるのはことごとく民主国家とは言い難い国家ばかりが名を連ねています。
そうなのです、厳格指数は民主主義が成熟した国と相反関係にあるのです。
独裁国家のほうが締めやすいということです。
もうひとつのランキングである「民主主義指数」(英国エコノミスト誌)で、さきほどの厳格指数のトップの国々を見てみましょう。
●民主主義指数
・キューバ:2.84(143位)
・エルサルバドル:6.15(同率71位)
・ホンジュラス:5.42(同率89位)
・クウェート:3.93(同率114位)
・コンゴ共和国:3.11(同率134位)
・ドミニカ共和国:6.54(同率60位)
話を韓国に戻します。
韓国は日本より下だからと言って、そうがっかりすることはありません。
問題はランキングなどではなく、韓国が感染をぶり返してしまっている原因です。
「前日460人でコロナ流行後最多を記録したが、一日で更新してさらに13人増えた。新規感染者は2520人増加して累積38万8351人を記録した。前日の死亡者は21人で累積死亡者数は3033人になった。(略)
(厳格度指数が)低いからといって防疫が全面的に失敗したとみることは難しいが、韓国の指数はウィズコロナ施行後8点ほど落ちた。漸進的なウィズコロナを施行中のシンガポール(44.44点)や防疫措置をほぼ解除した英国(41.20点)と比較すると韓国の防疫レベルが一瞬で落ちたという分析だ」
(中央前掲)
中央日報はその原因が、防疫緩和を急ぎすぎたからだ、としています。
「韓国防疫当局は今月1日から首都圏10人、非首都圏12人まで私的な集まりを許容している。レストランやカフェは24時間営業することができる。遊興施設は夜12時まで運営する代わりに防疫パス(接種証明・陰性確認制)を適用中だ。(略)
専門家は大規模流行を防ぐためには防疫緩和を徐々に進めなければなければならないと強調する。疾病管理本部長を務めた翰林(ハンリム)大学聖心(ソンシム)病院呼吸器内科の鄭ギ碩(チョン・ギソク)教授は「防疫を緩和すれば感染者が再び増えるのは当然だ」とし「季節的な状況を考慮して徐々に防疫規則を緩和する取り組みが必要だ」と話した」(中央前掲)
うーん、「防疫を緩めると感染者が再び増える」ですか、そうかな。
日本も規制緩和をしていますが、感染者数は増えるどころか減少し続けています。
日本は総人口に対する感染率は1.4%程度。
一方韓国は人口比に換算すると0.8%で、そう大きな差はなく、むしろ韓国のほうが優秀です。
ワクチン接種率も70%台中盤で日本とほぼ同じです。
韓国の11月23日現在のワクチン接種率は1回目が82.4%、2回目が79.1%で、日本の78.6%と76.4%を上回っています。
さらに、3回目の接種(ブースター接種)率も4.1%に達しています。日本は3回目は手つかずです。
しかし韓国はブレークスルーしてしまいました。
厳格度もほぼ一緒、接種率も同格、人口あたりの感染率も一緒。
違うといえば、せいぜいが韓国が初期にアストラゼネガのワクチンなどを複数多用したことです。
同上
「新型コロナワクチンの確保に出遅れた韓国政府は、今年の2月3日にファイザー社製のワクチンを特例承認(正式に承認されるまでには医療従事者に限って接種が行われた。正式承認は3月5日)し、その後2月10日にはアストラゼネカ社製のワクチンを、続いて4月7日にはヤンセンファーマ社製のワクチンを、そして5月21日にはモデルナ社製のワクチンを次々と承認した。
その結果、2月26日から始まった新型コロナワクチンの接種は高齢者を対象にアストラゼネカ社製のワクチンが接種されることになった。
その後、ファイザー社製やモデルナ社製の供給が増えたことにより、アストラゼネカ社やヤンセンファーマ社製の接種は大きく減少したものの、11月23日時点の1次接種者のうちアストラゼネカ社製やヤンセンファーマ社製のワクチンを接種した人はそれぞれ11,116,361人(26.3%)と1,497,303人(3.5%)に達し、全体の約30%を占めている」
(ニッセイ基礎研究所生活研究部金明中)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69457?site=nli
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2021/11/4000.php
日本が6月まで出遅れた原因は、ファイザーが確保できるまで待ったことが一因にありましたが、韓国は入手できるものから打っていったようです。
当時ムン閣下の慌てぶりは伝わってきており、入手できるものから手当たり次第に使っていったようです。
2月からアストラゼネカ、4月からヤンセンファーマ、5月からモデルナ、続いてファイザーと4社のワクチンを混合で打っています。
たぶん1回目と2回目が違うものだったことは頻繁に起きたと思われますが、これも決定的な間違いとも思えません。
こういう打ち方を「交互接種」、あるいは「異種混合」というそうですが、厚労省も一定の条件ではそれを認めています。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0095.html
ただ韓国がこれだけ大きなブレークスルー感染を出してしまったことから、この混合接種が原因の一角にあったことは否定しきれません。
また接種した時期が日本より早く2月位に高齢者接種を始めているために、効力が切れた可能性はあるかもしれません。
韓国で目立つのは、高齢者のブレークスルー感染だからです。
マスクに関しては、結構ちゃんとしているようです。
マスクの効用についてWHOはこんなことを言っています。
「新型ウイルスが流行して以来、世界保健機関(WHO)の公式アドバイスは明快だ。マスクを着用すべき人は、あくまでも2種類のみ。症状のある患者と、新型ウイルスに感染した疑いのある人をケアする人だ。
このほかは誰も、マスクを着ける必要はない。これにはいくつかの理由がある。ひとつに、マスクはウイルス防御としては不十分だとされているからだ。現時
点での研究では、飛まつの拡散や汚染表面との接触によって、新型ウイルスに感染する。なので、マスクが防御として役に立つのは、感染者があなたの顔の近くでくしゃみやせきをしたときだけだ。だからこそ専門家は、せっけんを使ったこまめな手洗いの方がずっと効果的だとしている」(BBC2020年3月26日)
欧米ではマスク反対運動があるほど拒否感が強いようですが、アジア圏はおおむねマスク着用には忌避感はないようです。
日本人などマスクが好きなくらい。(私は嫌いですけど)
韓国はこの再感染拡大を受けて、マスクももっと締めるということで、とうとう罰金制を導入しました。
「韓国では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、13日から公共の場でマスクを着用していない人から日本円でおよそ1万円を徴収することになり、首都ソウルでは、市の職員が通行人にマスクの着用を呼びかけました」(NHK2020年11月13日 写真も)
後の可能性としては気温でしょうか。
「韓国の気温が日本より低い点だ。新規感染者が最も多く発生しているソウルの今年10月と11月の平均最低気温はそれぞれ0.5度と1.3度で、同じ時期の東京の平均最低気温15.2度と8.3度を大きく下回る。韓国では昨年も気温が下がる11月中旬から新規感染者が増加しはじめ、クリスマスに新規感染者数がピークに達した経験がある。今後日本でも気温が下がるにつれて、新規感染者数が増えるのではないかと心配である」(ニッセイ基礎研究所前掲)
確かに韓国のほうが日本より寒いのですが、温かい沖縄も感染爆発していますし、規制解除した北海道などは韓国とそう違わない気温ですが感染再拡大は見られていませんから決定的理由にはならないような気がします。
ただし、今後となると、ウィルスが好む乾燥して気温が低い季節に入るために警戒は必要ですが。
というわけで理屈の上では、韓国でこんなに感染が拡がる理由がわかりません。
とはいえ、現実に再拡大のテンポは早く、韓国の医療崩壊が現実のものとなっています。
いままでムン政権が言ってきた「ウィズコロナで一日新規感染者が5000人まで増えても安定した医療の対応が可能だ」と言ってきたにもかかわらず、新規感染者数が1日に3000-4000人台なのにもかかわらず、医療崩壊をおこしてしまっています。
また、重症化率も政府の予想値をはるかに上回る状況のようで、死亡者の増加も始まっています。
ただ指導者のキャラは大きく違いましたね。
菅首相はメディアの総バッシングにあいながら黙々とワクチンを確保し続け、それを国民に確実に打つ体制を構築していったのですが、ムン閣下は少し成功すると「K防疫は世界一だ」、なんて胸を張っていましたね。
「韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、就任3年を迎えて大統領府で演説した。韓国が成功している新型コロナウイルス感染症の流行抑制について、「防疫で世界をリードする国となった。危機を新しいチャンスと発展の動力にしたい」と訴えた。(略)
文氏は、韓国の感染症対策を英語の国名コリアの頭文字を冠して「K防疫」と呼び、「世界の標準になった。韓国の国家としての地位と誇りが高まっている」と語った」(朝日2020年5月10日)
まだ終わっていないのにこんな「世界一」宣言をするから、再拡大した今はボロボロに言われるのです。あたりまえだつうの。
いつものことですが、韓国はシャンパンを早く抜きすぎたのです。
それはさておき、韓国のこととなると皮肉に見る人も多いでしょうが、ウィズコロナの反面教師としたほうがよいのは確かです。
その意味で、日本は韓国をほんとうに見習わねばなりません。
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