中国がいくらEV車を増やしてもCO2削減にならない
世界全体が勘違いしていることが進められています。
電気自動車(EV)の推進です。
なぜ勘違いなのでしょうか。
今はCO2主犯説うんぬんは脇に置きましょう。
仮にそうだったとしても、EVが果たして解決になるのかどうか。
おっと、正確な表現じゃなかった。
正しくは「どの国においてもCO2削減のためにEVが意味があるのかどうか」を考えてみましょう。
私がわざわざ「どの国でも」と断ったのは、EVは当然ですがその国の電気を食って動いているからで、とうぜんのこととしてその国ごとに電源事情が違う以上、その国の電源のCO2排出量を問わなければ、EVであろうとなかろうとCO2削減はできていないからです。
至ってあたりまえのことを言ったにすぎませんが、国連や政府はEVによってCO2が削減できると宣伝しています。
確かに一般論としては、EVは排気ガスの点で大きな削減手段になりますが、どの国でもそうだとはいえません。
たとえば、世界最大のEV車生産国は中国なのはご承知のとおりです。
中国は生産量において既に世界一の自動車生産国であり購入国ですが、このEVにおいては頭ひとつ抜けていると評されています。
ファーウェイの自動運転用頭脳を搭載した北京汽車グループの「極狐(Arcfox)アルファT」(4月19日、上海自動車ショー) REUTERS- NW
「中国のEV販売台数はすでに日本の全自動車販売の6割程度に達するだけでなく、ファーウェイのような通信機器メーカーの参入で「知能ネット化」や標準化もどんどん進んでいる。
中国の電気自動車(EV)産業が昨年後半以来すごい勢いで伸びている。(略)
2021年に入ると、いっそう生産と販売が伸び、1~9月は生産台数が216万台で前年同期に比べて2.85倍というすさまじい増え方である。この勢いで行くと、2021年1年間で300万台を突破しそうだ。
新車販売の5台に1台がEVに
2020年10月に制定された「新エネルギー自動車産業発展計画2021~2035年」では「2025年には、新車販売台数の20%前後をEVとする」ことが目標とされていた。2020年の新車販売に占めるEVの割合は5.4%だったので、遠い目標のように思えたが、2021年1~9月は11.6%、9月だけをとれば17.1%、と目標へぐんぐん近づいている」(丸川知男ニューズウィーク2021年11月11日)
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2021/11/ev-3.php
このような中国の熱狂的なEV化は、中国が従来の内燃機関での競争では日独米とは勝負にならないからにすぎませんが、それに習の脱炭素化政策が大きな追い風になっています。
しかしそれがCO2削減に寄与しているかといえば別問題です。
ロイターはこう報じています。
「電気自動車(EV)は地球温暖化と戦うための強力な武器だ。しかし、EVが温室効果ガスの排出量を減らす効果には国ごとに大きなばらつきがあり、ガソリン車よりも排出量が多い場合もあることがデータ分析で明らかになった。
欧州では、EVの販売が世界で最も急速に増えている。だが、調査会社レイディアント・エナジー・グループ(REG)がまとめたデータによると、ポーランドやコソボでは発電システムが石炭に依存しているため、実際の排出量はEVの方が多い」((ロイター11月13日)
https://jp.reuters.com/article/ev-co2-idJPKBN2HW0EE
つまり、その国の電源が石炭に傾いた配分ならば、いくら電力の消費末端をEV化しても意味がない、下手をするとかえって増やす結果になる、ということです。
ヨーロッパでは石炭の依存度が高いのがポーランドで、逆に水力と原子力依存のスイスは最も低い国となります。
「ガソリン車に対するEVの二酸化炭素(CO2)排出量削減率が最も高いのは、電力を原発と水力で賄っているスイスの100%で、以下ノルウェー(98%)、フランス(96%)、スウェーデン(95%)、オーストリア(93%)となっている」(ロイター前掲)
つまり、スイスのように水力が主力だったり、フランスのように原子力に依存していればCO2削減の優等生になれるわけです。
種明かしすれば、馬鹿馬鹿しい。
日本の水力発電増設に反対したり、原子力を悪玉扱いしたのは、今CO2削減を言っているような人らなんですけどね。
世界でみると、電源構成はこのようになります。
各国のエネルギー構成 関西電力
上図(灰色が石炭)をみればお分かりになるように、中国は電源の58%という過半数を石炭に依存しています。
どんぐりの背比べなのが、56%のインドです。
ちなみに日本は26%で、世界平均の27%ていどの依存度です。
しかも何回か書いてきたように、日本の石炭火力は世界でもっとも先進的なもので、CO2排出量が抑えられています。
資源エネルギー庁
しかもCO2排出量におけるEVの圧倒的な優位は崩れつつあります。
「自動車メーカーがエンジンの燃費向上に取り組んだため、EVとガソリン車の排出量の差は近年、縮まっている。EEAのデータによると、欧州で新規登録されたガソリン車の炭素強度(一定の国内総生産を創出するために必要なCO2排出量)は、2006年から16年の間に平均25%減少した」(ロイター前掲)
しかもEVはやや驚いたことには、充電する時間帯によってCO2搬出量が違うようです。
「欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)と欧州環境機関(EEA)が公表したデータによると、太陽光と風力が潤沢な午後に充電すれば、天然ガスや石炭を燃料に発電することが多い夜間よりも削減効果が16-18%高まる。(略)
リチウムイオン電池がフル充電の状態を維持できるのは4時間程度に過ぎず、昼間に太陽光や風力で大量の電力を生み出している国でも、夜間の充電のためにこうした電力を確保するのは難しい」(ロイター前掲)
つまりその国が仮に再生可能エネルギーへの依存度が高い国であった場合、太陽光は夜間は休んでいるために火力が大半のエネルギーを支えているため、結局削減効果は消えてしまうということになります。
また今ヨーロッパでEVが売れているのは、政府の多大な補助金が理由で、その実力によるものではありません。
「欧州におけるEV販売の増加は、政府の補助金や内燃車に対する新たな規制が支えになっている」(ロイター前掲)
ですから、その国の電源比率を見ないとEVによるCO2削減量はわかりません。
前述したように、EVの充電による排出量がガソリン車よりも優位にある国には理由があるのです。
たとえば、スイスは水力発電や原発が主力電源ですし、94%を天然ガスで賄っているモルドバと再エネが46%を占めるアイルランドでは、CO2の排出量はほぼ一緒です。
その理由は天然ガスがCO2が少ないからにすぎません。
逆に、CO2排出量が天然ガスより多い石油、石炭、泥炭の占める比率が高い国々は必然的にCO2排出量も増大します。
というわけで、中国がいかに世界有数のEV生産国になろうと、少しもCO2は減っておらず、日本が得意とする脱炭素の低公害車よりもはるかにCO2をだしていることになります。
というわけて、そもそもその中国のEV車の電源は石炭であり、しかも質の悪い硫黄酸化物の多い低品質の石炭を多く使っていては、EV化はCO2削減にはならないどころか、かえって増加の手助けをしているかもしれません。
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先日終了したCOP26ですが成果文書の
「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な削減の努力を加速する」
の廃止が削減に置き換わった事がニュースになっていますが、むしろ注目すべきは「排出削減対策が取られていない石炭火力発電」の箇所で、この欺瞞あふれる会議でようやくまともな提案が採択されたのかと少し見直しました。
国内では色々不安視されている岸田首相も日本の火力発電技術を使う事を提案するなど建設的なスタンスを取り、見事「化石賞」の名誉を与えられましたが最終的にこのような着地をした事で世界的に化石燃料を消せばすべて丸く治まるとかいう短絡的なブームが終わりつつあるのだと感じられて少しホッとしています。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年11月15日 (月) 13時16分
co2を減らす運動は極端すぎるので真面目に受け取ることができませんよね。多くの人たちがその運動を支持していない筈です。おかしいと思うのは、アメリカ民主党の対応です。民主党の過激派は、オカシオ・コルテスのように極端です。ウシのげっぷも良くないと大真面目に言います。これはやはり、おかしいと言わざるを得ません。アメリカは正気か?
岸田さんが石炭火力をと発言したのは正解でしたね。まずは、実行可能な次元からコツコツと進めるしかないでしょう。一番は原子力発電です。原子力発電をさらに強靭化し、今後とも利用していかなければならないと思っております。
電気自動車は、今日の記事で説かれているように、多くの問題がありそうです。電気自動車はたくさんの電気を使用するのではないですか。となると、原子力発電を大幅に増設し、電気需要増に対応するということになりませんか? わたしは、ある方が言われたように、これまでに積み上げられた日本の内燃機関技術の水準の高さを誇りに思うし、これに愛情すら感じております。当分、現在の私の軽自動車を大事に使いたいものです。
アメリカ民主党、アメリカを滅ぼす方向に進んでいるようでとても危険だと思います。ポリティカル・カレクトネス、これも危険で有害なものだと思います。アメリカよ、正気になっておくれ。
投稿: ueyonabaru | 2021年11月15日 (月) 19時24分