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2021年11月10日 (水)

バイデン、グリーンニューデールを切り捨てて予算案成立

082

バイデンがやっと予算案を通しました。
ブルームバークは「バイデン勝利」という記事を打っています。
ほとんど誤報です。

「米下院、歴史的な超党派インフラ法案可決-バイデン大統領の勝利
米下院は5日夜の本会議で、過去数十年ぶりとなる大規模なインフラ包括法案を賛成228、反対206の賛成多数で可決した。上院では民主党会派の議員に加え一部の共和党議員の賛成で8月に可決済みで、署名のためバイデン大統領に送付されて成立する運び。

道路や橋、公共交通などの整備に5500億ドル(約62兆4000億円)を投じる内容で、下院採決では共和党議員13人が賛成する一方、民主党からは6人の造反があった。民主党進歩派と穏健派の対立で数カ月にわたり滞っていた法案の議会通過は、支持率低下にも見舞われていた大統領にとって勝利を意味する」(ブルームバーク11月9日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-11-06/R24SDMDWLU6A01?srnd=cojp-v2

確かに「歴史的勝利」には違いありませんが、それは超党派で与党の一部を切って成立したことが「歴史的」だっただけのこと。ブルームバークさん吹かしましたね。
米国の新年度は10月からですから、既に1か月前には成立していなければならなかったはずです。
日本でいえば、5月になっても予算が決まっていないということになってしまいます。
いつも揉めるのは連邦政府の債務上限ですが、これに関しても、とりあえず連邦政府機関が動かなくなるから12月まで暫定的な延長でお茶をにごしておこうね、という妥結でした。

ではなぜ、予算が決まらなかったのでしょうか?

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ブルームバーク

上の写真は、左から民主党下院多数派指導者スティーニー・ホイヤーと、同じく民主党ジェームズ・クライバーン下院議員が、あのワニばばぁことナンシー・ペロシ下院議長が予算案で合意に至ったことを発表している様子ですが、あれ、なんかヘンに思いませんか。
普通、こういう時に握手をするのは、野党と政権側と決まっていますからね。
与党同士で握手してどうするんだと思いますが、そうなのです。
今回の予算案の難航は、ひとえに民主党内の激しい対立が原因だったのです。

バイデンがこの5月に提出した予算案は出してきた予算案は、戦後最大の6兆ドル(660兆円)という大型予算でした。

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時事 

「バイデン米大統領は28日、就任後初となる2022会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書を議会に提出した。成長戦略のインフラ投資や教育・福祉向けを重視し、歳出額は6兆110億ドル(約660兆円)と戦後最大規模に達した。政府債務が記録的水準に悪化することを受け、企業や富裕層への増税を提案した。
 「大きな政府」が主導する財政拡大で、国際競争力の強化と中低所得層への支援拡充を訴えるバイデン氏の意向を強く反映した。同氏は「米経済を強化し、長期の財政健全性を高める」と強調した。
 歳出は、新型コロナウイルス危機前の19年度比約3割の大幅増。国内総生産(GDP)比でみると、コロナ経済対策の特殊要因を除けば戦後最大の規模となる。その後も拡大を続け、31年度は8兆2110億ドルと、10年で4割近く増える見込みだ。
バイデン政権はインフラ投資や気候変動対策、子育て・教育支援を柱とした成長戦略に、幅広く予算を振り向けた。国防費は中国などの脅威をにらみ、積み増した」
(時事2021年05月29日)

 コロナ禍で冷え込んだ経済に対して財政拡大は正解ですし、成長戦略も結構、財政赤字が増えることもなんとかなるでしょう。
ちゃんと経済が成長して企業と国民が富めば、税収の増加でそんな財政赤字など補えるからです。
問題は、バイデンの言う「成長戦略」が、再エネ拡大しかないことです。
カマラはこう言っています。

「ジョーが言っているのはつまり、われわれはその資金を再生可能エネルギーに投資するということです」と2020年10月の副大統領候補の討論会で、バイデンの後任候補である上院議員カマラ・ハリスは語った。「これにより数百万人の雇用が創出できます。2050年までにCO2総排出量ゼロ、2035年までにカーボンニュートラルの達成を目指します。ジョーにはその計画があるのです」(WIRED2021年 1月4日)
https://wired.jp/membership/2021/01/04/could-biden-rebuild-the-economy-by-funding-green-energy/

このバンデン案は、事もあろうに与党内部に大きな亀裂を生んでしまいました。
というのはそもそもこのバイデン案は、民主党左派グループの主張をそのまま取り入れた内容だったからです。
下の写真は、グリーンニューディール政策を発表する民主党左派のオカシオ・コルテス下院議員らですが、バイデンの予算案はこれをそのまま下敷きにしていました。

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日経

「米議会の民主党左派グループは20日、脱炭素社会と雇用創出を目指す「グリーン・ニューディール」の決議案を発表した。トランプ前政権時にいったん否決されたが復活させた。気候変動に関する首脳会議(サミット)が22日から開かれるのを前に、バイデン政権に環境対策で世界を主導するよう訴えた形だ。
決議案は、党若手ホープのオカシオコルテス下院議員らがまとめた。「すべての電力需要をクリーンで再生可能な(温暖化ガス)排出ゼロのエネルギー源で満たす」とともに、インフラ投資で高賃金雇用を創出するとした。
同議員は記者会見で「持続可能な将来に向けた活動は長い間、地球と経済のどちらかを選ぶという誤った考え方で割れてきた」と指摘した上で、環境保護と経済成長の両立は可能だと主張した」
(日経2021年4月22日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21F080R20C21A4000000/

バイデンは本来は中間派であったにもかかわらず、大統領になるためにサンダースやコルテスなどの左派の力を借りたのですね。

「現在起きていることはバイデン前副大統領の更なる左傾化である。サンダース上院議員の支持者は民主党最左派の人びとであり、自分たちの贔屓のサンダース上院議員が候補指名を受けないのであれば投票に行かないと広言していた。しかしトランプ大統領の勝利するためには影響力を伸ばしている彼らの支持が不可欠となる。そこでバイデン前副大統領は5月半ばに大統領選に向けた気候変動政策プラットフォーム作成のためのパネルにサンダース上院議員、オカシオ-コルテス下院議員、グリーンニューディールのバックボーンとなった「サンライズ運動」の指導者ヴラシニ・プラカシュ氏等を参加させたのである。穏健派からはパリ協定策定に尽力したジョン・ケリー元国務長官も入っている 」
(有馬純『左傾化するバイデン候補のエネルギー温暖化政策』 2020年5月21日)
https://ieei.or.jp/2020/05/opinion200521/

だから大統領になったら、左派に借りを返さねばならなくなったわけです。
バイデンのグリーンニューディール予算案は、大統領選の論功行賞です。
これに強く反対したのは、共和党よりむしろ財政健全派の民主党中間派でした。
共和党はこの民主党中間派に相乗りした格好ですが、彼らからすれば勝手に民主党政権が自壊していくのをにやにや見ているだけでよかったのです。

これをエイヤっとまとめるだけのリーダーシップなど、バイデンのどこを探してもなかかったためになんと丸々1カ月間も新年度予算空白のまま、時間だけが押していったのです。
結局、この膠着状況を打開するため、民主党の中間派と共和党議員が妥協案を作って、インフラなど必要とされる部分の予算だけを切り離した超党派予算案を策定し、かろうじて予算案を通したというお粗末です。

こういうことができるのも、米国議会には党議拘束がなく、議員の良識を信じて各自自由に投票してよいという伝統があったからです。
ところが今度は、このグリーンニューディールを切り放して予算を通すことに左派が反対し、予算を一括で通すことを求めたために議会が空転、また空転。
与野党でネジレを作るならともかく、与党内部でネジレていてはシャレになりません。

結局、これ以上引っ張ると非常事態になることから、「道路や橋、公共交通などの整備に5500億ドル(約62兆4000億円)を投じる内容で、下院採決では共和党議員13人が賛成する一方、民主党からは6人の造反があった」(ブルームバーク)という具合に、左派を切り捨てる形で、共和党と中間派が手打ちをしたということになりました。
しかもこの超党派案で通したのは、公共インフラの整備の部分だけ。
なんのことはないバイデンは自分の党の分裂を、共和党の力を借りて鎮めたということになってしまったのですから、みっともない。

残りのグリーンニューディール予算に関しては、別途に審議延長という道は残してありますが、共和党の手を借りての超党派案ですから、もう成立の見込みはないと見られているようです。

さて、今回のバイデン予算案は、わが国の立憲のものとよく似ています。
バイデンはグリーンニューディールの大風呂敷を拡げてみせたのですが、その財源には富裕層や企業などに対する大規模な増税を考えていました。
立憲が1000万以下の国民への減税の代わりに、企業への法人税の引き上げを言い出したのと似ています。

そもそも、民主党左派が求める各種施策は、グリーンニューディールなどに見られるようにCO2削減のために化石燃料の投資を禁止し、再エネに一元化するような非効率なものがほとんどで、これをまともにやれば米国の製造業の競争力は大打撃を受けるでしょう。
もうすでにその最初の打撃は運輸業などに現れ始めています。

世界のリベラル左派には共通した誤った考え方があります。
所得の再分配とグリーン政策に傾くあまり、成長を度外視してしまうのです。
CO2ゼロ政策をして化石燃料への投資を禁止れば、とうぜんガソリン高となって、製造業が危機的状況になってしまうことは常識的に考えればすぐにわかりそうなものですが、彼らは再エネ100%にシフトすればいいのだと夢想します。
ところが再エネは風任せ、お日様任せで不安定なうえに、再エネ自体が火力発電がサポートしてあげねば安定しないというとんでもない困ったクンで、とてもではないが米国のような巨大な経済を持つ国を支えきれません。
だからグリーンニューディールは一見美しい理想論に聞こえますが、これでは経済は成長しないどころか衰退していってしまいます。
ぜんぜん経済が成長しないのに、富者や企業への税負担だけ上げれば、彼らは国外へ逃げ出すでしょう。
喜ぶのはグレタさんだけです。

今回の妥協案は、政府投資をインフラなどの必要かつ限られた部分だけでのものに限定し、バイデンの公約の一丁目一番地のグリーンニューディールについての予算は切り捨てました。賢明な選択です。
これによってバイデンがCOP26で公約した脱化石燃料政策に関しても、予算がつかない幽霊公約となりました

この共和党と手を組んだ民主党中間派の尻を炙っていたのは、先週末から始まった統一選挙において、各地で民主党が連敗を喫するという民主党総崩れの様相でした。
特に先日も触れたオハイオとジョージアの連敗は、民主党の牙城であっただけにショックが大きかったようです。
ここで国民に不人気な脱炭素政策など強行したら、もう中間選挙の結果はボロボロという姿が目に見えていたからです。

確かにバイデンは「勝った」のですが、それは彼が左派の主張を切り捨てたからです。
おそらく来年の中間選挙を民主党は各派バラバラに戦うことになるでしょう。 

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コメント

 とりあえず「良かった」と言えますね。
ただ、過激な運動団体を後ろ盾にしている民主党左派が当然このままじゃ済まさないでしょうし、バイデン自身も白旗を上げたワケではなさそうです。

バイデンをちょっぴり擁護するなら、彼は常に「格差社会の是正」を政策の主眼に置いて来ました。
その事自体は正しいんですが、グリーンニューディールのような蒙昧な政策を通じて問題を解決して行けると信じるドリーマーさんになっちゃった。しかし、これはまったくの逆張りです。
結局、格差緩和は製造業回帰などを通じて失業率を下げ、産業競争力を漸進的に上げるトランプ方式しかないのです。

共和党の州は中間選挙に向けて、先の大統領選で不正選挙の温床になった郵便投票の抑制と投票ルール順守の厳格化を進めています。
対する民主党は正攻法では既に勝てない事はあきらかで、「投票の権利拡大」にこじつけて、真逆のユルユル政策で大統領選の再現を目論んでます。このあたりがどうなるか、これからの見どころですね。

> 共和党の州は中間選挙に向けて、先の大統領選で不正選挙の温床になった郵便投票の抑制と投票ルール順守の厳格化を進めています。
対する民主党は正攻法では既に勝てない事はあきらかで、「投票の権利拡大」にこじつけて、真逆のユルユル政策で大統領選の再現を目論んでます。このあたりがどうなるか、これからの見どころですね。

                                    (山路さん)

 民主党は」正攻法では勝てないようですね。民主党が今回の大統領選挙のようなことはもうできないのではないでしょうか? 私は、大統領選はインチキな選挙を民主党はやったのだと思います。今度の中間選挙からは以前のようなよインチキ選挙はもうできないでしょう。共和党が監視を強めるでしょうし。。それでもインチキが通用するのなら、ほんとにアメリカはどうなってしまうのかと暗澹たる気持ちになってしまいますね。アメリカの建国の理念が蘇ることを期待しております。

 アメリカの復活とともに、日本の復活がなければなりません。日米が同時に立ち上がるといいのですが。アメリカの情況と、日本の情況が連動し変化してゆくのではないでしょうか?そんな気がしております。

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