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2021年11月25日 (木)

トランプの置き土産、パウエル再任の意味

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世界が注目していた米国FRB議長に、ジェローム・パウエルが再任されました。

「バイデン米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にパウエル現議長を再指名し、ブレイナード理事を副議長に昇格させる人事を行った。米国が約30年ぶりの高インフレに見舞われ、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引く中で、金融当局の一貫性を重視した。
ホワイトハウスが22日に人事を発表した。バイデン政権は、米経済がコロナ禍から抜け出すのに尽力してきたパウエル氏に報いると同時に、消費者物価の急上昇から景気回復を守る任務を同氏に委ねた。
また、前任の大統領が起用したFRB議長を続投させるという慣例の復活も、今回の人事は意味する。共和党員であるパウエル氏については、上院での承認が円滑に進む公算が大きい。ただ、民主党進歩派は失望しているかもしれない。パウエル氏は1期目の指名公聴会では賛成84票、反対13票で承認された」
(ブルームバーク2021年11月22日)

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ジェローム・パウエル議長
バイデン米大統領、FRB議長にパウエル氏を再任(CNN.co.j

FRBは米国の中央銀行で、金融政策の司令塔です。
FRB議長の金融政策のさじ加減一つで、世界経済が大きく左右されるといっても過言ではありません。
そしてこのFRB議長という要職にトランプが選んだのが、パウエルでした。
パウエルは生粋のリパブリカン(共和党員)で、グリーンニューディールや大規模な財政支出に否定的な態度を示していました。

ですからとうぜんのこととしてグリーンニューディールを主張する民主党左派からは強い反対の声が上がっていたために、バイデンの態度が注目されたわけです。
公聴会の結果は、賛成84票 反対13票という結果で、民主党内の勢力図そのままが投影されてしまいました。
民主党左派は、声は大きいものの議会全体では13%、民主党内では3割ていどの勢力だということがわかってしまいました。

ただし現在の米国下院は定数435で  民主党 (221) 共和党 (213)とわずか8議席の差で拮抗している状態にあり、対決法案が出た場合、キャスティグボートを握るのはこの民主党左派となる可能性があります。
ですから少数派であっても大きな発言力を持っていたわけで、バイデンは本来は中間派でありながら、左派の主張を大きく取り入れた予算案を作りました。

ところが先日記事にしたとおり、この予算案は左派の奮闘努力のかいもなくグリーンニューディールの部分は切り分けられて後回しにされてしまいました。
ここで大勢は決まってしまい、パウエル再任の道が大きく拓けたわけです。 
パウエルがやってきたのは、0~4%程度のマイルドなインフレを意図的に実現するための金融緩和政策でした。
このリフレ政策は主要国の金融政策のゴールデン・スタンダードとなり、わが国の安倍-黒田がとった金融政策の原型です。

よくアベノミクスについて常識はずれというようなことを言う人がいますが、とんでもないデマです。
これこそ世界の中央銀行が景気拡大のためにどこもやっていることで、その総本山がFRB議長のパウエルでした。

今回、問題を複雑にしたのは、コロナ後の経済情勢に予想を超えたことが起きたことです。
なんと米国のインフレが6%にまで高進してしまったのです。
しかも景気過熱によるインフレ高進ではなく、原材料・人件費高騰によるコストプッシュ型インフレですから始末に悪い。
景気が温まってインフレが高進するなら、教科書どおり段階的金融引き締め(テーパリング)をして冷やせばよいのですか、原料コスト圧迫型だとそういうわけにはいかないからです。

「パウエル議長の2期目は、1期目とは大きく異なるものになる。経済は回復しつつあるが、インフレは高進し、新型コロナ感染件数は高止まりしている。サプライチェーンの制約も強い不透明感につながっている。
 こうした状況は、パウエル議長の主導で米金融当局が2020年に公表した新たな戦略に課題を突き付けている。
この戦略の下、当局は従来ペース以上の景気拡大を容認し、それによって雇用と賃金を押し上げることを狙っていた。特に、社会的に取り残された労働者や少数派に恩恵が及ぶことを意図していた。
しかし物価の高騰を受け、米金融当局の引き締め策が後手に回っており、昨年打ち出した金融政策の新たなフレームワークが現在の環境にそぐわなくなっているとの批判も招いている」(ブルームバーク前掲)

米国の場合、コロナ失業に対する手当てが過剰すぎて、職に戻らなくなった労働者が増えて労働力不足になり、コロナで痛んだサプライチェーンによる部品供給の停滞、そして極めつけはカーボンニュートラルによる原油高が追い打ちをかけました。
供給不足によって米国のインフレ率はみるみる6%超え、数字だけ見ればとうに金融引き締めのブレーキをかけねばならない時期なことは明らかでした。

実際、パウエルもこんなことが起きる前までは、金融緩和のアクセルから足を離すからねという金融引き締め(テーパリング)信号を何度か市場に送り続けていたのですが、現在のインフレ高進はあくまでも原材料の上昇に寄るものです。
金利を上げてしまったら、一気に実体経済まで打撃を与えてしまいかねません。
だから、だましだまし、景気動向を冷静に観察しながら、市場と会話しつつ金融政策を操作できる老練なパウエルが再任されたわけです。
まことに賢明な人選でした。
金融タカ派といわれる金融引き締め派が議長になっていたら、たいへんなことになっていました。

さて、パウエルが渋いプレゼントを米国民にしていたことが、先日わかりました。
それはなんと、パウエルはカーボンニュートラルによって衰退を宿命づけられたかに見えたエネルギー部門へ救済の手を差し伸べていたのです。

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WSJ

「石燃料へ資金流入が加速、FRBコロナ救済策で
石油・ガス企業の社債発行が過去最高、FRBの利下げと社債買い入れ追い風に
環境にやさしい政策を推進する非営利の研究・ロビー活動団体ポジティブ・マネーのシニアエコノミスト、デービッド・バーメス氏は「化石燃料部門は長期的に衰退していることが分かっていたが、今はコロナ前より強くなっている」と述べた。
調査会社ディールロジックのデータによると、2020年に石油・ガス企業が発行した社債は過去最高の1988億ドル(約22兆6600億円) と、2013年に記録したそれまでの最高を372億ドル上回った。同セクターの債券発行額は20年間の平均の2倍以上となった。エネルギー価格が上昇している2021年も、発行額は引き続き増加している。
バーメス氏は「各社が生産を拡大したり、買収したりし、それが排出量の増加につながっていると言っても過言ではない」と話した。
FRBは2020年、財務省と納税者の資金に支えられた融資プログラムを立ち上げた。社債を購入するための二つの資金枠と、中小企業への直接融資用の信用枠が設置された。」(ウォールストリートジャーナル2021年11月22 日)
化石燃料へ資金流入が加速、FRBコロナ救済策で - WSJ

パウエルは、エネルギー産業への投資を促すための融資プログラムを作っていました。
この救済策は、石油・ガス産業の社債と中小の掘削業者への直接融資からできていて、再建発行額ベースでこの20年平均の2倍に達する大規模なものでした。
これによって石油・ガス企業が得た資金は過去最大の22兆6600億円に昇りました。
このパウエルの救済策で、今までジャンク債扱いだった石油・ガス関連企業は一気に蘇りました。

「FRBが行動を起こしてから数カ月で、ジャンク(投資不適格)級のエネルギー企業の借り入れコスト(国債との利回り差、いわゆるスプレッドで測定)は、過去最高から過去最低へと大きく振れた。
グリーン・アルファ・アドバイザーズのガービン・ジャブッシュ最高投資責任者(CIO)は、石油・ガス企業の社債はコロナ前には特に高リスクとみなされていたが、FRBの措置によって「通常であれば高リスク企業につきまとう危険性が全て取り除かれた」と話す。「FRBが後ろ盾についたことで、誰もがそうした債券にとびついた」という」(WSJ前掲)

またパウエル救済策を呼び水にして米国大手銀行も追随し、エネルギー企業に大規模な融資を行いました。

「米銀JPモルガン・チェースやシティグループ、ドイツ銀行など金融機関の幹部は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の今月末の開幕に備えているが、その銀行業界は、グリーンプロジェクト向けとほぼ同額の資金を化石燃料関連事業に提供する手助けを今も続けている。
ブルームバーグの集計データによれば、金融機関は今年だけで石油・天然ガス・石炭セクター向けに総額4590億ドル(約52兆円)相当の社債発行と融資のアレンジを行った」
(ブルームバーク)

このFRBの融資と社債、そして銀行からの融資も含めると、実に4590億ドル(52兆円)もの巨額資金が石油・ガス企業に一気に流れ込んだと見られています。

現在の異常な原油高の原因は、本質的にはカーボンニュートラルという悪い夢に人類が囚われてしまったことにありますが、直接的には30年代で化石燃料廃止というCOPの方針によって、産油国やエネルギー産業が石油事業に投資することを止めてしまったことにあります。
そりゃそうでしょう。あと10数年後には化石燃料全廃という流れを作ってしまえば、そこに投資しようという奇特な人はいませんものね。

石油市場は、「石油の死」を予感してまるでお葬式状態でした。
石油関連株はジャンク債送りとなり、新規投資は途絶えていました。

「現在の石油市場のムードは、まるで「石油の死」を確信したかのような悲観さで満ち溢れています。
石油・ガス企業の株価は3月にOPEC減産合意決裂とCOVID-19の拡大で暴落したあと6月初めまで反発しましたが、その後現在まで下落が続き、3月の大底に迫る水準にあります。
一方、再生可能エネルギー銘柄はコロナショックから現在まで強い上昇傾向を継続しており、過去1年のリターンはナスダック総合指数を上回ります。
1928年から90年以上にわたりダウ工業株30種採用銘柄であったエクソン・モービルは今年8月をもって採用から外されました。
石油メジャーのBPは9月、化石燃料の需要が今後長期的に大幅に減少し、再生可能エネルギーシフトが大幅に進むことを予測するレポートを公表し、エコノミスト誌やフィナンシャル・タイムズは再エネシフトが今後急速に進むとの印象を与える大々的な記事を載せました。
石油の需要は二度と元には戻らず、再生可能エネルギーが化石燃料の市場を奪って独占するという雰囲気が蔓延しています」
(2020年10月12日『「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる』)
「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる (avocado-fes-thought.com)

そのために新たな原油掘削はことごとく中止となり、既存の掘削井戸すら老朽化で運転停止に追い込まれ、存続もままならない状況に追いやられていました。原油の供給量不足はここから来ています。
下図は石油掘削井戸(リグ)の稼働数推移です。

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「シェールエネルギーは一つの油井から採掘できる原油量が少なく、生産量を増やすためには次々と新しい油井を掘る必要があるため、設備投資の低迷が続くとそう時間が経たないうちに生産量は減っていってしまいます。
カナダのリグ稼働数は7月に大底を打ち、COVID-19拡大前の水準に戻りつつあります。
しかし米国のリグ稼働数は今年8月に大底に達した後、多少の回復はしたもののいまだに大底付近にあることに変わりありません。少なくとも今年いっぱいは生産量が大きく回復することはありません」(同上 図も同じ)

ですから、いくらバイデンが産油国に増産をするように頭を下げてもガン無視され、米国内の石油・ガス・シェール業者からすらなにを今さらと言われてしまったのです。

このような状況を変えるには、エネルギー業界への投資を再活性化するしかありません。
民間の投資が低調ならば、国が替わってカネを出さねばならなかったはずですが、グリーンニューディールを唱えて大統領の椅子に座ったバイデンにできるはずもなく、パウエルが替わってそれを静かに実行していたのです。

前述のようにパウエルFRBは融資の後ろ楯となるだけではなく、中小経営の苦しい業者に直接融資をしました。
これらの資金は欠乏しかかった運転資金の補填だけに止まらず、新たな油田やガス田、シェールガスの開発、老朽化した設備の更新などに充てられていることでしょう。
燃え盛っていた石油高の業火は、ここで一服するかもしれません。

バイデンが石油の国家備蓄放出を各国に促していますが、国家備蓄放出といってもたった3日分ですから、バイデンのやってる感を見せるためのポーズにすぎませんから、効果が限定的なことは初めからわかりきっています。
世界各国も協調して備蓄放出をするようです。

そんな彌縫策よりバイデンがするべきは、カーボンニュートラルからの離脱です。ま、彼には200%むり。
トランプなら初めからノーカーボンなどという罠にはまらなかったでしょうが。

というわけで、こんな備蓄放出などというショボイ政策より、はるかに原油高に効くのは、パウエルのこのエネルギー部門への救済政策なはずです。
備蓄放出すら言われてするようなもっとショボイ政府もありますが、どうにかなりませんか、岸田氏のこの鈍さ。
とまれ、トランプの置き土産であるパウエルが、民を救ういい仕事をしてくれました。


 

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コメント

 COP26であれだけ全世界から石炭だけでなく化石燃料全般的に敵視され悪魔化されれば、産油国側も簡単には量産に応じないですよね。
各国共同しての備蓄からの取り崩しも悪手でした。
一致して行動する様式が産油国側からみればファイティングポーズを取られたように見えて、産油国側との微妙で薄氷の信頼関係を崩すきっかけになった事があきらかです。

それでもアメリカはいいんです。
なんとなれば自分のところから掘り出せばいいのですから、最終的には最悪を回避できます。
自前の資源を持たない日本までもが、調子づいて「カーボンゼロ」なんて言い出したのだから、この先の道は険しいものと想像できます。

さらに悪いことに、今は「にぶい」「遅い」「勘がはたらかない」の三重苦の岸田政権ですから、やる事が後手後手にまわります。
まずはコロナ禍後の立ち上がりの勢いを削がないために、第一に石油減税する事です。
先に「トリガー条項凍結解除はしない」などと財務省主導のごとき宣言をしてしまっていて、まさに先が見えていない様子が露呈しています。
これから地方は大変です。

パウエルの債権買い、これは市場的には大きなトピックと思います。寡聞にしてこのニュースを知りませんでした。だいたい中央銀行が特定の産業保護のためにお金を出すなんて本当は反則攻撃です(笑)かなりの勇気ではないかと思います。
とまれ、これは原油価格抑制につながるのでアメリカのみならず世界の消費者にはありがたいことになると思います。
そこまで気づく人はあまりいないかもしれませんが。

ホントに頼りない岸田さんですわ。良識ド真ん中のアリキタリで、目
新しいモノが何もなく、薬にも毒にも水にも空気にもならない、ただ
退屈で虚しい時間が過ぎていくだけですわ。日本って、そんな余裕
はないハズなのに。

パウエルFRB議長は、ハト派のイエレン前議長を嫌うトランプ親ビンが
連れてきたタカ派だったようですが、就任最初のうちは歴代議長と同
じくマーケットに機知がはたらかずに迂闊なコトバを述べて、市場関係
者を凍らせてしまい、米国というか世界を動揺させていました。

パウエルの議会証言はヘタクソだと言われていたのに、いつの間に
か、これまた歴代議長のようにパウエルプット(市場下落に対する保
険の意)などと信頼されるようになるし、親ビンの言うことをあんまり聞
かなくなって親ビンを怒らせるし、タカ派というよりはハト派に近く
なったしで、結局、再選されました。役が人を作るというか、パウエル
さんもFRB議長にふさわしい人物になったようですわ。

何も私は米国中央銀行のエライ人を褒めたいんじゃなくて、頼りない
岸田さんに、総理大臣なんだから自分自身の考え(ヤクニンにレクチ
ャーされてないオリジナル)や政策(同)とそれに対する予算配分(同)
をハッキリしろいと言いたい。それに、いつまでにヤルという期限も
切って欲しい。反対勢力は、党内だとしても叩いて欲しい。

ちゃんとしたリーダーになってくれい!
今のままでは、左から「早くヤメロ!」と言われるのは当然としても、
右からも「同!」、私のような中からも「同!」と言われるという、珍し
い総理大臣として短い任期を終える気がしますわ。パウエルさんだ
って、最初はダメ扱いだったのを、自分自身の信念を捨てることなく
市場との対話が出来てるんだから、岸田さんも自分自身の本当に
ヤリたい事を表明して、国民に問うて欲しいですわ。

それが、「だから、『新しい資本主義』なんだって!分配するんだよ、
何べん言わせるのよ」だったら、私、ハッキリ言います「早くヤメロ!」

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