グレタさん、グリーンウォシュに猛然と噛みつく
「英北部スコットランド・グラスゴー発]一刻の猶予も許されない世界の地球温暖化対策の強化と実行を求めるスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(18)が英グラスゴーで開催中の国連気候変枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を「失敗」「PRイベント」「グリーンウォッシュ(ごまかし)の祭典」と徹底的にこき下ろした」(ニューズウィーク11月8日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9c14836f531dc6d6fc964c7a393812378e45265a
グレタへの強烈な賛否が映す世代闘争に潜む罠 | 政策 | 東洋経済 怖いよ、グレタさん。
「これはもはや気候会議ではない。北半球の先進国によるグリーンウォッシュの祭典だ。指導者は何もしていない。彼らは自分の利益のために抜け穴を作っている。拘束力のない約束はこれ以上必要ない。COP26が失敗であることは秘密ではない」
いやまったく、よくぞ言った。皮肉ではなく、まったくその通りです。
グレタさんのような過激な環境原理主義者たちが、やっと環境をカネ儲けの手段としか考えていない世界の仕組みに気がついたのはアッパレです。
「グレタさんが攻撃の矛先を向けるのはCOP26最大の争点であるパリ協定6条(排出削減量の国際取引を行う市場メカニズム)のカーボン・オフセット。どうしても避けられない温室効果ガスの排出について、森林保護、クリーンエネルギー事業などの削減活動によって相殺する仕組みである。グレタさんはしかし「公害をまき散らす利益主義者はオフセットを気候変動ゲームにおける『無料で刑務所から出られるカード』と考えている」と糾弾している」(NW前掲)
環境原理主義者の皆さんが、遅まきながらカーボンオフセットというダーティトリックに気がついたのは大進歩でした。
80年代以降、IPCCの科学者とそのロビイストたちは、地球温暖化によるハルマゲドンのシナリオを持って米国議会を飛び回りました。
いわく「14mの水面上昇が来て南太平洋の島々は沈んでしまう」「北極の氷が溶けてシロクマは絶滅寸前」「巨大ハリケーンが毎年来て海岸沿いには住めなくなるだろう」「毎年気候変動による飢饉が来る」、エトセトラ、エトセトラ・・・。
嘘は言っていないが、ほんとうのことはナニも言っていないという類です。
地球は温暖化ステージにあるのは確かですが、それとCO2との因果関係は立証されていません。
あくまでも複数存在する原因のひとつであって、CO2削減だけでは地球温暖化は止まらないのです。
ところがCO2削減は、化石燃料撲滅の方向だけに突っ走っていってしまいました。
しかも万人疑う余地のない絶対真実と化して人類を拘束してしまいまったのですから、もう引き返せません。
特にオバマ政権は、第1期の目玉政策をグリーンニューディールに置き、包括的エネルギー・温暖化法(2008年11月)まで作りました。
おっ、出てきましたね、グリーンニューディールという名の政策が、
そうなんです、今、バイデン(当時オバマの副大統領)がやろうとして、なにもしないうちから挫折しかかっているグリーンニューディールはオバマの二番煎じなのです。
元祖グリーンニューディールは、09年1月に始まりました。
政府施設から先行して省エネを実施し、風力や太陽光、バイエタなどの再生可能エネルギー(再エネ)を倍増させて、約50万人の雇用を増大すると表明しました。
また7870億ドル(約72兆円)にのぼる米国史上最大の景気対策のうちから、年間150億ドル(約1兆4000億)円を投資すると宣言しました。
オバマの目論見では、経済と環境の同時解決という画期的な政策になったはずでした。
ただしこのオバマのグリーンニューディールが始まった2009年は福島事故の2年前で、原発はCO2削減の切り札と、オバマは考えていたようです。
ここが第1次グリーンニューディールと今のものとの大きな違いです。
バイデンのグリーンニューディールは原子力まで否定してしまいましたから、迷うことなく再エネ一100%という袋小路に突っ込んでしまいました。
では、CO2は削減されたのでしょうか?
いえ、世界のCO2は増加に歯止めがかかりません。
www.longlife-lab.jp
唯一落ち込んでみえるのは、リーマンショックで経済活動が低迷した時期だけです。
去年のコロナの時期も減りました。
理由は簡単。経済が半身不随だったからで、人類の大きな不幸が来ると、CO2は削減されるのです。
中国の空がキレイだったのはコロナの時だけだったでしょう。
中国が削減されなければ、世界のCO2排出量は変わりません。
では国別のCO2排出の増減を見てみましょう。
見にくくて恐縮ですが、米国は下から3番目位にある赤い線で、たしかにマイナス5%ほど減ってはいます。
日本も健気にマイナス8%削減しています。
ただし新興国はあいかわらず出しまくっていて、中国と並んで世界のCO2排出量を押し上げる大きな原因となっています。
「世界全体の二酸化炭素放出量は、2000年〜2005年の期間の年平均で72億トンと推計されており、1980年代の54億トン、1990年代の64億トンに比べて、明確に増加してきている。国別には米国の排出量が最も多く、中国、ロシア、日本がこれに続いているが、近年の動向をみると欧州地域の排出増加が抑制されているのに対して、アジアを中心とした発展途上諸国の排出量の増加が著しい。ただし、発展途上諸国の一人当たり排出量は先進諸国に比べてまだかなり小さく、所得格差と同様に大きな南北ギャップがある」
(資源エネルギー庁2020年8月14日)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html
この国別のCO2排出量は、「生産ベースCO2排出」と呼ばれる推計を用いて測られています。
私たち一般ピープルは上のようなグラフを見せられると、直接に計測装置を使って大気中のCO2を測定していると思いがちですが、そうではありません。
経済統計上のガソリン・電気・ガスなどの使用量といった活動量に、排出係数をかけ算して求められています。
これにはトリックが隠されています。
この消費国ベースでCO2排出を推計すると、実情よりも過剰に先進国は減少傾向・新興国は増加傾向と出てしまうのです。
なぜなら、先進国は経済活動が盛んですからエネルギー消費も盛んなのに対して、実際に先進国に多くの輸出品を出しているのは新興国だからです。
これら発展途上国は、多くの老朽化した石炭火力発電を使い、運搬手段も排気ガス規制などない国がほとんどのために、CO2排出は著しい増加傾向にあります。
ですから地球温暖化を少なく見せるには、CO2排出量の「付け替え」をすればよいのです。
CO2が多く出そうなモノは発展途上国で作り、先進国は輸入するだけにすれば、先進国は排出量が減ったようにカウントされます。
これがガラガラポンでCO2が減るというカーボン・オフセットとか炭素会計などの手品です。
あるいは、実際に減らさなくても他国からCO2を買うという排出権枠売買すら認められています。
その規模たるや毎年4兆ドル。
こんなにおいしい物件にソロスなどの投資家が食いつかないはずはありません。
いまやCOPとは、なんのことはない温室効果ガスをみんなでごまかす技術の品評会と化してしまいました。
話をオバマのグリーンニューディールに戻しましょう。
結局、このオバマのグリーンニューディールで判ったことは、いくら政府が再エネの太鼓を叩いても景気の回復にも雇用の増大にもつながらなかったという事実です。
それはそうです、太陽光ハネルはほぼ100%メイドインチャイナですからね。
そして外資がメガソーラーや風力発電施設を買収して、遠慮なくカネ儲けに走りました。
単に国富が外国に流出しただけだったのです。
もちろん雇用は生まれず、むしろ失業率が上昇しました。
下図は米国の失業率推移を見たものですが、オバマがグリーンニューディールを始めた2008年(グラフ右端から5番目)から失業率はむしろ急増しています。
失業率が戦後最悪の水準に(アメリカ:2020年5月)|労働政策研究
そもそも、太陽光発電や風力発電施設など、一度作ってしまったらなんの雇用も生まず、むしろ環境公害を生む地域のやっかい者と化しています。
儲かるのは投資家だけです。
それが分かってオバマは2期目はシェーガス革命の成功を大宣伝した影で、ひっそりとグリーンニューディーを止めてしまいます。
しかし、いったん行政化されたものは簡単にはなくなりません。
フェードしないものがありました。そのひとつがバイエタ(バイオエタノール)です。
このバイエタを制度化したのはオバマではなくブュシュ(息子)でした。
2007年に始まったバイエタ政策により、バイエタ生産を当時の50億ガロンから一挙に7倍の350億ガロンに生産拡大しました。
下図のバイエタ生産量推移グラフで、米国(紫色)は2007年から一気に急上昇しているのがわかります。
この目標に掲げた350億ガロンのバイエタを製造するためには実に122億ブッシェルものトウモロコシが必要となり、今の米国で生産されるトウモロコシ全量をバイエタに回してもまだ足りない馬鹿げた数字でした。
にもかかわらず、このバイエタ政策が単なる努力目標値や期待値ではなく、法的に再生可能燃料基準(RFS)として義務づけられたためにバイエタには多額の投資資金が流入し、今やトウモロコシを作ることは食糧生産ではなくバイエタ生産であるかのような倒錯した構図が生れてしまいました。
バイエタは、作れば作っただけ再生可能燃料基準法で使用されるのが確実なために消滅するどころか、かえって増大していきました。
ゴアが種を蒔き、ブシュが地ならしし、オバマが育てたバイエタだったのです。バイエタは狂ったように穀物を食い散らしたのです。
全米で生産されるトウモロコシの相当部分は、資料や人の食用に回るのではなく、皆燃やされて車のガスに消えていったのですから、罰が当たります。
しかも、これで二酸化炭素が現実になくなるわけではなく、単に穀物の生育期の二酸化炭素消費とゼロサムになるだけ、つまりは単なる数字操作だというのですらから呆れたものです。
バイエタが盛んなブラジルでは熱帯雨林を伐採して、「地球に優しい」バイエタ農産物を作っています。
ヨーロッパでは菜種が燃やされています。
かくして、本来は人間や家畜の口に入るべき穀物は燃料として燃やされてしまった結果、多くの人々が飢え、数千万人が貧困に逆戻りしました。
これがグリーンウォシュ、というかグリーンロンダリングです。
グレタさんがこの炭素会計の嘘に気がついたのはよかったのですが、ここで悪どい儲けをしている連中こそがあなたのスポンサーだということをお忘れなく。
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コメント
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ぶっちゃけこれ以上原子力に手を出さなくても途上国や老朽化した火力発電施設を日本の高効率かつ低汚染の技術に置き換えれば問題はかなり改善されるんですけどね。
その間に自然エネルギーが実用に耐えうる技術革新が起ればいいわけで…
だけど誰もそれは提唱すらしない。
その時点でもう欺瞞しかない世界ですね。
ホントに地球の事なんて考えてるのかすら怪しい。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年11月11日 (木) 15時27分
温暖化しているのはある程度事実のようですが、CO2排出はその原因の一つにすぎません。したがって、グレタさんらの要求を世界がすべて受け入れたとしても、温暖化が止まるワケではないのですね。
まぁ、やらないよりもやった方がいい、というくらいのもんです。
グレタさんは最初から「反抗と不服従」で形成された人間ですから、インドの農業改革の時の大失敗のように、「間違った情報を流布し、合法的に発足した政府への不信感を生み出している」(インド政府によるグレタ批判)など、容易に類似団体に騙され利用されやすいので注意が必要です。
また、グレタさんと共闘して今回もボディーガード兼デモの番人(数百人とか!)をやっているエクスティンクションレべリオンという団体には、トゥーンベリ効果で裕福な慈善家や偽善的な投資家からの寄付金が引きも切らないようです。
それらってのはつまり、グレタさんが批判するまさにグリーンウォッシャ
偽善を「偽善」と言われないように、自ら先手を打ってグリーンウォシュ批判をしてみた、という左派団体にありがちなケースなのでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年11月11日 (木) 18時32分
正直CO2削減に関しては、原発が一番効果があるし、しゅりんちゅさんの言う通り、中国に限らない古い火力発電を新技術の発電に置き換えれば、具体的な削減効果が上がるのに、これについては議論されないですね。
日本はバイオマス発電で気を大量に燃やしてますが、植林しないとCo2は減りません。大型バイオマス発電って、ドイツなんかもうやってませんし、ほかでもあまり推進している国はないです。いきなり燃やすのはいずれ森林資源枯渇からCO2増えることになると思いますけどね?
まあ、現在のCo2濃度が地球の歴史上は最も低いレベルという説もあるし、ISOとか森林認証と同じく認証ビジネスが利権化していくものの一つかと思います。
投稿: ednakano | 2021年11月12日 (金) 12時00分