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2021年11月 5日 (金)

バイデン、もうレームダック

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最近、あまり話題になっていませんが、海の向こうのバイデン閣下も苦戦しておられるようです。
今、来年に控えた中間選挙の前哨戦が各地で繰り広げられています。
この中間選挙次第で、バイデンの残り2年間が決まってしまいますが、それを占うのが今月の知事選挙でした。

2日に民主党の牙城と言われたバージニア州知事選がありました。
覚えていますか、あの日本人までドキドキハラハラさせたバージニア州です。
かつての南軍の本拠地でありながら、ルーサー・キングが率いた公民権運動の発祥の地。
そしてこの1月にあった連邦上院の2議席の決戦投票で、民主党に勝たせてしまった州です。
このバージニアの薄氷の勝利により、バイデンはかろうじて過半数を連邦上院でとれたのでした。

その因縁のバージニア州知事選で、共和党新人が勝利を確定的にしました。

「アメリカのバイデン政権の今後を占うとして注目された南部バージニア州の知事選挙で野党・共和党の候補が接戦の末、当選を確実にし、来年の中間選挙に向けて民主党のバイデン政権にとっては厳しい結果となりました。
2日に投票が行われたバージニア州の知事選挙はバイデン政権の今後を占う選挙と位置づけられ、前の知事で民主党のマコーリフ氏と実業家で共和党のヤンキン氏が接戦を繰り広げました。
開票率99%の段階で共和党のヤンキン氏が得票率で2ポイントのリードとなっていて、アメリカの主要メディアは3日未明、ヤンキン氏の当選が確実になったと一斉に伝えました」(NHK2021年11月3日)

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バージニア州知事選、共和候補のヤンキン氏勝利 - WSJ

このバージニア州は、去年の大統領選でバイデンが10ポイント差で勝利した州ですが、そこで政権与党が新人に破れたことは全米に衝撃を与えました。
バイデンを取り巻く状況は悲惨です。
アフガン撤退の無残な失敗は米国民の心を大きく傷つけましたし、なにより生活が圧迫されています。
特に止まらない
ガソリン高は、元々ガソリンが湯水のように使えると思っていた米国民に強い不満をもたらしました。
※関連記事 『行き過ぎた温暖化対策によって引き起こされた石油危機』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/10/post-6d6587.html

下図は原油価格のベンチマーク(指標)価格であるWTI先物相場ですが、10月20日の時点で1バレルあたり82ドルを超え、こちらも同じく14年10月以来となりの高騰です。
このまま推移すれば、バレル100ドルという庶民には手の届かない価格に達する勢いです。

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しかもその原因はバイデンが進めたグリーンニューディールと称するCO2削減政策によって、化石エネルギー源への投資が禁止されてしまったからです。
炭鉱はおろか、テキサスの油田、そして米国が世界に誇ったはずのシェールガスまでもが投資が止まり、今や世界有数の産油国でありながら米国はガソリン高に苦しむはめになっています。

下図はシェールガス掘削井戸の数ですが、バイデンが政権をとる直後から下り坂を転げ落ちるように激減しているのがわかります。


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このガソリン高が、コロナ後の人手不足による労働力市場の高騰と相まって、米国経済に思わぬ打撃を与えています。
特に物流を握る運輸関連の被害は深刻で、ニュージャージー州では、伝統的に民主党支持層だったトラックドライバーたちが民主党の州上院議長を追い詰める騒ぎに発展するなどの騒動にまで発展しています。
このガソリン高は自動車産業をも窮地にたたせており、自動車産業関連の労働者の動きにも連鎖していく可能性があります。

グリーンニューディール政策は蓋を開けてみれば、エネルギーコストの上昇による経済への打撃、生活費の負担の増加、そしてそれを救済するための各種失業手当などの増大だったわけです。
現在は、コロナ危機に対しての社会手当てでなんとかなってきていますが、それらは感染終息と共に暫時終了することになり、そうなった場合すべての不満はバイデン政権に向かうことになるはずです。

そして今やこのグリーンニューディールを含む予算は、成立すらままならない状態で、このまま推移すれば連邦政府の運営ができなくなる事態も予想されています。
しかも笑えることには、今回の予算案が通らない最大の原因は共和党の反対ではなく、与党民主党内での意見対立ですからお粗末も極まります。

今回のバージニア州知事選挙にも、この政府予算不成立が響いています。

バイデン政権の支持率が42%と(NBC)歴代の政権でも(同時期比)最低レベルに落ち込む中、特にバイデン政権が看板政策として掲げるインフラ投資法案が、民主党内の対立によって、当初の目標の10月中に議会で可決・成立しなかったことは、マコーリフ陣営に大きなショックを与えたという。
ニューヨーク・タイムズによると、「マコーリフ氏と側近たちは、唖然とし、激怒した。大統領がもっと積極的に議会に働きかけなかったことに困惑し、ワシントンからのネガティブな情報がまた一つ増えたことに絶望した」。選挙当日も、バイデン大統領は外遊先のイギリスで「勝利するだろう」と強気だったが、アフガン撤退の失敗から続く政権のマイナス基調は、知事選にも一定の影響を与えたとみられる」
(
渡邊翔 11月4日『米中間選挙「前哨戦」の知事選で与党候補敗北ーー 選挙戦で見えたなお色濃いトランプ前大統領の影』https://news.yahoo.co.jp/articles/e40dbc0bedd72ec7d01a038a42c2d15e3d147723

このように、誰もがバイデンの指導力のなさに気がついてしまったのです。

では、どうしたらよいのでしょうか。
答えは簡単。まずはこの国民を苦しめる異常なガソリン高を食い止めねばなりません。
ガソリン高は世界的な過少投資によるものですが、米国はなにせ自分の足元を掘れば石油が湧いてくる土地なのですから、解決は簡単です。
グリーンニューディール政策を完全放棄しろとまではいいませんが、一時的に凍結し、炭鉱や石油産業、あるいはシェールガスに集中的投資を呼び込む政策を取ることです。

でも無理でしょうな。これらはすべてバイデンが選挙戦であれほど非難してきたトランプの政策そのものだからです。
トランプが2期目をやっていたら、ガソリン高なんてことは絶対に起きませんでしたからね。
その上に時期が悪すぎます。今開催されているCOP26でのバイデンのカーボンニュートラルへの積極取り組みをええかっこしいで言ったそばから自分で否定していくことになります。
バイデンがほんとうに国民を思うなら、やるべきことは自ずと決まってくるのですが、やらないでしょう。
彼には党内リベラルを切る勇気はないはずです。

かといって、このまま手着かずで推移すれば、このバージニアで起きたレッドウェーブの衝撃が、他の州にも飛び火し、中間選挙では両院ともに共和党に奪われることになります。
連邦司法は既にトランプの置き土産で共和党優位ですから、そうなった場合、バイデンと民主党は揃って完全なレームダックとなることでしょう。
グリーンニューディールの旗を守れば国民から見離され、降ろせば民主党内でボロクソに言われる、進むに進めず退くに退けない日々です。

一方共和党は、今回のバージニア州知事選で面白い戦術をとりました。
名付けて「忍法トランプ隠しの術」です。

トランプ氏を応援に呼ばないのはもちろん、演説でもトランプ氏に言及しない。さらにコロナ対策やワクチン接種義務化、マスク着用の是非など、バイデン政権とトランプ氏に近い共和党の保守派が激しく対立する問題にもできる限り触れず、実業家出身の候補者として、経済対策に焦点を合わせた。
また有力紙ワシントンポストも、イメージ戦略として「テレビでは優しい、郊外に住む父親として自身を演出した」と分析するなど、無党派層の取り込みを重視した戦略だ。
一方で、トランプ支持者の支持もつなぎとめるために取り上げたのは、教育の問題。全米で大きな議論になっている「批判的人種理論」について、「当選すれば、就任初日に学校で教えることを禁止する」との公約を掲げた」(渡邉前掲)

一方、民主党マコーリフ陣営は徹底的に、共和党候補をトランプと同じだとあざ笑うことに腐心したようです。
下の写真は、「トランプはまだここにいる 」と共和党候補をからかっているマコーリフの姿です。
当時現職知事だったはずですが、太田光並に下品ですね。

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BBC

「民主党のマコーリフ陣営は、ヤンキン氏をドナルド・トランプ前大統領になぞらえて批判し続けた。ヴァージニア州では今もトランプ氏の人気は高くない」
(BBC11月3日)

「一方、与党・民主党の前知事、マコーリフ氏は選挙戦で、ヤンキン氏をトランプ氏と結びつけて批判することを徹底した。「ヤンキンはトランプのための候補者だ」「トランプはまだここにいる」などと呼びかけ、トランプ批判のテレビCMも展開。大統領選の翌年で、民主党員の「選挙疲れ」も指摘される中、「反トランプ」票の取り込みを狙った。(略)
 選挙戦終盤の10月26日、マコーリフ氏の応援に訪れたバイデン大統領も、「私はドナルド・トランプと対決した。そして、マコーリフはトランプ支持者を相手にしている」と呼びかけ、演説の多くをトランプ批判に割いた。
しかし、アメリカメディアは結果的にこうしたトランプ氏の「争点化」は、不発に終わったと分析している」(渡邉前掲)

ヤンキン候補はトランプの「ト」の字もいわなかったのですが、政策的にはトランプが力を入れてきた「批判的人種理論」を学校で教えないようにすることを公約に掲げていました。

「一方で、トランプ支持者の支持もつなぎとめるために取り上げたのは、教育の問題。全米で大きな議論になっている「批判的人種理論」について、「当選すれば、就任初日に学校で教えることを禁止する」との公約を掲げた。
「批判的人種理論」とは、「人種差別は個人の心情の問題というよりも、社会構造の問題だ」とする考え方で、共和党が地盤とする多くの州では、この理論が「アメリカ社会を作り出した白人を非難している」などとして、保護者らが反発。人種差別の歴史について教育するのをやめるよう、学校に迫る事例が多発している。しかもトランプ氏も去年の大統領選で「批判的人種理論」に反発していた」(渡邉前掲)

 この「批判的人種理論」はBLMの思想と重なっている思想でした。

「BLM運動では「制度的人種差別」、すなわち奴隷制に始まり米国で歴史的に続いてきた、さまざまな形での制度としての人種差別が問題とされた」
(会田 弘継2021年 10月23日東経)

この批判的人種理論に従えば、米国は建国から一貫して悪しき人種差別国家であり、ワシントンも含めた歴代の大統領すべては差別主義者だったということになります。
この歴史歪曲を一切認めずに米国の誇りを守ろうとしたのが、トランプでした。

思えばトランプと安倍は少し似ている部分があって、このふたりの指導者は余人にまねできないカリスマ性を帯びているのです。
ですから支持者も批判者も、共にトランプと安倍さえ立てておけばなんとかなるという安直なところがあります。
バージニア州知事選では、あえてこのカリスマ・トランプを隠して見せたようです。
といっても、トランプのほうは勝手連よろしく、共和党候補の応援をしていて、隠せば隠すほどトランプという存在の磁力の強さが改めて再認識される結果となってしまったようです。

ヤンキン氏が「トランプ隠し」を試みても、トランプ氏本人がしばしば話題を提供したこと、さらに隠すことで逆にトランプ氏の存在感が強調される結果となり、有力ネットメディアのポリティコは、「トランプ氏は、選挙結果にかかわらず、自分好みのイメージを作り上げている」と分析した。
10月中旬、共和党のヤンキン支持者の集会(ヤンキン氏本人は出席していない)に電話で登場し、「ヤンキン氏は素晴らしい男だ」と称賛。(略)
トランプ氏本人も、投開票日の声明で、「『トランプ』という人物へのマコーリフのキャンペーンが、ヤンキンを大いに助けたように見える。おかげで私は、ヤンキンの集会に行く必要さえなかった」と皮肉る始末だった。 」(渡邉前掲)

ブルームバーグは、今回の選挙で見えたポスト・トランプ時代の最適な戦略は、「共和党の予備選挙ではトランプ氏を支持し、本選挙では無党派層向けにトランプ氏と距離を置くことだ」と指摘しました。
なるほど。訴える層ごとにトランプの姿を出し入れするわけですか。
いずれにせよ、露出させるかしないかはケースバイケースでしょうが、来年の中間選挙に向け、トランプを切り捨てては勝てないことだけは確かなようです。

 

 

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コメント

半年前の今年5月、所謂「ジェンダー教育」を進めるヴァージニア州ラウドン郡の公立校で、スカートを着用した男子生徒が、校内の男女共用トイレで15歳の女子生徒に性的暴行した事件が発生しました。
学校側や郡教育委員会は「事件は無かった」としましたが、件の男子生徒が転校先で再び性的暴行事件を起こし、今度は逮捕に至ったために隠しきれなくなり、結局ラウドン郡教育委員会は事件発生を認めて謝罪しました。
こんなことがあってもいい、あっても仕方ないと考える有権者が大勢になるわけがありませんね。
学校教育方針によっては何処であろうとこのような事件が起こり得ると考えたら、鳥肌たちます。
11月3日BBCによれば、提携する米CBSの出口調査で、州の有権者の過半数が教育や学校の指導要領が何より大事な論点だと答えたとのこと。
また同報道には、民主党マコーリフ候補が「学校が何を教えるか、親が口出しすべきではないと思う」と発言して対抗勢力に攻撃された、ともあります。
斯くしてヴァージニア州選挙では、副知事も共和党で黒人女性、州司法長官も共和党でキューバ移民2世男性が当選しました。
CBSの調査では、ヤンキン候補に投票した有権者の投票理由で、52%が反バイデンが理由、48%がバイデンが理由ではない、と回答したとのこと。

事件で被害者となってしまった生徒さんとご家族は本当にお気の毒です。
同時に加害生徒には、個別の事件であり犯罪は本人の選択だと、大人が突き放し逃げて済むわけがないです。
今日のエントリーを拝読して、教育、治安、経済、人種・ジェンダー問題などで、自由であることリベラルであることと、自律他律を効かせること、その両極端を出来るだけ避けながら両立をさせる、それを目指すことがいつも誰にもできたならばどれほど、よりマシだろうかと考える次第です。

批判的人種理論って要は「白人は白人であるだけで、生まれながらにして黒人差別という原罪を背負っている」みたいな思想ですよね。砕けすぎかも知れませんが。

恐ろしすぎます。アメリカ人の、すぐこういう振り切れ方する所は本当に嫌。

かつてJFKが「あなたの国があなたのために何ができるかを問わない
でほしい、あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい」
と言った頃の民主党と、現在の厨二病の民主党とはエライ違いですわ。
政治思想的には同じだとしても、理想と現実をキッチリ区別できない
バイデンさんの民主党主流は、アタマとカラダの調和がとれなくなった
夢遊病患者みたいになりつつあるんですわ。命令を受ける現場の人間
は、たまったもんじゃないです。

国家の運営は、表向きキレイ事を並べても裏ではドロドロの妥協の
繰り返しなんで、なんとかピンからキリまでいる国民をシブシブなだめ
すかしていられますが、通りいっぺんの理念じゃ国民はメシ喰えませ
んわ。そこんところは、ヤバイ橋を渡る不動産屋のオヤジの方が海千
山千で長けています。さすがに米国民も、甘っちょろい理想や夢では、
この世でのシノギは難しいと肌身に染みてきたんじゃないでしょうか?


LGBTについても、ぶっちゃけ脳と体の性が一致してる大多数の人に
とっては???ですわ。脳と体の性が一致してない人がいて、それは
本人の責任じゃない(というか、人類進化上の多様性というもの)という
のはリクツでは理解できても、素直に「ああ、そうなんですか、どーも」
とはいかない、どうしても一歩下がってしまう。それを差別だと非難さ
れても、「生理的な心の動きなんだもん」と答えるしかない。それが大
多数の者にとっての現実ですわ。

で、オリンピックでLGBTのアスリートがいて、当然の権利として女の脳
で男の体だからと、女性枠で参加してました。私もその考え方は正解
だと思うのですが、筋骨たくましい男(の体)が女性の中に混じっている
としか見えなかったし、「そりゃ、反則だわ」と素直に口に出ましたわ。
その他の女性から見たら「LGBTだから男の体で参加していいのなら、
筋肉が付きにくい女の体の私ゃ不利じゃん、逆差別じゃん」と思うこと
でしょう。事実、これからはこのケースは認められないようです。

じゃ、どーしろと?  ドロドロの妥協しかなくて、人類各個がシブシブ
なだめすかされるような落とし所を探るしかないんですわ。厨二病的な
正誤の二元論じゃ、永久に解決できずに全員が不幸になるんですわ。


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