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2021年12月

2021年12月31日 (金)

今年も一年ありがとうございました

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本年は今日が最後の更新となります。
拙い記事におつきあいいただいて感謝の言葉もありません。
来年は1月4日(火)からの開始となりますので、またよろしくお越し下さいませ。


いやー、色々あった年でした。
まさかのコロナの年越しにはたまげました。
私は去年一杯で終息かと思っていたのが、完全にはずれて丸々2年間。
しかしなんとか日本は鎮火の方向に向かっているようです。
世界でいちばん最初にコロナからの脱却をしたのはわが国でした。
街を歩くと、社会の各所に復興の足音が力強く聞こえてきます。
東日本大震災の時も感じたものですが、日常生活が普通に行われるということほどありがたいものはありません。
とはいえ世界はまだ日に数万人単位の感染拡大が続いております。
しかし南アフリカでは2か月間くらいでピークアウトしましたから、そう延々とつづくとは思えません。
米国でも、英国も「嬉しい」ことにはオミクロン株に7割以上置き換わったとのこと。
感染力が強力なので、デルタ株を駆逐してしまうのです。

「嬉しいことに」なんて書くと患者の苦しみを知らないクズめなんて言われそうですが、デルタ株はまさに災厄そのものでしたが、オミクロン株は感染力こそ強いものの、死亡率も重症化率も少ないことは世界各国の病理学者の共通の見解です。
これはとても重要なことです。
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最初にオミクロン株が発見された南アフリカでの臨床結果はこうです。
「南アフリカの新型コロナの新規感染者数は11月から急増しているが、1日あたりの死者数の増加は限定的だ。ハウテン州では集中治療室(ICU)や人工呼吸器の使用率も、デルタ型流行初期と比べて低位にある。同国で多数派を占めるとみられるオミクロン型は重症に至りにくい、とする仮説と整合的だ」
(日経2021年12月7日)
コロナ前から言われてきたように、感染病は何度か株の変異を繰り返しながら必ず弱毒化していくものです。
さもないと、宿主の人間のほうが激減してしまい、ウィルスも生き延びられなくなっちゃいますからね。
そう考えると、とうとうオミクロン株というラストランナーの出番なのかもしれません。
神様が、そろそろオシマイにしようやと遣わせたものかもしれませんよ。
メディアに煽られてひたすら怯えるよりも、そう考えて楽になりませんか。
素人の言うことですから、はずれたらご容赦。
だからなにも慌てて濃厚接触者全員を隔離扱いにすることはありません。
濃厚接触者だから入試させないなんて行き過ぎもいいところです。
むしろそんなことをすると、すぐに隔離病床が逼迫してしまい、恐怖感が蔓延してせっかく戻ってきた復興が遠のきますよ。
岸田さんや小池さんは国民受けすることをパーフォーマンスするのが政治手法なので、希望者全員にPCR検査と言っていますが、知りませんよ、そんなことをすると感染者数の数だけがむやみやたらと増えちゃいますからね。
感染症は最後には風邪のようなものに弱毒化して、社会生活の中に埋もれていくもの。
今回のコロナもそうなのかもしれません。
では、風邪などひかれないように師走をお過ごし下さい。
よいお年をお迎え下さい。
                                           ブログ主

2021年12月30日 (木)

ウクライナ危機は台湾危機のひな型

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もう少しウクライナ危機について続けることにします。
今回のプーチンの軍事的脅迫にバイデンが屈したことを、もっとも悲嘆の思いで見つめていたのは似たような境遇にある国々でした。
台湾とリトアニアです。

ロシアが十数万の大軍を東部国境に集結し脅迫をかけた時、バイデンは慌てて米露会談を要請し、どう対応したのか思い出してみましょう。
充分にこれらの国の気持ちが判るはずです。
ホワイトハウスはこのやりとりを公表しており、ジョー・バイデンはこう記者団に答えています。
The White House
Remarks by President Biden Before Marine One Departure
December 08, 2021 Speeches and Remarks

Q 米軍をウクライナに部隊を送ることを排除できますか?
大統領 え、 ウクライナに? 
Q ティム・ケイン上院議員(民主党)は、侵略を止めるためにウクライナまたはその周辺の地上で米軍が必要になる可能性について話しています。 あなたはそれを排除しますか、それとも選択肢にありますか? 
大統領:それは選択肢にありません。 何がそうではないか - ウクライナはそうではありません。
我々は、NATO同盟国が第5条に基づく攻撃を行う場合、道徳的義務と法的義務を負っている。 それは神聖な義務です。 
その義務はウクライナには及びません。

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バイデンは老い過ぎている、そのせいで人が死ぬ|ニューズウィーク

そして相手が米国記者だった気安さからか、こんな言わないでもいいようなことまで口にしてしまっています。
「ウクライナに部隊を送ることは、選択肢にのぼったことすらない」とし、さらにご丁寧にも記者に対して「あなたは米軍を戦争に送り、ウクライナでロシアと戦う用意があるのか」とまでダメを押しています。
ま、バイデンの気分もわからないではありません。
彼からすれば国防長官の止めるのも聞かず、「夜逃げのようにして」アフガンから足抜きしたのに、どうしてここでウクライナに軍をおくらねばならないんだ、馬鹿を言え、ということだったでしょう。

たぶん掛け値なしに、これが今のバイデン政権の本音です。
これが本音だから困るのです。
トランプはこのテレビ映像をフロリダで見ながら、ジョーはやっぱり眠いやつだ、オレなら最後まで部隊派遣はやるかやらないか伏せておくし、なんなら駆逐艦の一隻か、緊急展開ユニットくらい派遣している頃だ、なんて思っていたかもしれません。

いいでしょうか、ウクライナに対する進攻は、これで実に2回目なのですよ。
いや、既に東部ウクライナ2州にロシアは公然と浸透しているのが現状だと見るのがNATOの見解ですから、NATOはそれを「さらなる進攻」(3回目)と定義しています。

「まず前提として指摘すべきは、今回懸念されているのが「さらなる侵攻」の有無だ、ということである。実際、NATOなどの公式声明では「さらなる侵攻」という用語が使われることが多い。
というのも、2014年のロシアによるウクライナのクリミア併合、そしてウクライナ東部への介入など、ロシアはすでにウクライナに侵攻しているという事実があるからだ。特にウクライナ東部に関しては、2014年以降で、およそ1万3000名が犠牲になっている(国連人権高等弁務官事務所推計)。
この内訳は、民間人3350名、ウクライナ軍兵士4100名、武装組織5650名である。武装組織にはロシア軍兵士も含まれる。
つまり、すでに相当の侵攻が行われているわけであり、これがさらにエスカレートし、ロシアの正規軍による侵攻に発展するのかが目下の問題なのである」
(鶴岡路人 『ロシアの「さらなるウクライナ侵攻」に米欧はいかに対応するのか』 2021年12月27日 )

それもわずか7年間の短い間に2回ですから、もはやロシアのウクライナに対する国境の力による改変であることは隠しようがありません。
露骨な表現をすれば「領土的野心」です。
よくロシアが要求しているのはウクライナのNATO加盟を認めない協定を結ぶことだくらいに言う人がいますが、これが「さらなる進攻」であることから見ても、真の要求はウクライナ東部2州の割譲にあると見るべきです。

さて、ここでバイデンが言ってしまった「ウクライナはNATO加盟国でないのだから、北大西洋条約第5条の集団防衛は適用されない。したがってウクライナ防衛のために米国を含むNATO諸国が部隊を派遣することもない」というロジックは、後々深刻な影響を与えるでしょう。
ならばNATOような集団安保体制に加盟していなければ、米国は守らないのかということになるからです。
ウクライナは加盟を強く希望しており、それが親露政権を倒した「ウクライナ革命」の目的ですらあったからです。

「ロシアが特に要求しているのは、ウクライナが将来にわたってもNATOに加盟しないことの保証である。NATOは2008年4月のブカレスト首脳会合の宣言文書で、ウクライナとジョージアが「将来的にNATO加盟国になることに同意した」と述べている。
この文言は、当時のジョージ・W・ブッシュ政権が強く求めたといわれるが、実はNATO内でもこの問題に関するコンセンサスは存在していない。実際、両国の加盟プロセスは全く進んでおらず、加盟の前段階となる加盟行動計画(MAP)も開始されていない。
つまり、ウクライナのNATO加盟問題は全く進展していないどころか、現実的なアジェンダとさえみなされていないのが現実なのである。集団防衛を柱とするNATOとしては、隣国と紛争を抱える国を迎え入れることには慎重にならざるを得ず、ウクライナの将来に責任を負うほどの覚悟がNATO側にあるわけでもない。その結果が現在の状況なのだともいえる」
(鶴岡前掲)

ブカレスト会議で腰が引けたためにロシアにつけ込まれました。
相手が、鶴岡氏がいうように「NATO内の見解の相違や弱みに敏感なロシア」だからです。
これに気をよくしたロシアは平然と2014年にクリミアを奪い取り、さらに東部2州に手を掛けました。
そして今や、最後の保険になっている「NATO加盟申請中」というなんともあいまいな立場まで奪おうとしているわけです。
及川氏や馬淵氏は、ロシアの侵攻がないといっていますが、そこが問題ではありません。
そりゃないかもしれません。その前にバイデントとNATOが屈伏してしまえばですが。
ちなみに両氏はロシアとの同盟をお望みのようですが、空論です。
こんなあからさまな侵略国とどうして手をつなげるでしょうか。

さてここで、このウクライナ情勢を手に汗握ってみているであろう台湾について考えてみましょう。
台湾には深刻な米国への疑念が生じたはずです。
なぜなら、バイデンがいともたやすく、NATOの決定に何の権限ももたないロシアと加盟国協定をめぐって話し合ってしまったからです。
本来ならば、NATOの仮想敵国であるロシアと、米露会談の議題にすら入れるべきことではなかったからです。
そのうえ、いとも軽々と「部隊派遣は選択肢にすらない」とまで言い切り、おまけのように記者に「きみは米国がウクライナに行くことを望むのか」とまで力む軽薄さです。

これは、バイデンが北京五輪を外交ボイコットに値切り、コロナの起源についてへの追及を手控え、ジェノサイド防止に関する声明でウイグル族虐殺に触れず、バイデン主催の民主主義サミットで台湾デジタル担当相のオードリー・タン氏が取り出した台湾と中国が別の色に塗り分けられた地図」のシーンを全てカットして流すなどの一連の宥和政策が背景にあります。

この民主主義サミットの一件はこうです。

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民主主義サミット「アメリカにお付き合い」の冷めた声…北京五輪 外交

「民主主義サミットは、アメリカのバイデン政権が9日から2日間にわたって開催していた。最終日の10日、台湾のオードリー・タン(唐鳳)政務委員が登場したが、彼女が話している途中にトラブルは起きた。
南アフリカのNGO「CIVICUS」の調査をもとに作成された、国・地域ごとの市民の権利の開放度を示す世界地図で、中国大陸は赤色(閉鎖的)に、台湾は緑色(開放的)にそれぞれ塗り分けられていたのだ。
ロイター通信などによると、その後画像が見えなくなり、音声だけが流れる状態になった。ホワイトハウスの要請で消されたという。
関係者はロイター通信に対し「驚愕した」と伝えている。アメリカは台湾は中国の不可分の領土だとする「一つの中国」政策をとっており、政策と矛盾するのを避けようとした可能性がある」(ハフィントンポスト12月13日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/40e7122db1d967d7f7740bd94710601515055a79

民主主義サミットと銘打っておきながら、主催者米国が言論統制してどうしますか。
せっかく台湾の代表を招待しておきながら、かんじんの部分で腰砕けになるとはいかにもバイデン、これこそバイデンです。
中国が激怒するふりをするのは目に見えているのですから、怒鳴り込んできたらあれは招待国の発言でつっぱねればよかったのに画像を遮断するとは,まるで中国のようです。
このようにバイデンは常に台湾についてもグラついています。
ある地域集会で「台湾が中国から攻撃されれば防衛に向かうのか?」という質問に答えて、バイデンは「我々にはそうする義務がある」と答える一方で、台湾に対する戦略的曖昧さは維持するとしています。
議会が「戦略の明確化」を主張しているのに対して、バイデンは台湾が法的拘束力のある協定等で防衛が義務付けられていないことを理由に、台湾有事にあいまいな態度をするということを意味します。

これはいったん台湾有事において、中国がロシアのような方法を取った場合、似た反応になることを表しています。
仮に中国が台湾対岸に大軍を擬して、「台湾は国内問題だから、米国は介入するな」という要求を出したとすると、バイデンは「台湾に防衛上の義務はない。アジアで戦う米国人を再び見たいのか」と居直る可能性も捨てきれないということです。
そしてせいぜいつっぱったつもりでできるのが、経済制裁だけということになります。
これも今のロシア制裁のように、たいして効き目のない手ぬるいものに終わるかもしれません。
そしてこの米国の態度に失望した台湾国民は、再び国民党馬英九のような北京の走狗に政権を渡してしまうかもしれません。
そうすれば軍の進攻などさせなくても、中国は台湾が熟した柿のように落ちてくるのを待てばいいだけになるでしょう。

このようにウクライナ危機とは台湾危機のひな型なのです。
それにしてもバイデンにつけ岸田につけ、危機の時代にこういうひ弱でグダグダな指導者を持ったことは悲劇です。 

 

2021年12月29日 (水)

やはり出てきた、プーチン得意のあわせ技

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やはり出てきました、プーチン得意の緩急あわせ技の登場です。
ロシア軍が1万人撤退するそうです。

「ロシア軍の南部軍管区は25日、管轄する地域で戦闘訓練を終えた1万人以上の兵士を通常の配置に戻すと発表しました。
それによりますと、ウクライナと国境を接するロストフ州やロシアが、7年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアなど合わせて10の地域で、複数の部隊が1か月にわたり訓練を実施したということです。
ただ、年末年始の期間中も有事の即応態勢を維持するため、必要な部隊を配置したうえで、防空部隊や海軍の黒海艦隊の一部も任務を継続するとしています」
(NHK2021年12月27日)

私が最良のロシアウォッチャーだと考えている小泉悠氏は、あくまでクールに意図は不明だと突き放しています。

「ロシアの安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠特任助教は「ロシア軍は、全体で10万人や12万人と推定されており、そのうち1万人が撤収することは評価できるかもしれないが、ウクライナ周辺にロシア軍が多く集結している状況は変わらない」と述べ、直ちに緊張緩和にはつながらないという見方を示しました。
そのうえで、小泉氏は、ロシア側の意図について「どこの国の軍隊もずっと訓練を続けることはできず、駐屯地に戻って部隊を休ませなければならない。技術的な一つ一つの動きに政治的な意味を見いだすのは、あまり意味がない」と述べ、意図を推察するのは難しいと指摘しました。
また、小泉氏は、ロシアのプーチン大統領がNATO=北大西洋条約機構が拡大しないよう合意文書の形で保証を求めていることに関連し「NATOからもウクライナからもロシアを満足させる球は返ってこないと思う。ロシアが軍事力を用いた威圧だけにとどめるのか、本当に軍事力を行使して何らかの要求をのませようとするのか未知数だ」と述べました」(NHK前掲)

小泉氏が言うとおりです。
これは緊張緩和ではありません。
プーチンが何を意図しているのか「判らない」というのが正しい判断で、そこからなにか特別の意味を汲み取ろうとすると術中にはまることになります。
たとえばロシアは戦争を望んでいない、ロシアは少しの要求さえ受け入れてもらえば平和的に解決したいのだ、といった観測が自由主義国内部からでてくるように、プーチンは仕向けています。
プーチンは、硬直した習などよりはるかに外交的駆け引きがうまいのですよ。

一見緊張緩和に見えるようなことを、ロシアはこの4月にもやっています。
4月には大規模な軍隊を東部国境付近に集結させて、その後撤収させていますから、緩急運動の2回目が始まったていどに考えたらいいのではないでしょうか。
ただし、武器や装備は置いていったので、またすぐに2回目が始まりましたので、またやってんですかともいえないことはありません。

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ロシア軍がウクライナ東部の国境付近から撤退、緊張はひとまず緩和され ...

すでに厳しい冬が襲っているウクライナとの東部国境に、十数万の軍隊を野天に常駐させっぱなしにはできません。
兵員は今まで市民暮らしをしてきた予備役が多いのですから、数カ月に渡る野天暮らしに消耗しています。
戦車や歩兵戦闘車などの大型装備も簡易修理しかできないので、故障が相次いでいてもおかしくはありません。
一定期間を東部国境の「戦場」で過ごした部隊から先に元の駐屯地に帰して、新たな部隊を出すというローテーションをしているはずです。

おそらく今回の1万人撤収もこの部隊ローテーションを宣伝に使おうとしたのかもしれません。
この4月の時もセルゲイ・ショイグ国防相は、「ロシア西部で活動していた兵士に常設基地に帰還するよう命じたが、今年後半に予定している別の演習に向け、当該地に兵器の一部を残しておく」と述べています。
つまりまた帰ってくるからな、ということにすぎませんでした。

この時は緊張を高めるだけ高めておいて、ふっと息を抜いてこんな誘い水をだしました。
さすが柔道の有段者。といっても、別に親日家じゃありませんから念のため。

「プーチン大統領は4月21日の国民演説の中で、西側諸国に「レッドライン」を超えれば必ず後悔すると警告していた。
軍の撤退発表後、プーチン大統領は記者団に対し、「ウクライナの大統領をモスクワに招く用意はできている」と述べた。しかし、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部の問題について話し合いたいのであれば、ロシアがウクライナに足を運ぶべきだと強調した」
(kagonma-info.com 2021年4月23日)
https://kagonma-info.com/c0019/russian-army-ukraine-withdrawal/

ロシア人は平和愛好者ばかりだから、進攻なんかしないさ、あれは西側の悪意あるプロパガンダだ、ウクライナ大統領さんモスクワにいらっしゃい、ウォトカでもひっかけながら平和的な話しあいをしようや、というわけです。
もちろんこんな見え透いた手にウクライナが乗るほどお人好しではありませんでしたが、むしろ危ないのはバイデンとNATO諸国のほうです。

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プーチン大統領「今、すぐにだ」 米欧に安全の確約迫る | 毎日新聞

タスは1月12日にするという日時まで言っていますが、これも小泉さん流に言えば「未知数」です。

「タス通信は26日、緊迫するウクライナ情勢を巡り、北大西洋条約機構(NATO)が来年1月12日に「NATOロシア理事会」を開催することをロシアに提案したと報じた。
NATOロシア理事会は2002年に設立されたNATO加盟国とロシアとの対話の枠組み。開催すれば2年半ぶりとなる。タス通信はロシア外務省当局者の話として、理事会開催の提案についてロシアが「検討している」と伝えた」
(毎日12月27日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/36d31ee6b7f6014c4ab2116f55a7e332b1da89f4

「NATOのストルテンベルグ事務総長は21日、ブリュッセルでの記者会見で、来年初めに同理事会を招集することに前向きな姿勢を示していた」
(日経2021年12月27日)

とまれ、 ロシア側の当座の意図はNATOにロシアとの協議機関である「ロシア理事会」を開かせることです。
ロシア理事会とは、とりあえずロシアを準メンバーにした、形式的にはNATOの最高意志決定機関です。
ただし、あたりまえですが仮想敵国のロシアを入れた最高意志決定機関などはありえないので、東方へのNATO拡大やミサイル防衛の配備などの戦略上重要なことは扱われません。
これはソ連崩壊後の束の間の蜜月に作られたもので、クリミア進攻後は2年半も開催されていないことからわかるように既に形骸化しています。
今回はその埃を払っての再登場となります。

しかも今回は、タスの発表を信じるなら、NATO側がロシアに呼びかける形で話しあいを持つことになります。
ほんとうなら、チェンバレンもどきの宥和的な対応です。
こういう協議の持ち方をすると、初めから落とし所は決まっているのかもしれません。

ロシアからすれば、われわれは平和愛好国なのだから、14万の大軍の集結などはそちらが騒いでいるだけのこと、しかしこちらにの要求は伝えてあるのだから、お呼びとあらばお伺いしましょう。
ただしいいですか、そちらが呼びかけた以上空手では帰れませんから、お土産を準備しておくことです、ということです。
すると最悪、バイデンとNATOはウクライナ東部2州の自治権の容認くらいは合意しそうでコワイ。
こんなことを呑んでしまったら、なるほどロシアは全軍撤退させるでしょうが、次はリトアニアとポーランドの番がくるだけのことです。

このようにちょっと引いて見せると、14万の大軍のごく一部の撤退も必要以上に大きな妥協に見えてくるという錯覚をプーチンは利用しているだけですが、日本のメディアは見事に引っ掛かっているようです。
読売など、「ロシアがウクライナへの軍事的な圧力を維持する中、対話実現に向けた調整が本格化してきた」(12月27日)と手放しで歓迎モードです。
まんまと、ロシアの思うとおりのダンスを踊ってくれています。
ならず者国家の無理無体な要求をひとつ飲めば、次が来る、それに融和すれば永遠に続く。
それを忘れないようにしましょう。

それが分かっているから、バイデンとNATOも安易な妥協はできないはず、なにも決まらない協議に終わることでしょう。

 

 

2021年12月28日 (火)

キューバ危機を呼び寄せた轍を踏んでしまったバイデン

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さて、キューバ危機に話を戻します。
キューバ危機を引き寄せたのは、実はケネディでした。
ケネディとフルシチョフは、キューバ危機の前の1961年6月にウィーンで会談をしています。

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ウィーン会談 - Wikipedia

その時の会話の一部が残っています。
いかにケネディの腰が引けて弱々しいかわかるでしょう。

  • ケネディ
    • 私が避けたいのは米ソ間の誤算です。両国の誤算で破滅しかねないことです。
  • フルシチョフ
    • 誤算という言葉は好きではありません。共産主義がソ連国内に留まることを保証するなどとは出来ません。我々が誤って戦争を始めることなどありません。その言葉は二度と使わないでください
  • ケネディ
    • 西欧は相手の出方を正確に見通せなかったことで悲劇が生まれました。アメリカも朝鮮で中国の出方を見誤りました。私が求めていることは、双方の判断が正確に下せるようにすることで、今後についてより明確な判断が下せるようにすることです。
  • フルシチョフ
    • この会談の目的は両国の関係を改善することだと信じています。私と大統領がその点で成功したら、この会談で使われた費用は無駄にはならないでしょう。
      ウィキ前掲

ケネディは、フルシチョフに「共産主義がソ連に留まる保証などない」とまで言わせてしまっています。
当時のソ連は今のロシアに比するのも愚かな超大国でした。
そのような世界を二分した国に、我々は留まることなく拡大し続けるという言辞をさせてしまったのは致命的敗北でした。
米国は喉元に核ミサイルの刃をつきつけられることになります。

ケネディは失意でウィーンを去ったとされています。

「ケネディはウィーン会談後は傷心のままウィーンを去った、と多くの人は見ていた。会談終了後、ケネディは周囲の人間に、頑なに姿勢を変えなかったフルシチョフを罵ったとされる。この次の日にロンドンに飛んだケネディを迎えたマクミラン英国首相は後に「ケネディは生まれて初めて自分の魅力に影響されない男に出会ったのだ」と語っていた」(ウィキ前掲)

一方、フルシチョフは上機嫌で帰国しましたが、それは取り巻きたちが、ケネディは甘い、あいつが大統領のうちにとるだけとってしまえ、と進言したからだと言われています。
つまり、ケネディが及び腰で、共産主義の膨張に対して軍事的に対抗すると伝えず、穏便に顔をたてるが如き発言が裏目に出たのです
このケネディの態度を宥和的とみたフルシチョフが内角高めの危険球として投げたのが、キューバという米国の喉頸に核を据えつけることだったのです。

そしてケネディの一世一代の大博打による逆転に続くわけですが、それは置きます。
今、ウクライナで起きているのは、ロシア外務次官がいうとおりキューバ危機と一緒の構図です。
ロシアはバイデンやNATO諸国がなにもできないことを読んで、この戦争準備をして見せているのです。

バイデンは早々と経済制裁以外うちの国はなにもしないから、ウクライナにも部隊派遣はしないから、という信号を出してしまいました。

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BBC

「武力行使の考え「現時点ではない
バイデン氏は7日の首脳会談で、「今まで見たこともないような経済的影響」に直面することになると、プーチン氏に明確に伝えたという。
プーチン氏がそのメッセージを理解してくれたと確信していると、バイデン氏は付け加えた。
しかし、今後の軍事行動の可能性について質問が及ぶと、バイデン氏はアメリカの道義的・法的義務は、30カ国で構成されるNATOに加盟していないウクライナには及ばないと述べた。
「アメリカが一方的に武力行使をして、ロシアがウクライナを侵略するのに立ち向かうという考えは、現時点ではない」
(BBC2021年12月9日)

ウィーン会談のケネディに酷似していませんか。
まことにバイデンは危険なまでに愚かで弱い大統領です。
この時期、こんなことをプーチンに面と向かって言えばどうとられるのか、プーチンの高笑い(というより失笑)が聞こえるようです。
バイデンは同じ民主党の大統領だったケネディのキューバ危機の歴史的教訓を少しも学んでいないようです。

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2021年12月23日、プーチンは年末恒例の記者会見において、「ボールはNATO側にある。即座に安全を保証せねばならない」と、米国に脅迫的態度で臨んでいます。
では球を投げ返された米とNATO側はといえば、すでにバイデンが12月7日の米露会談で早々と軍事的対抗手段を捨てて主導権を渡してしまったために外交交渉一本に追い込まれてしまいました。
賢明な米国大統領なら、最後まで軍事的対抗手段のカードは温存しておくべきだったのです。

ドル決済からの追放と天然ガスパイプラインは制裁にすらならないでしょう。
国際市場から無縁で、天然ガスというブツのやり取りで食っているロシアにとって、ならばやってみるがいいと笑い飛ばせるようなものにすぎません。
困るのは制裁を加えた西欧のほうなのですから。
天然ガスを禁輸したために開いた巨大な穴を米国が独力でシェールガスの「ベルリン空輸」をして凌いでみせれば格好がつくのでしょうが、生憎グリーンニューディールとやらで国内のシェールガス産業を締めつけている真っ最中です。

ヨーロッパ、特に英国の北海原油、原子力を持つフランスと違って全面的にロシア産天然ガスに依存しているドイツはたちまち酷寒の冬にエネルギーが干上がるという地獄を見ることになるはずです。
ですからとうていNATOの足並みは揃いません。

これは昨日もふれた「ブタペスト合意」などを結んだことの必然的結果です。
この中で、NATOは東西冷戦後に旧ソ連との敵対関係を終わらせる基本文書に署名し、東欧に恒久的な大規模戦力を追加配備しないと約束しています。
しかしこれを西側は遵守しませんでした。
その後も、NATOは中欧・東欧に加盟国を拡大し、2014年のロシアによるウクライナ・クリミアの併合後には、ポーランドなど東欧に部隊を常駐させています。
ロシアからみれば、プーチンがいうとおり、「欧米はロシアを騙した」わけです。

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プーチンからすれば、オレが言っているのはソ連の復活ではなく、そんな力はないのだから近づきすぎるな、緩衝地帯を置けといっているだけだということになります。
しかし現実にNATOとEUに加盟済みのポーランドとリトアニア、加盟申請中のウクライナの3国にとって、これは再びロシアの版図に戻れという裏切りに等しいことになります。
ですから、リトアニアのナウセダ大統領は、「一方的にレッドラインを設定するロシアのやり方は21世紀の欧州では通用しない」と主張して、最後まで独立を守る姿勢を新たにしています。

このように見てくると、ロシアは振り上げたこぶしを降ろしようがないし、降ろせば後は中国にすがって生きていく二流の覇権国になり下がることでしょう。
中国にとって、ロシアが勝とうと負けようとどちらでもいいのです。
勝てば自由主義陣営の後退が明らかになりますし、負けたら負けたで優しくロシアを抱きしめてやり、従属的同盟国として包摂させればよいだけのことです。
ちなみに私はこの可能性がもっとも高いと思います。
ロシアはヨーロッパの一部であることをあきらめて、中国圏の一部に自分の位置を見つけることでしょう。
ならず者はならず者同士、世界に牙を剥いて生き抜くしかないのです。
こんなロシアやプーチンにまだ幻想を持つ人が日本にはいますが、しっかり彼らの行状を見ることです。

一方西側も、リトアニア・ポーランド、ウクライナといった、必死の思いで独立を勝ち取った国々からの反発を考慮すると、ロシアに譲歩できる余地がまったくありません。
それにNATOがウクライナへの加盟を認めようがどうしようが、それはNATOという軍事同盟内部のことで、ロシアに命令されてやることではないからです。

つまり、西側はボールを投げ返されても外交交渉による問題解決は不可能です。
譲歩の余地はゼロです。
ですからなおのこと、これは米上院外交委員会のジム・リッシュ議員が指摘するように、「米国やNATOが到底受け入れない」という前提で設計された要求リストであって、ロシアの要求は受け入れ困難なことが分かった上でのもので、明らかに戦争の口実作り」なのです。
ならば、相応の覚悟で対抗するしかなかったのです。
それ故、交渉の初手で部隊をウクライナに派遣しないという発言を絶対にしてはなりませんでした。
それを軽々しく口にするなんて、なんということを!
ケネディは自らが呼び寄せたキューバ危機に、キューバの海上封鎖で臨み、ソ連の野望を完全に封じ込めましたが、バイデンにそのマネができるでしょうか。

ここで米国とNATOが引いたら、かつての2014年のクリミア割譲を更に大規模にした自由主義陣営の大きな後退につながることでしょう。


■年末年始の更新予定について
押し迫ってまいりましたが(あー年年々歳々実感ない)、年末は31日(金)まで更新し、1日元旦は賀詞、そして三賀日はお休みさせていただきます。
新年は4日からの出発となります。
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2021年12月27日 (月)

プタペスト覚書の欺瞞がウクライナ危機を招いた

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ウクライナ危機が、戦争の崖っぷちのところにいます。
ロシア軍は10万人以上(一説で14万)の軍隊をウクライナ東部国境付近に集結させています。


「西側やウクライナの情報当局は、来年の早い時期にも侵入や侵攻が起こり得るとみている。「情勢激化へロシア側の準備が整うのは、1月末の可能性が最も高い」と、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は話す。
米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、プーチン大統領が「ロシアの軍と治安部隊を、一気に動ける場所に配置している」とみている」
(BBC

ウクライナ東部には、同国からの分離を主張する勢力が掌握している親露地域があって、戦闘が継続されています。
下図は2014年のものですが、ピンクと赤い部分に塗られたドネツクとルガンスクが分離主義者の支配地域です。
NATOには紛争地域を国内に抱える国は加盟できない決まりがあるので、ロシアはこの二つの州の親露勢力に軍事支援を送って常に不安定にさせています。

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 AFP

もっともロシアに言わせると、戦力を集中させているのはウクライナのほうで、それに武器を供給しているのが西側だ、したがって軍事挑発を受けているのはロシアだと言っています。

「ロシアはウクライナについて、軍全体の半数に当たる12万5000人の兵士を東部に集結させていると非難。ロシアの支援を受ける親露分離派が支配する地域を、ウクライナが攻撃する予定だと主張している。一方のウクライナは、ロシアの言い分について、自分たちの計画を隠すための「プロパガンダのばかげた主張」だとしている。
ロシアはまた、NATOの国々がウクライナに武器を「大量供給」していると批判を重ねている。プーチン氏は、緊張をあおっているのはアメリカの方だと非難し、ロシアには「これ以上後退できる場所などない。我々がただ手をこまねいて座視するとでも(アメリカは)思っているのか」と述べた」(BBC前掲)

 正々堂々と白を黒と言うのはロシアの常套的交渉術にすぎませんし、実際には今年4月のように「自国の裏庭からNATO軍を追い払うためのポーズに過ぎない可能性もある」(BBC)かもしれません。
4月にはすぐに撤退させましたが、今回はあまりにも規模が大きく真に迫りすぎていると西側は見ています。

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VOI

「西側やウクライナの情報当局は、来年の早い時期にも侵入や侵攻が起こり得るとみている。「情勢激化へロシア側の準備が整うのは、1月末の可能性が最も高い」と、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は話す。
米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、プーチン大統領が「ロシアの軍と治安部隊を、一気に動ける場所に配置している」とみている」
(BBC

このようにロシアは得意の高めの危険球を投げては、次はお前らの頭にぶつかってもそれはお前の責任だからな、とうそぶきます。
いつものことながら、ほんとうにタチが悪い。
ロシアが得たいものは、ウクライナがNATOに加盟することについてロシアが拒否権を持ち、それを法制化しろということのようです。

「要求項目には、ウクライナのNATO加盟に対してロシアが拒否権を持つことといった、西側諸国が既に除外している項目も含まれている。
要求項目の詳細を初めて公表したロシアのリャブコフ外務次官は報道陣に対し、ロシアと西側諸国は関係再構築のために白紙から始める必要があると指摘。「米国とNATOがここ数年、安全保障状況を積極的に悪化させようとしている路線は絶対に容認できず、極めて危険だ」と訴えた。
さらに「米国とNATOの同盟国は、予定外の演習など、わが国に対する敵対行為を直ちに中止し、ウクライナ領土での軍備増強を即時中止すべきだ」と強調した」
(ロイター2021年12月18日)

具体的には、かつてのブタペスト覚書(後述)のようなものをもう一回作れということのようですが、欧米がそれを飲む可能性はありません。
そのようなものを作ってしまえば、救援を求めているウクライナを切り捨ててロシアに割譲するような行為だからで、米国とNATOの信用は地に落ちるでしょう。

セルゲイ・リャブコフ外務次官は、この要求を飲まねば、「1962年のキューバ・ミサイル危機の再来になる危険性がある。緊張がこのまま続けば、ある日目が覚めたら同じようなことが起きていたということもあり得る」(朝日12月10日)という表現を使っています。
ここでロシアが、キューバ危機を引き合いに出したのはたいへんに示唆的です。

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セルゲイ・リャブコフ外務次官  sptnkne.ws

このキューバ危機は、米国とソ連が核戦争一歩手前まで行き、それを寸前で回避した歴史的事件です。
この時もフルシチョフはロシア人特有の内角高めのピンポールを投げて寄越しました。
フロリダから見えるような眼と鼻の先のキューバに核ミサイルを搬入したのです。
こんな位置に核ミサイルを据えられては、数分で首都ワシントンに到達してしまって、防ぎようがありません。

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キューバ危機 - Wikipedia

ロシアでいえばヘルシンキあたりに核ミサイルを据えたようなものですから、当然米国は騒然となりました。
なんという危ない球を投げるのだ、本気で核戦争をしたいのか、と驚いたのです。
ただし、この危険球を投げさせたのは、ある意味でケネディだったのです。

当時フルシチョフは、キューバ政府からの核ミサイル設置要求にとまどっていました。
後々までゲバラは、なぜソ連は核を撤去したのか、痛恨の極みだ、と言っていたそうですが、キューバは独立の保証を求めていました。
米国に干渉させないためには、核の存在が不可欠だと考えたのです。

これには一理あります。
大国の近傍の小国が、その大国の利害に反する政権を打ち立てた場合、必ず内政干渉を受けます。
大国に同調する者を送り込むのはまだ手ぬるい方で、時には軍を進攻させて黙らせてしまうこともよくあったことです。
米国は1961年4月、キューバのピッグス湾からCIAに支援されたゲリラを送りこもうとして失敗しています。
このような軍事介入をさせないために、小国が切り札に使える最大の外交的武器こそ実は核兵器なのです。

たとえばグレゴリー・アンドリーが『プーチン幻想』の中で唇をかみしめるように言っているのは、ウクライナは独立に際して核を手放すべきではなかったという悔恨の念です。
当時、ウクライナは旧ソ連から引き継いだ核兵器を大量に保有しており、世界第3位の核保有国であったのです。
1992年初めの時点で、ウクライナには最低で2800発から最大で4200発の戦術核弾頭を持ち、その他に戦略核として176発の大陸間弾道ミサイルを保有していました。
この核ミサイルの製造にはウクライナの技術も使われており、放棄するかしないかはウクライナの主権に属することでした。
ですからグレゴリー・アンドリーが言うように、核を手放す必要はなく、核を手にしていれば、今のロシアの宗主国然とした拡張主義はありえなかったとも言えるのです。

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露、ソ連崩壊から30年 プーチン政権は黙殺 - 産経

一方ロシアの立場としては、ウクライナなどの旧ソ連版図の国々の独立は、ロシアが経験した始めての戦争によらない領土の失陥、プーチン流にいえば「20世紀最大の地政学的悲劇」 以外なにものでもありませんでした。
いまでもロシア人の6割がソ連の崩壊を悲しんでいるようですが、それは世界に君臨する超大国から韓国以下の経済力しか持たない小規模な地域覇権国に転落したためです。
プーチンに言わせれば、ウクライナはロシア系民族で同族だ、だから昔から同じ国を作ってきたのに、独立するとはなにごとだ、お前らはロシア人なのだという乱暴なロジックになります。

実際に、つい最近も、こんなことをプーチンは書いています。

「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は、ヨーロッパ最大の国家であった古代ラスの相続人です。スラブと広大な空間の他の部族 - ラグガ、ノヴゴロド、プスコフからキエフとチェルニゴフ - 一つの言語(現在は古いロシア語と呼びます)、経済的なつながり、ルリック王朝の王子の力によって団結しました。そして、ロシアのバプテスマの後 - と一つの正統派の信仰。ノヴゴロディアンとキエフの偉大な王子であった聖ウラジーミルの精神的な選択は、今日、主に私たちの親族関係を決定します」
ウラジミール・プーチン『ロシア人民とウクライナの歴史について』 
2021年7月12日原文ロシア語機械翻訳

そしてウクライナは、ソ連という理想的な共同体の一部であったにもかかわらず、西側の謀略のためにロシアへの包囲攻撃の拠点になってしまったと怒ります。

「2014年のずっと前に、米国とEU諸国は、ロシアとの経済協力を抑制し、制限するためにウクライナを組織的かつ永続的に推し進めました。ウクライナの最大の貿易・経済パートナーとして、我々はウクライナ・ロシア・EU形式で新たな問題について議論することを提案した。しかし、ロシアはEUとウクライナだけに関係していると言われるたびに。事実上、西側諸国は対話のための繰り返しロシアの提案を拒否している。
一歩一歩、ウクライナは危険な地政学的ゲームに引きずり込まれ、その目的はウクライナをヨーロッパとロシアの間の障壁に変えることを目的とし、ロシアに対するスプリングボードに変えました。必然的に、「ウクライナはロシアではない」という概念がもはや満たされない時が来ました。それは「我々は決して受け入れない反ロシア」を取った」
(プーチン前掲)

つまりロシアはウクライナ独立を形式上認めても、かつてのソ連帝国の版図には欧米は手を出すなということになります。
具体的には、今回の要求のように、旧ソ連諸国=東欧13ヶ国(チェコ、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ)でNATOが軍事活動を一切行わないことや、ウクライナを加盟国に加えないことなどを法的拘束力もつ条約で保証することを求めています。

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産経 https://news.yahoo.co.jp/articles/3b05942a377908c3af1a5a4193c2ecd808e2b92b

なぜなら、そこは「ロシア人の土地」だからです。
そんなウクライナが自立した核兵器保有国であることを認めるなど、ロシアにとって金輪際あってはならないことでした。
そしてウクライナから核を取り上げたい一心のクリントンも、ロシアに同調してしまったのです。
本当に民主党は外交オンチです。

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https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/2595290-cun-zaishinakatta-an-quanbudapesuto-jue-shu-shu-mingkaranian.html

かんじんのウクライナのクラフチュク大統領は核の重要性を理解せず、一片の紙切れに過ぎない「プタペスト覚書」によって手放していまいます。

「ブダペスト覚書署名国は、「ウクライナの独立、主権、現存国境を尊重する」こと、「ウクライナに対して、今後一切の武器を使用しない」こと、「ウクライナの政策に影響を及ぼすことを目的とした経済的圧力を控える」ことが義務づけられたのである。
・同覚書にのっとり、当時世界第3の核兵器保有国であったウクライナは、自発的に核兵器能力を放棄し、非核国家となった。ソ連邦崩壊時、ウクライナ領内には、大陸間弾道ミサイル、戦術核兵器、核兵器を搭載可能な戦略爆撃機、戦略核兵器があった。ウクライナが独立した直後から、アメリカとロシアは、当時のウクライナ政権幹部に対し、できるだけ早く核兵器を放棄するよう説得し始めていた」
(ウクライナのマルチメディア報道プラットフォーム 2021年12月26日)

哀しいほど無能なクラフチュクは慌てて核のようなものは早く手放したい一心で、「あれが爆発したらどうするのか」と叫ぶ始末でした。
独立直後のウクライナにとっての外交的価値をまったく理解していなかったのです。
突然のソ連崩壊によって、ウクライナ国内には、地方共産党の支部としてモスクワに奉仕するだけが仕事だった共産党員と、生命をかけて独立を目指してきた愛国派に分裂していました。
そしてクラシチュクのような質の低い旧共産党幹部が権力を握り、米露の核放棄要求を唯々諾々と呑んでしまったのです。

ブタペスト覚書によると 、ロシアと米国と英国は、ベラルーシとカザフスタンとウクライナが核不拡散条約の加盟国になったことを認め、核兵器をロシアに引き渡すことが記されています。

  1. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの独立と主権と既存の国境を尊重する
  2. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する脅威や武力行使を控える。
  3. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに政治的影響を与える目的で、経済的圧力をかけることは控える。
  4. 「仮にベラルーシ/カザフスタン/ウクライナが侵略の犠牲者、または核兵器が使用される侵略脅威の対象になってしまう」場合、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに支援を差し伸べるため即座に国連安全保障理事会の行動を依頼する。
  5. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する核兵器の使用を控える。
  6. これらの誓約事に関して疑義が生じた場合は、互いに協議を行う。
    (ウィキペディア『ブタペスト覚書』)

では、核放棄する対価にウクライナがなにを得たのでしょうか。
ここには「ウクライナの主権を尊重する」と書かれているだけのことで、それをどう保証するのかが一行も書かれていません。
文言にあるのは「脅威や武力を控える」という努力義務にすぎず、ロシアはもとよりその担保を与えねばならなかった米国にすら介入義務を課していないのです。
そしてウクライナの主権が犯された場合には、国連安保理に持ってこいという言い方をしています。
もちろんその国連安保理で拒否権を握って自国に不利になることをことごとく排除してきたのはロシアだということを知った上での米露の談合でした。
つまりプタペスト覚書とは、米露がウクライナに押しつけた担保なしの小切手だったというわけです。

このプタペスト覚書きの音頭を取った米国内にすら、米国政府の不誠実さをなじる声があります。

「米国ではジョージ・H・W・ブッシュ政権もビル・クリントン政権もウクライナに軍事介入するための準備は行われておらず、どちらの政権も米国上院議会が国際条約を批准するとは信じていなかったので、この覚書はより限定された条件で採択された
その覚書は「誓約事に関して質問を提起する状況が生じた場合に」当事者間での協議の必要性を示しており、同覚書に明記されている。覚書が法的義務を明示しているかどうかに関わらず、ウクライナが2014年初頭から遭遇している難儀は、不拡散の誓約と引き換えに提供されている将来への安全保証の信頼性に疑問が生じていると言えよう」
(ウィキ前掲)

このように今のウクライナ危機は、このプタペスト覚書の虚構から始まっているのです。
そしてキューバ危機を招き寄せたケネディの轍を踏もうとしているのがバイデンです。
それについては長くなりましたので次回にします。

 

2021年12月26日 (日)

日曜写真館 かの日より地平に立てる一枯木

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この町の春夏秋冬枯木晴 高田風人

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さるかけは枯木に似たる若葉哉 正岡子規

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これが最後の枯木の踊一つ星 西東三鬼

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すみずみに朝日のとどき枯木立 鷲谷七菜子

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てのひらに枯木のぬくさ過去遠し 鷲谷七菜子

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めぐり立つ枯木非情や追はれれば 藤田湘子

 

2021年12月25日 (土)

台湾からの邦人避難の難しさとは

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台湾有事が発生した場合、日本は同時に二つの大規模避難計画を実施せねばならなくなります。
ひとつは昨日にふれた宮古・八重山の10万人避難計画、そして台湾現地からの邦人救出です。
これはアフガン救出作戦とは別種の困難なものとなるはずです。
今日はその難しさを考えてみます。

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japan-forward.com

まず第1に、外国からのNEO(非戦闘員退避活動)ですから、アフガンの失敗でもわかったように、わが国にはその経験が乏しいことです。
外国に自衛隊を派遣することすら違憲とされた時代が長く続いたために、自衛隊はいまだに海外への長距離の戦力投射が苦手です。
また法も現実にまったく対応できていないことが、前回のアフガン救出作戦で明らかになりました。

海外民間人救出の法的根拠は、自衛隊法84条ですが、その条件として「当該政府の了解と連携」、「安全が確保されている」という2点がクリアされねばならりません。
このアフガン救出作戦も、アフガン政府の瓦解による統治権力の空白という落とし穴に入ってしまい、しかもタリバンは既に首都カブールを制圧している状況で、戦闘が集結したとはいえない状況でした。
つまり字義どおり84条を解釈すれば、救出作戦そのものが不可能でした。
ここで菅氏が自衛隊輸送機を出したのは、実は超法規的決断だったのです。
ただしその判断が遅かったために、救出できたのは邦人1名とアフガン人14名だけに止まりました。

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アフガン邦人退避へ航空自衛隊のC130輸送機「第2陣」が出発

日本は「一つの中国」論に縛られているために、正式な国交を持っているのは攻撃してくる側の中国です。
中国にとって台湾問題は国内問題であり、「内戦」の継続ですから、自衛隊の「国内進入」は外国勢力の介入に繋がるとして拒否すると思われます。

では、台湾に対してはどうなのでしょうか。
日本は中国を正統政府として認め、台湾を「ないもの」として扱っていますから更に困難です。
日台間には外交-防衛当局間の交流がなく、事前の調整するパイプすらありません。
ですから有事に際していかなる防衛協力をするのか、どのような邦人脱出を計画しているのか、相互に事前調整することができないのです。
いままで日本がとってきた、信念を捨て強者に迎合し、弱いものを切り捨てる事大主義外交のツケが回って来ることになります。

実際問題として、台湾邦人救出になった際、自衛隊は台湾現地で台湾軍や米軍、台湾警察などと協力しながら邦人退避活動をするわけですが、脱出ルートの確保からして困難となるでしょう。

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台湾空港地図-台湾の国際空港マップ

在留邦人は台北市内に集中していますが、最大の国際空港である松山空港は滑走路一本の軍民共用空港です。
位置的に総統府と国防部に近く、台湾有事の最重要防衛拠点ですから、ここを外国の部隊に共用を認めるかどうかはわかりません。
別の空港としては台北に近郊の桃園国際空港もありますが、ここへの移動のための集合と移動手段が別の問題として出てきます。

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台北港が正式供用、「海洋台湾のハブ」期待 - NNA ASIA・台湾・運輸

一度に大量の避難民を移送できるのは船舶ですが、大型船舶が寄港できるのは台北港と基隆港、花蓮港、高雄港の4つですが、高雄と花蓮は遠すぎますから台北市内から近く7つの埠頭を持つ大規模港の台北港か基隆港を日本側は希望するでしょう。
しかしこれも空港と一緒で軍民共用ですので、台湾が戦時に外国部隊の使用を認めるかどうか微妙なところです。

このような問題が調整できないまま台湾有事に突入した場合、一部の邦人が運良く米軍のNEOに便乗出来る程度のことしかできない最悪のケースも考えられます。
日本と対照的なのが米国です。

たとえば朝鮮半島におけるNEOはこのように実施されます。

「現在、韓国にはアメリカ人が約14万人、そのうち米軍関係者が約2万8500人在住している。国外退避までには(1)退避情報が入る(2)身支度・準備(3)登録手続き(4)南へ移動(5)韓国国外へ退避、という5つのステップがあり、韓国南部への輸送は民間業者によって行われ、アメリカ軍はその警備を担当。そして米軍が準備した航空機でグアム・沖縄へ脱出させる。軍事アナリストの小川和久・静岡県立大学特任教授によると、米軍は平時から陸上輸送の民間業者や25機前後の民間旅客機をおさえており、準備は開戦の1カ月前からスタートし、退避10日から2週間ほどで完了させるのだという」
(ABEMAタイムス2017年12月7日)
在韓アメリカ人にとっては常識!軍事行動に先駆けて行われるNEO(非戦闘員退避活動)の中身とは | 国際 | ABEMA TIMES

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朝鮮半島有事で「在韓米国人」20万人が日本へ逃げてくる

第2にそれらをクリアしたとして、台湾邦人救出は戦闘のさなかに行われる可能性が高いことです。
戦闘中の救出を妨げている自衛隊法84条が改正されていることを前提とします。
もちろん戦闘開始前の平和な時期に避難出来るのにこしたことはありませんが、中国軍が奇襲攻撃をしかけないという保証はありません。
おそらく中国軍は強力なサイバー攻撃をしかけて、情報インフラを麻痺させ、弾道ミサイルの飽和攻撃で政治・社会・軍事拠点壊滅を狙ってくるでしょう。
このようなハイブリッド攻撃方法をとられると、事前の兵力集中活動が見られないために、前兆なく一気に有事に突入します。
もちろん中国にとって台湾はあくまでも「国内」ですから宣戦布告も一切なく、いきなり戦時に移行します。
したがって平時のうちに準備し、段階的に脱出しておくことが難しくなります。

いったん戦端が切られた場合、台湾政府は日本に対して友好的ですから快く民間人避難を認めるでしょうが、中国がそれを認めるかどうかは前述した理由でわかりません。
むしろ中国は、逃げ後れた邦人を人質として利用する可能性があります。
在留邦人の脱出機に対して攻撃を手控えるから、台湾防衛に協力するなという取引を持ちかけられるかもしれません。
その時、岸田政権がどのような態度をとるか見えすぎてイヤです。

「NEOは本格的な戦闘が始まる前に行うのが望ましい。実際に戦闘が激化すれば、邦人はシェルターなどに退避して救出を待つ可能性が高い。一方、中国政府は台湾を「不可分の領土」とみなしており、日本政府も「一つの中国」を尊重するとの立場を維持している。中国政府の同意なく自衛隊を台湾に投入すれば、中国側に「日本が事態をエスカレートさせた」との口実を与えかねない」
(産経

第3に、その避難民が国内国外で10万人という空前の規模です。

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最新国防ファイル】邦人輸送救出訓練 紛争、災害、感染症…多国と

規模だけとっても、わが国にはこのような大規模な民間人避難は、かつての東日本大震災時しかありませんし、しかもその範囲が、隣接するとはいえ国外と国内にまたがった広域の救出作戦となります。

「外務省によると、令和2年10月1日時点の在台邦人数は2万4552人。在韓邦人4万500人と比べて1万6千人ほど少ない。
しかし、与那国島(沖縄県与那国町)は台湾から東にわずか110キロの距離に位置し、同島などで構成される先島諸島は台湾有事の戦域に含まれるおそれがある。その場合、自衛隊に「国民保護等派遣」を命じ、先島諸島の人口約10万人を沖縄本島や九州などに避難させることも考えられる。自衛隊にとっては台湾からのNEOとの「二正面」となり、その規模は朝鮮半島有事を大きく上回ることも想定される」
(産経前掲

第4に、自衛隊はその力の半分以上をこちらにふり向けねばならず、その場合、台湾軍・米軍との共同作戦が手薄になるかもしれません。
おそらく台湾防衛戦で日本が協力できるのは、海自護衛艦隊と空自の戦闘機部隊の周辺警備ていどに限られるかもしれません。

このように台湾からの邦人避難は、今までの事大主義外交の怠慢と欺瞞のツケを一気に払わせる事態となることでしょう。
曖昧外交はもう通用しないのです。

 

2021年12月24日 (金)

宮古・八重山に避難計画はあるのか?

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どうやら私は損な性分のようです。
安倍氏が「台湾有事は日本の有事」というしごくまともなことを宣言すれば、おおっと思うより先に、法的建て付けはあるか、そうとうの確率で戦域となるかもしれない宮古・石垣の住民避難計画はできているのか、避難も含めたロジスティックは大丈夫か、なんて舞台裏を先に考えてしまいます。
山路氏の労作を読んで、いっそううなってしまいました。

もちろん宮古島市には住民避難計画があるにはあります。
宮古島市国民保護計画【避難実施要領のパターン】(平成31年3月)PDFファイル(8059KB

ここにはこう説明があります。

「国民保護法第61条において、市町村長は避難の指示があった時は避難実施要領を定めることとされている。避難実施要領は、避難誘導に際して避難の実施に関する事項を住民に示すとともに、活動にあたる関係機関が共通の認識のもとで避難を円滑に行えるようにするために策定するものです」

つまり計画を策定する主体も、避難計画を実施する主体も、共に地方自治体に委ねられているわけです。
今回のコロナ禍でよくわかったと思いますが、地方自治体には事態の解決能力にいちじるしく欠ける自治体が少なくありません。
誰がとは申しませんが、呆れるほど無能で、勇ましいのは口先だけ。得意なのは国をつきあげてすがりつくことだけです。

この住民避難計画を策定する主体は、本来その範囲の大きさや避難民の多さからいっても宮古島市ではなく、まずもって沖縄県であるべきですが、なにをしているのやら。
保護計画には「円滑に行えるように」すると言っていますが、かんじんの具体論と演習が欠落しています。

このことについて座喜味一幸宮古島市長は、こう述べています。

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自衛隊が弾薬搬入の宮古島、市長が心配する島民保護「政治家は地に足の

「座気味氏によれば、宮古島市には有事の際の国民保護計画はあるものの、具体的な内容ではない。座喜味氏は、国民保護法に基づく、国と地方自治体が協力する避難要領の策定と国民保護共同訓練の実施が必要だと訴える。
ただ、同氏によれば、県民感情に配慮した沖縄県は武力攻撃事態を想定した訓練の主催に慎重だという。
内閣官房の国民保護ポータルサイトによれば、2005年11月の福井県での実動訓練を皮切りに、毎年十数回の図上訓練と3回程度の実動訓練がそれぞれ都道府県で実施されているが、大規模な武力攻撃事態を想定した訓練が行われたことはない。沖縄県も過去、09年1月と13年1月に図上訓練を、14年1月に実動訓練をそれぞれ主催したが、いずれも爆発や化学剤散布といったテロ事件を想定しただけだった」
(朝日globeプラス
https://globe.asahi.com/article/14491282

宮古島では、お印ていどの小規模のテロ対策演習はしても、本格的住民避難演習はしたことがないし、沖縄県は「県民感情に配慮した沖縄県は武力攻撃事態を想定した訓練の主催に慎重」、要はやるきがないようです。
国民保護法第61条の法的建て付けからいっても、 自治体が動かなければ国は動けません。
国が動けなければ自衛隊は動けないし、動けるのはせいぜい自治体が権限を持つ警察と消防、自治体職員くらいなものです。
これで5万7千人の宮古島島民が脱出できるとでも思っているのでしょうか。

ちなみに、このglobeプラスの記事を書いたのは、北朝鮮から「御用保守論客」と名指しにされ、青瓦台から出禁を食らった元ソウル特派員の牧野愛博記者です。今回もいい記事を書いています。
彼は朝日で元中国総局員の峯村健司記者と並ぶ骨のある記者で、イデオロギッシュな社風の中で二人とも足で稼ぐいい記事を書きます。

それはさておき、現実に災害と有事を問わず総合的な避難訓練もされたことはないし、その避難実施の主体となる自衛隊や警察、消防との連携も確認されていません。
したがって、台湾有事、あるいは尖閣に中国軍か進攻したという事態が発生した場合、その戦闘地域のすぐ横にある宮古・八重山地域の住民は行き場がなくなる可能性があります。
宮古島は平坦な地形で、しかも開発が進んでいるために、戦域が宮古島に及んだ場合、島民には身を隠す場所も少なく、逃げ場もほとんどありません。
また、火案の実施部隊手ある自衛隊、警察、消防の連携、そしてそれを統括すべき立場の沖縄県と宮古島市の連携、さらに国とのすり合わせがどのようになされるのか不明です。
今まで一回も予行練習すらなかったのですから、住民避難計画は絵に描いた餅、司令部に座るべき沖縄県は姿形もみえないかもしれません。

なんとなく私たちは『シン・ゴジラ』のような政府と国がたちどころに統合対策本部を立ち上げて、キリリっと対処してくれそうな気がしますが、残念ですが、当の自衛隊は戦闘の真っ最中で、予定にない住民退避活動にそれでなくても少ない警備隊の人員を割くことは不可能です。

「陸上自衛隊中部方面総監時代に国民保護共同訓練を経験した山下裕貴・千葉科学大客員教授(元陸将)は「本格的な武力攻撃事態になれば、自衛隊は全力で防衛作戦にあたるため、余力がない。早期に住民避難を行わなければ、自衛隊が協力することは困難だろう。宮古島に駐屯している陸自警備隊も、防衛出動になれば対艦ミサイルや対空ミサイル部隊を護衛するのが任務になる」と語る。
そのうえで山下さんは国民保護共同訓練について「想定している脅威の対象が小さすぎる。通信や輸送手段がなくなった前提でもやるべきだ。現地にとどまりたい市民の説得も課題になるだろう」と語る」
(globe前掲)

宮古の自衛隊の主任務は、対艦ミサイルによる対艦攻撃で、少数いる警備隊もそれを防護するのが仕事です。
ですから住民避難には、少数の隊員を割くことしかできず、主力は消防と警察になります。
しかしそれで、宮古島5万2千人、そして更に石垣島市4万7千、周辺の先島まで含めてざっと10万人の人々の安全を守りきることができるのかどうか。

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台湾有事の邦人保護 先島島民避難と二正面 与那国など戦域の恐れ

現実に起きた日本最大の離島からの大規模な住民避難についての例として、2000年の三宅島の火山噴火による全島民避難の経験があります。
奇跡とまで言われた見事な避難でした。
ただし、三宅島から東京本土まで180㎞に対して、宮古島から那覇までの距離はその倍近い300㎞です。
人口も三宅島は4千人に対して、宮古・石垣両島で約10万人と25倍です。
それでも避難完了まで4日間かかっていますから、宮古・八重山だと単純計算で100日間かかることになります。
高速で進行する近代戦において、3か月かけて住民避難させていては話になりません。

●三宅島全島避難
・平成12年7月8日 、雄山が噴火雄山が噴火。6月30日から小規模の噴火が続いていたが、この日、白い火山灰を主成分とする噴火を確認。一連の噴火では、幸い人的被害はなし。
・8月18日 、●最大規模の噴火。この日の噴火では、高さ14,000mに及ぶこの年最大規模の噴煙が観測され、島内全域に多量の火山灰が降下。また、一連の噴火活動では、大量の火山ガス(二酸化硫黄)が放出された。
・8
月29日、低温・低速の火砕流発生。三宅村現地対策本部及び東京都災害対策本部を設置。
・8月30日、小中高生、三宅村の小中高生が都立秋川高校へ避難。
・9月1日 、全島避難。全島避難が決定され、2日~4日にかけて避難が実施された。これにより、4,000人余の島民は島外での避難生活を余儀なくされることとなる。
・9月4日 、ホテルシップに災害対策本部を設置。ホテルシップ「かとれあ丸」内に新たに東京都現地災害対策本部を設置し、災害対応にあたる。
 帰島10周年までのあゆみ
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/14miyake/miyakehp/ayumisaigaitofukkounokeika.html

ちなみに当時の都知事は石原氏でしたが、あらゆる船舶を集めて避難に投入したようです。
薄志弱行のデニー知事とは雲泥の力量差がありますが、今はそれをいってもしょうがない。

もちろん自衛隊も避難計画の欠落をよく知っています。
沖縄に駐屯する自衛隊にとって沖縄戦の教訓を学ぶことは必修科目のようなものですから、かつての島を戦場とした戦いにおいて住民避難の遅れが大きな悲劇を招き、今に至る反自衛隊感情をうんでいることも熟知しています。

「自衛隊沖縄地方協力本部長の坂田裕樹陸将補は「有事の際、国民保護なしに自衛隊は作戦を実施できないだろう。国民保護は先の大戦の経験から最優先の課題だと認識しているし、自衛隊も可能な限り、これを行う必要がある」と語る」(globe前掲)

このように見てくると、住民避難計画は事実上ないか、あるいは形だけあっても実体がない書類上だけのものです。
まともな連携訓練もされていません。
ふたつめに、その原因は国民保護法が、避難計画の策定と実施主体を地方自治体にしていることです。
三つめに、離島住民の避難がは台湾有事と連動して起きる可能性が高いことです。
台湾有事となった場合、日本政府は台湾の邦人救出と、離島住民避難をダブルで実施せねばならなくなりますが、日本にはその備えがありません。
このことについては明日にふれます。

 

2021年12月23日 (木)

山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心に その4

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承前

■  離島のミサイル配備と台湾問題について ③

 ミサイル反対派の論理で良く言われるのは「基地や攻撃能力を持てば、そこが標的になるのは必然」、「むしろ戦争を誘発する」というものです。
これは前出の橋下徹氏の言わんとした「(「台湾有事は日米同盟の有事」といえば、)確実に沖縄の米軍基地が攻撃される」といった意見とよく似た誤謬を侵しています。

まず「論理の飛躍」があります。防衛のための盾や矛を備える事、習近平や中共に対して警告を発する事がイコールで米軍基地が攻撃されたり、戦争を誘発したりする事と結びつくものではありません。備えも何もしない、黙って異議も発しないで「平和的関係第一」で接する臆病な態度を取る方が逆に大変危険です。

中共は日本や米国と国交をむすび、その友好の擬態を足場として侵略を展開して来た歴史的事実を忘れてはなりません。
西側中枢との国交正常化達成を機会にして、さっそくベトナムから西沙諸島を奪取し、88年には南沙諸島の一部にも侵攻しています。2011年からはついにはフィリピンのスカボロー礁へ、南沙では巨大な軍事基地を建設するまでに至りました。
それらの侵略はすべて軍事的備えが不十分な相手のスキをつき、一方では西側有力諸国とのかりそめの友好関係を保ち、発展させる事を利用して行なわれてきました。

そうした侵略行為を実行して非難されつつあったさなか、今度は呆れた事に当時の楊潔篪外相は国連総会で「日本が1895年に尖閣諸島を盗み取った」とブチ上げます。
それがフェイクでも、他国との別の問題を創出して自国の問題行動を隠すのが中共の常套手段です。
また、最近ウイグル人へのジェノサイドを非難する米国に対し、インディアンを殺戮した米国はどうか?として問題のすり替えを試みた事と同種の意味でもあります。ですから、日本が人権非難決議を採択すれば、必ず南京事件を言うでしょう。
中共自身はフェイクであると良く分かっていて、その種の発信をします。ですが、彼らはフェイクとプロパガンダによって多くの事を成し遂げてきたのです。

ちょっと、話が逸れました。

去年だったと思いますが、中国で「空母キラー」として強力な対艦誘導弾を完成させたとするフェイクユースがありました。しかし、今回宮古島に配備されたミサイルの中には、射程の延長など改良された12式対艦誘導弾が含まれていると見られており、こちらが正真正銘の世界最高性能です。
かといって、宮古海峡を無害通行しようとする中国戦艦を狙うものではありません。
あくまで中共の侵略行動に対する備えであって、それがなければ備えとして終わります。
与那国を皮切りに宮古、石垣、奄美から本島を結んだミサイルの盾は、南西諸防衛の空白を埋めるものです。先日は北大東島議会でも自衛隊誘致を満場一致で決議しました。

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沖縄防衛で新たな「戦い方」模索 陸自と米海兵隊 (iza.ne.jp)

さらに、台湾有事が発生し戦火が離島に及んだときを想定し、陸自と米海兵隊は沖縄防衛で新たな戦い方も視野に入れています。EABO部隊(遠征前方基地作戦部隊)を創設し、日米軍共同の即応体制を充実させる目的のものです。

このような対応について、沖縄二紙や朝日などの左派新聞は「税金の遣い」とか、「軍拡競争が始まる」などと警鐘を鳴らします。ですが、圧倒的になりつつある中国の軍事膨張には滅多に非難の矛先を向けないのは不思議な事です。
中国の軍事的膨張に対してする負担を日本一国で受けるなら、それは確かに不可能でしょう。ですが、米英豪を始め日本やインド、欧州諸国が一致してこれに当たることで各国の負担は軽減されるし、これからの中共の膨張に対応する余地も深くなります。
中共は当然そうした国家間のきずなを切り離しにかかる構えを取ります。そこがまさに岸田政権の不安なところで、いまだに訪米の日程すら決まっていない事がとても心配です。

また、中共は国家間だけでなく、国内問題にも手を入れて来ています。その意味で台湾において、米国産豚肉の輸入制限発動が住民投票で否決された事は僥倖でした。
蔡英文総統は日本の福島産など5県産食品の早期輸入解禁にも前向きな姿勢です。その視野にあるのはTPP加入ですが、肝心な事は対中国を睨んだ国家間の紐帯を維持発展する目的に資する事は言うまでもありません。
                                                                                                                                (了)

                      文責 山路 敬介

2021年12月22日 (水)

山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心に その3

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承前

■ 離島のミサイル配備と台湾問題について ①(ここからが本題です)

 12/1安倍晋三元総理は台湾のオンラインイベントに参加して、「台湾有事、それは日本の有事だ。すなわち、日米同盟の有事でもある」と言いました。しごく真っ当な見解です。
15分あまりの全発言を聞くと、それが武力侵攻しかねない習や中共を強くけん制する目的であった事が良く分かります。のみならず、岸田政権にきびしくカツを入れるつもりもあったのだろうと思いました。

中国側の反応は「誰であろうと、頭が割れて血が流れる」だの、「火だるまになって焼け死ぬ」などとなかなか豊富な語彙で楽しませてくれましたが、さも安倍元総理が台湾独立派ででもあるような詭弁論法まで用い、下品なだけでなく論理性も理性も欠けた内容のない反撃でした。

こうした場合、「中国に寄り添う立場から、日本人にどういう反応や考え方を持って接して欲しいと中共は期待するか?」を手軽に知るための恰好の逸材として、私は橋下徹氏の発言を珍重しています。
どうせ安倍発言を全部聞いていないだろう橋下氏は「台湾有事が日本の有事、日米同盟の有事だって事になると、確実に沖縄の米軍基地が攻撃されるんですよ」と言っています。また「それでもいいのか?という議論が必要だ」とも言います。ここには彼のいつもの発言通り無知なだけでなく論理の飛躍も見られます。

中国の台湾侵攻があった場合の、日米いくつかのシュミレーションを見た事があります。
そのほとんどの場合、程度の差こそあれ私たちの先島諸島が巻き込まれる可能性が示されています。防衛に関する事だからと、日米軍事関係者とも大事をとったオーバーをいうのだろうと考えていました。けれど、ショックだったのは、文系若手の米中関係研究の第一人者である東大の佐橋亮氏ですら、テレビでも著書「米中対立」の中でも台湾有事の際の先島諸島の危険性を述べているのです。
そうだとするなら、問題はとうに「台湾有事=日本の有事」である事に違いありません。

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国会ウォッチャー on Twitter: "#安倍晋三 元首相「台湾有事

さらに、日本の施政権下である先島に影響がおよぶなら、自然に自衛隊の任務が発動され、よって「日米同盟の有事」という事に発展するでしょう。
だからこそ安倍晋三元総理は中国の台湾侵攻を念頭に、現状変更の試みを続ければ「非常に高い代償を払う事を知らしめる必要がある」とし、「台湾有事は日本の有事、すなわち日米同盟の有事でもある」に続けて、わざわざ習を名指しして「北京の人々、とりわけ習主席は断じてこれを見誤るべきではない」と警告したのです。

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台湾有事の邦人保護 先島島民避難と二正面 与那国など戦域の恐れ

この件でさすがの発信力を発揮したのは、やはり広報本部長の河野太郎氏でした。
記者会見で上海テレビの記者が「安倍氏の発言で、また日中関係が厳しくなっている」などとし、「自民党としてどう対応するのか?」と、まるで党の責任問題として扱うべきといった、いかにも居丈高な質問が出されました。

河野氏はこのように明解に言い切りました。

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安倍氏「台湾有事は日本有事」発言、河野氏「当然の懸念」と同調 中国

「安倍氏の発言は何も特別な事ではなく、我々の当然の懸念だ」とし、「中国はここ30年間、防衛目的でない軍事力を増やしており、30年間で42倍になっている。日本に到達しうるミサイルを多数配備している。中国の戦闘機は台湾の空域に頻繁に侵入している。多くの人々が中国による台湾への武力行使を懸念している。
中国が台湾に武力を行使すれば、好むと好まざるとによらず、日本は影響を受ける。その状況に備えておかなければならない。したがって安倍氏の発言は我々の当然の懸念で、米国やクアッド(日米豪印)やOUKUS(豪英米)といった国々と協調する必要がある。欧州からもかなりの国が海軍部隊を南シナ海、東シナ海に派遣しており、台湾海峡の状況を懸念している。
(中国は)武力による現状変更の試みを続ける事はできないし、もしそれをするようであれば、非常に高い代償を払う事を中国に知らしめる必要がある。何もおかしな事ではない。中国は尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返しており、これは両国関係の改善に寄与しない。彼らは自身が何をしているか理解する必要があるし、我々は国際法に違反したり、現状変更を試みたりする中国の活動を見逃さないだろう」

しかし、ほとんどのメディアでは取り上げられていませんが。
こうした安倍氏や河野発言に平仄を合わせように、12/3ブリンケン国務長官が記者会見でほぼ同内容で中国への警告を述べています。
「中国がここ数年、軍事的な挑発や圧力によって現状変更を試みている」とし、「端的にいうと台湾有事は中国にとって、破滅的な決断となるだろう」、「(中国による台湾侵攻は)中国人のみならず、多くの人命にかかわる恐ろしい結果をもたらす」として中国をけん制。また、「台湾に断固とした関与をし続ける」と結んでいます。

■離島のミサイル配備と台湾問題について②

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速報】誘導弾搭載とみられる海上自衛隊輸送艦が平良港着岸

海上自衛隊の輸送艦「しもきた」が宮古島市の平良港に着岸しました。私はモノ好きなので、前日から反対運動員などの数をカウントしつつ当日も夜明け前から付近で見物していました。

 11/14朝7:30頃、クルーズ船を見慣れている私の目にも「しもきた」はとても大きく見え、近づくとビルにして10階建てはありそうな威容に感じられました。

反対派の運動員(市民ともいう)は新聞などの公式発表で13日が60名、14日が40名~50名となっていたようですが、港と目的地の保良弾薬庫も回り総じて20~30名といったところだったと思います。
宮古で必ず参加しているおなじみの15名程を除くと、本島からの参加者が10名程度といったところでしょうか。とてもサッパリした抗議運動でした。
県警本部からの応援が12、3名で、届け出予定数が公式発表とイコールなら合う数だったと思います。
いつものように記者やカメラマンの到着を待って、ダイイン(寝転がって抵抗する態様)から警察官によって排除されるまでの報道用の絵が取れたら一区切りです。
このようなわずかな違和をのぞけば、他は整然・粛々と運搬業務が滞りなく完了しています。

デニー知事は「今回の搬入に際して自衛隊は、地元宮古島市と協議、事前に情報を共有しながら搬入の準備を進めたものと承知している」と問題にしない姿勢をあきらかにしていまたが、後日記者団から「弾薬搬入を容認した発言だ!」と突っ込まれ、「容認はしていない」などとして「分かりにくさは否めなかった」と反省の弁を言わされています。

宮古島市の座喜味市長はそもそも自衛隊誘致賛成派だし、デニー知事もかつては自衛隊協力会に在籍していただけあって、その本音がのぞいていると言って良いでしょう。
それにしても「(知事の)支持層配備反対 不信払う」と大きく紙面に出されてしまい、いつも繰り出される沖縄二紙の左派同調圧力のかけ方には辟易とします。

当地の宮古島紙の新聞は翌日には一行の記事もなく、盛り上がりの欠けた抗議活動への関心の低さを物語るようでした。
ただ、11/17になって逆に「弾薬搬入は当然」とする宮古島市防衛議員連盟の見解が載せられています。(宮古毎日)
連盟の粟国会長は、「すでに市民の理解は得られている。弾薬搬入は当たり前の事」と述べ、「今の台湾海峡などの今の状況を見れば、自分の国は自分で守るという観点から、弾薬搬入は必須で当然」と強調していました。
二紙と違ってその後の後追いはなく、地元ではミサイル等の弾薬搬入が大きなトピックとはならなかった事を証明しています。

                                                                                                                                 (次回完結)

 

2021年12月21日 (火)

山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心に その2

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承前

■ 自民党復党を願いながら、共産党候補の当選に寄与する下地幹郎の怪
 
毎週土曜の夕方、下地氏は沖ラジの番組(FM那覇だったか?)を持っています。たまたま出先でこれが聞こえてきますと、私なんかは悪寒さえしてきます。やれ、どこの小学校は私が立て替えさせたとか、どこそこの病院は私が誘致したとか、昭和40年代の金権政治家でも言わないような自慢話とも戯言ともつかない厚顔無恥な政治宣伝のオンパレードです。

下地氏は中国企業から違法に金員を受領し、維新の会を除名されています。
維新の会に除名処分撤回願いを提出しますが叶わず、今度は自民党に復党願いを出しました。目的は本人がいうように一区の自民党公認権を得るためだけなので、復党を認めない自民党の判断は正しいものでした。

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自民党県連、下地幹郎氏の復党認めず - 宮古新報ニュースコム

國場組の國場幸一会長が音頭をとって「保守合同の会」というのが出来ましたが、この場合の「合同されるべき保守」とは、いったい自民党と他に何を指すのか?、当初の私には分かりづらいものでした。下地氏に近いスジからは「やがて知事選に向かって、オール沖縄内の故翁長シンパにも呼びかける」という説明を受けた事もありました。けれど、そのような目標は初めからなかったのです。
沖縄自民党が下地氏との面談さえ拒否し、下地復党の目が消えて無くなると、あえなく選挙戦を前にして「保守合同の会」は解散してしまった事からもあきらかです。
 
そもそも復党を願いながら今回も再び一区で立候補するなど、勘違いも甚だしい行為でした。それでも自民党公認國場幸之助に肉薄する上積み票が結果として得られたならまだしも、逆に前回より5000票も減らして國場とダブルスコアに等しい票差が開いてしまい、メンツも立場も丸つぶれです。

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対して國場は今回選挙で大健闘したと言えます。
女性問題や観光客との暴力沙汰などスキャンダルを乗り越え、前回票を伸ばしています。
今回は実家の國場組会長が下地幹郎側につくなど、逆風ばかりの選挙戦でした。
見ればわかるように、親離れもし、激しい選挙戦のすえの最近の國場は修羅場を乗り越えた男の顔つきになっています。

目下の國場は比例で復活するのが習いになっている状況であり、下地幹郎は「比例復活議員は二回連続救済まで」とする自民党の基本ルールに目をつけたに違いありません。
ただ、その内容を見れば一目瞭然。赤嶺61519票に対して国場が54532票、下地幹郎が29827票と下地氏の出馬がなければ保守票が割れず、赤嶺の当選はなかったのです。

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深掘り】沖縄1区「保守合同」は衆院選後? 下地氏の自民復党に

この状況は前回選挙でも同様でした。つまり自民党から見れば下地幹郎は赤嶺当選の最大の功労者で、保守として確実に得られるはずの議席は盗まれたも同然でした。
にもかかわらず自民党が國場を「比例復活二回連続までルール」を適用して排し、代わりに國場の小選挙区当選を阻んだ下地幹郎を復党させ、さらに一区の公認候補とする事など初めからあり得ない絵空事でした。

今回選挙では自民党票がオール沖縄票を2014年以来、初めて上回りました。
きたる知事選に意欲を示す佐喜眞淳氏はインタビューに答えて、「保守陣営の一本化が大事」と述べています。自民党では他にもオール沖縄からくら替えした赤嶺昇氏や、安里繁信氏の名前があがっています。
下地幹郎は「今後も国政をうかがう」とし、「保守合同の理念は捨てない」としつつも、知事選出馬を明確に否定しています。
知事選における現職再選率は全国的に80%を超えますが、事実上の「一騎うち」となれば、今回は自民党候補に有利にはこぶ展開が十分あり得ます。

■ デニー知事の設計変更「不承認処分」に怒るオール沖縄の不思議

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辺野古の新基地「必要な調査されていない」沖縄のデニー知事

 12/15高裁那覇支部において、県側が控訴していた抗告訴訟が却下されました。
最高裁でも同様の判断が下される見込みが大で、この訴訟は沖縄県が勘違いしてきた許可権者としての「県の立場」を確定されたものとして、今後の変更不承認に関係する訴訟に大きな影響をもたらすものになります。

 さて、昨年4月に防衛局が提出した例の軟弱地盤と言われる地点を含む設計変更届について、県側がようやく不承認処分を下しました。
このことにショックを受けたのは防衛局でも沖縄自民党でもなく、なんと与党オール沖縄側の幹部たちでした。
沖縄タイムス紙によれば、彼らは「知事から何の相談もなく、報道によって知らされたような塩梅だった」と言っています。「オール沖縄の根幹にかかわる話」、「来年、知事選を控える知事が、与党と溝をつくるようでは話にならない」、「(議会の)空転も辞さない。しっかり説明をしてもらう」として、相当なおかんむり状態です。

オール沖縄側にとっては、今回の不承認が行政権・法的にも「最後のカードだ」との理解があって、来年の知事選前くらいまで引っ張って利用するつもりで企図していたものと思われます。
工事自体は着々と進んでいるので、防衛局側には焦っている感じはなかったものの、県側が「承認も不承認もしない」という情況が長く続く事が実はいちばん困ります。
県の不作為に対してする防衛局側からの訴訟であれば、行政上の新たな問題が加わり、そこは別の訴訟として進めざるを得ない状況も出てきたのではないか。
そうなれば、最終決着までの時間がかさんで回り道になる可能性もありました。
それも防衛局は覚悟していたにしろ、ですから防衛局としては「勿怪の幸い」というオチだったでしょう。

前にも申したとおり、オール沖縄側と言えども最終的に「辺野古移設を阻止できる」と考える議員さんはまず居りません。ですが、訴訟をつうじて問題を引き延ばし、政治的な情況を作るために利用したり、己が選挙に役立つようにコントロールする事は可能です。
辺野古問題とはつまるところ、今やそのような価値でしかないのです。

デニー知事は故翁長氏のようなスレっからしではなく、狡知に長けた人物でもありません。場面を創出する事も出来ません。知事は彼らとは本来的にケミストリーが合わないのかも知れません。
オール沖縄幹部らの「与党と相談せよ」との言い分もわかりますが、行政側としても限度というものがあります。相談すれば与党の政治的都合に振り回されるだけです。
県庁とすれば「承認」であれ「不承認」であれ、行政機関である以上、常識的な期間内に処分を下すのが義務です。

新聞ではまた、「沖振法の審議を前にして「不承認」がこのタイミングでは不適切だ」として知事の非を鳴らす論調もありましたが、これは逆でしょう。
沖振法改正への影響をかんがみるからこそ、決定を先送りにしない知事の判断があったと言えます。

                                                                                                                  (続く)

 

 

2021年12月20日 (月)

山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心にその1

     291   

                               沖縄三題
                                                    ~ 宮古島市ミサイル配備報道を中心に~
                                                                                       山路敬介

 去る11/14、宮古島市保良弾薬庫などに予定のミサイル類が無事に搬入されました。
多くの報道によって、ごく少数の反対派の行動や主張ばかりが大きく取り上げられましたが、実際の現場では混乱もなく、整然かつ粛々と特段の問題もなく完了した、と言う方が事実に近いです。

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宮古陸自が弾薬を搬入 – QAB NEWS Headli

私がこのブログを知った東北大震災後の放射能騒動のころ、世間の関心事は震災復興と原発問題一色でした。くわえて防衛観念にきわめて淡泊な民主党政権だったせいもあり、離島防衛そのものにも、その戦略的価値にも政府はまるで無関心でした。
当時の台湾ではひまわり革命がまだ起きていず、国民党政権の台湾は早晩中国に飲み込まれるだろうと考えられる状況でした。現在と政治状況こそ逆ですが、そうなれば先島諸島が対中国の最前線に立たされるのは同じ事です。

本土の関与の少なさを嘆きつつ、心細く、辺境で疎外された者の僻みらしい感傷もありました。それよりも大分さかのぼりますと、これは大した運動にはなりませんでしたが、伊良部島の下地島空港に普天間代替基地を誘致しようとした試みもあり、同じ心境からのものもだったと思います。
その下地島空港がまた、中国人富裕層専門の施設となるのでは?との噂がたち、実際に見分に来た中国人の一団を警戒したレポート記事が地元の宮古毎日新聞に載ったりしていました。

その後、第二次安倍政権が発足してすぐの頃、当時の石破幹事長が来島して安倍政権のめざす「国益と外交」をテーマに講演をしてくれました。当時の私はすでに石破氏の防衛相時代からの媚中姿勢に疑念を抱いていたものの、その石破氏の具体性のない総花的な話の中にも、安倍新政府の関与の方向性には非常な明るさを感じた覚えがあります。

今は自衛隊基地が出来、島の安全と平和を守る確固たる決意と信念が国家によって示されたと感じています。打ち続く中国の軍事膨張は私たちにとって真の脅威であり、今回のミサイル配備は適時の強固な盾となるにちがいありません。

にもかかわらず、沖縄県の政治情勢はいまだ混沌として自分たちの足元も見えないままです。未だに「辺野古新基地反対」を旗印にした選挙を戦おうとするオール沖縄側の蒙昧で空疎な姿を見れば、また、中共の多種多様な手練手管の他国政治中枢への関与の実例から見ても、様々に困難な政治状況のもといが中共のスパイ的関与にでもあるのだろう、と憶測する者がいても不思議ではないレベルだと思います。

今回はミサイル搬入の顛末と意義を中心にして、その前に沖縄県の政治状況の不思議な暗部である2、3の事柄を最初に述べたいと思います。

■ 衆議院沖縄3区、屋良朝博はなぜ敗れたか?

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沖縄3区、島尻さんが奪還 「子どもたちの未来のために」信念貫く  

 注目の辺野古基地を擁する沖縄3区では島尻安伊子氏が屋良朝博氏をやぶり、衆議院初当選を果たしました。票差は七千票あまりでしたが、屋良氏は比例復活もならず落選しています。2019年の補選では実績のある島尻が、沖縄タイムス紙の論説委員だった新人の屋良に軽く二万票の差をつけられて敗退していたので、屋良の敗因について、衝撃を受けたオール沖縄内では様々に意見が出ていました。

けれど、その分析の解は、選挙数日後の11/2に出た沖縄タイムス紙の論評に象徴的に決定づけられたように思います。
記事の結論を要約すれば、「辺野古新基地建設の是非が争点化されなかった事が決定的な敗因」という総括になってしまっています。たしかに屋良氏は選挙戦当初は「辺野古反対」を声高にさけぶ事はせず、終盤になって陣営が苦戦を認識してのち「辺野古新基地阻止」を強く打ち出す方向に主張が先鋭化しています。

しかし、これは明らかにヘンです。
オール沖縄内には以前から「辺野古反対一辺倒の主張に拘泥しない事。争点や主張を辺野古に集中させれば支持層がうすまり、結果的に党の永続性が危うくなる」といった意見を持っている議員が結構あって、それは元保守派だけでなく古参の革新系の中にも存在しています。
同様の認識に立ったから屋良氏は選挙戦終盤に至るまで戦略として「辺野古阻止」を言わなかったのであり、かつ「辺野古反対」を全面に出す事で「若者の支持者離れを起こす可能性」(屋良選対幹部)を危惧したからでした。
また、金秀グループの呉屋氏が何と言ってオール沖縄から自民党支持へくら替えしたか?「「基地反対」のテーマだけでは沖縄の未来は開けない」としてオール沖縄を見限っていったのです。

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玉城デニー知事再選へ暗雲…オール沖縄から有力企業「金秀」離脱の背

いまさら言うまでもありませんが、オール沖縄側の政治家だって全くの馬鹿ではありませんから、「辺野古阻止」など自分たちの力では金輪際出来ない事は承知しています。
出来るとすれば、本土国民の総意が税金の使い道に目覚めるとか、そういう以外にありません。それにしたって、普天間の危険性の除去を心からのぞむ日本人の良心的賛意を容易に覆せるものではありません。

にもかかわらず、そのような無意味な主張をオール沖縄側が安易に繰り返すのは、かつて単一論点選挙に持ち込んだ成功体験を懐古するからで、そのために無理にでもアジェンダセッティングをし直したいからです。
(アジェンダセッテイングとは、もともとの概念がマスコミ理論から発したもの。私たちは本来的に他人に何が良いとか、何が悪いとか思わせる事は出来ません。しかし、議題を設定する事で、どう見るか?どう思うか?をある程度コントロールする事が出来ます。テレビや新聞など一方向性の媒体では常識の光景ですが、政治的な実例として最たるものが、誘導性を増し、さらに選択肢を意図的に狭めて行なわれた「辺野古賛成」、あるいは「反対」の県民投票でした。)

そして、来年1月の名護市長選オール沖縄側の候補者岸本洋平氏の主張の変化には、沖縄二紙など最左派的主張の動向、屋良敗因の状況分析の成果が顕著にあらわれています。
岸本の主張は「埋め立て、新基地建設は絶対阻止」だとか、「建設は技術的に困難」など、一首長として出来もしない、あるいは事実誤認にみちた主張や公約に彩られる事となりました。

12/4に辺野古を訪れた菅前総理は「辺野古移設は名護市長選の争点ではない」と喝破しています。渡具知市長は稲嶺前市長を破った前回選挙もそうでしたが、辺野古問題には距離を取っています。
意味のない運動体的主張に与する事をよしとせず、辺野古問題に注力したことで乱れた前市政を正して子育て環境や市民福祉の充実などに一定の実績を上げてきました。
名護市民が最終的にどういう判断を下すのか分かりませんが、今のところ渡具知氏支持は安定的に推移していると聞きます。

                                                                                                                                                                     (続く)

 

2021年12月19日 (日)

日曜写真館 冬の沼ひかりたきときひかりけり

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湖風を真正面の黒手套 山田弘子 

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青鷺の子っ子に翔べと湖の風 高澤良一

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破蓮やたたら踏みくる湖の風 青木青嵐

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湖の風さびしくなりし一位の実 杉山岳陽

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湖風の冬芽封書のかたさ持つ 岩淵喜代子

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湖風のもてあそびをる蛇の衣 太田嗟 

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やはらかき風は扇か湖風か/藤井寿江子

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秋の雲湖水の上を渡りけり 正岡子規

2021年12月18日 (土)

「沖縄に核ミサイル配備予定」は煽りです

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デニー知事が意味不明なことを言っています。
「米中関係の問題を米連邦議会に報告、提言している「米中経済安全保障調査委員会」が、在沖米軍基地に中国が先制核攻撃をする可能性に言及した。その上でインド太平洋地域や欧州の同盟国・友好国に米軍の中距離弾道ミサイル配備を受け入れる意向がないか探るよう米議会に求めた。 
玉城デニー知事は「米中対立の激化で沖縄が攻撃目標になるような事態は絶対にあってはならない」と反発した。
しかし米国は既に沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に中距離弾道ミサイルを配備するための予算を計上するなど配備計画を進める姿勢だ。
 仮に核ミサイルを撃ち合えば、沖縄のような小さな島は壊滅状態になる。そのような事態を避けるために、米中はじめ日本も、紛争の火種を取り除き、衝突を回避する外交努力に徹するべきだ。核兵器を増産し合う軍拡競争に陥ってはいけない。(略)
 敵基地攻撃能力論は、核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイルを米国が日本に配備する計画と親和性が強いその計画を呼び込むための地ならしにも映る。日米で計画を進め、沖縄に配備されることになれば、沖縄は日本復帰前のように核戦争の最前線にされる。
 沖縄戦時の沖縄のように再び「捨て石」にされてはならない。いざ有事が起きれば今度は核兵器である。犠牲は沖縄戦の比ではないはずだ。日本は敵基地攻撃能力を持たなくてもいい関係を中国や北朝鮮と築くべきだ」
(琉球新報2021年12月12日)
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1438156.html
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琉新の報道は主観と情報が混在していますので、整理すると
①米国連邦議会で、中国が在沖米軍基地に先制核攻撃をする可能性を示唆した。
②米国は第1列島線に核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを配備する予定で、沖縄もその候補地だ。
③核兵器を増産し、核ミサイルを撃ち合うことになり、沖縄は壊滅する。
④敵基地攻撃能力とは核ミサイル配備計画と「親和性」が高いから反対だ。
まず①ですが、中国が核兵器の先制使用を言った事実はありません。
それをほのめかしたのは、近隣国を威嚇するために中国共産党下部組織が言った無責任な放言にすぎません。
核兵器の先制使用ほど危険な概念はなく、それは現在米中露の核のルールであるはずの相互確証破壊(MAD)の大枠から離れることを意味するからです。
相互破壊確証原理は、相互に先制攻撃をしないことで核戦争を抑止するドクトリンです。
この原則から逸脱すれば、中国は常にいつ飛来するか判らない米国の核ミサイルに怯えなくてはならなくなります。
ですから中国が核兵器の先制使用を言いだすと、外交比例の原則から米国もまた核の先制使用に踏み込まざるをえなくなるからです。
つまリ核の全面戦争の危機が日常化することになりかねません。

また米国は、既に50年以上も前に核戦略とそのための核武装を完成させてしまった核大国です。
それに対して中国はまだ核保有国としては中学生レベルにすぎません。
だからこそいかなる核軍縮にも応ぜず、ひとり核軍拡に邁進しているわけす。
こんな能力差がある中で、核の全面戦争をしてしまえば、どちらが有利なのか中国の立場になればわかりそうなものです。

デニー氏は「核兵器を増産し合う軍拡競争に陥ってはいけない」などと言っていますが、核軍拡など起きていません。
米露は核軍縮を継続していますが、この第2次戦略兵器削減条約(START II)への参加を拒み、中距離弾道ミサイルに核弾頭を搭載して、あまつさえその照準を日本に向けている国があります。
それが中国です。
下図をみればお分かりのように、中国(最上部の薄緑線)は2010年からの10年間一個の核弾頭の削減も行っていないに対して、米露(米国青線、ロシア赤線)は削減し続けてきました。
デニーさん、核軍拡を世界で唯一進めている国を批判しなさい。
言う方向が間違っています。
※関連記事『中国は新戦略兵器削減条約に参加しろ』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-6084ae.html
次に②ですが、米国が核搭載可能な中距離ミサイルを沖縄に配備しようとしている、というのは悪質なデマです。
なんですか、この「搭載可能」という珍妙な表現は、技術的には「可能」という意味なのでしょうか。
こういうあいまいな表現でごまかしています。実にタチが悪い。
④の敵基地攻撃能力の議論と核ミサイル配備を、「親和性が高い」という曖昧な言葉で接着するのも同じ手法です。
こういう「可能」とか「親和性」でつなげればなんでも接着できます。
極小型の核爆弾は公用車のトランクにも乗りますが、ならば知事公用車は「核搭載可能車両」なのでしょうか。
こういう論証を飛び越えて感覚で無関係な結論に導くやり方を、妄想と呼びます。
感覚で連想ゲームをしているようなものですから、ある意味で無敵です。

事実として、米国には沖縄へ核配備する予定はありません。
したがって、デニー氏が言うような、「核ミサイルを撃ち合う事態」にはなりようがありません。
INF条約の破棄によって、米軍が中距離ミサイルを装備することが可能になったことは事実ですが、配備予定の中距離弾道ミサイルは核搭載能力を持ちません。
弾道ミサイルに詳しいJSF氏によれば
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20211217-00272922(一部編集)

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対中国での前線である同盟国の日本に近い将来に配備される可能性のある、アメリカ軍が新たに計画している中距離ミサイルおよび短距離ミサイルは以下の通りです。(※ATACMSは既に沖縄に配備済み)
●アメリカ海兵隊の攻撃用ミサイル
    ・ATACMS・・・射程300kmの短距離弾道弾(対地)    ・・・石垣・宮古から尖閣諸島(上陸した敵部隊)を対地攻撃・沖縄に配備済み
     ・PrSM・・・射程500kmの短距離弾道弾(対地)        ・・・沖縄本島から尖閣諸島(上陸した敵部隊)を対地攻撃 ・沖縄配備確実
     ・NMESIS・・・射程200~500kmの巡航ミサイル(対艦)・尖閣周辺(敵艦隊)を対艦攻撃・海兵沿岸連隊の主力装備で沖縄配備確実
     ・トマホーク・・・射程1000~1800kmの巡航ミサイル(対地・対艦)
                     
 ・ ・・九州から中国(航空基地)を対地攻撃・沖縄本島から中国(航空基地)を対地攻撃

●アメリカ陸軍の攻撃用ミサイル
・ATACMS・・・射程300kmの短距離弾道弾(対地)
・PrSM・・・射程500kmの短距離弾道弾(対地)
・MRC・・・トマホークおよびSM-6弾道弾型(対地・対艦)
LRHW・・・射程2775kmの極超音速滑空ミサイル(対地)・沖縄配備予定なし

アメリカ軍の新しい中距離ミサイルが沖縄に配備されるとすれば、海兵隊の地上配備型トマホークが該当します。そして沖縄本島に配備されたトマホーク巡航ミサイルは尖閣諸島を巡る戦いでも投入可能ですが、台湾有事で沖縄から直接攻撃する能力があるということも意味します。

このように米軍の中距離弾道ミサイルやトマホークは、あくまでも中国が先制核攻撃という暴挙に踏み切らないために配備されるのであって、その逆ではありません。
ましてや沖縄に核搭載弾道ミサイルを配備する予定などはまったくありません。

 

■あの忌まわしい「田中事件」から承認制に移って、ご迷惑をおかけしています。
もうそろそろ通常の形に戻そうとしたところ、また「K防疫」記事に荒しが入りました。
私は韓国を揶揄してよろこぶ「人間のクズ」だそうです。その証拠に「ムン閣下」と書いているというわけです。
ため息が出ます。どこをどう読んだらそう読めるのか。
こういう手合いに何を言っても無駄なことは「田中事件」でよく分かっています。
とはいえ、「人間のクズ」呼ばわりされたのは生まれて始めてです。
というわけで、残念ですが、もう少し承認制を続けます。
                                                                  ブログ主

 

2021年12月17日 (金)

ユン候補のあまりにまともな政策骨子

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こうも常識的なことを言う韓国大統領候補が出たのは、ひさしぶりなような気がします。
ややオーバーな言い方をお許し願えれば、砂漠で水を持つ人に出会ったとでもいうのでしょうか。
実に12年間も渇ききった韓国砂漠を見させられてきた私にとって、やっとまともに対話可能な相手を見つけたような感慨があります。
ああいかん、突き放して見なけりゃ。
去る11月12日、野党第1党「国民の力」の次期大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル) 氏がソウルの外信記者クラブで外交・安保政策を発表しました。

彼の人となりより先に、さっそくユン候補の政策を見ていきましょう。
ユン候補の主要な骨子は以下の通りです。


① 米韓同盟を強化すると同時に、米国が構築する「クワッド」、「ファイブ・アイズ」情報共同体と協調する。
② 「主従関係」に陥った南北関係を正常化し、ミサイル防衛システムを構築して北朝鮮の核無力化を目指す国際協調体制を強化する。
③ 韓日関係は1998年に金大中・小渕恵三両首脳が発表した21世紀の新しい韓日パートナーシップ共同宣言を生かして自由民主の価値を共有する。
④ 韓中関係は相互尊重の対等な関係とし、3不路線(THAADミサイル追加配備不可、韓日米軍事同盟不可、米国MD体制参加不可)を撤廃する。

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韓国大統領選、前検事総長はなぜ立候補したか | 韓国・北朝鮮 | 東洋

おどろくほど常識的、かつ合理的です。
まず③に、すべての政策の基本に「自由と民主主義の価値を共有する」という立場が注目されます。
韓国はパククネ、ムンジェインの2代12年の長きに渡って、「自由・人権・法の支配」という民主主義国家の根幹的価値観を破壊し続けてきました。
その結果、ユン候補がいうように、北への過剰な親和と、中国への露骨なすり寄り、日韓関係を破壊する行為が常態化しました。

特に②の北との関係を「主従関係」と切って捨てたのは、今までの北の顔色をうかがい続けたムン政権からの大きな転換です。
具体的には、南北統一を北の非核化と一体化してしまったムン政権に対して、北の核武装を止めることは国際問題として対応していかねばならないのだ、という基本姿勢を明確にしています。

実は今、韓国は中国支配圏に転落する崖っぷちにいると見られています。
ムン政権が、今盛んに言っている「朝鮮戦争終戦宣言」のほんとうの意味は、終戦宣言をすれば国連軍は無用のものとして解体せねばならず、その下に位置づけられている在韓米軍もいらなくなるという流れを意味していました。
これは北の「朝鮮半島からのすべての外国軍の撤退」の要求と平仄があっていました。

これが実行された場合、韓国は完全に自由主義圏から脱落し、北と高麗連邦を作るか、中国の勢力圏に組み込まれることになります。 
中国は国境を接する高麗連邦など容認しませんから、自動的にそれは中国の属国になることを宿命づけられます。
具体的な外交方針として、中国への隷従を誓った「三不一限」を廃棄すると言ったことは注目に値します。
GSOMIAを対日カードで使うようなムン政権から、元々あった韓国の立ち位置である日米韓三カ国連携に復帰するとしています。

やれやれやっと自由民主国家連合の一員としての自覚を持つ大統領候補が生まれたのかとしみじみします。
いままでは日本憎悪のためにすべてが歪み、反日をバネにして自由主義国家であることすら捨て去ろうとしていましたからね。

三カ国連携の先にあるのはクアッドですが、国際社会からここまで信頼をなくした韓国がそのまま加盟できるとは思えませんが、まずは三カ国連携をしっかり行いながらクアッド諸国からの信頼を回復することです。
いままでのような米中のバランサーを気取って、肝心の北からは相手にもされない愚かしい真似を止め、どちらの陣営に属して戦うのか、韓国は民主国家なのか、中国従属志願国なのかを明確にする時期でした。

このユン候補を大多数の国民は好意的に受け止めているようです。
現在のユン候補の支持率は直近の韓国社会世論研究所(KSOI)の行った調査で45.6%であり、政権与党「共に民主党」の李在明候補の支持率は32.4%でした。
別な数字ではユン候補が50.2%、イ候補が36.0%という調査結果もあります。
まだ3か月もありますから、なんとも言えませんが、韓国国民の良識を信頼したいところです。
私としては、別に親日的になどならなくてけっこうですから、普通の国家間関係に戻りたいものです。

 

2021年12月16日 (木)

得意の絶頂から転げ落ちた韓国「K防疫」

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韓国の感染状況ですが、なんともひどい状況になったものです。
韓国の中央防疫対策本部の発表で、2021年12月11日現在、韓国国内の新型コロナウイルス感染者数は前日午前0時の時点から6977人増え、累計51万538人になったそうです。

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1日当たりの新規感染者数は前日(7022人)より45人少ないが、8日以降、7000人前後で推移しています。
死者は80人で、過去最多を更新。重篤・重症患者は856人となり、過去2番目の多さです。
人口比にすると日本ならば1日1万5000人を超えて新規感染者がでている状況となるわけです。
状況が深刻なのは、単に感染者が増えていることだけでなく、重体率と致死率が上がっていることです。

ここまで重体率と致死率が上がっているということは、医療崩壊しているということです。
ムン政権寄りのハンギョレまでもがこんな記事を出しているようですから、よほど状況は深刻のようです。

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ハンギョレ 

「119に電話してくる人たちは、すごく攻撃的で怒っているんです。理由を聞いてみると、数時間我慢して保健所の『病院を調べている』という言葉を信じていたけれど、それが1日たち、2日がたったら受け入れるわけにいかないでしょう。国民の立場からすれば、政府の指針で病院を手配する段階が崩壊しているんです。信頼を失ったということです。今はこの信頼が失われたことが最大の問題です」(京畿道西部地域の消防救急隊員Bさん)(略)
病床不足で患者の搬送システムは文字通り崩れている。病室が足りないため病院では患者を受け入れられず、患者を搬送する救急隊員は病院を探して道路で時間をむだにし、結局患者を再び家に戻すという状況だ。首都圏から光州(クァンジュ)や慶尚北道の栄州(ヨンジュ)まで患者を搬送したケースもあるが、それでも病室を見つけることができれば運がいい方だ。
Bさんは「最近の患者激増の前には、保健所が手配するのに3~4時間かかったとしても、地域が遠くても病院は手配できた。でも、今は3~4日かかることもある。患者が我慢できないのは当然の状況」と述べた。京畿道の別の救急隊員のCさんも「以前は病院に待ち時間を聞くことができた。だが今はそれさえも確認が不可能だ」と語った 」(ハンギョレ12月15日)
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/42002.html

感染者が集中しているソウルなどの首都圏では、重症者向けの病床の使用率が80%を超えていると報じられています。
わが国のピーク時を上回る凄惨さで、気の毒としかいいようがありませんが、わが国にできることはワクチン提供くらいでしょうが、それすら拒絶されるのではないでしょうか。
当然のことながら、制限解除は中止です。遅すぎたくらいです。

なぜこのような再拡大をしたのか疑問に思われて来ましたが、どうやらワクチンに原因があるのは確かなようです。

「中央防疫対策本部(防対本)のクォン・ジュヌク第2副本部長は同日、「デルタ株の場合、(感染者1人が感染する人数の)基本再生産数が5であるため、接種の完了率が85%になれば集団免疫は80%に達し、理論的にはマスクや集合禁止、営業制限なしでも克服できる」と説明した。
同日0時現在で1回目の接種を終えた人は対象者の78.3%、接種を完了した人は61.6%に上る。 現在12~17歳と妊婦、未接種者接種などが続き、11月中・後半頃には接種完了率が80%を超える可能性がある。
しかし、残りの未接種者らの接種意思が高くなく、85%まで達するかどうかは不透明だ」
(ハンギョレ10月15日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a78c314e447e83d5802ab5f00d5ee4295a22eebe

おいおい、この期におよんでも韓国の中央防疫対策本部は「集団免疫が8割になれば集団免疫が獲得され、マスクなしや集合禁止、営業制限などしないで済む」などと信じがたいことを平気言っています。
ならば今78.3%まで接種率が上がっていると豪語しているのですからあと2%で集団免疫にゴールです。
わきゃありません。この防疫対策の責任者は、もうそろそろマスクも行動制限もしないで済むと言ってしまったわけで、常識を疑います。

韓国は英国政府が当初堂々と集団免疫説を唱えて、あえなく破綻したことを忘れています。
間違いを悟った英国政府はただちに方針転換を図り、ワクチン接種を急ピッチに進めるわけですが、それは集団免疫説が実際にはザルだったことを世界に教えました。
この教訓を韓国は知らないのでしょうか。

韓国のワクチン接種のリアルな状況はこうです。

「9日の韓国・中央日報は「国民の80%が新型コロナウイルスワクチン接種を終えたのに状況はなぜ悪化するばかりなのだろうか」と、問いかけている。   同紙はまず、「未接種者」に焦点を当てる。実際の感染者のうち未接種者が占める割合が大きいからだ。先月28日を基準とした過去8週間の、満12歳以上の感染者10万7296人のうち未接種者・不完全(1回)接種者は45.5%。人口の20%ほどである未接種者群で新規感染者の半分が出ていると指摘する。
 さらに60歳以上の高齢層で感染者が多くなっていることにも注目する。1か月前に比べて感染発生率は2倍以上に上昇しているという」
(Jcastニュース2021年12月09日)
https://www.j-cast.com/trend/2021/12/09426695.html?p=all

やっぱりそうだったのか、という接種率です。
実際の感染者のうち未接種者が占める割合を見ると、2021年11月28日を基準とした過去8週間の、満12歳以上の感染者10万7296人のうち未接種者・不完全(1回)接種者が実に45.5%。
感染社の半分弱が未接種、ないしは不完全接種社で占められていたのです。
全人口の2割が未接種者群あり、そこから新規感染者の半分が発生しているわけです。

では、なぜ高齢者の感染が拡大しているのでしょうか。

「さらに60歳以上の高齢層で感染者が多くなっていることにも注目する。1か月前に比べて感染発生率は2倍以上に上昇しているという。   60歳以上の高齢層の接種効果が予想より早く弱まり、ブレークスルー感染が急増したという専門家の見方を伝えている」
(Jcastニュース前掲)

高齢者でブレークスルー感染が大規模に起きていたわけです。
ここで韓国政府がワクチンの効果期間を無視した疑惑が生まれます。

「ワクチンの有効性が失われる時期を韓国政府が見誤ったという点だ。
韓国ではファイザーやモデルナのワクチンの確保が大幅に遅れた。それにもかかわらず、日本よりもわずか10日遅れで医療従事者や入院患者の接種を開始した。その時使われたのが英アストラゼネカ社製である。
このワクチンがファイザーやモデルナのものに比べてどれだけの有効性があるのかは、様々な議論がある。だが、はっきり言えるのは、今年(2021年)8月、「アストラゼネカの有効性は2回目の接種から5カ月」という英保険当局の発表をBBCが報じたにもかかわらず、韓国国内でその議論が巻き起こらなかったという点だ」
(藤原修平2021年12月8日『 韓国の「K防疫」バブルはなぜ崩壊したのか?』)

韓国は英国アストラゼネカ(AZ)製ワクチンを主に使っていたのですが、AZ製は有効製や安全性には問題なく、むしろ通常の冷凍温度で移送できるメリットがあったのですが、ひとつだけ問題がありました。
それはワクチンの有効期間が短いことです。
AZの効果の有効期限は、2回目接種から5か月が限界で、そのことを英国保健当局は公表していました。

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韓国で60~74歳の年齢層の1000万人ほどが打ったAZ製は中和抗体持続期間が3~4か月です。
ファイザーやモデルナの6か月に比べて半分ていどの中和抗体持続期間がありません。
そのために、他社のワクチンより慎重に見積もって第2回終了から3か月ていどの期間でブースター接種をするべきでした。

韓国がAZを打ち始めたのは、2021年2月26日からです。
3月時点では、日韓の接種率に圧倒的な差がついていました。

「韓国の新型コロナワクチンの接種速度が速い。2月26日から新型コロナワクチンの接種を始めた韓国では、3月11日0時現在まで累計500,635人(アストラゼネカ487,704人、ファイザー12,931人)に対してワクチンの1次接種が行われた。2月17日から接種を始めた日本の累計接種者148,950人(3月10日現在)を大きく上回っている」
(ニッセイ基礎研究所2021年03月12日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=67205?site=nli

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ニッセイ基礎研究所

韓国が日本を上回るスピードでワクチン接種が可能だったのは、AZを使ったからです。

「その理由としては、日本は3月10日現在ファイザーのワクチンだけが承認・供給されていることに比べて、韓国はファイザー(2月3日特例収入承認、3月5日承認)やアストラゼネカ(2月10日許可)のワクチンが供給されており、現時点でのワクチンの供給量が日本より多い点が挙げられる。
日本ではアストラゼネカのワクチンが2月5日に、モデルナのワクチンが3月5日に承認を申請しており、5月ごろに承認されることが予想されている」
(ニッセイ基礎研究所前掲)

当時3月の時点で日本はAZの国内生産工場も有していましたし、AZワクチンの確保量も韓国を上回っていたので 、その気になれば韓国と同じ時期に接種開始ができたはずです。
しかし日本はファイザーを主力にすることを構想しており、AZの使用は手控えました。
おそらくその理由は、有効期限の短さを考慮していたと思われます。
そして当初の予定どおりファイザーが充分な量確保できるやいなや、日本は驚異的勢いで接種を進めていき、たちまち韓国に追いつきます。

つまり、韓国が2月始めという早い時期に接種開始が可能だったのはAZ製ワクチンを使用したためであり、その有効期限はそれからせいぜいが3~4か月だったのです。
したがって、韓国では5月頃から順次ワクチンの有効性が切れていたわけで、下図のブレークスルー数推移グラフを見ると、有効性が薄れ始めた6月から徐々に増え、10月には1万6千人にも達しています。
にもかかわらず、政治的思惑でムンは11月に制限解除を強行してしまいます。

「キム・ブギョム首相は、過去2週間で感染が確認された60代以上のうち、80%がワクチンの接種を済ませた人たちだと明らかにし「接種の効果が急激に低下している」と述べ、いわゆる「ブレイクスルー感染」への危機感をあらわにしました」
(NHK11月24日) 

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韓国 新型コロナ 23日の感染確認は初の4000人超 過去最多

ワクチン効果が薄れ、デルタ株の世界的感染爆発期に韓国は丸腰になっていたうえに、秋からの制限全面解除ですから、どんな結果になるのかは、火を見るより明らかでした。

こんな馬鹿なことをしたのは、ひとえにムン(※)の見栄です。
※「閣下」とつけると揶揄しているという声ありましたので呼び捨てにします。そのほうが無礼だとおもうがな。
接種開始当時、ワクチンの効果は速やかに現れ、韓国は一時世界有数の感染抑制国ともてはやされました。
晴れがましくも、6月のG7サミットで各国首脳から「世界一だ」と褒められたことで、ムンが待ち望んでやまなかった世界からの称賛を得、一方憎き日本はどん底にあえいでいる、これほど彼の自尊心を高揚させるものはなかったでしょう。

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サミットでも中国に配慮した韓国、深入り避けた文在寅氏

「このことでもう1つ忘れてはいけないのが、6月に英コーンウォールで行われたG7サミットである。保健セッションの席で、米バイデン大統領と英ジョンソン首相が「防疫ナンバーワンはこの人の国」と文大統領を指した。文大統領が昨年から宣伝してきたK防疫が国際社会から評価された瞬間であり、韓国メディアは誇らしげに報じていた。K防疫への称賛はバブルの絶頂だった」
(藤原前掲)

そして帰国したムンは鼻高々に「K防疫の勝利」を宣言しました。
思えば、これがムンの得意の絶頂期でした。

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韓国御用メディアも猛批判「新規感染者は自宅療養」のコロナ対策 失策

「韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、就任3年を迎えて大統領府で演説した。韓国が成功している新型コロナウイルス感染症の流行抑制について、「防疫で世界をリードする国となった。危機を新しいチャンスと発展の動力にしたい」と訴えた。
演説の大半を新型コロナをめぐる防疫や医療、経済対策に割き、南北や対日関係には、ほとんど触れなかった。
政権与党は、感染症対策が評価されて4月の総選挙で大勝。韓国の世論調査機関ギャラップの8日の調査(5月第1週分)によると、文氏の支持率は71%で1年10カ月ぶりに70%を上回った。歴代大統領と比べ、任期の同時期では最高水準となり、演説からは文氏が政権運営に自信を深めていることがみてとれる」(朝日2020年5月10日)

なんかエライ昔のような気がしますが、感染を抑え込んだというので82.3%(!)の支持率だったようです。(遠い目)
それが急落を開始するのは5月以降です。

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下落する文在寅大統領の支持率 最低の48%に 経済政策で国民の不満

AZワクチンの効果は5月移行順次切れていたにもかかわらず、「K防疫」なる珍妙な言葉が一人歩きし、あまりにも早くシャンパンを開けすぎたのです。

「 ソウル大学のキム・ユン教授(医療管理学)は同紙のインタビューで、「韓国だけが上昇しているのは、結局、準備ができていない状況で日常回復を推し進めた結果だ」と語っている」(Jcastニュース前掲)

「幼いナショナリズム」(鈴置)に酔いしれて、日本に勝った勝った、わが国は世界一だとはしゃぐ、そして足元に口を開けている大きな穴に気がつかない。まぁ、いつものことではあります。
いまとなっては、「K防疫勝利宣言」を鼻高々にしていたムンの顔が懐かしくさえ感じられます。

 

2021年12月15日 (水)

プーチンは何を要求しているのだろうか

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現在ロシア軍は今年の夏以降、予備役軍人の招集を決定し、ウクライナ国境に接する南部軍管区だけで約3万8000人に及んだと言われています。
ワシントンポストによれば、ロシアがウクライナ国境に集中したとされる17万5000人の兵力のうち、約10万が予備役だと報じています。
そして来年の1月から2月にかけてウクライナ進攻がはじまるのではないか、と見ています。
WP  "Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175,000 troops, U.S. intelligence warns"
December 3, 2021

このロシア軍の予備役招集というのは日本では大きくとりあげられていないようですが、重要な意味を持ちます。
予備役招集は、臨戦態勢に突入したと判断した場合に行われる兵力の集積を目的としているからです。
今回はウクライナに接する南部軍管区の兵力を、予備役まで含めて根こそぎ投入する構えで、これは同じ介入でも空軍機を使った空爆や駆逐艦派遣とは違って、ロシアが真剣にウクライナ進攻を計画している証となります。

「現在のウクライナ周辺には、ロシア地上軍の常備兵力のうち4分の1程度が集結しており、最終的には半分程度が揃ったところで侵攻作戦を始めようとしているのではないか、というのが西側諸国の見立てのようだ」
(『米露首脳会談でも止まらない ロシアによるウクライナ侵攻の危機』 小泉悠)
https://news.yahoo.co.jp/byline/koizumiyu/20211210-00272010

これは中国がよくやる、台湾の防空識別圏への大規模な進入や、上陸訓練とは次元が違うとみたほうがよいでしょう。
エドワード・ルトワックはこういう中国の動きについて、あれはただの「限定紛争」だと評しています。

「これは中国が近い将来に台湾に軍事侵攻する前触れなのだろうか。少なくとも米政府の内部分析はこうした見方を否定しており、私もそれに同意する。現時点で中国には軍事力で台湾を制圧するリスクを冒す用意ができていない。まともな戦争計画もないはずだ。
では、中国が台湾に威圧的行動をとる狙いは何か。それは台湾の人々をおびえさせ、将来の選挙で「中台統一」志向が強いとされる野党の中国国民党に投票するよう仕向けることだ」(産経

私も、北京オリンピック後の時期に、ロシアと示し合わせた大規模な軍事的挑発行動を取る可能性があると思っていますが、台湾進攻には至らないのではないと考えています。

では、ロシアはなにを要求してこぶしを振り上げているのでしょうか?
今回プーチンはかなりはっきりと要求を口にしています。

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日経

「ロシア外務省は10日、ウクライナとジョージア(グルジア)の北大西洋条約機構(NATO)の将来的な加盟を認めた2008年のNATO首脳会議の決定を、無効とするよう求める声明を発表した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は10日「NATOとウクライナの関係は、NATO加盟国とウクライナによって決定される」と指摘、ロシアをけん制した。ブリュッセルを訪問したドイツのショルツ新首相との共同記者会見で述べた。
ロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大の動きに強く反発。7日の米ロのオンライン首脳会談でもNATOが拡大しないための法的保証を求めた。
ロシア外務省は声明で、法的保証を巡る米側との協議に向けた提案を近く発表すると表明。国境近くでの演習をやめることや恒常的な連絡の再開など、ロシア側の要求にNATOが対応することも求めた」(日経2021年12月11日 )

ここでロシアが言っているのは、大枠で以下の3点です。

①2008年に旧ソ連のウクライナとジョージアに対して認めた将来的なNATO加盟の確約の撤回。
②NATOによるロシアと国境を接する諸国への兵器配備の中止。
③NATOの拡大中止の確約とその法的保証。

そしてさらにロシア外務省は、NATOとロシアの定期的な防衛協議開始と、ウクライナのNATO加盟に対しロシアに実質的な拒否権を与えよ、と要求しています。
この要求を読むと、ロシアが恐れているのは、NATOがウクライナやジョージアを加盟させ、さらにロシアを標的とするミサイルシステムを同国に配備することだとわかります。

またロシアの情報機関(SVR)は、2008年のロシア、ジョージア紛争前夜と同じ構図だとして西側を批判しています。

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時事 2008年8月ジョージアに進攻するロシア軍

「ロシア対外情報局(SVR)はウクライナ情勢をめぐり、米欧の「挑発的な政策」がウクライナを強気にさせているとして、2008年のジョージア(グルジア)での紛争(南オセチア紛争)直前にも「同じような状況を見た」と批判、米欧をけん制した。インタファクス通信が22日報じた。
 SVRは声明を出し、ロシアとジョージアが軍事衝突した08年の紛争について、米欧があおり当時のサーカシビリ・ジョージア大統領が暴走したと主張した。また、ウクライナとの国境付近に関し、米メディアは10月末からたびたびロシア軍の集結情報を報じているが「全く誤った情報」と否定した」
(時事2021年 11月23日)

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出典不明

ロシアSVRが言っている2008年の南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)のきっかけは、ジョージアからの分離独立を求める南オセチアへの支援を口実にしてロシアがジョージアに軍事侵攻した紛争です。
戦闘自体は、圧倒的な軍事力の差で、
3日間の戦闘でジョージア軍は敗退し、08年秋にはロシアは一方的にジョージアからの南オセチアとアブハジアの独立を承認してしまいました。
この時、オバマの下で副大統領だったバイデンは、例によって手をこまねいたままジョージアを見捨てた形になり、翌年に
アブハジアと南オセチアを独立国として認めないと述べています。

ロシアがこの2008年の形に似ているという意味を考えてみましょう。
それは当該国(かつてはジョージア、今はウクライナ)から分離独立しようとしている共和国の独立を認めて支援するロシアと、それに反対するNATOという図式です。

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出典不明

上の地図で斜線がかかっている部分がウクライナ東部のドネツク州、ルガンスク州で、この二つの州は親露勢力が強く、いまだに政府軍との軍事衝突が続いています。
今回ロシアはこの二つの親露州でかつてのクリミアにおける住民投票をやらせて、独立をさせたいと考えているようです。
というのは、今回もNATO加入の確約撤回を要求していますが、既にウクライナは紛争国としてNATOから認識されており、現況では紛争国は加入できないからです。
つまり、かつてプーチンがレッドライン(譲れない一線)としていた「ウクライナの中立化」は既に達成されているわけです。

これは、2014年以降のロシアによる軍事介入で概ね達成されたと言ってよい。ロシアによって引き起こされたクリミア半島の占拠とドンバス地方での紛争はウクライナを紛争国家化し、NATOやEUへの加盟は当面望み難い状況にあるからだ」(小泉前掲)

今回の大規模な軍事進攻のポーズは、更にこのレッドラインを更に一歩進めて、ウクライナを「ロシア寄り中立」に引き戻す」ことではないかと小泉氏は見ています。
これは元来今のウクライナ政権が西側の工作で実権を掌握するまで、ウクライナは「ロシア寄り中立」の国だったからです。
ロシアからみれば、「元の状態に復帰させた」と言うことになります。

「ミンスク合意は、2014年9月に結ばれた第一次ミンスク合意とその追加議定書、そして2015年2月の第二次ミンスク合意から成る。
このうち、第一次ミンスク合意ではドンバスの紛争地域(「ドネツク人民共和国」及び「ルガンスク人民共和国」を自称する武装勢力によって実効支配されている)に対して一時的に「特別の地位」を与えることが求められているが、第二次ミンスク合意では、これを改正憲法と恒久法に基づいたより固定的な地位とすることが定められた。このようにしてウクライナの分裂状態を固定化することにより、同国がロシアに対して逆らえない状態を作り出すことがその目的であったとされている。
それだけにウクライナ側は第二次ミンスク合意の完全履行に二の足を踏み続けてきたが、7月のプーチン論文は、もはやロシアは時間的猶予を与えるつもりはないことを宣言する「最後通牒」であったと言えよう」(小泉前掲)

このようにロシアはウクライナに対して、第2次ミンスク合意にあった東部2州の親露武装戦力に憲法改正して恒久的地位を与えろと要求しているようです。
そもそもこのミンスク合意自体が、オバマとメルケルの宥和主義にるもので、フランスの通信社AFPはこれを「西側はロシアにクリミアを割譲してしまった」と酷評しています。

「世界の指導者たちが、決して認めはしないが、嫌々受け入れざるを得ないかもしれない、ウクライナ危機の醜悪な解決策──それは、ウラジーミル・プーチン露大統領にクリミアを差し出すことで、ソ連崩壊後のロシアの力を復興させた全能の指導者として覚えられたいというプーチン氏の野望を十分に満たし、残りのウクライナ領土に手を出さないことを願う、という方法だ。
このような宥和政策は、バラク・オバマ大統領に対する米国内の批判勢力にとっても、プーチン氏の好戦的姿勢を目の当たりにし自国の安全を懸念する東欧の旧ソ連構成諸国にとっても、受け入れられるものではないだろう」
(AFP 2014年3月11日『クリミア差し出しウクライナ救うか』)
http://www.afpbb.com/articles/-/3010152

とまれ、いまだロシアが2008年のロシア、グルジア戦争のように本格的軍事侵攻に踏み切るかどうかはわかりませんが、バイデンがこの処理を誤ればヒトラーのズデーテン地方進攻を容認した宥和型解決に終わり、悪しき前例となるかもしれません。
初めから弱腰のバイデン、足元のエネルギー事情に足を取られているドイツ、正論は吐くが力不足のフランス、ヨーロッパ大陸には関わりたくない英国、そして拡大するに従って弱体化していったNATO、残念ですがどちらを見ても止め男が不在です。
ミンスク条約の再確認あたりで妥協してしまいそうです。

2021年12月14日 (火)

ドイツにほんとうにロシア制裁ができるんでしょうか?

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今回のロシアのウクライナ進攻の構えに対して、G7は協調して経済制裁をかけると言っています。
昨日書いたとおり、もしロシアが進攻に踏み切った場合、米ドル決済からの追放や、ロシアの唯一の輸出品である天然ガスの輸出制限が始まると思われます。
問題は、それを西ヨーロッパができるかどうかということです。

メルケルは、いい時に辞めたと胸をなでおろしているのではないでしょうか。
まだ首相だったら、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を強行した責任を問われるところでした。
下の地図でグレイの線が既存のパイプラインで、そのうち3本までもが今騒然たる状況となっているウクライナ領土を通過しています。

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欧州覆う、ロシアのガス網 独ルート「ノルド2」完成へ:朝日

実は、ウクライナは自国領を通過することをいいことに、堂々と天然ガスを抜き取っていたのです。
堂々たるドロボーですから、国がやるこっちゃありません。

プーチンはこう書いています。

「ロシア連邦は、新しい地政学的現実を認識しています。そして、認識されただけでなく、ウクライナを独立した国にするために多くのことをしました。困難な90年代と新しいミレニアムでは、ウクライナに大きな支援を提供しました。
キエフは独自の「政治的算術」を使用しますが、1991-2013年には、低ガス価格ために、ウクライナは予算のために820億ドル以上を節約し、今日では文字通りヨーロッパへのガスの通過のための15億ドルのロシアの支払いに「しがみついて」いました」
ウラジーミル・プーチン『ロシア人とウクライナ人の歴史的団結について』
ウラジーミル・プーチンの記事「ロシア人とウクライナ人の歴史的団結について」 • ロシア大統領 (kremlin.ru)

盗まれてはならじと、新たなパイプライン建設をドイツに持ちかけます。
それが、どの国の領土も通らず海中を通るノルドストリーム1と2です。
北海でグレイの既存路線と赤い新規路線が重なっていますが、これがそうです。

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ノルドストリーム2の完成を地政学から読み解く - 塩原俊彦

ただし、領土は通りませんが、敷設にはフィンランド、スウェーデン、デンマークの許可が必要で、最後まで安全保障上の理由で認可をしなかったデンマークの許可が降りてやっと建設にこぎつけたといういわくつきのものです。

「(独露)両国間には、ほぼ同じコースの「ノルドストリーム」が2011年から稼働中だ。「2」が完成すれば輸送能力は年間1100億立方メートルと倍増する。ガスは地元のパイプラインを通じて欧州各国に運ばれる。
 ドイツなどは、安価な天然ガスを安定需給できるとして計画に協力的だ。だが欧州各国にはロシアへのエネルギー依存が強まることへの懸念があり、ウクライナ危機で欧州連合(EU)が対ロシア経済制裁を続ける中での動きに、ポーランドなどから批判の声が上がっている」
(朝日2019年11月11日 )

今回、ロシアに対する経済制裁でノルドストリームなどの天然ガスパイプラインが閉鎖された場合、ドイツが最も甚大な経済的被害を受けることになるでしょう。
というのは、メルケルが原子力を放棄するという「美しい夢」を公約してしまったために、ドイツはそのツケを支払わされている状況です。
下図はドイツのエネルギー源の構成です。

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老獪なドイツに学ぶべき日本のエネルギー戦略 前編

北海に面した風力発電基地から、延々と森林を伐採して送電網を引いたかいあって風力が20.7%を占め、以下再エネだけで26%に達するのはご苦労さまというか、馬鹿げているというか、むにゃむにゃ。

しかし驚かされるのは、CO2ゼロ派の憎悪の的になっている石炭が褐炭、無煙炭合わせて27.9%もあることです。
なんとドイツの誇りの再エネより多いくらいです。
そして原子力などは脱原発宣言は勇ましかったものの、まだ12.3%も残っています。

ちなみに、参考までにわが国のエネルギー比率を貼っておきます。
原子力依存度はドイツの半分、石炭への依存度もやや少ないのがわかります。

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2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報) | ISEP 環境

不安定でカネ食い虫の再生可能エネルギーと、削減を求められ続けている石炭に足をとられて、今やドイツはヨーロッパの脱CO2の足を引っ張る始末となっています。
イメージと大分違うでしょう。
エコ大好き、環境大国ドイツというイメージは、パフォーマンスが得意なメルケルの自作自演だったのです。

実際はそうとうに違います。
川口マーン恵美さんの通信を読んでいただくとリアルにわかりますが、メルケルの脱原発政策という「美しい夢」はドイツ国民に大きな打撃を与えました。

「ドイツは50年の温室効果ガス排出量をネット(純排出量)ゼロにする欧州目標に合意し、環境先進国として気候変動問題に意欲的に取り組んでいるように映る。しかし実態は、欧州連合(EU)内の気候変動対策を強化する議論の足を常に引っ張っている。 
18年6月、EUでは30年の一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの目標比率27%を引き上げる議論が行われた。
フランス、イタリア、スペインなど西側諸国の多くが35%を提案する中、アルトマイヤー独経済エネルギー相は、「再エネ比率を現状の15%にするための国民負担は年250億ユーロ(3兆円)に達した。現実的、達成可能な目標を設定すべき」と強硬に主張し、目標値の引き上げを32%に収めさせた。
50年の温室効果ガスの純排出量をゼロにする長期目標設定にも西側諸国の中では唯一反対していた。ただ、19年5月のEU議会選挙、地方選挙での緑の党の躍進を目の当たりにし、6月のEU首脳会議では賛成に回った。世論を気にする政権の姿勢は11年に脱原発を決めた時と同じだ」
(山本隆三『再エネ先進国ドイツの迷走 パイプラインで高まるロシア依存』 2020年3月31日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19104?page=2

環境大国のはずが、なぜいまや足を引っ張る国となってしまったのでしょうか。
その理由は、再エネの不安定な性格のために電力供給が不安定になり、しかも電力価格が著しく上昇したためです。
これ以上国内発電量の4割近くを占める石炭・褐炭火力発電所を閉鎖することになれば、大規模停電を引き起します。
電力価格は、元祖FIT(全量固定買い取り制度)で再エネ導入に多大な政策支援を進めた結果、19年前半の家庭用電気料金は1kWh当たり30.9ユーロセント(約37円)という、世界最高値に君臨し、実にわが国の電力価格の約1.5倍に達しています。

今回、ロシアのLNGを制裁した場合、今ですらノーカーボンで高値に貼りついているのですから、目も当てられないことになるのは必定です。

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かくして2014年、ガブリエル副首相兼経済・エネルギー相が、「脱原発と脱石炭を同時に行うことはできない」と発言したのは、当初の目的どおり22年までに原子力を全廃した場合、もう電力供給に責任をもてないという悲鳴でした。
結局、ドイツは西欧諸国の非難を浴びながら、38年まで国内の褐炭を利用した発電所の利用を決めています。

このようなドイツにとって、CO2排出量が少なく、かつ安定的に輸入できる天然ガスはまさに死活的救世主だったわけです。
そしてこの天然ガスの卸元こそ、かのロシアというならず者国家だったのです。

このロシアにべったり依存するノルドストリーム2計画の矛盾は、2014年のクリミア進攻でクローズアップされ、EU域内からもロシアからのパイプライン供給を削減して適正規模に落とし、中東など他の地域からの調達を増やすとともに備蓄設備を拡充したらどうかという声も出ていました。
その近隣諸国の忠告を聞いていれば、今の苦しい立場はなかったはずでした。
しかし、それを再エネ増加による電気料金高騰に尻をあぶられているメルケルは、ひたすら安価を売り物にするプーチンの甘い声に乗ってしまったのです。

下図はドイツの天然ガスの輸入先の比率です。
ロシアは35%にも達して、輸入国第1位です。

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ドイツのエネルギー資源-自給率。輸入依存度、輸入先 ‐ドレスデン情報

そしてロシアの天然ガス依存度は毎年高まる一方です。

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https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19104?page=2

このようなロシアに頼りきったエネルギーシフトをしている状況で、もしロシアからの天然ガス輸出を制裁した場合、エネルギー不足で製造業は壊滅的被害を受け、多くの死者がでることさえ予想されます。 
日本も天然ガスに多く依存していますが、下図のようにマレーシア、カタールなど複数の国から供給を受け、ロシアの占める割合は9.3%にすきません。
わが国の天然ガス輸入の強みは、このように複数の国から調達している点です。
どこかひとつの国に偏ることなく、実に健全な構造です。

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日本に最も多く天然ガスを輸出している国は?:

また日本は、タンカーで輸送されてコンビナートに備蓄するいわばプロパンガス方式なのに較べて、欧州のそれはほとんどすべてがパイプラインに頼っている都市ガス方式です。
したがって、元栓を閉めれば、下流は全部干し上がることになります。
悪いことにこの元栓を一人で握っているのがロシアだということです。

プーチンは、G7の経済制裁を聞いて、ならば死ぬ気でやるんだなと内心毒づいたことでしょう。


2021年12月13日 (月)

ロシアのウクライナ進攻、現実のものに?

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現実問題として、ロシアのウクライナ進攻がありえるかもしれないという状況になってきました。
まず概況ですが、ロシア軍は11月半ばの時点でロシア軍は40個大隊戦闘団、約10万もの大兵力をウクライナ国境周辺に展開させているといわれています。
軍事演習とみるにはあまりに巨大過ぎる兵力集中です。

「ウクライナの国境付近にはロシア兵が9万人以上集結しているとされる。
ロシアはこのところ、ウクライナの中でも特に2014年に併合したクリミアで軍備を増強させている。
ウクライナ東部で親ロシア勢力が占領するドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州の一部)の近くにも、ロシア軍が集結している。
ウクライナ政府関係者は、ロシアが来年1月末に大規模侵攻を計画しているかもしれないと、警戒を強めている。
ロシアの後ろ盾を受ける勢力がウクライナ東部の広い地域を掌握して以来、7年間の紛争で1万4000人以上が死亡している」
(BBC2021年12月8日)

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産経

12月8日、この緊迫した事態を受けて急遽米露首脳会談がオンラインで開かれましたが、予想どおりなんの収穫もありませんでした。

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は7日、ロシアのプーチン大統領とビデオ通話で会談した。ホワイトハウスによると、バイデン氏はプーチン氏に対し、ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国は強力な経済措置を取る用意があると述べ、ロシアによるクリミア占領を阻止できなかった2014年の制裁よりも厳しい内容になると示唆した。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は会談後、記者団に対し「バイデン氏がきょうプーチン氏の目を見て言ったように、私もあなた方の目を見て、米国は2014年には取らなかった措置を取る用意があると伝える」と述べた」(CNN12月8日)

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CNN

バイデン米大統領からは、ロシアがウクライナに対する軍事的圧力をエスカレーションさせた場合、

「米国や欧州同盟国は強力な経済措置で応じると述べた。事態が激化した場合、ウクライナに追加の防衛物資を供給し、北大西洋条約機構(NATO)の東端の加盟国を追加的な能力で強化する考えも明らかにしたという」(CNN前掲)

一方、プーチン露大統領は、「国境で軍事力を増強しているのはNATOの方だ」と応じたとされています。
互いにお前のほうが軍事的エスカレーションをしていると言い合っているだけで、進展がなかったわけです。
ただし、継続的に米露の連絡官を作ることで合意したのが、唯一の成果でした。

では、今回の会談で危機は回避されたのでしょうか。
たぶんそうはならないでしょう。
ロシアは自国の安全保障上、NATOと国境を直に接することを極度に嫌がっており、2014年のクリミア進攻とそれに続くウクライナ東部の浸透政策は、この「恐NATO病」から来ています。

NATOの肝は、ひとことでいえばこのNATO条約第5条にあります。 

●NATO条約第5条
NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する。

この第5条は、別名「自動介入条項」と呼ばれています。
一国に対する攻撃に対して、全加盟国は集団的自衛権を行使して、攻撃を受けた締結国を援助する責務を持っています。
ですからウクライナがNATOに加盟されると、かつてクリミアでやったようなマネすれば欧米全体の反撃を招くことになります。

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プーチンは、旧ソ連の版図であった旧共和国諸国が、NATOに加盟することを極度に嫌っています。
だからバルト三国、ベラルーシ、そしてウクライナがNATOに接近することを許してきませんでした。
バルト三国はNATOを慕った結果、常に進攻の危機をはらんでいますし、ベラルーシは親露の独裁国家になっています。
問題はこの地域で最大の領土を持ち、すでにクリミアをもぎとられているウクライナです。

小泉悠氏は、ロシアの意図をこう分析しています。
※『米露首脳会談でも止まらない ロシアによるウクライナ侵攻の危機』 小泉悠
https://news.yahoo.co.jp/byline/koizumiyu/20211210-00272010

12月1日、外国大使認証式に出席したプーチン大統領は、NATOの東方不拡大とロシアを脅かす兵器の非配備を文書で明確化するよう要求。翌日には欧州安保協力機構(OSCE)閣僚会合において、ラヴロフ外務大臣がこの線に沿った欧州安保枠組みの再編成案を欧米に提案する方針を明らかにした。以上から判断する限りでは、ロシアの新「レッド・ライン」はウクライナへのNATO不拡大であるように見える。
しかし、ヴァージニア工科大学のマリア・スニェゴヴァヤによれば、ロシアが本当に懸念しているのは、ウクライナが軍事的にではなく社会・経済的に西側に統合され、ロシアの影響力が全く及ばなくなってしまう事態である。
したがって、ロシアが実際に望んでいるのは、プーチンのいう「ロシアとのパートナーシップ」に基づくウクライナの主権、すなわち同国を「ロシア寄り中立」とすることであり、より具体的に言えばミンスク合意を完全履行させることがロシアの狙いであると考えられる」(小泉前掲)

ロシアはウクライナを「ロシア寄り中立国」にするために、黒海の覇権を握るクリミア半島を奪い、国境を接する東ウクライナに親ロシア政権を作ろうと画策してきました。
米国のロシア分析家(元国務副長官)のストローブ・タルボットはこう述べています。

「ロシアは既にウクライナへ侵攻しています。各国の政府やメディアがロシアによる侵攻の可能性、危険性や脅威について語り続けていることについては苛立たしく、理解できません。ロシアは今春の初めにウクライナを侵攻しています。いわゆる「リトル・グリーン・メン」、つまり緑の軍服でバッジを付けていないロシア兵を皮切りに、肩章を付けてクリミア併合を掲げる兵を送りました。
ロシアはウクライナ東部にいる親ロシア派の後ろ盾であり、現地でも戦力となっているのです。
これは侵攻がすでに行われている状態であると言えます。ロシアがウクライナへ侵攻していないという、ロシアが主張する見え透いたウソに同調して行動するのは、現在の状況を対処するにあたって好ましくないことです」
(ハフィントンプレス2014年8月19日)   
https://www.huffingtonpost.jp/2014/08/19/russia-has-already-invaded-ukraine-strobe-talbott_n_5693296.html

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ハフィントンプレス

クリミア進攻から7年、小泉氏はもう選択肢はわずかしかないところまで状況は煮詰まってしまったと見ています。

「ロシアが本当に軍事力行使を行うのかどうかは未だ明らかではないが、もしも同国が本当にそのような覚悟を固めているなら、米国がこれを止める方法は概ね二つに限られよう。
すなわち、
①大胆な妥協:ウクライナの中立化など、ロシアの要求(後述)を呑む
②強硬策:ウクライナへの米軍展開など、米国の強い軍事的コミットメントを展開する
のいずれかである」
(小泉前掲)

①はいわゆる「ウクライナの中立化」です。
実際にこのような解決方法は存在しました。
それが2014年9月に結ばれた「ミンスク議定書」です。
この取り決めは、ドネツクの戦闘激化を鎮めるために作られ、ロシアとウクライナ、そして西側諸国(欧州安全保障協力機構・OSCE)の三者で成立したものでした。
内容は、2015年1月までの停戦とウクライナ東部とロシアに緩衝地帯を作ることが骨子でした。

  1. OSCEによる停戦の確認と監視を保証すること。
  2. ウクライナ法「ドネツク州及びルガンスク州の特定地域の自治についての臨時令」の導入に伴う地方分権。
  3. ウクライナとロシアの国境地帯にセキュリティゾーンを設置し、ロシア・ウクライナ国境の恒久的監視とOSCEによる検証を確実にすること

ところが、このミンスク合意は直ちに失敗し、親露勢力はドネツクで戦闘を再開しています。
ですから、この①の「ウクライナの中立化」とは、ウクライナの連邦化を図り、親露勢力に占拠されている東ウクライナを事実上分離独立させてしまうという案で、ロシアの思い通りに屈することになります。

もちろん、今米国がこの東ウクライナ分離案を支持すれば、それはあきらかなNATO諸国への裏切り以外なにものでもありません。
それのみならず、「国境の実力による変更」を米国が公然と認めたことにつながり、中国を歓喜させることになるでしょう。

「しかし、現実にはこのような態度を米国が取るのは難しい。軍事力による威圧に米国が屈する形を取れば、ロシアだけでなく中国に対しても誤ったメッセージを送ることになりかねないからである。実際、(この分離案を提唱した)チャラップの論考は、ヒトラーに対するチェンバレンの宥和外交になぞらえられ、強い批判を浴びた(小泉前掲)

ちなみにGoogleで「Charap」と検索すると、最上位に「Charap chicken(チャラップ 臆病者)」が出てくるそうで、それでなくても共和党から腰抜けと呼ばれ続けているバイデンには、この案をとりようがありませんでした。

では②の軍事的コミットメントを強めるというのは、米軍のウクライナ領内への緊急展開のことです。
トランプならやったかもしれませんし、おそらくロシアを思い止まらせるにはそのくらいしなければ効かないはずです。
展開した米軍は、ロシア軍がウクライナに進攻すれば、自動的に米軍と矛を交えることになるというトリップワイヤーとなります。
ただし、これは互いに世界を滅亡させるに充分な核保有国同士の全面戦争へとつながりかねないリスクがあります。
またそれでなくても、醜態をさらしながらもやっとアフガンからの足抜けが終って、さぁこれから対中一本槍で軍事力の再編を行うぞとしたい米国にとって再び2正面作戦を強いられることになります。

「つまり、ロシアが軍事力を行使すれば自動的に対米戦争になるよう「仕掛け罠(トリップ・ワイヤ)」を展開させようということだが、別の角度から見ると、これは米国がロシアとの直接戦争の危険を抱え込むということでもある。正式の同盟国ではないウクライナに対してそこまでやる必要性を同盟国や国内世論に向けて説得するのは相当に骨が折れる筈で、容易に決断できるものではないだろう。
実際、バイデン大統領は、前述の「ヘリコプター前会見」で、米軍をウクライナに派遣する可能性を明確に否定した」(小泉前掲)

そこで悩んだバイデンは、彼らしくその中間を取りました。
妥協でもなく、軍事的コミットメントでもない経済制裁です。

経済制裁の強化。
国際決済システムSWIFTからのロシア排除、ロシア天然ガス輸出の制限など。

やっぱりねというところですが、それなりに効くでしょう。
SWIFTというのはドル資金を移動させるために絶対に経由しなければならないシステムのことで、ここから締め出されると事実上国際金融市場から締め出されて資金が集まらなくなります。

国際決済システムSWIFTからのロシア排除をしたとしても、中国と違ってロシアは国際市場に中国ほど依存しているわけではありません。
ロシアは大きな経済的ダメージを食うはずですが、致命傷にはなりません。
ロシアはいわば「大きなイラン・北朝鮮」であって、国民が生存するに必要なほぼすべてのエネルギー、食糧を自給することが可能な国です。
ですから一時的に国際市場から切り放されて経済的窮乏に陥ったとしても、燃え上がるロシアナショナリズムで乗り切ることができてしまうかもしれません。

もうひとつのロシアの石油・天然ガスに対する輸出禁止措置は、欧州各国への打撃にも繋がる諸刃の刃です。
今のそれでてくても高値に貼りついた原油市場が固定化し、エネルギー危機が本格化する可能性があります。
ただし、米国はこの禁輸措置をする場合、必ずシェールガスの増産を容認します。
いまでもFRBのパウエルは資金融資を増やしているので、これを更に大規模にして元のシェール大国に復帰するかもしれません。
もちろん民主党左派はCO2削減は忘れたのかというでしょうが、背に腹は替えられません。

しかしそれでも、小泉氏は経済制裁ていどではもはやロシアの軍事進攻は止まらないだろうとしています。
プーチンはそのていど制裁は読み込み済みだからです。

「バイデン大統領がいう「経済その他の強力な措置」がどの程度の抑止効果をもたらすかは、プーチン大統領やその側近の世界観に左右されると考えられよう。そして、2014年のロシアが欧米からの激しい経済的報復を覚悟の上でウクライナへの介入に臨んだことを考えれば、今回に限って制裁がロシアを抑止できると期待すべき根拠は薄い」(小泉前掲)

小泉氏は新しいタイプの「非在来型介入」、つまりハイブリッド戦争をしかけて来るかもしれないと考えています。

「ソ連時代の傑出した戦略家アレクサンドル・スヴェーチンは、このような予測不可能性を「戦争はテンプレートに当てはめられない」という言葉で表現したが、このフレーズは現在のゲラシモフ参謀総長も演説の中で引用したことがある。のちに『予測における科学の価値』というタイトルで雑誌に掲載されたこの演説は、まさに非古典的な方法で戦争を開始・遂行・終結させる方法について考えるよう参謀本部に向けて呼びかけるものであった。
このようなロシアの軍事思想の伝統に立つなら、ロシアのウクライナ介入については次のようなシナリオを想像できよう。
例えばロシアは過去に大規模なサイバー攻撃を幾度か行なってウクライナのインフラを局所的に麻痺させているが、これを全土に対して、同時多発的に行なったらどうだろうか。経済や社会が機能しなくなり、食糧や暖房にさえこと欠く状況にウクライナを陥らせた上で、「人道援助」のような名目でロシア軍を送り込む口実になるかもしれない」(小泉前掲)

まずロシアはこのまま国境付近に10万の大軍を張り付けたまま、大規模なサイバー攻撃や、東ウクライナ内部の親露勢力によってエネルギーインフラや食糧供給を攻撃させて社会混乱を仕掛けます。
サイバー攻撃はロシアのオハコで、クリミア進攻時にも大規模なサイバー攻撃をしかけてウクライナ軍の指揮・命令系統を麻痺させた実績があります。
当初は東部から始まり、徐々にこのキエフ政権が支配している西側にも混乱を拡大させていきます。
そしてウクライナが長い冬に苦しむ中、そのタイミングを見計らって、ドネツク共和国などの親露勢力がロシアへの「人道的支援」を要請します。

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ロシアは、ロシアの次の人道支援団EMERCOMをドンバスに派遣しました

そしてお約束どおりロシア緊急平和援助隊が「人道支援」の名目で、食糧と燃料を積んで轟々とウクライナになだれ込むという筋書きです。
もちろん今回は、その警護と治安維持のために「ソフトな占領軍」(小泉)としてロシア軍が同行するのはいうまでもありません。

実はこの方法は、すでに東ウクライナ・ドンバス地方においてロシアが非常事態省による人道援助を大々的に行った手法です。
これによりバンバス地方は分離独立状態が固定化していました。
この可能性がもっとも高いのですが、小泉氏はプランBとしてロシア属国のベラルーシ側からの進攻も考慮しているふしがあるそうです。

とまれこのロシアのウクライナ進攻は、中国と歩調を揃えて東ヨーロッパに反米第2戦線を作るのが目的かもしれません。
台湾海峡とウクライナで示し合わせて戦端を切られた場合、米国の対応はきわめて厳しくなります。
というわけで、いきなりキナ臭くなってきましたが、こういう中でのオリンピック対応だということを、岸田さん、お忘れなく。

 

2021年12月12日 (日)

日曜写真館 秋の湖の岬に通ふ道一つ

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秋航や心の綱を強く張る 小澤克己

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珠数繰れば無口の秋がたたずまふ 宇都宮滴水

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一枚の湖の光と秋の虹 山田弘子

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一鳥も降ろさず秋の沼の雨 高澤良一

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落日は火の帯太き秋の湖 神原栄二

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張りつめて谺を返す秋の湖 檜紀代

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釣人を岸にとどめて湖の秋 小野麻利

 

 

2021年12月11日 (土)

もう潮時だろう、自公連立

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もう限界じゃないでしょうか。自公連立のことです。
あらかじめ申し上げておきますが、私は公明党やその母体である創価学会に特別な感情をもったことがありません。
好きでもなければ、嫌いでもありません。
一緒にやることはお互いにとって得ではない時期が来たのです。

今回の北京五輪について、山口代表はこのように述べています。

「公明党の山口代表は、記者会見で「選手が存分に力を発揮できる環境づくりが重要で、人権侵害について、アメリカとその他の国とでは捉え方が違うところもある。さまざまな状況や影響を考慮したうえで、日本政府として判断するものと承知しており、われわれ側から予断を与えることは控えたい」と述べました。」
(NHK2021年12月7日 )

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NHK

根本的にこの人は勘違いしているようですが、選手が「存分に力を発揮できる環境」にないから問題なのです。
なぜなら開催国に人権が欠落しているからです。
山口氏は、開催国で最も有名なアスリートが政府高官からレイプされ、それを告発した瞬間に行方不明になる国のどこに「選手が存分に力を発揮できる」条件があるとお思いなのでしょうか。

そして山口氏はこうも言います。

「人権侵害について米国ととらえかたに違いがある」

ほー、人権にも国境があるとでも言いたいようです。
外国人ならどんなにレイプされようと、失踪しようと、はたまた強制収容所に送られて抹殺されても、それは「とらえ方の違い」なのですか。
こういう言い方ならば、まだしも日中友好議連元会長の林外相のほうがまだましです。
林外相はこの時期にこの人以上の最悪の人選はない人でしたが、それでもこう言っています。

「林大臣は「諸般の事情」に人権問題が含まれるのか記者団から問われ「自由、基本的人権の尊重、法の支配が、中国でも保障されることが重要だと考えていて、こうした日本の立場は、さまざまなレベルで中国側に直接、働きかけてきている。そういった指摘も含め判断する」と述べました」(NHK前掲)

林外相は北京五輪について、「自由・人権・法の支配の保障」という民主主義の基礎的概念を言うだけはるかにましです。
なぜなら、この三つの概念こそが民主国家の根幹の理念であって、米国であるか日本であるか、あるいは中国であるかを問わないからです。
それを山口氏は「米国とその他の国ではとらえ方が違う」という言い方で切り捨ててしまいました。
私は唖然としました。ここを切って捨てることできる党とは袂を別つべきです。

このような言い方は、公明党が「自由・人権・法の支配」などに価値を置かないと言ったも同然なのですが、それすら山口氏は気がつかないのです。
山口氏に思い出していただきましょう。
公明党綱領の冒頭にこう高らかに謳い上げています。
https://www.komei.or.jp/komei/platform/

●公明党綱領
「一〈生命・生活・生存〉の人間主義
いかなる主義・主張であれ、機構や制度、科学や経済であれ、それらはすべて人間に奉仕すベきです。これが〈生命・生活・生存〉を柱とする公明党の人間主義=中道主義の本質です。
従って、政治の使命は、生きとし生ける人間が、人間らしく生きる権利、つまり人権の保障と拡大のためにこそあります。(略)
そして今日においては、平和にしても開発にしても、すべては究極目的である人権の実現――人間が人間らしく平和に幸せに生きることの保障である、との位置付けがなされるに至っています。
まさに人権の実現を至上の目的価値とすることこそ、二十一世紀の日本と世界にとって不可欠の理念であると考えます。われわれは、この人権尊重の淵源に「生命の尊厳性」を置くものです 」

山口さん、あなた自分の党綱領を真面目に読んだことがあるのですか。
ここで公明党綱領が言っているのは、「政治の使命は、生きとし生ける人間が、人間らしく生きる権利、つまり人権の保障と拡大のためにこそある」、人権こそ普遍的理念だという意味です。
そして公明党の立党精神は、この「人権の実現を至上の目的価値とする」ためだ、とまで言い切っているわけです。

党を人格的に代表する山口氏が、「アメリカとその他の国とでは捉え方が違うところもある。さまざまな状況や影響を考慮したうえで判断する」と、人権には国境もあれば人種もある、その都度の政治状況次第でいくらでも変わるものだ、と言ってしまっています。
だからグローバル・マグニツキー法にも反対したのですね。
ご都合主義のことよ。

山口さん、これはあなたが綱領をすっかり忘れてしゃべっているのか、それとも綱領なんかただのお飾りだと思っているかのいずれかです。
前者ならば12年(!)勤めてきた代表を即刻辞任なさるか、綱領を書き換えます、ということです。
修正後の公明党綱領には「人権こそ普遍的目的価値である」の後ろに、「ただし米国や中国は別のとらえ方をしているからその限りではない」とつけ加えなさい。

公明党に欠落しているのは、ただいま現在中国当局によって弾圧されているウィグルや香港の人々の目線です。
弱者の味方だといいながら、実は弱者を虐げる抑圧者の側に立ち味方する。
人権こそ至上の価値だと言いながら、人権を踏みにじる側に立つ。

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小さな声を、聴く力。」公明党

私は親中か反中かなどを問うているのではありません。
中国に親しみを覚えているならけっこう。ならば友人として、忠告してお上げなさい。
その道は滅亡の道ですと。
そして自分に問いかけてみて欲しいものです。
我が党は自由を守るのか否か、人権と法の支配を防衛するのか否か、と。
それともウィグルや香港は遠すぎて小さすぎますか。
ならば、公明党はいつから「小さい声を聴く力」を失ったのでしょうか。
聞こえるのは支持者の声だけなようです。

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www.businessinsider.jp

私は公明党が「敵基地攻撃能力の獲得」という岸田政権の政治政治目標に対して「ふるめかしい議論だ」と言おうが、改憲に及び腰なのも、いつもの中道リベラルから来る不勉強だと思ってきましたが、この「自由・人権・法の支配」に反対する今回の山口氏の言説は許容の範囲を超えました。
民主主義の根幹理念を否定する党が、政権に加わることはありえません。
この問題は、立憲が共産党と手を組むこととまったく同次元のことなのです。

こういうことを書くと、いや、今の自民は公明党の支持で当選させてもらっている議員が大勢いるから無駄さ、という諦観の声が聞こえてきますが、そうなのでしょうか。
産経新聞政治部次長の酒井充氏はこのような試算をしています。

こうした話になると、よく出る通説として「衆院選で公明の支援がなければ自民はぼろ負けする」との見方がある。だから自民は公明に遠慮しているのではないかということだが、先の衆院選結果を基に試算するとどうなるか。
公明は比例代表で計約711万票を獲得した。選挙区数の289で割ると、各選挙区あたり平均で約2万5千票となる。自民公認候補で次点に2万5千票差以内で勝利したのは66人で、うち1人をのぞく65人が公明の推薦を得ていた。
単純計算では公明の推薦がなければ自民は選挙区当選187人(追加公認をのぞく)のうち65人が敗れて122人となり、比例の72人を足しても計194議席で、過半数(233)を大きく割っていたことになる」(産経 2021年12月3日)

たしかに現況では公明の支援をもらえないと65人の自民議員が当落の境から転げ落ち、自民は過半数割れを起こす危険があります。
ただし、同じことが公明党にもいえるのです。

「あたかも公明がカードを握り優位にあるように見えるが、逆もまたしかりだ。公明は候補を擁立した9選挙区で全員当選した。しかし、自民が公明候補を推薦しなければ、最低でも当選に5万票以上が必要な選挙区で全敗だった可能性が極めて高い」(産経前掲)

自民の支持を失った公明党は、小選挙区で全敗の可能性も出ます。
その可能性があるにもかかわらず自民党と敵対して再び野党に戻ることは考えにくい、と酒井氏は断言しています。
公明党は自公明連立で最も甘い汁をすってきた党です。
公明党がついて来るならよし、さもなくば連立の対象を入れ換えるくらいの気概を持って岸田氏は臨むことです。
さもないと、岸田氏まで公明党と同類と見なされますよ。

 

2021年12月10日 (金)

南極大陸に食指を伸ばす中国

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南極にはルールがあります。
南極大陸を無垢のまま保存するためには、「無主の土地」とせねばなりません。

南極はオーストラリア大陸の2倍以上に相当する約1400万km²という広大な面積をもっていますが、特定の国家、企業、あるいは個人が領有または所有してはいけない決まりになっています。
もし自由な開発を許したら、いま頃は南極大陸のそこここに各国のミニタウンが作られて、資源探査や開発の争いがたえないでしょう。
その広い経済水域も、各国が軍事力で占有しようと図り、領土紛争の火薬庫となります。

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南極が人類にもたらす真の恩恵とは

というのは、南極に領有権を主張する英国、ニュージーランド、フランス、ノルウェー、オーストラリア(クレイマンントと呼びます)に対して、それを認めない日本、ロシア、米国などの国々(ノークレイマント)があって利害対立から紛争に発展しかねなかったからです。
この未知の大陸を紛争の火種にはしない、永久に無主の大陸として保存する、そういう人類の叡知からうまれたのが「この南極条約だったのです。

南極条約は1959年5月に12カ国によって採択され、同年12月1日に調印、1961年に発効しました。
条約は14条で構成され、「南極の平和目的利用(第1条)」「科学調査の自由(第3条)」「領土権の凍結(第4条)」「核実験の禁止(第5条)」などが主たる項目です。
これに沿って、1972年のあざらしなどの海洋生物の保護条約、1980年の「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」、1991年に締結された鉱物資源採取禁止を定めたマドリード協定書(環境保護に関する南極条約議定書」)などが出来ていきます。
これが「南極条約体制」と呼ばれる国際ルール(国際法)です。
この南極条約は、20世紀外交の勝利と呼ばれています。

ただし、重大な欠陥がありました。
この成立過程から想像がつくように、大国間で利害対立があったために南極条約には罰則規定がないのです。
罰則なしの紳士条約であったのです。
たとえば、ある締約国が突然南極地域の領有権を主張し始め、勝手に軍事施設を作ったとしても、国際社会から批判を受けても鉄面皮だったら痛くもかゆくもありません。
つまり南極は、法の支配が不完全なのです。

もちろん南極を鉱物資源開発や軍事目的などに利用することなどできるはずがありませんが、それを画策している国が現れてしまいました。
あ~あ、またかい、という声が聞こえてきそうですが、我が中国です。
中国もこの南極条約の締結国です。
というか締結国ではないと、南極に観測基地を作れないからです。

中国はすでに5つもの基地を保有しています。

「20日以上にわたる工事を終え、5カ所目の中国南極科学調査基地となるロス海新基地が2月7日、イネクスプレシブル島で正式に定礎した。ロス海新基地は南極3大湾の1つであるロス海の沿岸に位置し、太平洋セクターと向き合い、南極地区の岩石圏、結氷圏、生物圏、大気圏などの典型的な自然地理ユニットが集中するエリアで、重要な科学研究価値がある。米国、ニュージーランド、イタリア、ロシアなどがこのエリアに7カ所の科学調査基地を建設しており、世界最大の海洋保護区もある。 中国のロス海新基地は4年後に完成する予定で、通年の科学調査ニーズを満たし、地質、気象、隕石、海洋、生物などの科学調査の条件を備え、リアルタイムの遠隔監視、航空保障作業を実現する」
(中国網2018年2月8日)

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5カ所目の中国南極科学調査基地が定礎_中国網

中国は、各国もやっている科学観測から逸脱し始めた、そう警鐘を鳴らすのはアレクサンダー・グレイです。
グレイはウォールストリートジャーナル(2021年12 月2 日)南極大陸の環境に脅威もたらす中国-軍事・商業利用を画策』と題した記事を寄稿しました。グレイは、米外交政策評議会(AFPC)の国家安全保障問題担当シニアフェローで、トランプ時代に大統領副補佐官代行、国家安全保障会議(NSC)のチーフスタッフを務めた人物です。

「中国は、過去10年間に南極での存在感を大幅に高めてきた。現在中国は、南極大陸に5つの研究施設を有している。中国政府は、南極点に恒久的な空港を建設する意向を表明しているほか、南極内陸部の氷床最高地点であるドームA地区に崑崙基地を展開している。
こうした動きは、南極大陸の最深部にまで恒久的な足場を拡大しようとする中国の意図を示している。中国の原子力砕氷船の開発は、これら施設への容易なアクセスを同国政府に保証するものだ」(WSJ前掲)

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南極の中山基地、設置30周年を迎える_中国国際放送局  

中国は南極大陸の最深部に崑崙基地を設け、ここを足掛かりにして大陸内部に大きく進出しようとしています。
そのためのロジスティクを確保するための大型滑走路や衛生通信施設、レーダー基地も建設しました。
そしていまや原子力砕氷船を建造して、恒久的なアクセスを築く計画のようです。

これらはすべて科学調査の域を超えて、軍事転用が可能なものばかりです。
そのためか、中国の南極基地要員には多くの軍人が含まれているようです。
いうまでもありませんが、南極条約違反です。

「ニュージーランドの政治学者、アンマリー・ブレイディ氏(略)のような科学者の話や各種報道によると、中国人民解放軍の当局者らが同国の南極研究基地に多数派遣され始めているという。
軍当局者の活動には、米国の極軌道衛星の運用に障害となりかねないレーダー施設の建設も含まれている。中国政府が他の締約諸国に通知することなく軍人を派遣していることは、南極条約違反となる」(WSJ前掲)

そしてもうひとつの中国の野心は経済開発です。
今は南極条約によって、南極と南極海の資源・エネルギー資源はマドリード議定書によって探査すら禁止されています。
ところが中国は南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)の年次会合で、南極大陸の鉱物・エネルギー資源の潜在的規模について報告しているのです。
はて、おかしいとは思いませんか。
南極条約では資源探査自体が禁じられているのですよ。
いったい中国は、何時どのような手段を使って南極の資源の潜在的規模を知り得たのでしょうか。

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中国の南極内陸崑崙基地隊が南極のドームA登頂

その中国の下心が透けて見えるのは、中国が近年2048年にはマドリード議定書の採掘禁止期限が切れて採掘可能となると主張し始めていることです。

「南極における中国の主な目的は、経済的なものであるように見える。これにより、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)の年次会合では、海洋生物の保護が再び議題になっている。中国のアナリストは度々、南極と南極海の鉱物・エネルギー資源の潜在的な規模について推測している。マドリード議定書は、そうした探査を一切禁じている。
これゆえに、中国の学界には、まともな法学者であれば支持しない説を広めるための奇妙な取り組みが出現した。それは、2048年に議定書の採掘禁止の期限が切れるため、同大陸の鉱物資源の採掘が始められるという説だ。その際には議定書の見直しがなされる予定だが、採掘禁止が解かれる公算は小さい」(WSJ前掲)

中国の主張に従えば、2048年以降、好き放題に採掘したもの勝ちだということになってしまいます。
珍妙な条約解釈なので中国以外はそう考えていなくとも、中国だけはそれができると信じているようです。
おそらく世界各地で資源・エネルギーを爆買いしているこの国ならやるでしょう。
そして環境保全に世界一甘いこの国は、南極を汚染にさらすかもしれません。

とまれ実際に、中国が南極大陸でなにをしているのか、どのような施設を持っているのか、国際社会は知らないのです。
それは中国が、南極条約が義務づけている査察を受け入れていないためです。
まずはそこからです。

「米国やその同盟国には、南極大陸に関する中国の野心について十分に理解できていない部分が多く存在し、2015年以降は稼働中の中国の研究拠点に関して条約が義務付けている検査を一切行えていない。
南極での米国の伝統的なパートナーであるオーストラリアとニュージーランドも同様に検査を怠っている。米国が使える砕氷船や極地に対応したC-130輸送機の維持に苦労していることは、南極の現状を維持する取り組みの妨げとなっている」
(WSJ前掲)

しかし哀しくや、南極近隣諸国であるオージーやNZ、そして米国は南極観測予算の低減によって苦しい運営を迫られていることに較べて、中国だけがひとり原子力砕氷船を建造し、基地を増設し続けています。
力の差が開きつつあるのです。

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グレイは、バイデンが今なすべきことをしないと取り返しがつかないことになると警告しています。
できることは色々あるはずです。
まずは手始めに、南極条約の枠組みが骨抜きにされないように、国際会議の場でしっかりと補強することです。
特に、今、中国によって脅かされようとしている経済開発の鉱物資源・エネルギー開発が、2048年以降も禁止措置が継続されることを確認せねばなりません。

そしてもう一つが、中国が南極大陸でなにをしているのかを、条約締結国が共同で査察することです。

「米国は今後到来する南極の夏場に、ニュージーランド、オーストラリアと協力し、南極内の複数の基地に対する調査を実施すべきだ。米国も自国の基地に対する他国による同様の調査を歓迎すべきだ。中国に隠すものが何もないのであれば、同国も同じことをするだろう」
(WSJ前掲)

前述したように、南極条約は20世紀の外交的成果でした。
これによって南極は無主の土地として保護されてきました。
この無垢なる大陸を我欲で汚すことを許してはなりません。

でも、やりそうだな。
48年まで何だかんだと引き延ばし、なるやいなや待ってましたとばかりに採掘開始。
たちまち立ち並ぶリグの群れ。それを守るは中国軍。
南シナ海の南極バージョンです。

2021年12月 9日 (木)

岸田政権の北京五輪対応が見えた

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わが国の北京五輪対応が見えてきました。

「中国政府は今年7月の東京五輪開会式に苟仲文(こう・ちゅうぶん)国家体育総局長を出席させた。このため、日本も外交上の「返礼」として、北京五輪に同じ閣僚級を出席させる案も取り沙汰されてきた。
ただ、中国の人権問題などに対する批判が欧米で拡大。与党などからも首相や外相ら閣僚の出席は国際社会に誤ったメッセージを与えるとの指摘が出ていた。
政府内では、閣僚ではないスポーツ庁の室伏広治長官や日本オリンピック委員会の山下泰裕会長を派遣する案が浮上している。苟氏は閣僚級だが、中国オリンピック委員会のトップも兼ねる。
政府関係者ではない山下氏を派遣することになれば、外交的ボイコットを打ち出した米国と一定程度足並みがそろうとみられる。政府は中国側の対応や米国以外の先進7カ国(G7)の動向なども見極めつつ、最終判断する見通しだ」(産経12月8日)

ヤッパリこうなるのね(ため息)。岸田さんらしい。

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外交的ボイコット」米中“はざま”日本は|日テレNEWS24

米国の顔を立てねばならないし、かといって中国を怒らせるのはもっとコワイ、だから中とってJOC会長の山下さんや、スポーツ庁の室伏さんを出すということのようです。
こういうときは、外交比例の慣例に従って淡々と決めればいいだけです。
外国との関係は、対象国がした分だけ対応すればいいのです。
たとえば東京の某市長が外国人参政権の条例を作るなんて言い出していますが、それは当該の外国人の母国が在留邦人に同等の資格を与えたら、その時考えればよいことです。

この場合、東京五輪に中国が国家体育総局長を出してきたのですから、こちらがそれより格上の次官や、ましてや首相・閣僚級を出す必要はそもそもありません。
相応の局長級の役人を出せばいいだけのことで、JOC会長などは格上にすぎます。
せいぜいが文科省スポーツ・青少年局長くらいで充分です。

ただし問題はそこではありません。
わが国の「顔」がまったく見えないことが問題です。
米国に言われたからやる、G7の動向を見て決めるですか、その前にやることはいっぱいあるでしょうに。
まず、この彭帥氏失踪事件を日本政府がどのように考えているのか、岸田氏はまったく国民に説明していません。
この失踪事件に対してどのように政府が考えるのか、そこのところを国民に説明するのが先でしょう。

順番が逆です。
この彭帥選手事件について、わが国はこう考えた、だから五輪についてこう対応する、そこで人選としてはこの人あの人と続くわけで、いきなり誰出したらいいんだろう、ではないのです。(あたりまえだ)

にもかかわらず、まず小手先の誰を送るかから入ってしまう、あまりこういう表現は使いたくないのですが、これぞまさしく戦後日本の骨身に染みついた哀しき従属国根性というやつです。
ただ、岸田政権は顔色を伺うボスがふたりいるようで、どちらの顔を立てたらいいのかで迷ったようです。

昨日も紹介したウォールストリートジャーナルの社説は、こう述べています。

「中国が誠実であれば、彭帥さんを出国させ、告発について自由に語らせるだろう。WTAの要求に対する同国の対応を見ると、外国企業が国際的に認められたルールを中国に守らせることができなければ、中国に独自のルールを押し付けられることになることを改めて思い知らされる」(WSJ前掲)

そのとおりです。中国に国際ルールを守らせられなければ、私たちが中国が勝手に作ったルールに従うことになるのです。
たとえば、今回、五輪に選手団を送るそうですが、その選手たちが共産党の気分一つで消息不明にならないという保証がどこにありますか。
中国は、日本が米国の外交ボイコットへ加担したとして報復をする可能性があります。
公然と米国に報復するのを待て、と外務省の報道官が口にする国ですからね。
というのは、拉致・監禁・人質を外交手段にするのが、この国の常套手段だからです。

2010年に起きたフジタ事件というのをご存じでしょうか。
沖縄県・尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突した事件で、海保が漁船員を拘束したことに対して、まったく無関係な仕事で中国現地で仕事をしていたフジタの社員4名を逮捕拘留した事件です。

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日本領事、中国で拘束中のフジタ社員と面会|日テレNEWS24

「フジタ事件は、尖閣諸島周辺で起きた漁船衝突事件で日中関係が悪化した後に発生。高橋さんらフジタと現地法人の日本人社員4人は昨年9月20日、石家荘市内の軍事管理区域に許可なく侵入、不法に撮影した疑いで拘束された。
高橋さん以外の3人は同30日に釈放されたが、高橋さんだけが長期間拘束され、5万元(約60万円)の保釈金を支払って昨年10月9日に保釈され、帰国した」(共同2011年10月9日)

このようにいったん外交的摩擦が起きれば、直ちに手近の日本人を逮捕拘束し、外交交渉を有利に運ぼうと企てるのが、中国という国です。
今回の日本の外交ボイコットもどきで、中国が自由主義諸国に報復しようとするなら、最も弱い環の日本を狙ってくるでしょう。
人質なんかを取られたらなんでも言うことをハイハイと聞く国、そう思われていますから。
かつて福田総務会長の祖父が首相をしていたときに、人質にとられると「生命は地球より重たい」とか言って、テロリストを巨額な資金つきで釈放したことがありましたからね。
だから、日本はおもねることなく毅然と対応しておかねばならないのです。

差し当たって、日本政府は中国政府に対して質問をしてみましょう。
そうですね、WTA(女子テニス協会)にならったものになるでしょうが、こんなかんじでしょうか。

五輪に選手団を送るに当たって、その安全を確保するためにお伺い致します。
質問その1・貴国が彭帥選手に自由な意思疎通を許していないと国際的批判を受けていますが、それは事実でしょうか。
質問その2・貴国は事実でないと反論されていますが、ならばなぜ彭帥選手が外国の記者団の前に姿をあらわさないのでしょうか。
質問その3・彭帥選手が主張した性的暴行の主張は事実でしょうか。
質問その4・なぜそのツイッターは即座に削除されたのでしょうか。

まぁ、こんななまぬるい質問でも、まともに返答が返ってくるとも思えませんが、ならばその対応自体が「答え」なのです。
その答えを見てから判断しても遅くはありません。
そしてその答え次第で、日本版グローバル・マグニツキー法を制定を実現するべきです。
え、中国が更に反発するだろうって?
怒ったら、なにか思い当たるフシでもおありなのですか、と答えたらいいだけのことです。

ところで、三浦瑠麗氏がこんなことを言っているようです。

「選手団を送ることになってよかった」とスポーツ選手の参加に影響しなかったことを安堵(あんど)しつつも、冷戦や地域紛争などが続いても行われてきたスポーツの祭典を「ちょっと無視している」と米国の判断を非難。
新疆ウイグルなどのこうした問題に中国政府が「1回で言うこと聞くことないでしょう」とボイコットは効果な策でないとし、「おそらく中国って国は今後もずっと大国なんで。何十年、何百年にわたってずっと外交的にボイコットするんですか?…っていう先例つくっちゃうわけですよ」と良き選択ではないととがめた。 続いて「スポーツの場ではやってほしくなかった」とも訴え、「日本としては、とにかく米国に追従はしないこと。自分の頭で考えて行動することですよ」と日本政府に対しては安易に米国の対応に足並みをそろえるべきではないと強調した」
(中日スポーツ12月7日)

この人は時々おかしなことを言います。
百年続く北京五輪?悪夢じゃあ!
五輪を政治的に利用してきたのは、常に中国の側です。お間違えなきように。
「1回で言うことを聞くわけはない」ですか。国際政治学者とも思えない言いぐさです。
逆に三浦さんは1回で済むと思っていたのですか。
当たりまえですが、五輪だけで済むわけはありません。
だから恒久的対応をするために、包括的人権法であるグローバル・マグニツキー法を作らねばならないのです。
そして中国が国際的批判に耳を貸さず、人権弾圧と少数民族浄化の態度を改めないかぎり、「何十年、何百年」も息長く続けるのです。

そもそも今回の米国の外交的ボイコットなど、制裁とすらいえない五輪関連の制裁で最も緩いモノにすぎません。
山口敬之氏によれば、五輪制裁はこのような段階があります。




  1. 外交ボイコット(開会式に政府代表を派遣しない)
  2. 国旗国歌ボイコット(開会式などで自国旗・自国歌を使用させない)
  3. 開会式ボイコット(開会式に選手を出席させない)
  4. 全ボイコット(五輪に選手団を派遣しない)
  5. 開催地変更

バイデンは完全に腰が引けていて、かといって国内的にも国際的にも何もしないという選択肢がなかったためにやむをえず一番軽いモノを選んだにすぎないのです。
それを三浦さんは「100年ずっと続けるのか」ですか、オーバーな。

 

 

2021年12月 8日 (水)

「価値観の踏み絵」としての北京五輪

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米国が北京冬季五輪に外交的ボイコットをすることを公式に表明しました。
「外交的ボイコット」とは、北京五輪に米国外交団を出席させないという意味で、選手は出場します。
トランプならスッキリと完全ボイコットでしょうから、そのハードルは低いとは言えます。
実際に中国は、痛くもかゆくもないといっているようです。

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アメリカが北京五輪の外交的ボイコットを発表|TBS NEWS

「アメリカのバイデン政権は、来年2月と3月に開かれる北京オリンピックとパラリンピックについて、政府関係者を開会式などに派遣しない「外交的ボイコット」をすることを明らかにしました。
中国の新疆ウイグル自治区などでの人権状況が理由だとしていて、中国政府は強く反発するものと見られます。
アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官は6日の記者会見で「バイデン政権は北京オリンピックとパラリンピックに外交や公式の代表を派遣しない」と述べ、「外交的ボイコット」をすることを明らかにしました。
その理由としては、中国の新疆ウイグル自治区で、民族などの集団に破壊する意図をもって危害を加える「ジェノサイド」が続いていることなど、中国政府による人権侵害を挙げました。
サキ報道官は「人権侵害が行われている状況下では通常どおりに対応するわけにいかないというメッセージになる」としています。
一方で、選手団は派遣する方針だということです」(NHK 2021年12月7日)

これに対して太田光並に下品で有名な「戦狼」外交官は、米国に代償を払わせてやると息巻いているようです。

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米“外交的ボイコット”発表 中国「代償支払うことに」 北京五輪まで59

「中国はボイコットに反対し、「確固たる対抗措置」を取るだろう、と外務省報道官趙麗建は言った。
「オリンピックを妨害しようとする米国の計画は失敗に終わり、道徳的権威と信用の喪失につながる」と、趙氏は12月7日ロイターを引用して中国の首都で行われた定例記者会見で述べた。
彼はまた、ボイコットはオリンピックの原則に反していると付け加え、スポーツに政治を持ち込むのをやめるよう米国に促した」
(VOI2021年12月7日)

なにがスポーツに政治を持ち込むな、だ、中国に言われたくはありません。
ありとあらゆる場を国家のプロパガンダととらえてきたのは中国だったはずだ、なんてヤボを言っても仕方がない。
もう政治のステージに五輪は乗ってしまったのです。

外交的ボイコットは戦術としては完全ボイコットよりはるかに落ちる「穏便な」ものには違いありませんし、外交団がいるかいないかは観客の眼からはまったく遮蔽されて見えないものです。
中国とIOCは完全になにもなかったが如く振る舞うでしょうから、外交部が言うように「アメリカの政治家が招待されてもいないのに外交的ボイコットをあおるのは、自意識過剰であり、大衆迎合で人気取りの行動だ」(CNN) というのは、その限りではそのとおりです。

中国の面白さは、痛ければ痛いと大声で叫ぶことです。
ですから今回のように「痛くないぞ」と言うのは、大いに痛いことの逆説的表現なのです。
特に、習は自分の足元に慕い集まる世界の国々の眼前で、頬を張られた気分のはずです。
どのような報復をするか、「眼をこすって」楽しみにしてきいましょう。

さてバイデンが個人的に「中国の古い友人」(習の表現)であろうとなかろうと、米国がこのまま北京五輪になんの対応もしないという選択肢は存在しませんでした。
まず国際社会では、バイデンみずからが招聘した民主主義サミットが、12月8、9日にオンラインで開かれます。
これは民主主義という価値観を共有する国々のサミットですから、人権と自由がテーマでなくてはなりません。
民主主義サミットで、バイデンが持ち出さなくとも中国の人権問題がその中心議題になるのは必至で、おそらく共同声明には厳しい中国非難が盛り込まれるはずです。
ですから呼びかけ国のバイデンが、自分が仕掛けた民主主義サミットを目前にして、自由主義陣営の盟主として指をくわえている選択肢は初めからなかったのです。

また国内的には、米国議会では今、上院で全会一致で通過している北京五輪外交ボイコットを含む「対中包括法案」が下院で審議中です。
本来はとっくに通過せねばならないのに審議が遅れ遅れなのはどうしたことだ、これはビジネスが人権より大事なバイデンとペロシが仕組んだことだと共和党が追及し始めています。
実際に、元国務長官のケリーは環境特使として、中国と環境ビジネスで談合を繰り広げているわけで、ここで中国ともめたくはないというのは事実です。
ただし、これはすべての自由主義陣営に属する国に言えることですが、北京五輪はいまや人権を擁護する民主主義国であるか否かを問う「踏み絵」なのです。

また、すでにEUはすでに外交的ボイコットを決定しており、ドイツやフランスなども外交的ボイコットの姿勢を見せています。(ちなみにドイツ新政権は、中国にきわめて強い姿勢で望んでいます)
アジア・オセアニアでも、オージーは前向き検討中で、クアッドでインドを除けば対応が不透明なのは、わが国だけということになりました。

そしてもうひとつバイデンの尻を叩いたのが、WTA(国際女子テニス協会)の中国に対する毅然とした対応でした。

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WTAが中国での大会当面中止…彭帥さん問題への懸念で | Sportingnews

「WTA=女子テニス協会は1日、中国の前の副首相に性的関係を迫られたことなどを告白したあと、行方が分からなくなったと伝えられている女子テニス選手を巡り「中国はこの問題に信頼できる対処をしていない」などとして香港を含む中国でのすべての大会を中止すると発表しました。
中国の女子プロテニスの彭帥選手をめぐっては、共産党最高指導部のメンバーだった張高麗前副首相から性的関係を迫られたことなどを告白したとされる文書がSNS上に投稿され、その後、行方が分からなくなったと伝えられています。
WTAではこれまで中国政府に対して透明性を確保したうえでの調査を求めてきましたが、WTAのスティーブ・サイモンCEOは1日、公式ホームページで声明を発表し「中国の指導者たちはこの非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない」などとして「香港含む中国で開催されるすべての大会を直ちに中止する」ことを明らかにしました。
このほか声明では「彭選手の居場所は明らかになったが、彼女が安全で自由かということや、検閲されたり強制や脅迫されていることに深刻な疑問を抱いている」としたうえで、現在の状況を踏まえて「来年、中国で大会を開催した場合、すべての選手やスタッフがリスクに直面する」などとして大会を開催した場合の安全性に懸念を示しました。
そして、テニス界における中国の経済的な影響の大きさを考慮しても「彭選手とすべての女性に正義がもたらされることを願っている」としています」
(NHK 2021年12月2日)  

まことに見事な対応です。
これはバッハ会長自ら中国と結託して彭帥選手問題を闇に葬ろうとすることの対極にあります。
このような大きな国際競技団体が中国の人権問題で立ち上がるのは、本当に心強いことです。
ウォールストリートジャーナルは、このような社説を掲載していました。

「WTAのスティーブ・サイモン会長兼最高経営責任者(CEO)は1日に新たな声明を発表し、この件について必要なのは「彭帥選手の性的暴行の告発に関して、検閲を行うことなく、全面的な透明性のある調査を行うことだ」と繰り返した。中国のメディアは彭帥さんの動画を公開し、彭帥さんは国際オリンピック委員会(IOC)にビデオ通話で自らの無事を伝えたが、WTAは彭帥さんが自由に発言しているのか確信が持てないと述べている。これは正当な言い分だ。
サイモン氏は言わなかったが、われわれは言う。IOCは信用できない。2月に北京で冬季五輪の開催を控え、IOCの関心は彭帥さんに関する全てのことを問題なく見せることにあるからだ。
 サイモン氏はこう続けた。「その結果、WTA理事会の全面的な支持を得て、香港を含む中国で開催される全てのWTAトーナメントを直ちに一時中止することを発表する。道義上、彭帥選手が自由な意思疎通を許されず、性的暴行の主張を否定するよう圧力をかけられているように見える状況で、WTAの選手に中国で競技をするよう要請することはできない」」
(ウォールストリートジャーナル 2021 年12 月2 日)

中国ビジネスと関わるスポーツ関係者は、米国に止まらず常にダブルスタンダードで臨むことが常識となりかかっていました。
米国の場合、自国ではBLMやMeTooに共感して人権非難の対象にする行動も、こと中国政府が関わるとなると腰が引けて沈黙する者が大多数でした。
ウォールストリートジャーナルはこの社説で、米国のスポーツビジネスが香港問題で沈黙し、ウィグル人権問題でもなにも言わない態度を強く批判しています。
WSJは社説をこう締めくくっています。

「中国が誠実であれば、彭帥さんを出国させ、告発について自由に語らせるだろう。WTAの要求に対する同国の対応を見ると、外国企業が国際的に認められたルールを中国に守らせることができなければ、中国に独自のルールを押し付けられることになることを改めて思い知らされる」(WSJ前掲)

まことにそのとおりです。
中国に人権のルールを守らせることができなければ、我々が中国のルールに従うことになるのです。

繰り返しますが、北京五輪は民主主義国家としての避けて通れない「価値観の踏み絵」です。
この国が民主主義を価値とし、自由と法の支配を守る国なのかどうか、それをを問うものです。
岸田氏が踏まないなら踏まないでもけっこう。
以後、そのような国としてわが国は扱われ、岸田政権も短命に終わるというだけのことです。
それがいかに大きな国益の損失か、岸田・林・茂木の3氏は考えてみることです。


2021年12月 7日 (火)

岸田政権、支持率急上昇の怪

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岸田首相の支持率が急上昇しているそうです。
12月分の読売の支持率調査では、内閣支持率が6ポイント上昇して62%となる一方、不支持率も7ポイント低下して22%でした。

「成長と分配を掲げる岸田首相の経済政策に「期待する」は59.3%、「期待しない」は36.6%。
政府の新型コロナウイルス対策を「評価する」は59.9%、「評価しない」は35.1%。
さらに、政府が来月から始める方針の新型コロナワクチンの3回目の接種について、「接種したい」70.9%、「接種したくない」23.1%となった。
岸田内閣が進めるコロナ対策、経済政策への評価や期待がうかがえる。その一方で、評価が割れる政策もあった。
政府与党は、18歳以下の子どもに対し、親の年収が960万円未満なら、現金・クーポンあわせて10万円相当を給付することを決めた。これについて質問したところ、
適切だ 19.6%
所得制限を設けず一律に給付すべきだ 16.9%
所得制限を引き下げるべきだ 27.1%
子どもに限った給付は必要ない 33.7%」
(FNN11月15日)

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FNN

岸田さんには恨みはないのですが、思わずクスクスと笑ってしまいました。
だって、「コロナ対策の評価と経済対策の評価」って、あーた岸田さんはコロナ対策で小指一本動かしていませんよ。
10月になったばかりですからしょうがないのですが、言っただけでやったのは例の「3日鎖国」だけです。
後はすべて菅氏が引いた線路の上に乗っていただけで、汗ひとつかかないでその成果だけ独り占めできただけのことです。
まことにラッキーでした。
やったのはこれだけです。

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www.hokkaido-np.co.jp

今、東京都でも新規感染者が一桁で落ち着いているのは、メディアが必死になってディスった菅首相の功績ですから、メディアの皆様お間違いなきように。

それでも私は、「3日鎖国」については、できるだけ優しい目線で見ようと務めました。
そうだよね、危機管理は最悪を考えてやるのがいいんだもんね、というふうに考えようとしたのですが、たぶん安倍氏や菅氏ならそうは発想しなかったでしょう。
いつもは鬼の様なコロナ対策をしているので有名なイスラエルは全世界からの入国制限をかけていますが、それですら14日間の限定つきです。
他の諸国は米国ですら対象国を限定して、その特定国からの渡航制限と入国禁止をかけています。

ではなぜ、イスラエルが14日間と期限つきなのでしょうか。
その理由は、いまはまだ判らないオミクロンの感染力や毒性が明らかになるのに、そのていどの期間が必要だからです。
だから2週間と切ったのです。
WHOが日本の対応は理解不能だ、という意味のことを言ったのはなんの情報もないうちから過剰な対応をとることが、国際社会にとってもマイナスだからです。

「世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は1日、新型コロナウイルスのオミクロン株出現を受けて日本が導入した全世界を対象とする外国人入国禁止措置について「疫学的に原則が理解困難だ」と指摘した。「ウイルスは国籍や滞在許可証を見るわけではない」と述べ、自国民か否かで判断するような対応は「矛盾している」と批判した。
WHOは渡航の一律制限に否定的な見解を示し、ウイルス検査などを活用するよう呼び掛けている。ライアン氏は1日の記者会見で、日本の対応について「公衆衛生上の観点からも論理的とは言えない」と語った」(毎日12月8日)

WHOはしゃもない機関ですか、この言い分はそのとおりです。
ウィルスは国籍で宿主を決めるわけではありません(あたりまえだ)。
日本人だから罹らない、外国人だから罹ると言うものでない以上、外国人だけを対象とした新規入国全面禁止措置は疫学的に「矛盾している」のです。

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岸田さんは、記者のぶら下がりで「状況が分からないのに「私が全て負う覚悟でやってまいります」と言っていますが、そんなことは当たり前です。
まぁその後、国交大臣が、すいませ~ん、あたし聞いてなかったもんでやらかして大ボケかましましたが、メディアは煽ってくれた首相に恩義を感じてかさっぱり批判をしませんでした。
これが安倍氏や菅氏だったらどれだけ叩かれたことか。

それはさておき、このような「私が責任とるんだから」というような中小企業の社長みたいな精神論は国家の危機管理においてはむしろ危険です。
責任をとるのはあたりまえ、そこから先の話しをしているのです。
危機管理において責任者がすべきは、情報を一切隠蔽することなく完全に出すことです。
ていねいな説明と、この措置に至った科学的根拠を説明せねばならなかったのです。
岸田さんに「オレ、腹切る覚悟だから」と言われてもねぇ。

無期限で全世界相手に1カ月間なんて吹かした国はうちの国だけです。
たぶん、菅氏ならあらゆる手づるでオミクロン株の情報を収拾し、集めながら次の手を考えたことでしょう。
それでいいのです。
まだオミクロンが何者であるか分かっていない極初期に過剰な判断をする必要はありません。

こんなことをするから、ほら見なさい、事あれかし、世の中が不幸になることがなによりも好きなメディアに大好きな餌を盛大に撒いてしまいました。
なんせ首相自らがオミクロンはたいへんだぁ、大勢死ぬぞ、と大声で叫んでいるのですからね。
かくしてメディアはオミクロン祭りで浮かれています。

メディアは常に滑る性格ですからいいとしても、国民まで首相自らが(国交省航空局の独走だったそうですが)撒いた「オミクロンの恐怖」に楽しかるべきクリスマス気分が吹き飛んでしまいそうです。
年末のフィギュアグランプリも、ボクシングのビックマッチも、外国人が来られないので全部中止です。
景気回復の決め手の個人消費がこれで盛り上がるわきゃありません。
この経済の心臓に氷枕をあてるが如き全面入国停止措置は、今やっと立ち直ろうともがいている日本経済にとって、裸で町内一周マラソンをしてこいというようなスパルタ訓練になってしまいました。

こんな心臓ショックみたいなことをして、たった10万円をガキ相手に配ってどうなるのでしょうか。
お年玉に配った気分なのですかね。 配るなら全国民に配らんかい。
屁のつっぱりにもなりません。ただ公明党に配慮しただけ。
そう言えば、あのマヌケな国交大臣も公明党でしたね。

話を戻します。
菅政権時も含めて、この間のコロナ対応でもっとも問題だったのは、移動制限の自由や営業の自由という憲法に保証された市民の権利を、「お願い」で通してしまったことです。
緊急事態宣言は国民を大いに苦しめたのですが、その制限の科学的根拠はついに開示されないままでした。
制限解除の科学的根拠がわからないので、国民はほんとうにゼロコロナになるまで制限はつづくのかと天を仰いだものでした。
しかし国や自治体がやっていることは、違法ではないのです。
なぜなら政府や自治体はただ国民に「頼んだだけ」で、強制力を使っていませんから、あれはあくまでも命令じゃありませんから。
要請に答えて、国民が自発的にやっていることですから。
民度が高くてよかったですね。これが欧米なら暴動です。

こんな超法規を当たり前の顔をして延々2年ちかく続けた結果、政府に憲法違反の移動制限をかけることに鈍感な体質が生まれてしまいました。
今回の渡航の全面禁止措置は、実は国民の海外への移動の自由を制限したものであるにもかかわらず、満足な説明をしないでもよい、最悪オレが腹切ればいい、そう思う「癖」が政府に染みついてしまったようです。
それは官邸のみならず、官僚層にもはびこっていたことがわかったのが、この朝令暮改の顛末だったのです。

菅さんの時を見ていると、首相職とはこんなにも過酷、かつ報われないものかとため息がでたもんですが、岸田氏になればこんなことをやっていても支持率が63%になるんですから、そうでもないのかもしれませんね。

 

2021年12月 6日 (月)

ウイグル民族浄化、習の関与示す「新疆文書」が流出

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ウィグル族に対する民族浄化政策に、習近平自身の指示が関わっていたことを示す資料が見つかりました。

「中国による少数民族ウイグル族への人権侵害疑惑を巡り、習近平国家主席が先頭に立って弾圧を指示していたことを示す新たな証拠が浮上した。英国を拠点とする非政府組織「ウイグル・トリビューナル」が中国政府の流出文書の写しをウェブサイトに掲載した。
その文書は、新疆ウイグル自治区の動向を巡り、2014~17年に習氏や共産党幹部が非公開で行った演説の内容などが含まれ、一部は最高機密扱いとなっている。ウイグルへの強制的な同化政策はこの時期に策定・導入された。
それによると、習氏は少数民族に関して宗教の影響や失業問題の危険性について警告しており、新疆の支配を維持する上で、主流派である漢民族と少数民族の「人口割合」の重要性を強調している。
 ウイグル・トリビューナルはロンドンで、ウイグル族に対する人権侵害の疑いについて審問を開催している」(ウォールストリートジャーナル12月1日)
https://jp.wsj.com/articles/leaked-documents-detail-xi-jinpings-extensive-role-in-xinjiang-crackdown-11638321421

この新文書は「新疆文書」と呼ばれ、習近平をはじめとする中国の指導者たちが、少数民族ウイグル族の弾圧に関与していることを示す文書の写しと見られています。
この文書の表紙には、「習近平同志新疆考察」と記され、発行日は2014年4月30日とあります。
また表紙左肩には「絶密」(絶対秘密)とあります。

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BBC

BBCは、この文書は、ウイグル族に対する人権侵害を調べているイギリスの独立民衆法廷「ウイグル法廷」に9月に提出されたもので 、これまで一部が明らかになっていたが、今回の文書流出で今まで確認されていなかった情報が表面化したと伝えています。
この「新疆文書」は、WSJによれば「ウイグル・トリビューナル」(「ウィグル独立法廷」の機関紙)から 米ミネソタ在住の中国民族政策専門家、エイドリアン・ゼンツ、デイヴィッド・トビン、ジェイムズ・ルワードらが鑑定を依頼されて、その信憑性が裏付けられています。

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エイドリアン・ゼンツ WSJ

「30日に公表された文書の大半は2014年春のものだ。ゼンツ氏はこれに添えた要旨で、共産党の新疆政策に関する国営メディアの報道やその後に公表された政府文書と照らし合わせるなどして、文書が本物であることを突き止めたと説明している。 ゼンツ氏によると、ウイグル・トリビューナルは情報提供者を守るため原本の公表は見送り、出所が分かるような部分を削除して、文書の写しを公表した」(WSJ前掲)

これを読んだゼンツら複数の分析家らは、この文書の中には中国政府高官がウイグル族の大量収容や強制労働につながる措置を求めたことを証明する発言記録が含まれていると証言しています。


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BBC
たとえばこの文書の中で、習は「人民独裁の力を使って、宗教的過激派に致命的打撃を与えよ」と命じ、それは強制収容所政策につながり、「人口の割合を安定的にしろ」とも命じています。
この習の命令は、ウィグルにおける大量の漢族移民政策をもたらし、地元少数民族との人口比率の逆転現象を起こしました。
「習氏が14年の演説で最初に触れた発言がその後、政府の政策文書にも記され、党幹部らも度々その文言を言及しているなどとゼンツ氏は指摘する。
例えば、習氏は14年5月に新疆に関する会合で行った演説で、共産党は「人民の民主的独裁という武器の使用を躊躇(ちゅうちょ)すべきではなく、(新疆の宗教的な過激派勢力に対して)破滅的な打撃を与えることに注力すべきだ」と述べている。
さらにこの演説では、強制労働の疑いが持たれているウイグル族への労働プログラムの前触れともとれる発言があった。米国はこの強制労働疑惑を理由に、新疆綿を使った中国品の輸入を禁止している。
文書によると、習氏は「新疆の雇用問題は顕著だ。暇を持て余した大量の失業者が問題を起こす傾向がある」と指摘。その一方で、組織で働けば「民族の交流や融合につながる」と述べている。
また今回明らかになった別の演説で、習氏は「人口の割合と安全性は長期的な平和と安定の重要な基礎となる」と述べている。
その6年後、新疆における漢民族の割合が15%にとどまるのは「低すぎる」として警告した同地域幹部はその際、習氏のこの発言をそのまま繰り返している」(WSJ前掲)
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WSJ
ところで、この習の「新疆文書」が発行された時期が、2014年であることに注目下さい。
この2014年は、ウィグル族への政策の転換点に当たっています。
そのきっかけは、前年の13年に北京、翌14年には昆明市で起きた歩行者や通勤者を狙ったテロ事件がきっかけでした。
このテロに対して、中国はこれらの事件はウイグル族やウイグル独立派によるものだと非難します。
この直後の時期に、この「新疆文書」が出たわけです。
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「そして2016年以降、中国はウイグル族やそのほかのイスラム教徒を対象としたいわゆる「再教育」キャンプを設置し、信用できない兆候とみなされる行動をとった新疆ウイグル自治区の住民を取り締まりの標的にするなどしている。 このほど内容が明らかになった文書は、多くのウイグル族が暮らす地域(新疆ウイグル自治区)にちなんで「新疆文書」と呼ばれる。習主席や李克強首相ら中国共産党の指導者たちが、ウイグル族や中国のほかのイスラム教徒に影響を及ぼす政策に直接つながる発言をしていたとしている。
こうした政策には強制収容や大規模な不妊手術、強制的な中国への同化、「再教育」、拘束したウイグル族を工場で強制労働させることなどが含まれる」(BBC 2021年12月1日 )
イグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出 - BBCニュース
 Leaked papers link China leaders to Uyghur crackdown
2016年以前までは、中国共産党はソ連型の少数民族政策をとり、新疆ウィグル地区やチベット、内モンゴルなどに対して「民族融合」と称する政策を展開していました。
これは民族宥和政策の一種で、少数民族に名目上の政治的自治権を与えたり、一人ッ子政策の例外にし、競争の激しい大学入学試験での加点をするなどの優遇策を提供していました。

しかし2016年、習の鶴の一声でこの優遇政策は根本的に転換され、オーストラリアのラトローブ大学ジェームズ・レイボルド教授((中国少数民族研究) によれば「第2世代の民族政策」、すなわち民族浄化政策に突き進んでいきます。
その理由を中国共産党はこう述べています。

「共産党はかつて、少数民族にも漢民族と同等に発展できるだけの空間と経済的援助を与えれば、自然に同化すると考えていた。だが、習氏はもはやそのような戦略は通用しないと考えているとレイボルド氏は指摘する。 「経済発展が重要でないわけではなく、経済発展だけでは民族問題の解決にはならないということだq
その背景には、新疆を中心とした対立の激化、少数民族の優遇に対する漢民族の反感の高まり、そして国家の若返りを目指す「チャイナドリーム」を掲げる習氏自身の言動があると専門家は述べている 」(WSJ 10月11日)
https://jp.wsj.com/articles/chinas-communist-party-formally-embraces-assimilationist-approach-to-ethnic-minorities-11633743376

そしてレイボルトは、習が目指す建国100周年の2049年までに、この中華帝国を完成させるために少数民族問題を解決することが目標だと述べています。
特に力を入れたのが、中国共産党が言う「中国国家の集団意識の醸成」です。
下の写真はウィグルの少年先鋒隊の活動風景ですが、中国は特にこの若年層に対する工作に力を入れました。
これは中国版ピオニールですが、満9~15歳の男女児童が「自発的意志」で入隊するとされ、共産主義青年団の直接の指導を受けます。
学校ごとに組織されています。
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WSJ
「習氏が8月に開いた民族問題会議の後、国家民族委員会は「中国国家の集団意識の醸成」を、特に年少の生徒の教育システム全体に織り込むよう求める論説を発表した。 
さらに、少数民族と漢族の交流を促進すると言明し、他の少数民族の住む地域で、より多くの漢族を働かせることを提案した。これはチベット族やウイグル族の反感を買う共通の原因となっている。
委員会は習氏の言葉を引用し、「全民族の広範な交流と統合を促進し、理想・信念・感情・文化における全民族の統一を進め、互いに支え合い、深い兄弟愛を持つことが必要である」としている」(WSJ前掲)

またこのような「深い兄弟愛」の陰で、2016年以降、中国はウイグル族やそのほかのイスラム教徒を対象としたいわゆる「再教育」キャンプを設置しました。
そして公安当局にとって「信用できない兆候」とみなされたら最後、即収容所送りとなりました。

「ウイグル族を同自治区での綿花摘みに派遣するなど、強制労働戦略も進めている。
人口抑制のためにウイグル族の女性に強制的に集団不妊手術を行い、子供を家族から引き離し、ウイグル族の文化的伝統を壊そうとしていることも報告されている。
アメリカやカナダ、オランダなど複数の国は、中国がジェノサイドや人道に反する犯罪を犯していると非難している。
中国はこれらの疑惑を強く否定。新疆での取り締まりはテロを防ぎ、イスラム過激派を根絶するために必要だと主張している。
収容所については、テロとの闘いにおいて、収容者を「再教育」するための有効な手段だとしている。 」
(BBC前掲)

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、ウィグル弾圧にこのようなハイテクが駆使されているとしています。

  • 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、ウイグル人イスラム教徒に対する中国の組織的な弾圧を記した公文書を公表した。
  • ある文書には、ファイル共有アプリ 「Zapya」 を通じて禁止コンテンツを共有したとされる4万557人を当局が特定した方法が記述されていた。
  • ICIJによると、Zapyaは宗教的な教えを共有することをユーザーに勧めているという。中国政府はウイグル人とイスラム教を脅威と見ている。
  • 文書は、4万557人全員を調査し、無実であることが証明できない限り「再教育」収容所に送るよう命じていた。
  • 当局がアプリのユーザーデータにどのようにアクセスしたかは不明だ。しかし、中国政府はいつでもユーザーデータと通信内容の開示を事業者に要求する権限を持っている。
  • 機密文書によると、中国当局はファイル共有アプリを利用してウイグル人イスラム教徒を収容所に送り込んだ。
    (Business Insider Japan 2019年11月27日)
    中国はテクノロジーを駆使してウイグル人弾圧…公文書が流出も政府は否定 | Business Insider Japan

ICIJの入手した文書によれば、2016年7月から2017年6月の間に、新疆の180万人以上のウイグル人がこのアプリをダウンロードし、そのうちの4万557人が治安当局によって「有害」な人物であるとされました。
この「有害な人物」には、逃亡者、犯罪者、許可されていない宗教指導者などが含まれています。
なお中国においては、宗派が政府によって公式に認可された場合以外に、人々が宗教的に活動したり集まったりできないことになっています。

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ウイグル女性、収容所での組織的レイプをBBCに証言 米英は中国を非難

そしてこの文書は、疑惑をもたれた市民が自らの無実を証明できない限り収容所に送るように命じています。
また当局にはノルマが設定されており、「すべての地域で、詳細に調査・検証を行い、テロの疑いのある者に対しては、その証拠を確定し、法に則って取締ることが必要だ」と文書は述べています。
そして「疑いを晴らすことができない場合には、集中的な教育を行い、さらなる選別と評価を行う必要がある」としています。

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BBC

この収容所教育については、新疆ウィグル自治区の治安トップだった朱海侖の指示文書が流出しています。

「文書には、2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局のトップだった朱海侖氏が、収容施設の責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれている。
その連絡文書では、収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示。以下の点を命じている。
・「絶対に脱走を許すな」
・「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
・「悔い改めと自白を促せ」
・「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
・「生徒が本当に変わるよう励ませ」
・「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを(確実にしろ)」

別の文書からは、ウイグル人の拘束と収容の規模がわかる。
ある文書は、2017年のわずか1週間の間に、新疆ウイグル自治区の南部から1万5000人が収容施設に入れられたとしている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当責任者ソフィー・リチャードソン氏は、流出文書は検察当局に活用されるべきだと話す。
「これは訴追に使える証拠で、甚だしい人権侵害が記録されている。収容者は全員、少なくとも精神的拷問を受けていると言っていいと思う。自分がいつまでそこにいるのか、まったく分からないからだ。(略)
こうした指示を受けた収容施設について、人権問題に詳しく、ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の顧問をつとめる英勅選弁護士のベン・エマーソン氏は、収容者の人格改造が狙いだと話す。
『ひとつの民族コミュニティー全体を対象に作られ実行されている、巨大な集団洗脳計画以外の何かだとみなすのは、非常に難しい。新疆ウイグル自治区にいるイスラム教徒のウイグル人を、個別の文化集団として、地球上から消滅させようとしている。そのために彼らを完全に作り変えることを意図した取り組みだ』」(BBC2019年11月25日)
https://www.bbc.com/japanese/50542004


ウィグル収容所では、このような人権侵害という言葉を使う事もはばかられるような人間改造が行われています。
この民族浄化政策が、共産党の頂点に立つ習近平自身から直接に出ている文書が見つかったことの意味は大きいはずです。

 

 

2021年12月 5日 (日)

日曜写真館 日一日 天の空きゆく 散紅葉

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紅葉かつ散る 山椒魚棲む水の平ら 伊丹三樹彦 

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紅葉且つ散る轟音のごとく散る 金子兜太

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いま写します紅葉が散ります 種田山頭火

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ちる紅葉ちらぬ紅葉はまだ青し 正岡子規 

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冬紅葉全く散るを肯ぜず 阿波野青畝

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散る紅葉 初老の栞にするがいいと 伊丹三樹彦

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舞うては天 転げては地の 散紅葉 伊丹三樹彦

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有がたき神やもみぢの折心 土芳

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散ざまの猶美しき紅葉かな 尚白

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置ける如吹かれ来し如散紅葉 後藤夜半

 

2021年12月 4日 (土)

早くも馬脚、岸田首相

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あ~あやっちゃいましたね、岸田さん。
「完全封鎖」を数日で撤回。朝令暮改を絵で描いたような格好となりました。
朝日から嬉しそうに記事にされてしいます。

「「政府が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう、すべての航空会社に要請していた問題をめぐり、斉藤鉄夫国土交通相は2日、報道陣の取材に対し、要請を取りやめたことを明らかにしたうえで「国民の皆様に大きな混乱を与えてしまい、申し訳なく思っている」と謝罪した。
 斉藤氏は要請について「緊急避難的、予防という観点からスピード感をもって対応した」と説明した。一方、1日夕に政府が開いた新型コロナ対策会合で、松野博一官房長官から「国民生活に大きな影響を与えることについては慎重に対応するべきだ」と指摘され、対応を再検討したことを明かした。斉藤氏自身もこの会合後に要請について初めて知らされたとし、「情報の共有ができていなかった期間があり、反省したい」と述べた。
また、国交省はこれまで航空会社に予約の停止を要請した際も公表してこなかったが、今後は公表するかどうかを検討する考えも示した」
(
朝日 2021年12月2日)

岸田さん、どこが問題視されているのか分かっているのでしょうか。
いくつかあります。
どれも岸田氏が、政権を取る前から不安視されていたことです。

まず第1に、危機管理が最悪です。
この世界各国からの日本への航空便の新規予約停止方針は世界からもやるね、という受け止められ方をしました。
安倍氏でも菅氏でもオミクロン株の伝染力や毒性が分かってから新規予約停止に踏み切ったでしょうから、うまくすればガツンと岸田が見せたということになるはずでした。

それならそれで、この判断自体はいいと思います。
オミクロン株が仮にデルタ株並の力を持っていた場合、まちがいなく第6波になるのは必至だからです。
危機管理は多少滑っても先手先手を打つのが王道です。

ところがわずか3日後に斉藤大臣が在外邦人の帰国を言い出しして撤回したわけですが、だとすると今度は航路を封鎖した判断の時には、在外邦人の存在は念頭になかったということになってしまいます。
安倍氏が武漢ヘチャーター便を出し時には、同胞を救うという意識がありましたが、岸田政権にはそれがなかったということになりますが、そう理解していいのでしょうか。
ならばそれならそれでよい、とあえて言いましょう。
南アフリカの在留邦人には、救援機をチャーター便で出せばよいのですから。

いったんそれなりに強い意志で航路を閉めたのなら、それを貫くべきでした。
変えてはいけない。
機動的な運用と朝令暮改とは根本的に違うのです。
危機管理対応方針を初っぱなで変更したら、国民はもう岸田政権が何をしても信じなくなります。
おいおい岸田さんもうヘタレたのかと思っていたら、どうやら真相は違うようです。

と、ここまでなら方針転換したで済んだのですが、白状します。私は岸田氏をかいかぶっていました。
FNNはこのように報じています。

「実はこの混乱の裏には、国土交通省の“勇み足”とも取れる行動があった。12月1日に知ることとなった今回の日本到着便の新規予約停止。これは国交省が航空各社に要請したものだったが、実は3日も前の11月29日に行われていたことがわかった。しかも国交省から松野官房長官に報告があったのは、1日の報道があった後のこと。午後4時半から官邸で行われたタスクフォースの席上だった。さらに岸田首相に至っては1日夜になって報告されたということだ。つまり岸田総理も“寝耳に水”の事後報告だった」(FNN12月2日)

な~んだ岸田氏は寝耳に水だった、どうやらこれが真相なようです。あちゃー、もっと悪い。
国交省航空局の官僚が11月29日に独断で発令して、12月1日に松野官房長官に事後報告でそれを知り、岸田首相が知ったのが12月1日の夜、さらに当該の斉藤大臣は松野氏から教えてもらって知ったのが2日というのですから、もう失笑するしかありません。
だとすると岸田氏がトップダウンというのも偽りで、下僚がしたことを慌てて追認したことになります。

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私は岸田氏の念頭には去年の感染初動で、安倍氏が中国からの春節の観光客を入れてしまった教訓があったからこういう早手回しをしたと思っていました。
同じヘマはしない、オレなら率先して緊急対応してみせる、という意地があったとね。
どうやら買いかぶりだったようです。
実は岸田氏も寝耳に水だったのです。

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この経過がほんとうなら、斉藤国交相を前面に出してしまった理由がわかります。
岸田氏のトップダウンなら彼が前に出ますからね。

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日本到着便の「予約停止」要請撤回めぐり大臣が陳謝

そしてその斉藤大臣の弁明が、これ以上ないひどさでした。
対策会議で松野官房長官から「国民生活に大きな影響を与えることについては慎重に対応するべきだ」と指摘され、対応を再検討した」というのですからなんじゃこりゃ。
官邸と所轄大臣はなにも協議していなかったのですか。
そのうえ斉藤大臣自身が弁解していわく、自分もこの航空路閉鎖について初めて知ったというのですから、絶句。
斉藤さん、あんた所管大臣でしょう。
自分の所轄官僚が独断で行ったと平気で言っていいのか。
もちろん与党にいたっては一片の通告すらもらわなかったようです。

そもそもこんな初動の方針転換などまともな政府がやることではありません。
官邸から官僚への指揮命令系統が機能していないからこんなことになるのです。
斉藤大臣は、きのう夕方になって事後報告を受けたと発言していますが、ならば大臣の頭越の措置を官僚が独断でしたということになります。

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しかもその「独断」を3日間も知らなかったというのですから、これがほんとうなら斉藤氏は私は飾り物の大臣です、部下が勝手にやっていますと告白したも同然です。
よく恥ずかし気もなくこんなことが言えたものです。
斉藤大臣の言うことを信じれば、大臣決済を受けずに航路閉鎖要請を航空局が勝手に出したということになります。
情報が目詰まりを起こしたなんて軽いもんじゃなくて、大臣はただのお飾りの軽い御輿ということになります。

それとも逆に、うろたえた斉藤大臣が責任逃れに下僚を人身御供に出したということなのでしょうか。
だとすれば、
怒れ、官僚諸君。
やれやれ、どちらにしてもどうしようもない。ガバナンスのガの字もない。
これがまだ海のものとも山のものとも判らないオミクロン株だからよかったとはいいませんが、大災害だったらも今頃どうなっていたことか。

安倍氏には、菅氏というこれ以上望めないような強力無比の官房長官がついていました。
北がミサイルを撃てば朝5時から記者会見をしていたような人です。
菅氏がすこぶる強力に官僚を統制していたために、どれだけ安倍氏が楽だったことか。
岸田氏には菅氏のような凄腕の官房長官がいません。
ふらつく首相を時には叱り飛ばし、官僚、与党、時には野党にまで根回しができる官房長官は長期政権には絶対欠かせない存在なのです。

情けない話ですが、このようなことは予測されていました。
岸田政権への不安の一つは、この官僚統制が効かないことだったからです。

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産経

月刊文春で財務省現役事務次官の矢野氏が政府方針と違うことを吹きまくったのですが、岸田氏は大目に見ています。
官僚が政府方針に反対し、それを公然とメディアで吹聴することを許したら、政府には官僚ガバナンスがないということになります。
発言内容そのもの(それもひどいですが)だけではなく、このような政府をなめきった態度を我がちに誇るような馬鹿野郎は即刻解任処分にすべきでした。
財務省だから言えなかったのか、財務省は政府から独立した官僚組織なのか、それとも岸田氏の親族は財務省高級官僚だらけだから言えなかったのか、と言われてしまいます。

別に政府でなくとも、民間企業でも社長に公然と反逆した社員が社内に居る場所はありません。
役員なら解任して降格。社員なら左遷です。
これが社会のルールで、そんなことは企業も政府も一緒です。
これをお咎めなしにしてしまうと、もう社内ガバナンスは崩壊。
その後社長がナニを言おうと、社員は腹の中で舌を出して平気で面従腹背するようになります。

失礼ながらこの際ですから言ってしまうと、岸田氏はトップ向きのキャラではありません。
企業ならせいぜいが部長か、下級役員止まりの中間管理職的体質です。
上からは押えこまれ、下からは突き上げられ、仕事を任せられる子分も育てられないふわふわした人。
それが私の岸田氏に対するイメージでしたが、生憎あたってしまいました。

この事件が初期故障ならいいのですが、どうも岸田政権の本質的問題のような気がして憂鬱になります。
私はひょっとすると、可もなく不可もない長期政権になるかと思って見ていたのですが、どうも違うようです。
岸田政権に長期政権はむりです。
次回の国会では袋叩きになるかもしれませんが、しかたがないです。

 

2021年12月 3日 (金)

習小父さんはサンタじゃない

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アフリカには、国連総会なんぞよりズっと待ち遠しい会議がありました。
それは3年ごとに、中国がやっている「中国・アフリカ協力フォーラム」(FOCAC)です。
今年は、21年11月29日から30日までセネガルの首都ダカールで開かれました。

なんでこんなにアフリカの首脳がガン首そろえて待ち遠しいかといえば、それは習のサンタさんが、たくさんのプレゼントを抱えて来てくれるからです。
ヒッキーで有名な習さんも、下の写真のように15年にはここにだけは顔をだして大歓声で迎えられました。
習さんは国内にいる時には敵対派閥との熾烈な戦いで無表情な顔しかしませんが、ご覧ください、アフリカではこの人フツーに笑えるんですよ。

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習近平主席が中国・アフリカ協力フォーラム成果写真展開幕式に出席

「2015年12月、南アフリカのヨハネスブルクで「中国版TICAD」である「中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」の第6回会合が開催され、それに合わせて、12月4~5日に中国とアフリカの首脳会議が開催された。
中国は今後、アフリカ支援として600億ドル(約7.4兆円)の資金を拠出すると表明した。
中国の習近平国家主席は演説で、アフリカに対する「10大協力計画」を公表した。
今後3年間でアフリカの工業化、農業の近代化、インフラ整備、貧困や環境対策などを含む10の分野への協力を行うと約束した。
 拠出額600億ドルのうち、400億ドルを優遇借款や中小企業支援に、50億ドルを無償援助や無利子融資に、もう50億ドルを中国・アフリカ開発ファンドへ充てる予定。また、今回、新しく設立された中国・アフリカ生産力向上基金に100億ドルを拠出し、20万人の技術者の訓練や工業団地の建設も約束した。 
 FOCACは2000年から3年おきに開催され、首脳会議は2006年以来、今回は2回目で、初めてアフリカで開催された。今回のフォーラムはアフリカ側で大きく報じられ、PR効果は絶大だったようである」(住友商事グローバルリサーチ2015年12月18日)
https://www.scgr.co.jp/report/topics/2015121813042/

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住友商事グローバルリサーチ

なんと600億ドルですって、サンタですね。
しかも無償が多くてヒモつきにもしないですって、スゴイ!
住友リサーチがいう「PR効果は絶大」なんてもんじゃなくて、アフリカ諸国は文字どおり目の色を変えて飛びいたのはとうぜんでした。

たとえばコンゴ(旧ザイール)は、2008年にインフラ工事を整備してもらう約束をとりつけました。
もちろん、感謝の印に銅やコバルト鉱物資源の採掘権を中国企業に差し上げたのは当然のことです。
またケニアは、2017年5月に開通の運びとなったケニアのモンバサとナイロビ間358キロの鉄道建設のお金を借りました。
ケニアとっては国家予算の5分の1に相当する約36億ドルの買い物でしたが、やさしい習小父さんは中国の銀行から借り入れしてくれました。

ウガンダは、2015年11月に、エンテベ国際空港の拡張工事を中国におねだりしました。
これにもニコニコと習小父さんは中国輸出入銀行を紹介してくれて、年利率2%で約2億ドルを貸してくれました。
なんとおやさしい習近平様!もう同志と呼んでよろしいでしょうか。
アフリカに多い独裁者たちには、やってる感を国民にみせつけるための中国の「援助」を引き出すまたとない機会、それが中国・アフリカ協力フォーラムだったのです。

もちろん中国政府が、太っ腹の中国の超大国ぶりを世界に向けて大プロガンダしたのはいうまでもありません。
なにせ世界銀行やIMFの融資を凌いで、堂々世界一の債権国となったのですから。

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中国がアフリカ支援外交で打ち出した「5つのノー」の真の狙い |

わーい習のサンタさんだぁ、なぁ~んて言ってたら、やはり禍福はあざなえる縄の如しでした。
実は債務トラップだったのです。

コンゴの場合、しっかりと鉱物資源の採掘権は中国資本に押えられたものの、契約にあったはずの道路や31の病院と2つの大学の建設は手つかず同然で、さすがのコンゴ政府も21年8月には契約の見直しを言い出さざるをえませんでした。 
ただし、中国がそれに応じるかどうかは別問題です。
もちろんタダより高いものはなく、第一タダじゃないのです。

ケニアは2022年までに利息を含む36億ドル以上を返済しなければならないが、ない袖は振れません。
では出るところ二出ようと言っても、契約書には「借款国(ケニア)およびその資産は、主権を理由に返済を免除する権利はない」と明記されていました。
ウガンダが借りた2億ドルは、借款協定の期限が去年20年で切れましたが、ウガンダ側が7年間の据置期間終了後にも借款の返済を行うことが不可能と判明し、いまやウガンダ国際空港は中国が借金のカタとして取り上げるようです。
なおウガンダと中国の借款は、空港だけではなくカルマとイシンバにおける水力発電所建設と、カンパラからエンテベ空港までの高速道路建設(総工費4.76億ドル・約540億円)も含まれており、たぶんこれらもカタで取られると思われます。

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習主席、ムセベニ・ウガンダ大統領と会見_中国国際放送局

「UDNの政策担当役員ジュリエット・アケロ(Juliet Akello)氏は大紀元の取材に対して、中国は、厳しい融資条件を提示する従来の貸し手とは異なり、チャイナマネーはすぐにでも使用できるが、不公平な条件が付いており、ウガンダにとって「致命傷となる」巨額な債務負担になると述べた。
アケロ氏は、世界銀行の報告を引用して、中国の融資プロジェクトは従来の融資より4倍もの返済額になると説明した。「国がデフォルトになれば、中国は重要な国家資産の差し押さえなど、何でも取るようになる。こうした事態は、すでに他の国で起きている」
ウガンダ財務省の記録によると、同国は中国政府系の輸出入銀行を通じて、エンテベーカンパラ(Entebbe-Kampala)国際空港を結ぶ高速道路に3億5000万ドル、道路ネットワーク建設に1億ドル、イシンバ(Isimba)水力発電所に4億8300万ドルの融資を受けた。UDNによると、他にカルマ(Karuma)水力ダムなどもあるという」(大紀元2019年9月5日)

このように中国はアフリカを含む発展途上国に対する最大の債権国となっています。

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コンゴのように債務の6割も中国に占められた場合、中国の従属国に転落せざるを得ないでしょう。

「ドイツ拠点のシンクタンク・キール研究所は7月、ハーバード大学の債務専門家カルマン・レインハート(Carmen Reinhart)氏ら共同報告の中で、「中国はいまやIMFや世界銀行による融資をはるかに上回る世界最大の債権者」と例えた。
さらに、報告は「低所得の発展途上国は、たいてい中国国営銀行から直接融資を受けており、多くは市場金利で、石油などの担保で裏付けられている」とした。
ウガンダの国家財務監査官ジョン・ムワンガ(John Muwanga)氏もまた、不利な条件のついた融資を結んだことで、国の資産の一部を失うリスクがあると警告した。「融資に付随する国有資産が失われ、主権の喪失にさえつながる恐れがある」とムワンガ氏は述べた」(大紀元前掲)

アジアでもラオスとカンボジアが5割以上、ミャンマーが4割弱、中国へ債務を背負っています。
これらアジアの3国が、ASEANでゴリゴリの中国派だというのはご存じのとおりです。

そして中国は米国がイラクとアフガンに釘付けになっているこの20年間、せっせと世界帝国の基礎石を積み重ねてきました。
そしてチャイナマネーを花咲かじいさんよろしくアフリカ、アジア、中南米にばらまいたのです。ただし、紐付きで。

経済アナリストでマケレレ大学の経済学教授アーロン・ムクワヤ氏はこのように述べています。

「中国がすでにいくつかの国で債務の未払いをめぐって財産を没収しているならば、ウガンダでも起こりうることだ。
中国は、融資、インフラ構築、および通信技術5Gの導入を通じて、アフリカ、アジア、およびヨーロッパの一部の機能を制御し支配する計画がある。また、経済援助を提供する国に対して、中国語を教えている。実際、支援計画に伴って、多くの中国人もまた将来的な支配に備えて、ウガンダに来ている」
(大紀元前掲)

下図を見ると、習皇帝のアフリカ征服計画は順調に進んでいるようです。

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アフリカと中南米は、もはや中国の植民地一歩手前で、彼らは従順な中国の僕として、国連ではいそいそと中国支持に周り、各種国際機関のトップに喜んで中国が指名する人物に一票を投じました。
経済的にはアフリカとの貿易量を20倍にし、アフリカ最大の貿易相手国となっています。

「中国・アフリカ協力フォーラムは2000年に発足し、中国がグローバル化を本格化させ、以後中国は原材料が豊富にあるアフリカ大陸で大規模な戦略的投資を行った。
中国とアフリカ間の貿易規模は2002年の100億ドルから20年の2000億ドルと、20倍に増加し、中国は米国を抜いて、アフリカ大陸にとって最大の貿易相手国となった。中国はアフリカで全面的にインフラ建設を開始し、米コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーMcKinsey & Companyによると、2017年時点で、アフリカで就労、投資、ビジネスを行う中国人は約100万人に上ったという」」
(ルモンド『「アフリカと中国ー幻滅の瞬間』 2021年11月29日 原文英文)

ところが、今年のフォーラムでは、さすがにコンゴ、ウガンダ、ケニアの実例を突きつけられて、例年のような熱気が失せたよようです。
かつてアフリカに多くの植民地にしていたフランスのルモンドは、やや皮肉にこう書いています。

「アフリカと中国ー幻滅の瞬間」と題する分析報道を掲載した。3年ごとに開催される同フォーラムに習近平主席はオンラインで参加し、アフリカ各国も閣僚級を派遣した。アフリカの首脳にとって「国連よりも人気ある」同フォーラムが陰りを見せ始めている。「中国とアフリカの協力関係の盛況はもう終わった。(略)
近年、アフリカでは不均衡な貿易関係、負債の罠、エリート集団の腐敗、労働者権利の軽視など多くの問題を抱え中国への不満が高まっている。
仏国立科学研究センター(CNRS)の経済学者で、中国とアフリカ関係の専門家でもあるティエリ・ペローThierry Pairault氏は、「お金を使うだけでは経済を発展させることができないと誰もが認識した」「中国人にとっても、アフリカ人にとっても、これは幻想の終わりだ」と指摘した」(ルモンド前掲)

やさしい習小父さんの正体はバレてしまいました。
不要不急の計画に、返せない巨額のカネを貸し出し、債務トラップにかけて、身ぐるみはいで主権を奪う手口です。
まるで金融ヤクザの手口そのものですね。

日本のODAのコンサルタントをしている人の話を聞いたことがありますが、ある発展途上国のODA貸し付けを受けた時、日本側はこういう話をしたそうです。
6万人収容のスタジアムを要請されましたが、今あなたの国で本当にこれが必要ですか。その前に経済発展の基盤作りをしましょうよ。
え、港湾をお望みですか。でも、その港湾までの道路や通信インフラがないと、作っても立ち腐れになってしまいますよ。
それに港湾に船を整備するドックや船舶技術者も養成しなくてはなりませんね。
だから人作り教育にも力を入れましょう。ひとつひとつ計画を立ててゆっくり進むんです。
うーん、無償援助が欲しいですか。困りましたね。タダでもらったものは大事にしないんですよ。
返済計画を考えた長い投資計画を一緒に作っていきませんか。

今さらながらですが、中国と日本の途上国支援は真逆なのです。
日本は国作り、中国は国盗りです。
日本がその国の国作りを計画的に進めることを助けているように、習も自らの世界帝国を作るために計画的投資をしているのです。
ですから、一帯一路の海の道スリランカの港湾、中国へのオイルロードの玄関であるミャンマーの港湾。
そしてペルシャ湾の喉元ジブチの港湾、アフリカの空港などなど。
あと10年、20年もあれば、これらが繋がって大きな中華帝国を繋ぐ鎖となるはずです。
そこまでこの帝国が持てばの話ですが。

というわけで、ザンビアや南太平洋でも反中デモが拡がっているようで、世界帝国への道は今なお険しいようです。

 

 

2021年12月 2日 (木)

中国、ワクチンを10億回分追加提供

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中国はまるでサンタクロースのような国です。
アフリカ人民は伏して東方の「神」を拝むべきでしょう。
中国がアフリカに10億回分のワクチンを追加提供しました。
先進国がわれわれのワクチンを奪っていったと叫んでいたWHOのアフリカ事務局長は、さぞかし随喜の涙にくれたことでありましょう。

「【11月30日 CGTN Japanese】習近平Xi Jinping)国家主席は29日、アフリカ連合が定めた目標である「来年までにアフリカの人口の60%が新型コロナワクチンを接種すること」を達成するため、10億回分のワクチンを中国が追加提供することを発表しました。
 これは、中国・アフリカ協力フォーラム第8回閣僚級会議の開幕式で述べられました。習主席は、中国が今後、アフリカ向けの10の貧困削減・農業プロジェクトを実施して、500人の農業専門家を派遣すること、中国国内に現代農業技術の交流や研修のための中国・アフリカ合同センターを設立すること、中国の機関や企業によるアフリカの農業発展や貧困削減のモデル事業の立ち上げを奨励することを明らかにしました」(AFP

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海外・世界のコロナワクチン 最新情報・ニュース|NHK

中国のワクチンを受け取った国は既に10カ国、10億回分だそうです。

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https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/chinavaccine-1/

特に中国が一帯一路戦略の重点地域としているアジアと中南米は真っ赤かです。
濁った色は西側のワクチンとの併用です。

「英医療調査会社エアフィニティによると、中国は2020年11月から21年9月までに約10億回分のワクチンを109の国と地域に輸出した。そのうち約5000万回分が寄付だ。出荷先の大部分(約8億回分)はアジアと中南米が占め、中国の広域経済圏プロジェクト「一帯一路」に関わる国々が多い」
(日経『生産政治プロパガンダ「責任ある大国の虚実』 )
中国ワクチンギャンビット 「責任ある大国」の虚実:日本経済新聞

もっとも寄付は1割以下で、大部分は売っただけなんですがね。
それも後述しますがバカ高い値段で。

そして肝心な効用がこれがよくわからないのですから、困ったもんです。
というのは中国がワクチンの情報を開示しないために、効能を信じたくとも有効性の治験データーが不透明です。

そもそも御墨付きを与えたWHOの緊急使用承認からして、中国からの治験データーも見ないうちから中国ワクチンを続々と承認したようなものでした。

「世界保健機関(WHO)は6月1日、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製の新型コロナウイルスワクチンを緊急使用リストに追加した。これにより、新型コロナウイルスワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み「COVAXファシリティ」でも、今後、シノバック製ワクチンが使用可能となる。
今回、シノバック製のワクチンが承認されたことで、WHOの緊急使用リストに入った中国製ワクチンは2例目となった。1例目のシノファーム傘下の中国生物技術北京生物製品研究所のワクチンは5月7日にWHOの緊急使用承認を受けており、同社は「COVAXファシリティ」に提供するワクチンの量産を開始した(JETRO短信2021年06月09日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/048cb42c2965752d.html

治験データーの開示もなく、副反応の状況もようやく5月下旬になって中国CDCが出すありさまでした。
中国CDCの発表では、副反応の報告総数は3万1434件、接種10万回当たりでは1186件で、異常反応5,356件の内訳は、アレルギー性発疹が3,920件、アナフィラキシーが75件などだったそうです。
うち重篤なケースが188件出ています。

つまりWHOは安全性への配慮を欠き、有効性の確認がないままワクチンの世界配給システムCOVAX(コバックス)使用ワクチン、第1号、第2号に入れてしまったことになります。

「一部の国は中国ワクチンを信用しきれないでいる。
南アフリカは中国民営企業の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンの治験を始めたが「デルタ型への有効性について十分な情報がない」と判断。世界保健機関(WHO)が主導するワクチン分配の枠組み「COVAX(コバックス)」から提案のあった同社製ワクチンの受け取りを断った。ナイジェリアはシノファーム製ワクチンをいったん承認したにもかかわらず、他社製ワクチンを優先的に使っていくことを決めた」(日経前掲)

WHOのワクチン供給枠組みであるCOVAX(コバックス)は、中国に感謝感激雨あられとばかりに、中国ワクチンを押しつけましたが、南アフリカのように拒絶する国も出始めました。

一方、 西側は完全に出遅れています。
自分の足元でコロナが燃え盛ってしまったためにただでさえ遅れたところに、同盟国への供給を優先したために発展途上国向けが、中国と一桁違いとなっています。
ただし、米国のワクチン提供は無償で1億5000万回分提供しており、中国の5000万回分の3倍です。

「米国はワクチンの無償提供で攻勢をかける。バイデン政権はすでに合計1億5000万回分以上におよぶワクチンを寄付・寄贈したと発表しており、中国のほぼ3倍にあたる。
欧州の輸出国(オランダ、スイス、ドイツ、ベルギー、英国)は、あわせて7億3000万回分を世界に輸出してきた。欧米から合計139の国と地域がワクチンを受け取っている。欧米は出荷した国・地域の数で中国に勝るものの、輸出量の累計では中国に後れを取っている」(日経前掲)

ところで各国ワクチンの有効性は以下のようになっています。
下図はWHOがつくったもので、スプートニクV とシノバックが100%などは現実にはありえません。
ならば今、ロシアであれだけの再拡大になるはずがありませんし、シノバックの有効性については、1回目でわずか5%2回目で54%という惨憺たる結果が出ています。
ブラジルでは50.4%ですから、おそらくこのあたりが2回目の平均的有効性だと推測されます。

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日経 WHO

シノバックを使った国々で一斉に怒りの声が噴出しました。

「シノバック製ワクチンの有効性に疑問を呈する声も上がっている。アルゼンチンとスペインの電子紙「ラ・ポリティカ・オンライン」などによると、チリ大学の調査によると、シノバックのワクチンは1回目の接種での有効性がわずか3%であることが判明。2回目の接種後、2週間で有効性は54%まで上昇するが、最初の13日間の有効性は27%程度という。
また、ブラジルのブタンタン研究所が同様の調査したところ、シノバックの有効性は50.4%という結果が出ているという。世界保健機関(WHO)はワクチンを承認する際の有効性は最低50%としており、上記の調査結果のみで判断すれば、「すれすれの基準」ということになる」
(白石和幸『ワクチン接種猛烈に進む「チリ」感染激増のなぜ』 東経 2021年4月16日)
https://toyokeizai.net/articles/-/423208

またファイザーが88%と出ていますが、厚労省はこのような治験結果を公表しています

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ファイザー社のワクチンについて|厚生労働省

これは臨床結果でも実証されています。

「ファイザー・ビオンテック製やモデルナ製の場合、発症予防効果はどちらも90%以上に達する。世界規模で行われたジョンソン・エンド・ジョンソン製の有効性研究では、中程度から重症の予防効果は66%、重症の予防効果は85%、死亡の予防効果は100%だった5(CNN2021年7月10日)
https://www.cnn.co.jp/world/35173690.html

中国ワクチンの卸元のようになったWHOデータですら中国ワクチンの有効性は79%で、他のデータでは5割を切るものすらでています。
なにせ中国側が臨床や医療現場で得たデータを完全には開示していないのですからコワイ。
ですから、WHOのいう有効率と現実の臨床との間に著しい乖離が生まれています。

たとえば、中国の南米でのワクチン拡大の拠点としたのはチリでした。
チリは世界各国と貿易関係が盛んで、南米各国とも友好関係があるためにうってつけの広告塔と見たのです。
ちなみにロシアはアルゼンチンがスプートニクVの南米での拠点となったのと同じです。
中国はチリと提携関係を結ぶために、シノバックを今後3年間毎年2000万回分提供すると約束しました。
チリ側の薬学専門家を5日間シノバックの生産設備に招く厚遇ぶりだったそうです。

そしてチリはシノバック製ワクチンを大量購入して自国民へのスピード接種を始めたわけですが、まったく歯止めがかからず、21年4月には新規感染者数がかつてないほどに増加してしまいました。
このスピードは目ざましく、今年4月で2回目接種に入っていたほどです。
これは接種会場を全国1300箇所に増やすなどの手当てが功を奏したようです。
と、ここまでは素晴らしいのですが、かんじんの感染拡大が止まりません。

下図はチリの1日あたりの感染者数の推移(2020年3月5日~2021年4月14日)ですが、実線が7日間平均です。

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BBC 出典:チリ科学省(4月14日時点) 
https://www.bbc.com/japanese/56768894

「ところが、2回目の接種を終えている人が人口の21%に上るというのに、チリでは感染拡大が収まるどころか、1日8000人と過去最高レベルの新規感染者が出ている。人口の約9割が再びロックダウンの対象となっており、この現象に国内外の医学専門家の注目が集まっている。
チリでこれまで使用されたワクチンの93%は中国シノバック製のワクチン「コロナバック」で、残り7%はアメリカのファイザー/バイオテック製だった」
(白石前掲)

その上、中国ワクチンは中国製に似合わずお安くはありません。

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日経

「開示されている契約などをもとに国連児童基金(ユニセフ)が集計したデータによると、シノファーム製は15ドルから36ドル、シノバックは10ドルから33ドルで各国に輸出されている。モデルナのmRNAワクチンより安いが、ファイザー製よりは高価だ。アストラゼネカの「ウイルスベクター」型と呼ぶ、mRNAとは別の新型ワクチンと比べるとはるかに高い」(日経前掲)

シノファームのワクチンなど、西側のアストラゼネカの実に7倍の高値で、売りさばかれています。
売りさばくと書いたのは、中国ワクチンの半分は有償提供ですが、後から法外な請求書が回ってきてたまげないように。

とはいえ、これしかない国にとっては干天の慈雨で、ファイザーなど西側のワクチンはmRNA型で、マイナス20度から同80度という超低温で保存しなければならないのに対して、中国の簡単な冷凍施設で移動でき、接種できるのは大きなメリットには違いありません。

というわけで、いまだ西側のワクチンを蹴散らして快進撃しているようです。
絵に描いたような悪貨が良貨を駆逐するというやつです。

 

2021年12月 1日 (水)

「パンデミック条約」不発か

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日本でもナミビアの外交関係者からオミクロン株が発見されたようです。
やはり来たかね。

「松野官房長官は「ナミビアからの入国者について、国立感染症研究所で陽性検体のゲノム解析を行ったところ、オミクロン株であると確認されたとの1報が、厚生労働省からあった」と述べ、アフリカ南部のナミビアから入国した30代の男性が、新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に感染していたことが確認されたことを明らかにしました」(NHK11月30日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211130/k10013368041000.html

このナミビア人は40人(後70人に修正)と機内で濃厚接触していますが、今のところ陽性は見つかっていません。

一方、日本は世界でも突出して早期に入国規制をかけました。
対象は全世界です。
全世界としたのは、今のオミクロンの感染地外から中継して入国するケースがあるのを防ぐためです。

本格的な感染の侵入は、中国からよりむしろヨーロッパからの帰国者経由でした。
かつて米国は、CDCが武漢からの帰国者を特別機で移送する厳重さで対応しましたが、結局カナダやメキシコから入られてしまいました。
このグローバル時代、人流とウィルスに戸は立てられないのです。
一見鎖国のようですが、抜け道があります。
それはあくまでも新規の入国停止であり、帰国と再入国(日本に在留資格があるものなど)に関しては禁止対象になってないません。

ですから覚悟しておいたほうがいいと思いますが、オミクロンは必ず侵入します。
それが早いか遅いかの違いがあるだけです。
問題はむしろオミクロンの脅威度のほうです。
南アでは重症度が低いという証言が出始めています。

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「オミクロン株について、南アフリカの医師会の会長が「症状は軽く、重症者はほとんどいない」とパニックにならないよう呼び掛けました。
 南アフリカ医師会・コエツィ会長:「今のところ、重度の症状ではなく、ブレークスルー感染のみを確認している」
 南アフリカ医師会のコエツィ会長は28日、「オミクロン株の症状は軽く、重症患者はほとんどいないため、パニックになる理由はない」と現状を語り、「メディアの報道は誇大で、実像と合っていない」と指摘しました。
 コエツィ会長によりますと、オミクロン株の患者はデルタ株によく見られる味覚や嗅覚の異常が「ほとんど見られない」ということです」
(テレ朝11月29日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000236639.html

これは先日の南アの現場医師の証言とも重なります。
おそらく感染力は強いが、毒性は弱いのかもしれません。
感染力について、国立感染症研究所がこんなことを言っています。

「国立感染症研究所によりますと、オミクロン株のウイルスを使った実験の結果などはまだ(2021年11月28日現在)報告されていませんが、アメリカの大学の研究グループが人工的にスパイクたんぱく質に20か所の変異を入れた合成のウイルスを作って実験を行ったところ、免疫から逃れる性質が確認されたということで、オミクロン株でも同様のことが起こる可能性が懸念されています。
オミクロン株の変異はスパイクたんぱく質以外でも見つかっていて、このうち「ヌクレオカプシドたんぱく質」という部分にある「R203K」「G204R」という変異は、アルファ株やガンマ株、ラムダ株にもある変異で、感染力や広がりやすさを高める可能性があると指摘されています」(NHK前掲)

私は楽観は禁物ですが、かといって過度に騒ぐ必要はないと思っています。
たぶんデルタ株を駆逐する感染力を持つでしょうが、重症化することは稀ではないでしょうか。
また感染当初のように、こちらは徒手空拳ではなく、治療薬もワクチンも備わってきています。
オミクロン対応のワクチンも100日で作ると製薬会社が言っていますから、日本での治験と確保までの時間を入れても200日前後くらいで3回目のブースターショットに間に合うかもしれません。
いずれにしても、今デルタが猛威を振るっている国々が、オミクロンの新たな侵入を受けてどのような状況になるのか見てから判断しても遅くありません。

 

ところで、WHOは幕引きのための総会を開きました。
といっても、ヨーロッパやロシア、韓国などで感染が再拡大し、かてて加えていままで静穏だった南部アフリカでも感染拡大が始まり、、そのうえこの南アからはオミクロンの登場ですから、ほんとうの終息はまだまだ先になると思われます。
ですから私が「幕引きのための総会」というのは、この総会で対応の総括が始まり、かつ、コロナ後を見据えた国際的パンデミック対応を定める「パンデミック条約」が議論の俎上に乗ったという意味です。

「【ウィーン時事】世界保健機関(WHO)総会の特別会合が29日、ジュネーブで対面とオンラインの混合方式で開幕した。
新型コロナウイルスでの混乱を教訓に、次の世界的規模の感染症に備えてワクチンや治療薬の公平な分配などを明文化する「パンデミック(世界的大流行)条約」について議論する。会合は12月1日まで。
新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」は、ワクチンや治療薬の普及が遅れる南部アフリカを中心に広がっている。公平な分配の必要性が改めて注目されそうだ。ただ、米国など慎重姿勢の国も多く、制定までに数年はかかる見通し」
(時事11月29日)

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時事 あいかわらずおもろい顔のテドロスさん

このパンデミック条約は、英仏独などの欧州諸国が主導し、それに南アフリカや韓国、タイが賛意を示しています。
わが国も5月に共同提案国に名を連ねています。
条約の内容は、今問題となっているワクチン分配の公平性の確保、感染状況やウィルス情報の共有の徹底化などです。
すでに去る5月の総会で提案され、中国、ロシア、米国の反対でいったんは流れてこの11月の特別会合で議論したのですが、やはり今回も流れました。

さて前回5月の総会では、3本の検証報告書が提出されました。

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パンデミック条約制定へ 教訓と課題 : NEWS特集 : 記事・論考 : 調査研究 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

「WHO緊急プログラム」(IOAC)と「世界保健規則再検討委」(IHRRC)は、WHOの機関の枠組みの中で報告しているのに対して、「独立パネル」(IPPPR) は、WHOの枠組みを超えて世界的な保健脅威に対しての条約の締結を目指しています。
まぁ「独立パネル」といっても、中国のウィルス対策専門家トップの鐘氏が入っていて、報告書も大分中国に有利なように書かれていたそうなので、本当に中国の下請け機関と化したWHOから「独立」しているのかどうかはなはだ疑わしいのですが。

というのは、独立パネルは2020年5月の世界保健総会で採択された「公平で独立した包括的な評価」を求める決議に基づき、7月に設置されたはずですが、検証される当事者中の当事者とも言える中国側の専門家が検証する側にいるありさまです。
また パネルの共同座長も、中国寄りで有名なニュージーランド元首相のヘレン・クラーク氏とエレン・サーリーフ氏が務めました。

「今回の流行で緊急的に設置された組織とは言え、「公平、独立、包括的」を掲げる以上、透明性を確保した上で厳格で慎重な人選がなされるべきだった。一連の対応に一定のスピード感はあったかもしれないが、いつの間にか人選がなされ、いつの間にか調査も終わっていたような印象だ。
クラーク氏は5月12日の記者会見で、「中国の対応には明らかに遅れがあったが、遅れはあちこちで起きていた」と反論した。何かを言っているようで、報告書で触れなかったことを正当化したに過ぎない。これ自体が想定内で、ここで答えることで報道陣に対するガス抜きをしたようにも見える」(読売 調査研究本部主任研究員 笹沢教一 )

こんな性格の「独立パネル」で、まともな感染原因の探求がなされるはずがありません。
米ジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン教授は報告書を受け、「武漢での流行発生の報告が著しく遅れ、その発生源を探すWHOの調査は妨害されたにもかかわらず、パネルは(中国)政府に何の説明責任も求めなかった」と批判する論説を自身が所長を務める同大国家・国際保健法研究所のサイトに投稿したそうです。
そりゃそうです。武漢現地調査を妨害した党の中国側が入っているんですから、初めから結論は決まっていました。

では、せめてパンデミック条約のほうはどうかといえば、各国とも総論賛成、でもウチの国は入らないけど、という国が3カ国出ました。
お約束の米国、ロシア、中国の三カ国です。
理由は法的拘束力があることへの懸念ですが、実はこの3カ国は自身で生物兵器を作っているか、ないしは生物兵器に対しての防疫方法を研究しているからです。
生物兵器の製造と防疫は実はメダルの表裏で、一回作ってみないと対処法が出ません。
また民間ユースと軍事ユースも同じで、いつでも転用可能なためにその境はあいまいです。

このパンデミック条約が締結され場合、WHOはIAEA(国際原子力機関)並の強制的査察権をもつことが可能となります。
IAEAの査察とは、核物質の軍事転用を防ぐための「IAEA保障措置協定」と呼ばれる強い権限のことです。
※外務省IAEA保障措置協定
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/iaea/kyoutei.html

ですから、WHO、ないしはWHOに代わる独立した査察機関が、必要に応じて感染国に立ち入って自由に必要な箇所を立ち入り検証することが可能になります。
このパンデミック条約は、今回のコロナ禍において、WHOがあまりにも無能であり、機動力を持った対応ができなかったことを受けて、欧州勢のWHOの改組案から出てきたものな以上、査察権は必須のものとなります。
原因の究明の決定打である査察権なくして、情報の共有やワクチン分配などだけ決めてもただキイレイごとですからね。

ではなぜこの3カ国が反対に回ったのでしょうか。
それは先述したように、このコロナ禍はいまだに生物兵器説を否定しきれていないからです。
ですから、米国は中国が生物兵器を使って超限戦(ハイブリッド戦争)を仕掛けた場合の対応に備えておく必要があります。
そのために、米軍はフォート・デトリックで生物兵器研究を続けています。

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フォート・デトリックアメリカ陸軍感染症医学研究所

内容はその性質からも公表されていないので詳細はわかりませんが、おそらく各種生物兵器や感染症のサンプルを多数保有しているはずです。
またCDCも同じような生物兵器のサンプルを持っていると言われています。

ロシアは生物兵器製造の老舗で、その拠点のシベリアのベクター研究所が事故を起こしたことさえあります。

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https://switch-news.com/incident/post-37872/  ベクター研究所

「ロシアではここ数年、危険な施設での爆発事故が相次いでいる。9月16日にはシベリアのノヴォシビルスク州コルツォヴォにある研究所で、爆発事故が起きて火災が発生した。
この研究所は旧ソ連時代に生物化学兵器を開発し、現在はエボラや天然痘、細菌兵器に使われる炭疽菌の研究を行う「ベクター研究所(Vector facility)」と呼ばれる施設だった。ベクターは世界で2カ所しかない天然痘の貯蔵を行う施設の1つで、もう1カ所は米国のCDC(疾病管理予防センター)がアトランタに構える施設とされている」
(フォーブス2019年9月18日)
https://forbesjapan.com/articles/detail/29736

中国は武漢ウィルスラボ自体が人民解放軍系研究所で、まちがいなく生物兵器転用可能な研究をしていたはずです。

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 米議員報告書が示す武漢研究所流出

「米国務省が中国と協議していた背景が徐々に明らかになりつつある。英紙デイリー・メールは9日、「米国務省が対外秘としている報告書のなかには『武漢ウイルス研究所の研究員を含む中国の科学者は、2015年からコロナウイルスの軍事的可能性に関する研究を開始した』と記載されている」と報じた。
豪紙オーストラリアンも前日の8日、米国務省が昨年入手した15年に人民解放軍の科学者らが作成したとされる文書の内容を報じたが、その内容は驚くべきものである。
その文書には「生物兵器を使用して最大の被害を引き起こす理想的な条件」が縷々説明されており、その目的は「このような攻撃で病院での治療を必要とする患者を急増させ、敵の医療体系を崩壊する」ことである。まさに新型コロナウイルスのパンデミックにより西側諸国で起きた惨事を彷彿とさせるものだが、文書の執筆者には「第1次世界大戦は化学戦争、第2次世界大戦は核戦争なら、第3次世界大戦は明らかにバイオ戦争となる」とする恐ろしい戦略的認識がある」(独立研究法人経済総合研究所藤和彦『中国、15年からコロナの軍事的研究を開始か 生物兵器攻撃で敵の医療体系を崩壊』)
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/266.html

今回も、ロシア人の6割はコロナが生物兵器だと思ったそうですが、これには根拠があります。
今回の感染爆発が起きた時、世界各国の生物兵器専門家たちは、まずコロナがウィルス兵器だと考えたのです。

「元陸上自衛隊化学学校長の鬼塚隆志氏は、致死性と感染力のきわめて高い細菌やウイルスが効果的にばらまかれれば、「人類滅亡に至るかもしれない」とまで言う。井上氏の生物兵器分類(1)に当たるものへの言及だが、感染力があまり強いと、攻撃した側も被害を免れることはできない。
鬼塚氏は「兵器とは目的に応じて作るものだ。今回の新型コロナについて、致死性が高くないことをもって『作られた兵器ではない』と断じている人がいたが、きわめて多くの人を感染させ、仕事も出来ない状態にしてしまうものも兵器と言えるのではないか」と指摘する。井上氏の分類では〈2〉に当たる、人を無力化させて敵国の社会を混乱させる目的で開発されたものなら、致死力が強くなくても兵器の役割を十分に果たすというのだ」
(読売新聞調査研究本部主任研究員永田和男 [『新型コロナと生物兵器 』)
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/cknews/20201224-OYT8T50021/

鬼塚元陸将が言うように、致死性が低く感染力が高いウィルスは生物兵器にうってつけだからです。
このようあえて弱毒化させてインフルエンザに似た症状を呈する生物兵器は、敵国の経済・社会に大打撃を与えることが可能な恐るべき戦略兵器になりえます。

「生物兵器に詳しい防衛医科大の四ノ宮成吉祥()教授は、「非常に悪意を持ってやればだが」と断ったうえで、技術的には現在流行している新型コロナウイルスも、人工的に変異させることでPCR検査をすり抜けるようにできるほか、さらに極端な例では、ゲノム編集技術で特定の人種集団だけを標的にするよう改造できる可能性すらあるという。生命科学分野の研究は近年、その進歩と同時に、医療目的で作られた技術が誤用・悪用されてテロ目的に使われかねないというデュアルユース性(両面性)の問題が大きなジレンマになっている」(永田前掲)

今回のコロナ禍が、仮に生物兵器を用いたものだとするなら コロナの感染者は全世界で1200万人を優に超え、特に被害がひどかった米国では死者数が13万人という、朝鮮戦争やベトナム戦争を合計した以上の死者数を数え、空母すら行動不能に陥れるという「戦果」を上げたことになります。
米政治専門サイト「ポリティコ」によれば、米国防総省と情報当局はコロナウイルスの特徴や起源を探る一方で、このウイルスそのものが軍事目的に転用される可能性にも着目して情報収集活動に当たっているとされています。

もちろん生物兵器は非人道兵器として開発・製造・貯蔵が1975年発効の「生物兵器禁止条約」で禁じられています。
建前では生物兵器をどの国も保有していないはずですが、この生物兵器禁止条約地は大きな欠陥がありました。
検証するための規定がないのです。
NPTはIAEAが査察して検証することが可能ですが、生物兵器禁止条約は締約国内の関連施設に対して、査察などの手段で条約の履行状況を検証する規定が欠落しています。
つまり、作っていませんと当該国が言っているだけにすぎないのです。

今回も武漢現地視察も、査察ではなく見せていただく「見学」にすぎませんでした。
自由な行動には制限がつき、中国側の案内人に率いられるままぞろぞろと「中国共産党コロナ勝利万歳博覧会」などを見て帰ってきただけでした。
子どもの使いどころか、調査団員には武漢ラボで石正麗と共同研究していたピーター・ダザックすらいたのですから話になりません。
この男が限りなくクロの容疑者でしょうに。

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禿頭がピーターダザック ANN

このような「調査」しかできないようなWHOはさっさと解体するか、改組するしかありません。
そしてIAEAのような査察権を持った独立組織を新たに立ち上げるべきでしょう。
しかしこのような状況に風穴をあけることを期待されたパンデミック条約ですが、どうやら不発に終りそうな気配です。

 

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