ウイグル民族浄化、習の関与示す「新疆文書」が流出
ウィグル族に対する民族浄化政策に、習近平自身の指示が関わっていたことを示す資料が見つかりました。
「中国による少数民族ウイグル族への人権侵害疑惑を巡り、習近平国家主席が先頭に立って弾圧を指示していたことを示す新たな証拠が浮上した。英国を拠点とする非政府組織「ウイグル・トリビューナル」が中国政府の流出文書の写しをウェブサイトに掲載した。
その文書は、新疆ウイグル自治区の動向を巡り、2014~17年に習氏や共産党幹部が非公開で行った演説の内容などが含まれ、一部は最高機密扱いとなっている。ウイグルへの強制的な同化政策はこの時期に策定・導入された。
それによると、習氏は少数民族に関して宗教の影響や失業問題の危険性について警告しており、新疆の支配を維持する上で、主流派である漢民族と少数民族の「人口割合」の重要性を強調している。
ウイグル・トリビューナルはロンドンで、ウイグル族に対する人権侵害の疑いについて審問を開催している」(ウォールストリートジャーナル12月1日)
https://jp.wsj.com/articles/leaked-documents-detail-xi-jinpings-extensive-role-in-xinjiang-crackdown-11638321421
この新文書は「新疆文書」と呼ばれ、習近平をはじめとする中国の指導者たちが、少数民族ウイグル族の弾圧に関与していることを示す文書の写しと見られています。
この文書の表紙には、「習近平同志新疆考察」と記され、発行日は2014年4月30日とあります。
また表紙左肩には「絶密」(絶対秘密)とあります。
BBC
BBCは、この文書は、ウイグル族に対する人権侵害を調べているイギリスの独立民衆法廷「ウイグル法廷」に9月に提出されたもので 、これまで一部が明らかになっていたが、今回の文書流出で今まで確認されていなかった情報が表面化したと伝えています。
この「新疆文書」は、WSJによれば「ウイグル・トリビューナル」(「ウィグル独立法廷」の機関紙)から 米ミネソタ在住の中国民族政策専門家、エイドリアン・ゼンツ、デイヴィッド・トビン、ジェイムズ・ルワードらが鑑定を依頼されて、その信憑性が裏付けられています。
「30日に公表された文書の大半は2014年春のものだ。ゼンツ氏はこれに添えた要旨で、共産党の新疆政策に関する国営メディアの報道やその後に公表された政府文書と照らし合わせるなどして、文書が本物であることを突き止めたと説明している。 ゼンツ氏によると、ウイグル・トリビューナルは情報提供者を守るため原本の公表は見送り、出所が分かるような部分を削除して、文書の写しを公表した」(WSJ前掲)
これを読んだゼンツら複数の分析家らは、この文書の中には中国政府高官がウイグル族の大量収容や強制労働につながる措置を求めたことを証明する発言記録が含まれていると証言しています。
この習の命令は、ウィグルにおける大量の漢族移民政策をもたらし、地元少数民族との人口比率の逆転現象を起こしました。
「習氏が14年の演説で最初に触れた発言がその後、政府の政策文書にも記され、党幹部らも度々その文言を言及しているなどとゼンツ氏は指摘する。
例えば、習氏は14年5月に新疆に関する会合で行った演説で、共産党は「人民の民主的独裁という武器の使用を躊躇(ちゅうちょ)すべきではなく、(新疆の宗教的な過激派勢力に対して)破滅的な打撃を与えることに注力すべきだ」と述べている。
さらにこの演説では、強制労働の疑いが持たれているウイグル族への労働プログラムの前触れともとれる発言があった。米国はこの強制労働疑惑を理由に、新疆綿を使った中国品の輸入を禁止している。
文書によると、習氏は「新疆の雇用問題は顕著だ。暇を持て余した大量の失業者が問題を起こす傾向がある」と指摘。その一方で、組織で働けば「民族の交流や融合につながる」と述べている。
また今回明らかになった別の演説で、習氏は「人口の割合と安全性は長期的な平和と安定の重要な基礎となる」と述べている。
その6年後、新疆における漢民族の割合が15%にとどまるのは「低すぎる」として警告した同地域幹部はその際、習氏のこの発言をそのまま繰り返している」(WSJ前掲)
この2014年は、ウィグル族への政策の転換点に当たっています。
そのきっかけは、前年の13年に北京、翌14年には昆明市で起きた歩行者や通勤者を狙ったテロ事件がきっかけでした。
このテロに対して、中国はこれらの事件はウイグル族やウイグル独立派によるものだと非難します。
「そして2016年以降、中国はウイグル族やそのほかのイスラム教徒を対象としたいわゆる「再教育」キャンプを設置し、信用できない兆候とみなされる行動をとった新疆ウイグル自治区の住民を取り締まりの標的にするなどしている。 このほど内容が明らかになった文書は、多くのウイグル族が暮らす地域(新疆ウイグル自治区)にちなんで「新疆文書」と呼ばれる。習主席や李克強首相ら中国共産党の指導者たちが、ウイグル族や中国のほかのイスラム教徒に影響を及ぼす政策に直接つながる発言をしていたとしている。
こうした政策には強制収容や大規模な不妊手術、強制的な中国への同化、「再教育」、拘束したウイグル族を工場で強制労働させることなどが含まれる」(BBC 2021年12月1日 )
ウイグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出 - BBCニュース
Leaked papers link China leaders to Uyghur crackdown)
これは民族宥和政策の一種で、少数民族に名目上の政治的自治権を与えたり、一人ッ子政策の例外にし、競争の激しい大学入学試験での加点をするなどの優遇策を提供していました。
しかし2016年、習の鶴の一声でこの優遇政策は根本的に転換され、オーストラリアのラトローブ大学ジェームズ・レイボルド教授((中国少数民族研究) によれば「第2世代の民族政策」、すなわち民族浄化政策に突き進んでいきます。
その理由を中国共産党はこう述べています。
「共産党はかつて、少数民族にも漢民族と同等に発展できるだけの空間と経済的援助を与えれば、自然に同化すると考えていた。だが、習氏はもはやそのような戦略は通用しないと考えているとレイボルド氏は指摘する。 「経済発展が重要でないわけではなく、経済発展だけでは民族問題の解決にはならないということだq
その背景には、新疆を中心とした対立の激化、少数民族の優遇に対する漢民族の反感の高まり、そして国家の若返りを目指す「チャイナドリーム」を掲げる習氏自身の言動があると専門家は述べている 」(WSJ 10月11日)
https://jp.wsj.com/articles/chinas-communist-party-formally-embraces-assimilationist-approach-to-ethnic-minorities-11633743376
特に力を入れたのが、中国共産党が言う「中国国家の集団意識の醸成」です。
下の写真はウィグルの少年先鋒隊の活動風景ですが、中国は特にこの若年層に対する工作に力を入れました。
これは中国版ピオニールですが、満9~15歳の男女児童が「自発的意志」で入隊するとされ、共産主義青年団の直接の指導を受けます。
学校ごとに組織されています。
「習氏が8月に開いた民族問題会議の後、国家民族委員会は「中国国家の集団意識の醸成」を、特に年少の生徒の教育システム全体に織り込むよう求める論説を発表した。
さらに、少数民族と漢族の交流を促進すると言明し、他の少数民族の住む地域で、より多くの漢族を働かせることを提案した。これはチベット族やウイグル族の反感を買う共通の原因となっている。
委員会は習氏の言葉を引用し、「全民族の広範な交流と統合を促進し、理想・信念・感情・文化における全民族の統一を進め、互いに支え合い、深い兄弟愛を持つことが必要である」としている」(WSJ前掲)
またこのような「深い兄弟愛」の陰で、2016年以降、中国はウイグル族やそのほかのイスラム教徒を対象としたいわゆる「再教育」キャンプを設置しました。
そして公安当局にとって「信用できない兆候」とみなされたら最後、即収容所送りとなりました。
「ウイグル族を同自治区での綿花摘みに派遣するなど、強制労働戦略も進めている。
人口抑制のためにウイグル族の女性に強制的に集団不妊手術を行い、子供を家族から引き離し、ウイグル族の文化的伝統を壊そうとしていることも報告されている。
アメリカやカナダ、オランダなど複数の国は、中国がジェノサイドや人道に反する犯罪を犯していると非難している。
中国はこれらの疑惑を強く否定。新疆での取り締まりはテロを防ぎ、イスラム過激派を根絶するために必要だと主張している。
収容所については、テロとの闘いにおいて、収容者を「再教育」するための有効な手段だとしている。 」
(BBC前掲)
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、ウィグル弾圧にこのようなハイテクが駆使されているとしています。
- 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、ウイグル人イスラム教徒に対する中国の組織的な弾圧を記した公文書を公表した。
- ある文書には、ファイル共有アプリ 「Zapya」 を通じて禁止コンテンツを共有したとされる4万557人を当局が特定した方法が記述されていた。
- ICIJによると、Zapyaは宗教的な教えを共有することをユーザーに勧めているという。中国政府はウイグル人とイスラム教を脅威と見ている。
- 文書は、4万557人全員を調査し、無実であることが証明できない限り「再教育」収容所に送るよう命じていた。
- 当局がアプリのユーザーデータにどのようにアクセスしたかは不明だ。しかし、中国政府はいつでもユーザーデータと通信内容の開示を事業者に要求する権限を持っている。
- 機密文書によると、中国当局はファイル共有アプリを利用してウイグル人イスラム教徒を収容所に送り込んだ。
(Business Insider Japan 2019年11月27日)
中国はテクノロジーを駆使してウイグル人弾圧…公文書が流出も政府は否定 | Business Insider Japan
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当該文書は公務員が職務上作成した文書である事が確実で、したがって「公文書」に分類される資料ですね。これ以上強力な証拠というのはちょっとないでしょう。
公明党の山口代表がいう、「人権侵害を根拠をもって認定できる基礎」にど真ん中のストライクで当たります。
しかも、習近平その人が直接指示しているあたり、マグニツキー法をやらないといった岸田総理や中谷補佐官がどういう動きをするのか。
天安門事件の時には「国際的に孤立させるべきではない」として人権問題を世界に先駆けて不問にした日本政府ですが、我が国自身が安全保障を中国に脅かされている今回は当時と全く違い、決してスルー出来ません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2021年12月 6日 (月) 18時43分