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2021年12月29日 (水)

やはり出てきた、プーチン得意のあわせ技

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やはり出てきました、プーチン得意の緩急あわせ技の登場です。
ロシア軍が1万人撤退するそうです。

「ロシア軍の南部軍管区は25日、管轄する地域で戦闘訓練を終えた1万人以上の兵士を通常の配置に戻すと発表しました。
それによりますと、ウクライナと国境を接するロストフ州やロシアが、7年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアなど合わせて10の地域で、複数の部隊が1か月にわたり訓練を実施したということです。
ただ、年末年始の期間中も有事の即応態勢を維持するため、必要な部隊を配置したうえで、防空部隊や海軍の黒海艦隊の一部も任務を継続するとしています」
(NHK2021年12月27日)

私が最良のロシアウォッチャーだと考えている小泉悠氏は、あくまでクールに意図は不明だと突き放しています。

「ロシアの安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠特任助教は「ロシア軍は、全体で10万人や12万人と推定されており、そのうち1万人が撤収することは評価できるかもしれないが、ウクライナ周辺にロシア軍が多く集結している状況は変わらない」と述べ、直ちに緊張緩和にはつながらないという見方を示しました。
そのうえで、小泉氏は、ロシア側の意図について「どこの国の軍隊もずっと訓練を続けることはできず、駐屯地に戻って部隊を休ませなければならない。技術的な一つ一つの動きに政治的な意味を見いだすのは、あまり意味がない」と述べ、意図を推察するのは難しいと指摘しました。
また、小泉氏は、ロシアのプーチン大統領がNATO=北大西洋条約機構が拡大しないよう合意文書の形で保証を求めていることに関連し「NATOからもウクライナからもロシアを満足させる球は返ってこないと思う。ロシアが軍事力を用いた威圧だけにとどめるのか、本当に軍事力を行使して何らかの要求をのませようとするのか未知数だ」と述べました」(NHK前掲)

小泉氏が言うとおりです。
これは緊張緩和ではありません。
プーチンが何を意図しているのか「判らない」というのが正しい判断で、そこからなにか特別の意味を汲み取ろうとすると術中にはまることになります。
たとえばロシアは戦争を望んでいない、ロシアは少しの要求さえ受け入れてもらえば平和的に解決したいのだ、といった観測が自由主義国内部からでてくるように、プーチンは仕向けています。
プーチンは、硬直した習などよりはるかに外交的駆け引きがうまいのですよ。

一見緊張緩和に見えるようなことを、ロシアはこの4月にもやっています。
4月には大規模な軍隊を東部国境付近に集結させて、その後撤収させていますから、緩急運動の2回目が始まったていどに考えたらいいのではないでしょうか。
ただし、武器や装備は置いていったので、またすぐに2回目が始まりましたので、またやってんですかともいえないことはありません。

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ロシア軍がウクライナ東部の国境付近から撤退、緊張はひとまず緩和され ...

すでに厳しい冬が襲っているウクライナとの東部国境に、十数万の軍隊を野天に常駐させっぱなしにはできません。
兵員は今まで市民暮らしをしてきた予備役が多いのですから、数カ月に渡る野天暮らしに消耗しています。
戦車や歩兵戦闘車などの大型装備も簡易修理しかできないので、故障が相次いでいてもおかしくはありません。
一定期間を東部国境の「戦場」で過ごした部隊から先に元の駐屯地に帰して、新たな部隊を出すというローテーションをしているはずです。

おそらく今回の1万人撤収もこの部隊ローテーションを宣伝に使おうとしたのかもしれません。
この4月の時もセルゲイ・ショイグ国防相は、「ロシア西部で活動していた兵士に常設基地に帰還するよう命じたが、今年後半に予定している別の演習に向け、当該地に兵器の一部を残しておく」と述べています。
つまりまた帰ってくるからな、ということにすぎませんでした。

この時は緊張を高めるだけ高めておいて、ふっと息を抜いてこんな誘い水をだしました。
さすが柔道の有段者。といっても、別に親日家じゃありませんから念のため。

「プーチン大統領は4月21日の国民演説の中で、西側諸国に「レッドライン」を超えれば必ず後悔すると警告していた。
軍の撤退発表後、プーチン大統領は記者団に対し、「ウクライナの大統領をモスクワに招く用意はできている」と述べた。しかし、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部の問題について話し合いたいのであれば、ロシアがウクライナに足を運ぶべきだと強調した」
(kagonma-info.com 2021年4月23日)
https://kagonma-info.com/c0019/russian-army-ukraine-withdrawal/

ロシア人は平和愛好者ばかりだから、進攻なんかしないさ、あれは西側の悪意あるプロパガンダだ、ウクライナ大統領さんモスクワにいらっしゃい、ウォトカでもひっかけながら平和的な話しあいをしようや、というわけです。
もちろんこんな見え透いた手にウクライナが乗るほどお人好しではありませんでしたが、むしろ危ないのはバイデンとNATO諸国のほうです。

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プーチン大統領「今、すぐにだ」 米欧に安全の確約迫る | 毎日新聞

タスは1月12日にするという日時まで言っていますが、これも小泉さん流に言えば「未知数」です。

「タス通信は26日、緊迫するウクライナ情勢を巡り、北大西洋条約機構(NATO)が来年1月12日に「NATOロシア理事会」を開催することをロシアに提案したと報じた。
NATOロシア理事会は2002年に設立されたNATO加盟国とロシアとの対話の枠組み。開催すれば2年半ぶりとなる。タス通信はロシア外務省当局者の話として、理事会開催の提案についてロシアが「検討している」と伝えた」
(毎日12月27日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/36d31ee6b7f6014c4ab2116f55a7e332b1da89f4

「NATOのストルテンベルグ事務総長は21日、ブリュッセルでの記者会見で、来年初めに同理事会を招集することに前向きな姿勢を示していた」
(日経2021年12月27日)

とまれ、 ロシア側の当座の意図はNATOにロシアとの協議機関である「ロシア理事会」を開かせることです。
ロシア理事会とは、とりあえずロシアを準メンバーにした、形式的にはNATOの最高意志決定機関です。
ただし、あたりまえですが仮想敵国のロシアを入れた最高意志決定機関などはありえないので、東方へのNATO拡大やミサイル防衛の配備などの戦略上重要なことは扱われません。
これはソ連崩壊後の束の間の蜜月に作られたもので、クリミア進攻後は2年半も開催されていないことからわかるように既に形骸化しています。
今回はその埃を払っての再登場となります。

しかも今回は、タスの発表を信じるなら、NATO側がロシアに呼びかける形で話しあいを持つことになります。
ほんとうなら、チェンバレンもどきの宥和的な対応です。
こういう協議の持ち方をすると、初めから落とし所は決まっているのかもしれません。

ロシアからすれば、われわれは平和愛好国なのだから、14万の大軍の集結などはそちらが騒いでいるだけのこと、しかしこちらにの要求は伝えてあるのだから、お呼びとあらばお伺いしましょう。
ただしいいですか、そちらが呼びかけた以上空手では帰れませんから、お土産を準備しておくことです、ということです。
すると最悪、バイデンとNATOはウクライナ東部2州の自治権の容認くらいは合意しそうでコワイ。
こんなことを呑んでしまったら、なるほどロシアは全軍撤退させるでしょうが、次はリトアニアとポーランドの番がくるだけのことです。

このようにちょっと引いて見せると、14万の大軍のごく一部の撤退も必要以上に大きな妥協に見えてくるという錯覚をプーチンは利用しているだけですが、日本のメディアは見事に引っ掛かっているようです。
読売など、「ロシアがウクライナへの軍事的な圧力を維持する中、対話実現に向けた調整が本格化してきた」(12月27日)と手放しで歓迎モードです。
まんまと、ロシアの思うとおりのダンスを踊ってくれています。
ならず者国家の無理無体な要求をひとつ飲めば、次が来る、それに融和すれば永遠に続く。
それを忘れないようにしましょう。

それが分かっているから、バイデンとNATOも安易な妥協はできないはず、なにも決まらない協議に終わることでしょう。

 

 

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コメント

そうそうw 日本に親プーチン派が多いのはプーチンという名前が親しみやすくて可愛いのと、あと、柔道家ということでだと思います。

覚えていますか?沖縄サミット。
たしかプーチンが初めて参加したサミットで具志川市を訪問した際、柔道の練習に飛び入り参加。中学生相手に背負い投げで投げられて、拍手喝采を浴びていました。
その模様を琉球放送だか沖縄テレビで見ていましたが、
「さすが元KGB! 顔もいいしかっこいいし、親日家を演じるのは上手い!」
な~んて、感心したものです。

夢想者の多い日本人なんて、プーチンから見たら赤ちゃんですわ。
そう考えると、ため息ばかりです。

小泉悠氏 いいですよね。 最近のお気に入りだし、若いし、
著作「帝国」ロシアの地政学とか、面白いし、
これからもどんどん頑張ってほしいものです。(^^)/

 最大で17万人とも言われる兵員にうち、たった一万人が削られたからといって、そこには汲むべき政治的意味は何もないですね。

 プーチンには憲法改正して大統領任期を85歳までとする野望にとりかかっていて、これが国内的にもちょっと評判が悪い。
こうした内政事情、プーチンへの求心力低下がウクライナ侵攻最大の動機になっていると私的には考えています。

そうであるからバイデンは、「ノルドストリーム2など、一生使えなくすんぞ。ロシア銀行も取引停止な」として、ウクライナ侵攻があれば、代わりにロシア経済を破綻に追い込む事をロシア国民にも分かるようにしてやろう、って面が大きいのだと思います。

プーチンは「西側は約束を破った」などと言う言いぶりもしますが、そんな約束は存在していませんし。ただ、力が不足していた時期のいわば「自己都合」で押し込まれただけってのが真実だろうに、歴史を用いた詭弁は中共や南北朝鮮並みのひどさです。

まるで習近平と瓜二つ。
でも、相手は臆病な中共ではなく、プーチンですからね。さらにヤバいやつです。

何やら、ロシアと中国は似ていますね。
一歩引けば、二歩進んでくる。
同じことが、南シナ海、東シナ海とウクライナで起きている。
アフガンは見ての通りの惨状。ミャンマー然り。
アメリカとて、もう面倒見切れない。勝手にやってくれとなりつつあります。あるコラムを読んだのですが半導体不足で日本の自動車産業や湯沸かし器まで品薄です。友人が車を注文したのですが納期は半年先だそうです。その半導体の生産を一手に引き受けているのが台湾。もしですよその台湾が蹂躙されたとき、世界の産業はマヒします。中国は自前で豊富な在庫を抱えています。最近インテルが中国にゴマをすっています。昔は天然ガスや石油を止める。今は半導体を止める。
ウクライナ問題、中国の戦略、半導体不足。何か世界は未知の世界に入り込もうとしている。考えすぎでしょうか。


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