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2021年12月25日 (土)

台湾からの邦人避難の難しさとは

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台湾有事が発生した場合、日本は同時に二つの大規模避難計画を実施せねばならなくなります。
ひとつは昨日にふれた宮古・八重山の10万人避難計画、そして台湾現地からの邦人救出です。
これはアフガン救出作戦とは別種の困難なものとなるはずです。
今日はその難しさを考えてみます。

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まず第1に、外国からのNEO(非戦闘員退避活動)ですから、アフガンの失敗でもわかったように、わが国にはその経験が乏しいことです。
外国に自衛隊を派遣することすら違憲とされた時代が長く続いたために、自衛隊はいまだに海外への長距離の戦力投射が苦手です。
また法も現実にまったく対応できていないことが、前回のアフガン救出作戦で明らかになりました。

海外民間人救出の法的根拠は、自衛隊法84条ですが、その条件として「当該政府の了解と連携」、「安全が確保されている」という2点がクリアされねばならりません。
このアフガン救出作戦も、アフガン政府の瓦解による統治権力の空白という落とし穴に入ってしまい、しかもタリバンは既に首都カブールを制圧している状況で、戦闘が集結したとはいえない状況でした。
つまり字義どおり84条を解釈すれば、救出作戦そのものが不可能でした。
ここで菅氏が自衛隊輸送機を出したのは、実は超法規的決断だったのです。
ただしその判断が遅かったために、救出できたのは邦人1名とアフガン人14名だけに止まりました。

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アフガン邦人退避へ航空自衛隊のC130輸送機「第2陣」が出発

日本は「一つの中国」論に縛られているために、正式な国交を持っているのは攻撃してくる側の中国です。
中国にとって台湾問題は国内問題であり、「内戦」の継続ですから、自衛隊の「国内進入」は外国勢力の介入に繋がるとして拒否すると思われます。

では、台湾に対してはどうなのでしょうか。
日本は中国を正統政府として認め、台湾を「ないもの」として扱っていますから更に困難です。
日台間には外交-防衛当局間の交流がなく、事前の調整するパイプすらありません。
ですから有事に際していかなる防衛協力をするのか、どのような邦人脱出を計画しているのか、相互に事前調整することができないのです。
いままで日本がとってきた、信念を捨て強者に迎合し、弱いものを切り捨てる事大主義外交のツケが回って来ることになります。

実際問題として、台湾邦人救出になった際、自衛隊は台湾現地で台湾軍や米軍、台湾警察などと協力しながら邦人退避活動をするわけですが、脱出ルートの確保からして困難となるでしょう。

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台湾空港地図-台湾の国際空港マップ

在留邦人は台北市内に集中していますが、最大の国際空港である松山空港は滑走路一本の軍民共用空港です。
位置的に総統府と国防部に近く、台湾有事の最重要防衛拠点ですから、ここを外国の部隊に共用を認めるかどうかはわかりません。
別の空港としては台北に近郊の桃園国際空港もありますが、ここへの移動のための集合と移動手段が別の問題として出てきます。

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台北港が正式供用、「海洋台湾のハブ」期待 - NNA ASIA・台湾・運輸

一度に大量の避難民を移送できるのは船舶ですが、大型船舶が寄港できるのは台北港と基隆港、花蓮港、高雄港の4つですが、高雄と花蓮は遠すぎますから台北市内から近く7つの埠頭を持つ大規模港の台北港か基隆港を日本側は希望するでしょう。
しかしこれも空港と一緒で軍民共用ですので、台湾が戦時に外国部隊の使用を認めるかどうか微妙なところです。

このような問題が調整できないまま台湾有事に突入した場合、一部の邦人が運良く米軍のNEOに便乗出来る程度のことしかできない最悪のケースも考えられます。
日本と対照的なのが米国です。

たとえば朝鮮半島におけるNEOはこのように実施されます。

「現在、韓国にはアメリカ人が約14万人、そのうち米軍関係者が約2万8500人在住している。国外退避までには(1)退避情報が入る(2)身支度・準備(3)登録手続き(4)南へ移動(5)韓国国外へ退避、という5つのステップがあり、韓国南部への輸送は民間業者によって行われ、アメリカ軍はその警備を担当。そして米軍が準備した航空機でグアム・沖縄へ脱出させる。軍事アナリストの小川和久・静岡県立大学特任教授によると、米軍は平時から陸上輸送の民間業者や25機前後の民間旅客機をおさえており、準備は開戦の1カ月前からスタートし、退避10日から2週間ほどで完了させるのだという」
(ABEMAタイムス2017年12月7日)
在韓アメリカ人にとっては常識!軍事行動に先駆けて行われるNEO(非戦闘員退避活動)の中身とは | 国際 | ABEMA TIMES

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朝鮮半島有事で「在韓米国人」20万人が日本へ逃げてくる

第2にそれらをクリアしたとして、台湾邦人救出は戦闘のさなかに行われる可能性が高いことです。
戦闘中の救出を妨げている自衛隊法84条が改正されていることを前提とします。
もちろん戦闘開始前の平和な時期に避難出来るのにこしたことはありませんが、中国軍が奇襲攻撃をしかけないという保証はありません。
おそらく中国軍は強力なサイバー攻撃をしかけて、情報インフラを麻痺させ、弾道ミサイルの飽和攻撃で政治・社会・軍事拠点壊滅を狙ってくるでしょう。
このようなハイブリッド攻撃方法をとられると、事前の兵力集中活動が見られないために、前兆なく一気に有事に突入します。
もちろん中国にとって台湾はあくまでも「国内」ですから宣戦布告も一切なく、いきなり戦時に移行します。
したがって平時のうちに準備し、段階的に脱出しておくことが難しくなります。

いったん戦端が切られた場合、台湾政府は日本に対して友好的ですから快く民間人避難を認めるでしょうが、中国がそれを認めるかどうかは前述した理由でわかりません。
むしろ中国は、逃げ後れた邦人を人質として利用する可能性があります。
在留邦人の脱出機に対して攻撃を手控えるから、台湾防衛に協力するなという取引を持ちかけられるかもしれません。
その時、岸田政権がどのような態度をとるか見えすぎてイヤです。

「NEOは本格的な戦闘が始まる前に行うのが望ましい。実際に戦闘が激化すれば、邦人はシェルターなどに退避して救出を待つ可能性が高い。一方、中国政府は台湾を「不可分の領土」とみなしており、日本政府も「一つの中国」を尊重するとの立場を維持している。中国政府の同意なく自衛隊を台湾に投入すれば、中国側に「日本が事態をエスカレートさせた」との口実を与えかねない」
(産経

第3に、その避難民が国内国外で10万人という空前の規模です。

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最新国防ファイル】邦人輸送救出訓練 紛争、災害、感染症…多国と

規模だけとっても、わが国にはこのような大規模な民間人避難は、かつての東日本大震災時しかありませんし、しかもその範囲が、隣接するとはいえ国外と国内にまたがった広域の救出作戦となります。

「外務省によると、令和2年10月1日時点の在台邦人数は2万4552人。在韓邦人4万500人と比べて1万6千人ほど少ない。
しかし、与那国島(沖縄県与那国町)は台湾から東にわずか110キロの距離に位置し、同島などで構成される先島諸島は台湾有事の戦域に含まれるおそれがある。その場合、自衛隊に「国民保護等派遣」を命じ、先島諸島の人口約10万人を沖縄本島や九州などに避難させることも考えられる。自衛隊にとっては台湾からのNEOとの「二正面」となり、その規模は朝鮮半島有事を大きく上回ることも想定される」
(産経前掲

第4に、自衛隊はその力の半分以上をこちらにふり向けねばならず、その場合、台湾軍・米軍との共同作戦が手薄になるかもしれません。
おそらく台湾防衛戦で日本が協力できるのは、海自護衛艦隊と空自の戦闘機部隊の周辺警備ていどに限られるかもしれません。

このように台湾からの邦人避難は、今までの事大主義外交の怠慢と欺瞞のツケを一気に払わせる事態となることでしょう。
曖昧外交はもう通用しないのです。

 

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コメント

 岸田政権の国防に関する国内コンセンサス作りってのは、まるで置き去り状態です。報道もひどいもので、日米軍の新基地(拠点)新設など世界中でニュースになっているにもかかわらず、国内報道ではまずお目にかかれません。原油輸入ラインなど経済安全保障とからめた法的建付けを検討中なのかも知れませんが、年初の2+2からは一気に問題化するでしょう。

この原因は経済偏重主義の政治化にあると思います。
「国防は富裕より、はるかに重要である」(アダムスミス)なのですが、日本では経済が重要なために逆に安全保障問題が存在しないかのようになっています。

それでけっきょく等閑にされるのが、昨日・今日の記事のように住民避難問題だと言う事。
逆手にとって、「だから、米軍との協力はすべきでない」などと転倒した論理を言うコメンテーターの顔が浮かんで来ます。

なお、沖縄の政治家は歴史問題にからめて出来ない理由を言う事がありますが、観光県であるとの経済認識の方が戦時避難訓練をしない事のホンネです。

 与那国島ではシェルター建設への議論が始まるようで、そういう下からの問題提議しかないのではないでしょうか。
また、占領されるまでの事は考えずづらく、島外避難は非現実的なように思えるし、贅沢を言わなければ分散・補強してシェルター用に活用できる物はあると考えます。

日本にとって一番の癌は経済連とマスゴミです。これをどうにかしない限り、上からの問題提起は難しいでしょう。

ゴミ対策と憲法改正が出来ないならせめて飛び地感覚で、宮古八重山与那国、南北大東は
沖縄県から切り離して、東京都に編入したほうがいいのではと、
真面目に思います。

伊藤俊幸元海将が言うには、日台間に防衛当局間の交流があるそうです。
とはいえ記事にもあるように台湾軍が自衛隊はもちろん米軍と作戦共有をするつもりがどれ程あるかという状態。
海自護衛艦隊と空自の戦闘機部隊の周辺警備
や物資補給に貢献するのが現実的ではとおもいます。
政治家と自衛隊が邦人退避の事前協議のパイプを太くする事が急務であり、私は岸大臣と安倍元首相がもう何かしら進めている事を願っています。

ソチ五輪とクリミア侵攻とその前にキエフで起きていた動乱、その頃西側諸国が注視していたのは別地域のイランだった。というピースを今のアジアに置き換えて、中国視点で考えてみると。
台湾有事を起こすなら五輪の直前から最中にかけて台湾内でキッカケになるような分断対立を起こす。
日本でも軍事支援だ台湾独立だ!という声を過分に煽っておき、親中反中の対立は反中優位に。
欧州各国の目がウクライナ侵攻に注目するようにニュースを撒いておく。
彼等はもうピースを配置して、諸国の様子を伺っているように見えます。
蔡英文総統と当時のウクライナ首相の立ち位置は違いますが、指導者がどっち側でもカウンターからキッカケを生み出す事が可能です。
反中対処を巡って台湾内で反蔡英文を巻き起こし失脚させても良いのです。
オールドメディアの極端な中国スルーは論外として、
日本の所謂保守論壇の方々もその辺踏まえつつご自身の立ち位置からの役割として発信しているのであれば良いのですが、私にはどうにも感情的に見えて危うさを感じます。

現実的実際的には、日本の防衛は米軍にオンブにダッコですわ。それ
以外ありませんし、日本政府要人の多くが「それでいいじゃない、アンポ
ってそういう事よ」と思っているハズです。そうでなきゃ、有事下における
台湾や先島諸島にいる人達の避難方法など、すでに確立してますわ。

どのみちケンポー第9条という、現実の世界ではありえない攻撃と防衛
の完全分離の理念など、中共のやりたいほーだいの総攻撃の前には、
平和ボケの脳ミソでさえ「こ、こ、こんなハズじゃ… クソ高額な自衛隊の
兵器が丸で役に立ってねぇ、見事にやられっぱなし、オレ達ゃ今まで何
やってたんだ???」と、ボー然とすること間違いなしですわ。

14億人の市場に色目を使って「中共さま~」、その舌の根も乾かぬうち
に国防となると「米国さま~」、そりゃ、思考も完全停止しますってもんで
すわ。北京オリンピックに対する日本の姿勢も同様で、まったくいい加減
な態度を取るしか他ありません。

こういう原理原則プリンシプルな理念が、ムラ社会(ムラ連合)である日本
には太古から無い(八百万も神様がいるんだからまとまらない)ので、神仏
習合とかヘーキだったし、わりかし中共と米国を一緒くたにするのも抵抗
が無いんだと思います。

岸田首相の言動を見ると、頼り無さを通り越して、日本伝統の思考を頑な
に守るその姿勢に心を打たれてしまいます。大東亜戦争末期に米国との
講和に、マジでスターリンの仲介を期待したという、そんなブッ飛んだ思案
が今再び見れるかも?と思うと、オミクロン株なんて屁みたいなモンですわ。


例の安倍内閣時に成立した安保法案。
WIKIで1時間かけて読み直しましたが、いざ有事の際日本に何が出来て、何が出来ないのか正直半分も理解していません。
何度も何度も読み返したいと思います。
そんな私ですが、一つ言えるのは従来のタブーに、安倍総理は手を突っ込んだですかね。多くの憲法学者、読売、産経、日本経済新聞以外のマスコミが反対し、共産党、社民党などは戦争法案と言い切っています。
世界の国で、明確に反対したのは中国、ロシア、北朝鮮でアメリカ、EU、アジアのほとんどの国が歓迎しています。
それを見ても、安倍総理は偉業を成し遂げたとと思います。
ただ、抽象的で「他国に対する攻撃であっても、日本国民の生命と財産を脅かす事態。」とは何でしょう。
そのための、相手国の同意とか、非戦闘地域に限定とかそんなことでは国民の命と財産は守れません。
安倍総理はよくやったと思います。現状の日本で憲法の制約の中、マスコミのパッシングの中でやれることはやったと思います。

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