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2021年12月27日 (月)

プタペスト覚書の欺瞞がウクライナ危機を招いた

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ウクライナ危機が、戦争の崖っぷちのところにいます。
ロシア軍は10万人以上(一説で14万)の軍隊をウクライナ東部国境付近に集結させています。


「西側やウクライナの情報当局は、来年の早い時期にも侵入や侵攻が起こり得るとみている。「情勢激化へロシア側の準備が整うのは、1月末の可能性が最も高い」と、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は話す。
米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、プーチン大統領が「ロシアの軍と治安部隊を、一気に動ける場所に配置している」とみている」
(BBC

ウクライナ東部には、同国からの分離を主張する勢力が掌握している親露地域があって、戦闘が継続されています。
下図は2014年のものですが、ピンクと赤い部分に塗られたドネツクとルガンスクが分離主義者の支配地域です。
NATOには紛争地域を国内に抱える国は加盟できない決まりがあるので、ロシアはこの二つの州の親露勢力に軍事支援を送って常に不安定にさせています。

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 AFP

もっともロシアに言わせると、戦力を集中させているのはウクライナのほうで、それに武器を供給しているのが西側だ、したがって軍事挑発を受けているのはロシアだと言っています。

「ロシアはウクライナについて、軍全体の半数に当たる12万5000人の兵士を東部に集結させていると非難。ロシアの支援を受ける親露分離派が支配する地域を、ウクライナが攻撃する予定だと主張している。一方のウクライナは、ロシアの言い分について、自分たちの計画を隠すための「プロパガンダのばかげた主張」だとしている。
ロシアはまた、NATOの国々がウクライナに武器を「大量供給」していると批判を重ねている。プーチン氏は、緊張をあおっているのはアメリカの方だと非難し、ロシアには「これ以上後退できる場所などない。我々がただ手をこまねいて座視するとでも(アメリカは)思っているのか」と述べた」(BBC前掲)

 正々堂々と白を黒と言うのはロシアの常套的交渉術にすぎませんし、実際には今年4月のように「自国の裏庭からNATO軍を追い払うためのポーズに過ぎない可能性もある」(BBC)かもしれません。
4月にはすぐに撤退させましたが、今回はあまりにも規模が大きく真に迫りすぎていると西側は見ています。

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VOI

「西側やウクライナの情報当局は、来年の早い時期にも侵入や侵攻が起こり得るとみている。「情勢激化へロシア側の準備が整うのは、1月末の可能性が最も高い」と、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は話す。
米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、プーチン大統領が「ロシアの軍と治安部隊を、一気に動ける場所に配置している」とみている」
(BBC

このようにロシアは得意の高めの危険球を投げては、次はお前らの頭にぶつかってもそれはお前の責任だからな、とうそぶきます。
いつものことながら、ほんとうにタチが悪い。
ロシアが得たいものは、ウクライナがNATOに加盟することについてロシアが拒否権を持ち、それを法制化しろということのようです。

「要求項目には、ウクライナのNATO加盟に対してロシアが拒否権を持つことといった、西側諸国が既に除外している項目も含まれている。
要求項目の詳細を初めて公表したロシアのリャブコフ外務次官は報道陣に対し、ロシアと西側諸国は関係再構築のために白紙から始める必要があると指摘。「米国とNATOがここ数年、安全保障状況を積極的に悪化させようとしている路線は絶対に容認できず、極めて危険だ」と訴えた。
さらに「米国とNATOの同盟国は、予定外の演習など、わが国に対する敵対行為を直ちに中止し、ウクライナ領土での軍備増強を即時中止すべきだ」と強調した」
(ロイター2021年12月18日)

具体的には、かつてのブタペスト覚書(後述)のようなものをもう一回作れということのようですが、欧米がそれを飲む可能性はありません。
そのようなものを作ってしまえば、救援を求めているウクライナを切り捨ててロシアに割譲するような行為だからで、米国とNATOの信用は地に落ちるでしょう。

セルゲイ・リャブコフ外務次官は、この要求を飲まねば、「1962年のキューバ・ミサイル危機の再来になる危険性がある。緊張がこのまま続けば、ある日目が覚めたら同じようなことが起きていたということもあり得る」(朝日12月10日)という表現を使っています。
ここでロシアが、キューバ危機を引き合いに出したのはたいへんに示唆的です。

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セルゲイ・リャブコフ外務次官  sptnkne.ws

このキューバ危機は、米国とソ連が核戦争一歩手前まで行き、それを寸前で回避した歴史的事件です。
この時もフルシチョフはロシア人特有の内角高めのピンポールを投げて寄越しました。
フロリダから見えるような眼と鼻の先のキューバに核ミサイルを搬入したのです。
こんな位置に核ミサイルを据えられては、数分で首都ワシントンに到達してしまって、防ぎようがありません。

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キューバ危機 - Wikipedia

ロシアでいえばヘルシンキあたりに核ミサイルを据えたようなものですから、当然米国は騒然となりました。
なんという危ない球を投げるのだ、本気で核戦争をしたいのか、と驚いたのです。
ただし、この危険球を投げさせたのは、ある意味でケネディだったのです。

当時フルシチョフは、キューバ政府からの核ミサイル設置要求にとまどっていました。
後々までゲバラは、なぜソ連は核を撤去したのか、痛恨の極みだ、と言っていたそうですが、キューバは独立の保証を求めていました。
米国に干渉させないためには、核の存在が不可欠だと考えたのです。

これには一理あります。
大国の近傍の小国が、その大国の利害に反する政権を打ち立てた場合、必ず内政干渉を受けます。
大国に同調する者を送り込むのはまだ手ぬるい方で、時には軍を進攻させて黙らせてしまうこともよくあったことです。
米国は1961年4月、キューバのピッグス湾からCIAに支援されたゲリラを送りこもうとして失敗しています。
このような軍事介入をさせないために、小国が切り札に使える最大の外交的武器こそ実は核兵器なのです。

たとえばグレゴリー・アンドリーが『プーチン幻想』の中で唇をかみしめるように言っているのは、ウクライナは独立に際して核を手放すべきではなかったという悔恨の念です。
当時、ウクライナは旧ソ連から引き継いだ核兵器を大量に保有しており、世界第3位の核保有国であったのです。
1992年初めの時点で、ウクライナには最低で2800発から最大で4200発の戦術核弾頭を持ち、その他に戦略核として176発の大陸間弾道ミサイルを保有していました。
この核ミサイルの製造にはウクライナの技術も使われており、放棄するかしないかはウクライナの主権に属することでした。
ですからグレゴリー・アンドリーが言うように、核を手放す必要はなく、核を手にしていれば、今のロシアの宗主国然とした拡張主義はありえなかったとも言えるのです。

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露、ソ連崩壊から30年 プーチン政権は黙殺 - 産経

一方ロシアの立場としては、ウクライナなどの旧ソ連版図の国々の独立は、ロシアが経験した始めての戦争によらない領土の失陥、プーチン流にいえば「20世紀最大の地政学的悲劇」 以外なにものでもありませんでした。
いまでもロシア人の6割がソ連の崩壊を悲しんでいるようですが、それは世界に君臨する超大国から韓国以下の経済力しか持たない小規模な地域覇権国に転落したためです。
プーチンに言わせれば、ウクライナはロシア系民族で同族だ、だから昔から同じ国を作ってきたのに、独立するとはなにごとだ、お前らはロシア人なのだという乱暴なロジックになります。

実際に、つい最近も、こんなことをプーチンは書いています。

「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は、ヨーロッパ最大の国家であった古代ラスの相続人です。スラブと広大な空間の他の部族 - ラグガ、ノヴゴロド、プスコフからキエフとチェルニゴフ - 一つの言語(現在は古いロシア語と呼びます)、経済的なつながり、ルリック王朝の王子の力によって団結しました。そして、ロシアのバプテスマの後 - と一つの正統派の信仰。ノヴゴロディアンとキエフの偉大な王子であった聖ウラジーミルの精神的な選択は、今日、主に私たちの親族関係を決定します」
ウラジミール・プーチン『ロシア人民とウクライナの歴史について』 
2021年7月12日原文ロシア語機械翻訳

そしてウクライナは、ソ連という理想的な共同体の一部であったにもかかわらず、西側の謀略のためにロシアへの包囲攻撃の拠点になってしまったと怒ります。

「2014年のずっと前に、米国とEU諸国は、ロシアとの経済協力を抑制し、制限するためにウクライナを組織的かつ永続的に推し進めました。ウクライナの最大の貿易・経済パートナーとして、我々はウクライナ・ロシア・EU形式で新たな問題について議論することを提案した。しかし、ロシアはEUとウクライナだけに関係していると言われるたびに。事実上、西側諸国は対話のための繰り返しロシアの提案を拒否している。
一歩一歩、ウクライナは危険な地政学的ゲームに引きずり込まれ、その目的はウクライナをヨーロッパとロシアの間の障壁に変えることを目的とし、ロシアに対するスプリングボードに変えました。必然的に、「ウクライナはロシアではない」という概念がもはや満たされない時が来ました。それは「我々は決して受け入れない反ロシア」を取った」
(プーチン前掲)

つまりロシアはウクライナ独立を形式上認めても、かつてのソ連帝国の版図には欧米は手を出すなということになります。
具体的には、今回の要求のように、旧ソ連諸国=東欧13ヶ国(チェコ、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ)でNATOが軍事活動を一切行わないことや、ウクライナを加盟国に加えないことなどを法的拘束力もつ条約で保証することを求めています。

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産経 https://news.yahoo.co.jp/articles/3b05942a377908c3af1a5a4193c2ecd808e2b92b

なぜなら、そこは「ロシア人の土地」だからです。
そんなウクライナが自立した核兵器保有国であることを認めるなど、ロシアにとって金輪際あってはならないことでした。
そしてウクライナから核を取り上げたい一心のクリントンも、ロシアに同調してしまったのです。
本当に民主党は外交オンチです。

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https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/2595290-cun-zaishinakatta-an-quanbudapesuto-jue-shu-shu-mingkaranian.html

かんじんのウクライナのクラフチュク大統領は核の重要性を理解せず、一片の紙切れに過ぎない「プタペスト覚書」によって手放していまいます。

「ブダペスト覚書署名国は、「ウクライナの独立、主権、現存国境を尊重する」こと、「ウクライナに対して、今後一切の武器を使用しない」こと、「ウクライナの政策に影響を及ぼすことを目的とした経済的圧力を控える」ことが義務づけられたのである。
・同覚書にのっとり、当時世界第3の核兵器保有国であったウクライナは、自発的に核兵器能力を放棄し、非核国家となった。ソ連邦崩壊時、ウクライナ領内には、大陸間弾道ミサイル、戦術核兵器、核兵器を搭載可能な戦略爆撃機、戦略核兵器があった。ウクライナが独立した直後から、アメリカとロシアは、当時のウクライナ政権幹部に対し、できるだけ早く核兵器を放棄するよう説得し始めていた」
(ウクライナのマルチメディア報道プラットフォーム 2021年12月26日)

哀しいほど無能なクラフチュクは慌てて核のようなものは早く手放したい一心で、「あれが爆発したらどうするのか」と叫ぶ始末でした。
独立直後のウクライナにとっての外交的価値をまったく理解していなかったのです。
突然のソ連崩壊によって、ウクライナ国内には、地方共産党の支部としてモスクワに奉仕するだけが仕事だった共産党員と、生命をかけて独立を目指してきた愛国派に分裂していました。
そしてクラシチュクのような質の低い旧共産党幹部が権力を握り、米露の核放棄要求を唯々諾々と呑んでしまったのです。

ブタペスト覚書によると 、ロシアと米国と英国は、ベラルーシとカザフスタンとウクライナが核不拡散条約の加盟国になったことを認め、核兵器をロシアに引き渡すことが記されています。

  1. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの独立と主権と既存の国境を尊重する
  2. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する脅威や武力行使を控える。
  3. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに政治的影響を与える目的で、経済的圧力をかけることは控える。
  4. 「仮にベラルーシ/カザフスタン/ウクライナが侵略の犠牲者、または核兵器が使用される侵略脅威の対象になってしまう」場合、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに支援を差し伸べるため即座に国連安全保障理事会の行動を依頼する。
  5. ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する核兵器の使用を控える。
  6. これらの誓約事に関して疑義が生じた場合は、互いに協議を行う。
    (ウィキペディア『ブタペスト覚書』)

では、核放棄する対価にウクライナがなにを得たのでしょうか。
ここには「ウクライナの主権を尊重する」と書かれているだけのことで、それをどう保証するのかが一行も書かれていません。
文言にあるのは「脅威や武力を控える」という努力義務にすぎず、ロシアはもとよりその担保を与えねばならなかった米国にすら介入義務を課していないのです。
そしてウクライナの主権が犯された場合には、国連安保理に持ってこいという言い方をしています。
もちろんその国連安保理で拒否権を握って自国に不利になることをことごとく排除してきたのはロシアだということを知った上での米露の談合でした。
つまりプタペスト覚書とは、米露がウクライナに押しつけた担保なしの小切手だったというわけです。

このプタペスト覚書きの音頭を取った米国内にすら、米国政府の不誠実さをなじる声があります。

「米国ではジョージ・H・W・ブッシュ政権もビル・クリントン政権もウクライナに軍事介入するための準備は行われておらず、どちらの政権も米国上院議会が国際条約を批准するとは信じていなかったので、この覚書はより限定された条件で採択された
その覚書は「誓約事に関して質問を提起する状況が生じた場合に」当事者間での協議の必要性を示しており、同覚書に明記されている。覚書が法的義務を明示しているかどうかに関わらず、ウクライナが2014年初頭から遭遇している難儀は、不拡散の誓約と引き換えに提供されている将来への安全保証の信頼性に疑問が生じていると言えよう」
(ウィキ前掲)

このように今のウクライナ危機は、このプタペスト覚書の虚構から始まっているのです。
そしてキューバ危機を招き寄せたケネディの轍を踏もうとしているのがバイデンです。
それについては長くなりましたので次回にします。

 

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コメント

まあプーチンのロシア人論もかなり乱暴ですけどね。陸続きなのに日本での東北弁と九州や沖縄訛りのように会話が成り立たないほどの違いがあるし、歴史的にもかつてロシアなんかよりも強国だったポーランドが支配してた地域だし。
キエフ公国が帝政ロシアの始まりだけど、プロイセン·ポーランド·スウェーデンという強国にいつもボコられてた弱小国だった時代の話です。

それにしてもモルドバって今じゃヨーロッパ最貧国とか呼ばれてますけど、東部の工業地域が実質ロシアに支配されてるのによくまあ国家の体を成して存続してますねえ。。

核さえ持ってれば···リビアはカダフィが核開発を手放して欧米との融和を計ったけど革命でメタメタ。
パキスタンは開発成功して下手に手を出せない。
北朝鮮の金正恩は独裁体制維持のためには当然···って選択をしますわな。。

核つながりで話題や論旨がブレないように敢えて外して語られているのだと推察しますが、ブダペスト覚書に至る6年前にはチェルノブイリ原発事故がありました。
絶望感と核に対する怨嗟、厭戦に溢れた国内。
国民的合意も自国予算も全く見込めない中、独立性を持てる数発の核保有を交渉で勝ち取るのは無理だったんだなあと思います。
爆発したらどうするんだ!というのも、わからなくもないのです。
前年1991年がソ連崩壊。それ以降は原子力発電所が領土内に立地しているウクライナに処理義務が移り、前後どちらが先かは確認できませんでしたが2号炉で火災も起き収束に追われています。

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