山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心に その2
承前
■ 自民党復党を願いながら、共産党候補の当選に寄与する下地幹郎の怪
毎週土曜の夕方、下地氏は沖ラジの番組(FM那覇だったか?)を持っています。たまたま出先でこれが聞こえてきますと、私なんかは悪寒さえしてきます。やれ、どこの小学校は私が立て替えさせたとか、どこそこの病院は私が誘致したとか、昭和40年代の金権政治家でも言わないような自慢話とも戯言ともつかない厚顔無恥な政治宣伝のオンパレードです。
下地氏は中国企業から違法に金員を受領し、維新の会を除名されています。
維新の会に除名処分撤回願いを提出しますが叶わず、今度は自民党に復党願いを出しました。目的は本人がいうように一区の自民党公認権を得るためだけなので、復党を認めない自民党の判断は正しいものでした。
自民党県連、下地幹郎氏の復党認めず - 宮古新報ニュースコム
國場組の國場幸一会長が音頭をとって「保守合同の会」というのが出来ましたが、この場合の「合同されるべき保守」とは、いったい自民党と他に何を指すのか?、当初の私には分かりづらいものでした。下地氏に近いスジからは「やがて知事選に向かって、オール沖縄内の故翁長シンパにも呼びかける」という説明を受けた事もありました。けれど、そのような目標は初めからなかったのです。
沖縄自民党が下地氏との面談さえ拒否し、下地復党の目が消えて無くなると、あえなく選挙戦を前にして「保守合同の会」は解散してしまった事からもあきらかです。
そもそも復党を願いながら今回も再び一区で立候補するなど、勘違いも甚だしい行為でした。それでも自民党公認國場幸之助に肉薄する上積み票が結果として得られたならまだしも、逆に前回より5000票も減らして國場とダブルスコアに等しい票差が開いてしまい、メンツも立場も丸つぶれです。
対して國場は今回選挙で大健闘したと言えます。
女性問題や観光客との暴力沙汰などスキャンダルを乗り越え、前回票を伸ばしています。
今回は実家の國場組会長が下地幹郎側につくなど、逆風ばかりの選挙戦でした。
見ればわかるように、親離れもし、激しい選挙戦のすえの最近の國場は修羅場を乗り越えた男の顔つきになっています。
目下の國場は比例で復活するのが習いになっている状況であり、下地幹郎は「比例復活議員は二回連続救済まで」とする自民党の基本ルールに目をつけたに違いありません。
ただ、その内容を見れば一目瞭然。赤嶺61519票に対して国場が54532票、下地幹郎が29827票と下地氏の出馬がなければ保守票が割れず、赤嶺の当選はなかったのです。
深掘り】沖縄1区「保守合同」は衆院選後? 下地氏の自民復党に
この状況は前回選挙でも同様でした。つまり自民党から見れば下地幹郎は赤嶺当選の最大の功労者で、保守として確実に得られるはずの議席は盗まれたも同然でした。
にもかかわらず自民党が國場を「比例復活二回連続までルール」を適用して排し、代わりに國場の小選挙区当選を阻んだ下地幹郎を復党させ、さらに一区の公認候補とする事など初めからあり得ない絵空事でした。
今回選挙では自民党票がオール沖縄票を2014年以来、初めて上回りました。
きたる知事選に意欲を示す佐喜眞淳氏はインタビューに答えて、「保守陣営の一本化が大事」と述べています。自民党では他にもオール沖縄からくら替えした赤嶺昇氏や、安里繁信氏の名前があがっています。
下地幹郎は「今後も国政をうかがう」とし、「保守合同の理念は捨てない」としつつも、知事選出馬を明確に否定しています。
知事選における現職再選率は全国的に80%を超えますが、事実上の「一騎うち」となれば、今回は自民党候補に有利にはこぶ展開が十分あり得ます。
■ デニー知事の設計変更「不承認処分」に怒るオール沖縄の不思議
12/15高裁那覇支部において、県側が控訴していた抗告訴訟が却下されました。
最高裁でも同様の判断が下される見込みが大で、この訴訟は沖縄県が勘違いしてきた許可権者としての「県の立場」を確定されたものとして、今後の変更不承認に関係する訴訟に大きな影響をもたらすものになります。
さて、昨年4月に防衛局が提出した例の軟弱地盤と言われる地点を含む設計変更届について、県側がようやく不承認処分を下しました。
このことにショックを受けたのは防衛局でも沖縄自民党でもなく、なんと与党オール沖縄側の幹部たちでした。
沖縄タイムス紙によれば、彼らは「知事から何の相談もなく、報道によって知らされたような塩梅だった」と言っています。「オール沖縄の根幹にかかわる話」、「来年、知事選を控える知事が、与党と溝をつくるようでは話にならない」、「(議会の)空転も辞さない。しっかり説明をしてもらう」として、相当なおかんむり状態です。
オール沖縄側にとっては、今回の不承認が行政権・法的にも「最後のカードだ」との理解があって、来年の知事選前くらいまで引っ張って利用するつもりで企図していたものと思われます。
工事自体は着々と進んでいるので、防衛局側には焦っている感じはなかったものの、県側が「承認も不承認もしない」という情況が長く続く事が実はいちばん困ります。
県の不作為に対してする防衛局側からの訴訟であれば、行政上の新たな問題が加わり、そこは別の訴訟として進めざるを得ない状況も出てきたのではないか。
そうなれば、最終決着までの時間がかさんで回り道になる可能性もありました。
それも防衛局は覚悟していたにしろ、ですから防衛局としては「勿怪の幸い」というオチだったでしょう。
前にも申したとおり、オール沖縄側と言えども最終的に「辺野古移設を阻止できる」と考える議員さんはまず居りません。ですが、訴訟をつうじて問題を引き延ばし、政治的な情況を作るために利用したり、己が選挙に役立つようにコントロールする事は可能です。
辺野古問題とはつまるところ、今やそのような価値でしかないのです。
デニー知事は故翁長氏のようなスレっからしではなく、狡知に長けた人物でもありません。場面を創出する事も出来ません。知事は彼らとは本来的にケミストリーが合わないのかも知れません。
オール沖縄幹部らの「与党と相談せよ」との言い分もわかりますが、行政側としても限度というものがあります。相談すれば与党の政治的都合に振り回されるだけです。
県庁とすれば「承認」であれ「不承認」であれ、行政機関である以上、常識的な期間内に処分を下すのが義務です。
新聞ではまた、「沖振法の審議を前にして「不承認」がこのタイミングでは不適切だ」として知事の非を鳴らす論調もありましたが、これは逆でしょう。
沖振法改正への影響をかんがみるからこそ、決定を先送りにしない知事の判断があったと言えます。
(続く)
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コメント
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デニーさんは···まあ元々寝技や根回しなんて全く出来ないのに「人気」だけで国会議員や知事になっただけの政治的センスが皆無の人だったというのは当然というか誰もが知っていたでしょうに、お手軽な御神輿と担ぎ上げたオール沖縄の方々はご愁傷様ですとしか。
下地さんは10年前には割とマトモな政治家さんだと思ってたんですけど···なんですか、こんなグダグダっぷりは。。。
投稿: 山形 | 2021年12月21日 (火) 07時46分
失礼しました。
前日・日付けの、その1のコメントは、
私です。名前の記入を忘れて、送信しました。
(らくがきモモ・らくがき桃太郎)
[ 山路さん、その2 ] への、コメント。
わたしは、安里繫信さん・押しです。
今は、高市早苗さんは、[メジャー] としての
認知になっていますが、安里さんも、
それに近い方だと、思ってています。
前回は、普天間市長との 保守分裂を避ける
ため、寸前まで準備しながら、身を引きました。
沖縄の保守陣営は、次の県知事選の候補選定、
どうするのでしょうか。
下地幹夫さんは、もう、何をかいわんやです。
仲井間さんの、[ いいお正月をむかえられそうだ ]
の後の、選挙でも、ただただ、自身のエゴと、
パフォーマンスのためだけに、翁長・仲井間の
知事選での、それまでの保守票を、
分裂させて、票を割る事をしただけの見識でした。
そのあとの、翁長・デニー、両知事の、今の県政の
混迷をつくる、遠因にもなったとおもいます。
仲井間さんなら、いまごろは、
那覇-普天間―名護までの鉄軌道も目途、または
部分的着工もありえたと思います。下地幹夫さんは、
普天間基地の、嘉手納基地への移動など、
その主張の内容も、疑問だらけでした・・。
お金の問題も・・、政治家を辞めないのなら、次は、
何の選挙に出馬するのでしょうか。
私と同じ、宮古島の出身ですので、その身のたどり方は
残念というか、政治家なのでナサケのかけようも無い。
投稿: らくがきモモ・(らくがき桃太郎) | 2021年12月21日 (火) 08時08分
久しぶりにコメントします。
辺野古の争点が出尽くして、ほぼ決着が付いた状態ですね。
私は、2013年に仲井真知事が埋め立てを承認した時点で決着は付いたと思っていますが。
埋め立て工事を進めるのに困難なほどの瑕疵があれば、オール沖縄にも勝機はあるのでしょうがその材料も皆無です。
話は変わりますが、米軍基地でコロナのクラスターが発生しました。
オール沖縄は、徹底的に抗議するんでしょうね。
新たな論争に発展しそうです。
投稿: karakuchi | 2021年12月21日 (火) 08時40分