山路敬介氏寄稿 沖縄三題 宮古島市ミサイル配備報道を中心に その3
承前
■ 離島のミサイル配備と台湾問題について ①(ここからが本題です)
12/1安倍晋三元総理は台湾のオンラインイベントに参加して、「台湾有事、それは日本の有事だ。すなわち、日米同盟の有事でもある」と言いました。しごく真っ当な見解です。
15分あまりの全発言を聞くと、それが武力侵攻しかねない習や中共を強くけん制する目的であった事が良く分かります。のみならず、岸田政権にきびしくカツを入れるつもりもあったのだろうと思いました。
中国側の反応は「誰であろうと、頭が割れて血が流れる」だの、「火だるまになって焼け死ぬ」などとなかなか豊富な語彙で楽しませてくれましたが、さも安倍元総理が台湾独立派ででもあるような詭弁論法まで用い、下品なだけでなく論理性も理性も欠けた内容のない反撃でした。
こうした場合、「中国に寄り添う立場から、日本人にどういう反応や考え方を持って接して欲しいと中共は期待するか?」を手軽に知るための恰好の逸材として、私は橋下徹氏の発言を珍重しています。
どうせ安倍発言を全部聞いていないだろう橋下氏は「台湾有事が日本の有事、日米同盟の有事だって事になると、確実に沖縄の米軍基地が攻撃されるんですよ」と言っています。また「それでもいいのか?という議論が必要だ」とも言います。ここには彼のいつもの発言通り無知なだけでなく論理の飛躍も見られます。
中国の台湾侵攻があった場合の、日米いくつかのシュミレーションを見た事があります。
そのほとんどの場合、程度の差こそあれ私たちの先島諸島が巻き込まれる可能性が示されています。防衛に関する事だからと、日米軍事関係者とも大事をとったオーバーをいうのだろうと考えていました。けれど、ショックだったのは、文系若手の米中関係研究の第一人者である東大の佐橋亮氏ですら、テレビでも著書「米中対立」の中でも台湾有事の際の先島諸島の危険性を述べているのです。
そうだとするなら、問題はとうに「台湾有事=日本の有事」である事に違いありません。
国会ウォッチャー on Twitter: "#安倍晋三 元首相「台湾有事
さらに、日本の施政権下である先島に影響がおよぶなら、自然に自衛隊の任務が発動され、よって「日米同盟の有事」という事に発展するでしょう。
だからこそ安倍晋三元総理は中国の台湾侵攻を念頭に、現状変更の試みを続ければ「非常に高い代償を払う事を知らしめる必要がある」とし、「台湾有事は日本の有事、すなわち日米同盟の有事でもある」に続けて、わざわざ習を名指しして「北京の人々、とりわけ習主席は断じてこれを見誤るべきではない」と警告したのです。
台湾有事の邦人保護 先島島民避難と二正面 与那国など戦域の恐れ
この件でさすがの発信力を発揮したのは、やはり広報本部長の河野太郎氏でした。
記者会見で上海テレビの記者が「安倍氏の発言で、また日中関係が厳しくなっている」などとし、「自民党としてどう対応するのか?」と、まるで党の責任問題として扱うべきといった、いかにも居丈高な質問が出されました。
河野氏はこのように明解に言い切りました。
安倍氏「台湾有事は日本有事」発言、河野氏「当然の懸念」と同調 中国
「安倍氏の発言は何も特別な事ではなく、我々の当然の懸念だ」とし、「中国はここ30年間、防衛目的でない軍事力を増やしており、30年間で42倍になっている。日本に到達しうるミサイルを多数配備している。中国の戦闘機は台湾の空域に頻繁に侵入している。多くの人々が中国による台湾への武力行使を懸念している。
中国が台湾に武力を行使すれば、好むと好まざるとによらず、日本は影響を受ける。その状況に備えておかなければならない。したがって安倍氏の発言は我々の当然の懸念で、米国やクアッド(日米豪印)やOUKUS(豪英米)といった国々と協調する必要がある。欧州からもかなりの国が海軍部隊を南シナ海、東シナ海に派遣しており、台湾海峡の状況を懸念している。
(中国は)武力による現状変更の試みを続ける事はできないし、もしそれをするようであれば、非常に高い代償を払う事を中国に知らしめる必要がある。何もおかしな事ではない。中国は尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返しており、これは両国関係の改善に寄与しない。彼らは自身が何をしているか理解する必要があるし、我々は国際法に違反したり、現状変更を試みたりする中国の活動を見逃さないだろう」
しかし、ほとんどのメディアでは取り上げられていませんが。
こうした安倍氏や河野発言に平仄を合わせように、12/3ブリンケン国務長官が記者会見でほぼ同内容で中国への警告を述べています。
「中国がここ数年、軍事的な挑発や圧力によって現状変更を試みている」とし、「端的にいうと台湾有事は中国にとって、破滅的な決断となるだろう」、「(中国による台湾侵攻は)中国人のみならず、多くの人命にかかわる恐ろしい結果をもたらす」として中国をけん制。また、「台湾に断固とした関与をし続ける」と結んでいます。
■離島のミサイル配備と台湾問題について②
海上自衛隊の輸送艦「しもきた」が宮古島市の平良港に着岸しました。私はモノ好きなので、前日から反対運動員などの数をカウントしつつ当日も夜明け前から付近で見物していました。
11/14朝7:30頃、クルーズ船を見慣れている私の目にも「しもきた」はとても大きく見え、近づくとビルにして10階建てはありそうな威容に感じられました。
反対派の運動員(市民ともいう)は新聞などの公式発表で13日が60名、14日が40名~50名となっていたようですが、港と目的地の保良弾薬庫も回り総じて20~30名といったところだったと思います。
宮古で必ず参加しているおなじみの15名程を除くと、本島からの参加者が10名程度といったところでしょうか。とてもサッパリした抗議運動でした。
県警本部からの応援が12、3名で、届け出予定数が公式発表とイコールなら合う数だったと思います。
いつものように記者やカメラマンの到着を待って、ダイイン(寝転がって抵抗する態様)から警察官によって排除されるまでの報道用の絵が取れたら一区切りです。
このようなわずかな違和をのぞけば、他は整然・粛々と運搬業務が滞りなく完了しています。
デニー知事は「今回の搬入に際して自衛隊は、地元宮古島市と協議、事前に情報を共有しながら搬入の準備を進めたものと承知している」と問題にしない姿勢をあきらかにしていまたが、後日記者団から「弾薬搬入を容認した発言だ!」と突っ込まれ、「容認はしていない」などとして「分かりにくさは否めなかった」と反省の弁を言わされています。
宮古島市の座喜味市長はそもそも自衛隊誘致賛成派だし、デニー知事もかつては自衛隊協力会に在籍していただけあって、その本音がのぞいていると言って良いでしょう。
それにしても「(知事の)支持層配備反対 不信払う」と大きく紙面に出されてしまい、いつも繰り出される沖縄二紙の左派同調圧力のかけ方には辟易とします。
当地の宮古島紙の新聞は翌日には一行の記事もなく、盛り上がりの欠けた抗議活動への関心の低さを物語るようでした。
ただ、11/17になって逆に「弾薬搬入は当然」とする宮古島市防衛議員連盟の見解が載せられています。(宮古毎日)
連盟の粟国会長は、「すでに市民の理解は得られている。弾薬搬入は当たり前の事」と述べ、「今の台湾海峡などの今の状況を見れば、自分の国は自分で守るという観点から、弾薬搬入は必須で当然」と強調していました。
二紙と違ってその後の後追いはなく、地元ではミサイル等の弾薬搬入が大きなトピックとはならなかった事を証明しています。
(次回完結)
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コメント
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地元メディアはいまだに復帰前の社会構図を引っ張り出してきて必要以上に対立をあおってきますが、その当時とは政界情勢も違っている事や対立してくる相手が現状維持を目的としていない事には一切触れません。
そのような相手に対して「外交で解決しろ」は全くの意味不明です。
全面降伏でもしろと言っているようなものです。
百歩譲って過去に色々軋轢のあった米軍相手に不信感を持つのはまだわからなくもないのですが、その層のほとんどが自衛隊に対しても同じような嫌悪感をぶつけてくるのが本当に意味が分かりません。
投稿: しゅりんちゅ | 2021年12月22日 (水) 13時03分
橋下氏については、最近のテレビでの大活躍を見るにつけ、信用できないコメンテータになり下がった感が強く、テレビを消すかチャンネル変える出演者の一人です。
投稿: ednakano | 2021年12月22日 (水) 16時01分
台湾有事に際しては、台湾在住邦人、先島住民の保護はもとより、中国に進出している企業の邦人保護も必要です。
企業も利益追求のあまり、危機管理意識に欠けているように思います。
先の戦争で、旧満州に取り残された人たちがどんな目にあったか、日本人は忘れています。
日米同盟で対応するにしても、安保法制にしてもに日本ができることは限定的です。憲法改正論議が始まりましたが、抽象的ではなく具体的な議論が欲しいですね。アフガンの失態もありましたが躊躇なく邦人救助のための自衛隊を飛ばす。そのための武器使用も持さない。日本が攻撃されたら敵地攻撃する。
今の政治家は、そのような突っ込んだ議論から逃げています。
徒に時間が過ぎても、有事の際は日本国民の命、財産を守ることができません。
投稿: karakuchi | 2021年12月22日 (水) 19時21分