「トランプ前」に戻った北朝鮮の次
北朝鮮がまたまた弾道ミサイルをぶっ放して下さいました。
最近の1月25日のが巡航ミサイルで、1月27日のは、「イスカンダル」型(KN-23)のようで、このいずれもか近距離タイプなのに較べ30日のものは「火星12」型でグアムまで射程に入れた中距離弾道ミサイル(IRBM)です。
今年に入って、まだ1か月もたたないうちに上げも上げたり、7回で合計11発発射しています。
うち弾道ミサイル相当が6回で9発、巡航ミサイルが2発という内訳です。
●2022年に入ってからの北朝鮮の弾道ミサイル発射実績
・1月05日朝 距離700km・高度50km 「極超音速ミサイル」
・1月11日朝 距離1000km・高度60km 「極超音速ミサイル」
・1月14日夕 距離430km・高度36km 「鉄道型イスカンデル」 ※2発
・1月17日朝 距離380km・高度42km 「北朝鮮版ATACMS」 ※2発
・1月25日朝 距離1800km 「新型長距離巡航ミサイル」 ※2発
・1月27日朝 距離190km・高度20km 「車両型イスカンデル」 ※2発
・1月30日朝 距離800km・高度2000km 種類不明(火星12号」? ※ロフテッド軌道
※JSF氏による
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20220130-00279702
巡航ミサイルは制裁対象外ですが、あとのすべては弾道ミサイル実験禁止に該当しますので、国連安保理決議決議第2371号違反です。
ここまで公然と国産安保理理事会決議違反を無視し続けるのを見ていると、正恩がやーい罰するならやってみろーと赤い舌を出しているのが見えるようです。
正恩は、バイデンがウクライナで動けず、岸田氏並に遺憾砲しか打てないことを見越して、こういうコトをしています。
実に悪質ですが、日本に独自の制裁手段がない以上、仕方がありません。
正恩はミニプーチンですから「力の信者」で、遺憾砲を百発打ってもカエルの面になんとやらです。
こういうことを重ねれば痛い目にあうということを覚えないようだと、世界を巻き添えにして滅ぶまで続けることでしょう。
昨日の中距離弾道ミサイルは、ロフテッド軌道で高く打ち上げていますが、飛距離は800㎞。
堂々たる中距離弾道ミサイルで、とうとう今までの短距離のものから一線を超えました。
当然、その目標はグアムを狙ったと考えられますから、目的は挑発です。
使用された「火星12」は、2017年8月と9月に日本列島の上空を飛び越えたものと同型です。
北朝鮮ミサイル:火星12、早期配備に自信 「終着点ほぼ到達」 | 毎日
この時、北はトランプ率いる米国とギリギリのせめぎ合いをしている最中で、当時の北の戦略軍司令官はこう言っています。
「北朝鮮は今朝、金洛謙(キム・ラッキョン)戦略軍司令官(大将)が「すでに明らかにしているようにグアム包囲射撃作戦案を慎重に検討している」として、発射されれば「島根、広島、高知を通過し、射程距離3、356.7kmを17分45秒間飛行した後、グアム周辺30~40km海上に着弾することになる」と「火星12号」の日本列島に向けて飛ばすことを明らかにした」
(
火星12号」は日本列島を飛び越えて来る! 米朝どちらも「最後通牒
この人物は、露骨にグアムを標的にした「グアム包囲射撃作戦案」なるものがある、 と言い放っています。
普通は軍の高官が弾道ミサイルの標的を軽々に口にしないものですが、この国はしちゃうんですな。
そして、この北という国家の特徴は、「言ったことは守る」という律儀なことです。
声明と実際のミサイル実験が完全に符号しています。
・1回目・・・声明2006年7月16日、7月6日核実験予告、10月9日核実験実施
・2回目・・・声明2009年4月14日、5月25日核実験
・3回目・・・声明2013年1月24日、2月12日核実験
・4回目・・・声明2015年12月16日、20016年1月16日核実験
・5回目・・・声明2016年9月1日、9月9日核実験
・6回目・・・声明2017年6月7日対北国連制裁決議、7月4日ICBM発射
・7回目・・・声明20017年7月14日、8月火星12号発射
このようにいままで、北はやると言ったら2006年を除いてほぼ1カ月前後で本当にやってきましたが、トランプとの直接交渉に乗ったために弾道ミサイルと核実験は休止していました。
それが再開されたわけですから、バイデンが直接交渉をやる意志がないことを見極めたということです。
その見極めの間は、短距離弾道ミサイルを景気よく打ち上げて見せて、技術に磨きをかけてきました。
変則軌道や超音速滑空体も手にしたようです。
これらの弾道ミサイルの技術は、よくメディアは迎撃が困難だといういうことを強調しますが、それはあくまでも副次的効果にすぎず、米本土を射程に収めることが可能だということが重要なのです。
レッドラインの中距離弾道ミサイルを発射しましたから、残るは大陸間弾道ミサイル(ICBM)である「火星14」と核実験です。
この実験もそう遠くない将来にするはずです。
そしてもう一つの核開発の柱が、核戦力の残存性の向上です。
北が対米核攻撃能力として重視しているのは、第1撃のためのICBMと、2撃目の水中発射弾道ミサイル(SLBM)です。
これらは米国の「核ミサイル狩り」の標的となりますから、厳重に守られねばなりません。
ですから、ぜひとも戦略原潜で深い海に隠れて撃つ技術の獲得が急がれるわけです。
ちなみに道化のようなムンジェインが、よく戦略原潜が欲しいと言うのは、北のSLBMとドッキングして「統一朝鮮」の核にしましょうやというラブコールですが、正恩からは相手されませんでした。
北は独自に戦略原潜を建造しているからです。
この間よく打っている短距離弾道ミサイル群や中距離弾道ミサイルの役目は、あくまでもこのICBMを活かすためのものです。
有事に際して、北は米国の「核ミサイル狩り」を混乱させるために、在日、在韓米軍基地を攻撃する意図があると考えられます。
この分野の技術はほぼ完成の域に達しているはずです。
しかし、まだ北は核兵器体系技術を詰めきってはいません。
新型ミサイル開発では、「火星10」が発射失敗し、「火星12」に変更されたようですし、水中発射技術もそのプラットフォームの戦略原潜も未完成です。
ただし正恩が父親の正日時代と違うのは、核兵器開発と弾道ミサイルを本気で習得し、実戦配備する意志が堅いことです。
彼はいままでのように核兵器開発を、ただの国内向け国威発揚ショーや対外交渉のハッタリと考えずに、実戦を想定した技術開発の完成に重きを置きました。
その意味で、この北の弾道ミサイル実験を米国を振り向かせることが目的だ、などとと今でもカビの生えたようなことをいうコメンテーターがいますが違います。
正恩はバイデンは、北と真正面から取り組んだトランプとは本質的に違うことを、とっくに理解しています。
今、北がしていることはそんな外交的ジェスチャーではなく、淡々と核兵器体系を実用化することです。
「振り向かせる」時期はトランプ時代で終わったのです。
さて北のもうひとつの側面は、米国の出方との関係です。
トランプが止めていたことが、バイデン政権になって始めたのは、下図の時系列でみれば因果関係が明瞭です。
バイデンも馬鹿にされたものです。
2017年9月に行われた6回目の核実験では、それまでと違い桁違いの威力の推定160キロトンの出力の「水爆」(未確認)を実験しています。
実際に成功したかどうかはわかりませんが、おそらく核弾頭の小型化には成功していると見られています。
しかしまだ安定して大陸間弾道ミサイルにつけて飛ばして、再投入可能なところまで詰めきっていないはずで、たぶんこの実験に進むはずです。
トランプが落選したことに失望したのは、共和党だけではなく正恩も同じでした。
トランプによって長年の北の政治的野望だった、米国との首脳直接会談という成果をもぎ取ったと正恩は考えたはずです。
これは祖父も父親も成し得なかったことで、正義は辺境の貧乏な王から一躍世界で脚光を浴びるスターに変身したと、内心鼻高々だったはずです。
しかしこのステータスに押し上げてくれたトランプがいなくなってしまったことは、大きな誤算でした。
替わったバイデンはまた3カ国連携による締めつけ路線に戻ったわけですが、ならば正恩からすれば元に戻るだけだということになります。
そして様子見をするように短距離から始めて、徐々に長距離・高度化させていき、そして今回この「火星12号」でチェックメイトを打ったことになります。
とうぜん次のレッドラインは核実験です。
これも解禁すると明言しました。
「北朝鮮の朝鮮労働党は19日の政治局会議で、米国に対する「信頼構築措置」を全面的に再考し、中止してきた全ての活動の再開を検討するよう担当部門に指示した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信が20日、報じた。核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆した形だ」
(毎日2022年1月31日)
有言実行の北のことですから、おそらく近日中にやるでしょう。
北はまだ核兵器技術を完成させてはいないからです。
やれやれ、困った手合いです。
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