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2022年1月28日 (金)

薄氷の上に立つロシア

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昨日の記事を読まれた方は、そうかロシアは余裕しゃくしゃくで西側に戦争を挑んでいるんだ、と思われたかもしれません。
必ずしもそうではありません。
プーチンは精一杯虚勢を張っているにすぎません。
ただケンカのコツを知っているために、今は精一杯毛を逆立てたシベリアンタイガーのように見せているだけです。

ところで、ロシアは何で食べていると思いますか。
よく筑波大の中村逸郎氏が言うのですか、ロシア人は働かず、地べたから湧きだすもので食っているのです。
ロシア経済は地下資源の開発に依存する「不労所得経済」と、自給可能な農業によって支えられています。
下図はロシアの輸出入を見たものですが、極端な原油依存型で、まるで発展途上国のモノカルチャー経済のようです。

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ロシア経済、潜在力は魅力だが、見えない「近代化」策

またこの主立った輸出先は中国で、中国への主要原油輸出国となっています。
これが中露同盟の経済的動機です。

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第6節 ロシア:通商白書2020年版(METI/経済産業省)

この二枚だけの札が、プーチンの戦略を決定しています。
おわかりのように、こういう偏った経済構造を作ると、プーチンがいきなり製造業に目覚めることは考えにくいのです。
プーチンが自派のオルガルヒ(新興財閥)に与えた特権が石油利権の独占でした。
原油と鉱物資源を売って、国土とその資源を経済規模にふさわしくない強大な軍隊で守るというのが、ロシアのビジネスモデルです。

軍事費と身の丈、つまり経済が釣り合っていないのです。
まずは軍事費

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2016年版:世界の軍事費

堂々の世界3位です。

「ロシアの軍事費の公表額は、2009年度が1兆2110億ルーブル(383億ドル)、対国内総生産(GDP)比率3.1%である。しかし公表軍事費に含まれない関連予算を含めると、2009年度で約1兆8090億ルーブル(約572億ドル)、GDPの4.63%に上る。 
この額は中国の公表額498.4億ドルを上回る世界第2位の額となる。さらに購買力平価で換算すれば、国際通貨基金(IMF)によると、2009年のロシアのGDPは2兆1160億ドルとなり、その場合の軍事予算額は979億ドルになる。
このようにロシアの軍事費は、資源高に支えられた経済規模の拡大以上の速度で急成長を遂げていると言えよう」
(矢野義昭2011年11月22日『急速に復活の兆しを見せるロシアの軍事力』)

続いてGDPを 見ます。

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上位は米中日の順…主要国のGDPの実情を確認する(2021年版

なんと韓国と同じくらいで、ベスト10位にも入りません。
巨大な軍隊と貧弱な国力。まるでかつての日米戦に突入する直前のわが国のようです。

こういう国が戦争をしようとすると、短期間で終了させなければ国力が持たないために、緒戦で大規模なハイブリッド戦(電磁パルス攻撃やサイバー攻撃など)を仕掛けつつ、伝統的な戦車と歩兵戦闘車を先頭に立てた縦深攻撃が予想されます。
特に警戒すべきは、グラシモフ・ドクトリンと呼ばれる、電磁パルス攻撃、サイバー攻撃、そして偽情報をSNSに流して社会混乱を招くことです。
このハイブリッド戦は、現実にクリミア進攻で盛んに使用されましたので、今回も最大限に活用するはずです。

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jp.sputniknews.com  ワシリー・グラシモフ参謀総長

「これは、ワシントン政界が思い描いていたロシア軍ではなかった。
高性能の兵器を備えていた。電磁波を利用する電子戦システムや、通信妨害、防空システム、命中精度の高い長距離ロケット砲などだ。しかも、そのほとんどが、米軍が装備していたものより性能がよかった。そして、リトル・グリーン・メンと呼ばれたロシアの特殊部隊はこれらの兵器を驚くほど効果的に使いこなし、ハイスピードで精密な戦闘を展開してみせた。これはもともと長らく米軍だけが保持しているはずの戦闘能力だった」(森川聡『米軍が恐れるロシア軍の本当の実力』 2022年1月12日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/25392

さて、ロシアは「不労所得経済」の根幹である原油価格の動向に左右されます。
下図は原油価格とロシアの経済の相関関係を見たグラフですが、薄い青線の原油価格が下落した2015年にはロシアルーブルは投げ売られました。
しかし2018年頃には、原油価格がもちなおしたために再び回復基調にあります。

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第6節 ロシア:通商白書2019年版(METI/経済産業省)

「2018年の実質GDP成長率は、+2.3%と前年から僅かに加速した。要因の一つが原油価格の回復である。原油価格が下落した2015年には、成長率は▲2.5%と大きく落ち込んだ(第Ⅰ-3-6-2図)。その後、油価は2016年には底を打ち、上昇基調で推移してきた。油価の回復に伴い、ロシア経済も緩慢ながらも回復し、2018年には6年ぶりの2%を超える成長となった」(経済産業省ロシア経済マクロ動向)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2019/2019honbun/i1360000.html

さて、そのロシア経済の大黒柱の原油市場は、いまどのようになっているのでしょうか。

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図録▽原油価格・天然ガス価格の動向

原油価格は見た目には上昇していますが、その原因はコロナ復興需要の急上昇による産業の再開が原因であって、OPECが増産に応じないのは、これが短期的に終わるとみているからです。
なによりも、石油掘削業は脱炭素政策によって石油産業の業態自体の寿命が長くはないと見ています。
だから増産に応ぜず原油価格の上昇を招き、ロシアを勢いづけてしまったのです。

皮肉にも自由主義諸国の脱炭素政策が、ロシアを一時的に元気づけてしまったようです。
今、プーチンが強気でいるのは、原油想定価格の42.4ドルを上回っているからにすぎません。

「ロシアも2020年の予算編成の原油想定価格を42.4ドルに設定しており、予算不足は必至と言われる(東京新聞2020.4.1)。ロシアは原油価格が予算編成時の想定価格を上回った場合、追加税収が「福祉基金」に入る仕組みとなっており、それでプーチン政権が大統領続投へ向け打ち出している生活水準の改善策(出生率向上のための支援や給与底上げなど)をまかなうものとされている。
このように原油価格が政権維持にも大きくかかわるため、ロシアはOPEC側と協調減産協議を再開する意向と見られるが、OPEC主要国のサウジアラビアは5月から輸出量を日量1600万バレルに増やし、需要減に対して価格競争に打って出てシェアを拡大することで危機を乗り越えようとしている」
honkawa2.sakura.ne.jp

そしてもう一つのロシア経済を決定する要因は、外交です。
ロシアが落ち着いた協調路線を取るならいざ知らず、いまのように世界を巻き込んだ戦争の危機の火種になってしまうと、当然危ないルーブルは投げ売られます。

「ロシアルーブル、対ドル9カ月ぶり安値 地政学不安で
ロシア中央銀行は外貨購入を一時停止すると発表した。ウクライナを巡る緊張が高まる中でルーブル相場が急落しており、売り圧力を緩和する狙いがある。
ロシア中銀は「金融市場のボラティリティーを抑制するため」、公開市場での外貨購入を停止するとの声明をウェブサイトに掲載。ロシアの財政規則の一環で、中銀は財務省に代わって外貨を購入する。この慣行は原油価格の変動が経済に及ぼす影響を抑えるのが目的で、原油価格が高い時には中銀はドルを購入し外貨準備に組み入れる
(日経2022年1月6日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB065CA0W2A100C2000000

これはロシア中央銀行が外貨購入停止、すなわちストップ安になったルーブルに為替介入したという意味です。

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ロシアルーブル為替レート(円/ルーブル,ルーブル/ドル)長期推移

ロシア中銀は、1ドル79ルーブルを超えて、さらに80ルーブルの大台に乗ると手がつけられなくなると見て、為替介入したわけです。
これはウクライナ周辺からロシア軍が引き上げない限り、続くはずです。

またロシアの株式市場も、当然のことながら悲観色一色です。
 ロシアRTS指数(RTS Index)は、東証指数のロシア版ですが、これもスゴイことになっています。

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コロナ前の1600から、コロナで半減し800になり、その後の原油暴騰で1900に上昇し、そして今はウクライナで1200です。
日本でいえば、今の3万円台の株価が1万円台になってしまったということです。
これはひとえにプーチンが自ら撒いた種ですから、誰も恨めません。

もちろん、実際に戦端を開いてしまえば、大規模な経済制裁が発動されますから、ロシアの主力輸出品である天然ガスやニッケルなどの非鉄金属の輸出が無事であるわけはありません。
経済は重大な窮地に陥り、更に中国との一体化を進めるでしょう。

昨日もコメント欄に書きましたが、ウクライナ進攻が始まるかどうかはわかりません。
ただしその蓋然性は高まる一方です。
こういう時期には、絶対起きないとしたり顔で説く者も出始めますが、そのような人にまどわされずに、事実を淡々と見ていきましょう。
ロシアは中国と同じく情報戦がお得意なお国柄ですからね。

 

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コメント

旧ソ連のイメージがあるので、ロシアは大国とのイメージがあったのですが、本日の記事で意外と国力が脆弱だと知りました。
よく映画などで、ロシアの労働者がトレーナーに詰め込まれて西欧に労働力として供給されるシーンにも納得です。
今外交に部隊を移して神経戦が展開されています。
ウクライナ、アメリカも一歩も引く気配もないし、プーチンも10万の軍隊を終結させた以上、引くに引けないと思います。
アメリカはドイツと協力して、ロシアの生命線である2つ目のパイプラインを開通させないとも発言しています。
バイデン大統領は2月にも、ロシアがウクライナに侵攻すると発言していますね。ウクライナ東部は親ロシア派が多いと言います。
ウクライナ東部に侵攻し、実効支配する。そこを緩衝地帯にする。
ウクライナのNATO加盟は阻止できなくても、プーチンの面子も立つ。
南沙諸島もそうですが今の国際社会は、とにかく実行支配したほうが勝ちです。

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