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2022年1月17日 (月)

「プーチンの戦争」を見誤ったバイデン

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ウクライナを巡って、ロシアは更にエスカレートしたことを言い始めています。

「モスクワ=小野田雄一】ウクライナ情勢をめぐり12日に開かれた北大西洋条約機構(NATO)とロシアの「NATOロシア理事会」で、ロシアは10日に協議した米国に続き、NATOに対しても東方不拡大の確約やウクライナへの支援停止を強硬に要求。軍事力を行使する可能性を示唆しつつ、要求を受け入れるよう圧力をかけた。
タス通信によると、露代表団を率いたグルシコ外務次官は同理事会後に記者会見し、ロシアはNATOに「国の安全を守るため、あらゆる軍事的・技術的措置を取りうると伝えた」と強調。「外交的手段がなくなれば、軍事的手段で脅威を排除する」とも警告した
ロシアは「軍事的・技術的措置」の内容について具体的な言及を避けている。
露専門家の間では、欧州向けミサイルの増強などを意味し、即座にウクライナ侵攻を意味するものではない-との見方が支配的だ。経済低迷が続くロシアに、侵攻時の軍事費増大や欧米による経済制裁に耐えられる余力はないとの観測も強い。
ただ、ロシアは「自国民保護」や「自衛権行使」などの名目でウクライナ侵攻を正当化する余地を残しており、あえて「措置」の内容を明確にせずにNATO側の疑念を拡大させ、交渉を有利に運ぶ思惑だ」
(産経 2022年1月13日)

通常、敵対する陣営に対して、その国を代表する外交トップが「「国の安全を守るため、あらゆる軍事的・技術的措置を取りうる。外交的手段がなくなれば、軍事的手段で脅威を排除する」と言ったら、これは最後通牒を意味します。

ロシア軍の臨戦体制の指標は三つあって、これらの徴候は見られていると、小泉悠氏は指摘しています。
ひとつは、戦略原潜に核ミサイルを搭載し、演習と言う名目で大規模な展開を開始することです。
ロシアはカムチャッッカの戦略原潜に水中発射核ミサイルの搭載が始まったことが観測されています。

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ロシア海軍戦略原潜部隊は常にアップグレードされている | ロシア海軍 .

「昨年末からカムチャッカでSSBNが頻繁にSLBM装填埠頭に入っており、これは来る戦略核部隊大演習の準備だと思う。とするとルィバチーの港からSSBNがいつ姿を消すかは結構重要であろう。
仮に、ロシアがウクライナ侵攻作戦と同時に西側牽制のための戦略核部隊大演習(多分グロム-2022)をやるなら、その兆候として一番把握しやすいのはルィバチーとガジェジヴォのSSBNの動きであろうと思われる」
(小泉悠ツイッター1月15日)
https://twitter.com/OKB1917/status/1482496459144859648

二つ目はシベリアの極東ロシア軍の西への移動です。
これも西側が観測しています。

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ウクライナ近郊のロシア軍の増強を追跡する  

「あとはロシア軍が侵攻作戦の所要兵力をどの程度と見積もっていて、それが揃うのにどのくらい掛かるかでしょう。どうやら西部から出せる部隊は出し終わったようなので、シベリア・極東方面からの部隊移動の動きが停まったら作戦準備完了というところだろう」(小泉前掲)

この鉄道による軍隊の移動は、大砲と戦車を重点配備してきたロシア軍の兵站にとって死活的に重要です。
これらは貧弱な道路インフラで移動できず、ほぼすべてが広軌式の鉄道で移送されます。

「この兵站線の特徴からロシア軍は、旧ソビエト連邦領域内で「積極的防衛作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。鉄道による兵站線が引けるかどうかのゲージの違いが、ポーランドとウクライナの安全保障上のリスクに違いを生んでいるといえます。
しかしロシアがウクライナを抑えればまた状況は変わります。キエフ経由の広軌が利用でき、ポーランドのリスクは格段に高まります。 国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができます」
(乗り物ニュース2021年12月18日)

ロシアとウクライナは共通の広軌レールですが、ポーランドは狭軌ですので、ここで積み替えねばならなくなります。
ですからポーランドにとって、ウククライナを制圧されれば、確実に次は自分の番なのです。

さて三つ目は、地上軍を支援する戦術航空部隊の移動です。

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ロシアが「数十」の近代化されたSu-34戦術爆撃機

「例年のロシア軍大演習の場合だと、航空機の戦略展開は大体1週間くらい。展開速度の遅いヘリから先に動かしてるのだとすると、週明けくらいには戦術航空機の前方展開も始まるのではないか」
(小泉前掲)

これらの軍事的徴候は、既にロシアがウクライナに侵攻する準備をほぼ完成し、最後通牒の手袋を投げた段階に達していることを示しています。
おそらくロシアはNATOと米国は口先ばかりで動けないと見ています。

ところで、プーチンが西側と協調の姿勢を放棄し始めたのが、2008年8月のグルジア紛争からでした。
それまでプーチンは、めちゃくちゃになったソ連崩壊後の経済を建て直し、G7にオブザーバーとして参加するまでになっていました。
この時起きたのがグルジア軍とロシア軍との衝突です。
当時、プーチンは北京五輪の開会式に出席して不在で、その隙に電撃作戦を展開されたのです。
プーチンは直ちに軍事介入を命じます。

ウラジミール・ウラジーミロビッチは『プーチン』の中でこう述べています。

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ソ連邦構成15ヶ国

「この戦争の意味はふたつある。ひとつは旧ソ連諸国への警告だ。
2000年代に入り、かつての旧ソ連諸国がNATO加盟に動き出した。
この年NATOはグルジアの将来的な加盟を認めた。これはあきらかなロシア包囲だ。
ロシアが将来の加盟国のグルジアを攻めてもNATOが動かないとすれば、NATOに加盟しても、アメリカは君らを守る気はないぞということを、旧ソ連諸国に明確に示すことができる」
(ウラジミール・ウラジーミロビッチ 『プーチン』)

このグルジア紛争で、プーチンは国境線を「勢力圏」として見るロシア独特の発想を西側に投げつけたわけです。
国境線は勢力圏の境を意味する、したがって戦争の結果しかそれを変えることはできない、というプーチン外交がこの時はっきりと姿を現します。
このプーチン、というよりロシアの国境概念は、国境線の力による変更を認めない近代国際法と真正面から衝突します。
この考えに同調するのは、世界で唯一中国だけです。

プーチンがグルジア紛争で注視したのは、欧米と国連の動きでした。

「つまりアメリカとNATO、国連がどの部分で協調し、あるいはしないのか」

なかでも米国の動きを見極めるのが、プーチンの目的でした。
当時の米国は、ブッシュ(息子)が任期末で既にレームダック化してしまった時期にあたっています。
米国の衰退のきっかけともいえるアフガンの長いトンネルに入ってしまった時期でした。
プーチンの、米国は張り子の虎にすぎないという読みは見事に当たります。

「諸君、これではっきりした。アリリカは核を持たない国には嬉々として『人道的介入』を行うが、核保有国であるロシアには口先ばかり非難するだけでなにも仕掛けて来ない。
アメリカにいつまでも冷戦の勝者などと勘違いさせてはならない。
我々は大国として復活したことを知らしめてやるのだ」
(『プーチン』前掲』

そしてここでプーチンはこう考えた、とウラジミーロビッチは述べます。

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コソボ独立から10年、拙速な承認は新たな火種をもたらした

「アメリカがテロとの戦争を宣言したとき、ロシアは既にイスラム過激派と戦っていた。
しかしアメリカは、チェチェン紛争をあくまでもロシアの国内問題だという見方を崩さず、時には非難さえする。
一方で自国がテロ攻撃されるや世界中を巻き込んで大騒ぎだ!
そもそも(グルジア紛争のきっかけとなった)南オセチアが急に独立したのは前年に独立宣言したコソボの影響がある。
しかしコソボ独立は、セルビアと国連を無視して欧米が独自に承認したもので、あきらかな国際法違反だ」
(『プーチン』前掲』)

 そしてグルジア紛争をきっかけに、プーチンは西側への失望と怒りを隠さないようになります。
ウラジミーロビッチは、プーチンにこう独白させます。

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プーチン会見で読み解くロシア  

「アフガン戦争の時も我々は最大限に妥協した。
それまで敵だった西側諸国とも交流を重ねた。
冷戦が終わったら、我々は兄弟同然に迎えられると思っていた。
だが彼らはロシアに歩みよろうとしない。
そればかりか、ロシア包囲網を狭めてきている。
ワルシャワ条約機構は既に消滅したのに、いったいアメリカはなんと戦うつもりだというのか。
彼らはいまだにロシアを脅威として見ているのだ。
いいだろう、そっちがその気なら期待に応えてやろうじゃないか」
(『プーチン』前掲)

そして、2014年2月のウクライナのキエフで起きた反政府デモをきっかけとした親露政権の崩壊、そしてウクライナのNATO加盟申請は、プーチンを一気に西側との戦争も辞さない姿勢へと突き進んでいきます。
グルジア紛争とまったく同型の戦争が始まったのです。
すなわち、これが「プーチンの戦争」です。

舞台がウクライナに替わっただけで、役者も同じなら、その対応も酷似しています。
当事者のNATOはエネルギー源の大部分をロシアに頼っており、焦点となっているノルドストリーム2に対して米国は、去年5月の時点で早々と制裁しないと公表してしまっています。
これではNATOは厳冬期を迎えて、ロシアに死活権を奪われているも同然となってしまいました。
ロシアはウクライナ防衛のためにNATO軍が動けば、直ちにパイプラインのバルブを締めてしまえばいいだけなのですから。
ヨーロッパ、特にNATO中軸のドイツのエネルギーは干上がり、厳冬期にブラックアウトを味わうことになるでしょう。

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バイデンはノルドストリーム2へ制裁発動できるか WEDGE

また米軍と核戦争までしてウクライナを守る気はありませんから、カムチャッカからロシアの戦略原潜部隊が出撃したと聞いただけで、バイデンは米軍の支援を諦めるはずです。

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バイデン氏、ノルドストリーム2への制裁は欧米関係に「逆効果

「[ワシントン 25日 ロイター] - バイデン米大統領は25日、ロシア産天然ガスをドイツへ直送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の事業会社に対する制裁を見送ったのは、同事業がほぼ完了しており、制裁を発動することで欧州との関係を損ねる可能性があったからだと述べた。
同事業について記者団に対し、立ち上げから反対してきたとした上で、今年1月の大統領就任までに「ほぼ完了」したため、制裁は見送ったと説明した。
なぜ事業が完了することを容認しているのかとの質問には「第一に、ほぼ完成しているからだ。今、先に進んで制裁を加えることは欧州との関係において逆効果になると考える」と述べた。
バイデン氏はロシアと中国に対抗する統一戦線を構築したい考えで、トランプ前政権下で悪化したドイツや他の欧州同盟国との関係の修復を目指している。
米国務省は先週、ノルドストリーム2の事業会社ノルドストリーム2AGと、同社の最高経営責任者(CEO)でプーチン大統領に近いマシアス・ヴァルニグ氏について、制裁対象となり得る活動に関与したとした上で、米国の国益を理由に制裁発動を見送った。
(ロイター2021年5月26日)

ロイターが伝えるところでは、バイデンの対露政策とは、対中統一戦線の構築、NATO諸国との協調の復活であったようです。
脱力します。
バイデンは「プーチンの戦争」の意図をまったく見抜いていません。
バイデンがウクライナ政府と「特別な関係」にあるなしといったレベルではなく、彼は完全に「プーチンの戦争」の意図を読み違えています。
プーチンは2008年8月、すなわちグルジア進攻以前のG8に加えて欲しい、ロシアはヨーロッパに復帰したのだというかつての協調路線を完全に放棄し、米国と対峙する唯一の超大国として蘇ろうとしているのです。
それを見誤って、ロシアに妥協することで中国と対峙しようとするとは、下策も極まれりです。
プーチンが習近平を「無二の親友」と呼んでいると言っているのに。

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BBC

「『過去6年間、我々は30回近く会談を行なってきた。ロシアは私がこれまでで最も多く訪れている国だ。プーチン大統領は私の親友であり同僚でもある』プーチン大統領は、『ロシアと中国の関係はかつてないほどの段階にまで達しているということをお知らせできて嬉しい。これは、国際的パートナーシップであり、戦略的な協力関係だ』と述べた」(BBC 2019年6月6日)
https://www.bbc.com/japanese/48538463

中露がなんのために「戦略的パートナーシップ」、すなわち準同盟関係を締結したのでしょうか。
はっきりしています、米国と対峙してならず者連合を作るためです。
この発言があったのが2019年。それを今頃になってロシアと対中統一戦線を組みたいですと、寝言もいい加減にしろとプーチンは思ったことでしょうね。

米国がヨーロッパとの同盟を再構築したいのなら、口先ではなく、まず米国自らが毅然とした態度でプーチンに臨むべきでした。
同じ過ちを犯したのがメルケルでした。
エネルギー源輸入の多角化を捨ててロシアとの直通パイプに固執したメルケルは、ノルドストリーム2の建設を政権目標に掲げてしまいロシアに宥和しました。
あまつさえ自分のエネルギー源をロシアに委ねてしまうという信じがたい愚かさです。

このまま推移すれば、高い確率で西側はウクライナに譲歩を要求することでしょう。
そして西側がウクライナで譲れば、次はリトアニアであり、更にポーランドの番です。
まさにプーチンの戦争は始まったばかりなのです。

 

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コメント

中露のような覇権主義をベースにした国家相手には西側諸国のような礼儀正しい外交など全く通用しませんね。
その意味では安倍元首相もロシアを西側諸国と同様のまともな国として対峙しようと試みたのは間違いだったといわざろうえません。
このような国を相手にする時には力でねじ伏せるか弱った時に徹底的に譲歩を引き出すかのいずれかしかないと思っています。

しかしロシアに対して最も脅威を感じているはずの欧州の、その盟主であるドイツがロシアにエネルギー供給を依存している意味がわかりません。
しかも情勢がきな臭くなっているにもかかわらず二本目を作ってさらに依存度を増しているのですから。

 露のラブロフ外相が訪日の意思表明をしていますね。「今後、二、三か月以内にに必ず実現する」と。
岸田政権の反応は見えづらく、対応に苦慮しているように思います。

日米首脳会談すら実現出来ないなか、武力でウクライナを脅す。あのような蛮行を冒す国の外交攻勢を受け入れるならどうなるか?
見え見えのクズっぷりを発揮しようとする意図であるにも関わらず、即座に却下しない岸田政権には不信感でいっぱいです。

対中弱腰外交があいまって、このような馬鹿げた提案も受け入れるだろうと軽く見られたに違いなく、つくづくなめられた岸田政権には失望しかないです。


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