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« ゼレンスキーがホワイトハウスに噛みついたわけ | トップページ | ロシア軍撤退のフェークニュース、世界を走る »

2022年2月16日 (水)

中国だけが勝ち逃げになるか

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メディアは、ベラルーシからの予定どおりの一部撤収を「ロシア軍撤退開始」と大騒ぎしているようです。
ほとんど誤報です。ロシアは、前から演習が終わったら引くと言っているでしょうに。
BBCが出しているロシア軍の配置図を見てください。
ロシア軍主力はドネツクとハリキウ正面、そしてクリミア黒海方面ですから、ベラルーシからの撤収は予定どおりなのです。

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BBC

協議は継続すると言いながら、こんなことを議会に通しています。

「【モスクワ=小野田雄一】ウクライナ情勢をめぐり、ロシア下院は15日、ウクライナ東部を実効支配する親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(いずれも自称)を国家承認するようプーチン大統領に求める議会決議案の採決を行い、賛成多数で可決した。タス通信が伝えた。露メディアによると、決議に法的拘束力はなく、可決がロシアによる親露派の即座の国家承認にはつながらない」
(産経2月15日)

ウクライナ2州の国家承認とはすなわち2州の分離切り離しであって、これは明らかなミンスク合意違反です。
これを現実にロシア政府が取った場合、落とし所とされていたミンスク合意すら認めないという意味になります。
だから慌てて、タス通信に否定的報じ方をさせています。

「ペスコフ露大統領報道官は15日、親露派支配地域の国家承認について「いかなる公式の決定もなく、議論も行われていない」と慎重な姿勢を示した。親露派支配地域の国家承認は、ウクライナ東部紛争の和平合意「ミンスク合意」と矛盾する。プーチン政権は親露派支配地域を国家承認することにより、ロシア側に有利な同合意を破棄する口実をウクライナ側に与える事態を警戒しているとみられる」
(産経前掲)

もちろんこんなロシア議会のゴタクは、提案者がロシア共産党ということでわかるようにプーチンに対する牽制です。
要は、プーチン、日和るんじゃねぇぞということにすぎません。
ただし協議が不調に終わったら本当にやるということを匂わせています。
まぁ、ホントにやったら最後ですが。

また、ロシアはウクライナに対してサイバー攻撃を仕掛けたようです。

「ウクライナ国防省は15日午後、国防省がサイバー攻撃=DDoS攻撃を受けていると発表した。
現在サイバー攻撃の影響を受けているのは国防省と国内最大手の銀行2行(PrivatとOshchadbank)でアクセス出来ない状況が続いており、ウクライナ当局によるとサイバー攻撃はロシアからのものらしい」
(航空万能論2月16日)

本気でロシアがサイバー攻撃を仕掛けた場合、国防関係の指揮命令系統はもちろん金融、交通まで含めて大混乱に陥ることでしょう。
米国もカウンターアタックをするので、ロシア側も無傷ではいられないはずです。

一方、ウクライナを遠く離れた極東でも、ロシア海軍が大規模な艦隊演習を行いました。

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「岸防衛大臣は、今月に入ってロシア海軍の艦艇24隻が日本周辺の海域で活動しているのを確認したと発表し、ウクライナでの動きと呼応する、異例の大規模演習だとして懸念を示しました。
「昨今のウクライナ周辺におけるロシアの動きと呼応する形で、ロシア軍が東西双方で同時に活動しうる能力を誇示」
岸大臣は、海上自衛隊が今月1日以降、日本海やオホーツク海の南部で活動するロシア海軍の艦艇24隻を確認したと明らかにしました。ロシア海軍の全ての艦艇による世界的な軍事演習の一環で、ロシア軍のウクライナ周辺での動きと呼応するものとして懸念を示しました」
(TBS2月15日)

24隻とはこりゃまた。極東ロシア艦隊全力動員じゃありませんか。
これは極東ロシア軍がウクライナに出払ってががら空きなので、つけ込むんじゃねぇぞとすごんでいるのです。
ロシア海軍は世界的に大規模な動きをしており、特に黒海での兵力集中を急いでいるようです。

ところで今のプーチンは、ラブロフ外相に言われもなくとも、進攻に踏み切った場合、悲惨な運命しか待っていないことを半ば理解していると思います。
ただし「半ば」であって、今のプーチンにまともな判断力があれば、そもそも今のような投機的なことはしていないわけですが。
小規模なベラルーシへの演習名義の派兵ならともかく、兵力の半分に当たる15万人も動員し、最高度に緊張を高めた後で外交的な解決に切り替えることは、自らを超大国だと自認しているプーチンにとって容易ではないはずです。
米国や欧州は、直接ウクライナを守れないだけに、全力で経済・金融制裁をかけるはずが、これを回避するために大軍を引いたとなればプーチン政権はもたないでしょう。
ま、こういうのを進むも地獄、引くも地獄と呼ぶのでしょうね。

進攻に踏み切った場合の制裁メニューは見えてきています。

「プライス報道官は定例記者会見で「ロシアが中国と緊密な関係を築くことで代償の影響を緩和できると考えていても、その通りにはならない。多くの意味でロシア経済は一段と脆弱になる」とし、「欧米から輸入する能力を否定すれば、生産力と革新的な可能性が著しく阻害される」と警告した」
(ロイター2022年2月4日)

注意していただきたいのは、ここで米国が、「ロシアが中国と緊密な関係を築くことで代償の影響を緩和できると考えていても、その通りにはならない」と言い始めたのはロシアに対して言っているのではなく、中国に向かって言っているのです。
中国への原油輸出を逃げ道と考えているなら無駄だ、中国へのパイプラインも締めるからな、というわけです。

侵攻した場合のロシアへの制裁は、ロシアを支援する国すべてに対して同様に発動されるはずです。
よく似た制裁としては、かつてのイラン制裁です。
ただし国連安保理決議が今回はないので(なにせ当事国が常任理事国ですから)、まったく同じにはならないかもしれません。
あくまでも参考ていどとして見ておきましょう。

※外国為替及び外国貿易法に基づくイランの拡散上機微な核活動等に関与する者の資産凍結及びイランからの武器の輸入の禁止等の措置について
平成19年5月18日  外務省 財務省 経済産業省
外務省: 外国為替及び外国貿易法に基づくイランの拡散上機微な核活動等に関与する者の資産凍結及びイランからの武器の輸入の禁止等の措置について (mofa.go.jp)
(1) イランの核活動等に関与する者に対する資産凍結等の追加措置
 1) 支払規制
2) 資本取引規制
(2) イランからの武器及びその関連物資の調達禁止措置

イランの輸出一切の取引禁止し、核開発に関与した者は資産凍結です。
つまりイランとの輸出入経済・金融制裁とは、、制裁対象国に対してではなく、その取引に関わった国に対してかかることにご注意下さい。
ですから、ロシアの輸出に加担した国はすべて米国の輸入規制、ないしは金融制裁、資産凍結等を受ける可能性があります。
具体的には、いまだノルドストリームを止めるとは言っていないドイツや、トルコストリームを持つトルコ、そして誰よりも大きなパイプラインをロシアと結んでいる中国は、ロシア同様の厳しい制裁に遭遇する可能性があります。

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中露パイプライン「シベリアの力」 天然ガスを輸送(写真:新華社/アフロ)

中国はあまり知られていないようですが、ノルドストリームに次ぐ規模のパイプライン「シベリアの力」をロシアと繋げています。

「このパイプラインは全長約3000km。東シベリアのチャヤンダ・ガス田から当初は年間50億立方メートル、全線が稼働する2025年には年間380億立方メートルの天然ガス(日本の年間消費量の3分の1)が中国へ供給される見込みである。当面は吉林省と遼寧省までの開通だが、最終的には北京や上海までパイプラインが整備されることになっており、これによりロシアはドイツに次ぐ第2位のガス輸出先を確保することになる。両国間の契約によれば、シベリアの力は今後30年間で合計4000億ドルの収入をロシアにもたらすことになっている」
(藤和彦経済産業研究所上席研究員  Business Journal)

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産経

つまりロシアが、今後起こり得る西側による強力なロシア制裁を、中国により補てんできると見ているなら大間違いだ、彼ら中国企業も制裁対象になるという警告のようです。

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五輪外交」に透ける中国の苦境 開会式出席の首脳は「内輪

「習近平とプーチンの実質的な会談はこの二年で初めてで、協力文書の中で最も重要なものは二つのエネルギー協力にかかわるものだ。一つは中国がロシアからカザフスタン経由で10年間に1億トンの原油を輸入するというもの。もう一つは中ロで天然ガスの長期的供給協力を結び、中国に毎年480億立方㍍の天然ガスを供給するというもの。この二つのエネルギー協力の総額は1175億ドルに登り、すべてユーロで決済される」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.529 2022年2月13日)

福島氏は、ウクライナ進攻で得をするのは中国だけだと見ています。

「もし、プーチンがウクライナ侵攻を行ったら、たぶん、一番得をするのは中国である、と私は思っています。
①ロシアがウクライナ侵攻→米国が制裁→中ロはすでにエネルギー協力調印しているので、中国はロシアを助け、ロシアを経済的に助け、ロシアに恩をうる。国境問題、中央アジア戦略、一帯一路戦略などロシアと利益背反する問題を棚上げ、あるいはロシアから妥協が引き出せる。

②ロシアがウクライナ侵攻→ロシアの軍事力は東部から西部に集中→中ロ国境の緊張緩和→米軍のウクライナ方面増派でアジアの軍事プレゼンス低下→中国のアジア戦略がやりやすくなる。チャンスがあれば台湾侵攻も?

③ロシアがウクライナ侵攻→ウクライナ分裂→ウクライナの不安定化で西側投資が引くが中国はウクライナ旧ソ時代からのの一番の投資者であり、中国の経済影響力はむしろ増える→中国のウクライナ支配が進む。これはロシアにとっても面白くない」
(福島前掲)

今回に関しては、私は福島氏と意見が少し異なります。
①の原油を買うことでロシアを助けて恩を売るというのはありそうですが、今回の西側の経済・金融制裁はこれも対象にするはずです。

②は、NATOが東方配置に重点を移すといっていますから、ロシア軍も西方重点配備となるでしょうが、沿海州でのロシアのプレゼンスが低下することは、そちらに取られていた自由主義陣営のシフトが楽になるということです。
そのぶん自衛隊は、西南シフトがしやすくなるわけですから、果たして、中国の台湾進攻に取って吉とでるかどうか。

③はありえます。ウクライナに中国が経済的肩入れをして一帯一路の要衝に思い描いていたのは確かですが、ロシアに露骨に支援してしまった今、ゼレンスキー政権が同じように中国にいい顔をするかどうかは不明です。

私は、中露が微妙な亀裂を起こし始めていると感じています。
先日の会談の共同声明で、米国の一国主義が国際秩序を主導することに反対し、ウクライナと台湾問題を相互支持し、ともにNATOの拡張に反対し、一中原則を堅持し台湾独立に反対すると声明を上げました。
中露が総論賛成したというだけのことで、こんなことはあえて首脳会談しなくてもわかりきったことで、なにを今さらです。
むしろ「言っていないこと」のほうが重要です。

この中露首脳会談で「言っていないこと」とは、具体的な軍事協力の緊密化の取り決めです。
この中露会談で言っている、お前のウクライナ政策には賛成するから、オレの台湾政策にも賛成しろでは、ただの相互利用の確認にすぎません。
もし本気で反米同盟を組む気なら、ロシアが中国の介入を拒んでいるカザフスタンや、インド、ベトナムとの軍事協力関係についてもっと突っ込んだ合意をするべきなのです。

特に今のプーチンの置かれた状況は、単にウクライナ進攻をした場合、外交的に世界を敵に回すだけではなく、たった一本の命綱である油の売り先がなくなることです。
プーチンが欲しいのは中国の声援ではなく、米国の制裁にあっても油を買い続けるという保証だったはずです。
たしかに習-プーチン会談の協力文書には、中国がロシアからカザフスタン経由で10年間に1億トンの原油を輸入し、中露で天然ガスの長期的供給協力を結んで、中国に毎年480億立方㍍の天然ガスを供給するというエネルギー協力が含まれています
なにやら総額は1175億ドルに登ると風呂敷は大きいのですが、すべてユーロで決済されるとか。

では、今回米国とEUがドル決済とユーロ決済を規制してしまったらどうするのでしょうか。
ドル決済からの追放は決定済みですし、ユーロもほぼ確実に追随するでしょう。
すると中露は決済不能になりますから、総額1000億ドルだだなんて吹いても、絵に描いた餅にすぎません。
あとはかつての社会主義圏とやっていたバーター取引(物物交換)しか残りません。

中国は得るものが少ないわりに、失うものが多すぎるのです。
プーチンさん、悪いことは言いません。侵攻など絶対にお止めなさい。

蛇足 忘れるところでした。
ウチの首相がゼレンスキーと電話会談して、1億ドル借款の用意があるといったそうです。パチパチ。

※改題しました。いつもすいません。

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コメント

 私にも、中国はこの問題に巻き込まれるのを恐れて、ロシアとの距離を取り始めているように感じます。
中国にとって、インドと基地相互利用こそ見送ったものの、共同武器生産、ロシア製地対空ミサイルシステムのインドへの売却を決めたロシアに終着駅までお付き合いする義理など、さらさら感じていない。西側経済体制利用への未練もタラタラなのですし。かと言って、今の習の中国では仲裁の資格も覚束ない。

プーチンは「米国がロシアと中国、この二国を同時に敵するのは嫌がるはず」という誤った見立てから、妥協を狙って行動に移したと思います。
しかし、中・露のパートナーシップなど、西側の欧米的価値観に比べればお話にならないくらい弱い。次の大統領までがどうか分かりませんが、ゼレンスキー時代では中国との関係を維持する目的でロシアとの妥協をする事はあり得ません。

報道のせいで、ロシア社会の政治環境は我々には分かりづらいものです。
しかし、「ソ連崩壊によって欧米的民主主義体制の流れに行くはずが、プーチンがその可能性摘み取った」と考える勢力が多くあるのも事実です。
また、全ロシア将校協会はプーチンのウクライナ武力侵攻に明確に反対する声明を発したそうです。
逆に、だからこそ強権政治屋のプーチンが戦争を求めている可能性がぬぐいきれません。


バイデンが欧州へのエネルギー支援に同盟国でもない中国にも打診をしてた意図が全く見えませんでしたが、ウクライナ問題を通じての踏み絵ととらえればわからない話でもなくなります。
支援する量やその直接的な効果なんてどうでもよく
「おまえはどっちにつくのかハッキリさせてもらおうか」
というメッセージなわけです。

台湾情勢も気になりますが、なんの下準備もなく力押しで侵攻するようなバカなマネはさすがにあの中国でもしないと思います。
いくら台湾の防衛力が低いとしてもタダではすみません。
もし内戦化しインフラが破壊されて台湾の半導体供給が途絶えるような事があれば全世界を敵に回します。
少なくとも蔡政権が安定している間は軽い緊張状態を維持するのが得策でしょう。
(個人的にはこれも愚策の類いに入ると思っていますが…)
前にも書きましたが中国としてはここではロシアを見限って西側にイイ子ちゃんを演じていた方が遥かにメリットが大きいんですよね。
そしてバイデンはその呼び水を中国に投げ掛けました。
キンペーはこれをどう扱うのでしょうね。

プーチンは良くも悪くも旧ソ連を引きずった政治家です。
旧ソ連時代に生きた政治家なので、旧ソ連時代の戦略で対応する。他の手法を知らないのです。それがロシア離れを招いていることも事実です。
旧ソ連と今のロシアは国力が違う。
それは仕方の無いことで、ロシアが生まれ変わるには政権交代しかないのです。その端緒が今回のウクライナ問題なのか。プーチンの宮殿疑惑なのかそれはわかりません。
話は全く変わります変わります。
足利幕府末期に、信長が足利義昭に「お前はバカか」と言い放ちました。
プーチンに「お前はバカか」と西側諸国がメッセージを出しているのです。
でも、プーチンとて旧ソ連の政治家です。さてどうなることやら。

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