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2022年2月 4日 (金)

トルコのエルドアン、仲介に乗り出す

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今日は北方領土反省会の2回目だったのですか、膠着した状況が少しずつ動き始めましたので明日に回します。
まずは、バイデンがポーランドとルーマニアに部隊を派遣するようです。

「緊迫するウクライナ情勢を巡り、米国のバイデン大統領は2日、米軍の欧州への増派を正式に決定した。国防総省は同日、米本土から部隊約2000人をポーランドとドイツに派遣するとともに、ドイツに配置されている米軍部隊のうち約1000人をルーマニアに展開させると明らかにした。派遣は数日中に行われる」
(読売2022年2月2日)

ドイツ駐留軍から東欧に派遣される1000人、本土から急派される2000人、そして出動準備に入っているのが8500人、締めて堂々の計1万1500人.約1個師団相当の兵力ですから、やっと米国の格好がついてきました。
もっと早くやっていればとも思いますが、米国の岸田であるバイデンのグズグズが、結果として緊張の頂点での大規模派兵という緊急冷却水の効果を生みそうな気がします。

さぁ、これでプーチンは下手を打つと、米国との限定戦争を覚悟せねばならなくなりました。
プーチンの思惑は次々にはずれています。

今回のプーチンの直接の目標は、東部ウクライナのハリコフではないかと目されています。
ハリコフは東ウクライナの工業地帯の中心であり、独立派がキエフを掌握したとき、ヤヌコビッチが国内亡命したのがこのハリコフでした。

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www.nikkei.com

プーチンは2014年のクリミア進攻を成功モデルと考えているはずですから、似たパターンで東部ウクライナを掌中に収めるつもりのはずです。
クリミアはソ連時代からの造船と軍需工業が盛んな地域でしたが、ハリコフはIT産業の中心地です。
クリミア進攻に際して、徹底したサイバー攻撃をかけられ情報をかく乱された西側とウクライナは状況をつかめないままに、一方的な住民投票でロシアへ編入されました。
これが世界初めて実戦で使われたハイブリッド戦争となりました。
いかにもKGBマフィアのボスが考えそうな戦略です。

プーチンはそれで止まるどころか、続いて石炭など鉱工業地帯のドンバス地域に、親露分離独立一派を使って自称共和国を作らせました。
そして今回はハリコフです。
このまま推移すれば、ウクライナのロシア語圏はすべて親露派の手に渡り、ウクライナは半分切り取られることになります。
下図でエンジ色のドネツク州とクリミア州がロシア語が非常に優位で、赤色が優位、そしてオレンジになるに従ってウクライナ語が優位になります。

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ウクライナ語とロシア語、全然違う問題について語りたい

今回もでてきた調停案の一つに、ウクライナの言語による連邦案がありましたが、これを認めてしまうとウクライナはエンジと赤の地域すべてを割譲することになります。

プーチンは、サイバー戦と泥臭い内戦を組み合わせた侵略を準備しています。
そのためにクリミアで成功したハイブリッド戦争をまた使おうとしています。
プーチンは軍事進攻はデマだと言いながら(どの口でいう)、12万とも言われる大軍で3方面からウクライナを包囲して危機を最大限煽りながら、ウクライナと西側陣営を不安定化させました。

またプーチンはマクロ的には、ヨーロッパに杭を打ち込み、西陣営をバラバラに分裂させることを狙っていました。
まずドイツは初めから腰が引けており、フランスもやる気なしで仲介案でお茶をにごそうとし、フィンランドやスウエーデンといったNATO非加盟国はロシアにすり寄り、ファイティグポーズを取ってくるのはしょせんポーランドと米英のみ。
そう思って始めたところ、NATOはドイツの馬鹿提督のおかげもあって意外に団結してしまい、北欧勢はむしろ早急の加盟が必要だと判断し、「親友」の中国からさえ北京五輪期間中に絶対に戦争なんかしないでくれと泣きつかれ、という誤算続きだったようです。(苦笑)

かくして、困ったプーチンはトルコに仲介を求めたようです。
さぁここで出てくるのが、トルコ大統領のタイップ・ エルドアンです。

「北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコは、ロシアとウクライナ双方と良好な関係を築いているが、シリアとリビアにおけるロシアの政策、2014年のロシアによるクリミア併合には反対している。
エルドアン大統領は20日、2月にウクライナを訪問する考えを示し、「この地域で戦争が起きるという考えは、両国に関係を持つ国としてトルコへの動揺につながる。われわれの願いは、プーチン大統領とゼレンスキー大統領をできるだけ早く引き合わせることだ」と述べた」
(ロイター1月21日)
「 トルコ政府高官は31日、エルドアン大統領が2月3日、ウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談すると明かした。ロシアによる軍事侵攻の懸念が高まるウクライナ情勢をめぐり、緊張緩和を図る。
トルコは、ウクライナ、ロシア両国と良好な関係にある。高官は、エルドアン氏が「地域の平和維持と緊張、対立激化の防止についてメッセージを伝達する」と説明した」
(ロイター1月31日)

いつ出るかと思っていましたが、やっぱり出ましたか、トルコの怪物。
きわどい時にきわどい奴がでてきたもんです。
エルドアンときたひにゃ、カウンタークーデターでトルコを独裁国家に堕とし、西側でありながらEUに入れてもらえぬ恨みからか、こともあろうに敵陣営の盟主であるプーチンに接近したといういわくつきの人物です。
しかもウクライナのゼレンスキーとも関係が深く、両陣営に足を突っ込んでいるということでは、この男以外に適任はいません。

ただしエルドアンの信用度は極めて低いと評価されています。
NATOに属しながら西側を裏切り、当てつけのようにロシアから最新の対空ミサイルシステムS400を導入するような人物です。
その一方、米国からはF-35を導入したいとしていましたから、あんたロシアの防空システムの前に最新スティルス戦闘機をさらしてみるんですか、ということになります。

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日経  ロシア製対空ミサイルシステムS400

米国は直ちにF-35の引き渡しを中止し、制裁を課したのはいうまでもありません。

「米国のポンペオ国務長官は14日、ロシア製ミサイルの導入を巡り、対ロシア制裁法に基づく対トルコ制裁の発動を発表した。米国や第三国の企業と金融機関がトルコ大統領府傘下の国防産業庁と取引するのを制限する。北大西洋条約機構(NATO)同盟国に対しては異例の厳しい対応で、両国関係に緊張をもたらす可能性がある。
トルコは2019年7月、ロシアから地対空ミサイル「S400」の搬入を開始した。米国はNATOの防衛機密が流出する恐れがあるなどとして反発していた。ポンペオ氏は声明で「ロシアとの防衛・情報分野での取引は容認しない」として、トルコに対して問題の即時解決を求めた」
(日経2020年12月15日)

おそらく米国はこれっぽっちもエルドアンを信用していないはずですが、エルドアンは今回の主要登場国すべてと関わっていますから、バイデンも仲介に乗る可能性が高いかもしれません。

一方、プーチンは、1月2日にエルドアンに電話して、ウクライナの将来的なNATO加盟を認めないよう釘を刺しています。
去年9月、エルドアンはプーチンとの会談で武器供与を要請していました。
武器システムは、供与国との距離をそのまま表しています。
武器体系は膨大なソフトを伴いますから、最新兵器導入に伴って多くのロシア人技術者や軍人が流入し、やがて部品供給やバージョンアップなどでロシアに強く依存するようになります。

「 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は29日、ロシア南部の保養地ソチで会談を開き、シリア北西部の内戦激化への対応や、ロシアによるトルコ向けの軍事防衛システム追加売却の可能性について協議した」
(ロイター2021年9月30日)

実はトルコとロシア関係は二転三転しています。
従来はソ連の柔らかい下腹部である黒海の出入り口であるボスポラス海峡を擁した、反ロシア国の筆頭でした。
だから、イスラム国家にもかかわらずNATOにも加盟できたのですが、変化を見せたのはシリア内戦への介入がきっかけでした。
2016年、シリア内戦が停戦しましたが、その仲介者はロシアとトルコでした。
ざっくりいえば、アサド政権についたのはロシアとイラン、反政府側についたのが米国でしたが、この仲介によって反政府側の敗北が決定づけられました。

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露「シリア仲介役」狙う トルコと首脳会談へ | 毎日新聞

当初は米国サイドに立っていたはずのトルコが変身したのは、シリア内戦にクルド勢力が加わったからです。
トルコは国内にクルド人武装組織PKK(クルディスタン労働党)が存在し、政府軍と内戦を戦っていますから、仮に反政府側が勝利すれば必ずやトルコの情勢に跳ね返ると、エルドアンは考えたようです。
そう考えると変わり身が早いのが独裁者ですから、エルドアンはロシアのクルド勢力への援助打ち切りと引き換えに、シリア内戦の仲介を買って出たわけです。

以後、独裁者同士で相性がいいのか、プーチンとは極めて親密な仲なくせに、米国大統領とは犬猿の仲、という珍しい西側同盟国になったようです。
経済的にも緊密な関係で、2018年にはロシアと天然ガスパイプライン「トルコストリーム」 が開通しています。
これはロシアからトルコを経て、黒海を通過し南欧に伸びるものです。

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ロシアとトルコなぜ蜜月 「一触即発」からわずか3年:朝日

「トルコストリームによるロシアのガスの供給は、トルコと黒海地域の経済にとって重要であることは間違いないが、それに加え、多くの南欧諸国の発展にプラスの影響を与え、ヨーロッパのエネルギー安全保障そのものの改善にも資するだろう」とイスタンブールで行われた開業式でロシアのウラジーミル・プーチン大統領は語った。専門家らもこの見方に同調しているようだ」
(ロシアビヨンド 2020年1月16日)

プーチンがトルコストリームは、ロシアにとって「安全保障の改善になる」と言っていますから、北のノルドストリームがドイツの喉頸を締め上げることに成功したように、トルコストリームでトルコ、ギリシア、ブルガリア、そしてやがては延長してイタリアの死命を握りたいのでしょう。

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ロシアとトルコなぜ蜜月 「一触即発」からわずか3年:朝日新聞

「天然ガスパイプライン「トルコストリーム」の海底工事完成式典が11月19日、イスタンブールで行われた。壇上でトルコのエルドアン、ロシアのプーチン両大統領が声をかけると、中継で結んだ黒海上の大型作業船から、パイプラインの最後の連結部分が海底へ下ろされた。
 パイプラインはロシアからトルコへ、黒海の海底930キロを走る。エルドアン氏は「トルコは他国から圧力を受けてロシアとの関係を判断しない」と、対ロ協力に批判的な欧州連合(EU)や米国を牽制(けんせい)した。「天然ガスをどうまかなうか各国の決定は尊重されねばならない」
(朝日 )

今回も、すぐにプーチンから電話が来たようで、当然エルドアンはお任せあれと答えたことでしょう。

「一方、露大統領府によると、プーチン氏は2日、NATO加盟国トルコのタイップ・エルドアン大統領と電話で会談した。プーチン氏はウクライナの将来的なNATO加盟を認めないよう働きかけたとみられる」
(読売2022年1月4日)

では、ロシア大好き、米国大嫌いですからウクライナとは疎遠かと思えばそういうわけでもなさそうです。 

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ウクライナとトルコが急接近 「ロシアへの圧力」で一致

2021年4月には、ウクライナ大統領のゼレンスキー、経済や軍事の面で関係を強化のためにトルコを訪れ、エルドアンに歓待されています。

「ウクライナ、トルコの両首脳は▽クリミアの占領状態の解除▽ウクライナ東部の主権回復▽両国海軍の関係発展―などに向けて協力することで合意。クリミア併合に反対し、故郷を追われたイスラム系民族「クリミア・タタール」の支援も掲げた」
(東京 2020年11月18日)

今回のロシア進攻に対しても、エルドアンはすでに2021年11月の段階で、緊張の緩和に向けて「再起の平和のための支援」を行う考えを表明しており、相次いでロシアとウクライナ双方から仲介の依頼を受け、鼻高々でありましょう。

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具体的には、今後イスタンブールで、ロシアやウクライナ、欧米やロシアなどで構成されるOSCE(欧州安保協力機構)が開かれ、自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」らの代表者が参加する会議が行われると思われます。

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この場合の落とし所としては、2015年2月11日にベラルーシのミンスクで調印された「ミンスク合意」の二番煎じが結ばれる可能性が高いでしょう。
結果ですか、たぶんエルドアン仲介をとった場合、前回と同じことの繰り返しとなるでしょうね。
一時は落ち着いて平和が訪れます。
しかしそれはビアスの『悪魔の辞典』風にいえば、「平和とは二つの戦争の時期の間に介在する、だまし合いの期間」 にすぎません。
プーチンはハイブリッド戦争を継続し続け、ウクライナ東部の親露グループはミンスク合意破りの常習犯でしたから、再び紛争が再燃します。
しかし、「戦いたくない・戦えないNATO」は紛争国は加盟できない、という言いわけを半永久的に繰りかえす口実を得ることができるわけです。

 

 

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コメント

こう云うロシアとの間で、奪われた北方領土の返還交渉をしようと考える日本政府は、二つ星レストランのシェフ相手にロシア料理対決をする献立研究家ですね。
しかし、16世紀から19世紀にかけて露土戦争を戦った幾つかの原因を想起すると、
エルドアンがプーチンに「クリミアを返せ、内海である黒海を返せ」と言わない事に、
その国のリーダーの力量と国際関係、隣国関係の奥深さを感じます。

本日は、政治の実相をみせて頂きました。有難うございます。

ここに貿易相手国中国というプレイヤーも加えると更に混沌とします。
中国は五輪とは別の理由、食糧や武器調達という点でもウクライナの不安定化を望まない、という意見があります。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/01/00f7473d92126f11.html
https://www.jiji.com/sp/v8?id=202201kaisetsuiin012
南部が主要穀倉地帯ですので、そこをロシアに持っていかれ一帯一路にも影響大なこの紛争には、五輪中で最前には決して出ませんが中国も担当官が相当動いているのでは。

ウクライナゲート等米国との関わり、ロシアとの紛争を抱え、一帯一路には手を挙げ、ヨーロッパの東端としてEU入りを望む。生き残る為にものすごいバイタリティか必要なのかと思いました。
先週プライムニュースで反町理氏が「もう一つの国じゃなくなって半分EU残りロシアに行くのがスッキリするんじゃないですか」と発言していました。
それじゃ駄目というかそれやってもスッキリなんてしない、そもそもウクライナ自身がスッキリなんて望んでいない事を理解できない日本人的な感性です。

アメリカが日韓に「ロシアが天然ガスを止めた時に、代わりの天然ガスを融通してもらえそう?」みたいな打診をしている、とニュースで見ましたが…

岸田政権が「もちろん!だからロシアなんかに屈しないで!」と返すはずは無いし、そもそも私含めて多くの日本人には「ロシアに負けないために、ヨーロッパに天然ガスを届けましょう!私達は、この冬は暖房を控えて乗り切りましょう!」なんて考えるのは絶対に無理です…

そんなに切羽詰まってるんかな、ていうかそこんとこのケアしてないで喧嘩の姿勢見せてたんかい、と思うし、これじゃ普通にヨーロッパ陣営もあっさり屈してしまうんじゃないかと恐ろしくてたまらないです。

本日のニュースで、日本が輸入している天然ガスの一部をヨーロッパに融通できないかと、アメリカから提案があったようです。その意図がよく理解できません。日本が融通したところでロシアがパイプラインのバルブを閉めれば焼け石に水です。
最近のアメリカの動きは、空母打撃軍のNATO指揮下に配備。3000名の東欧への派兵。NATO諸国もロシアから距離に近いポーランド、ルーマニアなどと距離が遠い、ドイツ、フランスなども危機感に温度差がある。
今回のアメリカの動きは、煮え切らないNATO諸国に対し、アメリカがびんたの一発でも張ったのでしょうか。それがエルドアンに対する回答でもあるのでしょうか。プーチンとてアフガン侵攻のような惨めな思いはしたくないと思います。
第2次世界大戦も、アメリカの介入で一気に形成が逆転しました。
日本にもNATOにも言えますが、いつまでもアメリカ頼みでは、アメリカとて俺世界の警察やめるわ。となるでしょう。


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