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2022年2月10日 (木)

プーチンは、マクロンを待っていた

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どうやら露仏合意とは、なんのことはない「ミンスク合意」の線のようです。脱力しました。

「マクロン氏はこうしたロシアの意向をゼレンスキー氏との会談で伝達。会談後の記者会見で、紛争が続くウクライナ東部の和平協議で、2015年にいったん停戦が結ばれた「ミンスク合意」への支持をロシアとウクライナの両国から取り付けたと述べた。10日に仏独とロシア、ウクライナの4カ国の高官級協議をベルリンで開催し、合意の順守と、欧州の安全保障に関する新たな協議を実施するという」
(毎日2月8日)

ミンスク合意の三番煎じなら、プーチンが飲むはずです。
ミンスク合意とは、東ウクライナ2州の分割を固定化してしまい、ウクライナをロシアの意のままに従えるためのものですからね。
小泉悠氏はこう述べています。

「ミンスク合意は、2014年9月に結ばれた第一次ミンスク合意とその追加議定書、そして2015年2月の第二次ミンスク合意から成る。
このうち、第一次ミンスク合意ではドンバスの紛争地域(「ドネツク人民共和国」及び「ルガンスク人民共和国」を自称する武装勢力によって実効支配されている)に対して一時的に「特別の地位」を与えることが求められているが、第二次ミンスク合意では、これを改正憲法と恒久法に基づいたより固定的な地位とすることが定められた。
このようにしてウクライナの分裂状態を固定化することにより、同国がロシアに対して逆らえない状態を作り出すことがその目的であったとされている。
それだけにウクライナ側は第二次ミンスク合意の完全履行に二の足を踏み続けてきたが、7月のプーチン論文は、もはやロシアは時間的猶予を与えるつもりはないことを宣言する「最後通牒」であったと言えよう」
( 小泉悠『米露首脳会談でも止まらない ロシアによるウクライナ侵攻の危機』)
https://news.yahoo.co.jp/byline/koizumiyu/20211210-00272010 )

エルドアンが仲介した場合も、同じようなものになったはずです。
交渉の舞台がパリに替わるだけのことで、ロシアやウクライナ、欧米やロシアなどで構成されるOSCE(欧州安保協力機構)が開かれ、それに自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」らが加わった「平和会議」が行われると思われます。

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こんな「合意」をいくら作っても、双方守る気がないためにしばらくたつとまた元の木阿弥になるのは目に見えています。
前回のミンスク合意は、2州の親露派武装勢力が協定を破ったために自然消滅しました。

ウクライナ大統領が、「私は言葉は信じない」といっているのはその苦い経験があるからです。
たぶんOSCE監視団が入るだけのことで、本来ロシアが出すべき担保がありません。
たとえばウクライナ国境から100㎞以内の地域と空域にロシア軍を接近させないといった緩衝地帯保証がないと、ウクライナは落ち着かないでしょう。
あるいは米軍部隊のウクライナ駐屯ですが、こちらはバイデンがするはずがありません。

ところで、マクロンはベラルーシからの撤収を「聞いた」としています。

「8日、ロシアのペスコフ報道官は「そもそも、演習後もベラルーシにとどまるとは、誰も言ってない」と話し、7日に行われたフランスとロシアの首脳会談後、フランス大統領府も、演習後にロシアの部隊が撤退することを確認したと明らかにしました。
さらに、ロイター通信は、匿名を条件にしたフランスの政府当局者の話として、プーチン大統領がウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないことに同意したと報じています。
ただ、ロシア側の確認は取れていないということです」
(テレ朝2月9日)

これも言質がありませんが、これが真実ならば、ロシア軍は首都キエフを北から狙わないという妥協案を出したことになります。

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日経

ロシアはその国力から見て、貧弱な補給能力しかもたないという指摘を先日紹介したことがありました。
彼らのロジスティック能力からすれば、せいぜい100マイル(約160㎞)ていどしか補給線が伸びないのです。
静岡県立大学准教授・西恭之氏は、ロシア軍の兵站能力についてこう述べています。

「ロシアは十数万人の兵力、兵器、物資をウクライナ国境付近へ鉄道で展開し、極東からも輸送を続けている。しかし、プーチン大統領がウクライナ侵攻を命令した場合、線路の末端から前線への物資の輸送も、前線で故障した兵器の鉄道線路への輸送も、トラックが担うことになる。
ロシア陸軍のトラックが国内の物資集積地と往復して支援できる攻勢作戦は、ウクライナ南東部の現在の前線にいるウクライナ軍を包囲殲滅するといった、国境から100キロほどの作戦に限られる。
それより遠いキエフなどへ機械化部隊を進めるには、第一段作戦の後、占領地の線路を修理して物資集積地を前進させる必要がある」
『NEWSを疑え!』第1020号(2022年1月17日特別号)

つまり元々ロシア軍の能力からすれば、東部国境から100~160㎞程度の範囲に限定された軍事行動しかできないということになります。
とすると、3方向から包囲するというシナリオは実は過大評価で、実際はドニエプル河以西が進攻限界だったのかもしれません。
ベラルーシに置いたロシア軍は初めから張り子で、演習が終了すれば撤収予定だとしてもおかしくはないわけです。
だから簡単に撤収させて、いかにも妥協しましたという顔ができるのです。

すると、あんがい私たちはプーチンの仕掛けた罠にはまってしまったのかもしれません。
そもそもプーチンにとって、ウクライナ進攻は最悪の選択で、それ以前に調停者がでることを予想し、力一杯ハンマーを振り上げて見せたのでしょう。
ウクライナに西から進攻すればドニエプル河で阻止され、北からキエフを狙えば首都占領はかなうでしょうが、ウクライナ政府は西へ逃げて、縦深が西へ拡がっているウクライナの深い懐に引き込まれます。

それがなにを意味するのでしょうか。
ウクライナ・ナショナリズムの本拠地である西部に引き込まれれて、周囲の住民すべてが敵である第2のチェチェンが再現されるということになるはずです。
ロシアへの怒りと敵意に満ちた他国領土に深入りすれば、ただでさえ薄い兵站線はウクライナ軍のゲリラ活動で寸断され、たちまち孤軍と化していきます。
しかもチェチェンとは違って、国際社会が注視しています。

ウクライナ・ナショナリズムの本拠地である西部に引き込まれれば、まさに第2のチェチェンが再現されます。

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チェチェン紛争 出典不明

また南から強襲揚陸艦で海軍歩兵がオデッサに進攻しても、彼らの力は数個連隊ていどですから長期の占領は不可能です。
ここでも出てくるのが兵站の維持です。
黒海を使っての補給には限界がある上に、黒海は公海ですから西側艦船の妨害が頻発するでしょう。

したがってロシアの本筋はあくまでも地続きの西からの進攻で、それも100マイルていどの限定進攻を本筋としていたと考えられます。

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CNN

とすると、プーチンは力一杯こぶしを上げるパーフォーマンスしつつ、マクロンのような賢しげな調停者がでてくるのを待っていたことになります。
米国筋は、傍受したロシア情報機関の通信記録から、ロシア内部でも、ウクライナ進攻はコストと流血からして合わない算盤だという声が上がっていることを伝えています。

「それでもロシアの国防担当者は、事態がより困難なものになると認識しているようだ。ある欧州の高官は「我々の評価したところ、明らかに(ロシアの)国防要員の中には、実際の作戦がどのようなものなのかあまり理解していない人々がいる」と述べた。そのうえで、当該の要員らは「こうした作戦の成立が極めて困難」だと考えているようだと付け加えた。
諜報活動に詳しい別の情報筋は、ロシアが過去2カ月間にわたり作戦を進展、拡大する中で、同国の高官からも懸念の声が上がっていることを示唆した」
(CNN2022年2月 8日)

ありえる話でしょうね。
ロシアにとっても、ウクライナに進攻するのはまったく合わない冒険なのです。
ロシアには首都キエフを落とし、ウクライナ全土に進攻する力はなく、東部地域に限定された軍事行動が精一杯だったのです。

つまりプーチンは、マクロンを待っていたのです。

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コメント

NATOだけでなく、実はロシアも大規模な作戦を行なう力が無い。
脅かして脅かして少しずつ侵略する形なんですね。

ロシア東部の親ロシア地域の割譲。そのあたりでマクロンあたりが仲介しているのでしょうが、西側諸国は力による現状変更は認めないとしています。
クリミア半島に続く西側諸国の敗北だからです。アメリカ、ウクライナの思惑もあります。どのような決着になるのか。
もう時間はないですね。

 今日の記事とは関係ないのですが、失礼します。

 私は、馬淵睦夫氏のことは、本ブログにより知ることになりました。その後、u-tubeでは時々見るだけの視聴者である時代が長かったのですが、この度、「ひとりがたり馬淵睦夫#59」をたまたま見たことにより、ぜひとも皆様にもご紹介したいと思った次第です。
 
 馬淵氏はほんとの愛国者であることは間違いありません。そして道徳家でもあり、国際情勢の鋭い分析家であります。

 さりに少し付け加えますと、彼はトランプ主義者であり、プーチン主義者であり、マスコミなどでは伝えられない世界情勢の奥にある時流を読み込むことができる方だと思います。

 ありんくりん さんとは異なる方を推奨するのは少し気も引けましたが、このブログの皆様の高い知性への敬意を持ちながら、あえて馬淵睦夫氏のことを紹介いたしました。ご参考にしてください。

ueyonabaruさん。だれがこう言った、この人がこう言った、私とまるで違うことを言っている、この人を紹介したい、などとということよりも、どうぞご自分の意見を開陳下さい。
ちなみに、失礼ながら馬淵氏は私がもっとも信用していない論者です。
馬淵さんとはキューバ大使だった頃面識がありますが、元ウクライナ大使という肩書で発言されるのはお止めになったほうがいい。

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