ウクライナ支援は、NATO加盟しなくてもできる
毎日、ウクライナ情勢の新情報が出てきています。
マクロンがプーチンと話した内容が、一部漏れてきました。
これはマクロンとゼレンスキーの会談に同席した、ウクライナ外相クレバの発言です。
「[キエフ 9日 ロイター] - ウクライナのクレバ外相は9日、フランスのマクロン大統領はウクライナが希望する北大西洋条約機構(NATO)加盟を否定しなかったと述べた。
マクロン大統領は7日にモスクワを訪問し、ロシアのプーチン大統領と会談。8日にはウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。プーチン大統領はウクライナのNATO加盟を阻止するよう要求しており、ウクライナは妥協を強いられることを懸念している。
こうした中、クレバ外相はウクライナはロシアとの緊張緩和に向けたいかなる最後通告も受け入れないと強調した上で、マクロン大統領からウクライナのNATO加盟を否定する話題は提供されなかったと指摘。前日の会談では具体的な提案に関する議論はなく、考え方に関する議論が展開されたとした」
(ロイター2月10日)
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-kuleba-idJPKBN2KE2I2
うーん、微妙な表現。
「ロシアからのいかなる最後通告も受け入れないと強調した上で、マクロン大統領からウクライナのNATO加盟を否定する話題は提供されなかった」ですか。
「ウクライナのNATO加盟を否定する話はなでかった」、言葉どおりとればマクロンはプーチンとはウクライナのNATO加盟の話はしていないということです。
ウソこけと思いますが、さて、これをどうとるべきでしょうか。
たぶんプーチンは5時間マラソン交渉の時に、さんざんウクライナをNATOに加盟させるな、とねじ込んでいるはずです。
それこそが、プーチンの今回の大パーフォーマンス大会のメーンテーマですから、プーチンが言わないはずがありません。
それをマクロンは仏露首脳会談が秘密交渉であることをいいことに、「ない」ことにしてしまったわけです。
ここで思い出していただきたいのですが、このマクロン-プーチン会談は通訳だけ入れた一対一の「テタテ会談」だったことです。
こういうテタテ会談では、互いに記録に残さずに歯に衣を着せない交渉をするものです。
だから非公開で記録も残さず、今回の当事者であるウクライナ以外には内容を公開しないのが建前です。
マクロンはNATO東方政策が、ロシアの考えるように西側陣営の東方拡大ではなく、東欧諸国から望まれて加入を許したもので、NATOにはロシアに進攻する意志などまったくないと言ったでしょう。
そもそも今のNATOは、かつてのソ連率いるワルシャワ条約機構と対峙していた時のNATOとは別物なのです。
はるかに米国離れしているし、結束も強いとはいえません。
下手を打つと、ニコニコ倶楽部一歩手前状態で、タガがゆるんだ桶の状態ですが、こうしたのはメルケル女史です。
皮肉にも、それをまた締め直してしまったのが、プーチンの一連の脅迫と恫喝外交でした。
砲艦外交ならぬ戦車外交が、プーチンの思惑以上に効いてしまって、今やNATOの再結束の機運が盛り上がってしまいました。
さて、屁たれたドイツに替わって、ここで主導権を一気に握ってしまいたいのがフランスです。
NATOの盟主とはEUの盟主ですから、プーチンごときに負けていては話になりません。
おそらくサシではウクライナ加盟問題はしつこく登場したはずですが、それを「聞いていない」と一蹴したところが、さすが腐ってもフランスです。
「聞いていない」のですから、マクロンはこのプーチンの要求を拒否したのだと思います。それもかなりはっきりと。
CNN
では、今後このウクライナ加盟はどうなるのでしょうか。
選択肢としてはみっつです。
①現状維持。ただし表面的には、です。
おそらく英米仏を中心に大規模な軍事支援が行われ、ウクライナ軍の面目は一新するはずです。
これがもっともありそうな線ですが、各国の支援連携が問われます。
②今回のプーチンの乱暴狼藉で一気にNATO加盟に前向きになっている中立主義諸国のスウエーデン、ノルウェイ、フィンランドと一括してウクライナも同時加盟させる方法です。
赤信号、みんなで渡れば怖くない作戦ですが、さて一挙に4カ国まとまるとどの国に進攻するのでしょうか、プーチンさん。
③今、舞台裏で構想されている英国-ポーランド-ウクライナ三カ国連携の強化です。
これは日本ではなぜかほとんど無視されていますが、このような内容です。
「キエフ、2月1日(ロイター)-英国、ポーランド、ウクライナは、新たなロシアの軍事介入の脅威に直面して、三者間の協力を強化するために取り組んでいる、と東ヨーロッパの2カ国の指導者は火曜日にキエフで述べた。
これにより、旧ソビエト共和国をNATOに近づけることができ、ここ数週間、ウクライナの国境近くに数万人の軍隊を集めてきた旧宗主国のモスクワに嫌悪感を抱くことができる。
英国のボリス・ジョンソン首相は侯述べています
「近い将来、ウクライナ-ポーランド-英国の新しい地域協力の形式を正式に開始できることを願っています。進行中のロシアの侵略に対して、地域の安全を強化するための協力関係を構築する三国間文書に署名する用意がある」と述べた」
(ロイター2022年2月1日原文英文)
https://www.reuters.com/world/europe/britain-poland-ukraine-preparing-trilateral-security-pact-kyiv-says-2022-02-01/
NATOの枠とは別に、複数の国がウクライナと連携して十重二十重に準同盟関係を作り出し、そのネットワークでウクライナを救援しようというわけです。
とりあえず今回は英国が軸になりましたが、同じように「活火山のような燐国」を抱えた同士が支えあうという仕組みで、これならNATOとは無関係に作ることができます。
このようなさまざまなウクライナ支援を教えてしまったのが、今回のプーチンの戦車外交でした。
たぶん興味津々でウクライナ情勢を観察しているはずの中国にも、いい教訓となるでしょう。
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これから事があるにしても無いにしても、
ウクライナは地上戦力は細々と他国から支援を受けたり骨董品レベルの銃を掻き集めて市民ゲリラまで準備してますけど···
決定的にダメなのは空軍力ですね。常にロシアの航空優勢下で戦わなければなりません。防空網も貧弱すぎ。
もし何事も起こらずにロシアが全面的に引いたとして、各国がNATO枠外で援助するにしても空軍の再建はさすがに難しいでしょう。パイロット養成くらいはできても維持する人員やカネが無い。
トルコからドローン買うらしいですけど、あんなの対アルメニア飛び地で去年役に立ったというだけで、空を抑えられた状態では使い物になりません。買うならずっと小さくて安い自爆ドローンにしとけばいいのに。
あとは無線通信網が最初からやられるという前提でも連絡手段を確保しておかなければなりません。
サイバー攻撃とECMはロシアが圧倒するでしょうから。
それこそアナログの暗号表でのモールスとか伝書鳩(スイス軍には今世紀初めまでありました)部隊を設置して常に訓練していないと。。
どうにもならない戦力差です。
ですから、ドンパチにならないように各国がここに来て外交で大いに動いているわけですけど···私にはプーチンが重すぎるハンマーを振り上げてしまって、我慢して支えるのに必死になっているように見えます
投稿: 山形 | 2022年2月11日 (金) 06時11分
内戦に内戦を重ね勝ち取った自由に対する願望はプーチンの計算外ですね。旧ソ連崩壊後もユーゴスラビア内戦、コソボ紛争、ルーマニア革命と本当に自由を守るために命がけで戦います。また西側諸国もヒットラーによる第2次世界大戦の経験から力による現状変更は許さない立場です。
戦争に次ぐ戦争で手に入れた自由です。誰からも支配されない自由に対する概念は私たち日本人が想像する以上に強いものがあります。
そういう現象は、アジアのミャンマー、香港、タイ、ベトナムなどにもあります。
プーチンは本当に重いハンマーを振り上げた。うまく振り下ろさないと自身の宮殿疑惑とともに政治生命も危ない。それにしても白人社会(西側諸国)は、日本の様にまーまー折衷案で手を打とう。とかいう曖昧な解決はしないですね。
投稿: karakuchi | 2022年2月11日 (金) 09時14分
マクロン=プーチン間で、ウクライナのNATO加盟問題が出ていなかったなどと言う事は100%あり得ないです。
おそらく私的には、マクロンはウクライナのNATO加入を拒否し続ける密約でもしたんじゃないかと思います。右派二候補に押しまくられ、この四月に改選期を迎えるマクロンのしそうな事です。
達者なのは、それを見透かしたウクライナ外相で、「フランスのマクロン大統領はウクライナが希望する北大西洋条約機構(NATO)加盟を否定しなかった」とクギを刺したのが顛末と思います。
結局、今回の騒動はバイデンに端を発していて、トランプ政権ではあり得なかった新START条約の無条件更新と、アフガンのアホな顛末にプーチンがスキを見つけ、「組み易し」と考えて行動に着手したって事でしょう。
但し、ロシアは本格的にウクライナに侵攻したら経済的に終わりです。(ロシアが一気にウクライナを盗って食料自給100%の共産主義国として返り咲くなら、話は別ですが)
その点はバイデンの揺さぶりが強力に効いていると思います。
ですから西側としては譲歩する必要はないし、まして他国を武力でもって、言う事を聞かせようとする時代遅れの茶番に屈する事をすべきではありません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年2月11日 (金) 11時03分
ロシアとしては騙し討ちでクリミアを取られたウクライナは意地でも折れないでしょうから、四面楚歌にして政権転覆からの新政権にて第二のベラルーシ化を狙っていたのかもしれません。
しかし蓋を開けてみればドイツは予定通り腰砕けになっていますがフランス、イギリスは割と冷静で当初フラフラしていたバイデン政権もどうにか体勢を建て直して向き合う覚悟を「見せて」きています。
今回の情勢危機はまさにこの「見せ合い」「騙し合い」の情報戦の連続で出来るだけ多くの方向からの情報を集約した上で判断しないととんでもない見誤りをする事になりそうです。
情報の正確性も大事ですがそれと同じくらい「今なぜこの情報が出てきたのか?」という視点を持って接する事が大事ですね。
臨戦態勢のロシア兵がSNS発信で居場所を把握させるとか普通に考えておかしな行為です。
こうなってくるとロシアが勝てる道は「ウクライナから手を出してくれる」事で大規模侵攻の大義名分を得る事くらいしかなくなってきたので、そう仕向けさせる情報にはより気をつけなければいけないかと思っています。
投稿: しゅりんちゅ | 2022年2月11日 (金) 11時41分
アメリカと日本が、ウクライナ在住自国民に退避勧告を出しました。
風雲急を告げるですかね。
投稿: karakuchi | 2022年2月11日 (金) 23時59分