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2022年3月

2022年3月31日 (木)

イスタンブール和平協議

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まずは、イスタンブールで開かれている和平協議から。
いくつか「進展」が見られたと言われていますが、微妙なところです。

協議の内容を、ウクライナのキエフ・インディペンデント紙から見ていくことにします。
長文なので区切りながら、私の要約と解説を入れおきます。

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ウクライナ代表団  ウクライナ・フォーラム
https://www.ukrinform.jp/rubric-ato/3443130-ukurainaroshia-he-ping-xie-yiukuraina-dai-biao-tu

「ウクライナは「NATOより強力な」安全保障を求め、ロシアとの和平交渉の他の条件も概説している。
ウクライナはNATOの第5条よりも強力な安全保障を求めている、と現在行われているロシアとの和平交渉でウクライナ代表団の団長を務めるゼレンスキー大統領の派閥リーダー、デイビッド・アラカミア氏は29日、語った。アラカミアは、この日イスタンブールで行われたロシアとの和平交渉の後で功述べている。
NATOの第5条は、ある加盟国に対する武力攻撃は、加盟国すべてに対する武力攻撃とみなすことを各加盟国に命じている。
「ブダペスト・メモの過ちを繰り返さないために、(議会が)署名し批准した安全保障に関する協定であるべきだと主張する」とアラカミア氏は述べた。
拘束力のない1994年のブダペスト覚書では、ロシア、米国、英国は、ウクライナがソ連から得た核兵器を放棄する代わりに、軍事力を行使しないことを誓約していた。ロシアは2014年から2022年にかけてウクライナに侵攻して覚書に違反し、他の保証国もウクライナを保護することができなかった」
(3月29日 キエフイディペンデント)
https://kyivindependent.com/national/ukraine-seeks-security-guarantees-stronger-than-natos-outlines-other-terms-for-peace-deal-with-russia/

これはロシアが「中立化」を求めていることに対する、ウクライナ側の回答です。
ウクライナは非常に慎重にしゃべっているのがわかります。
まずはロシアの「中立」要求を無下に蹴飛ばさずに、いったんNATOへの加盟は考えていないと受け止めた上で、新しい安全保障の枠組みを多国間で作ろうと逆提案しています。
実にしたたか、かつ慎重です。

ではなぜウクライナは用心深くなるのでしょうか。
それは相手が嘘つきで名高いロシアだということもありますが、いまひとつはアラカミアが言うように、かつて核保有量第3位だったウクライナが、それを手放すに当たって結ばれた1994年のプタペスト合意を反故にされた苦い経験があるからです。
ブタペスト合意は西側とロシアが作ってウクライナに因果を含ませて飲まして結ばせたものですが、そこで約束されていた独立と主権の保護は以後まったく省みられることなく、ゴミ箱に入れられてしまいました。

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ミンスク合意  ウクライナフォーラム

親露政権を倒した直後の不安定期に、クリミア侵攻が起こり、さらにほぼ同時に東部2州での独立分離紛争が勃発しました。
露骨な侵略です、しかもミンスク合意の明白な違反ですが、軍隊で占領してしまえばこちらのものというロシア流儀が勝って、結ばされたのがミンスク合意でした。
これには西側陣営も関わったにもかかわらず、事実上ウクライナ領の分割を容認してしまう不平等なものでした。
ドネツク、ルガンスクというロシアの息がかかった東部2州に「特別な地位」を恒久法で保証しろだなんて、ウクライナ分割そのものです。
西側諸国は、よく恥ずかしげもなく、こんなものをウクライナに呑ましたものです。
口にはしませんが、ウクライナの西側諸国への不信感は根強いはずです。

Https3a2f2fimgixproxyn8sjp2fdskkzo802107

日経
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80210680X10C22A2EA2000/

そしてさらに今回、その支配地域を拡げるべくロシアはブタペスト合意もミンスク合意もあったもんではなく、すべてを御破算にして全面武力侵攻してくるのですから話になりません。
3度に渡っての和平合意を一方的に破られたウクライナが、口約束に等しい「合意」ではなく、議会が批准することを条件にしているのはこのためです。
それにしてもロシアの狡猾は今さらですが、西側の不誠実さもひどいものです。
2度までも合意を破られたウクライナが、条約として履行義務があるNATOに加盟したいと希望するのは当然のことです。
しかしそれを事実上拒否された以上、NATO第5条に代わって新たな安全保障体制を作るために、ウクライナが提案しているのが、多国間安全保障体制です。

「ウクライナが3月29日に提案した保証では、保証国は軍事侵略やハイブリッド戦争の開始後3日以内に互いに協議しなければならないと、アラカミアは述べた。協議後、これらの国は軍隊を派遣し、武器を提供し、ウクライナの空を守ることでウクライナを支援しなければならない、と彼は付け加えた。
このような保証国には、米国、英国、中国、ロシア、フランス、トルコ、ドイツ、カナダ、イタリア、ポーランド、イスラエルが含まれる可能性がある。その他の国も参加できるだろう、とアラカミア氏は述べた。これらの保証は、ウクライナの欧州連合への加盟にも役立つはずだ。
ゼレンスキー参謀本部顧問でウクライナ代表団のメンバーであるミハイロ・ポドリャク氏は、ウクライナ政府は安全保障に関する協定に署名するのは、それが全国民の投票で批准された場合のみだと述べた。国民投票は、ロシア軍が撤退した後にしか行えないと、ゼレンスキー氏の憲法裁判所代理人であるフェディール・ベニスラフスキー氏は述べた」
(キエフ・インディペンデント前掲)

ウクライナが要求する安全保障の大枠は、NATOの第5条(集団的自衛権)と同様のものを米国、英国、フランス、ロシア、中国、ドイツ、イタリア、ポーランド、イスラエル、トルコといった国々で結び、ウクライナの独立を保証しようとするものです。
ウクライナは、「この国際的な安全保障の枠組みに同意した国はまだないが、今のところ拒否している国もない」と明かしており、ゼレンスキー大統領が「国民投票を行う」と述べているのは、憲法に銘記されているNATO加盟要請を削除することと、それに替わる新たな集団安保体制について国民に投票してもらうということのようです。
橋下某が考えるような、「ここまで国民が死んだらレッドライン」だら降伏のために国民投票をするなんてものではありません。(あたりまえだつうの)

「協議にウクライナ側で参加した政治専門家のオレクサンドル・チャーリー氏は、「(将来の合意における)そのような実質的にNATO条約第5条に匹敵する保証の下では、私たちは、自国領に外国軍の基地は設置できず、私たちは軍事政治同盟には入らないことになる。自国領内の軍事演習の実施は、保証国の同意の上で行われる」と発言した。
さらにチャーリー氏は、将来の合意には、いずれの保証国もウクライナのEU加盟の権利は反対しないこと、保証国にはEU加盟プロセスを促進させる義務が生じることが書き込まれると指摘した」
(ウクライナ・フォーラム3月29日)

ただし、この国々は米英仏伊と言ったG7国、そしてボーランド、トルコ、イスラエルといった友好国まではいいとして、なんとウクライナの最大の脅威国であるロシア、そしてその準同盟国の中国まで入っているのは解せません。
仮想敵国まで入れた集団安保体制などありえないことは、うぶではないウクライナはよくわかっているはずなのですが。
露中は常任理事国だからとアラハミア氏は言っていますが、もう少しウクライナの真意を探る情報が欲しいところです。
ちなみにメディアの報じるところでは、EU加盟は認めるとロシアが言ったとか、ほんまかいな。

そしてたぶん一番もめたであろう領土問題ですが、ロシアはクリミア、ドネツク、ルガンスクに対してロシアの主権を認めよと要求しているようです。

「最新の停戦文書草案に含まれている主要な内容はウクライナが要求する安全保障の受け入れ、EU加盟の容認、NATO加盟放棄だけで、クリミアやドンバスについては意見の相違が埋まっておらず、ロシアは「クリミア、ドネツク、ルガンスクに対する支配権(ロシア主権=ロシア領編入)を認めろ」と要求、ウクライナは「如何なる国境の変更も認めないが、クリミアへの水供給や武力によるクリミア奪還を行わないなどの約束については話し合う余地がある」と主張している」
(キエフ・インディペンデント前掲)

いうまでもなく、このロシア案を受け入れたら最後、ウクライナの二分割を認めたも同然です。
ただし、拒否一本では和平合意自体が成立しません。
そこでウクライナが言い出したのが「15年間棚上げ」にして、その間クリミアには水と食料の搬入は認めるというものでした。

「ポドヤク氏によると、ウクライナは2014年からロシアに占領されているクリミアの地位について、15年以内にロシアと交渉を行うことも提案していた。ルハンスク州とドネツク州のロシア占領地の地位は、ゼレンスキーとロシアの独裁者ウラジーミル・プーチンとの直接交渉で決定することが提案されているとポドリャク氏は付け加えた。
一方、ロシア代表団の団長で、ロシアの独裁者プーチンの側近であるウラジミール・メディンスキーは、ウクライナとの交渉を “建設的 “と評価した。彼は、会談の結果、ロシアはウクライナ北部のキエフとチェルニヒフ方面への軍事活動を縮小することを決定したと述べた。しかし、この発言は、ウクライナ軍が北部でロシア軍を押し返すことに成功し続けている中での発言である。
次回の協議がいつ開催されるかは、まだ明らかになっていない。ポドリアク氏は、ロシアがウクライナの提案に反応した後に日程が決定されるだろうと述べた」
(キエフイディペンデント前掲)

面白いのは、ウクライナが合意が結ばれたとしても、それは前述のように国民投票と国会批准が必要で、いまのような戒厳令下ではそれは不可のうなので「実施のために平和が必須だ」と言っていることです。
「ポドリャクウクライナ大統領府長官顧問は、「その安全保証合意の決定履行は、次のような手続きで進んでいく。まず、国民投票。ウクライナ国民皆が、その合意に関して、それがどのように機能するかに関して、自らの立場を表明する。その後、保証国とウクライナの国会による批准となる」と説明した。
アラハミヤ氏は、ウクライナ国内法に従えば、国民投票は戒厳令下では行い得ない、実施のためには平和が必要となると指摘した」
(ウクライナフォーラム前掲)

なるほどねぇ、ウクライナは和平合意の実施に当たっては議会批准を条件につけているのです。
これで和平条約発効のために国民投票と国会批准を持ち出したもう一つの理由がわかりました。
ロシアの撤退と平和の履行を保証するためです。

なお、和平協議に合わせたかのように、ロシアが信頼醸成と称してキエフの包囲を解いたと述べています。
退却を転進と言ったかつての帝国陸軍のようで笑えます。
右手でなぐりながら、何が信頼だというのでしょうか。

ゼレンスキーは、「自分達を殺そうとしている国の言葉を簡単に信用しないし、ウクライナ人はそこまで甘くない」と述べていますが、撤退や信頼醸成などという甘言にひっかかるほどウクライナ人はやわにできていません。
交渉は結果こそすべてなのです。
今回の包囲解除も、不可能になったキーウ攻略を断念して、東部への兵力集中をねらっているのは見え透いています。
英国国防省はいたってクールな分析をしているようです。

①ロシアの度重なる後退とウクライナ軍による反撃の成功により、ロシアの攻撃はキエフを包囲する目的に失敗したことがほぼ確実となった。
②キエフ周辺の活動縮小に関するロシアの声明や、これらの地域から一部のロシア軍部隊の撤退を示す報道は、ロシアがこの地域における主導権を失ったことを受け入れていることを示しているのかもしれない。
③ロシアは北部の戦闘力を東部のドネツク、ルハンスク地域の攻勢に振り向ける可能性が高い。
https://twitter.com/DefenceHQ/status/1508904940181372936


これについては次回にします。

 

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ウクライナに平和と独立を!

2022年3月30日 (水)

サハリン2は権益放棄が正解だった

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経済制裁で、日本の尻が異様に重かったのがサハリン2のLNG権益でした。

「岸田文雄首相は22日、日本政府や企業が出資する石油・液化天然ガス(LNG)プロジェクトのサハリン1、2について、日本にとって重要なエネルギーの権益だとし、「大事にしていかなければいけない」と記者団に対して述べた。
「ビジネスなのか、それとも我が国の権益なのかはしっかりと整理をしなければいけない」とも指摘。今後のロシアとの関係について、「国益の観点から冷静に判断していくことは重要だ」と説明した」
(ブルームバーク3月22日)
サハリン1・2は日本の権益「大事にしなければいけない」-岸田首相 - Bloomberg

各国が歩調を合わせた輸入禁止制裁や、合弁会社からの撤退が決まってからじつに丸々1か月。岸田政権の方針は定まりませんでした。
この人の特徴である「聞く耳」が拡がりすぎて、板挟みになったのです。
結果、企業側も政府も動けないので徒に時間だけが経過して、決まったと思えば「このまま(権益を)大事にする」ですから、なんだったんでしょうか、この1カ月間は。

同じことを言うにしても1か月前にやれば、それはそれでわが国の国益上致し方がない、とヨーロッパのように居直れたものを、1か月遅れてしまうと、その失われた時間を他国に見透かされてしまいます。
ロシアからすれば、そうか日本はサハリン権益を手放したくないんだな、ならばここが攻め口かとわからせてしまったでしょうし、米国からすればこの腰抜けめ、わずかなLNG権益にしがみつきおってからに、としか写りません。
とんだ笑い物です。

なによりわが国の企業にとって政府方針が定まらないので、代替をどうするのか、シェルやエクソンのように他国の代替を必死で探していいのかが定まらなかったわけです。

「日本にとっての問題天然ガスだという見方は専門家に共通する。ロシアは世界の天然ガス生産量の16.6%を占め、米国の23.7%に次ぐ。3位はイランの6.5%、4位は中国の5.0%だ。天然ガスの場合、長期契約の調達が多く、スポットで手に入れようと思うと価格は極端に高くなる。
日本の場合、パイプラインではなく、LNG(液化天然ガス)に変えて船で輸入するため、LNG施設を持つところとしか取引できない。
つまり、ロシアからのガスが万一にも禁輸になれば、その穴埋めをするのは難しく、原油や石炭など別のエネルギー源に移行せざるを得なくなる。そうでなくてもタイムラグを経て今後大幅に上昇する見通しの電気料金はさらに上昇せざるを得なくなる」
(磯山友幸 2022年3月24日)
ウクライナ戦争が日本に突きつける「老朽化原発」再稼働問題 Foresight

結局、さっさと撤収を決めて損切りした石油メジャーは、既にどんどんと代替産地を見つけているのに、うちの国だけがとり残され結果になりました。
わが国が提携できる生産国はLNG貯蔵・中継施設を持つ国だけなので、いっそう選択の幅が狭まってしまったのです。
「聞く耳を持つ」というのは、なにも起きていない平時の美徳。
今のような次から次へと国家が重大な意思決定すべき時期に「平時の美徳」でいるから、大きく出遅れることになります。

そもそも全体として見れば、日本のロシアからの2020年のエネルギー輸入比率は、原油で3.6%、LNGで8.4%にすぎませんから、輸入禁止や撤収による権益放棄は日本のエネルギー事情に大きな影響を与えないはずでした。
サハリンのLNGはロシア側が議決権を保有していますから、撤収したシェルやモービルの利権はロシアに接収されてしまいます。
岸田氏からすれば、この接収した利権をいつでも中国に売却できるので、国益に反すると言いたいようですが、うちの国の権益などたかが知れています。

「萩生田光一経産相は、国会で対応を問われると、「撤退することがロシアに対する経済制裁になるのだったら一つの方法だが、われわれがいま心配しているのはその権益を手放したときに、第三国がただちにそれを取ってロシアが痛みを感じないことになったら意味がない」と答弁し、すぐに撤退を決めることに否定的な考えを示した。第三国というのは当然、ロシア擁護の姿勢を貫いている中国だと見られている」
(磯山前掲)

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サハリン2で板挟み 三井物産・三菱商事、安保か制裁か: 日本経済新聞 (nikkei.com)

サハリン2のわが国の権益比率は、三井物産が12.5%、三菱商事が10%にすぎません。
サハリン1のエクソンなど実に30%ですから、わが国の権益といっても少数権益にすぎず、これで運営に介入することはできる立場にはないのです。
つまり、撤収しようとしまいと大勢に影響がない立場だったにもかかわらず、1カ月間も決まらないことでかえってコトを大きくしてしまいました。

では、なぜこんな中東原油からみれば盲腸のような存在のロシアの権益ひとつに、ここまで時間がかかったのでしょうか。
それはロシアからのエネルギー輸入は、政府が音頭をとって大手商事に進めさせてきた典型的な官主導型プロジェクトだったからです。
経済産業省としては、サハリンは距離的に日本に近く、輸送コストが安くつき、大きく依存しないならロシアからの輸入は推進したいという考えでした。
そこで、政府が50%を出資する「SODECO・サハリン石油ガス開発」という半官半民の受け皿会社を作り、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、石油資源開発などを参加させたわけです。
いまもこの会社を通じて、石油を日本や中国、韓国などのアジアに輸出しています。

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事業紹介 | エネルギー部 - 三井物産モスクワ有限会社 (mitsui.com)

ですからこれが撤収となると、全部御破算ですから、企業側は日本政府に対して補償を含めた責任を求めるでしょう。
とうぜんこの1カ月間、企業は政府に補償責任を強く迫ったはずです。

そしてもうひとつは、歴史的因縁でした。
実はサハリン2に関して、日本はプーチンに苦渋を呑まされ続けてきました。
それは、2006年から07年にかけて国際商慣習ではありえない裏切りにあっているからです。

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産経

というのは、サハリン2プロジェクトは、そもそもロイヤル・ダッチ・シェルや日本の三井物産・三菱商事といった外資主導のものでした。
これは中東なども見られる、技術力と資金力を持つ外資が当該政府から採掘権を得て資源開発するという一般的形態でした。
日本勢とシェルはほぼ半分ずつ「サハリン・エナジー」の株を持ち、当時のソ連と生産分与協定を締結します。
投資企業が投資金額を利益によって回収するまでは、生産物は投資企業のもの、つまりイギリス・オランダ・日本のものになり、ロシア政府には6%が入るという仕組みでした。
この1994年協定締結当時のロシア大統領は、エリツィンで、彼は資源には無頓着でした。
エリツィンにとってシベリアは、ただの凍土に覆われた森林資源と海産物しかない不毛の地と思っていたからです。

ところがエリツィンが後継に指名した副首相が、誰あろうプーチンでした。
この男はバリバリの国家資源管理主義者、平たく言えば資源ナショナリストでした。

プーチンは、既にこの時期、「我が国の豊富な資源を国家管理下に置き、内外の駆け引きに利用すべきだ」という論文すら書いていて、経済化学博士号をとっているような男でしたから、権力を掌握する前からサハリンに目をつけていたのです。
プーチンは原油が出るまで外国資本にやらせて、湧いて出たら介入して外資からとりあげる心づもりでした。
この間、実に7年。
プーチンはこ時期を使って彼の独裁権力の基盤を固めていきます。

1999年12月、プーチンはロシア下院議員選挙で事実上彼の与党である「統一」を作り、ロシア共産党に次ぐ第二党に押し上げます。
そしてほぼ同時期にエリツィンから大統領の後継指名を受けます。
それまでソ連の遺産を簒奪したオリガルヒが牛耳るガスプロムは、プーチンの政敵「祖国・全ロシア」を支持していましたが、権力を握ったプーチンはガスプロムに自分の腹心のメドヴェージェフを送り込み支配します。
ここから延々と続く、ガスプロムとプーチンの癒着が始まるのです。

プーチンは、この石油・LNGを自らの権力の基盤としたばかりか、外交戦略の武器としてもぞんぶんに使いました。
ここでプーチンが初めてエネルギーを外交の武器に使った例が、ウクライナでした。
2004年ウクライナで起きたオレンジ革命によって成立した親米欧政権に対して、プーチンはLNG供給を停止します。
これにより打撃を受けた親欧米政権は瓦解し、再び親露派のヤヌコビッチが政権につきます。
この時、親欧米政権で大統領だったヴィクトル・ユシチェンコは、プーチンによってダイオキシンを盛られて死にかけるという事件まで引き起こされています。
プーチンが度々政敵やジャーナリストに用いた毒殺という手段が、あろうことか外国元首にまで用いられたケースです。

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ロシアによる毒殺未遂  元ウクライナ大統領の場合 - BBCニュース

いかにもスパイ上りのプーチンらしく毒殺という陰湿な手段は頻繁に使っており、今回のウクライナとの和平協議でも用いました。

「国際的な民間調査機関「ベリングキャット」や複数の欧米メディアは28日、ロシアとウクライナの非公式な和平協議に参加したウクライナ側の交渉担当者ら3人に、毒物の中毒症状が確認されたと報じた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、和平の頓挫を狙ったロシアの強硬派の仕業との見方を報じている」
(日経3月29日)
ウクライナ側要請で「和平後押し」か、露の富豪・アブラモビッチ氏に毒物症状…数時間視力失う : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

和平協議の場でも使うというのですから、化学兵器を使用することに垣根はありませんね。恐ろしい男です。

このようにプーチンは自らの懐を肥やし、権力を支える大黒柱にガスプロムを用い、さらには「エネルギー帝国主義」とまでいわれるような外交手段にまで高めたわけです。

そして2006年、機は熟したと見たプーチンはサハリンのガス油田に対して国家資源管理を開始します。
サハリンでもロシア政府は外資追放、ガスプロムの事実上の独占を狙ったのです。
理由は口あたりのいい環境問題でしたが、もちろんそんなことはただの屁理屈で、自分とその一党が独占したかっただけのことです。
結局、50%+1をガスプロムに支配されてしまいます。

このような歴史を見れば、今後、今仮に権益を保持したとしても、そう遠くない将来、ロシア側はすべての外国資本を追放する方向に進むと充分に予測できるはずです。
平時ですらこういうことをする国が、全面的経済崩壊に見舞われた場合、どう出るてくるか予測できそうなものです。
そしてなまじ少しの権益を持っていれば、これを餌にして日本に外交問題で必ず妥協を迫ってくるでしょう。
ですから、このような危険なサハリンの弾薬庫とは縁を切っておくのが正解なのです。

では代替エネルギーをどうするのかって。
あるでしょう、わが国には休眠状態のエネルギー資源が手つかずであることをお忘れか。
それは原子力です。

わが国は現在、「電力逼迫警報」を発令せねばならないような状況です。
予備電力はとうに3割を切り、3月16日に発生した東北地方での地震によって火力発電所が停止しているところに、気温が大きく低下、電力需要が急激に増えるという事態となって、22日には萩生田経産相が、「このままでは、いわゆるブラックアウトを(深刻な大規模停電)を避けるために、広範囲で(一部地域の自動的な)停電を行わざるを得ない」という悲痛な呼びかけをせねばならない事態に追い込まれました。

おそらくこの夏には、高温となんらかの自然災害で火力発電が被害を受けて停止が重なった場合、同じように大規模停電になる可能性があります。
いいかげん日本も、昨年11月に閣議決定した「エネルギー基本計画」にあるような、「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」という能天気な姿勢を改めるべきです。
脱原発派が言うように老朽化して危険だというなら、老朽原発を新世代に建て替える(リプレイス)や、別途に新設についてタブー視するのではなくま正面から議論すべき時期になったと思います。
いつまでも稼働期限が切れた原発をだましだまし延長するのではなく、しっかりとした原発政策が必要な時代に入っているのです。

岸田政権は経済安全保障を掲げているのですから、エネルギー政策をマトモに考えないでどうします。
世耕参院幹事長はこう言っています。

「自民党の世耕弘成参院幹事長は27日、徳島市内で開かれた会合で、ウクライナ危機を引き起こしたロシアへの日本のエネルギー依存度を引き下げる必要があるとして、原発の再稼働を進めるべきだとの考えを強調した。
世耕氏は「国家の在り方を根っこから変えていかないといけない。安全が確認された原発は再稼働する。あるいは安全な新しい原発の研究を進めなければならない」と述べた」
(時事3月27日)
原発は再稼働を=自民・世耕氏|ニフティニュース (nifty.com)

まことに世耕氏の発言は時宜を得たものだと思いますが、こういう常識的なことが言えるのに、なぜサハリンではこんなに右往左往を演じたのか、かえって不思議です。

 

2022年3月29日 (火)

「金融核爆弾」のすさまじい破壊力とは

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バイデンのワルシャワ演説が炸裂しました。

「【ワルシャワ=横堀裕也】米国のバイデン大統領は26日、ポーランドの首都ワルシャワで演説し、ウクライナ侵攻を命じたロシアのプーチン大統領について、「この男が権力の座にとどまってはならない」と非難した。「自由を愛する国々はこの先何十年と結束を保たなければならない」と述べ、民主主義陣営に向けて、ロシアへの対抗とウクライナ支援を呼びかけた。
バイデン氏は演説で、「ロシアは今、民主主義を握りつぶそうとしている」と危機感をあらわにした。ポーランドなど中東欧の民主化運動や、旧ソ連崩壊の歴史にも触れて、「民主主義を巡る闘いは、冷戦終結とともに終わらなかった。この30年間で、権威主義陣営は世界中で復活を遂げている」と警告した。覇権主義的な主張を強める中国も念頭に置いた発言だ」
(読売3月27日)
「この男が権力の座にとどまってはならない」バイデン氏、演説でプーチン氏非難(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース 

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「この男が権力の座にとどまってはならない」ですか、よくぞ言った、バイデン!パチパチ。
いままで彼を褒めたことは一回もなかった気がしますが、今回はいい。
ロシアのような力信仰の国には、外交的オブラートにくるんでいては真のメッセージは伝わらないからです。
アドリブだったそうですが、草稿にあったら周囲が言わしてくれなかったでしょうな。
慌てたホワイトハウスが修正をかけているのが、微笑ましい。

「波紋を広げた演説の直後、米ホワイトハウス当局者は声明を発表し、「バイデン氏の論点は、『プーチン氏は彼の隣国や地域で権力を行使することは許されていない』という点だった。バイデン氏は、プーチン氏の権力や体制転換について話していない」と軌道修正を図った」
(朝日3月27日)
演説草稿になかった「権力の座に」発言 直後に波紋、軌道修正の実情(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

いいえいえ、隠さなくてもけっこう。米国はじつはロシアの体制を転覆することを充分意図して実施しているのです。

え、中国の人民元決済システムCIPSがあるだろうって。
巻き添えを恐れた中国は利用を拒否してますって。そもそもCIPSの8割はSWIFT加盟銀行で動いているのですから、これらの加盟銀行がCIPSを使わせるはずがありません。
プーチンは、ドルがダメならルーブル建てだなんて言っていましたが、G7はこれを拒否しました。

「【ベルリン時事】先進7カ国(G7)のエネルギー相は28日、オンラインで緊急会合を開き、ロシアが要求している同国通貨ルーブル建てでの天然ガス代金の支払いを拒否することで一致した。G7議長国ドイツが明らかにした。
ロシアのプーチン大統領は、日本や欧米などの「非友好国」に対し、天然ガス代金の支払いをルーブル建てに限定する方針を示していた。
 会合後に記者会見したドイツのハーベック経済・気候保護相は、プーチン氏の要求は「一方的で、明確な契約違反だ」と強調。ロシアから天然ガスを輸入する企業に、ルーブルでの支払い指示に応じないよう呼び掛けた」
(時事3月28日)
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12145-1547529/

カード決済も、国際カードと連動するカードは全部ダメ。
さらに英国は金準備の凍結も求めており、各国預かりの金準備も使えなくなる予定です。
動向が注目されていたスイスも、中立政策を捨てて対ロシア制裁を強化しており、オリガルヒの隠し資産は暴かれて凍結されるはずです。 

さて、ロシア制裁のメニューをざっと列挙してみましょう。たぶんまだあるはずですが、とりあえずということで。

●ロシアに対する制裁
① 国際的な決済ネットワークSWIFTからロシアの特定の銀行を除外
② ロシア中央銀行の資産凍結
③ ロシアへの輸出規制
④ ロシアからの輸入規制
⑤ 最恵国待遇の取り消し・撤回
⑥ プーチン政権と密接な関係にある新興財閥(オリガルヒ)の資産凍結
⑦ ロシアへの投資と合弁企業からの撤退
⑧ ロイズの国際保険・再保険の拒否
⑨ ロシア行き鉄道・航空路の閉鎖
⑩ 国際カードシステムからの排除
⑪ 各種国際会議・国際競技大会・競技連盟からの排除
⑫ 金準備の凍結
⑬ 国連常任理事国解任
⑭ タックスベイブンの ロシアの隠れ資産口座凍結
⑮ スイス銀行の口座凍結
⑯ ロシア国会議員・政府関係者などの海外資産凍結

このうちもっとも強力なパンチは①のSWIFTからの排除で、ロシアは今や事実上ドル決済不能に追い込まれているのはご承知のとおりです。
これは事実上、世界市場からのロシアの排除を意味しますから、バイデンが言うとおりルーブルは紙くずになったと言ったのはハッタリでも脅しでもなく真実です。

「ウクライナ侵攻を巡り、ロシア軍がウクライナ側の果敢な抗戦に遭い、北大西洋条約機構(NATO)の結束を招いたとして、「この戦争はロシアの戦略的失敗だ」と指摘した。米欧などの経済制裁によって、「(ロシア通貨の)ルーブルはほぼ紙くずになった。制裁は軍事力に匹敵する」と述べ、各国の制裁の効果を強調した」
(読売前掲)

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NHK

昨日の3月28日から、ロシア制裁が一気にパワーアップしています。
最大手ズベルバンクとガスプロムバンクの2つを除くすべてのロシア銀行は、国際的な決済ネットワークSWIFTから排除されました。
これで自由主義諸国の金融機関からロシア向け送金ができなくなり、国際送金決済ができない以上、貿易は封鎖されたことになります。

意図的に作ってあるSWIFTの抜け穴がひとつあって、それはロシア最大手の銀行と ガスプロムバンクという名でわかるように国有エネルギー会社ガスプロム系列を残してあることです。
ここを残した理由はわかりますよね、ドイツなどEU諸国への温情です。
ここまで決済不能にしてしまうと、昨日見たように原油・LNGの多くをロシアに依存してきたドイツなどのヨーロッパ諸国はエネルギー輸入がゼロとなって干上がってしまうからです。
ただしこの抜け穴も、今後、仮にロシアが核や化学兵器などの大量破壊兵器を使用するようなことが起きれば、容赦なく封鎖することになるはずです。
というわけで、SWIFT排除はあえて腹八分にしてあり、これはヨーロッパの救済と今後の制裁に余地を残しておくためです。

さらに米国は、②のロシア中央銀行の資産凍結という「金融の核爆弾」と呼ばれる手段を行使しました。
これによって、ロシア中央銀行は現在進行中のルーブル売りを食い止めるための為替介入の武器を失いました。
中央銀行が通貨安を食い止めるためにはドルやユーロを売ってルーブルを買しか方法はないはずですが、この武器である外貨を凍結されてしまえば手も足もでません。
そこで中央銀行の政策金利を20%(日本はゼロ金利ですぞ)というトンデモ高利に引き上げていますが、焼け石に水です。

次に③④の輸出入規制です。

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NHK

●輸出規制に含まれる製品、
① トラックやトラクターに使われる高出力のディーゼルエンジン
② 産業用機械の制御に関わる半導体
③ それの半導体製造装置
④ 通信装置やセンサーなど
⑤ 高級ブランド品

特にロシアにとって手痛い打撃は、それでなくてもコロナで品薄の半導体が手に入らなくなることで、米国は中国からのロシアへの半導体輸出にも2次的制裁(セカンダリー・サンクション)をかけようとしていますから、もはやお手上げです。
そのうえにその工作機械(マザーマシーン)にも制裁がかけられていますから、これでロシアの数すくない製造業である兵器産業・航空機産業は遠からずニッチもサッチもいかなくなるはずです。
といっても、ウクライナであれだけコテンパンにやられては買い手が激減するでしょうが。
いまですらウクライナ侵攻軍は部品払底で整備不良の山なのに、今後どうする気なんでしょうかね。
このことだけでも、ロシアに長期戦などムリムリ。

ちなみに余波で、この半導体・製造機械の輸出規制は、ロシアが北朝鮮に流していたミサイルや核兵器部品がいかなくなる、という副作用も生み出しました。
これで正恩は自由に弾道ミサイルを作ることが、イモヅル的に困難になったことになります。ざまぁ、です。

⑥プーチンの取り巻きのオリガルヒが大好きな高級車や高級衣料贅沢な所品にも輸出規制がかけられていますから、プーチンの愛好する160万もするダウンなどこれからは買えなくなるはずです。

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まぁ、プーチンはイーロン・マスクを上回る世界一の大富豪だそうですから、こんな高級ブランド品なんぞ腐るほど持っているでしょうが。
多くのロシア兵が前線で凍傷に罹って指を切除しているというのに、いったいなに考えてるんだか、この男。
もっとも筑波大の中村逸郎氏は、あの大集会は合成映像で、本人はウラル山脈南の秘密都市に逃げていると言っていますが。

④の輸入規制も同じく、ロシアを世界市場から切り放して、侵略の財源である外貨獲得を防ぐのが目的です。

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NHK

前述したとおり、ヨーロッパには抜け穴を提供してあるように、⑦合弁会社の資本撤退は各国の足並みが揃っていない分野です。
日本はサハリンでの石油天然ガスプロジェクトに国や大手商社も深く関わっていたために、今後も関係を維持するとしています。
これについては次回に詳述します。

⑧のロイズの保険拒否は、日本での扱いは小さいですが、大きな打撃をロシアに与えるはずです。
保険・再保険がないと航空・海運が動かなくなるからです。

「【ロンドン=篠崎健太】英政府は3日、ロシアの航空・宇宙関連企業を英国の保険市場から排除する方針を発表した。ウクライナを侵攻したロシアに対する経済制裁強化の一環で、英国の保険や再保険サービスの利用を「直接、間接に禁じる」と説明した。世界の損害保険市場の中心地である英国から締め出されればロシアの航空会社の運航に支障が出る可能性もある。
英ロンドンには世界最大級の再保険市場であるロイズ保険組合があり、航空分野のリスクも活発に引き受けている。締め出されればロシアの航空・宇宙産業は英国以外でも損害保険利用のハードルが高まりそうだ。スナク英財務相はツイッターで「グローバルな保険・再保険市場へのアクセスを著しく制限するものだ」と説明した。
英政府は施行するための立法作業を今後進め、制裁の日程や具体的な対象などの詳細は追って公表する。財務省は声明で「ロシア経済を国際金融システムからさらに孤立させる」と強調した」
(日経3月4日)
英、保険市場からロシアの航空企業排除へ 制裁強化: 日本経済新聞 (nikkei.com)

この分野は、英国を本気で怒らせるとどうなるかいう見本を見るようです。
英国は金融でメシを食っていますから、ロイズ保険組合に強い影響力を持っています。
ロイズが保険・再保険を拒否すると、ロシア向け保険が全部使用不可能となり、海運、航空が運行不能になります。
たとえばロシア行き航空会社の海外便は、保険が効かないロシア上空を飛ばないために全部運休です。
いま唯一運行されているロシア便は、中東系だけのはずです。

ロシアの航空会社の航空機もリースが効かなくなりますから、全部返却せねばなりません。
鉄道路線もフィンランドが通過を拒否したため、ロシアからEUへの鉄路は完全閉鎖状態となっていま。
船舶は保険がない港には寄港しませんから、世界中の船舶はロシアに寄港することを拒否するでしょう。
ロシア船籍の船も、保険効かないので同じです。
来てくれるのは密輸業者の船ばかりでしょう。

このような経済制裁の影響は、ダイレクトにロシアの国民生活を直撃し始めました。

「ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシア国民の生活費が急騰していることが、新たなデータによって示された。
公式な統計では、砂糖など一部の生活必需品の価格が1週間で14%も跳ね上がった。
ロシアではインフレ率の上昇も見込まれている。通貨ルーブルはウクライナ侵攻の開始以降、急落している。
ロシア経済省は23日、年間インフレ率が、今月18日時点で前年比14.5%に跳ね上がったと発表した。2015年後半以来の高水準となった。
連邦国家統計局によると、砂糖の値段は一部地域で37.1%も上昇。平均でも14%上がった。
砂糖は食料保存や酒造でよく使われる。同統計局によると、その砂糖が、ここ1週間で最も値上がり幅の大きな品目だったという」
(BBC3月25日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60871364

反戦デモの波は全員検挙というおそるべき恐怖政治でいったんおさまりましたが、次に来るのは国民の生活苦デモです。

かくて、ロシアはまんべんなく包囲された巨大な孤島となってしまいました。
気がつけば、十重二十重で包囲されているのは、キーウではなく自分たちのほうだったのです。

中国はこのフルボッコ状態のロシアを見て、台湾侵攻を声高に叫ぶことを多少控えるようになったようです。
これが唯一のウクライナ戦争のよかったことです。

 

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ウクライナに平和と独立を!

2022年3月28日 (月)

ドイツ、ロシア産エネルギーと完全決別へ

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ウクライナでは戦局が逆転して、ロシア軍が守りに入り、ウクライナ軍が攻勢に転じています。
まるでサッカーのカウンターアタックのように、戦争は一気に局面が変化することがありますが、どうやらそれが今のようです。
ロシア軍としては、本来なら戦線を縮小して、今前線に出して損傷率が3割に登った部隊を下げて補給と休養させねばなりませんが、プーチンが後退を許さないために前線に張り付けられたまま徒に消耗を続けています。
短期の戦争を予定していたために防寒具の用意がなく、ロシア軍兵士の多くが凍傷にかかってしまっているようです。
食料、燃料、弾薬はすでに底を尽きつつあって、継戦能力が枯渇しつつあります。
遠方からスタンドオフミサイルを撃っているのはその裏返しです。

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『米中戦争』の著者である元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は、このように述べています。

「ロシア軍の攻撃から防御への転移はロシア軍の損耗が30%を超える部隊が多いことを意味する。
ロシア軍の作戦は失敗した。
今後、プーチンが使う手段としては、大量破壊兵器の使用だ。化学兵器、生物兵器、最終的には戦術核兵器だ。失敗し、傷ついたプーチンよ、早く去りなさい!」
https://www.facebook.com/yoshikazu.watanabe.96155/posts/3183428178566907

ただしこのように追い詰められたプーチンが、戦術核や化学兵器を使う可能性が高まったともいえるわけで、気が抜けない1週間となりそうです。

さて、西側陣営が一丸となって実施しているロシア制裁は、自らも「返り血」を浴びる結果となっていますが、「返り血」ひとつない制裁は効かないのでとうぜんのことです。
最大の影響を被ったのがドイツでした。
ドイツは、ロシア産エネルギーからの完全撤退を表明しました。
やる時はやる。そしてやる以上は、リクツが立てば徹底的にやらねばやった気になれない。
脱原発と言えば一気にゼロを唱え、再エネと決めたら国民の迷惑を省みず突進する、そしてロシアに頼りきっていたエネルギー構造も御破算にしてしまう、極端から極端へ、というゲルマン流全開です。
我々ぬるい日本人としては、もう少し穏やかにできないかねとは思いますが、ま、いいか。
理由はいうまでもなく、ロシアのウクライナ侵略ですが、なんせロシアへのエネルギー依存率を3割から2024年には1割までに落とそうというんですから、ハンパない。

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ロシア依存の代償を払う欧州 原発か石炭か、苦渋の選択:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

「ベルリン=石川潤】ドイツ政府はエネルギー調達でのロシア依存からの脱却を急ぐ。緑の党のハベック経済・気候相は25日、ロシアに過半を依存していた天然ガスの輸入について、2024年夏にも脱ロシア依存が可能との考えを示した。石油や石炭でも調達の大胆な切り替えを進めていく。ただ、ロシア以外の調達源は限られており、資源の争奪戦に拍車がかかる恐れもある。
ドイツのガス調達のロシア依存の割合は、調達先の切り替えなどでウクライナ侵攻前の55%から40%にまで下がっているという。今後も調達の多様化や再生エネルギーの拡大などが進めば、24年夏にはロシアからの輸入割合を1割程度にまで下げられるというのがドイツ政府の見立てだ。
石油についてもロシアからの輸入を夏までに半減し、年末にはほとんど依存していない状況を目指す。石炭は秋までにロシア依存から抜け出せそうだという」
(日経3月26日)
ドイツのガス輸入、2024年にも脱ロシア依存 経済相表明: 日本経済新聞 (nikkei.com)

なぜ私が、ほー、そこまでやるのかと驚いている理由を説明しておきましょう。
ドイツほど見た目と内実に激しい落差がある国はありません。
外目にはドイツは、原発ゼロを目指し、その代替とし再エネに異常な愛情を注ぎ、50年の温室効果ガス排出量をネット(純排出量)ゼロにするという欧州目標に合意した輝ける環境先進国です。
でも実は嘘は言っていないが、ホントのことも言っていないという看板倒れなのです。

実態はといえば、EU内の気候変動対策を強化する議論の足を常に引っ張ってきた張本人がこのドイツでした。
2018年6月、EUでは30年の一次エネルギーに占める再エネ目標比率引き上げの議論を行いました。
その時、この再エネ目標引き上げに激しく抵抗したのがドイツです。
他のフランス、イタリア、スペインなど諸国の多くが35%を提案した中で、アルトマイヤードイツ経済エネルギー相は、こう言ってのけたのです。

「再エネ比率を現状の15%にするための国民負担は年250億ユーロ(3兆円)に達した。現実的、達成可能な目標を設定すべきだ」

そりゃあんたの国の財政はそうかもしれないが、それは北海の海洋風力発電に頼ったために長距離の送電網を作らねばならず、予算がパンクしたからでしょうが、ほらほらまたドイツが勝手言ってらぁと他国はため息をついたもんでした。
原発を止めると言っては、風が吹きすぎて電気が出来すぎれば周辺国に無理に押し込み、風が吹かなければ周辺国に頼りきるといった自己チュー体質に周辺国は悩まされてきましたからね。
結局、泣く子とドイツには勝てませんで、削減目標値は引き下げられてしまいました。

また2050年の温室効果ガスの純排出量をゼロにする長期目標設定の議論の時も、西側先進国で唯一反対したのも「環境大国」ドイツでした。
それは後述しますが、石炭・褐炭火力と手を切れなかったからですが、まぁそうとうにイメージと違うでしょう。
いまでもドイツが手本、ドイツが先生と思っている老ボケ元首相5人組の皆さん、現実を見なさいよ。
原発と火力を同時に止めることは不可能ですよ。
2014年に、ドイツ副首相兼経済・エネルギー相だったガブリエルが、「脱原発と脱石炭を同時に行うことはできない」と発言したことくらい知ってから言いなさいよ。

では、なぜドイツがEU内の環境抵抗勢力になってしまったのでしょうか。
第1の理由は、電力の発電量の約4割が国内産石炭・褐炭火力発電だからです。それも褐炭です。
褐炭(かったん)とは、「石炭の中でも石炭化度が低く、水分や不純物の多い、最も低品位なもの」(ウィキ)のことで、露天掘りで採掘が可能ですので、ドイツでは大量に取れるのです。

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ドイツの石炭・褐炭火力発電所
石炭火力を2038年ゼロに、成長と脱炭素の間で苦悩 | 脱炭素時代に生き残る会社 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

ですから、ドイツでは伝統的に工業のエネルギー源を石炭と褐炭に頼ってきました。
とうぜん歴史的な既得権もあり、そこで働く炭鉱労働者も大勢います。
これを閉鎖することは社会問題を引き起こしますから、本心では絶対に化石燃料を廃止したくないのです。
褐炭だけで23.8%もあって、石炭の18.1%を凌ぎ、合わせてエネルギー源の4割を超えていました。

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ドイツのエネルギー源別発電量‐ドレスデン情報ファイル (de-info.net)

ならばそうならそうと正直に、あたしの国は石炭・褐炭火力はやめられないんです、ごめんなさい、と言えばいいのですが、そうは言わないのがゲルマン魂です。
というか言えなかったのです。本来その代替となるべき原発をメルケルが22年までに脱原発を決めてしまったために、代替エネルギーがなかったからです。
しかたなくドイツは2038年まで、国内の褐炭火力発電所の利用延長を決めたといういきさつがありました。
1990年代まではエネルギー源の半分を頼っていた石炭・多褐炭火力を、2038年にはゼロにしてしまうというのですから、こちらもスゴイといえばスゴイ。

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石炭火力を2038年ゼロに、成長と脱炭素の間で苦悩 | 脱炭素時代に生き残る会社 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

原発止めて、石炭・褐炭火力止めて、代替エネルギーはカネ食い虫にして気まぐれな再エネだけ。
完全な行き止まり状態ですが、苦し紛れかどうなのかここでメルケルが思いついたのが、CO2排出量が少ないLPGをロシアから大量輸入することだったわけです。
ああとうとう悪魔と手を結んじゃった、と今になるとそう思いますが、当時原発をゼロにして石炭・褐炭火力を減らすという解きようがない知恵の輪に取り組んでいたメルケルは、ハタと膝を打ってプーチンを救世主と崇めてしまったようです。
そしてロシアからなんとLNGの5割超もロシア一国から買う、という悪魔との契約を結んでしまいました。
なんという冒険、なんという暴挙、なんという愚挙。
こうしてドイツのロシア服従路線が始まったのです。

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ウクライナ危機とエネルギー問題

そして今や悪名高き存在となったノルド・ストリーム2の建造に着手します。
いちおう政府とは無関係の民間企業が進める商業案件であり政治は関係ないとドイツ政府は言い張っていますが、このパイプライン会社の社長は元首相のシュナイダーですし、政治判断で建造している国策ですから無縁のはずがありません。
しかもドイツほどではありませんが、オランダ、オーストリア、フランスも、このプーチンの甘い罠に相乗りしてしまいました。
ノルドストリームは2011年に操業を開始し、ウクライナ侵略前にはロシアから欧州向け供給の3分の1はノルド・ストリーム経由で、そしてその輸送力大幅増強を狙ったのが今ストップがかかったノルド・ストリーム2なのです。
今回は地上を通すと国家間の紛争となるので、全行程を海中に沈めています。

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欧州覆う、ロシアのガス網 独ルート「ノルド2」完成へ:朝日新聞デジタル (asahi.com)

といっても、すぐに止めたら国民生活が立ち行かず、製造業は瀕死となりますから、カタールと天然ガスの長期契約を結ぼうとしたり、LNGの中継基地を作ったりし始めています。
ただこんなエネルギー供給の多極化は、日本が数十年前から営々とやってきたことですから、なにを今さらで、そうそう簡単にはいかないはずです。
時期が悪い。ウクライナショックで売り手市場になっている今頃になって、分けて下さいと言っても足元を見られるでしょうから。

「ただ、ショルツ首相はエネルギー調達の転換は「今日明日でできることではない」と語り、当面はロシアからのガス輸入が必要という考えも示していた。
ロシアからの調達の割合を強引に引き下げようとすれば、資源の奪い合いが生じて、インフレに拍車がかかる恐れもある。全体の供給量に限界があるなか、経済力が相対的に弱い国々へのしわ寄せも強まりかねない」
(日経前掲)

日経は、「脱ロシア依存を着実に進めるためには、再生エネルギーなどほかのエネルギー源の確保と組み合わせることが欠かせない」なんて再エネにヨイショしていますが、なに原発を動かせばいいだけのことです。

 

 

2022年3月27日 (日)

日曜写真館 宮嶋や春の夕波うねり来る

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青海は にほひぬ宮の 古ばしら 丹なるが淡う 影うつすとき 牧水

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廻廊に夜の明やすし厳島 涼菟

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廻廊を潮くぐり鳴る干潟かな 爽雨

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厳島に一夜やどれば鶯は止まず鳴きたりこゑなつかしも 茂吉
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宮嶋や春の夕波うねり来る 子規

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若葉銀杏がすくすくと伸びて雲もなし 山頭火

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拝殿にぬかづく巫女や花吹雪 小酒井不木

 見舞いの帰りに宮島に旅してきました。

 

 

2022年3月26日 (土)

トランプの失敗

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旅から帰ってまいりました。山路さん、留守をありがとうございました。
旅先で拝読していて、特に興味深かったのはトランプに対しての評価でした。
特に私が回避していたきらいがあるトランプに対しての手厳しい評価と、バイデンに対する一定の肯定的批評はなるほどと唸りました。
というのは、今回のウクライナ侵略において、トランプ的外交政策の根本的欠陥が見えてしまったのです。
保守系は(私を含めてですが)、トランプに点が甘く、トランプのウクライナでの失敗を見過ごしている傾向がありました。
バイデンの対応にミスがないわけではありせんでしたが、バイデンをこき下ろす発言に終始したトランプの外交センスの悪さは目も当てられないものでした。

一方バイデンがとった同盟重視路線は見事に成果を上げ、自由主義陣営は史上かつてない団結を見せロシアに対抗しています。
バイデンに追随しているだけの岸田氏ですら、ゼレンスキーから国会演説で「アジアで唯一の制裁国」という晴れがましい評価を貰ってしまいました。

中国は、初めに見せたロシア支援の色気が祟って、今やG7とNATO首脳会談で「ロシア支援国」という分類に入れられてしまいました。

これは現状で「敵国認定」されたに等しいもので、以後中国の台湾政策にとって大きな妨げになることでしょう。

トランプは、侵攻初動で「プーチンは天才だ。愛国者だ」と放言してしまった致命的失敗をしでかしました。

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中央

いかに気楽な仲間内のラジオ番組だからといって、自由主義陣営の指導者であり、次期大統領候補と目されている人物が言っていいことと悪いことがあります。
私もこれを聞いてまたメディアの切り取りをされたのかと思ったのですが、どうもそうではないようです。

「トランプ氏は前日のテレビ番組でロシアとウクライナ状況を見ながら「『これは天才的だ』という言葉が出てきた」と語った。続いて「プーチンはウクライナの相当広い地域に対して『独立した』と宣言した。立派だ」とし「これはどれほど賢いことか。そして進入して平和維持軍になるという」と話した。
プーチン大統領が前日、ウクライナ東部の親露武装勢力が掌握した地域ドネツク・ルガンスクの独立を承認し、該当地域に「平和維持」を名分にロシア軍を進入させたことに言及したのだ。
トランプ氏は「それは私が見た中で最も強力な平和維持軍だ。私が今までに見たものより多くの陸軍タンクがあった」とし「彼らは平和を守るという。考えてほしい。この男は本当に要領がいい」と語った」
(中央2月23日)
トランプ大統領「プーチンは天才、要領がいい男…私が大統領なら侵攻できなかった」 | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)

後に修正をかけますが、そもそもプーチンの意図を「平和維持軍」などと見誤り、東部地域に限定したものだとトランプは思っていたようです。
甘いと言われてもしかたがありませんし、感想を求められたサキ報道官から「プーチンを天才と呼ぶような人物に言うことはない」とバッサリと斬られています。

むしろトランプ的外交の根本的限界が見えてしまったのです。この天才放言は、マイク・ペンス元副大統領や、トランプの元ホワイトハウス国家安全保障顧問ロバート・オブライエンなどの共和党幹部の厳しいロシア非難と対照的で、トランプが共和党内でも浮きあがってしまったことを物語っていました。
もしトランプが現役大統領だったならば、NATOとは方針が大きく乖離し、西側陣営は方針を統一できないまま、ウクライナ支援は不調に終わった可能性があります。

彼は正恩(またICBMを発射したようですが)のようなミニマッドマンなら余裕をもってディールできるのですが、プーチンのような正真正銘の真の狂人が相手となると、彼のマッドマンセオリ砲は無効なばかりか、逆に味方を混乱させ、結果として自由主義陣営の団結を阻害します。
トランプのマッドマンセオリは一種の瀬戸際外交ですから、テーブルのチップをとんどんと嵩上げしていき、本気でこの男につきあったら身の破滅だと思わせるところがミソなのです。
修行不足で、世界外交の檜舞台に登場したい欲もあった正恩はこれでコロリと直接対話にまるめこまれ、気がつけば事実上の核開発凍結をさせられてしまいました。
しかしこの方法の危うさは、相手がトランプという術者を上回るマッドマン、しかもリアルマッドマンだった場合、まったく通用しないどころか逆に状況を悪化させるのです。

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時事

今回のウクライナ侵略について、トランプはワシントンイグザミナー紙にこんなことを述べています。
washingtonexaminer  March 15, 2022
"'I thought he was negotiating': Trump didn't think Putin would order Ukraine invasion"

「私は彼が交渉していると思った」トランプはプーチンがウクライナ侵略を命じるとは思わなかった
「私は驚いています。私は彼が国境に軍隊を送ったとき、彼が交渉していると思った。
私は彼が交渉していると思った」とトランプは火曜日の夜、フロリダ州パームビーチにある彼のプライベート社交クラブと政治本部であるMar-a-Lagoからの幅広い電話インタビューでワシントンイグザミナーに語った。
「交渉は難しいが、賢明な交渉方法だと思った」
「私は彼が、他の誰もがアメリカ合州国や、彼らがディールする傾向がある他の人々とやっているように、グッドディールをするつもりだと思った。
私が来るまで、私たちは良いトレード・ディールを結んだことはありませんでした」とトランプは付け加えた。
「その線を彼は超えてしまった。
私は彼が変わったと思います。世界にとって非常に悲しいことです。彼はとても変わった」
(ワシントンイグザミナー3月15日)
https://www.washingtonexaminer.com/news/campaigns/im-surprised-trump-didnt-think-putin-would-order-ukraine-invasion

トランプ外交の特徴は、外交をすべからくネゴシエートとディール(駆け引きと取引)で考えようとします。
プーチンに対してもそうで、彼は中国という主敵に対して、米露日である種の提携が可能だと踏んだようです。
この考え方は日本の保守派の一部にも強い影響を与えており、今回まるでロシアの代弁者に堕ちたような発言がいくつか見られました。

それはさておき、トランプは安倍と組んで、プーチンを反中陣営に引き込もうと意図した形跡があります。
たとえば、トランプがやったINF(中距離弾道ミサイル廃止条約)がその典型で、ロシアの条約違反を非難してINF条約そのものを葬ってしまい、中国がもっとも嫌がる中距離弾道ミサイルによる包囲網を作ろしとしたのです。
これは潜在的に中国に対する脅威を認識しているはずのロシアとのうまいディールが成立した事例です。

一方、トランプはプーチンとカードゲームの駆け引きをしているつもりですから、このインタビューにもあるように、ノルドストリーム2を制限しろと主張したのはオレのほうがバイデンより先だとも言っています。
バイデンのほうがロシアに甘かったじゃないかというわけですし、それはその限りではあたらずとも遠からずなのでしょうが、ではノルドストリーム2を締めさせた後にどうするのかという先行きを明らかにする視点がトランプには致命的に欠落しています。

おそらくトランプとしては、NATOを締め上げて追い詰め、国防費2%を達成させる腹づもりだったのでしょうが、その前にNATO諸国は大のトランプ嫌いに転じてしまいました。
ちなみに2%増額を言う場合でも、米国だけが負担しているんだぁとやりますから、反感を買うだけでした。
メルケルとは犬猿の仲で、下のG7の写真のように、中に立った安倍氏がまぁまぁと仲裁するありさま。

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BBC

同じ言うのでも、ロシアの脅威を言ってから説得すればいいものを、トランプ自身がプーチンの2014年クリミア侵攻から始まるウクライナへの野望をまったく読んでいないのですからしゃもない。

かてて加えてトランプは、NATO第5条という自動介入条項からの離脱をほのめかすような強迫的態度をとってしまい、NATO首脳にはトランプ米国に対する深い不信が生じてしまいました。

「ドイツのメルケル首相が、「ヨーロッパは、自分たちの将来を自分たちで決めるべきであり、アメリカに頼るべきではない」と語りました。
メルケル首相は、10日日曜、ドイツの公共放送ARDのインタビューで、アメリカのトランプ大統領が、G7主要7カ国の首脳会議の首脳宣言を承認しなかったことについて、「気がめいる」としました。
トランプ大統領は、ツイッターで、ヨーロッパの同盟国を批判し、「アメリカは、深刻な財政危機からヨーロッパを守ってきたが、彼らは貿易において、非論理的な行動を見せている」と主張しました」
(Pars today2018年6月11日)
ドイツ首相、「ヨーロッパはアメリカに頼るべきではない」 - Pars Today

メルケルは今回のウクライナ侵略を招いた陰の主犯ですが、「アメリカは頼りにしない」とまで彼女に言わしてしまったトランプもトランプです。
つまり彼の就任以来、ヨーロッパは米国の言うことに聞く耳をもたなくなってしまっていたのです。
だからバイデンに、ヨーロッパに対する演説で「合衆国は帰ってきた」と言わせてしまい、大向こうからの拍手を得させることにつながるわけです。
このあたりはよくトランプ=安倍と並列されますが、人あたりがよく、メルケルから信用を勝ち得た安倍氏の外交方針とは大きく違っていますから、トランプの属人的個性の範疇であるようです。

とまれ、このようなヨーロッパとの溝を埋めきれずに、今回のウクライナ侵攻を迎えていたら、そうとうに悲惨な状況であったことだけは確かだったことでしょう。
トランプは昨今、かつての副大統領のペンスをこき降ろしていますが、ペンスなら安心して共和党大統領を任せられます。

さて、簡単にウクライナ情勢を。
キーフ包囲が緩んで、ウクライナ軍はキーフ西側と東側方面のマカリフとモシュンを奪還し 前線を構築し始めています。
ウクライナ軍はここに温存していた予備兵力を投入しており、戦いの天王山と目しているようです。

ロシア軍の包囲が緩んだのは、逆包囲される危険性が可能性が出たからだと思われます。
ここで逆包囲をかけられると、ロシア軍包囲部隊は砲撃やミサイル攻撃をすることが不可能となるだけではなく、補給路を断たれて孤軍となります。
大戦中の東部戦線でも稀にあったことですが、薄い包囲陣を作って膠着すると、その外側から防御側に逆包囲されてしまって敗退したことがあります。
キーフ攻略軍は、今かつての悪夢の構図にはまりつつあります。

また、降伏勧告を蹴って戦い続けているマウリポリはいまだ持ちこたえており、ロシア軍が狙う東部とクリミアをつなぐ意図を阻み続けています。
ベルジャーンシク港では、ロシア海軍の強襲揚陸艦が同時に2隻が撃沈、1隻大破という大損害を食ってしまいました。
これで海軍歩兵によるオデッサ侵攻はそうとうに厳しい情勢となりました。

ロシア軍は中将がまたひとり戦死し、わずか1か月に満たない戦闘で将官6名が相次いで戦死するという異常事態となっています。
またロシアは占領地からウクライナ国民6千人をサハリンに強制移住させたようです。

ウクライナ外務省によりますと、南東部のマリウポリに住むおよそ1万5000人がロシア側から強制移住の対象とされ、パスポートなど身分証明書を没収されたうえで少なくとも6000人が実際に移住させられたと主張しています。
また、ウクライナ国防省によりますと、市民らは移住先としてロシア極東のサハリンなどを提示されているということです。
移住させられた市民には職業をあっせんする機関から仕事を紹介されますが、2年間ロシアからの出国を禁止されるということです」
(テレ朝3月25日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8fd1926999e31e05bee762eeacb373a722d65fbe

民族の強制移住政策は、スターリン時代に盛んに行われた非人道的政策でした。
これが再び現代に起きたるとはにわかに信じられないほどです。
ロシアは急速にスターリン時代に逆行しつつあります。

 

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ウクライナに平和と独立を!

2022年3月25日 (金)

山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその3

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                                   プーチンは「反DSの英雄」などではない
                     妄想狂かつ「力の信望者」プーチンの真実を保守派は見誤るな 完結
                                                                                                           山路敬介

承前

■ 中国は火中の栗を拾うか?

 これは保守派言論人に限らず良く言われる事ですが、「経済制裁の果てには「中国の一人勝ち」に終わってしまう」というのがあります。
「(中国に)漁夫の利を与える事になりかねない」とか、「中国が抜け穴なので経済制裁はムダ」、「国際社会がロシアと戦う上で、中国の協力が不可欠」と言う議論もですが、どうも違うようです。あえていえば表題の「中国は火中の栗を拾うか?」といった問題の立て方自体もピントが合っていないみたいです。

中国は今、習近平を中心にした「ロシア支援派」と「ロシア切り捨て派」が並走していて、
現在は表面的には西側に寄ったフリをしつつ、裏からはロシアに対する経済的支援を行なっていく、という舐めた方針です。しかし、それもどうやら上手く行きそうにありません。

私たちが想定したより強力な「米国の原理主義」は中国側に再三の警告をしていて、最初から中国をロシアと一体不可分の体制にあるものと規定して冷徹に動いています。
そのうえで中国経済の形成に欠かすことが出来ない西側諸国との貿易取引を重視し、西側了解と国際ルールで一致して臨むかぎり中国は「お構いなし」の判定を得る事ができます。
バイデンは保守派からは親中的と言われますが、中国を「習近平以前」と「習近平の中国」とを分けていて、今の中国に対する二次制裁に躊躇する事はありません。

また、良くCIPS(人民元クリアリング銀行)を通して、ロシアに資金が流れる事が心配されますが、CIPSそのものがSWIFTのシステム上で動いているので、米側は資金の動きを捕捉する事が可能です。習の「ロシア支援派」が勝つならば、いよいよロシア危機を発端として世界を二分する経済戦争が始まりそうですが、朱鎔基元首相らが懸念して習の三選反対を公にするなど、ロシア破綻問題は中国の政治状況にも大きな影響を与えて行くでしょう。

おどろいた事に、中国の主要国営メディアがロシア軍の被害状況をウクライナ発表を基に報道し始めました。それまでは親ロシアで国民世論を誘導していて、中国民のほとんどがロシア寄りの考え方をしていた所へです。小紛紅たちは度肝を抜かれたようです。

しかしながら、中国のやっている事はどうにも予想がつきません。
先日の「習=バイデン会談」での習の眼目は台湾問題にあり、「ロシアを裏切らせたいなら、台湾問題で譲歩せよ」と言っているように見えます。米側の報道では、「交渉ではなく、明確な米国からの警告だった」という論調です。

習近平はあまりバイデンを舐めない方が良いと思います。なんというか、民主党的原則主義者としてのバイデンは、トランプよりも遥かに武力に寄り易い性質を強く持っているとする識者が少なくありません。
バイデンは事故で妻と子供を亡くし、そのようなリベラル目線で語られますが、長い議員生活の中でほとんどの武力的対抗措置に賛成していて、初当選の時分からかなり激しい政治的闘争を切り抜けてきた度胸も持っています。

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【分析】プーチン大統領 軍事侵攻決断の裏側 "インナーサークル"(側近)の実態 - 国際報道 2022 - NHK

■ プーチンの足元が揺らいでいる

 プーチンの国内支持基盤がかなり離れて行っているようです。
その第一は「シロビキ」(軍・警察・諜報機関等)で、支持は継戦に欠かす事の出来ない存在です。

まずビックリしたのは侵攻前に「全ロシア将校協会」が公開でプーチン辞任を突き付けた事でした。(ロシアの退役将校、ウクライナとの戦争に反対を表明 (ukrinform.jp) )
最初は事の真偽もわからず、しかし内容は正鵠を得てしっかりしていて、いかにも軍人らしい文脈で理路整然としていると思っていました。かと言って日本の報道にはまったく出て来ない。
そこで耳にしたのは馬淵睦夫氏の「あれは、フェイクです」との言葉でした。
それからしばらくして本ブログでも記事として取り上げられ、「やはり」との思いでした。

「フェイクです」とする馬淵さんファンには悪いですが、あれは本物でした。
なぜなら、公開書簡をまとめたイヴァショフ上級大将自身が、主旨やら動機をYouTubeや他の媒体でアップして説明しているからです。
また、将校協会のイヴァショフは元々反プーチンで、「大統領に成りたがった私怨によるもの」「将校協会に該当する団体は複数あり、全ロは最小組織」などの記事も見かけましたが、それらこそフェイクと断じられるものでした。

いきなり脱線してしまいましたが、将校協会に限らず、諜報機関の幹部が自宅軟禁に処せられ、将軍クラスを前線に送り4人も戦死させる、公開の場でSVRの長官がプーチンにおびえて答えられないなど、歯車が狂っている事は明らかでした。

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プーチン大統領の側近たち この戦争はどういう顔ぶれが遂行しているのか - BBCニュース

第二の新興財閥からも、続々と公然にプーチン批判が出てきています。
彼らはグローバリストであって、現代資本主義の中で富を得て来ました。それが他国で豪華スーパーヨットを差し押さえられ、マンション、豪邸、銀行口座などが使えなくなって西側との商売が上がったりなので、これは当然でしょう。

第三のメディアにしても、生中継で反戦プラカードを持った女性が登場して話題となりました。
彼女がYouTubeで投稿した動画がまた刺激的でした。こうした状況はこれだけではなく、他にも複数の類似事件が起こっています。ただ単にウソの報道をする良心の呵責に耐えられなくなって退職したメディア社員まで含めると、かなりの数にのぼるようです。

プーチンの支持率は71%などと眉唾の数字が出ていましたが、プーチンは例え戦争に勝ったとしても長くない政治生命です。戦勝で制裁を解除されることはなく、ロシアが国際法や司法判決に則った責任を取るまで延々と続くからです。
どうすれば制裁解除できるか?はまた、プーチン後の政権と西側が決める事になります。
そして、プーチン後のロシア復興期に最大の北方領土返還の機会が巡ってくるでしょう。

                                                                                                                         了                           
                                                                                                                                  文責 山路 敬介

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ウクライナに平和と独立を!

2022年3月24日 (木)

山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその2

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                                 プーチンは「反DSの英雄」などではない
                   妄想狂かつ「力の信望者」プーチンの真実を保守派は見誤るな その2
                                                                                                           山路敬介

承前

■ プーチン外交と内政の誤りが冷戦後のロシアを「失敗国家」にした

 プーチン外交は小国へ圧力をかける事や戦争を仕掛ける以外、まるで能力がありません。
プーチンはチェチェン紛争への貢献で政府内の地位をあげ、大統領になってすぐに足掛け10年にわたる戦争をロシア政府の勝利のうちに終結させました。
戦勝による支持率の上昇に味をしめ、以降はジョージア戦争、シリア内戦介入、IS攻撃、カザフスタン大規模デモ鎮圧、クリミア併合へと続きます。

この中で西側諸国が一応納得出来るのはIS掃討くらいなもので、あとは全て国際社会から轟々たる避難を浴びる類のひどい戦争ばかりです。そのIS掃討でも有志連合には加わっていません。

とりわけプーチンの「戦い方」はKGB流のむごいもので、人権蹂躙や、非戦闘員の人命を奪う事に躊躇せず、汚い言い繕いとプロパガンダによって正当化する虐殺の数々は、まさに「人殺しの独裁者」の面目躍如といった体でした。旧日本軍の戦い方を知る我々には、とても理解できる範疇にありません。

冷戦後、二大国時代を懐古する未練タラタラだったロシアの外交エリートたちは、欧米からの資金援助の少なさに不満をいだき、ゴルバチョフが敷いた民主主義と親欧米路線を転換させ始めました。
西側諸国の側も一向に民主化しないロシアに不信感を持って距離をとる方向になり、そこに現れたのが戦争屋のプーチンです。

良く一部保守派はプーチンを「戦争に負けたことがない」とか、「軍事的には間違いなく「一流の大国」だ」とか言ってもてはやす傾向にありますが、むしろその事がプーチンの残虐性と相まって西側社会に受け入れられない最大の原因となったものです。
プリマコフ外交の「多極化世界の創造」に範をとったプーチンは、それでも外交を諦めたわけではありませんでした。
旧ソ連の小国たちが低迷するロシアに見切りをつけ、NATOやEU加盟に色気を見せるようになると、プーチンは成長株のASEANに進出すべく積極外交を行いました。旧同盟国のベトナムとの問題を処理し、インドをも足掛かりに地域で立派な地位が築けるものと考えたのです。

ところが、プーチンはここでも失敗します。
アジア諸国では中国マネーが跋扈し、戦後からの援助や人的・技術的交流によって高い日本の位置もあり、つけ入るスキがありません。また、たとえ矛盾を抱えていても、多くのアジア諸国にとって米国との関係は非常に重要であり、常に良好な関係を維持しようとします。

中国の台頭に備えるASEAN諸国は継続的に防衛力を強化しつつあり、コストパフォーマンスに優れたロシア製の武器は良く売れました。
しかし、近隣の敵対する国に対しても同じようにバンバン売る姿勢が仇となります。
武器貿易は互いの利益が一致する分野ではありますが、同時にロシアへの不信の源となっています。そして現在はただの「死の武器商人」でしかないのが、アジアでのロシアの立ち位置です。

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ポストセブン

そうした外交関係の閉塞感があって、良いことは原油価額の値上がりだけでした。
それでも一時は「日本との経済関係や協力によってこそ、中国の台頭に備えられ、国際社会との摩擦も回避できる突破口となる」との正しい認識が広まりました。トランプが大統領だったのも、最高のチャンスでした。日本との和解はロシアにとって、北方領土の価値などよりもはるかに有用なものです。

けれどプーチンには最初から(二島であれ)返還する意思はなく、結果的に安倍元総理は騙されました。騙されたとはいえ、ロシアの状況を正しく見て、プーチンにロシアの為にする合理的な判断力さえあれば、少なくも二島返還が実現出来ると踏んだ安倍元総理の判断は理にかなったものでした。
ところがプーチンがやらずぶったくりを決め込んだために、すべておじゃんになりました。この件で最大の国益を得るチャンスを逸したのはロシアであり、日本ではありません。
ここでもプーチンは致命的と言えるほどの大失敗をし、最大にして最後のチャンスをフイにしてしまいます。国際社会への最後の窓口を自ら閉ざしてしまったのです。

つまるところ、どっちに出てもプーチンのロシアは失敗続きで良い目にあった試しがなく、仲間は北朝鮮やシリア、ベラルーシなど時代遅れの強権的な独裁国家だけに限定されてしまっているのが今のロシアの現実です。
韓国のGDPは1823(10億ドル)、ロシアは1500(10億ドル)です。それでいて、人口は韓国の三倍の1億5千万人あります。
ロシアの「国の豊かさ」がどういう状況であるか、数字で一目瞭然です。
広大な国土と豊富な資源、素晴らしい文化と豊富な人材がありながら、プーチンの政治は国家の富や国民生活向上に向かっていかず、最悪の状態を続けている極度の政治的音痴者だと知れるでしょう。

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■ 「プーチンはDSと闘っている」だって? 御冗談でしょう!

 DS(デープステート)とは、語る人の定義にもよりますが、主に米国において選挙で選ばれた政府とは別個のウラの権力体を指し示す言葉として、その手の保守派の間で好んで使われています。しかし、国の政策を左右する権力を所持しているにも関わらず、権力体に不可欠の総中央も、その中心となる人物も、誰も見た事がありません。なので、私にはDSという言葉は使えません。

しかしながら、「非公式な権力者集団」は当然あると考えていますし、それはいわゆる「グローバルエリート」たちで主に構成されているか、その最も近い存在だろうと思っています。昨今の米国にはグローバル全体主義とも言える現象も起きています。

ただ、こうした結果としての不均衡や不平等ないし不公平、それらががどこから来るか?という原因についてですが、これはもう「明示」と「公開」さえすれば政治資金は青天井で受け取れる、というアメリカの政治資金制度のせいです。それと公認のロビー制度も一因でしょう。
政治家は資金を出してくれる大企業や有力団体の使いっ走りになる事が必然で、それが今は資金をふんだんに出せるのが製造業ではなく、たまたま金融屋やテック企業、つまりグローバルエリート達であるというだけの話でしょう。
日本ならまぁ買収に近い有り様ですが。

話は逸れましたが、プーチンはそういうものと闘っているのでしょうか。
ぜんぜん違います。まだエリツィンが大統領だった頃、ロシアが民主化の波に喘いでいた時期からですが、プーチンは米国資本に買いたたかれようとしていた石油会社などを次々に国有化して防いだ事がありました。それで、ずいぶん米国や欧州から叩かれもしました。その事をもってして「グローバリズムに対抗した」とか、「愛国的だった」とか言う事は単純な美化か誤謬に過ぎません。

当時は共産主義ですから、民主化にともなってロシア人に払い下げられた国有企業がたくさんあり、振興のオリガルヒがたくさん誕生しています。共産主義時代からの古いオリガルヒもあり、そういう中から特に資金をふんだんに提供してくれるパトロン役の振興のオリガルヒのいくつかがプーチンのお気に入りで、贈賄による独裁政権特有の権益重視体制から生じた東側の典型的なワイロ大統領です。

それで、そのオルガリヒがやっている事は当然の事、欧米のグローバル企業がやっている事そのままです。いわばロシアのグローバルエリートたちで、そこから贈賄資金をふんだんに受け取っているプーチン自身が、まさかのDSやグローバル勢力等闘うべき敵、って図式になります。

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「プーチン宮殿」、ロシア野党指導者が告発も本人は否定 - BBCニュース

実際プーチンは22兆円の資産を保有していて、イーロン・マスクをしのぐ影の個人資産所持世界一である事が言われています。この事は大分前からパナマ文書やパンドラ文書、CNN、フォーチュン、タイム、数々西側メディアで報道されていましたが、ナワリヌイ氏のグループ「汚職と戦いの基金」が国内で20あるとされるプーチン宮殿の一部を内部写真付きで公開しています。
「南方プロジェクト」というロシア国内の大開発事業も「プーチンの為に行なった」と経緯を曝露、関連実業家が当時のメドベージェフ大統領に書簡を送り、その後エストニアに亡命し、「皇帝に従わなければ、奴隷になるしかない」と西側メディアに答えています。政府報道官は「知人の富豪の別荘」と弁解しましたが、そんなわけがありません。
柔道場までついて、上空は飛行禁止区域に設定され、警備代は国庫から支払われているのですから。

いずれにしろ「プーチンVSグローバル勢力」なんて馬鹿げた言説も聞き飽きましたが、根拠のない妄想に過ぎません。まさかプーチンが申告した「サンクトペテルブルクの74平米のマンション、ソ連時代の乗用車2台とオフロード車一台、年収は1615万円」などという詐話申告を信じる人はいないでしょう。
事実はグローバル企業や特権階級のエリートたちと、汚職体質ゆえに親和性がある大統領だと言う事です。

■ 国際司法裁判所の判断と、その大きな意義と効果

 国際司法裁判所は16日ウクライナの訴えのとおり、同国への侵攻を停止するようロしアに命じました。
即時停止の仮保全命令付きの判決です。
平たく言えば、一部保守派がプーチンに寄せる根拠となる主張がことごとく崩れ、プーチンや露軍首脳らを戦争犯罪人とする道を開くものです。もちろん、これでロシアがすぐに戦闘を停止する事は考えづらいです。

しかし、ロシアが主張する侵攻の動機の正当性が全て否定された事は重要で、侵攻を停止しなければロシアの孤立化が増々顕著となります。中国はこの決定に面と向かって背くものかどうか、そこも今後の注目です。
西側は判決で制裁に向けて正当性を得、いっそうの経済制裁の範囲拡大や金融制裁に向けて実効性を高めた事になります。中国やインドなどが今後制裁破りに加担すると、それらの国々への経済制裁を行なえる法的根拠を得た点も重要です。
今後、ロシアのような犯罪国家と取引する民間会社はますます減って、さらにロシア経済は冷え込む事になるでしょう。

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ロシア軍が子どもや女性、老人など400人が避難する美術学校を爆撃か マリウポリ市(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

プーチンは戦況を回復させるために人質をとり、故意に病院や学校、アパートや避難所となっている劇場や地下道を標的に爆撃をつづけ、多数の民間人死傷者を出し続けています。
それは計算があっての事で、ウクライナにいるたとえば橋下徹やテリー伊藤が呼びかけの対象とするところの、自らの人命以外、守るべき価値を知らない個人主義的自由主義者たちにまず敗戦世論をうながす手段でもあり、そういう意見に愛国者であるゼレンスキーが動揺する効果を狙ったものです。

そして、原子力発電所まで標的にするケースは前例のない暴挙です。
また「(戦争犯罪人として)プーチンやその配下の責任を問うべき」とする米国や英国、欧州各国の要請が高まり、国際刑事裁判所は「侵攻」にともなう捜査を開始しています。
今回の司法裁判所の判断が刑事判断に大きな影響を与える事も必至の状況です。

ともあれ、刑事司法は判決までに被告側の出廷が条件で「必ず責任を負わせる事が出来る」とも言い難く、ロシアが敗戦を認めるまでは実効性に乏しいと考えられるのも事実です。
しかし、ナチスの犯罪人はいかにして被告席に引っ張りだされたか? 
それはドイツ国民やドイツ国家自身が行なった事です。プーチン後の政権がロシア国民の為にマシな民主主義国となろうとし、再び国際社会に受け入れられる状態(つまり、経済制裁の解除)になるには、ロシア国民自身の手でプーチンを被告席に差し出さなくてはならない事になるのだと思います。

                                                                                                                           次回完結

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ウクライナに平和と独立を!

 

2022年3月23日 (水)

山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその1

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山路氏より寄稿を頂戴いたしました。3回連載で掲載します。
ありがとうございました。
なお、私は母の見舞いで3日間ほど留守にいたましますので、コメント承認が遅れますのでご了承ください。

 

                         プーチンは「反DSの英雄」などではない
                   妄想狂かつ「力の信望者」プーチンの真実を保守派は見誤るな その1
                                                                                                           山路敬介

 ウクライナ戦争において、過度にプーチン・ロシアの言い分を受け入れる傾向が一部保守派論者に見られます。
もちろん枕詞として「「侵略」ではあるが・・」とか、「先に手を出したロシアが悪い事は当然として・・」などと言う前提付きですが、そこには「善悪二元論では語れない」「ウクライナ戦争は2014年から始まった」などと、まことしやかな論調で論旨分散してロシア寄りの話に展開しているケースが見られます。
そしてまた、大日本帝国が作った満州国との類似性を指摘したり、真珠湾攻撃を引き合いに出して現在のロシアの立場と準拠させるなど、目も当てられない粗雑な言論であふれています。

どのような屁理屈を並べようが、そこにどのような経緯があろうが、現在のウクライナは国際社会のみならず冷戦後のロシア政府やプーチン自身ですら認めていたとおり、まごう事なき一個の「主権国家」です。そこにプーチンは自国の軍隊を入れ「侵攻」をした。
その事は明確に1928年のパリ不戦条約、1945年の国連憲章といった国際法規に反した主権侵害行為であって、そのために失われた無辜の人たちの生命・財産に対する責任をプーチンやロシア政府に取らせなくてはなりません。

この事実はウクライナ、あるいは旧ソ連邦や現ロシア相互間における過去や、あらゆる「歴史問題」とは関係のない現代国際法の問題です。
これを国際社会が放置するならば「暴力による現状変更」を認める事になりかねず、他の地域での連鎖的紛争を誘発する事態になり得ます。これが現在最も憂慮される事態です。

私が懸念する保守派言説には単純にロシア側の言い分やプロパガンダを信じてしまっているケースもありますが、「プーチンはDSと戦っている」とか、「軍産複合体VSプーチン」「グローバリズムVSプーチン」「ウォ―ル街VSプーチン」「プーチンは戦争に負けたことがない」等々、ありもしない「夢想」としか言いようがないケースが多々あります。
残念ながら、米国の中間選挙や大統領選に向けたトランプ陣営周辺からの、バイデン下げのためのプロパガンダに乗ってしまっている場合も多いようです。

また、先の大統領選やトランプ氏に対するでっち上げのロシア疑惑など偏った報道に接して、「メインメディアで語られない裏にこそ真実がある」と固く信じる人たちもいます。
さらにプーチンのような「悪党」には本質的で独特の魅力があり、マッチョ的な力のイメージを正として打ち出す宣伝に引っかかる人がある。あるいは、オリバー・ストーンのように、典型的な堅気に対するヤクザ者のやる引っ掛け詐術「強面の柔和な紳士的態度」の演出にコロッと騙されるケースさえあります。

プーチン支持とさえ見紛う論者たちの解説には、どのように「ロシア側にも言い分があるか」が誤謬史観と共に多々語られますが、逆に「ウクライナ国民はなぜ勇敢に戦う道を選ばざるを得ないか?」などについて、たとえば「ホロドモールの歴史」などを取り上げてウクライナ国民が決して降伏出来ない事情を述べる事はありません。
それで本当に保守かい?と疑いたくなります。

トランプ御大はまた、「プーチンは賢い、天才的だ」「愛国者だ」と言い放ち、移民問題の文脈から離れた批判をマスコミから浴びせかけられました。しかしプーチンは「賢く」などなく、「天才的」でもありません。「愛国者だ」などと言う事実もさらさらありません。
愚かなプーチンの行為がこれから先、ウクライナ国民だけでなくロシア国民をどれだけ長く、大きな苦しみにいざなう事になるでしょう。それがなんで「賢い」のか? 
対外諜報部門のトップに自分にとって耳当たりの良い報告しかされず、あげくの果てに電撃作戦に失敗して戦線を拡大、味方を片っ端から「粛清」してしまうようなズッコケをやる男がなぜ天才的なのか? 見せしめだか督戦の為に将軍らを最前線に立たせ、責任を取らせるような事をして四人もの人望ある腹心を失わせた愚かな行為には、戦略もクソもあったものではありません。

プーチンの過去の侵略行動をも内心で称揚する「(保守派ではない)単純な右翼傾向者」たちは知らないし、もちろんその過去の侵略も含めて、実際のプーチン外交は大統領就任以来、内政ともども失敗の連続でした。むしろこの失敗の数々こそが臆病なプーチンのトラウマを引き起こし、その責任を他者になすりつける伝統的スターリズムの結果が今回の戦争を引き起こした原因と言えるでしょう。そこに「愛国の大義」など微塵もありません。

その上でトランプは「本当の問題はプーチンが賢い事でなく、我々の指導者(バイデン)が馬鹿である事だ」と述べています。そうでしょうか? 私は違うと思います。
たしかにバイデンの方法は後手後手に廻り、率直に言って「間抜け」に見える場面もがいくつもありました。飛行禁止区域の設定は無理でも、ポーランドからのミグ機の提供くらいは認めるべきだったと私も考えます。
逆にトランプが大統領だったならば、ロシアによるウクライナへの侵攻がこれほど早期に起こらなかった可能性があったと思います。しかしそこは北朝鮮問題同様、それで物事が解決するわけではありません。

むしろトランプが反NATO、EUと距離をおいた姿勢のままプーチンが侵攻した場合を考えた時、それこそ西側自由主義陣営は壊滅的な打撃を被ったでしょう。
トランプに戦略性がないのは言わずもがな、立憲共産党のようにバイデン政府の批判はするが、トランプから「ならば、今どうするか? どのように対処するか?」の対案を聞いた事はありません。つまり、「サイは振られているのに」です。
自由主義陣営が一丸となって対処するべき渦中にあって、肝心の次期大統領候補が目先の中間選挙や大統領選だけに汲々としている姿は見るに堪えないものです。
トランプは今後、適切に軌道修正しなければ大統領に返り咲いても外交成果を上げる事は困難でしょう。

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米政権、より強い制裁手段温存 「脅し」でロシアの攻撃抑止できるか [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

逆に(スリーピー・ジョー)バイデンの主導した方法でプーチンの頼みの綱だった金融の雄シンガポールや、今やフィンランドやスエーデン、永世中立国であるはずのスイスまで一致協力してロシアへの制裁に加わっています。
かつてないほど充実して西側の結束力や団結力が高まった事で、ロシアとの「際限の無い協力」を打ち出していた中共政府の行き方にも大きな影響を与えています。

はからずもバイデンのリーダーシップは自由主義陣営の一致協力行動を実現していて、親中派で鳴らす林外相をして「国際法違反にあたるロシアによる武力行使の遂行において、その事情を知りながらロシアを支援、援助する国も国際法上の責任を負う事になる」と言わしめ、岸田総理も中国に「責任ある行動を求め」つつ、「(ロシアは)国際法の深刻な違反、国連憲章の重大な違反であり「侵略」当たる」と言明させるに至っています。
対して、西側社会の弱体化を信じたプーチンの威光は地に落ち、手の込んだ方法で参戦回避したベラルーシだけでなく、盟邦のカザフスタンからさえも派兵拒否される憂き目にあっています。

さらにバイデンはプーチンを正しく「戦争犯罪者」と指摘し、「人殺しの独裁者」「生粋の悪党」とさえ呼んでいます。決して容赦しない覚悟を示し、これからさらに段階的に経済制裁のレベルを高めようとしています。
このようなとき、敵と味方を取り違えて認識する一部保守の方々には失望を禁じ得ません。

3/20琉球新報の乗松聡子氏の記事「ロシア「悪魔化」に抱く疑問」では、スプートニクの記事をそのまま引用し、「260万以上の民間人がロシアへ退避申請している」とか、「ロシア非常事態省が330トン超の人道支援物資をドンバスやキエフに届けた」としています。
さすがの左派リベ的脳天気さ加減が全開ですが、一部保守も同様、変わらない程度に見えてしまいます。
彼らはまた、プーチンと盟友のロシア正教枢機卿が言った「プーチンの進攻は(西側で流行した)「プライドパレード」が原因の一つ」などと言う戯言に騙されて簡単に得心してしまうのではないでしょうか。

仮に停戦が実現しても、本当の戦いはこれからです。
これまでのところウクライナは有利に状況を進めてきました。肝心の西側陣営のさらなる結束が実現し、それが長続きするかどうか? 本当に試されるのはこれからです。
「認識」は正しく持ちたいものです。   

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ウクライナ大統領、東部紛争問題巡り米大統領と協議|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)                                                                  

■ ウクライナはドンバス地域を捨てた事はない
  
 ウクライナ政府はロシア系住民が多く住むドンバス地域を放棄した事は、これまでのところ一度もありません。ドンバスでロシア文化やロシア語の使用を禁止したこともありません。ドネツクやルガンスクは独立共和国などではなく、不法にロシアの支援を受ける武装分離主義団体が支配するウクライナの土地です。

ドンバス地域では2014年以来、ロシアからの援助があった時には反政府親露派の反抗が高まり、それが無くなるとおとなしくなる。その繰り返しで現在まで来ています。
親露派幹部の多くはロシアの情報機関から送り込まれた新住民で、プーチンの命令によってウクライナ憲法に違反して住民投票を行い、勝手に独立国を名乗っている反逆者たちです。

また、よく親露的な保守の方が言われる事で、地域の某施設において「逃げて来た親露派住民を虐殺した」と言われる事件について、反乱蜂起して施設ビルに立てこもった武装勢力を殺害したのは事実です。
ウクライナは確かに日本のような「平和的な民主主義国家」とは言いづらい面もあります。しかし、クリミア併合に乗じた親露派住民による政府への反抗を利用してロシアが混乱を拡大させ、組織的・軍事的援助の介入をしつつ本格的な軍事衝突(内戦)に導いた事が事件の原因であった事実を失念してはなりません。

少なくもプーチンが主張するような民族差別に起因するジェノサイドなどはなく、常に前線を監視している欧州安全協力機構はウクライナによる「意図的な虐殺」を認めていません。またプーチン自身が喧伝し、我ら保守派の一部も騙されている「ゼレンスキーは親ナチ政権の大統領」という図式も全く当てはまりません。
なんと言ってもゼレンスキー自身がユダヤ人であって、彼の父親の兄弟三人までがナチスに虐殺されているのです。

アゾフ大隊に対して西側が懸念を示していた事があったのは事実です。しかし、ゼレンスキー政権になって「反ユダヤ的傾向を示す証拠がない」と見る向きが一般的で、それはウクライナが「ナチス主義に関連した全ての表現」を法で禁止する努力を見せたからでもあります。
なお、アゾフ大隊の隊旗はナチスの鉤十字を模したものではなく、由来は別に存在します。
アゾフ大隊はたった1500名ほどの人員しかないし、一部保守派が言う事と全く違い、アゾフ大隊やそれに類する傾向の人たちに現代のウクライナが支配されている、などという事実はあり得ず、全くのでたらめです。

プーチンは国際社会で「侵略」と認定される事態を回避するため、「侵攻」をウクライナによる「民族ジェノサイド回避のため」とか、「独立共和国と結ぶ集団的自衛措置」とウソ八百で切り抜けようとするゲスの詭弁家です。
そして、それに加担するような言説をわが国の一部保守が行なっている事実には、実に嘆かわしい思いがします。

(続く)

 

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ウクライナに平和と独立を!


                       

2022年3月22日 (火)

ウクライナが死守しようとしているのは独立と自由です

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今、ゼレンスキーは、プーチンに一対一の直接交渉を要求し続けています。
これは何を意味するのでしょうか?
私は、BBCをして「桁外れた技量を持つ外交官」といわしめたゼレンスキーが、最後の勝負に出たと感じました。
では、最後の勝負」とはなんでしょうか。
譲れない互いの一線を押えたうえで、それを「停戦合意」の骨組みとすることです。

これはかなりはっきりしてきているはずです。
ウクライナ側の合意要求は、ただの一言に収斂させることが可能です。
それは「独立」です。

その他の項目は、「独立」という絶対に譲れない概念から導き出されるものであって、極論すれば従属的な要求にすぎません。

「ゼレンスキー氏には、譲れない点が1つある。ウクライナがこの恐ろしい経験から、結束した独立国家として浮上することだ。ロシアの一地方としてではなく。プーチン大統領は当初、ウクライナをロシアの一部にしてしまえると考えていたようだが」
(BBC 2022年3月17日)
【分析】 プーチン大統領、今後はメンツを保つ方法を探る ウクライナ侵攻 - BBCニュース

BBCは、ここでソ連の侵略と戦ったフィンランドの例を上げています。

「ヨシフ・スターリンは1939年、かつてロシア帝国の一部だったフィンランドに侵攻した。
ロシア軍はあっという間に快進撃を果たすはずだと、スターリンは確信していた。プーチン氏が2022年にウクライナについて考えたのと同じだ。スターリンの将軍たちは、当然ながら身の危険を恐れ、最高指導者の言う通りだと約束した。もちろん、スターリンの言う通りにはならなかった。
冬戦争は1940年まで長引き、ソヴィエト軍は屈辱にまみれ、フィンランドは超大国に見事抵抗したことで相応の国民的誇りを手にした。フィンランドは領土の一部を失ったが、それはスターリンやプーチン氏のような専制君主がこうした戦争をやめるには、勝ったかのように見せかけなくてはならないからだ」
(BBC前掲)



BBCも指摘するように、フィンランドのケースとウクライナのケースは、よく似ているところと似ていない部分があります。
共に圧倒的な軍事力をもってロシアの侵略を受けた点はまったく同じですが、森林地滞のフィンランドに較べて重化学工業の産業基盤と有数の穀倉地帯を有し、ゲリラ戦争に不向きな平野部である地理的条件は異なっています。
ですから、ウクライナはやむを得ざる場合は、西部地域に政府を移してゲリラ戦も厭わないでしょうが、それはすべての合意をロシアから拒否された場合の最後のオプションであるはずです。
この西部まで戦火に包む手段は、ウクライナ全土を焦土とすることになるからです。

その「やむを得ざる場合」とは、ロシアが「ウクライナをロシアの一部にしてしまえる」と考える場合です。
その場合のロシアの古典的やり方は、イエスマンの傀儡政権を建てることです。
今回ならば、したたかなゼレンスキーを殺害して、ベラルーシで準備に余念がないヤヌコビッチを据えることです。
それが成功すれば、ベラルーシやカザフスタンのような操り人形が支配をするカラッポの属国に変質します。
いうまでもなく、このカラッポの国では、ロシア式の秘密警察支配が行われ、言論・結社・表現の自由は一切失われます。

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ロシア軍、ウクライナ南部ヘルソン到達 郊外に検問所 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

現在、ロシアが占領地域でしている支配政策は、この傀儡国家づくりの予行演習とでもいうべきものだということが分かってきました。
住民ひとりひとりをロシア軍が面通しし、携帯を閲覧し、フェースブックやツイッターに反露的書き込みをしていないか、見てはいないかをチェックして、すこしでも反露的傾向があればそのまま拉致されて行方不明となります。
ロシアが支配するということはこういう意味なのです。
ロシアは、占領地のウクライナ国民から国民意識を抹殺し飼い馴らそうとします。
ウクライナ人は、旧ソ連時代の経験からそれを肌身で知っています。

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「ロシア軍は占領後の殺害・収容リスト作成」 米が国連機関に書簡 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之氏は『ウクライナ人が恐れるロシアの占領統治)(『NEWSを疑え!』第1033号(2022年3月3日号)でこのように分析しています。

①占領地の反乱・抵抗の鎮圧は、ロシア連邦保安庁(FSB)と国家親衛隊が主力となる。FSBは旧ソ連のKGBの後継組織で、約17万人の国境警備隊と特殊部隊)を持ち、ウクライナ南東部の占領地ですでに活動している。
一方国家親衛隊は2016年に、内務省から国内軍を分離し、警察特殊部隊を統合して創設された治安軍隊です。兵員は34万人。ロシアの定義する領域防衛は、占領地における支配警備と後方支援も含むので、今回も既にウクライナに派遣されている。

②占領地ではFSBが反乱・抵抗の鎮圧の指揮をとり、通信傍受・捜査・防諜が任務です。手足となるのは国家親衛隊を中心にして、内務省の警察部隊、コサック部隊、民間警備・軍事会社を合わせて、ロシアは今回ウクライナに50万人近くを占領地警備投入する予定だと見られている。

そしてロシアが占領地で行う具体的なことは、今まで彼らのやったことからみてこのようなことです。

③令状なしの家宅捜索により押収した文書の情報をもとに、ウクライナ軍の情報機関・警察その他の機関の公務員や政治家が逮捕・尋問する。
彼らの多くは収容所に送られ「行方不明」となる。

④通信と情報の遮断。マスメディアはロシアが検閲体制を敷くまで完全に封鎖される。電話とインターネットは、ロシアの傍受システム「ソルム」に接続するまで遮断される。アマチュア無線機も没収され、無線通信は行政用に限られ、全ての周波数が監視される。郵便を含め、外国と合法的に通信できなくなる。

⑤外出禁止令の後、全ての住民がロシアの出先機関に出頭を命じられ、新しいろロシア占領機関発行の身分証明書が渡され、以後常に携帯することを義務づけられる。密告制度が推奨され、よそ者探しや反露的人物をさがしだすことを命じられる。

⑥ウクライナ貨幣は通用しなくなり、ロシア占領機関の発行した軍票が通貨となる。外貨の所持は一切禁止される。配給切符制により住民を統制し、地下組織を兵糧攻めにする。

⑦現地のロシア系住民に権限を与え、民兵としてロシアの治安維持に協力させる。FSBは公然・非公然の報告制度を設ける。街区や集合住宅ごとに、住民の言動に責任を負う者を一人、公然と任命する。別に、FSBは非公然の密告者を強制または報酬によって採用する。事件の報告が遅れた報告者は処罰する。不服従の事実または疑惑を、住民どうし批判させる。

これがロシアの占領政策です。
そしてこの占領政策が安定化すると次の段階で住民投票を行い、国民の「自由意志」でロシアの一共和国に復帰することになるでしょう。
そしてウクライナ人はいなくなり、ロシア人となります。
命が惜しければ降伏しろと大声で言う橋下徹氏のような馬鹿が絶えませんが、ロシアの占領の実態をまったく勉強ひとつしないで言っている能天気なものです。
それにしても故石原氏が見込んだこの人物がかくも軽薄才子だったとは。
彼らは安直に妥協しろといいますが、なにが妥協できて、なにができないのか、何を失ってはならないのかを知りません。
おっと待てよ、この連中自身は現地採用のプロパガンダ要員になるから安泰なんでしたっけね。

とまれ、このようなことが独立を失うと起きる真実の姿です。
白旗を上げれば平和になるのではなく、奴隷となるのです。
それをソ連時代に身に沁みて知っているゼレンスキーは、「独立」と「自由」が別ちがたい一体の概念であることを充分に分かって交渉することでしょう。
彼は「独立」が、自己決定できる国としての完全な独立が不滅の価値だと信じているはずです。

 

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ウクライナに平和と独立を!

 

2022年3月21日 (月)

ゼレンスキーの見事な議会演説

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ゼレンスキー大統領が、23日午後6時に日本の国会で演説することに決まりました。
全局テレビ中継することでしょう。
日本国民は、被侵略当事国の指導者が直に国会で語るのを聞く、という得難い経験をすることになります。
しかも、かつてロシアに勝利した唯一の国である日本人の前で、ウクライナの指導者がなにを言うのか言わないのか、いまから楽しみです。

いままでゼレンスキーは、G7各国で国会演説をしてきました。
実に見事なパブリシティで、各国の支援は演説後いっそう跳ね上がったそうです。
巨人ゴリアテ・ロシアに立ち向かうウクライナの頭脳を使った戦略です。

ゼレンスキー演説の特徴は、相手国の心に響く歴史事例を演説中に用い、そして畳みかけるようにしてウクライナが今なにを望んでいるのかをはっきり言うことです。
これは初めの英国から最近のドイツまでの共通した傾向ですので、わが国もその例外ではないはずです。
見てみることにしましょう。

初回は英国・3月8日。英下院。ゼレンスキーは、バトル・オブ・ブリテン時のチャーチルの言葉を引用しました。

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「ゼレンスキー大統領は「この戦争はわれわれが始めたわけでも、望んだわけでもない。しかし母国であるウクライナを失わないために戦わなくてはならない」と訴えました。
そして侵攻開始からの13日間でロシア軍からのロケット弾などによる攻撃で50人以上の子どもが命を失い、ウクライナ国民は水を手に入れられない状況も続いているなどと説明しました。
そのうえで「われわれは生きるか死ぬかという問題に直面している。答えは決まっている。生きることだ」と強調しました。
第2次世界大戦中の1940年に当時のチャーチル首相が議会で行った演説になぞらえて「われわれは決して降伏せず、決して敗北しない。どんな犠牲を払おうとも海で戦い、空で戦い、国のために戦い続ける」と述べたうえで、ロシアに対する制裁のさらなる強化をイギリスや国際社会に求めました」
(NHK3月9日)
ゼレンスキー大統領「決して降伏しない」ロシア制裁強化求める | ウクライナ情勢 | NHKニュース

見事な演説です。ただ頭を下げて支援を乞うのでは、ああまたかという顔をされるでしょうが、ゼレンスキーは相手国の聞く者をして自国の叙事詩を想起させ、奮い起こさせ、そして共に戦おうと呼びかけています。
この彼の目線の高さが、演説の格調の高さとなって現れています。
このようにスピーチされれば、懐手しているわけにはいかないでしょう。
首相以下、議員全員がスタンディグ・オベーションで迎えたたそうです。

2回目はカナダ・3月15日。

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CNN

「ゼレンスキー大統領は演説冒頭、ロシアが全面侵攻してきた20日間の心境について「午前4時に爆発音が聞こえ、子供たちがそれを聞くことを想像してほしい。ロシアによって破壊されたことを子供たちに説明する言葉を探していると想像してほしい」と語りかけ、「毎日、死者に関する報告を聞くことを想像してほしい。死者数は増え続けている。今朝の時点で97人の子供が殺された」と述べた。
また、ゼレンスキー大統領は、カナダはこれまでも、そしてこれからも信頼できるパートナーとし、「カナダはわれわれが切実に必要としている武器やその他の支援を与えてくれている。カナダはロシアに実質的な制裁を科している。しかし、残念ながら戦争は続いている。ロシア軍はわれわれの領土から撤退していない」と述べ、対ロシア制裁のさらなる強化を訴えた。
カナダのジャスティン・トルドー首相は「あなたは民主主義のチャンピオンだと思っている」「あなたの勇気とウクライナ国民の勇気はわれわれを鼓舞する。あなたはウクライナ人が自らの未来を選択する権利を守っており、全ての民主主義国家の柱を形成する価値を守っている」と賛辞を送った
(CBCニュース3月15日)
ゼレンスキー・ウクライナ大統領がカナダ議会で演説、飛行禁止や対ロ制裁強化を訴え(カナダ、ウクライナ、ロシア) | ビジネス短信 - ジェトロ (jetro.go.jp)

いい意味でうまい。
カナダは今まで外国に侵略されたことがない国ですが、「子どもの生命」という絶対的価値の重要さを突き付けました。
いまもマウリポリでは200名以上の子どもが、避難所であった劇場の瓦礫の下に埋まってます。
申し開きのしようがない戦時国際法違反です。
国際司法裁判所は、これをプーチン訴追の大きな証拠として法廷に提出することでしょう。

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ロシア軍 500人超避難の劇場空爆 米 8億ドル追加軍事支援 

このようなことがどうして起きたのか、罪科がない人々がなぜかくも酷たらしく殺されねばならないのか、それをゼレンスキーは「ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定」と結びつけています。
これは、一貫してウクライナがNATOに上空飛行禁止空域の設定として要求してきたが、「ロシア軍とNATO軍が衝突すれば世界大戦に発展する危険性がある」(ストルテンベルグNATO事務総長)との理由で拒否されてきたことに対しての批判を含んでいます。
自由主義陣営は、ただ拒否するだけでは済まなくなり、より有効な防空システムを緊急に供与する準備を始めねばなりませんでした。

そして3回目の3月16日・米国。ある意味でここが本番です。

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「ゼレンスキー氏は演説で、アメリカの議員らに1941年の真珠湾攻撃や2001年9月11日の攻撃を思い出すよう促し、「同じことを私たちの国は毎日、毎晩、もう3週間経験している」と述べた。
また、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説を引用。「私には夢がある。この言葉は皆さん一人ひとりが知っているものですが、今日私は、私には必要なものがあると申し上げます。私は空を守る必要があるのです」と述べ、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ウクライナ上空を飛行禁止区域にするよう再度要求した。
演説の途中では、ウクライナの都市へのミサイル攻撃や、それによる死者や負傷者を映した生々しい映像を公開した。
最後にはジョー・バイデン大統領に英語で語り掛け、「あなたは一国のリーダー、偉大な国のリーダーだ。世界のリーダーにもなってもらいたい。世界のリーダーであることは、平和のリーダであることだ」と締めくくった」
(BBC3月17日)
ゼレンスキー大統領が米議会で演説、「9/11を思い出して」と ウクライナ侵攻 | 

米国に対しても英国と同様に自国が侵略された歴史から入りました。
引き合いに出されたのは、真珠湾攻撃と9.11同時テロです。
真珠湾攻撃が出たことに、わが国の保守派は敏感に反応して、一部では罵声じみた声さえ上がりました。
真珠湾攻撃は純粋な軍事作戦であって、9.11のアルカーイダの民間人テロと一緒にするのはおかしいという意見が出ました。

それはそれとして正しくはあるのですが、勘違いしてはいけない、語っているのは日本人ではなく、あくまでも東欧の人であり、聴衆は米国人なのです。
東欧人のゼレンスキーは、日米戦争に至る経過を熟知しているはずがありませんから「通説」に従ったまでです。
同じことを日本人が言ったのなら、異を唱えることもできるでしょうが、語っているのは日本からはるかに離れた東欧の国の元首なのです。
東欧の人間が、日本人と同じ歴史認識を持てるはずがないじゃありませんか。

逆に考えればわかります。我々がウクライナをどれだけ知っているのでしょうか。
ロシアとウクライナは同一の民族だとプーチンは盛んに言っていますが、それがおかしいと言えるだけの歴史的知識を日本人がもっていますか。
ウクライナがネオナチ国家だとプーチンは叫んでいますが、ウクライナのロシアによる受難の歴史を知っていて言っているのでしょうか。
すぐに降伏しろ、中国に仲介してもらうために日本は妥協しろ、などとという小賢しい者も出ましたが、いったい何回ウクライナが世界地図から消えたのか、異民族支配されたらどのような結果を招くか知っていて言っているのでしょうか。
わが国が持つ価値観に引きつけて、他国を見てはダメです。
歴史観は複数あって当然なのです。

ここでゼレンスキーは、「私たちには夢がある」というルーサーキング師の美しい言葉を枕にして、「私には必要がある」と、米国に切り込みました。
ここでもウクライナは、上空の飛行禁止区域の設置を要求し、そしてバイデンに対しては、「世界のリーダーであってほしい」と発破をかけています。
これは自由主義陣営の盟主に対して、このウクライナ防衛の戦いは即ち自由社会を守る戦いであることを、改めて認識させた言葉です。
バイデン政権はその直後、ウクライナへの8億ドル規模の追加武器支援を発表しました。
この中には、対空ミサイルも多く含まれていました。

ちなみにわが国の保守派の一部にはプーチン礼賛論者が多く存在しており、この人たちは戦争前には絶対にウクライナ侵攻はないと言い張り、侵略後はウクライナはネオナチだとロシアのプロパガンダを代弁してみせ、ロシアの孤独に寄り添えなかった国際社会の罪だ、はては米露代理戦争だという意見まで飛び出しました。
代理戦争どころか、ウクライナというしたたかな小国がロシアという大国や米国の鼻面を引き回しているのです。
ちょうどかつてのベトナムのように、です。
それがはっきり見えたのが、このゼレンスキーの各国議会演説だったのではないでしょうか。

別の意味で白眉なのは、3月17日のドイツ議会演説です。

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ここでは従来の相手国の共感を呼ぶ演説方法を替えて、極めて手厳しい批判となっています。

「ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレなどによると、ゼレンスキー氏は「戦争のさなか、ロシアとまだビジネスを続けようという動きがある。あなた方は壁の向こうにおり、壁に阻まれて事態が見えていない」と主張。ロシアの勢力圏と欧州という自由社会の間には、見えない壁があるとの考えを示した。ドイツが露産天然ガスを輸入するパイプラインについて触れ、「ロシアは戦争の資金調達に、あなた方を利用している」とも述べた。
そのうえで、ゼレンスキー氏は「壁」を東西冷戦中のベルリンの壁に重ね、ショルツ独首相に「壁を倒してほしい。ドイツが指導役となれば、後の世代も誇りに思うはず」と呼びかけた。演説後、連邦議員は総立ちで拍手した。ドイツはEU最大の経済国で、ロシア産エネルギーへの依存度が高く、EU制裁のカギを握る」(産経3月17日)
ゼレンスキー氏 独でも演説 「壁倒して」と訴え - 産経ニュース (sankei.com)

ご承知のようにプーチンがウクライナ侵攻に踏み切った理由のひとつが、NATOは分裂しており、ドイツは絶対にノルドストリームを閉鎖しないという目算があったからです。
ゼレンスキーは、ドイツの経済支援に謝意を示す一方で、歯に衣を着せず「ドイツは過去、ロシアと密接な経済関係を深めてきた。武器供給でも最後まで渋り、ロシアとドイツ間の天然ガス輸送パイプラインのプロジェクト『ノルド・ストリーム2』に対しても『経済プロジェクトに過ぎない』と弁明し、土壇場まで閉鎖を拒否してきた」とはっきりと指摘しました。
この自国のエネルギー源を3割までロシアに強依存し、大幅な国防費カットを続けてきたメルケルは、さぞ耳が痛かったことでしょう。
そしてゼレンスキーは「そして今、ベルリンの壁ではなく、欧州に自由と不自由を隔てる壁ができている」と手を差し伸べて共に「壁を壊してほしい」と訴えたのです。
そしてドイツは、この演説をきっかけとしたのか、大きく方針転換しました。
今までとうって変わって、ウクライナに多くの軍事支援を送る一方、自らの国防費も大きく増額しました。
遅まきながら、やっとドイツも目が醒めたようです。

そしてある意味まだ目が醒めていないわが国の番となったわけですが、願わくばわが国がロシアの侵略に唯一勝利した国であることを思い出していただければ嬉しいのですが。

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ウクライナに平和と独立を!

 

2022年3月20日 (日)

日曜写真館 れいろうとして水鳥はつるむ

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水鳥のしづかに己が身を流す 白葉女

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いつまでも動かぬ水鳥に我慢せり 石川桂郎

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たましひも洗ひ立てなり水鳥は 宮坂静生

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水鳥のかしら並べし朝日哉 布舟

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水鳥の余せる水の広さかな 蓬田紀枝子

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水鳥のほかに流るゝものはなし 廣江八重櫻

※「れいろうとして」 玲瓏とは、 .玉のように光り輝くさま。また、冴え冴えとして美しいさま。

 

2022年3月19日 (土)

「軍事的に前進もできず、政治的に後退することも許されない、オプションを使い果たした状態」とは

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ウクライナ戦争は、ロシアにとって悪しき形で膠着しています。
ニューヨークタイムスはこう書いています。
As Russian Troop Deaths Climb, Morale Becomes an Issue, Officials Say

「 第二次世界大戦中の硫黄島での36日間の戦闘で、7,000人近くの海兵隊員が死亡した。ロシアのウラジーミル・V・プーチン大統領がウクライナに侵攻してから20日後の今、アメリカの情報によると、彼の軍隊はすでにより多くの兵士を失っている。
保守的な推定で7,000人以上のロシア軍の死者が出て、これはイラクとアフガニスタンで20年間で死亡したアメリカ軍の数を合わせたものよりも大きい。
わずか3週間の戦闘で蓄積された驚異的な数であり(略)国防総省当局者は、単一のユニットの死傷者率が10%で、戦闘任務を実行できないと述べている」
(ニューヨークタイムス2022年3月16日)

ウクライナ侵攻の指揮をとった20人のロシア軍将官のうち半分は更迭され、4名が狙撃されて死亡し、残るはわずか5、6人と見られています。
更迭された将官たちは、一切の指揮官任務から解かれて予備役編入されることでしょう。これ以上の不名誉はありません。
この将官戦死者の中には、スペツナズの指揮官であるアンドレイ・スホベツキー少将(第41混成軍副司令官)も含まれています。
彼は空港を巡る戦闘の際に、演説をしていたところを狙撃されました。
ウクライナは「将軍の墓場」だったのです。

現代戦でこれほどまで高位の将官が戦死することは稀で、ロシア軍もチェチェンで2名を失った経験があるだけです。
ちなみに米国が約20年間に渡るイラク戦争で失った将官は2名にすぎませんから、極端な出血です。

では、なぜかくも大量の戦死者が出てしまい、将官がバタバタ戦死するのでしょうか。
その技術的理由のひとつは、ロシア軍の通信がだだ漏れだからのようです。

「ロチャン・コンサルティングの防衛アナリスト、コンラッド・ムジカ氏は、「ロシア側が携帯電話やアナログラジオで軍幹部と連絡を取っているなら、ウクライナはすべてを把握している」とBBCに話した。
ウクライナ側は、ロシア軍のゲラシモフ少将を殺害した後、ロシアの安全保障幹部の会話だとする録音を公表した。その中で幹部とされる人物らは、同少将の死亡について話し、安全な通信ネットワークが機能していないと文句を言っている」
(BBC3月17日)
ロシア軍将官、4人目が戦死か ウクライナが狙い撃ちとの見方も - BBCニュース

今回、ロシア軍はクリミア侵攻で盛んに活用して勝利を収めたサイバー攻撃を完全に封じられたうえに、自軍の通信ネットワークが頻繁に使用不能の状況に陥っていたようです。
そのために部隊間交信ははなんとスマホに頼るありさまで、そのセキュリティが甘いためにウクライナ側に筒抜けでした。
ロシア軍の作戦の展開はすべてウクライナ軍にあらかじめ察知され、各所で狙撃銃とジャベリンを持ったウクライナ兵に阻止されました。

この体たらくに怒った将官が前線に尻を叩きに飛び込んでいくと、先ほど述べたように待ってましたとばかりに狙撃されてバタバタと戦死。
行かなければ行かないで、今度は前線部隊はこれ幸いとばかりに停滞を決め込んでウクライナ軍に近づきもせずに、遠くから無差別に市街地を砲撃するだけとなります。
この無差別砲撃で多くの民間人犠牲者が出ましたが、国際社会が一斉に非難するとプーチンはいっそういきり立ち、将軍たちにさっさとウクライナ軍をかたづけろ、お前らは無能かと激怒するものですから、将軍たちは前線に飛び出していってまた狙撃され・・・(以下ループ)。

これではキエフ侵攻もあったもんじゃありません。
ハリコフでも似た状況のようです。

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ウクライナ軍、900輌以上のロシア軍車輌と4,300人の兵士を無力化 (grandfleet.info)

かくしてロシア軍は進めばジャベリンが待ち構えており、勝手に退くと軍規違反に問われ、進むも退くもならないままキエフ近郊でじっとしているしかないわけです。
ここで常識を持った指揮官ならば、いったん軍を後退させて補給を与えて部隊を再編した上で、戦線構築をし直すべきなのですが、この戦争自体がプーチンが誰の相談もなく勝手に始めた「しなくてもいい戦争」だったためにモスクワから後退の許可が下りません。
ニューヨークタイムスはこれを「軍事的に前進することもできず、政治的に後退することも許されず、全てのオプションを使い果たした状態」と評しています。
最悪な状況で、もはや交渉でなんとか撤退をさせてもらうしかない、これがロシア軍の本音です。

これで士気があがったら奇跡というもので、指揮官は狙撃に怯え、兵士は帰りたいの一心です。
停戦合意となり、めでたく命拾いして帰還した兵士たちが、どのようなことをロシア国内で家族友人に話すのでしょうか。
まちがいなくその兵士らの体験談は、プーチンにとってこれ以上ない苦々しい物語であることは間違いありません。
いくら情報統制しようと、かならずこのような話は人づてに拡がっていくはずです。
情報統制国家においては、表のメディアがいくら統制されようと、国民はアンダーグランドでの情報に必死に耳をそばだてるものなのです。

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朝日ワシントン特派員高野遼記者が、自身のツイッターに国防総省のウクライナの戦況分析を乗せています。
高野遼 
想像どおりのロシア軍にとって最悪の状況です。

●米国防総省の戦況分析1
【概況】
・ロシア軍は東部の一部を除いて前進がみられないが、各地で激しい戦いが続く
・都市部に対して遠距離からの攻撃が強まる。民間被害も増加
・黒海のオデッサ沖には6隻ほどの艦船があり、うち2隻は揚陸艦。上陸が差し迫っている兆候はない
・制空権争いに変化なし

米国防総省の戦況分析2
【長距離攻撃】
・侵攻開始以来のミサイル発射は1000発以上に。
・キエフ周辺では後方から砲撃部隊が前線に移動。首都攻略に向けて砲撃を強めるとみられる。
・無誘導爆弾に頼る傾向が強まる。精密誘導弾が不足しているのか、節約しているのかは不明

米国防総省の戦況分析3
【軍事支援】
・遠距離攻撃に対しては、米国が支援を決めたドローンも有効となる。できる限り早く届ける。
・射程距離の長い防空システムをウクライナに提供する可能性について、同盟国と協議している。個別の合意はまだない。

米国防総省の戦況分析4
【開戦3週間】
・ロシア軍は補給の問題を乗り越えようとしているが、まだ苦慮している。
・事前計画に問題があったことに加え、想定外の抵抗を受けていることが理由。
・ロシア軍は人員の補充を含む増援も検討している。
・3週間経ち、多正面で停滞する状況はロシアにとって想定外。

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karapaia.com

ウクライナ戦争についての現況の俯瞰図をBBCが載せています。
ほんとうに英米のインテリジェンスは図抜けています。
キエフに特派員を送り込めず、外国通信社の配信でお茶を濁し、小麦が上がってうどんが値上がりなどとやっているどこぞの国のメディアとは大違いです。

BBCとその他の情報を総合して要約しておきます。
※BBC 『地図でウクライナ戦争:ロシアの侵略を追跡』
ビジュアルジャーナリズムチーム
地図でウクライナ戦争:ロシアの侵略を追跡 - BBCニュース

ウクライナ全土のロシアは死傷者が増える中、前進していません。
首都キエフを包囲し、遮断しようとする試みは続けられてはいますが、ドニエプル河を切られてしまったために泥濘に阻まれておもうような前進ができていない状況です。

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BBC
時系列でロシア軍の動きを追ってみます。
ロシアは2月24日の早朝に攻撃を開始し、部隊は3つの主要方面から進軍しました。

①南部方面。2014年に併合した南部のクリミアから侵攻。
②東部からの進撃。ロシアの支援を受けた分離主義者がすでに領土の広い地域を支配していた東部のドネツクとルハンスク地域からの侵攻。
③ロシア軍が合同軍事訓練演習に参加していた北部のベラルーシからの侵攻。

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BBC

北からキエフに向かったロシア軍の主力は、チェルノブイリを経由してドニエプル川の西側を下って進みました。
しかし、これらの部隊は深刻な兵站の枯渇に直面し、大量の車両が燃料を使い果たして頓挫し、途中で粘り強いウクライナ軍の抵抗に直面していました。
キエフ市内に最も近いロシア軍部隊は、北西25㎞のブチャとイルピンの郊外にいますが、戦車部隊をが壊滅的打撃を受けたために、現時点ではイルピン川を渡ることができていないようです。
この戦車の隊列が待ち伏せ攻撃で、なすすべもなく撃破され蹴散らされる光景は、ユーチューブで世界に瞬く間に拡散してしまい、ロシア軍弱しの印象を世界に拡散しました。
米国の軍事筋によれば、真っ昼間に航空優勢も確保していない地域の幹線道路を無警戒に戦車隊が歩兵も随伴させずガラガラと通過すること自体が非常識だそうです。
ロシア軍指揮官の練度の低さは目を覆うばかりだそうです。

また、ウクライナ軍だけではなく、今年の湿地や泥沼のような困難な地形は、ウクライナ軍がこれまでのロシアの前進を遅らせるのを助けました。




「今年のウクライナの気温は高く、原野が凍結することなく泥濘地化してしまいました。キャタピラを履いた戦車や歩兵戦闘車でもスリップして尻を振りますから、進撃速度は極端に鈍ります。
そのうえ、戦車を至近距離からの攻撃から守るために必要な歩兵を乗せた装輪式の装甲車は、すべての車輪にチェーンを巻いてもスリップするため、戦車などキャタピラを履いた車両と行動を共にすることができません。
自然、戦車と歩兵が切り離される結果となり、戦車や装甲車の乗員は身を乗り出して周囲を見回せば狙撃されますから、閉じこもった状態を強いられます。その結果、肉迫してくるウクライナ側の対戦車火器や住民が投げつける火炎瓶の餌食となっていったのです。
そうなると、原野を突っ切っての進撃を諦め、主要幹線道路を使うしかありません。そこに待っているのは大渋滞。ウクライナ側は危険を冒して渋滞した隊列を攻撃しないでも、進撃を阻み、補給線を止める戦果を手にすることができたのです。
こんな「泥将軍」との戦いが待っていることは、ロシア軍としては百も承知だったと思われますが、プーチン大統領の号令一下、侵攻することになったのでしょう」
(小川和久)『NEWSを疑え!』第1036号(2022年3月14日特別号)


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ロシア軍戦車 泥の中でもがく! - YouTube

東部からキエフ向かったロシア軍部隊は、キエフの中心部から約20km(12マイル)離れたブロバリー郊外の周辺で失速し前進が停止しています。
今の彼らにできるのは、キエフ市内に無差別で砲撃をしかけることだけで、それをすればするほど国際社会空の非難をあびることになります。
ロイヤル・ユナイテッド・サービス・インスティテュートの防衛アナリスト、ジャスティン・ブロンクは、BBCにロシアが現時点でキエフを奪うのに十分な地上軍を持っていないと疑っていると語っています。
おそらくキエフ侵攻はしたくてもできないのかもしれません。

他の方面についても見ておきます。
ウクライナ南部戦線ではロシアが占領地を拡大しました。



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BBC
南東部では、ロシア軍に複数の都市が包囲され、激しい火災に見舞われています。
港湾都市マリウポリでは50万人もの民間人が閉じ込められたままです。
南部の他の場所では、西側のムィコラーイウに対するロシアの進歩は停滞しています。
この街を取ることは、オデッサに向かっての進路をひらくために必須ですが、強力なウクライナ軍の抵抗に遭遇しているようです。
オデッサ沖のロシア海軍はここ数日、都市への砲撃を行っていますが、英国軍事専門家によれば強襲揚陸艦での上陸は非常に困難だと見られています。
一方東部戦線では、ロシアの支援を受けた分離主義者がロシアの侵略前に重要な領土を保持していたドネツクとルハンスク地域で攻勢をかけています。
北東部では、ロシア軍がスミの街を包囲し、重要なインフラを爆撃し、供給ルートを遮断しました。


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BBC

以上のような戦況です。
2014年のクリミア侵攻での失敗を研究し尽くして、ロシア軍に特化したウクライナ軍と、楽勝気分で大軍を送り込んで泥沼にはまり込み損害を重ねているロシア軍という構図が今や鮮明になっています。


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2022年3月18日 (金)

わかってきたウクライナ-ロシア停戦合意内容

012

交渉はおそらく本格的詰めに入っていると思われます。
ロシアが「軟化してきている」という表現はウクライナ交渉団からもらされていて、実際にウクライナのポドリャク大統領顧問がこう言っています。

「停戦が今後数日のうちに成立すると確信している、代表団は両国の大統領が署名可能な文書を作成している途中だ」

このポドリャク顧問の言葉が真実なら、交渉結果は締結文言の詰めまで来ていると見ていいのかもしれません。
ロシアのラブロフ外相も、「ウクライナの中立的地位について合意に近い」と言っているだけに、外郭は出来上がって一点一点概念規定まで含めて作業部会でもんでいるのでしょう。

ラブロフが「中立的地位」と言っていることをみると、この文言を巡って激しいやりとりがあったことが伺えます。
確かにこの概念規定をおろそかにすると、ロシアはいくらでも拡大解釈し、丸腰中立まで拡張してきますからね。

現時点で、内容はフィアンシャルタイムス紙が伝えるもののようですが、他の報道がないのでクロスチェックできないことをお断りしておきます。
Ukraine and Russia draw up neutrality plan to end war
このFT紙を航空万能論様が和訳して要約されています。ありがとうございます。
わかってきたのは、15項目中6項目です。

「FT(フィナンシャルタイムス)紙はウクライナとロシアの和平交渉に携わっている3人の関係者から得た情報に基づき、戦争を終結するため15項目の合意案について以下のような内容が含まれているらしい。
① ウクライナがNATO加盟を放棄して中立を宣言。
② ウクライナ軍の縮小(自国軍の保持は放棄しない)。
③ ウクライナ国内に外国軍基地を設置しない。
④ウクライナは米国、英国、トルコなどの同盟国から安全保障の提供を受ける。
⑤ウクライナの公用語にロシア語も含める。
⑥ ロシア軍は2月24日以降に占領した全ての地域から撤退する。」
(航空万能論3月17日)
https://grandfleet.info/european-region/ukraine-and-russia-are-preparing-end-of-war-document-possible-agreement-within-a-few-days/

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Михайло Подоляк リモートでの和平交渉 

全部で15項目ですが、残り9項目は現時点で不明です。
う~んなるほど、残り9項目にバクダンがあるかもしれませんが、この妥結内容が事実ならウクライナに有利な内容です。
たとえば
①の「ウクライナがNATO加盟を放棄して中立を宣言」などは、既にゼレンスキーが口にしていることで、戦争前からなんどとなくNATOは加入をさせる気はないと言っていますから、プーチンがなにもこんな戦争をする必要はそもそもなかったのです。
ウクライナは憲法改正してNATO加盟条項を削除せねばなりませんが、それに代替するものがあればよいのです。

②の「ウクライナ軍の縮小」は、ロシアが丸腰武装放棄しろということに対する妥協線です。
本来このような軍縮条約は、キッチリと陸軍兵力は何万人までを保有上限、戦車何台、水上艦艇何隻と細かい規定をするのですが、ただの「縮小」ならば、極端にいえば1個分隊の削減でもいいことになります。
これはロシアが完全にウクライナを倒した後ならやりたい放題ですが、今のようにウクライナ優勢のまま膠着してしまった場合、そこまで強いことはウクライナに要求できないはずです。
したがってあいまいに決めて、あいまいに解釈されることになります。

③の「ウクライナ国内に外国軍基地を設置しない」は、ロシアは米軍ないしはNATOの基地を念頭に置いているのでしょうが、もともとウクライナに米軍のミサイル基地を設置させる計画もありません。
ロシアが妙な恐怖心で騒いでいるだけのことです。
基地は置かないが、別の方法で米国やNATOとの軍事的提携は可能です。

それが④の「ウクライナは米国、英国、トルコなどの同盟国から安全保障の提供を受ける」という部分です。
もしこれがほんとうなら、よくロシアは呑んだなという内容です。
この「安全保障」が意味するものは、今回のウクライナ戦争中のように大量の歩兵携帯型対戦車ミサイルや、歩兵携帯型対空ミサイル、あるいは今噂されているスロバキアからの対空防衛システムのS300や トルコからのS400などの提供などかもしれません。

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対空防衛システムのS300
ロシアはS-300をシリアに供給しますか?防衛省は言った - ニュース - 2022 (ww2facts.net)

これはウクライナが求めていた飛行禁止区域に替わるものとして、自由主義陣営が提供しようとするものです。
これをウクライナが得ると、ウクライナの空をロシア軍機が飛行することは撃墜覚悟の自殺的飛行となります。

この「安全保障」措置に付随して、米欧からインストラクターの肩書で、多くの米欧の軍人たちがウクライナ基地に駐屯するかもしれません。
自分らの基地は作らなくとも、ウクライナ軍の基地をに入ればいいだけのことです。
あるいはNATOに加盟できなくとも、直接米国や英国、あるいはトルコとの二国間安全保障条約を結ぶことも可能かもしれませんが、そこは微妙なところです。

⑤の「ウクライナの公用語にロシア語も含める」というのは、せめてものロシアへのお土産です。
意味するのはクリミアやドンバス・ルガンスクでのロシア語公用語の容認ですが、実態としてはウクライナはこの親露地域を認めたわけでもなんでもありませんから、今までと変わらずということです。
ロシアはクリミア併合を認めよ、東部2州の「独立国」を認めよと言ってきたはずですから、ずいぶんと譲ったものです。

⑥の、「ロシア軍は2月24日以降に占領した全ての地域から撤退する」は、これがほんとうならウクライナの勝利確定です。
約1万人の戦死者と3万人の負傷者を出し、世界中にロシア軍の弱さをさらけ出してプーチンが得たものは、わずかに「ロシア語の公用語」だけということになります。
もっとも残り9項目の蓋があかないと、決定的なことはまだ言えませんが。

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国際司法裁判所、ロシアにウクライナでの軍事行動の即時停止を命じる [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

なお3月16日、国際司法裁判所(ICJ)は、ロシアに対して、ウクライナでの軍事行動を即事停止するよう命じる仮保全措置を出しました。

「国際司法裁判所は16日「ウクライナで起きている広範な人道上の悲劇を深刻に受け止めており、人命が失われ人々が苦しみ続けている状況を深く憂慮している。ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」として、ウクライナ側の訴えを認め、ロシアに対して直ちに軍事行動をやめるよう命じる暫定的な命令を出しました。
国際司法裁判所の訴訟には当事国の同意が必要で、今回ロシアはその意思を示していませんが、裁判所は暫定的な命令には法的拘束力があるとしています」
(NHK3月17日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220317/k10013535501000.html

これは、去る2月26日のロシア軍事侵攻に対しての正統な理由がないとするウクライナの提訴を受けたものです。
一方ロシアは、親露派地域でのジェノサイドがあったというのを侵攻理由にしていましたが、国際司法裁判所はこれを否定しました。
命令には15人の裁判官のうち13人が賛成し、ロシアと中国の裁判官が反対したそうです。分かりやすいこと(苦笑)。
これには法的拘束力がありますが、ロシアと中国は法の支配を認めないお国柄ですから、これで戦争が終わるわけではありません。
しかしウクライナを支援する世界の多くの国々の主張を、強く後押しすものにはなるでしょう。

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ロシア国債、支払い期限 デフォルトの恐れ強まる - 産経ニュース (sankei.com)

また昨日、ロシアが債務不履行の期限を迎えました。

「ロンドン時事】ロシア国債がデフォルト(債務不履行)となる可能性が高まっている。16日にはドル建て国債の利払い期日を迎えたが、ロシア政府は欧米の制裁で外貨準備を凍結されており、支払いは困難との見方が金融市場では有力だ。もしデフォルトに陥れば、ロシア通貨危機の1998年以来となる。(略)
ロシア政府が発行する外貨建て国債の中にはルーブルでの支払いを認めているものもあるが、今回の支払いには適用されない。格付け大手フィッチ・レーティングスは15日、もしロシアがルーブルで支払った場合、猶予期間後にデフォルトと認定すると表明。他の格付け大手も同様の判断を下す可能性が高い 」
(時事3月17日)
ロシア国債、迫るデフォルト 利払い期日到来:時事ドットコム (jiji.com)

ロシアにはあと1カ月間猶予期間がありますが、ほぼテフォールトは確定したとものと思われます。
このことによる経済的損失はたいしたことはありませんし、連鎖することも少ないでしょうが、ロシア経済の信頼性は根底から揺らぐことは間違いありません。
プーチンの首がいっそう締まることは誰の目にも明らかです。

このようにほのかに光明が見えてはきましたが、こういう停戦合意直前にロシア軍が支配地域を少しでも拡大しようとして無差別攻撃に走る可能性もありますので注意しましょう。



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2022年3月17日 (木)

中国はロシアに加担するか?

026

揺れましたね、大きかった。震度5弱だとか。
真夜中だったので損害はわかりませんが、大震災以来最大は確かみたいです。
福島が心配です。

さておとといのこと、なんと中国がロシアと心中したいというニュースが飛び込んできました。

[ロンドン/ワシントン 15日 ロイター] - 米高官によると、ウクライナ紛争を巡り、中国がロシア側の要請に応じて軍事的・経済的援助を行う意思を示したと、米情報当局が14日に北大西洋条約機構(NATO)とアジアの同盟国に外交公電で伝えた。
一方、ロンドンの駐英中国大使館は15日、こうした米国の主張を否定した上で、米政府が「悪意のある偽情報」を拡散し、紛争をエスカレートさせるリスクを冒していると非難した。
同大使館はロイター宛ての声明で、米国はウクライナ問題で中国に対する悪意のある偽情報を繰り返し拡散していると指摘。中国はこの問題の和平協議を促す上で建設的な役割を果たしているとし、現在の最重要課題は事態の鎮静化と外交的解決に向けた取り組みだと表明した。
先の米高官によると、米情報当局の外交公電には、中国がロシア支援計画を否定するとの見方も記されていた。また、詳細はブリーフィングで直接共有する見込みという」
(ロイター3月14日)
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-china-cable-idJPKCN2LB2C9

ありえないとまではいいませんが、眉に唾つけたほうがいい情報です。
たまに飛ばすので有名なロイターですからね。
米中会談を前にした米国国務省筋の意図的リークで、あえて表に出して国際社会に存分に叩かせて、加担などしたらどえらい目に合うからなというブラフだと思います。
先月、米国がロシアの開戦日を16日と予告してみせ、プーチンお見通しなんだからな、やるなよ、とやったのと同じです。

いつも元気のいい戦狼外交官の趙立堅も、珍しくこんなことをこぼしています。

「中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は14日の記者会見で、ロシアのプーチン政権が中国に軍装備品などの支援を要請していると報じられたことに対し「ウクライナ問題で、米国は次から次へと中国を標的にした偽情報をまき散らしている」と反発。具体的な説明は行わず、米側に責任を押し付けた」
(産経3月15日)
米、中露協力に警告「深い懸念」 直接高官会議で - 産経ニュース (sankei.com)

いつもは偽情報しかしゃべらない彼が、米国に嘘を言うなというわけで、米国のリークがこたえていることがバレました。
おそらく中国首脳部において、支援派と支援拒否派が微妙な対立をしていたのかもしれません。
その結果、実際に行われた米中会談は、このようなことになったようです。
中国は王毅などという小物ではなく、楊潔篪(よう・けつち)を出してきました。
この楊こそが、中国共産党の外交方針トップで、王などにはなんの権限もありません。

米国側のサリバン代表は、国家安全保障問題担当大統領補佐官(長い)というポジションです。
この大統領補佐官職はブリンケンより上で、この人物を出したこと自体、米国がいかに中国の加担を重くみているのかを、中国側に知らせることになりました。
ジェーク・サリバンはなかなかキッチリと言うべきことを言う人物で、ともすればナヨナヨするバイデンの尻を叩いている人です。
サリバンの1月29日の演説を要約すると、こういうことを述べています。

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ジェーク・サリバン補佐官 キレっキレって顔。フォーサイト

「中国に対し、新疆ウイグル自治区や香港での振る舞いや、台湾への敵意や脅迫への対価を払わせ、行動をとる準備をすべきだ。
(新型コロナウイルスの発生源などの調査について)中国が十分なデータを提供していない。
このパンデミックで何が起きたかを知るには科学的な調査しかない。だが、中国政府からの情報には透明性が欠けている。
正確な発生源を突き止めるには、WHOがやるべきことがまだたくさんある」

パチパチ、よー言うた。サリバンはヒラリー・オバマの外交スタッフだったので、まったく期待していませんでしたが、案外がんばる。
楊潔篪は、外交は恫喝とかけひきくらいに考えている共産党官僚ですから、サリバンのようなタイプが釘を打ち込まないとダメなのです。

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楊潔篪氏、米大統領補佐官と会談 (news.cn)

「米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は14日、ローマで中国の外交担当トップ、楊潔篪(よう・けつち)共産党政治局員と会談し、ウクライナに侵攻したロシアと中国の協力関係に「深い懸念」を表明した。バイデン政権高官が同日明らかにした。中国がロシアの求める軍事・経済支援に応じたり、制裁回避に協力したりする可能性が取り沙汰される中、中国側に警告を発した。
約7時間に及んだ会談でサリバン氏は、米国と同盟・パートナー諸国が「ロシアに(侵攻の)代償を支払わせることで結束している」(政権高官)ことを改めて強調し、中国を牽制した。両者はウクライナ情勢のほかにも、台湾海峡をめぐる中国による威圧的な行動や、米中間の安全保障上の危機管理問題など幅広い議題について「集中的で率直な話し合い」(同)を行った」
(産経3月15日)

実に7時間もの会談で、議題はロシアだけではなく台湾問題にまで及んだようです。
ウクライナ侵略と台湾を重ね合わせて議題にすることで、台湾侵攻などしたら分かっているな、ロシアが受けている「見たこともない経済制裁」だけではおさまらんぞと、抑え込もうとしたのでしょう。
とうぜんなにも決まらなかったようですが、中南海の連中にロシアへの加担がいかなる結果を生むのかを知らしめるのが目的ですから、これでいいのです。

一方、外相の王毅は、よりはっきりと支援には腰が引けていました。

「王毅 国務委員兼外相は7日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)にあわせて記者会見し、ウクライナ情勢に関して「必要な時に国際社会とともに必要な仲裁をしたい」と述べた。ロシアに近い中国の貢献を求める国際社会の声に押された形だが、具体的にどう導くかは言及しなかった。中国はロシアともウクライナとも良好な関係にあり、ロシアのウクライナ侵攻後、王氏は双方の外相と電話で協議している。
中国は、現在もロシアの行動を「侵攻」とは認めていない。これに関して、王氏は「中国の立場は何度も明らかにしている。我々は公正な態度で問題を判断する」と従来の説明を繰り返した。そのうえで、「問題解決に必要なのは冷静さと理性であり、火に油を注いで食い違いを激化させることではない」と訴えた。 ロシアとウクライナの和平交渉には期待を表明しつつ、「情勢が緊迫するほど和平交渉は必要で、矛盾が大きいほど腰を据えて話さなければならない。中国は建設的な役割を果たしたい」と語った」
(朝日3月7日)
中国の王毅外相「必要な時に必要な仲裁したい」 ウクライナ情勢巡り(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

王毅が言っているのは、中国はこれを「侵攻とは認めていない、和平交渉が煮詰まってきたら仲介してもよい」ていどのことです。
仲介くらいはやぶさかではないていどで、たぶん実態のあるロシア支援には反対なはずです。

そりゃそうでしょうとも、ウクライナ侵略は中国にとってメリットはなにひとつもないのです。
中国の対外政策のキモである一帯一路は、要は有り余った余剰のチャイナマネーの捨て所のルートをつけることです。
中国国内で散々やり尽くした
インフラ投資を沿線国にバラまいて、貿易・投資・技術関係を構築しようとしています。
同時にこのチャイナマネーのニンジンをぶら下げて、政治的に「中国圏」を作るということも目的にしてきました。

特に東欧諸国は、西欧とアジアを結ぶ陸の要衝として重視してきました。
彼らは常々西欧の投資が少ないことに不満でしたから、中国の甘い言葉に飛びつきました。
この東欧における一帯一路に協力的だった筆頭が、こともあろうに今火中のただ中にいるウクライナとポーランド、リトアニアだったわけです。
彼らはNATOに守ってほしいという意味での親西欧であって、外交姿勢は反露であっても反中ではありませんでした。
これらの国々は、中国との関係は悪くなかったのです。
だからウクライナ外相が中国に仲介を求めたわけです。

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ワシントンポスト 友好協力条約を締結するヤヌコビッチと習

いや悪くなかったどころかウクライナは2013年、親露のヤヌコビッチの頃に、中国と友好協力条約を結んで空母遼寧のスクラップやスホーイ27を提供してきました。
この中国・ウクライナ友好協力条約締結に際しての共同声明では、「ウクライナが核兵器による侵略やその類の脅威にさらされた場合、中国はウクライナに対して相応の安全保障を提供する」と明記されていました。
これは中国がウクライナに「核の傘」(核抑止)を提供することを意味します。
このようにウクライナの旧来のスタンスは、親NATOであっても親中的傾斜が強かったのです。

え~、という方にお断りしておきますが、ウクライナという国はしたたかでなければ生き延びられない東欧圏の国だということをお忘れなきように。
彼らは何度亡国の目にあってきたことか。何度世界地図から抹殺されたことか。
ウクライナにしかり、ポーランドに
しかり、リトアニアにしかり、フィンランドにしかり。
これらの国が日本と外交的利害が完全に一致するはずがありません。
腐敗しているからどうだとか、ネオナチだからどーした、早く降伏したほうがいいなどと訳知りを言う者が絶えませんが、何を安全地帯で言っているのでしょうか。
ウクライナ人は負ければ国そのものがなくなるか、よくても異民族支配になってしまうことを知り尽くしています。
だから戦っているのです。
世界はそのウクライナ人の独立を願う志と気高い奮闘ぶりに深い敬意を払っているから支援するのです。お間違いなきように。

中国からすれば、ロシアの「しなくていい戦争」は、このような中国の東欧での政治的経済的資産を破壊するものでした。
習は内心プーチンに、なんてことしてくれるんだ、馬鹿め、オレが営々と10数年かけてきたプロジェクトをブッ壊しやがって、と毒づいていたはずです。
プーチンのSOSに安易に乗ってしまえば、ウクライナはもちろん、ポーランド、リトアニアとの関係修復は絶望的となることでしょう。

そのうえ、昨日見たように、ロシアはクリミア・東部2州でやった分離独立を強行するやり方を、今回もウクライナ南部で踏襲しました。
中国にとって眉根に深い皺が寄ったことでありましょう。
ロシアが勝った暁には、これらの「偽共和国」を中国に承認してくれと言って来るに決まっています。
そんな分離独立を認めれば、中国もまたウィグル・チベットや台湾に対して分離独立を認めねばならなくなってしまいます。

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習氏とプーチン氏―便宜上の同志 - WSJ

そもそも中露関係は同盟というにはほど遠いならず者が肩寄せ合っているていどのものでした。
ウォールストリートジャーナルはこれを「便宜上の同志」と皮肉っています。
軍事的には共同訓練というパレードをするていどのことしかできませんし、利害がそこここで大きく食い違っています。

「中ロの協力には限界があるように見える。防衛面では連携しているが、正式な同盟は結んでいない。米当局者や軍事専門家は、中ロ軍による共同演習を除けば、軍事パートナーシップがどの程度の水準かは判断しづらいと話す。
 ロシアでは中国経済の揺らぎが強まっていることを懸念する声もある。中国の安全保障専門家によると、中国政府はウクライナ情勢が本格的な軍事紛争に発展することを警戒している。ロシアや欧州での中国の商業的利益や、グローバルな貿易・投資と経済が密接に結びついていることが、その理由だという」
(ウォールストリートジャーナル2022年3月17日)

中国の本音が透けて見えるのは、五輪での中露首脳会談における共同宣言にウクライナのウの字もなかったことです。
たぶん、習はプーチンからウクライナ侵攻することを聞かされていなかったのかもしれません。
知らされていないのに、中国が望まざる戦争をおっ始めたあげくは、短期戦争に失敗して兵站が干上がり、「見たこともない制裁」で亡国寸前。
そしてあろうことか核戦争まで口走るに至って、ロシアは義兄弟転じて地勢学的リスクそのものになってしまいました。

ここで合理的に思考すれば、まず中国はロシア支援に絶対乗るはずがありません。
口先支援が精一杯ですが、プーチンがそうであるように、独裁者は時としてとてつもない愚かな飛躍をする人種ですからわかりませんが。

ウクライナに平和と独立を。

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2022年3月16日 (水)

ロシア、占領地域で偽「人民共和国」を画策

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中国がロシアの支援要請に応えるつもりだという情報が、米国筋から入ってきていますが、実際はわかりません。
仮に応えたならば、中国もロシアと同じ制裁対象国となるので、中国の受けるダメージは日本の半分ていどの経済規模しかないロシアとは比較にならないものになるはずです。
私はそこまで中国がロシアへの信義に厚いとは思えません。
この情報自体がたぶん米国務省筋のリークなので、米中会談前のアドバルーンではないかと思います。
なにか分かりましたら、続報いたします。

さてロシアは、たぶん前々からこの占領地プランをもっていたと思われますが、占領地域で「人民政府」作りを始めたようです。

「ロシアが占領しているウクライナ南部ヘルソン州では、ロシア軍がいわゆる「ヘルソン人民共和国(KhPR)」創設に関する偽住民投票の実施を準備している。
12日、セルヒー・フラン・ヘルソン州議会議員がフェイスブック・アカウントにて伝えた。
フラン氏は、「占領者は、ヘルソン州議会議員に電話し、私たちが彼らと協力する準備があるかと質問している。私は、断固拒否した」と書き込んだ。
同氏はまた、ヘルソン州行政府議会議員全員に対して、「皆が、行動の結果を理解していると確信している」とし、いわゆる「KhPR」の創設は同州を希望も生活も未来もない「穴」に変貌させてしまう、1票たりとも与えてはならない、彼らに「KhPR」を合法化させてはならない、と強調した。
また、同日、ヘルソン州議会のユーリー・ソボレウシキー第一副議長はフェイスブックにて公開した呼びかけ動画にて、ヘルソン州議会の議員が現在、侵略国ロシアの偽住民投票組織といわゆる「KhPR」創設の試みに関する情報について書簡を作成していると伝えた。
ソボレウシキー氏は、自身が連絡した州議会議員は皆、「ヘルソン州は、常にウクライナであり、今も未来もウクライナだ」という立場だと強調した。
(ウウクライナフォーム3月14日)ロシア占領軍がウクライナ南部で「ヘルソン人民共和国」創設に向けた偽住民投票実施の動き (ukrinform.jp)

当然のこととして住民は抵抗し、ゼレンスキーもこんな偽共和国を認めるはずがありません。
直ちに否認声明を出しています。

「こういった報道などを受けて、ゼレンスキー大統領は13日、SNSのビデオメッセージで、「ロシアがヘルソン州でまた偽の共和国をつくろうとしている」と批判した。ただ、地元議会が「ヘルソンはウクライナだ」との意見を採択していることから、ゼレンスキー氏は「偽の共和国ができる余地はない」とも強調した」
(ハフィントンポスト3月14日)
制圧地域で住民投票を準備か 「ヘルソン州で偽の共和国作ろうとしている」ウクライナ側は批判 | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)

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ウクライナフォーラム  ヘルソンの住民抗議の模様

それにしても悪どい。しかもマヌケに悪どい。
軍隊で侵略しておいて、お前ら独立しろもないもんです。
言うも愚かですが、軍事占領下での政体の変更は国際法違反で無効ですが、ロシア相手に言っても無駄でしょうが。
だからこそ住民からの自発的意志で独立を求め、住民投票にかけて晴れて「ナンジャラ人民共和国」誕生という手続きにしたいようです。
クリミアや、ドネツクでとった方法の三番煎じで、何度も同じことをするから頭が悪い悪党と言われます。

このヘルソンは、ウクライナ戦争の比較的初期の3月3日に陥落した南部の主要都市です。
ヘルソンの戦い - Wikipedia

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BBC

この南部地域はアゾフ海に面した海運の要衝で、港湾都市マリウポリで激しい攻防が伝えられていました。
現在は市民兵が防衛に当たっているとの情報もあって、包囲に苦しんでいます。
ロシアは完全制圧したと発表しているようです。

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NHK  炎上するマウリポリ

「ICRC=赤十字国際委員会は13日、ウクライナ東部のマリウポリで数十万人の市民が食料や水、医薬品などの深刻な不足に直面していると窮状を訴えました。
発表によりますと、赤十字のスタッフを含めてあらゆる年代の人たちが暖房のない地下室に避難していて、食料や水を求めて、わずかな時間外に出ることも命懸けだということです。
重傷者や衰弱している人を治療することができなくなっているほか、市民や兵士の遺体は、がれきの下や野外でそのままになっているとしています。
現地スタッフの1人は、「戦闘の音は絶えない。建物は攻撃され、砲弾の金属片などがいたるところで飛び交っている。これがすべての市民が直面している状況だ」と激しい戦闘が続いている状況を明らかにしました」(NHK3月14日)
【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(14日の動き) | ウクライナ情勢 | NHKニュース

このマウリポリと西のオデッサを結ぶ線を、ロシア軍は占領しようとしており、オデッサを制圧され場合、ウクライナは最大の輸出積み出し港と軍港を同時に失うことになります。
オデッサは、現在持ちこたえています。

さて、ロシア 占領地政策に戻ります。
このヘルソンを制圧したロシア軍は、ヘルソンの議会メンバーに「ヘルソン人民共和国」を設立するため住民投票を行うように要請し、それと引き換えに「人道支援」をすると申し出ました。
片手で死ぬほど殴りつけてから、「飯がほしいだろう。独立のための住民投票をやれば、くれてやるぞ」というわけです。
実に悪どい。
ヘルソン市民はこの「人道支援」をきっぱり拒否し、街の入り口でウクライナ国旗を持った住民らがロシア軍輸送部隊を追い返しました。

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制圧地域でロシア側が住民投票を準備か ウクライナメディアが報道 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

丸腰のウクライナ市民が、武装したロシア軍に身を挺して前進を阻む光景は、ウクライナ各地で見られていますが、ほんとうに胸が熱くなります。
私が今やれと言われてできるかどうか。

さらにヘルソン議会は、議員44人(定数64)が、「ヘルソン地域はウクライナの一部であり、この地域に擬似共和国は存在しない」という宣言を採択しました。
今後ロシアがいかなる手段に訴えるかわかりませんが、ありえる想像としては、強権的に市議会を解散させ、彼らの息のかかった者らを議員に据えた偽「議会」を作ることです。
実際に、2月26日に占領されたメリトポリでは、ロシア軍とみられる暴漢がヒヨョードル市長を拉致して、新市長にすげ替えてしまいました。

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メリトポリ市長がロシア軍に拉致…ゼレンスキー大統領「テロの新段階」と非難(日ahiテレNEWS) - Yahoo!ニュース

「政府の発表によると、フェドロフ市長がロシア軍に拉致されたのは11日。翌12日に公開された映像では、軍服姿の集団に囲まれ、市の危機管理センターから連れ去られる人物が確認できる。ウクライナ議会はツイッターで「占領軍の兵士約10人で市長を拉致した。彼は敵と協力することを拒否した」と伝えた。市長は連れ去られる際、頭にビニール袋をかぶせられていたという」
(スポニチアネックス3月14日)

鶴岡路人慶応准教授は、これを「見せしめ」としていますが、もちろんその意味もあるでしょうが、ヘルソンでやられている「独立」工作の一環ではないかと思われます。
ロシア軍に服従する者は独立に賛成しろ、しなければ拉致して「行方不明」にさせるぞという脅迫行為です。
このように侵略が順調にいった南部地域でのロシアの所業を見ると、この「偽共和国」作りを全国規模でやる気だったことがわかります。
推測の域を出ませんが、プーチンはゼレンスキーを殺してドニエプル河以東を占領し、議会をすげ替えて「偽ウクライナ人民共和国」を作る思惑だったようです。

笑えるくらい、この手法はかつて大戦直後に東欧圏で衛星国つくりまくったスターリンのやり口に酷似しています。
ロシアはペレストロイカ以前のソ連帝国に逆戻りしたようです。
そういえば、ロシア軍戦車がソ連の赤旗をたなびかせて進撃していましたっけね。

 

 

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在日ウクライナ大使館Twitter 

ウクライナを応援したい方々用の寄付金銀行口座です。
各種ありますが、直接ウクライナに手渡せれるので、これがもっとも信頼できるものです。

三菱UFJ 銀行
広尾支店 047
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2022年3月15日 (火)

ウクライナが「ネオナチ国家」だって?

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ロシアのウクライナに対する非難に、あそこはネオナチ国家だから、というものがあります。
なんでも、ロシア軍がウクライナの産院を爆撃したのも、あそこがネオナチのアジトだったからだとか(笑)。
そもそも侵攻理由からして、ウクライナ人民をネオナチから救い出すのだァ、とのこと(またまた笑)。
ロシアの駐日大使など、口を尖らせて、「日本はファシストの味方をしている」と言っています。
露大使館のツイートには、見よ、これが証拠であるぞと麗々しく写真つきで登場しますが、そんなにネオナチって国家を乗っ取るほどすごかったのね。

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駐日露大使館

日本においても、このウクライナ政府=ネオナチという言説は、ロシアの代弁者たちがよく口にする定番です。
代弁者ではありませんが、山口敬之氏もウクライナに「ネオナチ疑惑」があると論じています。
※3月11日 『NATOがツイートを削除したワケーウクライナ「ネオナチ勢力」のファクト【山口敬之の深堀世界の真相 No75】』
https://web-willmagazine.com/international/wtNPr

「ロシア政府はこれまで、ウクライナのネオナチ勢力について数々の「疑惑」を主張してきた。
 アゾフ連隊については、ロシア軍の部隊が包囲している複数の都市で「彼らが市民を人質に取っている」、ロシア軍が砲撃したとされている人道回廊を「アゾフ連隊が塞(ふせ)いでいる」、ロシア軍が空爆したとされている東部マリウポリの産科医院を「彼らが占領していた」と主張している。
 しかし、日本の報道ではこうしたロシア側の主張はおろか、アゾフ連隊などウクライナ政府軍にネオナチ勢力が混入しているという事実すら伝えられない。だからこそ、ウクライナ政府軍に義勇兵として参加する日本人の動きも極めて肯定的に伝えられている。
  しかし、日本のメディアが伝えなくても、ウクライナ政府軍にネオナチ勢力が入っている事は紛れもない真実である。そしてこうしたウクライナ国内の極右勢力の動向は、ウクライナ情勢の本質を理解するために不可欠なファクターの一つである」(山口前掲)

山口氏はこの「アゾフ大隊」が、ドネツクの親露派分離主義者と戦って虐殺事件を引き起し、またいまもなおウクライナ政府軍に加わっていることをもって(←誤認)、ウクライナ政権内にネオナチが浸透しているかのように述べていますが、うーんどうだかな、私はそうは思いません。

かくいう私自身も一時期は佐藤優氏の影響で、ウクライナの政権内にネオナチが浸透しているのではないかと2014年頃に書いたことがありました。
関連記事『ウクライナ紛争の背景その1 ガリツィア地方とウクライナ民族主義』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-e52c-1.html
以後8年間、まったくこのテーマについては触れてこなかったので、改めて修正をかけておきます。
結論から言えば、ウクライナ=ネオナチ説は真実も多少含まれている虚構にすぎません。
それはゼレンスキーがユダヤ系ウクライナ人で、大戦中には家族がナチスドイツによって迫害を受けていることからも判るはずです。

この問題はウクライナの複雑な歴史を分かっていないと理解できないので、1917年まで時間を巻き戻します。
大戦前のウクライナには強力な独立運動が存在し、1917年6月23日には「ウクライナ人民共和国」が独立宣言し、国際的に承認を受けた時代がありました。
これはレーニンが容認したからで、プーチンはこれを「そもそもウクライナはロシアなのに人工的国家を作ってしまった」として批判しているようです。
そしてすぐにウクライナは1922年に、スターリン統治下のソ連の一共和国に編入されます。

当時、ソ連は革命直後の内戦が終了したばかりであり、国庫は見事にからっぽでした。
外貨を稼ぎ、重工業化を進めるというのが、当時のスターリンの強い意志でした。
そのためにもっとも手っとり早い外貨獲得手段として目をつけられたのが、ウクライナの穀倉地帯でした。
ここでスターリンが取った手段が、悪名高い飢餓輸出です。
1930年代、GPU(国家政治保安部)は強権的にウクライナの農業集団化を実施します。
「集団化」とは、土地を農民から奪い、コルホーズ(共同農場)に一元化することです。

この集団化の過程で共産党は、村の指導者層は「富農」として処刑し、農地を手放すことを拒否する農民は「反革命」「人民の敵」というレッテルを貼って、これも処刑するか、家族もろともシベリア流刑に処されました。
このときにGPUは、ウクライナ民族主義者、知識人、自由主義者を根こそぎ逮捕し、「人民の敵」として処刑するか、ラーゲリ(強制収容所)送りとしました。

豊穣な穀倉地帯であったウクライナもみるみるうちに疲弊し、農民に不満が鬱積していきます。
たとえば、集団化と強制徴発政策を共産党官僚の言う通り実施すれば、農民自身には自らが食べる麦も残らず、翌年の種籾すら食べてしのぐ状況がどの村にも現れます。

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オーストリア技術士によるホロドモールの写真 (ukrinform.jp)

穀物の取引さえ禁じられたために、農業地帯の街には餓死者が増加していきます。
農産物は共産主義体制の下では、農民の私有物ではなく「人民の財産」とされ徴発ノルマの不達成はラーゲリ送りを意味しました。
畑に落ちた落ち穂を拾ったばかりに、流刑地に家族もろとも10年間の流刑に処せられた例すらあります。
飢えのあまりエンバクなどの飼料用穀物を食べた農民は、「人民の財産の悪用」として流刑にされました。

「ウクライナ人たちは強制移住により、家畜や農地を奪われたために家畜を奪われ、穀物を収奪されたことによる死亡者は、400万人から1,450万人と言われ、400万人の出生が抑制された」(Wikipedia)
(※飢餓による死亡者数は複数の説が存在します)

ウクライナ政府は独立後、この大飢餓を「ホロドモール」と呼び、ウクライナ人に対する絶滅政策であったとしています。

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オーストリア技術士によるホロドモールの写真 (ukrinform.jp)

このウクライナ人の怒りが、ウクライナ独立運動へと転じたのも当然のことです。
ウクライナは、ナチスドイツに1941年から1944年にかけて占領されていました。
この時にウクライナ民族は二分されました。
一方はドイツ侵略者に抵抗し、連合軍だったソ連に協力する道を選んだ者であり、方やロシアの軛から逃れるために独立運動をしていたステパン・バンデラのようなウクライナ民族主義者たちでした。
前者はソ連軍と共に戦い、後者はドイツと協力します。

ではソ連が崩壊してロシアからの独立が達成されたかといえば違いました。
1991年にウクライナは独立を果たしましたが、政権は巧妙に立ち回った旧共産党幹部の親露派に握られてロシアの属国化してしまいます。
この親露派のヤヌコビッチ政権が民衆のデモで倒されたのが2014年でした。
国家は混乱し、この時の隙を狙うようにしてプーチンは今回の第1幕であるクリミア強奪と東部2州の分離を画策しました。
そして新たに生まれたばかりの反露政権は軍事的な敗北を喫してしまい、結ばされたのが屈辱的「ミンスク合意」です。
このミンスク合意は、ウクライナにとっていわば敗戦処理協定であって、たいへんに不利な条件をつけられていました。
ちなみにこのロシアのパペットのヤヌコビッチは、今ベラルーシにまで戻ってウクライナに戻ることを画策しています。

また大戦前のウクライナには、ヨーロッパ最大規模のユダヤ人コミュニティーがあり、270万人のユダヤ人が住んでいました。
ゼレンスキーの家族もこの中のひとりで迫害を経験しています。
現在のウクライナは、とうに反ユダヤ主義とは決別し、今も14万人のユダヤ系住民が居住し、一切の民分差別は廃絶されています。
最近も、2022年2月には反ユダヤ行為を刑事犯罪とする法律が可決されていますが、こうした法律をあえて作らねばならなかったのは、ウクライナ国内に極右民族主義者のバンデラを崇拝し反ユダヤ主義を奉じるグループがいたからです。

このバンデラ主義者たちは「ネオナチ」と称される者たちで、「アゾフ大隊」(アゾフ民族主義大隊Azov special detachment) という極右過激派団体を作っていました。

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山口氏はこの「アゾフ大隊」の存在をもって、ウクライナに「ネオナチ疑惑」があると論じていますが、過大評価です。
アゾフ大隊がかつて一時期ドネツク人民共和国」の戦闘員と激突したのは事実ですし、一時期正規軍と共同行動をしたことまでは事実です。
それは理念が一致したためではなく、反露新政権の正規軍が余りに弱体であったからです。

2015年8月にはウクライナ政府は彼らの拠点のある南部マリウポリ周辺の前線からアゾフ大隊を含む全ての極右ボランティア大隊を引き揚げることを命じ、正規軍部隊と入れ替えています。
その後、アゾフ大隊は、マリウポリから南西40キロのウルズフに拠点を移しました。

そしてさらにアゾフ大隊はウクライナ政府の一切の命令に従わないために、2022年にウクライナ政府軍によって討伐を受けて壊滅させられました。
※southfron 2022年3月4日
"Ukrainian Armed Forces Destroyed Headquarters Of Azov Nationalist Battalion In Mariupol – Report"
https://southfront.org/ukrainian-armed-forces-destroyed-headquarters-of-azov-nationalist-battalion-in-mariupol-report/

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上の写真は、鹵獲したアゾフ大隊の旗をひろげて喜ぶウクライナ政府軍兵士です。アゾフ大隊ではありませんのでご注意下さい。

「現在マリウポリ市で封じ込められているアゾフ大隊のメンバーは、ウクライナ軍の指揮に従うことを拒否したと伝えられている。
この民族主義大隊は、市内で人質にとられていた地元の民間人やゼレンスキー大統領にも大きな脅威を与えてきた。
(略)これらのメンバーは、ゼレンスキーがウクライナの敗北を受け入れるならば、彼に銃を向けるだろう」
(サウスフロント前掲)

このようにアゾフ大隊は、以前からウクライナ政府の統制下にはなく、いまはウクライナ軍から完全に排除されており討伐の対象にすらなっています。
歴史的に独立運動が複雑を軌跡をたどったのは事実ですが、現在はこの両者に思想的な繋がりはなく、ゼレンスキーがユダヤ系であることからもわかるように、現政権はアゾフ大隊と強い対立関係にあります。

ウクライナがネオナチだというロシアの主張は、事実をねじ曲げて、都合のいい一部だけを抜き出して拡大したプロパガンダにすぎないのです。
百歩譲って仮にウクライナがネオナチなら侵略して、大量の住民虐殺をおこなっても正当化されるのか、とお聞きしたいものです。

私が常々愛読している『ウィーン発コンフィデンシャル』(3月14日)に、このような記事を見つけました。

「巷には無数の言葉が飛び交っている。その中にはフェイクと呼ばれる偽りの言葉もある。
ひょっとしたら、ウクライナ危機は神のロゴスと偽りの言葉との戦いかもしれない。後者は、人間がもつ不安と恐れを利用する。プーチン大統領はロシア軍にウクライナ国内の原子力発電所を攻撃させ、「北大西洋条約機構(NATO)軍のウクライナ介入は世界3次大戦を意味する」と威嚇し、欧米諸国を恐れさせている。それに対して、ユダヤ系のゼレンスキー大統領は、「私はここにいる。恐れることはない。正義はウクライナにある」と国民に向かって呼び掛けている。
ウクライナの1人の婦人は、「プーチン氏はアンチキリストだ」と呼んでいた。「聖書の世界」からみると、ウクライナ危機は神と悪魔の戦いのようにさえ見えてくるのだ」
http://blog.livedoor.jp/wien2006/


 

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ウクライナに、平和と独立を!

2022年3月14日 (月)

プーチンが教えた核万能論とは

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まずはウクライナ戦争の概況から。

「米マクサー・テクノロジーズの人工衛星写真では、ロシア軍の車列の状況から、同軍がキーウ近郊で再編成を進め、首都に向けてさらなる攻撃を計画している様子がうかがえる。
同社によると、写真からは、キーウ近郊のアントノフ空港の北西にいたロシア軍の車列が、キーウ周辺の街に移動している。北側にいた別の車列もルビャンカ付近に移動し、砲撃の陣地を構えたことも見て取れるという。
一方、アメリカの国防当局者は、ロシア軍が過去24時間でキーウに向けて5キロ前進したと話した。
キーウの北西に位置するブチャでは、ロシア軍の砲撃が絶えず、住民らは地下シェルターへの避難を余儀なくされている」
(BBC3月11日)
https://www.bbc.com/japanese/60703279

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BBC

●米国防総省などの情勢分析
・キーウ包囲網は3方向から迫っている。
・最も接近した北西からの露軍は中心部まで15キロ。
・北西部隊後方の兵站部隊は前進を開始。
・北からの露軍はチェルニヒウを包囲し、そこで停滞している。
・北東からの露軍は20~30キロまで接近。
・東からの露軍は、スムイ方面に後退。
・ウクライナ軍は健闘しているが、じりじり押されている。
・露軍は大量破壊兵器を使用し始めている。
・シリア兵がキーフ攻略に投入されるかもしれない。

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BBC

さてプーチンは、小気味いいほど見事に戦後のフレームを破壊していきました。
このことはロシアが勝とうが負けようが、「ウクライナ以後」の世界を決定します。
ラブロフは、「ロシアは攻撃していない」なんて、わけのわからないことを言っていますが、鉄面皮にもほどがあります。
合法的核保有国であるロシアが、核を脅迫の手段に用いて他国に押し入り、数千の無辜の人々を殺戮したのですから、言い逃れができません。
これは三つの意味で戦後の枠組みを壊してしまいました。

ひとつめは、第2次大戦の反省から生まれた「現状の力による変更禁止」というルールを、ロシアが完膚無きまでに壊してしまったことです。
いままで「現状の力による変更」自体は、ロシアはクリミアで、中国は南シナ海で既にやってきたことですが、20万もの大軍を使って堂々真正面から国境を超えた事例は戦後ありませんでした。
しかも世界各国の自制と警告を無視して、です。

これを「侵略」と呼ばないで、なにを侵略と呼ぶのだという歴史的事例を、プーチンは作ってしまったわけです。
仮にこれを国際社会が認めてしまえば、「現状の力による変更」をどの国もしていいことになってしまいます。
これはとりもなおさず、暴力による支配がまかり通る世界の復活を意味します。

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朝日 国連安保理で拒否権を行使したロシア国連大使

二つ目は、侵略国が国連安保理の常任理事国であったことです。
常任理事国の役割は、世界の平和と安定の維持に尽きます。
だから拒否権と核兵器を保有する特権を与えてきたのですが、ロシアはこれを悪用して侵略に走りました。
国連は安保理がロシアの拒否権で機能不全になったために、異例の総会決議を出すことしかできませんでした。
総会決議には制裁が含まれていませんから、あくまでも道義的批判にすぎません。

ロシアは蛙のツラになんとやらで、平然と非難決議を無視して侵略の手をゆるめていません。
このように国連の無力さがこれでもかというほど見せつけられたのが、今回のウクライナ侵略でした。
ですから、国連を平和維持のために使える機関にすることが急務です。
特にP5(常任理事5カ国)からロシアを追放するだけではなく、常任理事国制度を抜本的に改革する必要があります。

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【緊急直撃】元防衛相・河野太郎氏に聞く!ロシアのウクライナ侵攻、プーチン大統領の狙いは?日本がやるべきことは?(読売テレビ) - Yahoo!ニュース

そして三つ目は、核のあり方です。
ロシアの核保有はNPTによて保証されていたわけですが、これを侵略の手段に使ったロシアに核を保有させるわけにはいきません。
なんらかの国際的協調によって、ロシアから核をとりあげる制裁を加えねばならないでしょう。
仮にロシアが敗北した場合、戦後処理の国際会議が開かれるでしょうが、ウクライナ戦争前の核の特権を剥奪をするべきです。
ただしできるかといえば、そうとうに困難であることはいうまでもないことです。
核というカードは、それほどまでに万能感に満ちたゴールドカードだからです。

また日本においては、安倍氏の提言をきっかけにニュークリア・シェアリング論が急速に現実味を帯びました。
この安倍氏の議論は呼びかけとしては面白いのですが、日本においてニュークリアシェアリングを導入しても、そのポタンは米国が握るということをお忘れなく。
ドイツのボタンはNATOと米国が握っていますから、わが国の場合は「持ち込む」ということだけをクリアしたにすぎません。
これについてはそのうちまた機会があれも記事にしますが、岸田氏など一顧だにすることなく拒否してしまいました。
こういうことだけ素早いことです。
しかし、これだけロシアの暴走を見せつけられた後の日本人は、「議論することに賛成」が7割を占めたようです。

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NPT(核兵器不拡散条約)について | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)

では、いったいなにが今回の事態を作り出したのでしょうか。
それはロシアという核保有超大国が、核もなければNATOという核の傘もない小国を侵略してしまったからです。
しかも侵略に当たって、プーチンはドスを効かせてNATOと米国に、「手出ししたら核戦争になるからな」という脅迫をしています。
このロシアの核戦争の脅迫に、NATOと米国は屈しました。
ゼレンスキーがロシア軍が撤退するなら中立も辞さない、NATO加盟は検討してもよいという悲痛なことを言ったのは、飛行禁止区域の設定にすら腰が引けている彼らへの痛烈な批判です。

つまり、核さえ持っていればどんな横車でもやりたい放題だ、俺は核をもっているから反撃できねぇだろ、文句があればほんとうに核を使ってやるぜ、はは、俺様は世界の支配者なんだ、という核万能論が生じてしまったのです。
きわめて危険な思想が誕生したのです。

これは戦後の枠組みのひとつであるNPT体制への挑戦でした。
NPT体制は、国連の安保理常任理事国(パーマネント5)と重なって、世界の安定に責任を持てる国に核を持つことを許して、その代わりにその拡散を防ぐのが役割でした。
いわば国連安保理の常任理事国は、核という拳銃を持った警官であることを期待されていたのです。.
ところが今回ロシアという警官は、その拳銃を使って隣国に押し入って強盗を働き殺人まで犯しているのですから、ではなぜこのような危険な狂人に核を持たせているのか、という疑問が世界にわき上がったわけです。

ここでロシアの侵略を失敗に終わらせ、ロシアに厳しい懲罰を与えねばならない理由は、他の地域においても普遍化が可能だからです。
ヨーロッパにおいては、次の標的はポーランド、リトアニアとなるでしょうし、アジアでも中国が模倣するでしょう。

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安倍元首相「台湾有事は日米同盟の有事」 中国政府が日本大使に抗議 - YouTube

中国は、台湾や尖閣への進攻に際して必ずこう言うはずです。
台湾はわが国の内政問題であって、主権の範囲内だ。したがって介入することは主権の侵害であるから核をもっての反撃も辞さない。
この核を使うから手出しをするな、という論理がまかり通れば、中国が行うすべての侵略行為に対して手出しができなくなります。

その場合、今回のウクライナと同じことが再現されます。
国際社会はこの中国の侵略を口で非難するでしょうが、「全面戦争になるために直接支援はできない」と傍観するのです。
バイデンなら、まちがいなくそう言うはずです。

住民がいない孤島の尖閣については、もっと露骨に切り捨てます。
米国は「領有権争いには関知しない」と建前を言って、中国のやるがままに任せてしまいます。
わが国が単独で中国の侵攻を押し返さねばならぬことになるでしょう。

さらに宮古-八重山が侵略されても、ウクライナという一国に対してもあのありさまですから、たかだかアジアの小島のひとつや二つとかんがえるかもしれません。
かくして日米同盟は大きく揺らぎ、日本は真剣に独自核保有を検討せざるをえなくなります。

それほどまでに「核の脅迫」は有効だということを、今回のウクライナ戦争は教えてしまったのです。

 

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ウクライナの独立と平和を!

 

2022年3月13日 (日)

日曜写真館 ああだつたこうだつたなあ梅の花

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白梅のひかりの中に枝の影 長谷川素逝

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夢死するもよし 梅林のこの日溜り 伊丹三樹彦

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梅が香にむせて泣き出す涙かな 政岡子規

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白梅の白きを以て強きかな 政岡子規

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咲くが如く萎むが如し梅の花 正岡子規 

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一枝は薬の瓶に梅の花 正岡子規

2022年3月12日 (土)

キーフ総攻撃迫る

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今日あたりにロシアのキーフ総攻撃が開始されると、米国の軍事筋が予告しています。
ここがウクライナ戦争の前半の山場になります。
あくまでも「前半」であって、いかなる結果になろうと、ウクライナの抵抗がここで終わることはありえません。

ロシアは著しく戦力を消耗しており、とうとう「中東から志願兵」が入るそうです。
ベラルーシも参戦するようで、プーチンと地獄までつきあうつもりのようです。
中東といってもシリア以外ありませんから、自国民に化学兵器まで使ってきた国のごろつき軍隊を傭兵まがいに使うということになります。
悪魔の軍隊であるシリア軍をキーフに入れた場合、ぞっとします。

ただし別の見方をすれば、彼らに頼らねばならぬほどロシア軍が衰弱してしまったということの現れともいえます。
徴募兵を訓練だと偽ってウクライナに連れてきたために、ロシア兵はすでに厭戦気分の塊。
補給も途絶え、3日も食事がない部隊が続出。
そのうえ大寒波に襲われ、鋼鉄の装甲車は触ると指が接着されてしまうほどになっても燃料切れで暖気運転禁止。
泥濘でうごけなくなった車両はそこここに捨てられ、ウクライナ市民からお茶をもらって涙するロシア兵もいるそうです。

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これを知ったロシア最大の圧力団体「兵士母親委員会」は、私たちの息子を騙して殺したのね、早く祖国に戻しなさいと カンカンです。

また、2月28日にはアンドレイ・スホベツキー少将(第41混成軍副司令官)、3月7日にはヴィタリー・ゲラシモフ少将(第41混成軍副司令官) 3月11日には第29軍陸軍司令官のアンドレイ・スホベツキー少将(第29軍陸軍司令官)が続々と戦死。
ゲラシモフ少将はゲラシモフ参謀総長の親戚です。
前線指揮官クラスは佐官級が相次いで戦死しています。
ロシア軍が将官級の戦死者を相次いで戦死させたのは、チェチェン紛争以来初めてのことです。

CNNはロシア軍が軍事資産の8~10%を喪失したと伝えています。

「(CNN) 米国がウクライナ侵攻に使われたロシアの軍事資産のうち8~10%が失われたと推計していることがわかった。最新の諜報(ちょうほう)に詳しい米当局者が語った。
失われた装備品には戦車や航空機などが含まれる。CNNは先週、ロシアの軍事資産の3~5%が失われたとの推計値を報じたが、今回の数値はその倍近い値となる。
この当局者によると、米国はウクライナ軍も同様の割合の軍事資産を失っていると推計している」
(CNN3月10日)

この「軍事資産」に人的損害は入っているかどうかは分かりませんが、入っているとするとやはりFSBの見立てのように1万人程度の死傷者をだしているのかもしれません。
戦車などの装甲車両はすでに1000両以上破壊されているようです。
ロシア軍の信じがたい弱さ、練度の低さ、士気の崩壊を露呈してしまいましたが、このまま力攻めして屍の山を作る気でしょう。
愚かな。ほんとうに愚かな。

キーフの情景が伝わってきました。

キーフ、ウクライナ、3月8日(AP)― ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってから、首都キーフ(ロシア語表記キエフ)ではボランティアが兵士や医療従事者、市民のために炊き出しを続けている。
 炊き出しテントからは温かいスープやポリッジ(おかゆ)などの芳香が、検問所を越えて漂ってくる。
 炊き出しははじめ、小さなテントで行われたが、ボランティアが参加するに至って大きなテントに代わり、今では十数人のボランティアが食料の調達や調理に当たっているという。
 最前線の兵士も、交代で持ち場を離れて炊き出しのテントで、ボランティアが調理した温かい食事に舌鼓を打ち、メスキットをいっぱいにして持ち場に戻る」
(AP3月8日)

涙ぐむような人間的風景です。
地下鉄には避難した人で溢れています。

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NYT 

「キエフの地下鉄の駅奥深くまで最後の数メートルをエスカレーターで降りて行くと、普段は染み1つない清潔な構内には、散乱したマットレス、スーツケース、食べ物が入ったビニール袋が目に飛び込んでくる。上空の爆撃や砲撃から逃れるために200人ほどがそこに陣取っていたにもかかわらず、その空間は驚くほど静かで、ほとんど無音に近かった。
彼らは1枚のマットレスに3、4人で寝ている。子どもたちは、駅の床に敷かれた灰色の花崗岩製のスラブの上でおもちゃの車を押しながら、母親がスマートフォンの画面を延々とスクロールして戦争のニュースを探しているのを見ている。
小さな手足が毛布からはみ出ている。だが、地上よりも駅構内のほうが明らかに暖かい。ボランティアらは、食料や生活必需品を運んできては出ていく。ある母親は、プライバシーを確保するためにテントを張った。
「居心地がいいとは言えないです」とウリヤナは打ち明ける。彼女は9歳で、母親と猫と一緒にドロホジチ駅での生活を始めて6日目になる。「でもこの状況だから、我慢するしかないです。外で危ない目に遭うよりは、ここにいるほうがいいから」
3月2日に同市の市長が発表したところによると、1万5000人もの人々(ほとんどが女性と子ども)が、ロシア軍が押し寄せている市内の厳しい状況から逃れるために、キエフの地下鉄に避難している。
そして、地下鉄だけが地下の避難場所ではない。例えば、キエフの第5産科病院の医師らは、女性らに安全な出産の場を提供するため、地下に部屋を設けている。同院のドミトロ・ゴブセーエフ院長によれば、これまでに5人の新生児が誕生したという」
(ニューヨークタイムス3月8日)

美しい古都キーフに平和が一日も早く訪れますように。

※後半はテーマが別で長くなりすぎましたので、切り離しました。

 

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ウクライナの独立と平和をお祈りします。

 

2022年3月11日 (金)

韓国大統領選 ユン・ソギョル超薄氷の当選

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スゴイ結果ですね。
薄氷も薄氷、大薄氷。0.8ポイントという紙ッペラ一枚の差でユン・ソギョルが逃げきりました。パチパチ。

「【ソウル聯合ニュース】9日に投開票された韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長(61)の当選が事実上確定した。新政権は5月に発足する。
尹氏は10日午前3時50分ごろ事実上当選を決めた。開票率が98%となる中、1604万票(得票率48.59%)を獲得した。革新系与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事との投票数の差はわずか26万票で、得票率の差は0.8ポイントだった。
 開票中盤までは李氏が優勢だったが、開票率が50%を超えてから尹氏が逆転。尹氏が約1ポイントの差でリードする大接戦が続いた」
(聯合2022年3月10日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20220310000700882?section=politics/index

これだけ僅差だと後から不正選挙だぁ、なんてイ陣営が言い出しそうです。

●2022年韓国大統領選結果(開票率100%)
・ユン・ソギョル・・・ 48.56%
・イ・ジェミョン ・・・  47.83%
・得票率でボイント差・・・0.73%
・得票数での差     ・・・24万7077票

・世代別得票傾向
・ユンの支持層・・・20代男性、30代、60代以上
・イの支持層   ・・・20代女性、40代、50代

20代は男性と女性で支持傾向が分裂し、30代はユン、40代はイ、50代がイ、60代以上がユン、というわけです。
なんだこりゃ。日本のように、きっちり若年層と勤労年齢層は自民、70歳以上が立憲民主ということでもなく、複雑怪奇に入り組んでいます。
20代なんて男女で支持候補が分裂する始末です。
選挙前は、野党保守系が統一候補者に絞り込めたので、頭の差がついたと聞いていましたが、蓋を開けば頭ひとつどころか頭皮の差でした。
共に民主党のイ・ジェミョンがスキャンダルの巣でなく、言動が常識人だったら、負けてたな、こりゃ。
 ムン政権支持者が、そのままイには入れなかったようです。

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聯合

実はこの「共に民主党」(なんつうネーミング)への逆風は、去年4月の2市長選挙でも明らかになってきていました。
いままで左翼陣営が強かったソウルで1.5倍、元々保守の地盤だったプサンでは2倍近い得票差での敗北です。
「共に民主党」執行部は共に総辞職したそうです。

●ソウル得票率  野党「国民の力」候補      ・・・57.5%
・                  与党「共に民主党」候補    ・・・39.2%
・ポイント差                                       ・・・18.3%ポイント(約1.5倍)
・ソウル投票率                                   ・・・58.2%
●プサン得票率 野党「国民の力」候補       ・・・62.7%
与党「共に民主党」                             ・・・34.4%
・ポイント差                                      ・・・ダブルスコア弱
・プサン投票率                                 ・・・52.7%

両市長選は、前任市長の辞任に伴う補選ですが、本選並の得票率ですから、いかに国民の関心が高かったかわかります。
もちろん高い理由は、単なる市長選びではなく大統領の信任投票だったからで、いかに政権不信が激増していたかわかります。
私はこの2市長選の結果から、ユンがもう少し差をつけて勝つと予想していたので、ホーっというかんじです。
イは口を開けば反日しか言わないという珍しい男でしたから、いかにこの国の反日病が骨身に徹しているのか改めて認識しました。

新大統領になるユン自身は特に保守政治家というわけではなく、どちらかといえば中道左派の人ですので、左に力一杯振れすぎてとうとう中国の足元にひれ伏してしまったたムン政権の振り子をやや元に戻せたらご喝采というていどです。
ぬるく見守ってあげましょう。
ちなみにその公約内容は、こんなことを言っていました。

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韓国大統領選、前検事総長はなぜ立候補したか | 韓国・北朝鮮 | 東洋

① 米韓同盟を強化すると同時に、米国が構築する「クワッド」、「ファイブ・アイズ」情報共同体と協調する。
② 「主従関係」に陥った南北関係を正常化し、ミサイル防衛システムを構築して北朝鮮の核無力化を目指す国際協調体制を強化する。
③ 韓日関係は1998年に金大中・小渕恵三両首脳が発表した21世紀の新しい韓日パートナーシップ共同宣言を生かして自由民主の価値を共有する。
④ 韓中関係は相互尊重の対等な関係とし、3不路線(THAADミサイル追加配備不可、韓日米軍事同盟不可、米国MD体制参加不可)を撤廃する。

※関連記事 『ユン候補のあまりにまともな政策骨子』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/12/post-427b71.html

日韓関係が新政権の肝だという人が多いのですが、私はほとんどなにも期待していません。
国が真っ二つなのが分かってしまったのですから、新大統領も反日頑固層に一定の配慮をせざるをえないでしょうし、米国との関係修復として「3不路線」の撤回は急がねばなりません。
当然でしょうな。米韓同盟は風前の灯火でしたから。
したがって、現実的な日本との関係修復は後回しとなると思います。
国民の半分的を敵に回して日本と関係改善してもメリットありませんから、口先で日韓新時代と言う程度かしら。
こちらとしても米米韓関係が正常化されれば、日米韓三カ国連携が戻るのですから、自然と日韓関係も修復されます。
あえて日本、日本と言っていただかなくてもかまいません。

まぁ、危うく自由主義陣営から脱落して、中露ならず者連合へ走ろうとしたのが、急停止してよろしかったですな。
もちろん韓国自身のためにです。
ムン政権のまま暴走していたら、本当に国を滅ぼしていました。

ちなみに中国は環球時報でこんな「祝意」を伝えています。

「今後、韓国が米国の対中国戦略に同調する場合、過去のサード時よりもはるかに大きい代価を払うだろう」
(コリアエコノミックス3月10日)
https://korea-economics.jp/posts/22030911/

「THAADの時」とは、米国の弾道ミサイル防衛計画に協力した韓国に対して、中国が市場からの追放して締め上げたことを指します。
他国の安全保障政策に介入するのですから主権侵害もいいところです。
オーストラリアも露骨にされてハネのけましたが、韓国はあっさりへたれて、なにも逆らいませんという情けない誓いを立てさせられたのが「三不の誓い」です。
中国は、平時でもこういうことを平気でする国です。
そういやー韓国に面と向かって属国と呼んだこともありましたなぁ。
それにしても神戸の中国公使が、ウクライナに対して「小国は大国のいうことを聞いていればよいのだ」なんてのたもうておられましたが、ホントいつでも分かりやすい国です。
これだけてらいもなく大国意識をひけらかす国も珍しい。

それにしても、時あたかもならず者連合の片割れのロシアが世界の敵となってしまったのを見ていながらこの大統領選の僅差ですから、韓国の皆さんの時代認識のズレっぷりに逆にこちらが鼻白みます
パククネから始まり、ムンが決定づけた中国傾斜は、すなわち中露ならず者連合へ加担する、世にも危険な選択だという意味だということをお忘れなく。
ロシアから非友好国に指定されて喜ぶ台湾を見習いなさいな。

まぁ、いちおうおめでとう、と言っておきましょう。
6年は長いですから、ボチボチやって下さい。

 

2022年3月10日 (木)

航空優勢を確保できないロシア軍

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ポーランドが、ウクライナにミグ29を供与するかどうかでもめていた問題に進展がありました。
ポーランドはしてもいいそうです。

「ロシアによるウクライナ侵攻で、ポーランド外務省は8日、同国が保有する旧ソ連時代の戦闘機「ミグ29」全機の扱いを米国に委ねる用意があると表明した。同機は米国を通じてウクライナに供与される可能性があり、実現すればウクライナ空軍は防空力を向上できる。ただ、ロシアの反発は確実で、米国は慎重に判断するとみられる。一方、ウクライナ東部スムイでは8日、民間人を退避させる「人道回廊」が設置され、同国メディアによると、約5000人が退避した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、露軍の空爆を防ぐため、北大西洋条約機構(NATO)にウクライナ上空を飛行禁止区域に設定するか、戦闘機を供与するよう要求。米国はこれを受け、ウクライナ空軍と同じ旧ソ連時代の戦闘機を運用する東欧諸国と戦闘機供与の可能性を調整してきた。ただ、ポーランドはこれまで戦闘機の供与を否定していた」
(産経3月9日)
戦闘機「ミグ29」ウクライナへ提供の用意 ポーランド表明 - 産経ニュース (sankei.com)

なんだ、たかが旧式戦闘機の供与というなかれ。
ミグ29とご指名なのは、ウクライナのパイロットは旧ソ連製戦闘機しか操縦できないからだそうです。
今、ウクライナとロシア双方にとって、この戦闘機がウクライナに到着するかが鍵となっています。
なぜかについてはあとから説明しますが、まずは経過から。

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ウクライナ空軍、EUからMiG-29とSu-25を計70機受けると発表 (grandfleet.info)

ポーランドはミグ29を供与してもいいけど、二つ問題があるよ、とゴネていました。
ポーランドはウクライナと国境を接する国で、ウクライナがロシアの属領に転落したら、確実に次に狙われるのは自分だと思っています。
日常的にも、ポーランド-ウクライナ国境が、新たな第2次冷戦の境界となってしまいますしね。

ですからポーランドは物心共にウクライナを応援しています。
すべての陸上からの応援物資はポーランドからウクライナに入っていきますかち、支援の最前線基地なのです。
ロシアは、ウクライナ支援の最前線となったポーランドを脅迫し続けてきました。

「露国防省は6日、ポーランドなどがウクライナに空軍基地を使用させた場合、「対露参戦したものとみなす」と警告するなど、ロシアはNATOによるウクライナへの軍事支援を非難してきた。ポーランドの決定にロシアが反発するのは確実で、米欧との緊張が高まるのは必至だ」
(産経前掲)

スゴイですね。ロシアとの戦争に参戦したと見なす、ですか。
こういう外交的脅迫の次の段階は、サイバー攻撃をしかけたり、戦闘機などの領空侵犯を頻繁にしてみたりして、偶発的限定戦争を引き起こそうとするのが、ロシアの常套手段です。
だからポーランドはこのエスカレーション階段を登りたくないのです。
心では全面的に支援したいが、現実にやるとロシアの思うつぼ。これでポーランドは悩んできたわけです。
決して単純な我が身かわいさではありませんからね。

そしてもうひとつは、ミグ29は確かに一世代前の旧式ですが、これがゴッソリなくなるとポーランドの防空に穴があいてしまうから困るのです。
ポーランドも小国ですからギリギリの数でやっていますので、痛い穴なのです。
そこでこのミグ29供与の話を持ちかけた米国に、こういうオファーをしたのです。

ひとつは直接ポーランドからウクライナに供与するとコトを荒立ててしまうから、一回米国に提供した形にしてドイツの米軍基地に渡して、後は宜しくやってくれないかという迂回作戦です。
そしてカップリングでもうひとつ。ポーランドの開いた防空の穴を、米国の新鋭機F16Vあたりで代替してもらえないかということでした。
さすが見上げた東欧根性。ころんでもただ起きない。
これでウクライナは米国からミグ29を貰えるし、ポーランドは新型のF16Vが手に入って三方両得。

「ポーランド外務省は声明で、保有するミグ29全機をドイツ西部のラムシュタイン米空軍基地に即座に移動させ、米国が自由に使用できるようにする-と表明。
同時に、ポーランドの防空能力を維持するため、代替となる戦闘機を供与するよう米国に求めた。声明はさらに「ミグ29を運用するNATO諸国が同様の措置を取るよう求める」とした。
米メディアによると、米国はミグ29の代替として米戦闘機F16を提供することを検討している」
(産経前掲)

これで決まりかと思ったら、今度は米国がちょっと待てと言い始めましたから、うまくいくかどうかはわかりません。
米国もミグ29まで供与したとなると、米国とNATOがロシアとのエスカレーションのステップを一段登らねばならないから慌てたのです。
ゼレンスキーがなんどとなく、ウクライナ上空を飛行禁止区域にしてくれと悲鳴のような要求をしても拒否されているのと、理由は一緒です。

根性がないこと。今、そんなことを気にしている時期じゃないでしょうに、とアジアに住む民は思いますが、やはり限定戦争に発展するリスクは取りたくない、これが米国とNATOの本音です。
そしてもうひとつは、ポーランドが欲しいといっているF16Vは例の半導体不足で生産が遅れに遅れていて、先に注文してある台湾向けの機体も遅れているのです。
そこに割り込むとなると生産計画がめちゃくちゃ。
とうわけで、米国もウクライナを助けてはやりたし、事情はあるしで頭が痛いわけです。

さて、ここまで旧式戦闘機の供与がもめるのは、ロシア軍がいまだ航空優勢を確保できていない証明でもあります。
緒戦でロシア軍は集中的にウクライナ空軍の航空基地やレーダー施設に攻撃を仕掛けました。
これは現代戦の定石ですから、空軍の戦力比からいってもウクライナ空軍は壊滅したと考えられていました。
米国など、三沢にワイルドウィーゼルというそれ専門の部隊すら配置しているほどです。
ロシア軍は無抵抗の市民の頭上に爆弾を降らせる安楽な作戦ばかりしてきたために、普通の空軍相手の戦いをまともにやったことがなかったようです。
今回も形ばかりの攻撃で済ましたしまいました。

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ウクライナ侵攻、開始したロシア軍 混迷する現地は今:朝日新聞デジタル (asahi.com)

ところがどっこい、ウクライナ空軍は生きていたのですね。
なんとやられたのは固定設備のレーダー施設だけで、移動式レーダー施設は電波を出さずに森の中などに姿を潜めていたそうです。
そして巧妙にも、ロシア軍機が接近したことを耳で聞くと、一瞬だけレーダーから電波を照射して味方機を誘導するという方法をとったと推測されています。
なんと耳で聞く、目で見るということで対抗していたようです。

戦闘機も分散して隠してあったようで、隠れレーダーに誘導されて飛びまわるウクライナ空軍機の姿も何度か目撃されています。
なんでも「ゴースト オブ キエフ」という異名ももらっているとか。心霊写真のようなものも公開されています。

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とまれ、ウクライナ空軍は生きてはいるが、ほとんど機材がないのも事実です。
ロシア空軍やヘリ部隊が苦戦しているのは事実ですが、それを撃墜したのは歩兵携帯型対空ミサイルのようです。
だからウクライナは、なんとしてでもミグ29や新型のレーダー装備が欲しいわけです。

ところで今のロシア軍の情勢の西側軍事筋の見立てを整理しておきます。

・ロシア軍は、ウクライナ周辺に待機させていた全軍を投入した。
・ロシア軍の戦車などの損害は5%ていど。
・FSB(ロシア情報機関)のリークでは、戦死者1万人に達した。
・ロシア軍の航空戦力は温存されているが、航空優勢は確保できていない。。
・ほとんどロシア軍は前進できていない。
・ロシア軍は、補給という単純な問題がこれほど巨大だとは認識しておらず・開戦2週間経っても、ロシア軍は補給ができていない。
・ウクライナが待ち望んでいた春の泥濘が始まり、いっそうロシア軍の装甲車両や輸送トラックの前進を苦しめている。

つまり、ロシア軍はモノとしての軍事力としては温存されてはいるが、有効に戦力化できていないのです。
なぜでしょうか。
戦車や戦闘機はまだまだうなるほどあることはあるが、戦車には数万発といわれる歩兵携帯対戦車ミサイルがにらみを効かせ、戦闘機は航空優勢がないために低空で侵入してはスティンガーに落とされているからです。

また兵員の戦死や負傷者もそろそろ危険ラインに近づいてきています。
ロシアFSBのリークを信じるなら、戦死者だけで1万人と言われていますが、そうとうに過大だと思われています。
米国防情報局(DIA)のベリエ長官の議会証言では、ロシア軍の死者は2000人~4000人。
この数字を信じれば、通常、負傷で戦力外となった負傷者は戦死者の2倍ていどは出ると想定されていますから、4000人から2万人が戦力外になっていると推測されます。
全体で19万人の兵員数ですから、ミニマムで2%、最大で10%の兵隊が戦闘に参加できないわけです。
開きが5倍ですから少し開きすぎますが、あくまでも腰だめ数字だと思って下さい。

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https://usmail24.com/russia-breaks-ceasefire-to-shell-evacuation-routes-out-of-besieged-mariupol/

一般的に戦闘中の軍隊は、3割の死傷者を出すと「全滅」判定されます。
歩兵部隊の場合、死傷者が30%を超えると、負傷者の後送に1人あたり2~4人の兵員が必要であるために、この部隊は戦闘力を喪失したと判定されます。
ですから、今のロシア軍は「全滅」判定の3分の1くらいのところにいると見ていいかもしれません。
ロシア軍は、今頃になって全軍投入していることでわかるように、戦力の逐次投入をやらかしていますから、後続部隊は無傷でも、先に進攻した部隊にはそうとう「全滅」判定がでているのかもしれません。

また航空優勢ですが、今回のウクライナ戦争がこれほど大兵力を集中しながら勝利できないのは、補給の問題もありますが、もうひとつがロシア軍がいまだに航空優勢を確保していないためです。
航空優勢なき地上兵力の投入は、おびただしい被害をロシア軍に与えています。

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https://usmail24.com/russia-breaks-ceasefire-to-shell-evacuation-routes-out-of-besieged-mariupol/

今後、どちらが航空優勢を確保できるのかに趨勢はかかっています。
ロシア軍がここまで脆弱だった原因の一つは、ロシアが航空優勢を確保できていないことによります。
ロシア空軍は、毎日戦闘機とヘリのスクラップの山を作っています。

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【動画】ロシア軍ヘリ 撃墜したとする映像 ウクライナ軍が公開 | ウクライナ情勢 | NHKニュース

たとえば画像と付き合わせた結果が残っているので信憑性がある3月5日のロシア軍機の損害記録を見てみましょう。

・ Su-30SM 戦闘機・・・1機
・ Su-34 攻撃機   ・・・・2機                 
・Su-25 地上攻撃機・・・2機
・Mi-24/35 攻撃ヘリ・・・2機
・Mi-8 輸送ヘリ       ・・・2機
・Orlan-10無人機   ・・・1機
Definite list of Russian Air Force losses over #Ukraine in the past 26 hours
https://twitter.com/KofmanMichael/status/1499972941546672134

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が公表した、ウクライナの航空戦の状況分析によれば、当初の各方面の見立てとは異なりロシア軍は劣勢に追い込まれています。
Is the Russian Air Force Actually Incapable of Complex Air Operations?
https://rusi.org/explore-our-research/publications/rusi-defence-systems/russian-air-force-actually-incapable-complex-air-operations

RUSIレポートを要約すれば、

・ロシア空軍の編隊での作戦行動は見られておらず、単機もしくは2機編隊で低空侵入するというものが多い。
・低空侵入すると、今度は歩兵の携帯式対空ミサイルで簡単に撃墜されている。
・ウクライナ空軍の対空レーダー網は健在である。
・ウクライナ空軍は残存しているが、充分な機体が確保できていない。
・ロシア軍の活動がここまで低調なのは、航空機の稼働率が低すぎるからだと推測できる。
・今までロシア空軍は、反撃がないシリアの市街地爆撃やグルジアで安易な戦闘に馴れすぎて練度が極めて低下しているようだ。

このように航空支援は望めず、むき身の地上軍でロシア軍がキエフに突入した場合、地獄を見ることになります。
戦闘は長引き、長引けば長引くほどプーチンは追い詰められていきます。

 

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https://usmail24.com/russia-breaks-ceasefire-to-shell-evacuation-routes-out-of-besieged-mariupol/
ウクライナから避難する人々。

ウクライナに自由と平和を!

■速報 ユン候補当確

「きのう投票が行われた韓国大統領選挙で、韓国メディアは先ほど、保守系の最大野党候補・尹錫悦氏の当選が確実になったと報じました。
きのう投票が行われ、現在開票が進んでいる大統領選挙について韓国のKBSテレビは先ほど、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦候補の当選が確実になったと報じました。5年ぶりに革新系から保守系政権に交代する見通しです。 
尹氏は、ソウル出身の61歳。検事総長だった時に文在寅大統領の側近を厳しく追及し、政権と対立したことで反文在寅政権の象徴的存在となり、選挙戦では高騰する不動産対策のほか、兵士の待遇改善など若者を意識した政策を打ち出し、支持拡大に努めてきました」
(TBS3月10日)

ほどほど嬉しいのかな?明日に回します。

 

2022年3月 9日 (水)

ウクライナ戦争、考えられるシナリオとは

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3回目の停戦交渉も不調だったようです。当然です。
ロシアの総参謀長のペェタリ・ゲラシモフが戦死したという情報もありますが、未確認です。

さて何度か書いてきていますが、停戦交渉は双方にとって補給を待つための時間稼ぎでしかありません。
ウクライナは、ポーランドに大量に世界から送られてきている物資を前線に運ぶ時間ですし、ロシアは例の67キロの補給コンボイを到着させる「時間」です。
「人道回廊」は悪い冗談のような自称で、逃げない市民を大量虐殺するための口実づくりにすぎません。

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では今後どのような展開となるのか、戦争に押しつぶされそうな人々からあえて目を俯瞰に切り換えて考えてみましょう。
BBC3月7日付けの記事を参考にします。
【解説】 ウクライナでの戦争の結末は 5つのシナリオ - BBCニュース

まず短期決戦シナリオ。
ウクライナ軍が敗北し、プーチンが凱歌をあげた場合のみのシナリオです。
ロシア軍がキーウに総攻撃を仕掛け、壊滅的な無差別爆撃を行い、市民もろとも首都を壊滅させます。
民間人犠牲者は数千人に達するでしょう。
ゼレンスキーは戦闘の最中に暗殺され、ベラルーシからヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領が帰国し傀儡政権を作ります。
英国がゼレンスキーを暗殺から守るために、SASを派遣したという情報も入っています。

ヤヌコーヴィチは直ちに降伏を宣言し、ロシアは一部の制圧部隊を残して撤収します。
以後、ウクライナはロシアの従属国家になり、ベラルーシ型独裁国となりますが、西側は一切承認しないでしょう。
多くの避難民が西部、あるいは国外へ逃げ、「自由ウクライナ」亡命政府が誕生する。

このシナリオは、米国がゼレンスキーに国外に脱出することを勧めたように、まったくないわけではない、とBBCは書いています。

「このような結果は決してあり得なくはないが、こうなるには現状がいくつか変化する必要がある。ロシア軍の機能が改善し、効率的に戦う部隊が増派され、ウクライナのすさまじい闘争心が薄れなくてはならない。プーチン氏はウクライナで政権交代を実現し、ウクライナが西側諸国の一部になるのを阻止するかもしれない。しかし、ロシアが打ち立てる親ロシア派政府は、たとえどのようなものだろうと正統政府ではあり得ず、反乱の対象になりやすい。このシナリオがもたらす結果は不安定で、紛争再発の可能性は高い」
(BBC前掲)

ただしこのシナリオを実現するには、ロシア軍に大きな体質改善を図ってもらわねばなりません。
その条件は
①兵站を正常化させること。

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ウクライナ戦争でロシア「兵士の母親委員会」に安否の問い合わせが殺到中 | 「まさに涙の海」 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

いまや世界最長となってしまった補給線は、ロシア軍の兵站が鉄道で運ばれ、最後100マイルはトラックに頼っていることが明らかになりました。
そのトラックも不足して、鉄道で輸送しているようです。
しかも狙って下さい、といわんばかりの森ひとつない平野の一本道での長蛇です。
兵站部門の指揮官はどこから見ても無能で、兵隊の質はダルそのものです。

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②ロシア空軍が奮起すること。
世界第二位のはずのロシア空軍の姿がさっぱり見えません。
たまに戦闘機が姿を見せると、わずか一機で低空から侵入し、そそくさと無誘導の爆弾を投下して慌てて逃げ去って行きます。
これは別途に記事にしますが、航空優勢が確保できていないからです。
ロシア軍は緒戦でのウクライナ軍の対空レーダーと対空ミサイルの制圧に失敗したために苦戦しています。
航空優勢なき地上戦は必ず敗北する、というのが現代戦争の鉄則です。

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NHK

③ロシアが西側の経済制裁をはねのけること。
西側が史上稀なる一致団結をしてしまったために、ロシアは兵糧攻めにあえいでいます。
侵略するもなにも、国の土台が揺らいでいるのです。
補給がわずか4日で切れてしまったというのは、その意味からも象徴的なことです。

もし、20万の大軍を動かすのであれは、しっかりと物資を兵站基地に集積し、その配送網を綿密に作り上げておかねばならないはずでした。
20万の大軍が1にちどれだけの燃料と食料、弾薬を消費すると思っているのでしょうか。
額にしてその戦費は、1日1兆2000億円以上だと言われています。
ロシアは日本の4分の1ていどの経済規模ですから、わが国に置き換えるとその経済負担の巨大さがわかるでしょう。
わが国に換算すれば、実に1日4兆8千億円。国防費の9割です。
それが既に8日経過していますから、ロシアの国庫は空のはずです。

しかもロシア国庫に入っていたはずのルーブルは、ハイパーインフレで刻一刻紙化し、ドルは凍結されてしまって使えません。
そのうえ西側の経済制裁はSWIFTにとどまらずロイド保険まで加わって締めつけています。
ロイズがロシア関連の保険を今後認めない措置をとったために、ロシア航空会社の航空機のリース契約は解除され、ロシアの旅客機の大半は返却せねばならなくなりました。
ロシア船舶はロイズの保険なくして外国の港湾に入港できませんから、ロシア船舶は外国航路から締め出されました。
輸出入したくとも、カネはなし、足は陸路だけです。

④ロシアが強力な同盟国を持つこと。
ベラルーシはただの策源地とウクライナの補給線に対する圧力以上を期待されてはいませんし、シリアが兵隊を送ると言っていますが、プーチンはこんな三下に助っ人を頼むほど落ちぶれてはいねぇぞ、と思っているはずです。

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朝日

プーチンの最大の保険は中国だったはずです。
軍事援助もさることながら、米国が準備していたのがSWIFT排除だというのは、さすがにプーチンもわかっていたはずでした。
頼みは中国版の決済システムであるCIPSを使わしてくれるように泣きつきましたが(そのために忙しいのに北京五輪開幕式まで行ったんですから)、中国はセカンダリー・サンクション(二次制裁)を恐れて断ったようです。
中国が中国版SWIFTであるCLIPSを断ったのは、ひとえに我が身が可愛いからです。

セカンダリーサンクションが適用されると、送金した側のロシア金融機関に対してはもちろん、それを受けた国の金融機関もドル決済から追放されます。
たとえばSWIFT排除された国にイランがありますが、抜け穴として中国の金融機関を迂回して決済しようとしましたが、すぐに発覚してその中国の銀行は米国との取引を凍結されてしまいました。
日本でも、ロシアとの取引を持っていたあらゆる金融機関は証券会社に至るまですべて取引を停止しました。
セカンダリーサンクションがコワイからです。
ちなみにこれは金融だけではなく、すべての分野に適用されます。

中国の場合、さらに金融機関だけではなくセカンダリー・サンクションが、共産党の幹部の海外資産凍結に及びます。
中国共産党幹部は、大部分の資産を外国に逃避させていますからこれが凍結されればたまったもんじゃありません。
英国は、ロシアのオリガルヒがやっているタックスヘイブンまで見つけ出して虱潰しにする予定だそうですから、巻き込まれては一大事と中国のボス共は考えたようです。

やっとその西側の深謀遠慮に気がついたプーチンは、なにをトチ狂ったのか、ルーブル決済(爆笑)だなんて言って笑い物になっていますが、ルーブルはもう紙なのよ。
ちなみに今のドル-ルーブル相場は
1 USD = 108.861 RUB(2022年3月1日 22:56 UTC)です。もう紙まで余命いくばくもありません。

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Russia BREAKS ceasefire to shell evacuation routes out of besieged Mariupol • USMAIL24

そして第2のシナリオ。長期戦化。
私はこのシナリオがもっとも高いと思います。

「それよりもこの戦争が長期化する方が、あり得る展開かもしれない。ロシア軍は、士気の低下、兵站(へいたん)の不備、無能な指導者のせいで、泥沼に陥る可能性がある。キーウの攻防は、道路単位で戦われる市街戦になるだろう。
そのような都市をロシア軍が確保するには、上記のシナリオよりも時間がかかるかもしれない。そうなれば、長い包囲戦が続く。このシナリオは、1990年代にロシアがチェチェンの首都グロズヌイを制圧しようとして、長く残酷な苦戦を延々と続けた挙句、グロズヌイをほとんど壊滅させたことを連想させる」
(BBC前掲)

あと、BBCはエストニアなどに進攻して、NATOとの全面戦争も上げていますが、ありえないだろうと退けています。

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Russia BREAKS ceasefire to shell evacuation routes out of besieged Mariupol • USMAIL24

またプーチンが自らの権力の瓦解に恐怖して、手打ちをするというシナリオもあります。

「例えば次のようなシナリオはどうだろう。ロシアにとってまずい戦況が続く。ロシアは制裁の打撃を実感し始める。戦死したロシア兵の遺体が次々と帰還するごとに、国内の反戦気運が高まる。
自分はやりすぎたのだろうかと、プーチン氏が考えるようになる。戦争を終える屈辱よりも、戦争を続ける方が自分の立場が危ういと判断する。中国が介入し、ロシアが対立緩和へ動かなければロシアの石油と天然ガスはもう買わないと警告し、ロシアに譲歩を迫る。
プーチン氏は出口を模索し始める。対するウクライナ当局は、自国の破壊が続く状況に、これほど多大な人命損失を続けるよりは、政治的妥協の方がましだと判断する。
外交官たちの出番だ。停戦合意が結ばれる。たとえばウクライナは、クリミアとドンバスの一部に対するロシアの主権を受け入れる。その代わり、プーチン氏はウクライナの独立と、ウクライナが欧州との関係を強化する権利を認める」
(BBC前掲)

ないとは思いませんが、どうかな・・・。
外交が好きな日本人好みですが、これは事実上のウクライナの敗北です。
ここまで国民を大量虐殺され、国土を破壊されたウクライナが乗らないでしょう。
最後にBBCが出しているシナリオがこれです。

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「我々が選んだわけではない」  ウクライナ戦争の理解に苦しむロシア国民(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

「では、ウラジーミル・プーチン氏本人はどうなのだろう。侵攻を開始したとき、プーチン氏は「我々はあらゆる結果に備えている」と宣言した。
自分自身の失脚という展開にも備えているのだろうか? 
まったく考えられないことに思えるかもしれない。しかし、世界はここ数日で変わったし、そういう展開を考える人も増えている。英キングス・コレッジ・ロンドンの名誉教授(戦争研究)、サー・ローレンス・フリードマンはこう書いた。「キーウで政権交代が起きる可能性と同じくらい、モスクワで政権が変わる可能性も出てきた」
(BBC前掲)

私はこれがもっとも望ましい幕引きの一つだと思います。

「たとえばこうだ。プーチン大統領が壊滅的な戦争に突き進んだせいで、何千人ものロシア兵が死ぬ。経済制裁が響き、プーチン氏は国民の支持を失う。
市民が革命を起こす恐れが出てくるかもしれない。
大統領は、国内治安部隊を使って反対勢力を弾圧する。
しかし、それで事態はさらに悪化し、ロシアの軍部、政界、経済界から相当数の幹部やエリート層が、プーチン氏と対立するようになる。
欧米は、プーチン氏が政権を去り、穏健な指導者に代われば、対ロ制裁の一部を解除し、正常な外交関係を回復する用意があると、態度を明示する。
流血のクーデターが起こり、プーチン氏は失脚する。
この展開もまた、現時点ではあり得ないことに思えるかもしれない。しかし、プーチン氏から利益を得てきた人たちが、もはやこのままでは自分たちの利益は守られないと思うようになれば、可能性ゼロの話ではないかもしれない」
(BBC前掲)

このラインで納まれば、それはウクライナに平和をもたらし、ロシアの新生にもつながることでしょう。
プーチンは国際戦争犯罪法廷に引き出され、ロンドン塔に生涯幽閉されます(冗談)。
それがイヤなら、シリアか北朝鮮に亡命するのことです。
ただしその可能性は決して高くはありません。独裁者は容易に権力を手放さないからです。
核のボタンに手を伸ばす可能性もありえますが、周囲がはがい締めしてでも止めるでしょう。
それをした時こそがプーチンの最後の時です。
もし外交官の出番を、というなら、この最後のシナリオに向けて奮闘していただきたいものです。

 

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ウクライナに平和と独立を!
自由ウクライナに支援を!
ロシア軍は無辜のウクライナ人を殺すな!

Мир і незалежність в Україні!
Підтримка вільної України!
Не дозволяйте росіянам вбивати невинних українців!

 

2022年3月 8日 (火)

ロシア「人道回廊」の罠

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3回目の停戦協議が終わったようですが、なにせお前はオレの言うことを全部飲め、オレは聞く耳もたんから、というロシア相手になにか生産的なことが生まれるはずがありません。
ウクライナもロシアも充分わかっているはずですが、仮に停戦合意が成立したとしても、その前後が最も危険な期間なのです。
なぜなら停戦合意の時点で戦い取った両軍の「縄張り」が、そのまま停戦ラインとなるからです。
そして停戦がなった後は、いかに相手の「縄張り」を削っていくのかが今後の両軍の静かな仕事となります。
停戦協議とは、このような危ういパワーバランスの上品な表現に過ぎないが故に、作っては壊し作っては壊ししていく宿命にあります。

ただ今回の場合、プーチンは自軍の劣勢を知っているので、「武装解除しろ」とか「中立になれ」とかわけのわからないことを叫んで、事実上この停戦合意をぶち壊しにかかっています。
なんども書いてきていますが、それをいうなら降伏協議であって、今やっているのはあくまでも停戦協議です。
プーチンは馬鹿なのか、馬鹿のふりをしているのか。
だいたい文明国の軍隊なら、停戦協議している真っ最中に市街地を砲撃するなんて恥ずかしいことができるはずがありません。
となると結局、合意できそうなことは「人道回廊」だけということになるでしょう。

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CNN.co.jp : ウクライナとロシアの協議2回目、「人道回廊」設置合意もウクライナ側望む結果得られず

しかしこれも実はロシアの常套的罠ですからご注意下さい。
というのはロシアは「人道回廊」を悪魔的に使った前歴があるからです。
それがロシアのシリア軍事介入時に起きたアレッポの「人道回廊」事件です。

まず簡単にロシアのシリア介入について説明します。
日本でその最適任者は、長年シリア内戦をライフワークとして追跡してきた黒井文太郎氏です。
黒井氏は、このように述べています。

「身元・死因が判明している死者約35万4000人のうち、一般住民の犠牲者は10万6390人ですが、そのうちアサド政権側(民兵・外国人傭兵含む)に殺害された人数は約8万3000人に上ります。
ロシア軍の空爆で殺害された住民は約7000人なので、アサド政権=ロシア同盟軍が殺害した住民の数は計およそ9万人。つまり、身元が判明している一般住民の犠牲者の約85%が、アサド政権側に殺害されたことになります。(略)

(シリアの)主戦場において、戦争の趨勢を左右するほど大規模に介入しているのはロシアだけです。
2015年に反体制派の攻勢でアサド政権が劣勢に回り、政権維持も危うくなってきたまさにその時、同年9月からロシアが大規模な軍事介入に踏み切り、猛烈な空爆を住民もろとも反体制派に加えて攻守を逆転させました。
このロシアの大規模介入には、同じくアサド政権を支えてきたイランが全面的に協力しましたが、アサド優勢の最大要因はやはり何といってもロシア軍の存在でしょう。(略)

2015年に軍事介入したロシアも、イスラム過激派への攻撃を口実にしていましたが、実際にはISへの攻撃はアリバイ程度にほんの少し実施しただけで、ほとんどは反体制派エリアへの無差別空爆に終始しました。
アサド政権もロシア軍も、実際には一貫して反体制派を攻撃してきました。彼らの方便では、反体制派=テロリストという理屈ですが、実際には彼らは反体制派どころか、反体制派エリアに居住する住民までも「テロリスト」だと言って攻撃しています。
ロシアはシリア国内では、アサド政権とともに戦争犯罪を続けている共犯者に相当します」
(黒井文太郎

2011年、シリアでは若者たちがアサドの独裁政権を倒そうと立ち上がりました。
それに対してアサドは酷たらしい弾圧を加えたために、一気に内乱にまで発展します。
アサドは、抵抗する者をすべて「テロリスト」と呼んで抹殺の対象としました。
この抹殺は比喩的表現ではなく、文字どおりの殺戮でした。

これに加担したのが、ソ連時代からシリアを中東の足場にして、軍事基地を持っていたロシアでした。
2015年、プーチンは他国の内戦であるにも関わらず、戦闘機やミサイルを使った無差別爆撃を命じます。

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CNN.co.jp : シリア軍、アレッポ空爆を縮小へ 市民の避難のためと発表

この時使ったアサド政権の論法が反政府=テロリスト、反政府エリアに住む住民=テロリストというものでした。
無限にテロリストの枠を拡げていき、そこに居住する住民すべてまでテロリストにしてしまう恐るべき論理です。

アサド政権軍とロシア軍は、北部の第2の都市アレッポの反政府勢力地域を包囲して、ここでも市街地が跡形もなくなるような空爆を加えました。
そして2015年、ロシアはこのシリア内戦に軍事介入します。

この反政府側地域には一般市民が25万人いるとされ、これに対する無差別空爆は国際社会の強い批判を浴びていました。
当時、シリアで活動していた国境なき医師団は、こう記しています。

「2016年、民間人が住む多くの地域では日常的に空爆が行われた。包囲網の中に閉じ込められた人びとに援助は届かず、食料・医療事情は極度に悪化した。
12月にシリア政府は東アレッポを奪還したが、この地域では包囲戦、複数の病院の破壊、市民居住地域への無差別爆撃など、戦争法規を無視したあらゆる残虐行為が行われ、その様相は「シリア内戦の縮図」と言われている。MSFは東アレッポにある8カ所の病院を全面的または部分的に支援していたが、そのすべてが爆撃の被害を受けた。
一方、シリアの近隣諸国の多くは難民に対し国境を閉鎖。多くの人びとが包囲された地域に閉じ込められたり、閉鎖された国境付近で足止めされたりしたほか、紛争で傷ついた人が治療を受けることができなくなっていた」
(国境なき医師団)
今世紀最大の人道危機──シリア内戦10年 人びとの苦難はいまなお続く | 活動ニュース | 国境なき医師団 (msf.or.jp)

そしてこの2016年7月に反政府側とロシア軍・アサド政権軍との間に結ばれたのが、アレッポの「人道回廊」でした。
一般的に考えれば、これは非戦闘員が安全に脱出するルート以外の意味を持ちません。
当然政治的に無色でなければ、「人道」という名をかぶせるのがおこがましいことになります。

ところがロシア軍とアサド政権は、「人道回廊」をなんと「選別」に使ったのです。
アレッポの「人道回廊」はアサド政権支配地に向けてしか開いていませんでしたから、アサドの支配を拒否する市民にとってこの「人道回廊」を使うことはすなわち投降を意味しました。
実際に、「人道回廊」の出口には、アサド゙政権軍が銃を持って待ち構えており、「面通し」をします。
そして反政府活動に加担したりしたものは、家族毎どこかに連れ去られていきました。
このことが知れ渡ると、アレッポで「人道回廊」を利用する者はパタリといなくなりました。

すると、ロシア軍とアサド政権は、「人道回廊」からの脱出が終わったとみなすと宣言し、アレッポ市街地に残る人々はすべて反政府側テロリスト、あるいは「準戦闘員」と見なし、無差別爆撃を再開しました。

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ロシア軍の爆撃機部隊、シリアのISに空襲_新華網日本語 (xinhuanet.com)

「ロシア国防省は、ロシアの戦闘機が丸2日間でシリアを85回飛行し、アレッポ、ダマスカス、ラタキア、ハマー、ホムス、イドリブ県の277ヶ所に空襲を実施したと発表した。ロシア国防部のイーゴリ・コナシェンコフ報道官の11日の発表によると、ロシア空軍のSu-24M爆撃機はシリア ハマー県で「勝利戦線」を破壊する迫撃砲連を放った。また、Su-34爆撃機はホムス県にコンクリート貫通爆弾「BETAB 500」を1発投下し、「勝利戦線」の大型地下倉庫に命中した」
(新華社2015年11月14日)

ちなみにこの時も、同年10月には国連安保理で空爆停止を求める国連決議案が採決されましたが、ロシアの拒否権で葬られ、非人道的無差別爆撃の荒しがアレッポを襲ったのでした。
結局、同年12月に反政府側が撤退し、瓦礫となったアレッポを政権軍が掌握して終了しました。
身元・死因が判明している死者が約35万4千人。うち一般住民の犠牲者は10万6千人。
そのうちアサド政権側(民兵・外国人傭兵含む)に殺害された人数は約8万3千人に上り、ロシア軍の空爆で殺害された住民は約7千人に登りました。

シリアはプーチンが犯した戦争犯罪ですが、プーチンはこれを成功事例と考え、更にその2年後にはクリミアに拡大します。
ですから、今回のウクライナにおける「人道回廊」も、罠の可能性が高いと考えられます。
「人道回廊」が設定されたのは東部の港湾都市マウリポリですが、ここには2本の「人道回廊」が設定されています。
地理関係を見ておきましょう。

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人道回廊一人も避難できず 露発表 - Yahoo!ニュース

一本はマウリポリから内陸のウクライナ政府軍支配地域のサポリージャに向かうもので、もう一本は東のロシア軍支配地域のシロキネに向かうものです。
実はこのシロキネルートは両国の合意にはなかったもので、ロシアが勝手に定めたものなのです。

ロシアが定めた「人道回廊」に対して、スムイ市当局は住民に行かないようにと警告を発しています。

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日テレ 

「対象となるのはウクライナの首都キエフ、第二の都市ハリコフ、マリウポリ、スムイの4都市です。ただ、避難先のほとんどはロシア国内かベラルーシ国内だと、ロシア側は主張しています。
ウクライナメディアによると、対象となっているスムイの当局は「これはロシアによるニセの情報で挑発行為である」と住民に対し避難用のバスに乗らないよう注意を促したということです」
(日テレ3月7日)
ロシア「人道回廊」実施発表…ウクライナ当局「ニセ情報」住民に注意喚起(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

ウクライナはこれに抗議して「人道回廊」の設置を拒否しました。
それはそうです。このルートを使うとロシア占領地域にしか行けないのですから。

「ウクライナでロシア国防省が日本時間の7日午後4時から設置するとしていた「人道回廊」について、ウクライナ側は拒否する姿勢を示しました。
ロシア国防省は日本時間の7日午後4時から一時的な停戦を行い、首都キエフなど4つの都市から住民を避難させる「人道回廊」を設置すると発表しました。
しかし、避難先の多くがロシアとなっていることから、ウクライナの副首相は「民間人をロシアに連れて行くためで、容認できない」として拒否しました。
ロシア側は、この人道回廊はフランスのマクロン大統領に頼まれたものだとしていますが、フランス側は否定しました」
(日テレ3月7日)
ウクライナ、ロシア発表の“人道回廊”拒否 「民間人をロシアに連れて行くためで、容認できない」(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

これが「人道回廊」を利用した「選別」です。
ロシア軍支配地域に来る者は「善良なウクライナ人」であり、サポリージャを選んだり、マウリポリに残る者は、テロリストないしは「準戦闘員」なのです。
逃げることができたのに残っている者は、民間人の姿をした「頑固派のファシストだ」というロジックとなるのです。
したがって、ロシア軍は市街地に残った「テロリスト」と「準戦闘員」は軍事的抹殺の対象となると考えることでしょう。
実際にシリアのアレッポでは、ロシア軍はそうしました。
そうしてウクライナでもそれを企んでいます。

 

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コロッセオやブランデンブルグ門も。ウクライナ国旗の色のライトアップ相次ぐ(ハフポスト日本版) - Yahoo!ニュース

ウクライナに平和と独立を!

 

2022年3月 7日 (月)

「自国民の支持」を失った戦争は継続できない

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不調が続くウクライナとロシアの停戦交渉は、今日3回目がされるとのことです。
停戦はおろか、交戦地区からの民間人脱出路(人道回廊)さえ合意できていない状況のようです。
この人道回廊もロシアがよく使う汚い手口のひとつですから注意してください。これについては明日に詳述します。
接点があるだけまし、ということになってきました。
またロシア軍は、卑劣にも停戦交渉のさなかにも攻撃を継続しています。

「ロシアとウクライナが7日、3回目の停戦協議をする可能性があることがわかった。ウクライナの交渉担当者が5日、SNSに投稿した。ロシアメディアでも開催の見通しが示された。ただ、2回目の協議で合意した戦闘地域から民間人を避難させる「人道回廊」の設置ですら履行されていない状況で、3回目の会議も成果は見通せない」
(朝日3月6日)
ロシア・ウクライナ停戦協議、7日に3度目か 人道回廊なお機能せず [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

まぁ、こんなすっとこどっこいのことを言っている奴を相手に交渉などしても、まったく無意味ですがね。

「ロンドン 6日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は6日、ウクライナが抵抗をやめてロシア側の要求を満たした場合のみ、軍事作戦を停止すると述べた。
プーチン氏はトルコのエルドアン大統領との電話会談で、交渉に臨むウクライナの担当者は現場の実情を考慮して「建設的」な対応をすべきと指摘。ウクライナでの「特別作戦」は計画・予定通りに進んでいると述べた。
ロシアは2月24日からのウクライナ侵攻を「特別作戦」と呼んでいる」
(ロイター3月6日)
ウクライナが抵抗をやめ要求のめば戦闘停止=ロシア大統領(ロイター) - Yahoo!ニュース

こういうのは停戦交渉とはいいません。降伏交渉です。
つまりこの男は、ウクライナが白旗を掲げて属国になるまで本気で停戦交渉する気はないということです。

このプーチンの「特別作戦」のために、ウクライナの民間人死者は増える一方で、既に2千人を超えているとウクライナは発表しています。
このように民間人被害が激増したのは、ロシア軍が官庁街や住宅地域、果ては病院までも標的にしているからです。
いうまでもありませんが戦時国際法違反で、既に国際刑事裁判所は調査に乗り出しています。
遠からずプーチンには、戦争犯罪の容疑者として召還状が送られるはずです。

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AP-西日本新聞

「ロシア軍の侵攻開始から3日で1週間となる。住民の被害が拡大しており、ウクライナ政府は2日、攻撃で2000人以上の民間人が死亡したと発表した。
英BBCなどによると、2日、露軍は第2の都市ハリコフで警察庁舎や大学を攻撃した。市中心部の行政庁舎などが連日、ミサイル攻撃を受けている。露側には、都市機能をマヒさせる狙いがあるとの見方が出ている。市当局者は2日、過去24時間で21人が死亡し、112人が負傷したと発表した。露軍の地上部隊が市内に入ったとの情報もある」
(読売3月3日)
都市機能マヒ狙うロシア、無差別攻撃増える可能性…ウクライナ政府「民間人2千人以上が死亡」 : 国際 : ニュース : 読売新聞

この民間人に死傷者が急増する原因は、ロシア軍が都市機能を破壊し、行政地区や住宅地域にまで攻撃対象に加える方針転換をしたからです。
当初、「平和維持軍」などという悪い冗談のような仮面をかぶって侵入しましたが、いまはその仮面の下の侵略車の素顔を臆面もなくさらしています。

では例の、日本でも有名になったキエフ(ウクライナ語表記「キーウ)に続く40マイル(64㎞)の長蛇の補給線は、今どうなっているでしょうか。
なんとまだキーウに到着できていないようです。
これが到着できないうちはキエフ総攻撃ができないはずですが、今や英国人は「世界一長い捕虜収容所だ」と皮肉な見方をし始めています。

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BBC

どうやら私が推測したようなウクライナ軍のドローンの攻撃ではなく、現場の状況を把握せずに上から命じられるままに大量の車両と物資を送り込んだために起きた構造的欠陥が原因だったようです。
いかにも全体主義国家らしい失敗です。
BBCはこのような英軍元司令官の意見を伝えています。

「巨大車列が止まった理由について、兵站や機械的な問題に加え、ウクライナ軍による予想外の抵抗や、ロシア兵の士気の低さなどが推測されている。
英政府は、軍用車の故障や渋滞が問題の要因になっているとしている。食料や燃料が不足しているほか、劣化して整備不良のタイヤも問題になっている可能性があるという。
英軍統合司令部の元司令官、サー・リチャード・バロンズはBBCラジオに対して、「燃料、食料、部品、タイヤなどを輸送するための兵站が、大破綻している(中略)多くの車両が次々と泥にはまって動けなくなり、車両を移動させるのが難しくなった」のだと話した。
ただし、兵站輸送やタイヤの問題よりも、通信システムの不良や公衆回線で連絡をとりあっていることなど、指令と伝達の問題がはるかに大きく影響している可能性もあると、バロンズ元司令官は話した」(BBC3月4日)
なぜロシア軍の全長64キロの車列は動きを止めたのか ウクライナ首都近郊 (BBC News) - Yahoo!ニュース

おそらく、プーチンが隠れ家(どうもそうなようです)からさっさとキーウに送り込めとでも命じたのでしょうが、縦隊現場が力を持ち、その状況に応じて判断を修正していたなら救いはあったのですが、硬直した権威主義国家では上の命令は絶対です。
英紙デイリーテレグラフが伝えるところでは、いたるところで破壊されたりヌマった軍用車両が道を塞ぎ、大小の河の橋は破壊されて新たに架橋せねば通れないわけですから、現場は普通なら上級司令部にいったん送り込むのを止めろとフィードバックすべきでした。

「この車列について欧米の政府関係者は「ウクライナ軍と交戦して破壊された車輌の残骸が道を塞ぎ、川を渡る橋は破壊され、対戦車ミサイルを抱えた部隊の待ち伏せが至ることで発生し、進軍に合わせて補給を提供する根本的な兵站にまつわる問題をロシア軍に突きつけている」と語り、計画自体の不味さと実行力のなさを示す例を探すなら「ロシア軍の補給部隊は本当にいい例だ」と語っているらしい」
(デイリーテレグラフ前掲 和訳航空万能論様)
Russian tanks stuck in the mud ‘an example of poor planning’ for Ukraine invasion
https://grandfleet.info/european-region/british-media-64km-russian-army-convoy-is-the-longest-prisoner-of-war-camp-in-the-world/

つまり、僅か3日分の軽いお弁当を持って48時間以内にキーウを占領できると訓練気分で進攻したものの、緒戦でウクライナ軍の強い抵抗に合って敗退、燃料はカラッポ、食料も欠乏、武器弾薬も切れて進軍どころか、スーパーを荒すロシア兵が登場したくらいです。

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さっさとキーウを占領しないかと処刑するぞとプーチンに怒鳴られたロシア軍司令部は、状況もろくに把握せずにしゃにむに後続の援軍を送り込んだぉけです。
しかも一本道、逃げ場がない所にですからめも当てられません。かくして起きたのが、ギネス級の大渋滞64㎞。
落とされた橋を修復しようにも架橋車両が大渋滞に巻き込まれて到着できず、壊れて道を塞ぐ車両を修理しようにもスペアパーツを積んだ車両ははるか後ろ。

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航空万能論

そうこうしているうちに道路は春の雪解けと共にグチャグチャの泥濘と化し、そこにもともと整備不良だった補給トラックや戦闘車両が巻き込まれてさらに故障の山を作りました。

こうてるとなまじロシア軍はガタイがでかいだけに悲惨です。
かくしてこのキーウ攻略のための大補給線は、いまや世界一長い捕虜収容所予定地と化してしまったようです。
まさに全体主義国家が独裁者の言うとおり仕事をするとこうなる、という手本を世界に示してしまいました。

にもかかわらず、遠からずキーウ攻撃はなされるだろうという厳しい見方を英軍筋はしているようです。

「複数の問題が指摘されているものの、巨大なロシア軍車列がキーウ北部に位置し、いずれは進軍を続けるだろうという事実は残る。
「この巨大な縦隊はいずれ、首都を包囲し封鎖する」と、英陸軍の元参謀長、リチャード・ダナット卿はBBCに述べた。ロシア軍がキーウを道路ごとに制圧すれば、多大な被害をもたらすと警告した。
バロンズ元司令官も、車列はキーウに甚大な被害をもたらすだけの攻撃力をとどめていると指摘。ロシア軍は砲撃隊と歩兵隊を組み合わせて首都を包囲すると、バロンズ氏は見ており、そこにこの車列も組み込まれるだろうという」
(BBC前掲)

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BBC

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BBC

ロシア軍は、3方面同時進攻をしたために戦線を拡げすぎており、南部戦線とハルキウ(ハリコフ)方面にも手当てしなければならないうえに、キエフには戦車にとってもっとも苦手な市街地戦闘が控えているからです。
ビル街に入った戦車は、四方八方から対戦車ミサイルの標的とされます。
防衛側は自由に戦車の最も苦手な砲塔上面を狙い撃ちできるでしょう。
随伴歩兵は、ワンフロアーの一部屋ずつ潰していかねばならないために、多くの犠牲者を築くことでしょう。 

そして多大な損害の上にキーウを占領したとしても、まだ先があります。
キーウを落としても、その後延々とウクライナ国民の抵抗に合い続けるとしたら、どうでしょうか。
キーウが陥落し、ロシアが勝利宣言を上げたとしても、それが終りではないのです。

そこからウクライナ戦争の第2幕が始まります。
ウクライナが、それで抵抗を止めることは考えられません。
ウクライナ人が独立と自由を捨てようと思わない以上、ウクライナ戦争はどこまでも続きます。
仮にキーウが占領されても、その戦線は西部に移りそこに正統政府を継続します。
ちょうど南京を陥落させた後に、中華民国政府に更に奥地の重慶に遷都されてしまった日本軍のようなものです。

ウクライナ戦争の少し前に、エドワード・ルトワックはこう述べたことがあります。

「大半のロシア国民は事態をどう受け止めたらいいのか分かっていない状態だが、ウクライナ人らのレジスタンス的な抵抗でロシア軍将兵の死者が増えてくれば、侵攻を疑問視する意見がロシア国内でも広がるのは必至だ。
ウクライナ人による抵抗は、ロシアの軍用トラックを遠方から狙撃するなどの散発的な行動となるが、地道に続いていくだろう。すでに多数の小銃や弾薬が周辺国から運び込まれている。間もなく市民や民兵らに行き渡るとみられる。
今後は、ロシアとの歴史的な結びつきが薄いウクライナ西部地域が抵抗勢力の拠点となっていくだろう。
また、1日に数人~十数人のロシア兵が抵抗活動で死亡する事態となれば、チェチェン紛争のときに「ロシア兵士の母の委員会連合」が率いた反戦デモのような動きがロシア国内で盛り上がる可能性がある。
さらに、ロシアがウクライナ人らを摘発し弾圧すれば、全世界の同情がウクライナに集まるだろう。そうした意味でも、ウクライナ人がどれだけ抵抗できるかが将来のカギを握る」
(産経 エドワード・ルトワック)
ウクライナ侵攻「プーチンの終わりの始まりか」 ルトワック氏緊急インタビュー - 産経ニュース (sankei.com)

一般論としては、ウクライナは平野が占める地形でゲリラ線向きではないことは確かですが、それはアフガン型ゲリラ線を想定した場合のことです。
ルトワックが指摘する「抵抗活動」は、散発的、かつ持続的なロシア占領軍に対してのゲリラ活動です。
1日にわずかずつであってもロシア兵が死亡していくことが続けば、ロシア国民はどのように感じるでしょうか。

かつての第2次大戦がその典型でしたが、互いの国の国力を振り絞った総力戦に突入した場合、国家の最大のリソースはなんでしょうか。
それは武器・兵力・兵員の質と量もさることながら、それ以上に重要な要素は実は「自国民の支持」です。
自国民の支持を失った政権は、絶対に戦争を継続することができません。
こんな戦争には大義がない。死んだら馬鹿馬鹿しいぞ、え、なんだって自給300円で、死んでも弔慰金が1万ちょぼちょぼだって冗談じゃねぇや、第一メシも食わせないで戦えるかバカヤロー、ウクライナ人民はファシストの圧政から解放されてオレらを歓迎してくれるって言ってたじゃねぇか・・・。
こう考える兵隊が多くなれば、ひとつや二つの戦闘で勝利しても、しょせん最終的に戦争に勝つことは不可能です。
彼らはスマホでこの最悪の状況を国内の家族に送り、いくらプーチンがフエースブックを見れなくしても、それはたちまち国民に知れ渡ります。

しかもその戦闘にすら勝てないのですから、ロシア人の戦意はダダ落ちです。
ロシアでは昨日大規模な反戦デモが起きて3500人が拘束されました。

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時事 

「【ロンドン・ロイター時事】ロシア各地で6日、ウクライナへの軍事侵攻に抗議する反戦デモが行われ、タス通信によると、約3500人が警察に拘束された。 このうち首都モスクワで1700人、第2の都市サンクトペテルブルクでは750人に上ったという。
反体制活動家らがソーシャルメディアに投稿したビデオによると、デモ隊は「戦争反対」「恥を知れ」と叫んだ。中部エカテリンブルクでは数十人のデモ参加者が拘束されたり、参加者の1人が暴動鎮圧用装備で身を固めた警官に暴行を受けたりする様子が映っていた」
(時事3月6日)
ロシアで反戦デモ、3500人拘束(時事通信) - Yahoo!ニュース

かつてのベトナム戦争において米国は戦闘に勝ちながら戦争に負けましたが、その最大の原因は「自国民の支持」を失ったことでした。
プーチンは歴史を忠実に繰り返してしまったようで、ウクライナ戦争もまた、ロシア人の支持を得ているとはとうてい見えないどころか、プーチン政権の命取りになるでしょう。

 

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ウクライナに平和と独立と自由を!

 

2022年3月 6日 (日)

日曜写真館 月の夜なる嬉しさよ花の春

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春の夜の讃美歌歌ふ男女かな 政岡子規

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春の夜のそこ行くは誰そ行くは誰そ 政岡子規

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春の夜の心満ちくる故知らず 岡本眸

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春の夜の夢見て咲や帰花  加賀千代女

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人気なき道を選びて月の夜 寺岡捷子

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春の夜のそなた匂ふかおれも来た 上島鬼貫

 

 

2022年3月 5日 (土)

原発占拠、プーチンは発狂したのか?

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ほんとうにプーチンは狂ったのかもしれない、こういう噂が国際社会に飛び交い始めました。
先日、プーチンがロシア軍に核戦力を含む特別警戒態勢を発令したことがきっかけでした。

「[モスクワ 27日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は27日、北大西洋条約機構(NATO)首脳らによる声明と西側諸国の対ロ経済制裁を受け、核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた。米国は、緊張を高める受け入れられない行為だと非難した。
プーチン大統領は国営テレビで「西側諸国はわが国に対し、経済分野で非友好的な手段を取るだけでなく、NATO主要国の首脳らはわが国について攻撃的な声明を出した」などと語った」
(ロイター2月27日)

ただし、ラブロフ外相は核戦争は想定していないと言っています。

「モスクワ 3日 ロイター] - ロシアのラブロフ外相は3日、国営テレビのインタビューで、一部の国の指導者がロシアに対する戦争を準備していると述べた。ウクライナでの軍事作戦は「最後まで」やり通す考えを示した。
ロシアは核戦争を考えていないとも述べた」
(ロイター3月3日)

ラブロフは今までバッターの頭を狙ってくる悪質なピッチャーのような人物でしたが、今回始めて常識人に見えてきました。
ただし核戦争を考えていない、というラブロフの言葉を額面どおりに受けとれないのが現状です。
今のプーチンに諫言することができる人間は、もうクレムリンにはいないからです。
つまり絶対権力を握った狂人が、核のスイッチを弄んでいるわけです。

そして昨3月4日には、とうとう原発を砲撃して炎上させ、軍が占拠しました。
さすがに私も絶句しました。ここまでやるとは。
このような人物を常人としてあつかってはいけません。
この所業は危惧されてきた核ジャックそのもので、それを一国の正規軍が行うなど論外です。
今までは甘く言えば一般的な戦争行為でしたが、これは完全な戦時国際法違反の戦争犯罪を構成します。

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「ウクライナ南部ザポロジエにある原子力発電所で4日、ロシア軍の砲撃を受け火災が発生したとウクライナのクレバ外相がツイッターで表明した。原子炉6基がある同原発は欧州最大級の発電能力を持つ。国際原子力機関(IAEA)は「同原発の放射線量に変化はないとウクライナ当局から報告を受けた」として「主要設備に影響はない」とツイッターに投稿した。
ロイター通信によると、火災が起きたのは原子炉ではなく原発の研修施設。同原発のあるエネルゴダルの市長はSNSのテレグラムで「ロシア軍の絶え間ない砲撃によりザポロジエ原発が燃えている」と書き込んだ。具体的な損害状況などは明らかになっていない。
IAEAのグロッシ事務局長は4日、武力行使の停止を訴え「原子炉が攻撃されれば深刻な危険がある」と警告した。IAEAは原発攻撃前に開いた3日の臨時理事会で「原子力施設の管理の強奪や暴力などの行為」とし、ロシアに軍事行動をただちにやめるよう求めていた」
(日経3月4日)

ウクライナ当局が発表したザポリージャ原発の原子炉状況は、以下です。

・原発1号機:定期点検中
・原発2号機:送電網から切り離され原子炉は冷却中
・原発3号機:送電網から切り離され原子炉は冷却中
・原発4号機:稼働中
・原発5号機:原子炉を冷却中
・原発6号機:原子炉を冷却中

ウクライナはソ連時代チェリノブイリ原発事故で十数年間苦しめられた国です。
原発を占拠して脅迫することは、核テロという現代でもっとも悪質な犯罪であって、申し開きのしようがない戦争犯罪です。
プーチンは気が狂ったとしか思えません。

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このザポロジエ原発は6基あってうち5基は旧ソ連時代の1984~89年、残る1基は95年に運転を開始されたロシア型加圧水炉(VVER)で、出力は各100万キロワットです。
ロシア型加圧水型原子炉 - Wikipedia

この原発は欧州最大規模で、これが攻撃によって破壊されレベル7の事故が起きた場合、1986年のチェルノブイリ原発事故の10倍以上の悲惨な原発事故になるとクレバ外相は訴えています。
これは外交的修辞ではなく、たぶん本当に起こり得ることです。
下図は、チェルノブイリ事故によるヨーロッパ全土のセシウム137の表層地盤の堆積図です。
ウクライナは日本と違い平坦な平野部なので、スカンジナビア半島、ドイツなどが放射能汚染されました。

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チェルノブイリから学ぶ:地図 - 日常で放射能に向き合う 学 【2012/8前 監修】 (google.com)

ロシア軍がザボロジェ原発を暴走させれば、ヨーロッパ全域は極めて深刻な放射能汚染さらされることになります。
元原子力プラント設計技術者で工学博士の後藤政志氏の談話を基に、今後の展開について考えてみましょう。
※読売新聞3月3日
ウクライナにある欧州最大規模の原発をロシア軍が攻撃 専門家が恐れる3つのこと

現在、ザボロジェ原発の支配権はロシア軍が握っています。
ロシア軍が煮て食おうと焼いて食おうと自由だということです。

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ザポロジエ原発 ウィキ

まず第1に、原子炉が直接ロシア軍の攻撃を受けた場合です。
建屋が覆う形式の場合、これが防壁になって破壊を免れますが、建屋内部に侵入して格納容器そのものに爆薬を仕掛けられた場合、原子炉を破壊することは可能です。
原子炉は冷却系や制御系が破壊されて暴走を開始します。

第2に、現在原発内部の状況は不明ですが、銃を突きつけられて拘束されている可能性があります。
代替要員は用意してきているかもしれませんが、後藤氏はたいへんに危険な状況だと述べています。

「このケースが最も怖いのですが、現在、この原発を動かしている運転員が攻撃から逃れるために持ち場を離れてしまうことです。原発というのは、誰でも動かせるものではありません。それぞれ、どこにどんなクセがあるのか。どう制御すればよいのかが異なっているのです。仮にロシア軍がこの原発を制圧、占拠した後、動かせばいいと安易に考えているとすれば最悪です」
(読売前掲)

核テロリストがザポロジエ原発の管制室に座っていて、スイッチひとつで冷却系を止めて暴走させることができるということです。
占拠したロシア軍はクレムリンからの命令一下、ためらわずにこの死のスイッチを押すことでしょう。

第3のシナリオは、制御系などになんらかの細工を施して、ロシア軍がここを離れてもいつでも自由に制御できる仕掛けをしておくことです。
この可能性はたいへんに高く、ロシアが好むマルウェアを制御系のコンピューターに仕掛けられた場合、いつでもクレムリンからの指令ひとつで暴走を開始してしまうことでしょう。

プーチンは冒頭に書いたように核攻撃をほのめかしましたが、そちらはフェイントでこちらの原発制圧のほうが本命のような気がします。
核ミサイル攻撃は相当の確率でミサイルディフェンスでブロックされ、米英仏の報復攻撃でロシアは壊滅するからです。
ならば、報復を受けずにウクライナとNATOのみに大きな打撃を与えることができる核暴走のほうがいい、そうプーチンが考えても不思議はありません。

仮に敗北必至とみたこの男が、ロシアに風上の時間を狙ってザボロジェ原発を暴走させたとします。
その結果、数時間以内にウクライナとNATO諸国は長きに渡って放射能禍の下に置かれることになります。
お仲間のベラルーシも同様ですが、プーチンは気にもとめないでしょう。
まさに悪魔的プランですが、今のプーチンならやりかねません。

そして次はウクライナの都市に対する無差別爆撃です。
これをさんざんシリアで行い、一般市民に膨大な死者を出しました。

バイデンは一般教書演説の最後をこの言葉で締めくくったそうです。
"Go get him!"(奴を捕まえろ)
民間人大量虐殺と原発攻撃を裁く国際法廷に引きずり出さない限りこの状況は終らないでしょう。

いずれにしても、この男は狂っています。
この男に必要なのは、交渉会場ではなく国際法廷です。

 

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ウクライナに平和と独立と自由を!

 

2022年3月 4日 (金)

ベラルーシはなぜ今頃参戦したのか

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ベラルーシが今頃になって参戦したようです。
なぜ国際社会がロシアを世界の敵と認定したころになって、ロシアに助っ人するのでしょうか。
盟友のはずの中国なんてビビって、先日の国連総会のロシア非難決議で反対票を投じなかったくらいです。
遅すぎはしないか、それが私の最初の疑問でした。

「3月2日 AFP】ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は1日、南部の対ウクライナ国境地帯への軍部隊の増派を指示したと発表した。ただし、軍事同盟国であるロシアのウクライナ侵攻には参加しない方針。国営ベルタ(Belta)通信が伝えた。
 ルカシェンコ氏は国家安全保障会議で、国土防衛のため、兵士数百人、装甲車、迫撃砲などで構成される戦術戦闘群5個を南部に追加配備すると述べた。現地には現在、ヘリコプターや戦闘機が配備されている」
(AFP3月2日)

だって、今やロシア経済は破綻寸前、いやもう破綻しています。
ルーブルは紙くず、国債はジャンク債、株式など相場が立ちません。
とうとうロシア国債は6段階落ちとなってしまいました。

「米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3日、ロシアの格付けを「B3」に6段階引き下げたと発表した。投機的水準にあたる。ウクライナ侵攻で米欧から厳しい経済制裁を科され、ロシア経済を巡るリスクが高まったと判断した」
(読売3月3日)

仮にロシアが勝利しても、ロシアへの制裁が長期化するだけのことですから、勝とうが負けようが経済破綻は免れません。
それをなにもこんな時にトチ狂ってと思いますが、どうもベラルーシは本気のようです。
口では参戦したとは言っていませんが、それは既に始まっている西側の制裁が恐ろしいからで、現実にはポーランドとウクライナ境界周辺地域に戦車部隊を進出させているようです。
すでに西部進攻部隊に出撃拠点を提供した段階で共犯扱いですから、自らウクライナに進攻すればリッパな共謀者に格上げです。

「ベラルーシ軍の戦車300輌はウクライナ西部の国境に近いピンスク、イヴァノヴォ、ドロギチンに集結しており国境超えに向けて行動を起こしていないが、ウクライナ北部方面の防衛を担当する北部作戦司令部は1日午前12時過ぎの会見で「ベラルーシ軍はチェルニーヒウ地域に入って3日目が経過している」と発表、別の情報源は「ベラルーシ軍の車輌33輌がチェルニーヒウのSlabynとPakulに向かった」と指摘しているので既にベラルーシ軍は国境を越えている」
(航空万能論3月2日)
https://grandfleet.info/european-region/ukrainian-ministry-of-defense-300-belarusian-tanks-gathered-near-the-border/

ここで集結地点として上げられているピンスクの位置は、ウクライナ西部です。

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ピンスク  Google Earth 

ポーランドからウクライナに入る幹線は地図で見ると2本あって、一本がポーランド領ルブリンからのものと、もう一本がポーランドからウクライナ領リビィウに入るもののようです。
他に間道などは多くあるでしょうが、西側の援助物資は大型トラックによるコンボイを使って搬入されていますから、幹線が使われるとみたほうがいいでしょう。

ならばベラルーシの参戦意図が浮かび上がってきます。
それは陸路でのウクライナ支援路を遮断するたとが目的です。

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停戦交渉開始で合意 ロシアとウクライナ、交戦は継続―プーチン氏「核警戒引き上げ」:時事ドットコム (jiji.com)

では、ベラルーシの位置関係を見てみましょう。
ウクライナの北で、西部地域を扼する位置にあり、ポーランドとも国境を接しています。
首都キエフとは至近距離で、ロシアのキエフ攻略軍の策源地となったことはご承知のとおりです。

ところでいまのウクライナ戦争は補給戦の段階に入っています。
攻防の焦点がキエフ攻防戦にあることは疑い得ませんが、むしろ問題はロシア軍の補給が先か、ウクライナへの支援物資が先かという競り合いにかかっていると考えたほうがいいでしょう。
つまりウクライナ戦争は、すぐれて補給戦でもあるのです。

ロシアは48時間以内にウクライナを制圧し、72時間以内に勝利宣言というファンタジーを描いて、最小限の武器弾薬の兵站すら作らなかったツケが祟りました。
路上にはガス欠で動けなくなった戦車、軍用車両が点々と打ち捨てられ、多連装ロケット砲は弾が切れたらただの筒、戦車は鉄の棺桶。
ですから、64㎞という長い長い車列を作ってキエフ戦線に補給しようとしているわけです。

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約64キロにわたる車列…ロシア軍、ウクライナの首都キエフに迫る “燃料気化爆弾”報道も(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

黒井文太郎氏はこんな感想を話しています。

「相当の攻撃用の兵器だけではなくて、弾薬や燃料を運んでいる。これだけの量ということは渋滞状態なんですよ。要するに防御するのが難しいわけです、こんな状態だと。こういう状態になってしまったら、(この状態で)攻撃するだけの能力がウクライナにはないということ。これからシビアな戦闘がロシア側からされると思います」(日テレ3月1日)

黒井さん、相変わらず辛口だなぁ。
おっしゃるとおり、今後ロシアが「シビアな攻撃」をキエフに企図しているのは確かですが、ならばどうしてこんな渋滞を引き起こしているのでしょか。
こんな逃げ道のない拓けた場所の一本道に一列縦隊で押すな押すな、です。もう狙ってくれといわんばかりです。
ロシアが制空権を取れていないのはこの間明らかで、緒戦で死んだはずのウクライナ空軍が、露軍のずさんなミサイル攻撃があたらなかったため(笑)に生き残っていることもわかっています。

このような補給線に対しての攻撃の場合、トルコ製「バイタクルTB2」というドローンを使った攻撃を仕掛けて戦果を上げていましたが、2機落とされて一時は手持ちが4機かと思われていましたが、補給があって実は15機ちかくが稼働しているのが分かりました。

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バイタクルTB2ドローン

ウクライナとトルコが急接近 「ロシアへの圧力」で一致 無人攻撃

また土地勘があるウクライナ兵が、ボーっとしてロシア軍補給車両が通過するのを見ているのでしょうか。
こういう拓けた一本道で1台が炎上したらコンボイがどうなるか、かつてのアフガンのサラン峠で学ばなかったのでしょうか。

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おびただしい破壊されたロシア軍戦車の残骸の山 産経

黒井氏とは異なるこのような意見もあります。

「英軍情報部のフィリップ・イングラム元大佐は「制空権が確保されていない交戦地域のど真ん中で部隊が立ち往生するなんて軍事的に最悪でカモにされるだけだ。ウクライナ人はロシア軍の補給部隊の位置を完全に把握しているので大軍が態勢を立て直すのを全力で阻止するだろう。ロシア軍はこれほど大規模な部隊を一度に南下させるべきではなかったんだ」と語っている」
(航空万能論3月1日)
https://grandfleet.info/european-region/russian-media-heading-to-kyiv-is-the-worst-military-duck/

どちらの意見が正鵠を射たのかは追々わかるはずです。
いずれにしても、互いに支援を待つしかないのが現状だということは事実で、キエフだけに限らず、全戦線でウクライナ軍もロシア軍も武器弾薬が不足していることは確かなはずです。

包囲されたキエフではロシア軍がウクライナの補給線を断っているでしょうから、武器弾薬にも限りがあります。
たぶん数日以内に、ロシア軍はキエフの再侵攻を企てて、ありとあらゆる武器をみさかいなく無差別投入し、市民もろとも廃墟にする気のはずです。
プーチンが勝つためにはもうこれしか残されていません。

逆にウクライナが勝つためには、ロシアを逆包囲するしかないのですが、それには膨大な支援物資が必要です。
それが分かっているからNATOはいまポーランド経由の陸路で支援物資を送っているわけです。
これを遮断したい、これを断ち切らないと勝てない、しかし西部までロシア軍は行く力がない、ここで冒頭の私の疑問に答えられることになりました。
ベラルーシが今頃になってしゃしゃり出た理由は、ロシアからウクライナ補給線の遮断を命じられたからです。

もちろんルカチェンコは快諾し、ポーランド-ウクライナの線に派兵しました。
策源地をロシアに与えただけではなく、自らも乗り出したのですから、独裁者同士のよしみで、プーチンと地獄の道行を選んでしまったようです。
そうそう、ベラルーシには、ロシアがウクライナ大統領に据えたいヴィクトル・ ヤヌコピッチも入国したようです。

さて、ベラルーシについて簡単に触れておきます。
ひとことでいえば、ロシアにつき従うベラルーシ、カザフスタンといったしゃもない独裁国の舎弟どもの国です。
大統領はアレクサンドル・ルカシェンコという「ヨーロッパ最後の独裁者」というふたつ名を持つ男が支配していますが、最近憲法改正をしました。
その理由が奮っています。自分の大統領任期を伸ばしたいからだそうです。

「1994年就任のルカシェンコ氏は2年後に国民投票で自らの任期を延長。強権体制を固めて2001年に再選を果たすと、04年には憲法改正で任期制限を撤廃した。今は6期目。草案が実現すれば25年の大統領選への立候補は不可能だ。
しかし、現段階で素直にルカシェンコ氏の引退を予想する声は皆無に近い。
昨年改憲されたロシアでは当初、通算4期目のプーチン大統領自身が任期を通算2期までに限ることを唱えた。しかし議会で採決される間際に与党議員が「改憲前の大統領の過去の任期は制限対象にしない」との修正を提案。結局プーチン氏はさらに2期12年、36年まで続投可能になった」
(朝日2021年7月21日)
「欧州最後の独裁者」が任期制限? ささやかれる逃げ道:朝日新聞デジタル (asahi.com)

そしてもう一項、重大な改変がありました。ロシアの核ミサイルを置くことを盛り込んだのです。

「改憲では現行憲法の「自国領を非核地帯とし、中立国を目指す」という条文を削除。軍事同盟国であるロシアの核兵器配備を受け入れる可能性が高まっている」
(時事2022年2月28日)

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プーチン独裁者一家。ウラジーミル・プーチン、左カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ、右ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ
ニューズウィーク

危険なのはお手盛りの独裁延長だけではなく、むしろロシアの核基地を置くための改憲だという点です。

「興味深いことは、ウクライナの隣国ベラルーシで27日、非核化を定めた憲法条項の改正を問う国民投票が行われたことだ。具体的には、ロシア軍の核兵器の配備を可能とする内容を問うものだ。ロシアの国営タス通信によると、国民投票では有権者の65%が賛成票を投じ、反対は10%だった。プーチン氏はベラルーシにロシアの核兵器を配備することで、ウクライナだけではなく、ポーランドやバルト3国に睨みをきかすことができるわけだ」
(ウィーン発 『コンフィデンシャル』3月2日)
http://blog.livedoor.jp/wien2006/

さぁ、ここで出てきました、プーチンがキエフ攻略も敗北しした場合、最後の手段として核兵器を使う可能性です。
それも小型の戦術核ではなく、NATO諸国の首都を目標とする戦略核です。
一般的な状況において、まともな指導者が確実に報復核攻撃を受けることが間違いない核のボタンを押すはずがありません。
押せば、西側の主要都市は壊滅しますが、その代わりロシアの主要都市も消滅するからです。
こんなわかりきったことをするはずがない、という常識に核戦争理論は支えられていました。

しかし、もしプーチンが狂っていたらどうします。
やる必然性がないウクライナ戦争を始め、予告されていたとおり「見たこともない制裁」を食い、結果、想定どおり、いやそれ以上の経済恐慌になることなど、誰の目にも明らかだったはずです。
なるべくしてなったことをあえてやってしまう。まともではありません。
狂っているとしか思えません。
プーチンが狂っていると考え始めたから、西側も100%の制裁ではなく、多少の穴をあえて残しているのです。
だって、本気で世界を道連れにされたらタマッたもんじゃありませんからね。

ゾッとする想像ですが、これについては長くなりそうなので、次回に続けます。

 

 

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ウクライナの平和と独立をお祈りします。

 

2022年3月 3日 (木)

通貨・国債・株式トリプル暴落、ロシア金融恐慌へ

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ロシアは、誰ひとり同情しないでしょうが、ふたつのデフォールトの危機に直面しています。
ひとつは本来の意味の経済崩壊としてのデフォールト(債務不履行)、今ひとつが(このような言葉はありませんが)核戦争を自ら引き寄せようとする軍事的デフォールトです。
前者はロシア一国の壊滅的打撃で済みますが、後者は世界を地獄にします。
プーチンはどうやら「ロシアがない世界などいらない」と考え始めたようで、たいへんに恐ろしい。

デフォールトの警告は、おとといの2月28日に世界の金融センターロンドンの国債金融境界(IFF)から発せられました。

「ロンドン 28日 ロイター] - 国際金融協会(IIF)は28日、ロシアが対外債務の不履行に陥る可能性は「極めて高く」、今年のロシア経済は2桁の縮小に見舞われるとの見通しを発表した。西側諸国による制裁がかつてない規模に達していることが背景にある。インフレ率も2桁に達する見込みという。
IIFは、ロシア中央銀行の外貨準備の半分は資産凍結を行った国に保有されていると推定。ロシア当局が経済を支える能力は著しく低下しているとみている。
IIFの副チーフエコノミスト、エリナ・リバコワ氏は「今後も危機が深刻化すれば、デフォルトや債務再編の可能性がある」と述べた。デフォルトの可能性は「極めて高い」としたが、外国人が保有するロシア国債の規模は約600億ドルと比較的小さいため、影響は限定的なものにとどまるとした」
(ロイター3月1日)
ロシアのデフォルトの可能性極めて高い、2桁の経済縮小も=IIF | Reuters

これは金融制裁によって、ロシアのドル建て債務が不履行になることを警告したものです。
現在ロシアでは、SWIFTが実際に適用される前に心理的なパニックが勃発しています。
西側はSWIFTだけではなく、同時にロシア中央銀行と主要銀行への制裁をかける合わせ技で締めつけています。

まず、最初の制裁の衝撃波はルーブルと株式市場を襲いました。
ルーブルの投げ売りが勃発したのです。
ロシア中銀に制裁がかかってしまったために、ドルベースの外貨準備が凍結されてしまいました。
つまり中央銀行の為替介入が不可能となってしまったのです。

「ロシア中銀の持つ外貨準備は約6300億ドル(約73兆円)。ドルやユーロなど外貨が5000億ドル分あり、日銀にも円建ての外貨準備を数兆円規模で抱えているとされる。28日の外国為替市場でルーブルが対ドルで史上最安値を更新。急激な通貨安に拍車が掛かるのは必至だ」
(日経2月28日)

現在1ドル102ルーブルですが、弾切れは必至です。
これで中銀がルーブルを買い支えられなければ、いったい誰がルーブルの投げ売りをストップできるのでしょうか。
プーチンは国民にドルを拠出しろと叫んでいますが、かえって市中銀行のATMからはどんどん外貨が引き出される始末です。
ロシア人による大量の外貨の引き出しにより、銀行ATMでの外貨引き出しが出来ない状態になっているようです。
ロシア人の預金の特徴は、自国通貨に対しての不信感からマルチアカウント(複数通貨)を持つのが常識で、ドルやユーロで財産をもっているからで、プーチンはこれを出せと言っているのですが、今こんなことを言えば火に油を注ぐようなものです。

こういう状況を横目で見て、国際投機筋は情け容赦なルーブルを売り浴びせましたから、かくてこれでルーブルの投げ売り、つまり紙クズ化は決定的となりました。

「ロシア軍のウクライナ侵攻を受けてロシア市場から資金が激しく流出している。通貨ルーブルは対ドルで史上最安値を付け、ドル建ての主要株価指数であるRTSは前営業日の22日比で一時50%安と暴落した。債券も売られ「トリプル安」が続いている。今後想定される欧米の大規模制裁による経済混乱に警戒が強まっているからだ。株安はアジアや欧州市場にも波及している」
(日経2月24日)
ロシア市場トリプル安 通貨最安値・株一時50%、債券も: 日本経済新聞 (nikkei.com)

今週は、ロシア金融機関の取り付け騒ぎが連続的に発生するはずです。
ルーブル相場の急落とロシア国債は共に暴落し、株式相場は市場が立たないほどです。
かくて悪夢の通貨、国債、株式市場暴落というトリプル安の金融恐慌が、ロシアを襲っているわけです。
これに耐えられる国はそうそうありません。
まだまだ始まったばかりですが、これが米国が再三警告していた「見たことがない制裁」です。

ロシア国債とルーブル-円相場の動向を見てみましょう。
見事なまでの大暴落です。
ルーブル建ては商いが立たず、ドル建てユーロ建ては聞くだけ野暮です。

「ロシア中央銀行は外国人に対するルーブル建てロシア国債のクーポン支払いを禁止した。世界各国から制裁を受ける中で、市場を支えるための一時的な措置だと説明した。
今週に入り同中銀は、外国人によるロシア証券の売却凍結を含む一連の措置を発表している。2月初めの時点で約3兆ルーブル(約3兆円)相当のロシア債を保有する外国人投資家は、今回の禁止でクーポンを受け取れなくなる可能性がある」
(ブルームバーク3月2日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-01/R82V7XT1UM1101

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インコレ|ウクライナ情勢悪化を受けてロシアの資産価格が下落 (pictet.co.jp)

次にこれに株式相場を重ねてみます。
こちらもすさまじい。

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同上

今までロシアが戦争資金をため込むことができた原油高を軽く吹き飛ばして、100倍返しにしたような破壊力です。
ルーブルはいまやただの紙クズです。
国民は紙クズになる前に、手持ちのルーブルとドルを引き出して現物に交換しようと走っています。

「ロシア国内でも「経済が崩壊する」という悲観的な空気が広がり、ルーブル安を懸念しドルを確保しようとする動きが広がった。
「SWIFTから排除されたらどんな被害が起きる分からない」との思いから、早めに現金を引き出しておこうと「取り付け騒ぎ」が発生。週末の都市部のATMの前には市民の大行列ができた。
なんとSWIFT排除が発表された木曜日で1110億ルーブル(約1500億円)引き出されたとの報道もある」
(MAG2ニュース3月1日)
ロシア、デフォルト確定か。日欧米の制裁強化でルーブルは紙くず同然?現実味を帯びる経済破綻 - まぐまぐニュース! (mag2.com)

外貨が凍結されれば、多くを輸入に頼っているロシアでは一気にモノ不足が露呈します。
そして買いたくても手持ちのルーブルは紙くずですから、これでハイパーインフレにならないわけがありません。
売るものはろくな製造業がないロシアでは原油とレアメタルだけですがこれが止められ、輸入も外貨がない上に輸出制裁がかかってしまって買えなくなってしまったのです。
ダーチャに走って畑を耕したくても、まだ畑はカチカチ。溶けるのはまだ先です。

それでなくても、ウクライナ戦争以前からロシア経済はコロナで充分すぎるほど痛んでいました。
なにせ世界指折りの感染大国ですから。

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ロシア 首相や閣僚 軍に感染広がり深刻な事態に 新型コロナ | NHKニュース

ロシア製ワクチンはただの水でしたから、充分に政権への不信感がたまっていました。
泣き面に蜂で、ポストコロナの影響で世界的インフレが進行する中、ロシアのインフレ率は2021年冬には政府目標の2倍に達する8.1%です。
食品価格は2021年の1年間でなんと12%以上の上昇。
果物、野菜、卵などの生鮮品は25%上昇。
こういう恐ろしいばかりのモノ不足に恐怖した市民は、買いだめに走っ ていっそうモノ不足が進行し、更にインフレが加速して物価上昇は青天井となるという負のスパイラルが発生していました。

下図がロシアの物価上昇率です。

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グラフの声を聞く:「インフレ急伸」を警告するロシア中銀=市岡繁男 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

上図は進攻前のものですから、最新の物価上昇がどれだけになるのか想像するだに恐ろしい。
たぶんソ連崩壊時の2600%(!)に並ぶ記録的なものになると推測できます。
よりによってこういう時を選んで、隣国を侵略しなくてもよさそうなものですが、逆にプーチンはだから人気とりにウクライナ侵略をしかけたのでしょう。

モスクワ在住の日本人「きょうこ」氏は、去年11月にすでにこう書いています。

「ソ連崩壊頃、ロシアのインフレ率は2600%であった。そこまでいかなくても、2015年には15%を記録しており、定期的に急激なインフレに見舞われている。食品の値上がりから見ても、年金生活者の生活は厳しいだろう。男性の平均寿命が67歳であるのにも関わらず、2019年から、男性の年金支給開始年齢は、60歳から65歳になったことに加えて、インフレ率が高く、貯金や年金では、生活が不安定になることで、将来の不安を抱える人が多いと考えた」
(きょうこ11月10日)
「ロシアのインフレ率、8.1%に上昇 」 The Moscow Times 2021/11/4|きょうこ|大学生|ロシア・貿易・自動車|note

定額で年金暮らしをしている人たちにとって、このハイパーインフレは死ねというに等しいものです。
ロシアの平均寿命は約73歳(男はウオッカの飲み過ぎで67歳)と、日本より10歳以上低いのですが、それでも2030年には65歳以上が2割になるという高齢化問題が発生しています。
プーチンは、これを年金支給時期を5歳遅らせることで乗り切ろうとしました。
女性で55歳、男性で60歳だった年金支給開始年齢を、女性60歳、男性65歳まで段階的に引き上げる「年金改革」をやったのですが、これが国民に総スカンをくらいました。
支持率は、クリミア進攻時には89%あったものが、いまや63%に下落。

これを上向きに戻したい、そうだクリミアで人気が急騰したじゃん、もう一回更にパワーアップしてウクライナをこずき回してみようか、軍部はグルジアみたいに2日もあれば陥落できるっていってたよな。オレは凱旋将軍だ。
馬鹿みたいな話しですが、たぶんプーチンはこういう国内目線だけで、今回のクリミア戦争を始めたのです(ため息)。

かつてソ連崩壊時は、黒パンと配給肉に馴らされた「ソビエト人民」でしたが、 いまのロシア国民は20年の自由の味を知ってしまったロシア市民に変化しています。
その彼らが、これまで普通に買えていたものがかえなくなる、100円で買えたものが1万円出しても買えなくなる。
ルーブルを商店で出しても、そんなゴミはいらないと突き返されられる。
クレジットカードも使えない、年金は消し飛んでしまった、西側の映画も見れなくなった、アエロフロートはリースだったので旅客機を大半失ってしまったそうだ、ウクライナ戦争は長期化し、戦死者が数千人でたそうだが、国の弔慰金は雀の涙だそうだ・・・。

これでプーチン体制に不満を持つな、というほうがむりです。
だから不満をデモでぶつけようとするとようしゃなく逮捕される、密告が奨励されて知人がポツポツと櫛の歯がぬけたように行方不明となる。
たぶんプーチンは強権支配を維持するために、非常事態を宣言するでしょうが、弾圧の強化と長期化はロシア人のロシア政府に対する不満を増幅させるものとなり、プーチン体制を瓦解させるるエネルギーをため込んでいきます。

唯一の救いは、ロシアには対立候補の排除、毒殺などの問題を抱えつつも、曲がりなりにも民主的な選挙制度が存在することです。
ここが建国以来一回も普通選挙をしたことのない中国の一党独裁体制とは大きく異なるものです。 
プーチンが亡命し(どの国が引き受けてくるにかわかりませんが)、選挙が行われナワリヌイのような人物が大統領になれば、まだ救いの余地があるとは言えます。

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反体制指導者 アレクセイ・ナワリヌイ 
<証拠音声あり>ナワリヌイ毒殺未遂の工作員は49分間も何を自白したのか? | 【Eye Spy】世界最強の名が泣く間抜けぶり | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

いずれにしても、ロシア軍がキエフの総攻撃をするようですが、はっきり言ってそんな余裕は今のロシアのどこにもないはずです。
経済崩壊した国に戦争が継続出来る道理がありません。
いやだからこそ、キエフ占領を勝ち取って一気に和平テーブルで、ウクライナに無理無体の要求を丸呑みさせて、凱旋帰国させたいのかもしれませんが、
愚かさの極みです。
いまやプーチンによる、プーチンのための戦争になっているのです。

 

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ウクライナの平和と独立をお祈りします。

 

2022年3月 2日 (水)

山路敬介氏寄稿 石垣市長選でも見えた! なぜ沖縄は「変節する怪しい政治屋」を生むのか?

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石垣市長選について山路氏に緊急寄稿を頂戴いたしました。
ご無理をかけて申し訳ありません。  

 

   ■石垣市長選でも見えた! なぜ沖縄は「変節する怪しい政治屋」を生むのか?
                                                                                                           山路敬介

 
 2/27に投開票された石垣首長選では、現職の中山義隆市長が多選批判の鬼門とされる4期目の高いハードルを越え、無事に当選する事が出来ました。
中山市長は沖縄県石垣市にとどまらず、尖閣を行政区とする自治体の長として注目度が高く、全国の保守層からの支持も人気も高い政治家なのはご承知のとおりです。

今回選挙で市民が求めたのは「安定的な市政運営と経済回復」への期待であって、自衛隊配備の可否を問う住民投票とか、市政刷新でもありませんでした。コロナ禍において石垣市は先手先手の対応をみせ、内外の高い評価を得ています。ワクチン接種率も県内一、二位の好成績を収め、こうした事が実績として有利に働いたものと思います。

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石垣市長選、現職勝利で陸自配備計画加速 「オール沖縄」の反基地は限界に 産経

離島であれば、好むと好まざるとによらずどうしても観光資源の多寡が市の経済を左右します。
環境に最大限の配慮をしつつ、計画性のあるゴルフ場やリゾート施設開発は必要です。
今回もその事に対する批判が多くありました。

しかし、かつて石垣市の観光業は隆盛で、都心のレストラン・バーやブティックの出店など、日本の若者文化発信地の一端を担っていた時代が確かにありました。
その頃の宮古島など「自然」があるだけで、石垣島と対比して暗い田舎のイメージしかなかったと思います。急激に発展した石垣市では開発コストがかさむようになり、そこに最も悪い事に革新市政が長く続いた事が決定的に石垣市観光業経済の長い低迷の時代に入らせました。対して宮古島はその上ずみを掬うように、徐々に観光発展させて来たのが歴史です。

中山市長はウクライナ情勢と台湾問題についての関連性も的確に把握しています。
当選後の会見でウクライナ情勢と台湾有事の可能性を問われ、「国際社会の対応次第では、中国の台湾に対する行動が変わって来る」とし、ロシアへの強力な制裁を要望。「南シナ海を始め、東シナ海でも中国の脅威は高まって来ている。今後、行政運営する中で台湾有事の想定も常に持っていなければならない」としています。

最も重要な事は、中山市政の下で陸上自衛隊駐屯地の整備が安定的に進められる事です。
砥板芳行氏はどこでどう間違ったものか、共産党と結び、かつ政策協定で革新方と「建設中の市有地の賃貸契約を更新しない」とする項目を盛り込んでいました。
自衛隊の南西シフトは対中国の抑止力の要です。石垣の陸自駐屯地は米軍のみならず、クアッドやインド太平洋戦略など国際約束としての計画の一部です。
しかも建設中であるものを南西シフトに穴をあけてまで、どうして「中止に出来る」と考えたものか、さっぱりわかりません。辺野古の二番煎じを現出させたかったのだ、と言うしか感想がありません。

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生配信 8/13 「尖閣問題今が絶好の機会」砥板芳行石垣市議インタビュー - YouTube

砥板芳行氏といえば、本ブログでは直ぐにピンと来る方もおられるでしょう。
2015年に国連において我那覇真子さんと同道して、翁長前知事や怪しい琉装をした糸数慶子氏などが沖縄県民の先住民認定推進を働きかけていた当時、議場でのスピーチこそ叶わなかったものの知事の発言を100%誤りとして否定した地元市議として役割のあった人です。
2012年には自ら尖閣視察を行ない、いわゆる「硬派の保守」として二紙などでは「中山市長の側近」という位置づけでした。チャンネル桜出演で顔を知った人もいるでしょう。

その彼が日本会議を辞め、自民党から離脱した上に共産党と組んでまで市長になろうとした醜悪で奇怪な姿を私たちは見たわけです。
事務局長という重職だったハズの八重山防衛協会からは除名され、金銭問題で告訴される可能性のある騒ぎまで起こしています。
もちろん人それぞれ主義主張が変化する事はやむを得ないし、その事自体を非難する事は出来ません。

けれど、砥板氏がなにゆえに180度の主張の転換を遂げたのか? そこに納得の行く説明は本人からついぞありませんでした。たとえば上で述べた自衛隊配備問題について、つい昨年末までは「住民投票など論外」と言い、つねに自衛隊基地賛成派の急先鋒でした。
二紙や八重山日報によれば、「新市庁舎の赤瓦が県産品でなかった事が中山市長と袂を別つ事になったきっかけ」とされていますが、そんな事で安全保障関連の主張までが正反対になった説明にはなりません。

砥板氏を良く知る友人の宮古市議によると、「私や君にとっては不合理でも、市長になる事自体を目標においた砥板君にとっては合理的なのでは?」、「今回、市長になるにはどうしたら良いか?そうした観点から仲間や主張を変えた」という評価。
砥板氏支持の石垣市のある商工人は、「砥板には、今からの石垣市長に自衛隊阻止など出来る権限がない事くらい分かっている。攻め手は現職と反対の主張をする事が必須条件で、対立点がない立候補だったら市長になる大義名分を拵えられない」と言います。

砥板氏が革新統一候補になった経過をたどると、もっと良く分かります。
はじめは自衛隊絶対反対の革新市議の内原英聡氏が立候補表明をし、ゴルフ場反対などをかかげる農業生産法人代表の金城利憲氏が名乗りを上げました。
オール沖縄革新陣営は一本化するためにまず、看板が革新では勝つ事が出来ないので保守偽装する必要から砥板氏に一本化する道程を模索します。そこで問題となるのはいかに砥板の主張を下げさせ、自衛隊反対派に寄り添わせる事が出来るか?が課題でした。

最終的にギリギリの段階で砥板が「自衛隊配備予定地の市有地の賃貸更新をしない事」、配備計画そのものに関しても、デニー知事と歩調を合わせ「住民合意のない配備を強行しない」とし、ゴルフ場も白紙、主たる政策の軸足を完全に革新側にシフトさせる事になったという事です。
八重山日報によれば、「実際、砥板がこんなにも気前よく譲歩するとは思わなかった」という声が革新側から出ていたそうです。
もちろんこれは昨年の宮古市長選をモデルとしたもので、ここまで来れば後は「革新隠し」にまい進して、選対の「顔」には保守系をならべ、当否を別ける保守票の取り込みをさながら狙った選挙戦に持っていくのが勝利の方程式です。

もともと多選批判くらいしか大した主張などない砥板氏には、主たる主張でも変更など痛くもかゆくもなかったのですが、結果として落選してしまいました。
敗因について、宮古市議の國仲氏は「自衛隊配備問題で対立していた人が、180度変わって候補者になった事に理解が得られなかった。」(宮古毎日)、「自衛隊配備を推進してきた従来の立場に対し、革新支持者の反発は大きかった」(琉球新報)、「従来の姿勢を180度転換した事などで、保革それぞれの支持者が少なくなかった」(沖縄タイムス)などとなっています。

デニー知事は敗戦にあたり報道陣に問われ「勢力を拡大するために選挙をやっているわけではない」(沖縄タイムス)と啖呵をきり、それに対して「まるで人ごとだ!」と与党幹部が怒りをあらわにしていたそうです。(沖縄タイムス)
けれどデニー氏にしてみれば自陣営から出る候補者が保守系ばかりであって、とても自分の眼鏡に叶った候補でない不満が募っているではないでしょうか? それでかつ、次から次へと連戦連敗しているなら、趣味の何とかキャラバンとかでもって、お花畑に逃げ込んでいたい心境なのでしょう。

                                                                                                                                     了

 

2022年3月 1日 (火)

ウクライナロシア停戦会議とSWIFT排除の関係とは

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ウクライナ、ロシア、双方共に停戦交渉はすると言っています。
あくまでも停戦交渉であって、二国間関係を拘束する和平交渉ではないようです。
このような停戦交渉は、戦争中に随時行われるもので珍しくありません。
停戦合意とは、そもそも合意しては破れ、破れてはまた結ぶといった類のものです。
そのただの停戦交渉を持つことさえスッタモンダでした。

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露とウクライナが初の停戦協議、結果持ち帰り近く再協議へ…協議中も露軍攻撃続く : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

なぜでしょうか。
ロシアが勝手なプロパガンダをタスなどで流して、まるで停戦交渉をウクライナが拒否しているような世論を作ろうとしたからです。
どうも日本のメディアなどには誤解があるようですが、ウクライナは慌てて和平交渉をする必要がありません。
早く手仕舞したいのはプーチンのほうなのです。
追い詰められているのは、大軍でキエフを取り囲んでいるはずのプーチンであって、一見孤軍のようなウクライナではありません。

すでにウクライナ軍発表で(戦争中なので割り引いてください)、900両の軍事車両と4300人のロシア兵を戦死させたと言われています。
ロシアが発表していたハリコフ占領は偽りで、ウクライナ軍が奪還に成功していますし、キエフに突入した先遣隊も孤立してしまっています。
本隊は30㎞離れた地点から動けずにいるようで、これは先遣隊が返り討ちにあったためか、あるいはハリコフ戦線で顕在化した補給問題のせいなのかはわかりません。
戦争前には48時間で首都キエフを制圧すると吠えていた勢いはどこへやら、いまや頼みの制空権すらウクライナ空軍の復活で厳しくなっているようです。

ソースは中央日報ですが、ロシア軍はすでに3割の戦力を失ったという分析もあるようです。

「戦争の序盤、ロシアの損失はかなり大きい。21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ研究委員は「ウクライナ国防省の26日の発表によると、ロシアの戦車146台と装甲車706台が破壊された」とし「普通、全体戦力の30-50%ほど被害を受けた部隊を戦闘不能とみる。25-30個大隊戦術団を失ったということ」と述べた。大隊戦術団とは戦車(10台)・装甲車(40台)を中心に砲兵・防空・工兵・通信・医務を集めた大隊規模のロシア軍臨時部隊編成だ。
ロシアは今回の戦争に160個大隊戦術団を動員し、100個を戦闘に投入した。3日間(26日基準)の戦闘で30%を失ったという数値だ。ウクライナが善戦しているということだ」
(中央3月1日)
「3日間で戦闘部隊30%失った」…ウクライナを軽視したプーチン露大統領(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース

この無様なロシア軍のていたらくの原因は、単にヨーロッパ各国が支援しているジャンベリンやスティンガーにだけにあるのではなく、早くもロシア兵が厭戦気分になってしまったからのようです。
大義どころか、戦う理由すらありませんものね。
市街地でウクライナ市民からお前なにしに来たんだと問われたロシア兵が、「イヤーオレ訓練だとばかり思ってたらウクライナに送られちゃってサー」と半べそをかかんばかりの姿がツイートされています。

そう、大義のない戦争に駆り出された兵士は、速やかに戦意を喪失するのです。
逆に、祖国と家族を守るという絶対的大義を掲げたウクライナ軍の士気は高く、今や志願兵が35万人も集まってしまったようです。
しかもウクライナだけではなく、隣国のポーランドや、ウクライナ系が多いイスラエルからも義勇兵が殺到しているそうです。
時間が立てばたつほど、いままでさんざんロシアに痛めつけられていた周辺国からの志願兵が、続々と国境を超えてウクライナを目指すことでしょう。
彼らの多くは実戦経験がある猛者連ですから、ヒヨっこのロシア兵が相手になるかどうか。
仮にキエフが一時的に陥落しても、キエフへの補給路は各地で寸断され、再び奪還されることでしょう。
「キエフをロシアから奪い返そう」が、ウクライナ国民のスローガンとなるかもしれません。
惨めな侵略者の末路です。

下の写真で黄色の腕章をつけているのがウクライナ兵です。
リラックスし、あくまでも明るい。

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ウォールストリートジャーナル

また欧米はこのウクライナ戦争を、「自由を守る戦いである」と価値観で位置づけました。これは大きい。
欧米が「自由」を掲げたことによって、いままでその存在理由がグラついていたNATOは蘇りました。
それがもっとも顕著に現れたのが、親露派の頭目だったドイツの180度大転換です。
ドイツはウクライナ支援を明確にしたばかりか、メルケルによって骨抜きとなっていたドイツの国防軍を再建しようとしています。
ヨーロッパからの遠心力が働いていた英国も、共に戦う意志を示しています。
つまり、かつての「NATOvsソ連」という冷戦構造がパワーアップして完全復活してしまったのです。
しかも冷戦当時は中立だったスウエーデン、ノルウェイまでもがNATOに加盟申請し、同盟国はベラルーシやカザフスタンという怪しげな独裁国だけ。
ソ連ですら味わったことのない深甚なる孤立!
これはプーチンにとって失敗ていどでは済まない大誤算のはずです。

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亡き友よ安らかに眠れ、前線に国旗の色の花束 ウクライナ AFPBB News

交渉に話を戻しましょう。
追い詰められたロシアは、無条件で停戦を行います、何日以内にウクライナから出て行きます、賠償はゆるめによろしく、ていど言っておけばいいものを、逆にエラソーに「すべての武器を置け」「ウクライナ軍は解体しろ」などという無条件降伏を突きつけてくるのですから鉄面皮もいいところです。話になりません。

「ウクライナ大統領府は交渉は「前提条件なし」で行われると発表した。ロシアは大統領府や外務省、国防省の関係者から成る代表団を派遣。タス通信によると、メジンスキー大統領補佐官がトップを務め、ルデンコ外務次官やフォミン国防次官、スルツキー下院外交委員長らが参加する。
スルツキー氏は「われわれの立場はかなり譲れないものがある。しかしながら交渉プロセスは何らかの譲歩とロードマップ策定の機会でもある」と主張した」
(時事2月28日)
ウクライナ停戦交渉、予断許さず ロシア「譲歩の機会」とも:時事ドットコム (jiji.com)

ウクライナが交渉において重要視しているのは、合意破りの常習犯ロシアがなにを言うかではなく、時間をいかに稼ぐかです。
そのためには一定の譲歩もするでしょうが、侵略軍の全面撤退は譲れないはずです。
全面降伏と全面撤退では折り合いようがありませんから、破綻するかズルズル続けるかになります。
ウクライナにとってそのほうがいいはずです。
なぜなら、今ポーランド国境から各国の支援する武器弾薬が大量に陸路でウクライナ西部に運ばれているところです。
これがキエフやハリコフ戦線、あるいは南部の占領地に行き渡るまでしばらく時間が必要です。
だから一回持ち帰ってみたり、今後もあーでもないこーでもないと、くだらない交渉をして時間稼ぎを演じるかもしれません。

一方、ロシア軍も同じく、ガス欠で動けなくなった戦車や軍用車に燃料を運ぶ必要があります。
派手に撃ちすぎたミサイルも払底してしまったようです。
だから奇妙な利害の一致が生じて、早々と和平交渉が始まったというわけです。

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CNN フォンデアライエン欧州委員長

さて、欧州委員会フォンデアライエン委員長はとうとう伝家の宝刀SWIFT排除を振るうようです。
これでプーチンの経済的命運は決まりました。
EUにもウクライナを加盟させるようです。

「「われわれはロシアに巨額の代償を支払わせ続ける覚悟だ。ロシアは国際的な金融システムや西側経済から孤立するだろう。プーチンはウクライナ破壊の道に乗り出したが、実のところ、彼は自国の未来も破壊しているのだ」
ロシア銀行のSWIFT排除はロシアの貿易に打撃を与え、ロシア企業にとってはビジネスが難しくなる。
SWIFTとは国際銀行間通信協会のことで、国境を越えた迅速な決済を可能にし、国際貿易を円滑に行うためのシステムだ。
SWIFTは国際貿易における資金送金の標準的な手段となっており、年間では何兆ドルもの資金が同システムで送金されている。
また西側諸国は26日、高額の投資と引き換えに市民権を与える、いわゆるゴールデンパスポートの制限でも合意した。この仕組みを使って、ロシアの富裕層が西側での居住権を得ていると指摘されていた」
(ロイター2月27日)

またEUについてもこのように発言しました。

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独仏首都、ウクライナに連帯 国旗のライトアップで - 産経ニュース (sankei.com)

「CNN) 欧州連合(EU)の行政トップ、フォンデアライエン欧州委員長が27日のテレビインタビューで、EUがウクライナの参加を望むと発言した。
フォンデアライエン氏はニュース専門局ユーロニュースの番組で「我々はたとえばウクライナ市場の単一市場への統合について、ウクライナと行う手続きがある。我々はエネルギー供給網などでは非常に緊密な連携がある」と述べた。
さらに「我々が非常に緊密に作業し、時間をかけて彼らが我々に属するということについては、多くのトピックがある。彼らは我々の一つであり、我々は彼らに入ってほしい」と続けた」
(CNN2月27日)

SWIFTから排除されるとどうなるかといえば、簡単に言えばロシアルーブルは紙クズとなり、いままでせっせとロシアが戦争資金としてため込んだ軍資金のドルがつかえなくなります。
え、ルーブルがあるだろうって。ナニ言ってんですか、ルーブル持っていても外国のモノはなにも買えないし、第一間違いなくロシアは輸入が閉ざされてモノ不足になりスーパーインフレが起きますから、ルーブルなんぞ持っていてもただのゴミです。
だからEUは、「これはロシアの軍資金をつかえなくするためだ」と明確に目的を明示しているのです。

それが分かっているから、ロシア市民は紙クズになる前に銀行から引き出してモノに換えようとしているわけです。
下の写真はロシアのツイッターですが、モスクワのショッピングセンター「リガ」にあるATMに行列ができる。約70人が並んでいますが、ATMの中のカネは40分たたずになくなってしまったそうです。
今日あたりはロシア各地で紙クズになる前にモノに買えてしまわねばと、市民が銀行やATMに殺到することでしょう。
金融パニックの始まりです。
さぁ、もう戦争どころじゃありませんよ。

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このように考えると、なぜいまキエフが陥落してもいないのに、ロシアが「和平交渉」をせねばならないのかお分かりになると思います。
SWIFT排除が決定されたとたん、ルーブルは投げ売られています。
ルーブルを紙屑にしないためには、ロシア中央銀行がルーブルを売ってドルを買う為替介入をせねばなりませんが、そのドルをSWIFT排除されたと決まったとたん調達できなくなっています。
ドル調達のためにこそSWIFTがいるからです。
外貨準備は凍結されてしまい、ロシア国債は投げ売られて、いったいどこからカネ引っ張ってくるのやら。
唯一の逃げ道は、経済大国のお仲間中国のCIPSという決済システムに乗り換えることですし、たぶんプーチンはそのことを北京五輪開幕式で習に頼んだはずです。
しかし、チャイナCIPSはSWIFTのような世界のカネの流れをコントロールしている巨大なシステムのわずか2%ていどの力しかありません。
第一、CIPSに送金したくともロシア銀行自体に統制がかかってしまってはそれもできません。
すると、あとは仮想通貨と現ナマで運ぶしかありません。
仮想通貨にも米国は規制をかけるそうです。
「米政府は対ロシア経済制裁で、従来にはなかった新たな分野を標的にすることを検討している。
ビットコインやイーサなど暗号資産(仮想通貨)に対するアクセスを遮断すれば、米国は未踏の制裁領域に足を踏み入れることになる。ただ、仮想通貨はそもそも国境のない世界で存在することを想定しており、往々にして政府の規制下にある金融システムの枠外で取引されている」(ウォールストリートジーナル3月1日)
制裁は仮想通貨にも? 米が検討する新領域 - WS
残るテは原油輸出の収益をトランクに入れて運びますか(笑)。
もはや反社勢力のマネーロンダリングの世界です。
実際、北朝鮮はそうやったようですが、それに関わった銀行は海外の金融機関でもようしゃない制裁対象になったことは、正恩のマカオの銀行と一緒です。
つまりSWIFTから排除されたら、逃げ道はないのです。

さてさてルーブルの価値がどんどんなくなって紙屑化していくのと、それで軍事物資を買いつけるのがどちらが早いかの勝負となりました。
プーチンさん、ほら足元を見なさい。ルーブルが劇的に崩壊していますよ。
下図が2月28日のドル-ルーブル相場です。ガラガラガッチャーン(ルーブルが壊れる音)。
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「28日の東京外国為替市場でロシアの通貨ルーブルが急落し、対ドルで1ドル=110ルーブル台と過去最安値で推移している。前週末25日時点では83ルーブル近辺で推移していた。週末に欧米がロシアの主要銀行を国際決済網から除外する経済制裁を決め、ルーブルの保有者がドルなど外貨に換える動きを急いだ。制裁でロシア中央銀行の為替介入が難しくなったこともルーブル売りをもたらした。
ある邦銀担当者によると、1ドル=119ルーブルで売買が成立したという。前週末から3割安の水準となる。もっとも「各行は決済ルートの見直しに追われており、不要不急の取引は発生していない」という。ルーブルはロシアがウクライナに侵攻した24日に1ドル=90ルーブル近辺の史上最安値を付けた。欧米の制裁強化を受けてその水準を既に下回って推移している」
(日経2月28日)
ロシア通貨が3割安 最安値の1ドル=110ルーブル台: 日本経済新聞 (nikkei.com)

もう戦争どころじゃないんじゃありませんか。
次の土日は反プーチンデモが全国で爆発するかもしれませんよ。
全軍の半分以上をウクライナに出している場合ですか。すぐに呼び戻さないと。

もはやロシアは主導権を失いました。

 

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ウクライナの平和と独立をお祈りします。

 

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