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2022年3月28日 (月)

ドイツ、ロシア産エネルギーと完全決別へ

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ウクライナでは戦局が逆転して、ロシア軍が守りに入り、ウクライナ軍が攻勢に転じています。
まるでサッカーのカウンターアタックのように、戦争は一気に局面が変化することがありますが、どうやらそれが今のようです。
ロシア軍としては、本来なら戦線を縮小して、今前線に出して損傷率が3割に登った部隊を下げて補給と休養させねばなりませんが、プーチンが後退を許さないために前線に張り付けられたまま徒に消耗を続けています。
短期の戦争を予定していたために防寒具の用意がなく、ロシア軍兵士の多くが凍傷にかかってしまっているようです。
食料、燃料、弾薬はすでに底を尽きつつあって、継戦能力が枯渇しつつあります。
遠方からスタンドオフミサイルを撃っているのはその裏返しです。

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『米中戦争』の著者である元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は、このように述べています。

「ロシア軍の攻撃から防御への転移はロシア軍の損耗が30%を超える部隊が多いことを意味する。
ロシア軍の作戦は失敗した。
今後、プーチンが使う手段としては、大量破壊兵器の使用だ。化学兵器、生物兵器、最終的には戦術核兵器だ。失敗し、傷ついたプーチンよ、早く去りなさい!」
https://www.facebook.com/yoshikazu.watanabe.96155/posts/3183428178566907

ただしこのように追い詰められたプーチンが、戦術核や化学兵器を使う可能性が高まったともいえるわけで、気が抜けない1週間となりそうです。

さて、西側陣営が一丸となって実施しているロシア制裁は、自らも「返り血」を浴びる結果となっていますが、「返り血」ひとつない制裁は効かないのでとうぜんのことです。
最大の影響を被ったのがドイツでした。
ドイツは、ロシア産エネルギーからの完全撤退を表明しました。
やる時はやる。そしてやる以上は、リクツが立てば徹底的にやらねばやった気になれない。
脱原発と言えば一気にゼロを唱え、再エネと決めたら国民の迷惑を省みず突進する、そしてロシアに頼りきっていたエネルギー構造も御破算にしてしまう、極端から極端へ、というゲルマン流全開です。
我々ぬるい日本人としては、もう少し穏やかにできないかねとは思いますが、ま、いいか。
理由はいうまでもなく、ロシアのウクライナ侵略ですが、なんせロシアへのエネルギー依存率を3割から2024年には1割までに落とそうというんですから、ハンパない。

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ロシア依存の代償を払う欧州 原発か石炭か、苦渋の選択:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

「ベルリン=石川潤】ドイツ政府はエネルギー調達でのロシア依存からの脱却を急ぐ。緑の党のハベック経済・気候相は25日、ロシアに過半を依存していた天然ガスの輸入について、2024年夏にも脱ロシア依存が可能との考えを示した。石油や石炭でも調達の大胆な切り替えを進めていく。ただ、ロシア以外の調達源は限られており、資源の争奪戦に拍車がかかる恐れもある。
ドイツのガス調達のロシア依存の割合は、調達先の切り替えなどでウクライナ侵攻前の55%から40%にまで下がっているという。今後も調達の多様化や再生エネルギーの拡大などが進めば、24年夏にはロシアからの輸入割合を1割程度にまで下げられるというのがドイツ政府の見立てだ。
石油についてもロシアからの輸入を夏までに半減し、年末にはほとんど依存していない状況を目指す。石炭は秋までにロシア依存から抜け出せそうだという」
(日経3月26日)
ドイツのガス輸入、2024年にも脱ロシア依存 経済相表明: 日本経済新聞 (nikkei.com)

なぜ私が、ほー、そこまでやるのかと驚いている理由を説明しておきましょう。
ドイツほど見た目と内実に激しい落差がある国はありません。
外目にはドイツは、原発ゼロを目指し、その代替とし再エネに異常な愛情を注ぎ、50年の温室効果ガス排出量をネット(純排出量)ゼロにするという欧州目標に合意した輝ける環境先進国です。
でも実は嘘は言っていないが、ホントのことも言っていないという看板倒れなのです。

実態はといえば、EU内の気候変動対策を強化する議論の足を常に引っ張ってきた張本人がこのドイツでした。
2018年6月、EUでは30年の一次エネルギーに占める再エネ目標比率引き上げの議論を行いました。
その時、この再エネ目標引き上げに激しく抵抗したのがドイツです。
他のフランス、イタリア、スペインなど諸国の多くが35%を提案した中で、アルトマイヤードイツ経済エネルギー相は、こう言ってのけたのです。

「再エネ比率を現状の15%にするための国民負担は年250億ユーロ(3兆円)に達した。現実的、達成可能な目標を設定すべきだ」

そりゃあんたの国の財政はそうかもしれないが、それは北海の海洋風力発電に頼ったために長距離の送電網を作らねばならず、予算がパンクしたからでしょうが、ほらほらまたドイツが勝手言ってらぁと他国はため息をついたもんでした。
原発を止めると言っては、風が吹きすぎて電気が出来すぎれば周辺国に無理に押し込み、風が吹かなければ周辺国に頼りきるといった自己チュー体質に周辺国は悩まされてきましたからね。
結局、泣く子とドイツには勝てませんで、削減目標値は引き下げられてしまいました。

また2050年の温室効果ガスの純排出量をゼロにする長期目標設定の議論の時も、西側先進国で唯一反対したのも「環境大国」ドイツでした。
それは後述しますが、石炭・褐炭火力と手を切れなかったからですが、まぁそうとうにイメージと違うでしょう。
いまでもドイツが手本、ドイツが先生と思っている老ボケ元首相5人組の皆さん、現実を見なさいよ。
原発と火力を同時に止めることは不可能ですよ。
2014年に、ドイツ副首相兼経済・エネルギー相だったガブリエルが、「脱原発と脱石炭を同時に行うことはできない」と発言したことくらい知ってから言いなさいよ。

では、なぜドイツがEU内の環境抵抗勢力になってしまったのでしょうか。
第1の理由は、電力の発電量の約4割が国内産石炭・褐炭火力発電だからです。それも褐炭です。
褐炭(かったん)とは、「石炭の中でも石炭化度が低く、水分や不純物の多い、最も低品位なもの」(ウィキ)のことで、露天掘りで採掘が可能ですので、ドイツでは大量に取れるのです。

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ドイツの石炭・褐炭火力発電所
石炭火力を2038年ゼロに、成長と脱炭素の間で苦悩 | 脱炭素時代に生き残る会社 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

ですから、ドイツでは伝統的に工業のエネルギー源を石炭と褐炭に頼ってきました。
とうぜん歴史的な既得権もあり、そこで働く炭鉱労働者も大勢います。
これを閉鎖することは社会問題を引き起こしますから、本心では絶対に化石燃料を廃止したくないのです。
褐炭だけで23.8%もあって、石炭の18.1%を凌ぎ、合わせてエネルギー源の4割を超えていました。

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ドイツのエネルギー源別発電量‐ドレスデン情報ファイル (de-info.net)

ならばそうならそうと正直に、あたしの国は石炭・褐炭火力はやめられないんです、ごめんなさい、と言えばいいのですが、そうは言わないのがゲルマン魂です。
というか言えなかったのです。本来その代替となるべき原発をメルケルが22年までに脱原発を決めてしまったために、代替エネルギーがなかったからです。
しかたなくドイツは2038年まで、国内の褐炭火力発電所の利用延長を決めたといういきさつがありました。
1990年代まではエネルギー源の半分を頼っていた石炭・多褐炭火力を、2038年にはゼロにしてしまうというのですから、こちらもスゴイといえばスゴイ。

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石炭火力を2038年ゼロに、成長と脱炭素の間で苦悩 | 脱炭素時代に生き残る会社 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

原発止めて、石炭・褐炭火力止めて、代替エネルギーはカネ食い虫にして気まぐれな再エネだけ。
完全な行き止まり状態ですが、苦し紛れかどうなのかここでメルケルが思いついたのが、CO2排出量が少ないLPGをロシアから大量輸入することだったわけです。
ああとうとう悪魔と手を結んじゃった、と今になるとそう思いますが、当時原発をゼロにして石炭・褐炭火力を減らすという解きようがない知恵の輪に取り組んでいたメルケルは、ハタと膝を打ってプーチンを救世主と崇めてしまったようです。
そしてロシアからなんとLNGの5割超もロシア一国から買う、という悪魔との契約を結んでしまいました。
なんという冒険、なんという暴挙、なんという愚挙。
こうしてドイツのロシア服従路線が始まったのです。

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ウクライナ危機とエネルギー問題

そして今や悪名高き存在となったノルド・ストリーム2の建造に着手します。
いちおう政府とは無関係の民間企業が進める商業案件であり政治は関係ないとドイツ政府は言い張っていますが、このパイプライン会社の社長は元首相のシュナイダーですし、政治判断で建造している国策ですから無縁のはずがありません。
しかもドイツほどではありませんが、オランダ、オーストリア、フランスも、このプーチンの甘い罠に相乗りしてしまいました。
ノルドストリームは2011年に操業を開始し、ウクライナ侵略前にはロシアから欧州向け供給の3分の1はノルド・ストリーム経由で、そしてその輸送力大幅増強を狙ったのが今ストップがかかったノルド・ストリーム2なのです。
今回は地上を通すと国家間の紛争となるので、全行程を海中に沈めています。

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欧州覆う、ロシアのガス網 独ルート「ノルド2」完成へ:朝日新聞デジタル (asahi.com)

といっても、すぐに止めたら国民生活が立ち行かず、製造業は瀕死となりますから、カタールと天然ガスの長期契約を結ぼうとしたり、LNGの中継基地を作ったりし始めています。
ただこんなエネルギー供給の多極化は、日本が数十年前から営々とやってきたことですから、なにを今さらで、そうそう簡単にはいかないはずです。
時期が悪い。ウクライナショックで売り手市場になっている今頃になって、分けて下さいと言っても足元を見られるでしょうから。

「ただ、ショルツ首相はエネルギー調達の転換は「今日明日でできることではない」と語り、当面はロシアからのガス輸入が必要という考えも示していた。
ロシアからの調達の割合を強引に引き下げようとすれば、資源の奪い合いが生じて、インフレに拍車がかかる恐れもある。全体の供給量に限界があるなか、経済力が相対的に弱い国々へのしわ寄せも強まりかねない」
(日経前掲)

日経は、「脱ロシア依存を着実に進めるためには、再生エネルギーなどほかのエネルギー源の確保と組み合わせることが欠かせない」なんて再エネにヨイショしていますが、なに原発を動かせばいいだけのことです。

 

 

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コメント

プーチンは単体の人殺しの天才ではあるけど、集団同士の殺し合いはど素人なんですかね。

そして、ウクライナがうまく自分達の土地を取り返せたとしても、サハリンに連れ去られた数千人のウクライナ人は、恐らく帰ってこない。本当に世界の敵です。

もう、プーチンは1人大本営化しとるのかと。まるでかつての日本陸軍のような状況。また将官が死んだようだし、既に壊滅状態だったと思われていたアゾフ連隊がバリバリに元気なようだし!
あれだけ圧倒的な戦力差がありながら(開戦時に最大19万人を動員)しておいて1ヶ月経っても膠着しちゃってるから···何それプーチンって牟田口が全権持ってるようなモノなのか?
陸続きの隣接国(プーチンから見たら属国)なのにここまで補給が遅滞するとは思いませんでした。本当にアホなの!?
もちろん攻められたウクライナ側もギリギリですけれど、完全にロシアの負け戦になってますね。
NATO側分析で一万人の死者が出てたらその数倍の傷病兵がいるはずです。そりゃあスタンドオフでリビウの燃料基地狙うとかになりますね。あとは包囲都市での無差別虐殺。
ロシア国内で、ウラジミールよ、お前は敗れ去ったのだ!もう消えろという流れになればとりあえず平和が戻ってきますがね。
憎しみの連鎖がどちらに向かうかはまだ予断を許さない状況ですね。

電力!
東北電力管内なので、ウチもサハリン2のLNGの恩恵を多分受けていますけど···。
ドイツというかゲルマン人はどうも毎度極端に過ぎます!それがEUという枠組み内で独り勝ちしてきたメルケルの遺産。
アメリカというかバイデンさんも党内政治もあってか「今こそシェールガスを大増産して西欧に送る」とは素直に言えないですしね。オバマ時代なら言えただろうけど。
エネルギー政策に関しては日本なんか圧倒的な弱者なので過去半世紀に色々とやりくりしながら繋いできたわけで···
先日の地震の時の首都圏停電の時ですら、私は震源に近いけど「とっくに住民合意が得られている女川原発を稼働させろよ!」と真っ先に思いました。
相馬共同火力発電なんか石炭の陸揚げコンベアが全壊したので当分動かせませんよ。

ところで、グリーンエナジーのテロリスト的な存在だったグレタさん達、今何か言うことないんですかねぇ?ダンマリのようで。
あと古賀茂明とか「ドイツに倣え」信奉者は無視っすか。それでいて未だに安倍批判記事ばかり書いてるし、載せる媒体も如何なとのかと。。。

 ドイツの転換はそれだけロシアの軍事力による現状変更が正解秩序や第2次世界大戦後の反省から禁じられていたもの家の暴挙であり、許しがたいものだということです。

 しかし最近のネット民の中には、オールドメディアは嘘つきだから、大手メディアの報道はプロパガンダで、そこで報道されないネット上に流れる情報を見つけて、これが真実だとさやいでいる人間が多すぎる。

 ロシアの子供だましのような言い訳を信じているし、反戦デモでは白い紙を書掲げるだけでも逮捕されるという有様を問題視せず、日本のウクライナ援助は国会審議してからやれという平時にしか通用しない話をする奴もいる有様です。大手メディアと違うことを言えばネットで多くの支持を得、それが商売にもなる時代ですので、ネット情報が玉石混交ということは肝に銘じる今日この頃です。

 バイデンはEU向けに液化天然ガスを2022年末までに150億立方メートル、2030年まで毎年500億立方ずつ供給すると表明しましたね。
それでドイツは表面的にせよ、エネルギーの脱ロシア化を打ち出さざるを得なくなったんでしょう。

私は、ドイツはまだ戦前の地政学的な勢力概念を引きずっていると思っています。首尾よくEUのボスとなったメルケルのドイツは、だから米国一国主義を嫌い、斜陽のロシアとエネルギーで手を組んでまでバランスを図ろうとしたんでしょう。
本音では今でも米国からよりも、ロシアから輸入したいのが山々なんじゃないでしょうか。

米国は世界一の埋蔵量ですが、バイデンはちゃんと約束を守れるのか。バイデン政権が課した規制をまだ緩める感じがなく、全米石油協会とフラッキング制限では「訴訟も辞さず」の対立状態だったはず。この面では共和党政権なら万事問題ないのですけれど、バイデンは石油業界をいじめ過ぎて信用ゼロですから心配ですね。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20220318-00287085

グレタちゃんは3/18にロシアのガス買うな声明を出しましたね。
攻撃性はいつもより低いですが、対象をロシアときっぱり言ってる分、日本の環境団体やれいわ新撰組よりは彼女の方が断然マシという。
ちなみに週刊金曜日はどうかなとwebで見出しを見てみたら、原発攻撃NOに注力な様子でした。それでも妥協花畑の橋下徹よりマシという。
今回国内で安全保障識者チームが発信に務めた分、左右の端やネット民より常識的なボリューム層が真っ直ぐ問題の本質に関心を持てています。
保守を自認する人たち、折角の改憲のチャンスの邪魔をしないでくださいね…ホントお願い。

本題のドイツエネルギーについて。
2030年までにロシアの体制がかなり変わっていれば制裁も緩和され、またガスを買いながら石炭減を達成できると踏んで独らしい強気の計画発表を出したなあ。
いつもの風呂敷を大きく広げておいていきなりたたみ出すやつ。
とか私は思っておりました。2038年も一応婆さんとして生きているつもりなので、畳みっぷりがどうなるか見届けてみたいものです。

ふゆみさん。
情報ありがとうございます。見落としてました!

山形さん、丁寧にありがとうございます。
日本では地味にアップされていた記事だったので、私もTwitterでたまたま拾わなければ見過ごしていたと思います。
こちらの記事とコメント欄の方々の書き込みを読んだ人が、かけているサングラスを少しでも外そうと手を掛けてくれるといいなと願いながら、いつも山路さんや山形さんのコメントを拝読しています。

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