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« ウクライナが死守しようとしているのは独立と自由です | トップページ | 山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその2 »

2022年3月23日 (水)

山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその1

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山路氏より寄稿を頂戴いたしました。3回連載で掲載します。
ありがとうございました。
なお、私は母の見舞いで3日間ほど留守にいたましますので、コメント承認が遅れますのでご了承ください。

 

                         プーチンは「反DSの英雄」などではない
                   妄想狂かつ「力の信望者」プーチンの真実を保守派は見誤るな その1
                                                                                                           山路敬介

 ウクライナ戦争において、過度にプーチン・ロシアの言い分を受け入れる傾向が一部保守派論者に見られます。
もちろん枕詞として「「侵略」ではあるが・・」とか、「先に手を出したロシアが悪い事は当然として・・」などと言う前提付きですが、そこには「善悪二元論では語れない」「ウクライナ戦争は2014年から始まった」などと、まことしやかな論調で論旨分散してロシア寄りの話に展開しているケースが見られます。
そしてまた、大日本帝国が作った満州国との類似性を指摘したり、真珠湾攻撃を引き合いに出して現在のロシアの立場と準拠させるなど、目も当てられない粗雑な言論であふれています。

どのような屁理屈を並べようが、そこにどのような経緯があろうが、現在のウクライナは国際社会のみならず冷戦後のロシア政府やプーチン自身ですら認めていたとおり、まごう事なき一個の「主権国家」です。そこにプーチンは自国の軍隊を入れ「侵攻」をした。
その事は明確に1928年のパリ不戦条約、1945年の国連憲章といった国際法規に反した主権侵害行為であって、そのために失われた無辜の人たちの生命・財産に対する責任をプーチンやロシア政府に取らせなくてはなりません。

この事実はウクライナ、あるいは旧ソ連邦や現ロシア相互間における過去や、あらゆる「歴史問題」とは関係のない現代国際法の問題です。
これを国際社会が放置するならば「暴力による現状変更」を認める事になりかねず、他の地域での連鎖的紛争を誘発する事態になり得ます。これが現在最も憂慮される事態です。

私が懸念する保守派言説には単純にロシア側の言い分やプロパガンダを信じてしまっているケースもありますが、「プーチンはDSと戦っている」とか、「軍産複合体VSプーチン」「グローバリズムVSプーチン」「ウォ―ル街VSプーチン」「プーチンは戦争に負けたことがない」等々、ありもしない「夢想」としか言いようがないケースが多々あります。
残念ながら、米国の中間選挙や大統領選に向けたトランプ陣営周辺からの、バイデン下げのためのプロパガンダに乗ってしまっている場合も多いようです。

また、先の大統領選やトランプ氏に対するでっち上げのロシア疑惑など偏った報道に接して、「メインメディアで語られない裏にこそ真実がある」と固く信じる人たちもいます。
さらにプーチンのような「悪党」には本質的で独特の魅力があり、マッチョ的な力のイメージを正として打ち出す宣伝に引っかかる人がある。あるいは、オリバー・ストーンのように、典型的な堅気に対するヤクザ者のやる引っ掛け詐術「強面の柔和な紳士的態度」の演出にコロッと騙されるケースさえあります。

プーチン支持とさえ見紛う論者たちの解説には、どのように「ロシア側にも言い分があるか」が誤謬史観と共に多々語られますが、逆に「ウクライナ国民はなぜ勇敢に戦う道を選ばざるを得ないか?」などについて、たとえば「ホロドモールの歴史」などを取り上げてウクライナ国民が決して降伏出来ない事情を述べる事はありません。
それで本当に保守かい?と疑いたくなります。

トランプ御大はまた、「プーチンは賢い、天才的だ」「愛国者だ」と言い放ち、移民問題の文脈から離れた批判をマスコミから浴びせかけられました。しかしプーチンは「賢く」などなく、「天才的」でもありません。「愛国者だ」などと言う事実もさらさらありません。
愚かなプーチンの行為がこれから先、ウクライナ国民だけでなくロシア国民をどれだけ長く、大きな苦しみにいざなう事になるでしょう。それがなんで「賢い」のか? 
対外諜報部門のトップに自分にとって耳当たりの良い報告しかされず、あげくの果てに電撃作戦に失敗して戦線を拡大、味方を片っ端から「粛清」してしまうようなズッコケをやる男がなぜ天才的なのか? 見せしめだか督戦の為に将軍らを最前線に立たせ、責任を取らせるような事をして四人もの人望ある腹心を失わせた愚かな行為には、戦略もクソもあったものではありません。

プーチンの過去の侵略行動をも内心で称揚する「(保守派ではない)単純な右翼傾向者」たちは知らないし、もちろんその過去の侵略も含めて、実際のプーチン外交は大統領就任以来、内政ともども失敗の連続でした。むしろこの失敗の数々こそが臆病なプーチンのトラウマを引き起こし、その責任を他者になすりつける伝統的スターリズムの結果が今回の戦争を引き起こした原因と言えるでしょう。そこに「愛国の大義」など微塵もありません。

その上でトランプは「本当の問題はプーチンが賢い事でなく、我々の指導者(バイデン)が馬鹿である事だ」と述べています。そうでしょうか? 私は違うと思います。
たしかにバイデンの方法は後手後手に廻り、率直に言って「間抜け」に見える場面もがいくつもありました。飛行禁止区域の設定は無理でも、ポーランドからのミグ機の提供くらいは認めるべきだったと私も考えます。
逆にトランプが大統領だったならば、ロシアによるウクライナへの侵攻がこれほど早期に起こらなかった可能性があったと思います。しかしそこは北朝鮮問題同様、それで物事が解決するわけではありません。

むしろトランプが反NATO、EUと距離をおいた姿勢のままプーチンが侵攻した場合を考えた時、それこそ西側自由主義陣営は壊滅的な打撃を被ったでしょう。
トランプに戦略性がないのは言わずもがな、立憲共産党のようにバイデン政府の批判はするが、トランプから「ならば、今どうするか? どのように対処するか?」の対案を聞いた事はありません。つまり、「サイは振られているのに」です。
自由主義陣営が一丸となって対処するべき渦中にあって、肝心の次期大統領候補が目先の中間選挙や大統領選だけに汲々としている姿は見るに堪えないものです。
トランプは今後、適切に軌道修正しなければ大統領に返り咲いても外交成果を上げる事は困難でしょう。

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米政権、より強い制裁手段温存 「脅し」でロシアの攻撃抑止できるか [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

逆に(スリーピー・ジョー)バイデンの主導した方法でプーチンの頼みの綱だった金融の雄シンガポールや、今やフィンランドやスエーデン、永世中立国であるはずのスイスまで一致協力してロシアへの制裁に加わっています。
かつてないほど充実して西側の結束力や団結力が高まった事で、ロシアとの「際限の無い協力」を打ち出していた中共政府の行き方にも大きな影響を与えています。

はからずもバイデンのリーダーシップは自由主義陣営の一致協力行動を実現していて、親中派で鳴らす林外相をして「国際法違反にあたるロシアによる武力行使の遂行において、その事情を知りながらロシアを支援、援助する国も国際法上の責任を負う事になる」と言わしめ、岸田総理も中国に「責任ある行動を求め」つつ、「(ロシアは)国際法の深刻な違反、国連憲章の重大な違反であり「侵略」当たる」と言明させるに至っています。
対して、西側社会の弱体化を信じたプーチンの威光は地に落ち、手の込んだ方法で参戦回避したベラルーシだけでなく、盟邦のカザフスタンからさえも派兵拒否される憂き目にあっています。

さらにバイデンはプーチンを正しく「戦争犯罪者」と指摘し、「人殺しの独裁者」「生粋の悪党」とさえ呼んでいます。決して容赦しない覚悟を示し、これからさらに段階的に経済制裁のレベルを高めようとしています。
このようなとき、敵と味方を取り違えて認識する一部保守の方々には失望を禁じ得ません。

3/20琉球新報の乗松聡子氏の記事「ロシア「悪魔化」に抱く疑問」では、スプートニクの記事をそのまま引用し、「260万以上の民間人がロシアへ退避申請している」とか、「ロシア非常事態省が330トン超の人道支援物資をドンバスやキエフに届けた」としています。
さすがの左派リベ的脳天気さ加減が全開ですが、一部保守も同様、変わらない程度に見えてしまいます。
彼らはまた、プーチンと盟友のロシア正教枢機卿が言った「プーチンの進攻は(西側で流行した)「プライドパレード」が原因の一つ」などと言う戯言に騙されて簡単に得心してしまうのではないでしょうか。

仮に停戦が実現しても、本当の戦いはこれからです。
これまでのところウクライナは有利に状況を進めてきました。肝心の西側陣営のさらなる結束が実現し、それが長続きするかどうか? 本当に試されるのはこれからです。
「認識」は正しく持ちたいものです。   

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ウクライナ大統領、東部紛争問題巡り米大統領と協議|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)                                                                  

■ ウクライナはドンバス地域を捨てた事はない
  
 ウクライナ政府はロシア系住民が多く住むドンバス地域を放棄した事は、これまでのところ一度もありません。ドンバスでロシア文化やロシア語の使用を禁止したこともありません。ドネツクやルガンスクは独立共和国などではなく、不法にロシアの支援を受ける武装分離主義団体が支配するウクライナの土地です。

ドンバス地域では2014年以来、ロシアからの援助があった時には反政府親露派の反抗が高まり、それが無くなるとおとなしくなる。その繰り返しで現在まで来ています。
親露派幹部の多くはロシアの情報機関から送り込まれた新住民で、プーチンの命令によってウクライナ憲法に違反して住民投票を行い、勝手に独立国を名乗っている反逆者たちです。

また、よく親露的な保守の方が言われる事で、地域の某施設において「逃げて来た親露派住民を虐殺した」と言われる事件について、反乱蜂起して施設ビルに立てこもった武装勢力を殺害したのは事実です。
ウクライナは確かに日本のような「平和的な民主主義国家」とは言いづらい面もあります。しかし、クリミア併合に乗じた親露派住民による政府への反抗を利用してロシアが混乱を拡大させ、組織的・軍事的援助の介入をしつつ本格的な軍事衝突(内戦)に導いた事が事件の原因であった事実を失念してはなりません。

少なくもプーチンが主張するような民族差別に起因するジェノサイドなどはなく、常に前線を監視している欧州安全協力機構はウクライナによる「意図的な虐殺」を認めていません。またプーチン自身が喧伝し、我ら保守派の一部も騙されている「ゼレンスキーは親ナチ政権の大統領」という図式も全く当てはまりません。
なんと言ってもゼレンスキー自身がユダヤ人であって、彼の父親の兄弟三人までがナチスに虐殺されているのです。

アゾフ大隊に対して西側が懸念を示していた事があったのは事実です。しかし、ゼレンスキー政権になって「反ユダヤ的傾向を示す証拠がない」と見る向きが一般的で、それはウクライナが「ナチス主義に関連した全ての表現」を法で禁止する努力を見せたからでもあります。
なお、アゾフ大隊の隊旗はナチスの鉤十字を模したものではなく、由来は別に存在します。
アゾフ大隊はたった1500名ほどの人員しかないし、一部保守派が言う事と全く違い、アゾフ大隊やそれに類する傾向の人たちに現代のウクライナが支配されている、などという事実はあり得ず、全くのでたらめです。

プーチンは国際社会で「侵略」と認定される事態を回避するため、「侵攻」をウクライナによる「民族ジェノサイド回避のため」とか、「独立共和国と結ぶ集団的自衛措置」とウソ八百で切り抜けようとするゲスの詭弁家です。
そして、それに加担するような言説をわが国の一部保守が行なっている事実には、実に嘆かわしい思いがします。

(続く)

 

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ウクライナに平和と独立を!


                       

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コメント

山路さん。

大変に深くて丁寧な論説ありがとうございます。私も同様だと思います。
あと、パーティーゲートで死に体だったボリス・ジョンソンと英国が早々にロシア非難をしてゼレンスキーの国会演説をしたのも、自国が長いことIRAとの長年の闘争を経験していることを考えたら納得ですね。

 ツイッターで盗みに入った人間を尻を剥き出しにして鞭打つ動画出してウクライナはこんな国だから支援するなという奴も居ました。
 しかし、国家主権の侵害の方が遥かに問題で、仮に本当でもドンバスのような紛争地帯で警察機能が麻痺していれば、前近代的リンチが出てきてもおかしくはないです。
 核兵器をチラつかせ、化学兵器を使う算段をし、先の大戦できめた最低限のルールさえ守らないプーチンが失脚するまでロシアの国際社会への復帰は許されないです。

だから言ったでしょう。怖い独裁者を通り越してただの侵略者になったプーチンを擁護しているのは保守ではなく右翼だと。
左翼と右翼が反米思想とプーチン信奉という目的は違えどロシアを支持しているのを見ると左と右は表裏一体の存在だと改めて思いました。
トランプに関しても右翼の人たちは褒めちぎりすぎでしたよ。トランプだったら今回の戦争は起こらなかった?
いえいえ、トランプがお得意のディールによって仲介したとして、それでもたらされる平和はロシアの恐怖が支配する平和だったに違いありません。

管理人さん、
お母様のお見舞いで三日ほどお留守にするということで、
このところ急に真冬になったりしています。道行どうかお気をつけてください。

山路さん、
今回のプーチンの蛮行に対する一部保守派の、敵味方を取り違えるという誤った認識には理解できないところがありましたが、今回の山路分析でなるほど納得です。
以前にもコメントで書きコしましたが、プーチンの沖縄サミットでの柔道の飛び入り練習のニュース映像、あれにも騙された面子も多いだろうと思います。

それと、アゾフ連隊のあのマークってどう見ても農機具マークにしか見えません。こじつけにもほどがあります。日本のお寺さんマークにもこじつけでナチナチ言われたし、
何て言いますか、せめてグーグルでぐぐってから陰謀論をめぐらしてくれたらいいのになと、
一部保守さんたちを見て思う、今日このごろです。

中華三昧さん、

中華三昧さんのコメ内容にはずっと同意していました。ただ、
管理人さんや山路さんやコメントの皆さん方のように、なぜ似非保守はプーチン大好きなのか、トランプではもっと悲惨なことになっていたのではとか、つらつらとカキコできない自信があったので、ほかのどなたかがこの点を論じてくれたらなと、ずっと思っていました。
他力本願ですみません。自分で言葉を出すってほんと難しいです。

 ueyonabaruは発言禁止中であり、また多くの皆様と反対の意見の持ち主ですので、ウクライナ問題は論じないつもりですが、日本の国防の点から一言発言させてください。

 今朝松田政策研究所のu-tube動画を拝見したところ、宇山卓栄氏の日本核武装論ともいうべき発言がありました。これは従来私が主張するSLBMの発射できる原子力潜水艦装備論を肯定するものであり、わが意を得たりの感じを持ったわけです。

 ウクライナの問題もやがては核兵器の件と関係し論じられることになるだろうと思いますので、皆さんにおかれても、関心のあるところではあるのだろうと思っております。後ほど、本ブログで取り上げられることも希望しております。

本日の記事に同意いたします。
特にトランプ氏への批判について、論考を明瞭に書き記していただき感謝いたします。

プーチン贔屓とトランプ贔屓がかぶる、所謂右翼左翼の限界の人達。あともうちょいマイルドな是々非々かと思われていた保守orリベラルで今回リアリストぶった喧嘩両成敗を語る人達。
他の方もお書きのように、強い指導者と大きな力への畏怖や憧れがありすぎなんですよ。しかも自分たちは日本という平和な国で自由を謳歌しながら。
我が国も改憲や自国防衛の話をどんどんしなくてはいけないという時に、マジで邪魔でしかない。
松田研究所の動画に連なる賛美のコメントを見るにつけ、正味何人位おるんやろ?と背筋が寒くなります。

ゼレンスキー大統領の日本向け演説は、秀逸で唸りました。
個人的に、3月のこの地震の後ですので、「皆さんは、住み慣れた故郷に戻りたい気持ちをご存じのはずです。」と復興支援を要請したくだりが、演説の数時間後も尚、じーんとしみています。

 ロシア侵攻前、トランプ側の識者から「米軍は黒海沿岸に艦を派遣すべき」という意見が出ていました。
ところがトランプはバイデンを揶揄するばかりで、何も言わなかった。

今日トランプは、「原子力潜水艦をロシア沿岸に送って、上下左右に航海させるべきだ」と述べました。
賛否はあるでしょうが、核を持たない相手に対し核で脅そうとする馬鹿者には、核の匕首を突き付けてからでないと交渉にはなりません。
トランプは良く言ったと思う。

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