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2022年3月24日 (木)

山路敬介氏寄稿 プーチンは「反DSの英雄」などではないその2

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                                 プーチンは「反DSの英雄」などではない
                   妄想狂かつ「力の信望者」プーチンの真実を保守派は見誤るな その2
                                                                                                           山路敬介

承前

■ プーチン外交と内政の誤りが冷戦後のロシアを「失敗国家」にした

 プーチン外交は小国へ圧力をかける事や戦争を仕掛ける以外、まるで能力がありません。
プーチンはチェチェン紛争への貢献で政府内の地位をあげ、大統領になってすぐに足掛け10年にわたる戦争をロシア政府の勝利のうちに終結させました。
戦勝による支持率の上昇に味をしめ、以降はジョージア戦争、シリア内戦介入、IS攻撃、カザフスタン大規模デモ鎮圧、クリミア併合へと続きます。

この中で西側諸国が一応納得出来るのはIS掃討くらいなもので、あとは全て国際社会から轟々たる避難を浴びる類のひどい戦争ばかりです。そのIS掃討でも有志連合には加わっていません。

とりわけプーチンの「戦い方」はKGB流のむごいもので、人権蹂躙や、非戦闘員の人命を奪う事に躊躇せず、汚い言い繕いとプロパガンダによって正当化する虐殺の数々は、まさに「人殺しの独裁者」の面目躍如といった体でした。旧日本軍の戦い方を知る我々には、とても理解できる範疇にありません。

冷戦後、二大国時代を懐古する未練タラタラだったロシアの外交エリートたちは、欧米からの資金援助の少なさに不満をいだき、ゴルバチョフが敷いた民主主義と親欧米路線を転換させ始めました。
西側諸国の側も一向に民主化しないロシアに不信感を持って距離をとる方向になり、そこに現れたのが戦争屋のプーチンです。

良く一部保守派はプーチンを「戦争に負けたことがない」とか、「軍事的には間違いなく「一流の大国」だ」とか言ってもてはやす傾向にありますが、むしろその事がプーチンの残虐性と相まって西側社会に受け入れられない最大の原因となったものです。
プリマコフ外交の「多極化世界の創造」に範をとったプーチンは、それでも外交を諦めたわけではありませんでした。
旧ソ連の小国たちが低迷するロシアに見切りをつけ、NATOやEU加盟に色気を見せるようになると、プーチンは成長株のASEANに進出すべく積極外交を行いました。旧同盟国のベトナムとの問題を処理し、インドをも足掛かりに地域で立派な地位が築けるものと考えたのです。

ところが、プーチンはここでも失敗します。
アジア諸国では中国マネーが跋扈し、戦後からの援助や人的・技術的交流によって高い日本の位置もあり、つけ入るスキがありません。また、たとえ矛盾を抱えていても、多くのアジア諸国にとって米国との関係は非常に重要であり、常に良好な関係を維持しようとします。

中国の台頭に備えるASEAN諸国は継続的に防衛力を強化しつつあり、コストパフォーマンスに優れたロシア製の武器は良く売れました。
しかし、近隣の敵対する国に対しても同じようにバンバン売る姿勢が仇となります。
武器貿易は互いの利益が一致する分野ではありますが、同時にロシアへの不信の源となっています。そして現在はただの「死の武器商人」でしかないのが、アジアでのロシアの立ち位置です。

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ポストセブン

そうした外交関係の閉塞感があって、良いことは原油価額の値上がりだけでした。
それでも一時は「日本との経済関係や協力によってこそ、中国の台頭に備えられ、国際社会との摩擦も回避できる突破口となる」との正しい認識が広まりました。トランプが大統領だったのも、最高のチャンスでした。日本との和解はロシアにとって、北方領土の価値などよりもはるかに有用なものです。

けれどプーチンには最初から(二島であれ)返還する意思はなく、結果的に安倍元総理は騙されました。騙されたとはいえ、ロシアの状況を正しく見て、プーチンにロシアの為にする合理的な判断力さえあれば、少なくも二島返還が実現出来ると踏んだ安倍元総理の判断は理にかなったものでした。
ところがプーチンがやらずぶったくりを決め込んだために、すべておじゃんになりました。この件で最大の国益を得るチャンスを逸したのはロシアであり、日本ではありません。
ここでもプーチンは致命的と言えるほどの大失敗をし、最大にして最後のチャンスをフイにしてしまいます。国際社会への最後の窓口を自ら閉ざしてしまったのです。

つまるところ、どっちに出てもプーチンのロシアは失敗続きで良い目にあった試しがなく、仲間は北朝鮮やシリア、ベラルーシなど時代遅れの強権的な独裁国家だけに限定されてしまっているのが今のロシアの現実です。
韓国のGDPは1823(10億ドル)、ロシアは1500(10億ドル)です。それでいて、人口は韓国の三倍の1億5千万人あります。
ロシアの「国の豊かさ」がどういう状況であるか、数字で一目瞭然です。
広大な国土と豊富な資源、素晴らしい文化と豊富な人材がありながら、プーチンの政治は国家の富や国民生活向上に向かっていかず、最悪の状態を続けている極度の政治的音痴者だと知れるでしょう。

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■ 「プーチンはDSと闘っている」だって? 御冗談でしょう!

 DS(デープステート)とは、語る人の定義にもよりますが、主に米国において選挙で選ばれた政府とは別個のウラの権力体を指し示す言葉として、その手の保守派の間で好んで使われています。しかし、国の政策を左右する権力を所持しているにも関わらず、権力体に不可欠の総中央も、その中心となる人物も、誰も見た事がありません。なので、私にはDSという言葉は使えません。

しかしながら、「非公式な権力者集団」は当然あると考えていますし、それはいわゆる「グローバルエリート」たちで主に構成されているか、その最も近い存在だろうと思っています。昨今の米国にはグローバル全体主義とも言える現象も起きています。

ただ、こうした結果としての不均衡や不平等ないし不公平、それらががどこから来るか?という原因についてですが、これはもう「明示」と「公開」さえすれば政治資金は青天井で受け取れる、というアメリカの政治資金制度のせいです。それと公認のロビー制度も一因でしょう。
政治家は資金を出してくれる大企業や有力団体の使いっ走りになる事が必然で、それが今は資金をふんだんに出せるのが製造業ではなく、たまたま金融屋やテック企業、つまりグローバルエリート達であるというだけの話でしょう。
日本ならまぁ買収に近い有り様ですが。

話は逸れましたが、プーチンはそういうものと闘っているのでしょうか。
ぜんぜん違います。まだエリツィンが大統領だった頃、ロシアが民主化の波に喘いでいた時期からですが、プーチンは米国資本に買いたたかれようとしていた石油会社などを次々に国有化して防いだ事がありました。それで、ずいぶん米国や欧州から叩かれもしました。その事をもってして「グローバリズムに対抗した」とか、「愛国的だった」とか言う事は単純な美化か誤謬に過ぎません。

当時は共産主義ですから、民主化にともなってロシア人に払い下げられた国有企業がたくさんあり、振興のオリガルヒがたくさん誕生しています。共産主義時代からの古いオリガルヒもあり、そういう中から特に資金をふんだんに提供してくれるパトロン役の振興のオリガルヒのいくつかがプーチンのお気に入りで、贈賄による独裁政権特有の権益重視体制から生じた東側の典型的なワイロ大統領です。

それで、そのオルガリヒがやっている事は当然の事、欧米のグローバル企業がやっている事そのままです。いわばロシアのグローバルエリートたちで、そこから贈賄資金をふんだんに受け取っているプーチン自身が、まさかのDSやグローバル勢力等闘うべき敵、って図式になります。

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「プーチン宮殿」、ロシア野党指導者が告発も本人は否定 - BBCニュース

実際プーチンは22兆円の資産を保有していて、イーロン・マスクをしのぐ影の個人資産所持世界一である事が言われています。この事は大分前からパナマ文書やパンドラ文書、CNN、フォーチュン、タイム、数々西側メディアで報道されていましたが、ナワリヌイ氏のグループ「汚職と戦いの基金」が国内で20あるとされるプーチン宮殿の一部を内部写真付きで公開しています。
「南方プロジェクト」というロシア国内の大開発事業も「プーチンの為に行なった」と経緯を曝露、関連実業家が当時のメドベージェフ大統領に書簡を送り、その後エストニアに亡命し、「皇帝に従わなければ、奴隷になるしかない」と西側メディアに答えています。政府報道官は「知人の富豪の別荘」と弁解しましたが、そんなわけがありません。
柔道場までついて、上空は飛行禁止区域に設定され、警備代は国庫から支払われているのですから。

いずれにしろ「プーチンVSグローバル勢力」なんて馬鹿げた言説も聞き飽きましたが、根拠のない妄想に過ぎません。まさかプーチンが申告した「サンクトペテルブルクの74平米のマンション、ソ連時代の乗用車2台とオフロード車一台、年収は1615万円」などという詐話申告を信じる人はいないでしょう。
事実はグローバル企業や特権階級のエリートたちと、汚職体質ゆえに親和性がある大統領だと言う事です。

■ 国際司法裁判所の判断と、その大きな意義と効果

 国際司法裁判所は16日ウクライナの訴えのとおり、同国への侵攻を停止するようロしアに命じました。
即時停止の仮保全命令付きの判決です。
平たく言えば、一部保守派がプーチンに寄せる根拠となる主張がことごとく崩れ、プーチンや露軍首脳らを戦争犯罪人とする道を開くものです。もちろん、これでロシアがすぐに戦闘を停止する事は考えづらいです。

しかし、ロシアが主張する侵攻の動機の正当性が全て否定された事は重要で、侵攻を停止しなければロシアの孤立化が増々顕著となります。中国はこの決定に面と向かって背くものかどうか、そこも今後の注目です。
西側は判決で制裁に向けて正当性を得、いっそうの経済制裁の範囲拡大や金融制裁に向けて実効性を高めた事になります。中国やインドなどが今後制裁破りに加担すると、それらの国々への経済制裁を行なえる法的根拠を得た点も重要です。
今後、ロシアのような犯罪国家と取引する民間会社はますます減って、さらにロシア経済は冷え込む事になるでしょう。

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ロシア軍が子どもや女性、老人など400人が避難する美術学校を爆撃か マリウポリ市(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

プーチンは戦況を回復させるために人質をとり、故意に病院や学校、アパートや避難所となっている劇場や地下道を標的に爆撃をつづけ、多数の民間人死傷者を出し続けています。
それは計算があっての事で、ウクライナにいるたとえば橋下徹やテリー伊藤が呼びかけの対象とするところの、自らの人命以外、守るべき価値を知らない個人主義的自由主義者たちにまず敗戦世論をうながす手段でもあり、そういう意見に愛国者であるゼレンスキーが動揺する効果を狙ったものです。

そして、原子力発電所まで標的にするケースは前例のない暴挙です。
また「(戦争犯罪人として)プーチンやその配下の責任を問うべき」とする米国や英国、欧州各国の要請が高まり、国際刑事裁判所は「侵攻」にともなう捜査を開始しています。
今回の司法裁判所の判断が刑事判断に大きな影響を与える事も必至の状況です。

ともあれ、刑事司法は判決までに被告側の出廷が条件で「必ず責任を負わせる事が出来る」とも言い難く、ロシアが敗戦を認めるまでは実効性に乏しいと考えられるのも事実です。
しかし、ナチスの犯罪人はいかにして被告席に引っ張りだされたか? 
それはドイツ国民やドイツ国家自身が行なった事です。プーチン後の政権がロシア国民の為にマシな民主主義国となろうとし、再び国際社会に受け入れられる状態(つまり、経済制裁の解除)になるには、ロシア国民自身の手でプーチンを被告席に差し出さなくてはならない事になるのだと思います。

                                                                                                                           次回完結

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ウクライナに平和と独立を!

 

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コメント

 振興 →新興 です。 訂正すいません。

ロシア兵のうち、50%が防寒着の不備で凍傷に苦しんでいるとか。
反グローバリズム旗手プーチンはイタリア製の160万円のダウン着て、38万円のセーターでぬくぬくですが。

あと、太田何とか言う芸人さんが、「プーチンにはプーチンの正義がある」とか言ってた。
何が「正義」かって事も分からない幼稚さ。あるいは虚偽の侵攻理由を真に受けてしまっている馬鹿さ加減にため息も出ません。

山路 さま

とても分かり易いです
ありがとうございます
次回も楽しみにしています

正義とは···

国際紛争や国境線に市民への攻撃等に関しては長い戦争の歴史の末に国際条約や国連といった形で現在は定義されていますが、
まあ極めて曖昧な物であるのが残念ながら現実かと。
お互いに自分なりの正義に基づいて行動したらぶつかり合って殴り合い戦争が起きます。

裁判員裁判が始まった頃に被告人に罵声を浴びせまくった人とかいましたし、かつての左翼の凄惨な内ゲバなんかは極端で分かりやすい例でしょう。
だから太田は正しいなんて言いませんよ!
現代に置いて「戦闘ではなく特別作戦だ(プ)」とか「ロシアはウクライナを攻撃していない(ラ)」といった詭弁を弄しながら侵略と虐殺を続ける連中にはどう考えても与しえません!
プーチンの無法っぷりを少しでも容認してしまえば、完全に戦後レジームがぶっ壊れてしまいます。
ナチス時代に照らし合わせると、クリミヤ併合あたりがかつてのドイツのチェコ併合みたいな所でしょうか。
次にどうなるか?現在のウクライナは当時のポーランドでしょう。当時は核兵器が無かったけど。
日本の核兵器保有論を主張する方々は、全世界の「国」が核兵器保有の権利があって然るべきと考えてらっしゃるのかな?
中東や中南米やアフリカの仮想の某国がICBMを装備して日本に突然降伏勧告してきたらどうするのやら。「やり返すぞ!」ですか?
核兵器廃絶なんて無理だから日本も配備ですか、しかも何故か原潜ですか。なんで原子力潜水艦が必要なのか全く理解出来ませんね。核兵器持ってるぞ!と世界に睨みをきかせるだけなら、核弾頭装備するにしても地下サイロなり航空機発射なりで別に良かろうに。。

追記です。
先日「アゾフ大隊」について勝手連だと説明しましたけど、規模は確かに大隊レベルですけど、昔のヨーロッパでは「赤い旅団」なんてテロ組織が暴れてましたし、我が国に至っては「連合赤軍」なんていう旅団や軍を名乗った過激派がいましたけど、それこそ規模や戦力は関係ありません。勝手に名乗ってるだけです。

 千歩譲って、プーチンに正義があるとしても、世界秩序を壊すやり方を許せば世界は帝国主義の時代にたちまち戻り、ならず者国家が得をするということが分からない人間が多い。
 本来核保有の常任理事国が、核兵器使うぞと発言すること自体が許しがたい問題なのだが、特に報道バラエティ系ではこの問題がいかに深刻なのかを語らないようだ。

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