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2022年3月21日 (月)

ゼレンスキーの見事な議会演説

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ゼレンスキー大統領が、23日午後6時に日本の国会で演説することに決まりました。
全局テレビ中継することでしょう。
日本国民は、被侵略当事国の指導者が直に国会で語るのを聞く、という得難い経験をすることになります。
しかも、かつてロシアに勝利した唯一の国である日本人の前で、ウクライナの指導者がなにを言うのか言わないのか、いまから楽しみです。

いままでゼレンスキーは、G7各国で国会演説をしてきました。
実に見事なパブリシティで、各国の支援は演説後いっそう跳ね上がったそうです。
巨人ゴリアテ・ロシアに立ち向かうウクライナの頭脳を使った戦略です。

ゼレンスキー演説の特徴は、相手国の心に響く歴史事例を演説中に用い、そして畳みかけるようにしてウクライナが今なにを望んでいるのかをはっきり言うことです。
これは初めの英国から最近のドイツまでの共通した傾向ですので、わが国もその例外ではないはずです。
見てみることにしましょう。

初回は英国・3月8日。英下院。ゼレンスキーは、バトル・オブ・ブリテン時のチャーチルの言葉を引用しました。

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「ゼレンスキー大統領は「この戦争はわれわれが始めたわけでも、望んだわけでもない。しかし母国であるウクライナを失わないために戦わなくてはならない」と訴えました。
そして侵攻開始からの13日間でロシア軍からのロケット弾などによる攻撃で50人以上の子どもが命を失い、ウクライナ国民は水を手に入れられない状況も続いているなどと説明しました。
そのうえで「われわれは生きるか死ぬかという問題に直面している。答えは決まっている。生きることだ」と強調しました。
第2次世界大戦中の1940年に当時のチャーチル首相が議会で行った演説になぞらえて「われわれは決して降伏せず、決して敗北しない。どんな犠牲を払おうとも海で戦い、空で戦い、国のために戦い続ける」と述べたうえで、ロシアに対する制裁のさらなる強化をイギリスや国際社会に求めました」
(NHK3月9日)
ゼレンスキー大統領「決して降伏しない」ロシア制裁強化求める | ウクライナ情勢 | NHKニュース

見事な演説です。ただ頭を下げて支援を乞うのでは、ああまたかという顔をされるでしょうが、ゼレンスキーは相手国の聞く者をして自国の叙事詩を想起させ、奮い起こさせ、そして共に戦おうと呼びかけています。
この彼の目線の高さが、演説の格調の高さとなって現れています。
このようにスピーチされれば、懐手しているわけにはいかないでしょう。
首相以下、議員全員がスタンディグ・オベーションで迎えたたそうです。

2回目はカナダ・3月15日。

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CNN

「ゼレンスキー大統領は演説冒頭、ロシアが全面侵攻してきた20日間の心境について「午前4時に爆発音が聞こえ、子供たちがそれを聞くことを想像してほしい。ロシアによって破壊されたことを子供たちに説明する言葉を探していると想像してほしい」と語りかけ、「毎日、死者に関する報告を聞くことを想像してほしい。死者数は増え続けている。今朝の時点で97人の子供が殺された」と述べた。
また、ゼレンスキー大統領は、カナダはこれまでも、そしてこれからも信頼できるパートナーとし、「カナダはわれわれが切実に必要としている武器やその他の支援を与えてくれている。カナダはロシアに実質的な制裁を科している。しかし、残念ながら戦争は続いている。ロシア軍はわれわれの領土から撤退していない」と述べ、対ロシア制裁のさらなる強化を訴えた。
カナダのジャスティン・トルドー首相は「あなたは民主主義のチャンピオンだと思っている」「あなたの勇気とウクライナ国民の勇気はわれわれを鼓舞する。あなたはウクライナ人が自らの未来を選択する権利を守っており、全ての民主主義国家の柱を形成する価値を守っている」と賛辞を送った
(CBCニュース3月15日)
ゼレンスキー・ウクライナ大統領がカナダ議会で演説、飛行禁止や対ロ制裁強化を訴え(カナダ、ウクライナ、ロシア) | ビジネス短信 - ジェトロ (jetro.go.jp)

いい意味でうまい。
カナダは今まで外国に侵略されたことがない国ですが、「子どもの生命」という絶対的価値の重要さを突き付けました。
いまもマウリポリでは200名以上の子どもが、避難所であった劇場の瓦礫の下に埋まってます。
申し開きのしようがない戦時国際法違反です。
国際司法裁判所は、これをプーチン訴追の大きな証拠として法廷に提出することでしょう。

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ロシア軍 500人超避難の劇場空爆 米 8億ドル追加軍事支援 

このようなことがどうして起きたのか、罪科がない人々がなぜかくも酷たらしく殺されねばならないのか、それをゼレンスキーは「ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定」と結びつけています。
これは、一貫してウクライナがNATOに上空飛行禁止空域の設定として要求してきたが、「ロシア軍とNATO軍が衝突すれば世界大戦に発展する危険性がある」(ストルテンベルグNATO事務総長)との理由で拒否されてきたことに対しての批判を含んでいます。
自由主義陣営は、ただ拒否するだけでは済まなくなり、より有効な防空システムを緊急に供与する準備を始めねばなりませんでした。

そして3回目の3月16日・米国。ある意味でここが本番です。

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「ゼレンスキー氏は演説で、アメリカの議員らに1941年の真珠湾攻撃や2001年9月11日の攻撃を思い出すよう促し、「同じことを私たちの国は毎日、毎晩、もう3週間経験している」と述べた。
また、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説を引用。「私には夢がある。この言葉は皆さん一人ひとりが知っているものですが、今日私は、私には必要なものがあると申し上げます。私は空を守る必要があるのです」と述べ、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ウクライナ上空を飛行禁止区域にするよう再度要求した。
演説の途中では、ウクライナの都市へのミサイル攻撃や、それによる死者や負傷者を映した生々しい映像を公開した。
最後にはジョー・バイデン大統領に英語で語り掛け、「あなたは一国のリーダー、偉大な国のリーダーだ。世界のリーダーにもなってもらいたい。世界のリーダーであることは、平和のリーダであることだ」と締めくくった」
(BBC3月17日)
ゼレンスキー大統領が米議会で演説、「9/11を思い出して」と ウクライナ侵攻 | 

米国に対しても英国と同様に自国が侵略された歴史から入りました。
引き合いに出されたのは、真珠湾攻撃と9.11同時テロです。
真珠湾攻撃が出たことに、わが国の保守派は敏感に反応して、一部では罵声じみた声さえ上がりました。
真珠湾攻撃は純粋な軍事作戦であって、9.11のアルカーイダの民間人テロと一緒にするのはおかしいという意見が出ました。

それはそれとして正しくはあるのですが、勘違いしてはいけない、語っているのは日本人ではなく、あくまでも東欧の人であり、聴衆は米国人なのです。
東欧人のゼレンスキーは、日米戦争に至る経過を熟知しているはずがありませんから「通説」に従ったまでです。
同じことを日本人が言ったのなら、異を唱えることもできるでしょうが、語っているのは日本からはるかに離れた東欧の国の元首なのです。
東欧の人間が、日本人と同じ歴史認識を持てるはずがないじゃありませんか。

逆に考えればわかります。我々がウクライナをどれだけ知っているのでしょうか。
ロシアとウクライナは同一の民族だとプーチンは盛んに言っていますが、それがおかしいと言えるだけの歴史的知識を日本人がもっていますか。
ウクライナがネオナチ国家だとプーチンは叫んでいますが、ウクライナのロシアによる受難の歴史を知っていて言っているのでしょうか。
すぐに降伏しろ、中国に仲介してもらうために日本は妥協しろ、などとという小賢しい者も出ましたが、いったい何回ウクライナが世界地図から消えたのか、異民族支配されたらどのような結果を招くか知っていて言っているのでしょうか。
わが国が持つ価値観に引きつけて、他国を見てはダメです。
歴史観は複数あって当然なのです。

ここでゼレンスキーは、「私たちには夢がある」というルーサーキング師の美しい言葉を枕にして、「私には必要がある」と、米国に切り込みました。
ここでもウクライナは、上空の飛行禁止区域の設置を要求し、そしてバイデンに対しては、「世界のリーダーであってほしい」と発破をかけています。
これは自由主義陣営の盟主に対して、このウクライナ防衛の戦いは即ち自由社会を守る戦いであることを、改めて認識させた言葉です。
バイデン政権はその直後、ウクライナへの8億ドル規模の追加武器支援を発表しました。
この中には、対空ミサイルも多く含まれていました。

ちなみにわが国の保守派の一部にはプーチン礼賛論者が多く存在しており、この人たちは戦争前には絶対にウクライナ侵攻はないと言い張り、侵略後はウクライナはネオナチだとロシアのプロパガンダを代弁してみせ、ロシアの孤独に寄り添えなかった国際社会の罪だ、はては米露代理戦争だという意見まで飛び出しました。
代理戦争どころか、ウクライナというしたたかな小国がロシアという大国や米国の鼻面を引き回しているのです。
ちょうどかつてのベトナムのように、です。
それがはっきり見えたのが、このゼレンスキーの各国議会演説だったのではないでしょうか。

別の意味で白眉なのは、3月17日のドイツ議会演説です。

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ここでは従来の相手国の共感を呼ぶ演説方法を替えて、極めて手厳しい批判となっています。

「ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレなどによると、ゼレンスキー氏は「戦争のさなか、ロシアとまだビジネスを続けようという動きがある。あなた方は壁の向こうにおり、壁に阻まれて事態が見えていない」と主張。ロシアの勢力圏と欧州という自由社会の間には、見えない壁があるとの考えを示した。ドイツが露産天然ガスを輸入するパイプラインについて触れ、「ロシアは戦争の資金調達に、あなた方を利用している」とも述べた。
そのうえで、ゼレンスキー氏は「壁」を東西冷戦中のベルリンの壁に重ね、ショルツ独首相に「壁を倒してほしい。ドイツが指導役となれば、後の世代も誇りに思うはず」と呼びかけた。演説後、連邦議員は総立ちで拍手した。ドイツはEU最大の経済国で、ロシア産エネルギーへの依存度が高く、EU制裁のカギを握る」(産経3月17日)
ゼレンスキー氏 独でも演説 「壁倒して」と訴え - 産経ニュース (sankei.com)

ご承知のようにプーチンがウクライナ侵攻に踏み切った理由のひとつが、NATOは分裂しており、ドイツは絶対にノルドストリームを閉鎖しないという目算があったからです。
ゼレンスキーは、ドイツの経済支援に謝意を示す一方で、歯に衣を着せず「ドイツは過去、ロシアと密接な経済関係を深めてきた。武器供給でも最後まで渋り、ロシアとドイツ間の天然ガス輸送パイプラインのプロジェクト『ノルド・ストリーム2』に対しても『経済プロジェクトに過ぎない』と弁明し、土壇場まで閉鎖を拒否してきた」とはっきりと指摘しました。
この自国のエネルギー源を3割までロシアに強依存し、大幅な国防費カットを続けてきたメルケルは、さぞ耳が痛かったことでしょう。
そしてゼレンスキーは「そして今、ベルリンの壁ではなく、欧州に自由と不自由を隔てる壁ができている」と手を差し伸べて共に「壁を壊してほしい」と訴えたのです。
そしてドイツは、この演説をきっかけとしたのか、大きく方針転換しました。
今までとうって変わって、ウクライナに多くの軍事支援を送る一方、自らの国防費も大きく増額しました。
遅まきながら、やっとドイツも目が醒めたようです。

そしてある意味まだ目が醒めていないわが国の番となったわけですが、願わくばわが国がロシアの侵略に唯一勝利した国であることを思い出していただければ嬉しいのですが。

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ウクライナに平和と独立を!

 

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コメント

欧米の政治家の、言葉の力、すごいですね。こんな演説を聞かされたら
感動するしかありません。

我が国だと安倍さん以外には思いつきません。残念!

ゆんさん、実績的に仰る通りです。

安倍さんはプーチンと32回も会談してるのに、このザマはなんだ!と左右からキレられてますけど···事態は常に動いていることをアップデート出来ない連中の戯れ言です。

岸田総理は今回インドとカンボジアに外遊してきましたが、共同声明では相手国を慮ってロシア名指しはしていませんけれど、安倍政権下で5年も外相をやってたからなのか···なかなか絶妙な国に乗り込んだセンスを私は評価しています。

ゼレンスキーには相当にやり手の演出家が付いているというのは納得ですけど、だから何なんだ?と。
鳥越俊太郎なんてもう忘れてたような人が「紛争当事国の一方の代表」だから国会演説には絶対反対だ!とか。
あの人、桶川ストーカー殺人事件の時には鋭い調査報道を連発してカッコよかったのになあ。紛争当事国?いやいや、ウクライナは一方的に侵略を受けているのだが、どんな脳味噌してるんだか。
それって暴行やレイプの被害者は「当事者」だから公に発言するな!と言ってるのと同じですよね。狭量に過ぎます。

あと、米議会演説で真珠湾攻撃が出たからとゼレンスキー批判する一部の保守派も頭悪すぎですね。
欧米ではスタンダードなルーズベルトによる「日本の卑怯な騙し討ち」が未だに普通なんですから。場所と状況を踏まえて最大限に効果を発揮する演説をするに決まってますやん。。それだけで爆発する国粋主義者には目も当てられん。

ゼレンスキーはスーツすら持ってないのか?に至っては···誰が何を着ようと良かろうに。。災害時の閣僚や知事さんみたいに秘書が用意した(県知事のロッカーとか各種揃ってて凄いよ!)格好なら良いのかね?
人を見掛けで判断するなと教えられなかったのでしょうか?

各国の演説を並べて解説、大変だったと思いつつ拝読しました。いつもありがとうございます。
https://www.sankei.com/article/20220227-3IYHYNHUX5P5POCK2F6IIDOCBA/?outputType=amp
ドイツは演説に招く前に既に大きく方針転換していて、ゼレンスキー演説を国内反対派を抑え込む駄目押しに使えたのだと思っています。
そういう素晴らしさがある演説力であり、支援国を行脚する大きな価値があります。
ドイツには外相が侵攻前に「48時間で消滅する国に支援はできない」と宇を突き放したというリークともフェイクともつかない情報が出ています。
多分、こういう紆余曲折を越えても最終的に何らかのまとまりを保って停戦→露の衰退は持ち込んでいくタフさを欧米は持っていて、ウクライナや東欧も覚悟をしていて、日本側は理解した上で完璧を求めずに連携していくのが良いと思います。

岸田首相のインドやカンボジア行、演説を挟んでまたベルギーへ飛ぶ姿は頼もしく、体力勝負のできるリーダーとして評価しています。
日本もきちんとゼレンスキー演説を迎えて国論整理と人道支援のブーストをかけられますように。
蛇足ですが、招く前に「こんな事言う気なら来んな云々」とニュースで書き散らすのって不粋というか、プロレス会場前で「全部台本ないと選手死んじゃうじゃん、八百長だよね」とかわざわざ言うのと同じで、あたり一面からブーイング食らって当然ですよね…。

日本相手には、ロシアへの勝利以外なら
・東京大空襲を忘れるな
・原爆を忘れるな
・ABCD包囲網を忘れるな
・北方領土、竹島を忘れるな
あたりでしょうか?

それとも案外、国民性に合わせて
・他のG7の皆さんもそうしてますよ
と囁いたりして…

 ロシアもプロパガンダをやりますが、アメリカのプロパガンダの方が大掛かりでかつ洗練されています。(例:湾岸戦争におけるナイラ証言)
 私は露軍は精密誘導兵器の在庫が少ないから無差別な砲爆撃をやっている、と承知していますが、民間人しか居ないであろう劇場をわざわざ精密に爆撃した理由は何でしょうか。私が露空軍の司令官なら、もっと軍事的に重要な目標に精密誘導兵器を配当しますが。
 すみません、ちょっと疑問に思っただけです。

東京空襲や原爆投下やABCD包囲網は逆にロシアの立場を擁護するような内容になります。
ロシアの南下政策により勃発した日露戦争の話はいいとして、さすがにアメリカを刺激するような話はしないと思います。

ロシアが、次々に新兵器を投入していますね。武器に余裕がないのか、力の誇示なのか。超音速ミサイル、防空ミサイルを誤誘導させるミサイル。それらを使用してもウクライナが降伏しないときは毒ガス、核ですかね。そうなればアメリカ、NATOも介入します。
ゼレンスキー大統領は「プーチン大統領との直接交渉に失敗すれば次は第3次世界大戦」と発言しています。ロシアの毒ガス、核兵器使用を予測しているのでしょう。
ロシア兵士の遺体は、秘密裏にベラルーシに搬送しているようです。そうしないことには、力で抑え込んでいるロシア国内のデモを抑えきれません。ウクライナの被害も甚大ですが、ロシアも情けない姿をさらけ出しています。

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