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2022年3月29日 (火)

「金融核爆弾」のすさまじい破壊力とは

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バイデンのワルシャワ演説が炸裂しました。

「【ワルシャワ=横堀裕也】米国のバイデン大統領は26日、ポーランドの首都ワルシャワで演説し、ウクライナ侵攻を命じたロシアのプーチン大統領について、「この男が権力の座にとどまってはならない」と非難した。「自由を愛する国々はこの先何十年と結束を保たなければならない」と述べ、民主主義陣営に向けて、ロシアへの対抗とウクライナ支援を呼びかけた。
バイデン氏は演説で、「ロシアは今、民主主義を握りつぶそうとしている」と危機感をあらわにした。ポーランドなど中東欧の民主化運動や、旧ソ連崩壊の歴史にも触れて、「民主主義を巡る闘いは、冷戦終結とともに終わらなかった。この30年間で、権威主義陣営は世界中で復活を遂げている」と警告した。覇権主義的な主張を強める中国も念頭に置いた発言だ」
(読売3月27日)
「この男が権力の座にとどまってはならない」バイデン氏、演説でプーチン氏非難(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース 

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「この男が権力の座にとどまってはならない」ですか、よくぞ言った、バイデン!パチパチ。
いままで彼を褒めたことは一回もなかった気がしますが、今回はいい。
ロシアのような力信仰の国には、外交的オブラートにくるんでいては真のメッセージは伝わらないからです。
アドリブだったそうですが、草稿にあったら周囲が言わしてくれなかったでしょうな。
慌てたホワイトハウスが修正をかけているのが、微笑ましい。

「波紋を広げた演説の直後、米ホワイトハウス当局者は声明を発表し、「バイデン氏の論点は、『プーチン氏は彼の隣国や地域で権力を行使することは許されていない』という点だった。バイデン氏は、プーチン氏の権力や体制転換について話していない」と軌道修正を図った」
(朝日3月27日)
演説草稿になかった「権力の座に」発言 直後に波紋、軌道修正の実情(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

いいえいえ、隠さなくてもけっこう。米国はじつはロシアの体制を転覆することを充分意図して実施しているのです。

え、中国の人民元決済システムCIPSがあるだろうって。
巻き添えを恐れた中国は利用を拒否してますって。そもそもCIPSの8割はSWIFT加盟銀行で動いているのですから、これらの加盟銀行がCIPSを使わせるはずがありません。
プーチンは、ドルがダメならルーブル建てだなんて言っていましたが、G7はこれを拒否しました。

「【ベルリン時事】先進7カ国(G7)のエネルギー相は28日、オンラインで緊急会合を開き、ロシアが要求している同国通貨ルーブル建てでの天然ガス代金の支払いを拒否することで一致した。G7議長国ドイツが明らかにした。
ロシアのプーチン大統領は、日本や欧米などの「非友好国」に対し、天然ガス代金の支払いをルーブル建てに限定する方針を示していた。
 会合後に記者会見したドイツのハーベック経済・気候保護相は、プーチン氏の要求は「一方的で、明確な契約違反だ」と強調。ロシアから天然ガスを輸入する企業に、ルーブルでの支払い指示に応じないよう呼び掛けた」
(時事3月28日)
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12145-1547529/

カード決済も、国際カードと連動するカードは全部ダメ。
さらに英国は金準備の凍結も求めており、各国預かりの金準備も使えなくなる予定です。
動向が注目されていたスイスも、中立政策を捨てて対ロシア制裁を強化しており、オリガルヒの隠し資産は暴かれて凍結されるはずです。 

さて、ロシア制裁のメニューをざっと列挙してみましょう。たぶんまだあるはずですが、とりあえずということで。

●ロシアに対する制裁
① 国際的な決済ネットワークSWIFTからロシアの特定の銀行を除外
② ロシア中央銀行の資産凍結
③ ロシアへの輸出規制
④ ロシアからの輸入規制
⑤ 最恵国待遇の取り消し・撤回
⑥ プーチン政権と密接な関係にある新興財閥(オリガルヒ)の資産凍結
⑦ ロシアへの投資と合弁企業からの撤退
⑧ ロイズの国際保険・再保険の拒否
⑨ ロシア行き鉄道・航空路の閉鎖
⑩ 国際カードシステムからの排除
⑪ 各種国際会議・国際競技大会・競技連盟からの排除
⑫ 金準備の凍結
⑬ 国連常任理事国解任
⑭ タックスベイブンの ロシアの隠れ資産口座凍結
⑮ スイス銀行の口座凍結
⑯ ロシア国会議員・政府関係者などの海外資産凍結

このうちもっとも強力なパンチは①のSWIFTからの排除で、ロシアは今や事実上ドル決済不能に追い込まれているのはご承知のとおりです。
これは事実上、世界市場からのロシアの排除を意味しますから、バイデンが言うとおりルーブルは紙くずになったと言ったのはハッタリでも脅しでもなく真実です。

「ウクライナ侵攻を巡り、ロシア軍がウクライナ側の果敢な抗戦に遭い、北大西洋条約機構(NATO)の結束を招いたとして、「この戦争はロシアの戦略的失敗だ」と指摘した。米欧などの経済制裁によって、「(ロシア通貨の)ルーブルはほぼ紙くずになった。制裁は軍事力に匹敵する」と述べ、各国の制裁の効果を強調した」
(読売前掲)

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NHK

昨日の3月28日から、ロシア制裁が一気にパワーアップしています。
最大手ズベルバンクとガスプロムバンクの2つを除くすべてのロシア銀行は、国際的な決済ネットワークSWIFTから排除されました。
これで自由主義諸国の金融機関からロシア向け送金ができなくなり、国際送金決済ができない以上、貿易は封鎖されたことになります。

意図的に作ってあるSWIFTの抜け穴がひとつあって、それはロシア最大手の銀行と ガスプロムバンクという名でわかるように国有エネルギー会社ガスプロム系列を残してあることです。
ここを残した理由はわかりますよね、ドイツなどEU諸国への温情です。
ここまで決済不能にしてしまうと、昨日見たように原油・LNGの多くをロシアに依存してきたドイツなどのヨーロッパ諸国はエネルギー輸入がゼロとなって干上がってしまうからです。
ただしこの抜け穴も、今後、仮にロシアが核や化学兵器などの大量破壊兵器を使用するようなことが起きれば、容赦なく封鎖することになるはずです。
というわけで、SWIFT排除はあえて腹八分にしてあり、これはヨーロッパの救済と今後の制裁に余地を残しておくためです。

さらに米国は、②のロシア中央銀行の資産凍結という「金融の核爆弾」と呼ばれる手段を行使しました。
これによって、ロシア中央銀行は現在進行中のルーブル売りを食い止めるための為替介入の武器を失いました。
中央銀行が通貨安を食い止めるためにはドルやユーロを売ってルーブルを買しか方法はないはずですが、この武器である外貨を凍結されてしまえば手も足もでません。
そこで中央銀行の政策金利を20%(日本はゼロ金利ですぞ)というトンデモ高利に引き上げていますが、焼け石に水です。

次に③④の輸出入規制です。

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NHK

●輸出規制に含まれる製品、
① トラックやトラクターに使われる高出力のディーゼルエンジン
② 産業用機械の制御に関わる半導体
③ それの半導体製造装置
④ 通信装置やセンサーなど
⑤ 高級ブランド品

特にロシアにとって手痛い打撃は、それでなくてもコロナで品薄の半導体が手に入らなくなることで、米国は中国からのロシアへの半導体輸出にも2次的制裁(セカンダリー・サンクション)をかけようとしていますから、もはやお手上げです。
そのうえにその工作機械(マザーマシーン)にも制裁がかけられていますから、これでロシアの数すくない製造業である兵器産業・航空機産業は遠からずニッチもサッチもいかなくなるはずです。
といっても、ウクライナであれだけコテンパンにやられては買い手が激減するでしょうが。
いまですらウクライナ侵攻軍は部品払底で整備不良の山なのに、今後どうする気なんでしょうかね。
このことだけでも、ロシアに長期戦などムリムリ。

ちなみに余波で、この半導体・製造機械の輸出規制は、ロシアが北朝鮮に流していたミサイルや核兵器部品がいかなくなる、という副作用も生み出しました。
これで正恩は自由に弾道ミサイルを作ることが、イモヅル的に困難になったことになります。ざまぁ、です。

⑥プーチンの取り巻きのオリガルヒが大好きな高級車や高級衣料贅沢な所品にも輸出規制がかけられていますから、プーチンの愛好する160万もするダウンなどこれからは買えなくなるはずです。

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まぁ、プーチンはイーロン・マスクを上回る世界一の大富豪だそうですから、こんな高級ブランド品なんぞ腐るほど持っているでしょうが。
多くのロシア兵が前線で凍傷に罹って指を切除しているというのに、いったいなに考えてるんだか、この男。
もっとも筑波大の中村逸郎氏は、あの大集会は合成映像で、本人はウラル山脈南の秘密都市に逃げていると言っていますが。

④の輸入規制も同じく、ロシアを世界市場から切り放して、侵略の財源である外貨獲得を防ぐのが目的です。

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NHK

前述したとおり、ヨーロッパには抜け穴を提供してあるように、⑦合弁会社の資本撤退は各国の足並みが揃っていない分野です。
日本はサハリンでの石油天然ガスプロジェクトに国や大手商社も深く関わっていたために、今後も関係を維持するとしています。
これについては次回に詳述します。

⑧のロイズの保険拒否は、日本での扱いは小さいですが、大きな打撃をロシアに与えるはずです。
保険・再保険がないと航空・海運が動かなくなるからです。

「【ロンドン=篠崎健太】英政府は3日、ロシアの航空・宇宙関連企業を英国の保険市場から排除する方針を発表した。ウクライナを侵攻したロシアに対する経済制裁強化の一環で、英国の保険や再保険サービスの利用を「直接、間接に禁じる」と説明した。世界の損害保険市場の中心地である英国から締め出されればロシアの航空会社の運航に支障が出る可能性もある。
英ロンドンには世界最大級の再保険市場であるロイズ保険組合があり、航空分野のリスクも活発に引き受けている。締め出されればロシアの航空・宇宙産業は英国以外でも損害保険利用のハードルが高まりそうだ。スナク英財務相はツイッターで「グローバルな保険・再保険市場へのアクセスを著しく制限するものだ」と説明した。
英政府は施行するための立法作業を今後進め、制裁の日程や具体的な対象などの詳細は追って公表する。財務省は声明で「ロシア経済を国際金融システムからさらに孤立させる」と強調した」
(日経3月4日)
英、保険市場からロシアの航空企業排除へ 制裁強化: 日本経済新聞 (nikkei.com)

この分野は、英国を本気で怒らせるとどうなるかいう見本を見るようです。
英国は金融でメシを食っていますから、ロイズ保険組合に強い影響力を持っています。
ロイズが保険・再保険を拒否すると、ロシア向け保険が全部使用不可能となり、海運、航空が運行不能になります。
たとえばロシア行き航空会社の海外便は、保険が効かないロシア上空を飛ばないために全部運休です。
いま唯一運行されているロシア便は、中東系だけのはずです。

ロシアの航空会社の航空機もリースが効かなくなりますから、全部返却せねばなりません。
鉄道路線もフィンランドが通過を拒否したため、ロシアからEUへの鉄路は完全閉鎖状態となっていま。
船舶は保険がない港には寄港しませんから、世界中の船舶はロシアに寄港することを拒否するでしょう。
ロシア船籍の船も、保険効かないので同じです。
来てくれるのは密輸業者の船ばかりでしょう。

このような経済制裁の影響は、ダイレクトにロシアの国民生活を直撃し始めました。

「ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシア国民の生活費が急騰していることが、新たなデータによって示された。
公式な統計では、砂糖など一部の生活必需品の価格が1週間で14%も跳ね上がった。
ロシアではインフレ率の上昇も見込まれている。通貨ルーブルはウクライナ侵攻の開始以降、急落している。
ロシア経済省は23日、年間インフレ率が、今月18日時点で前年比14.5%に跳ね上がったと発表した。2015年後半以来の高水準となった。
連邦国家統計局によると、砂糖の値段は一部地域で37.1%も上昇。平均でも14%上がった。
砂糖は食料保存や酒造でよく使われる。同統計局によると、その砂糖が、ここ1週間で最も値上がり幅の大きな品目だったという」
(BBC3月25日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60871364

反戦デモの波は全員検挙というおそるべき恐怖政治でいったんおさまりましたが、次に来るのは国民の生活苦デモです。

かくて、ロシアはまんべんなく包囲された巨大な孤島となってしまいました。
気がつけば、十重二十重で包囲されているのは、キーウではなく自分たちのほうだったのです。

中国はこのフルボッコ状態のロシアを見て、台湾侵攻を声高に叫ぶことを多少控えるようになったようです。
これが唯一のウクライナ戦争のよかったことです。

 

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ウクライナに平和と独立を!

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コメント

中国が聯銀カードをロシアにとか考えていたようですけど···それも無理っぽいです。

ロイズの保険入れないことはガッチリと効いてきますね。
リース機は借りパクするとか言ってますけど、ますます信用を落とすだけ。どうせ交換部品が無くなれば飛べなくなります。

昨夜のBS深層NEWSとかでも、今回のバイデン発言はやりすぎだとの見方が大勢でしたね。「国家転覆を想起させかねない」と。
いや、実際にアメリカは本機だぞとチラつかせたという計算で言ってるのならいいんですけど、一年前にもバイデンさんは「プーチンは人殺し」という突然の発言があったから自然に出ちゃったとしたら···ちょっとお爺さん大丈夫か?とも。

1つ、声を大にして言いたいこと。
何の関係も無いロシア料理店とかへの嫌がらせやってる連中、恥ずかしいマネすんなー!と。
学生時代にたまたま入ってみた神田のボルシチの味が忘れられん。美味かったなあ。

 橋下とか保守派の知ったかぶりがよく、「米国(バイデン政権)は高みの見物で何もしていない」とか、「(米国には)戦争を長引かせる事による武器販売目的がある」などと言いますが、失当と言わざるを得ません。
バイデン政権は西側がまとまって経済制裁する事、今日の記事のようにその経済制裁を即効性・実効性あるものする為、今後さらに大きな制裁を科すため極めて大きなリスクをとっています。

バイデン政権で心配なのは支持率で、3/1には8~10%上がったにも関わらず、昨日は12~13%も下がった事。この原因は国内インフレ対策で、特に民主党左派連中のバイデン離れが顕著なようです。

共和党支持者は「ガソリン価格が上がっても、制裁はすすめるべき」とする考えが58%にもなっています。しかし、それでバイデン支持とはなりません。逆に共和党は顔も政策も見えづらく、民主党より10%以上低い低迷局面に入ってしまっています。

日本では杉村太蔵のように「停戦すれば、制裁解除」なる珍説が見られますが、欧州の首脳たち(ドイツ以外)は一致してバイデンの本音「この男が権力の座にとどまってはならない」でしょうし、プーチン政権の転覆がロシア国民の幸福である事も明らかです。

これだけウクライナにダメージを与えた以上停戦後のロシアの戦後補償は不可避でしょうし、そこでゴネれば更なる制裁延長か下手すれば追加制裁もあります。
東部地域やクリミア半島も再度国際機関監視の元で住民投票を行った上でその処遇を決定する事を飲まされるでしょう。
おそらくウクライナは「NATOには入るのはあきらめるけどポーランドと個別の軍事同盟を組むよ」くらいの腹案は持ったうえでの譲歩でしょうからどうあがいてもロシアの戦略的勝利はどこにもありません、見事なまでに完全な敗北です。

その上でプーチン皇帝がその玉座を維持出来るとはあの国の歴史を見る限り到底不可能でしょう、バイデンの迂闊な一言もその思惑が思わず口から出ちゃったのでしょうね。
ああ見えて意外と調子乗りな気質ありますし。

ロシアが首都周辺から引いて東に移動しているのは戦闘の収束に向かっていて嬉しい反面、今1番恐ろしいのはロシアが戦術核や生物・化学兵器を使って都市からウクライナ人を根こそぎ抹殺しようとすることです。
ロシアが化学兵器を使うとなるとミサイルに詰めて撃つとされています。部隊の侵攻は収まっても後方からのミサイル攻撃が収まらないのは化学兵器の使用の予兆にも見えてとても不気味です。

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