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2022年4月

2022年4月30日 (土)

NATOが「不拡大約束」を破ったから戦争になったという都市伝説

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昨日はプーチンが言っている「NATO東進脅威」説が、ばかばかしい妄想だということを見てきました。
ま、ホントはだから他国に国境を乗り越えて侵略してよいということにはまったくならないのですが、それを言うと話がそこで終わってしまいますもんで。

プーチンの被害妄想は、大国は勢力圏を持つべきであり、大国と大国の間の国々はしょせん大国のチェスの駒にすぎないのだという19世紀的パワーゲーム観があります。
カビ臭い地政学ロジックですが、これがまだロシアでは、すくなくともプーチン党の中では脈々と生きているのは確かなようです。
まったく救いがたいアナクロで、大国が小国にアレコレ命じて当然、手下は服従して当然、という猿山のボス猿の如き感性をお持ちのようです。
ところが現実のウクライナ戦争では、米露の代理戦争どころか、勇敢な小国が大国の鼻ヅラを引き回し、仕掛けた大国のほうを衰退させてしまいました。

さて、もうひとつNATOがらみで、プーチンがネチネチと怨み節の如く言い続けていることがあります。
それは、「冷戦集結時に米欧はNATO不拡大をロシアに約束しただろう。裏切られた」というものです。
なんでも安倍氏とふたりきりの時になると、この愚痴とも怒りともつかない「ロシアは裏切られた」とぶつぶつ言っていたそうです。
この「不拡大約束説」も、わが国に浸透している説らしく、ロシアの侵略は致し方がなかった、どっちもどっちなどとという人たちが必ず口にする説です。
れいわ新選組(すごいネーミング)が、国会でのロシア非難決議に反対票を入れた理由がこれだったはずです。

結論から言えば、「不拡大約束」がされた事実はありません。
外交の世界の都市伝説のようなものにすぎません。
しかしプーチンはこれを固く信じており、2022年2月24日のウクライナ侵攻を始めるにあたっての演説でもこう言っています。

「NATOを1インチたりとも拡大しないという約束もあったが、彼らは我々を欺き、さらにはもてあそんだのだ」
(ブルームバーク2022年2月24日)

もちろんこれがウクライナ侵略の最大の動機とも思えませんが、それなりに自分では大義名分であると考えていることがわかります。

鶴岡路人氏が、この「不拡大約束説」に詳細な検証を加えています。
※『プーチンの主張する「NATO不拡大約束」は、なぜ無かったと言えるのか』
fsight 2022年3月2日
プーチンの主張する「NATO不拡大約束」は、なぜ無かったと言えるのか:鶴岡路人 | Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

不拡大約束説でかならず引き合いに出されるのが、1990年2月、モスクワを訪問したジェームズ・ベーカー米国務長官とミハイル・ゴルバチョフソ連共産党書記長との会談で、ベーカーが言ったという説です。

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ベーカー・ゴルバチョフ会談 一番右側がベーカー
プーチンの主張する「NATO不拡大約束」は、なぜ無かったと言えるのか:鶴岡路人 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) 

問題となったのはこの部分で、頻繁に切り取られました。

・ベーカー 「今すぐ回答を求めるわけではないが1つ質問をしたい。ドイツ統一が実現するとして、(1)NATOの枠の外で完全に独立して米軍部隊の存在しない統一ドイツがよいか(2)NATOとのつながりを維持したうえで、しかしNATOの管轄権や部隊は現在の境界から東には拡大しないとの保証のついた統一ドイツがよいか?」
・ゴルバチョフ 「全てについてじっくり考えたい。指導部において議論する。しかし、当然のことながら、NATOの領域が拡大することは受け入れられない」
・ベーカー 「その点については同意する」

この部分だけ取り出すと、確かにそう聞こえないではありません。
鶴岡氏は、この「同意する」という部分を切り取っても意味はわからないとしています。
当時の東西関係でなにが議論されていたか理解できないと、この発言の意味が理解できないし、歪曲も可能になってしまうからです。

実はこの発言はドイツ統一交渉のひとこまだったのであって、東欧全体について話されたものではないのです。
当時米国は、機運が盛り上がっていたドイツ統一問題を、ソ連が決して認めないだろうという前提で交渉しています。
ソ連からすれば、認めてしまえば、それは鉄の団結を誇ったワルシャワ条約機構の最前線国家を失い、共産陣営の崩壊に繋がりかねないからです。
また当時のソ連は、ドイツに対して一定の管理権をもつことを認められていました。

ですから、ベーカーは慎重なうえにも慎重に、この後の1990年9月に締結される「ドイツの最終的地位」を念頭に置いて交渉しています。
この条約は第5条3項にこうあります。

「外国部隊や核兵器、およびその運搬手段はドイツの同地域[旧東独地域]に駐留、展開されない」

これがNATO「不拡大」の中身です。「不拡大」は旧東ドイツ領と明示されています。

小川和久氏はこう述べています。


「 同盟条約の適用地域の一部には米軍を配備・展開しないことを、米国と同盟国が旧ソ連・ロシアに保障した例として、ドイツ最終規定条約(東西ドイツ、米ソ英仏の6か国で締結)の下記の条項を紹介した。
ドイツは1990年10月3日の再統一と同時に、米国を含むNATOの北大西洋条約を全領土に適用される一方、旧東独地域では現在に至るまで米軍が活動せず、1994年まではロシア軍が駐留していた」
(NEWSを疑え!』第727号(2018年11月19日)

ドイツ最終地位条約とは、ドイツ降伏、東西冷戦による分断を経て、ドイツ統一時にドイツ占領4カ国(米英露仏)と東西ドイツが結んだ、国境線などを確定した条約のことです。
ドイツ最終規定条約 - Wikipedia 
この条文の中で、NATOは統一後のドイツ全土に対して適用される一方、米軍は旧東独地域には駐屯しないとされました。 
これは米軍のみならず、外国軍すべての「展開」にまでおよんだもので、いうまでもなく、ロシア(当時ソ連)が無用な警戒心を起こすことに配慮したものです。
ちなみにこの枠組みを作ったのは、当時米国NSCソ連東欧部長(後に国務長官)のコンドリーザ・ライスです。

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ブッシュ大統領(右端)とゴルバチョフ書記長の会談を準備中の コンドリーザ・ライス氏(中央、1990年9月9日、ヘルシンキ大統領宮殿

実はこのドイツ最終地位協定は生きていて、いまでも旧東ドイツ地域にNATO(外国)部隊は駐屯していないことでもわかるように、二人の間の「NATOの領域が拡大することは受け入れられない」 「その点については同意する」というやりとりは、東ドイツに対してだけ言ったものなのです。
ここを読み飛ばして一人歩きさせてしまい、旧ソ連圏全体にすり替えてしまったのが「不拡大約束説」です。
ね、都市伝説と私が言ったのがお分かりでしょう。

鶴岡氏は、「ドイツ統一交渉時のNATO不拡大約束については、すでに膨大な外交史研究が存在する」として、議論は外交文書の公開が進んで完全に決着がついたテーマにもかかわらず、ただ政治的に生き残っているだけだ、としています。
また、「ベーカーのような発言はあったものの、少なくとも文書化された合意は存在していない」ことは、ロシア側もわかっており、正式な外交議論には登場しないようです。
つまりプーチンひとりが国内向けに言っているだけのことなのです。

それを裏づけるように、交渉のソ連側代表だったゴルバチョフは回顧録の中でこのように述べています。

「「(NATO不拡大の)保証はもっぱらドイツ統一に関して与えられたものだった」
「旧東ドイツ領だけでなく、東方全体へのNATO不拡大問題を提起すべきだったのか。私は確信している。この問題を我々が提起するのは単に愚かなことだったであろう、と。なぜなら、当時はNATOだけでなく、まだワルシャワ条約機構も存在していたからである。あの当時こんなことを言っていたら、我々はもっと非難されていただろう」
「NATOの東方拡大のプロセスは、別の問題である」

はい、これで決定的ですね。
「不拡大約束」は東ドイツに対して向けられたもので、旧ソ連圏全体とは無関係なのです。
だめ押しですが、ロシアはNATOの「東方拡大」について手打ちをしています。
それが1997年5月のNATO・ロシア基本議定書で、1999年のチェコ、ハンガリー、ポーランドへの拡大の道を開きました。
2002年5月NATOとロシア間で締結された「ローマ宣言」は、2004年のバルト諸国等への拡大に道を開くものでした。
しかも「ローマ宣言」はプーチン政権が署名したものです。

「不拡大」が絶対的約束ならこんな条約を結ぶはずがありません。

 

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 在日ウクライナ大使館(@UKRinJPN)さん / Twitter

ウクライナに平和と独立を

2022年4月29日 (金)

NATOの「東方拡大」がウクライナ戦争の原因だって?

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賢人ルトワックが、ゼレンスキーがNATOに入らないと発言したことについて、こんなことを言っています。

「そもそもNATOに参加するという事は麻薬に手をだすようなもの、いわば実際に運動したり規則正しい食生活をおくるなどして身体の健康を守るのではなく、なにもせずに健康になれると錯覚するようなものだ。
もちろん、そんな錠剤を飲んだところで、健康になれるわけはない」
(エドワード・ルトワックhanada6月号)

ゼレンスキーは、NATOという見た目は頑強そのものの体つきをしている人物の私生活を見てしまったようなものです。
盟主のドイツは反戦少年から抜けきらない子どものような国で、開戦冒頭には枕5千個を平気で送りつけてキーウ市長に怒鳴りまくられると、われわれは戦争当事者には軍事物資を送れない決まりなのだとうそぶいていました。
そしてやっと緑の党(!)の突き上げで本格的武器援助が始まって、戦車や自走式対空砲を送る段になったのはいいものの、今度は保管庫の扉を開けてビックリ、大部分が保管状態が劣悪で使い物にならなかったという恥の上塗りです。

ルトワックは、プーチンが開戦に踏み切った理由のひとつに、このドイツのグニャグニャ体質を知り尽くしていたことを上げています。
彼らがシャッキリとしていて、ウクライナを守ることは「自由で開かれたヨーロッパ」を守ることだとわかっていれば、よもや上空を飛ぶ許可を求めた英国の支援物資を積んだ航空機の通過を拒否することなどしなかったでしょう。

イタリアはわずかな数の武器を送るのにてんやわんやで、実施するまで数カ月間かかっていました。
いまや最大の支援を送っていることは間違いないポーランドですら、ロシアの逆鱗に触れるのが恐ろしいばかりに、いったん米国が買い上げて、米国からの支援物資にしてくれと、マネロンならぬウェポン・ロンダリングを米国に依頼する始末です。

ことほど左様な状況のNATOを、「不能者の集まり」とルトワックは斬って捨てます。
そりゃそうでしょう。NATOなんぞに加盟していない国のほうがはるかにしっかりと自分の国を守っているのですから。

「たとえば、ポーランドを例にとると人口800万人で、兵力はたった11万人。一方フィンランドはNATO加盟国ではない。人口もわずか550万人にもかかわらず、徴兵制を維持して3万5千人近い常備軍を持っている。
同じく、NATOに加盟していないスイスやスウエーデンもそうだ。彼らも徴兵制を維持し、国防に極めて熱心だ。
日本がNATOに参加しなくてよかった理由がここにある。NATOに参加することはその国を眠らせてしまう麻薬を服用するようなものなのだ」
(ルトワック前掲)

つまり、NATOはガタイこそデカイが、その実態は自分一国では戦えない国のある種の互助会的組織にすぎず、しっかり自分の国を守る意志があればイスラエルやフィンランドのようになりなさいと、ゼレンスキーに勧めているわけです。
わが国も拳拳服膺すべきです。
NATOの会議に顔を出したことで、ブリンケンに褒められたくらいで喜ばないように。
わが国も、日米安保に守られた9条ワールドの中で眠りこけていたことは間違いないのですから。

ところで、こんなNATOがコワイ、こんな巨大な軍事同盟がわが国に着々と接近している、NATOは侵略を考えているにちがいない、と妄想を募らせていた男がいました。
いまや世界の敵とまで言われる、ウラジミール・プーチンです。

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レンドリース法とNATO拡大がロシアを追い詰める? | オピニオンの「ビューポイント」 (vpoint.jp)

彼はウクライナ侵略の口実の筆頭に、この「NATOの東進」を上げ、このNATOの膨張の脅威からロシアを守るための「予防戦争」だったのだとまで言い始めています。
NATO批判者であるシカゴ大学の国際政治学者・ジョン・ミアシャイマーなどは、2014年にウクライナで起こった「マイダン革命」によって親欧米系の政権が樹立された後、ウクライナも対象にしたNATO東方拡大は、ロシアの強い反発を招くと論じました。

日本の親露派にいわせると、今のウクライナ政権は暴力で政権を倒したので、正統性が欠落した非民主的ネオナチ政権だと言っています。
たとえば篠原常一郎氏などは、こんなことを書いています。

「ロシアのウクライナに対する軍事侵攻(2月24日~)は、決してそれ単独、唐突に起きた事象ではない。1991年12月のソ連邦崩壊以前にまで遡る歴史的背景もあるが、直接的につらなる事情は2014年2月の「マイダン革命」やその後のウクライナ内戦の事態の継続から連鎖して起きたものだ。
特に「マイダン革命」のクーデターにより成立した現政権につらなる政治勢力が追放したヤヌコビッチ大統領の後任大統領を選ぶ前から「ロシア派」排除を打ち出したことが混乱の直接的要因として大きな比重を占める。
実際にウクライナ政権による国民の圧迫が東部と南部のウクライナでの騒乱につながり、ドネツクとルガンスク両州(いずれもロシア語話者住民が7~8割)がキエフ政権からの分離・独立を主張し、それぞれ「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を宣言して、ウクライナ政府軍の軍事攻撃への抵抗を開始し以後8年に渡る内戦が続いてきたことが、この度ロシアが「特別軍事作戦」と称してウクライナに対する軍事攻勢に踏み切る火種になった」
(篠原常一郎)

妙に事情通ぶった者や、反米好きな人にこういうことを言う人が多いようです。
こういったロシアの代弁者にかかると、なにもかもウクライナまでをNATOに入れようとした欧米の陰謀、それに対してやむをえず戦いに立ち上がったプーチンという「わかりやすい」構図になるようです。
ですから2014年にクリミアを併合されたのもウクライナが悪いから。
ウクライナ東部地域において分離独立勢力がロシアの傀儡国家を作り上げたのも、ネオナチのアゾフ連隊のせい。
それから続くウクライナ内戦も、キエフ合意を守らないウクライナのせい。
なにもかもすべてウクライナ自身の責任であり、その後ろでゼレンスキーらを操るNATOの陰謀があるからだ、ということになります。
これがロシアのプロパガンダですが、うちの国にもそっくり口真似をする輩が多くてイヤになります。

まとまった論説としては以下がありますので、お暇ならご覧下さい。

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第一線専門家:NATOの拡張は紛争を招くと警告したのに、なぜ誰も耳を貸さなかったのか?   翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問) (eritokyo.jp)

このような主張をする人たちの多くが、「影の世界政府」(DS)を信じるような(あまりこういう表現は使いたくないのですが)陰謀論者らであることは偶然ではないような気がします。
論理的に事実を組み合わせていくのではなく、まず先に結論があってそれに自分の都合いい事実のピースをはめ込んでいってしまうという陰謀論の手法は、このウクライナ戦争でも登場したわけです。
しかもそれが一般人ならまだしも、ロシアの指導者ですから始末が悪い。

では、ほんとうにそうでしょうか?
たしかに冷戦終了以降のNATOの拡大は、EUの拡大と共に進行しました。
なるほど、いまだにソ連時代と本質的には変わらない全体主義国家であり続けるロシアにとって、それは「脅威」であることは確かでしょう。
民主主義の拡大は全体主義には脅威そのもので、だから長い国境線を持つウクライナが緩衝地帯になるべきだ、と勝手にそう思ったのです。
勝手に隣の主権国家を緩衝帯にみたてるなよ、と思いますが、ならば正直に我々ロシアの国柄を守るとだけ言っておけばいいものを、それをコネくり回して米帝国主義が勢力拡大を図っているのだ、これは帝国主義が攻めて来るとまで妄想を育て上げてしまうから困ります。

事実はどうでしょうか。
NATOはそもそもそんなご大層なもんじゃありません。
国際政治学者の篠田英朗氏はこう述べています。

「事実は日本で陰謀論めいた主張をしている人々の中には、かなり真面目にNATO東方拡大はアメリカの勢力圏の帝国主義的な拡張のことであると信じているかのような人々がいる。だが、NATO東方拡大は、むしろ状況対応的な受け身の性格を持つ。それは、冷戦終焉を引き起こした現象、つまり東欧諸国における共産主義政権の崩壊という現象に対応した措置であった。
冷戦時代にNATOと対峙していた旧「ワルシャワ条約機構」を形成していた東欧諸国は、今は全てNATO加盟国になっている。それはアメリカの帝国主義的野心が強かったからではなく、東欧諸国の希望が強かったため発生したことだ。東欧諸国で共産主義政権が次々と崩壊し、遂にはソ連も消滅してしまってワルシャワ条約機構も消滅してしまった後、東欧地域は、いわゆる「力の空白」の状態に陥った。この東欧の「力の空白」を埋めるという作業を、NATOが行った。悩んだ後に、そうせざるをえないと判断して、行った」
「『NATO東方拡大」とは何か』
「NATO東方拡大」とは何か(前編) | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)

私もこれが実相だと思います。NATOは攻めるための同盟ではなく守りの組織なのです、
東西冷戦が終了し、かつてソ連の衛星国だったワルシャワ条約加盟国とソ連の一共和国にされていたウクライナ、ジョージアなどは念願の独立を果たしたのですが、はたと困ったことに気がつきました。
我々かつてソ連の下回りをやらされてきた国を、ロシアが取り戻しにきやしまいか、彼らは核を持っているので、脅しあげられたら手もなく負けてしまう、どうしよう、そうだかつての敵陣営のNATOがあるじゃないか、というわけでドドっとNATOの扉を叩いた結果が、この「NATO東進」なのです。
ありていにいえば、ロシアの核の傘から米英仏の核の傘に乗り換えたのです。
このことによって、中欧東欧に一時的に生じた「力の真空」は満たされて、新しいパワーバランスが誕生しました。

「こうした歴史的経緯をふまえれば、冷戦終焉に伴うワルシャワ条約機構の消滅によって放り出された東欧全域における「力の空白」は、ヨーロッパの安全保障システムにとって、大問題であった。
ロシアはもはやソ連のような帝国ではない。そもそも東欧のどの国もロシアを盟主とする地域安全保障体制に何の魅力も感じていない。そうだとすれば、「力の空白」は、NATOの拡大によって埋めるしかないのではないか。
1990年代を通じて、欧米諸国では激論が繰り広げられ続けたが、最終的には、「力の空白はNATOが埋めるしかない」という結論が勝り、1999年からNATOの東方拡大が開始されることになった」
(篠田前掲)

このNATOがロシアにとってもが無害な組織だということは、ロシア軍部もわかっていたようです。

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全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…! キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

「イヴァショフは、プーチンが強調している「外からの脅威」を否定しない。しかし、それは、ロシアの生存を脅かすほどではないとしている。
 〈 全体として、戦略的安定性は維持されており、核兵器は安全に管理されており、NATO軍は増強しておらず、脅迫的な活動をしていない 〉
 では、プーチンが「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証をしろ」と要求している件について、イヴァショフはどう考えているのか? 
 彼は、「ソ連崩壊の結果ウクライナは独立国になり、国連加盟国になった。そして、国連憲章51条によって、個別的自衛権、集団的自衛権を有する。つまり、ウクライナにはNATOに加盟する権利があるのだ」と、至極真っ当な主張をしている」
(北野幸伯 2月16日JBプレス)

北野氏はプーチンを見習えと言い続けてきた人ですが、彼をしてもプーチンがいうNATO東進が戦争の原因だとは思えないようです。
改めて、ロシアの戦争目標を上げてみましょう。

●ロシアの要求
①NATOの東進の放棄
②加盟国への外国軍の展開阻止
③ウクライナのNATO加盟断念
④ミンスクⅡ合意の確認

すべてが屁理屈です。
①は要求自体がヘンで、「東進した」のではなく「結果としてそうなってしまった」が正解です。
イヴァショフ元上級大将も言っているように、NATOは国数こそ倍近くに増えたものの、「ロシアの生存を脅かすほどではなく、戦略的安定性は維持されており、核兵器は安全に管理されており、増強されておらず、脅迫的な活動もしていない」のが真実ですから、ただの被害妄想です。

そもそもNATO東進は、NATOの意志ではなく、非加盟諸国がぜひ加盟させて欲しいといっているのですから、放棄するもしないもありません。
フィンランド、ノルウエイ、スウエーデンなどが、加盟の道を選択したのは、他ならぬプーチンがほんとうに戦争を始めて、ウクライナで虐殺と破壊の限りを尽くしているのを直に見てしまったからです。
結果と原因を取り違えています。自らの悪行が招いた結果を逆恨みするんじゃない。

また百歩譲っても、加盟は各主権国家の決定なので、ロシアがとやかく口ばしをつっこむのはお門違いです。
逆にたとえばベラルーシが「ユーラシア共同体」に加盟してはならない、などと西側からいわれたら、プーチンがどんな顔をするか見てみたいものです。
したがって、主権国家として「国連憲章51条によって、個別的自衛権、集団的自衛権を有する。つまり、ウクライナにはNATOに加盟する権利がある」のは自明であって、それを加盟させるさせないとイチャモンをつけるばかりか、侵略するなどはあってはならないことでした。

冷戦が存在するまで、NATOは世界で唯一機能する集団安保体制を維持してきました。
本来国連がするべき集団安保体制を堅持して戦争をさせなかったのは、大きな功績でした。
しかし冷戦が終了して30年。NATOは敵なき軍事同盟となった時期が長期間続きました。
すみやかに加盟国の多くは「平和の分け前」を頬張って、惰弱に流れてしまいました。
そしてドイツに典型のように、仮想敵国のロシアの原油に全面依存してしまう有り様です。
これでは「東進の脅威」もなにもアッタもんじゃありません。
NATOというぬるま湯に首まで浸った集合体と化してしまったのです。まさにルトワックがいう「麻薬」です。
それに喝を入れたのがウクライナだったわけですが、皮肉にも当のウクライナからは見限られてしまったようです。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-89d84f.html


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ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年4月28日 (木)

ウクライナ戦争前夜まで

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小泉悠氏が、ウクライナ戦争前段までの状況について詳述していますので、これを下敷きにしてウクライナ戦争が起きた背景を探っていきたいと思います。
※『ロシシア軍全面新興ウクライナ戦争の背景』丸5月号

さて小泉氏は、今回の戦争に繋がる事態は、2021年春頃に生じたと見ています。
2021年4月、ウクライナ国境にロシア軍が集結を開始し始め、その数は11万と伝えられていました。
集結したロシア軍には、西部軍管区や中央軍管区の部隊も含まれており、全国動員がかかっていたようです。
この時点でロシアが戦争の意志を持っていたことは疑い得ません。

プーチンがやったことは、まず挑発して相手方の出方を見ることでした。
彼なりの観測気球を上げてみたのです。
その方法は、ドンバス地方(ドネツク・ルガンスク地域)で、親露派武装勢力を焚きつけて、キエフ合意違反を激増させたことです。
その数実に2021年1月から3月までに7000件にも及び、その大部分は親露武装勢力の仕業でした。
下の写真は、ウクライナ国旗を引き裂いている親露派武装勢力です。
まともな軍人は少数で、地域の半グレのような連中ばかりですので、規律がなく弱兵揃い。
そこでロシア軍が密かに彼らの軍服を着て戦っていたのは、公然の秘密でした。
下の写真はウクライナ国旗を破いていきがっている親露派武装勢力のものですが、まともな軍隊ならこんなことはしません。

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ウクライナの親ロシア派武装勢力が支配する東…:緊迫 ウクライナ情勢 写真特集:時事ドットコム (jiji.com)

この挑発を受けて、ウクライナ軍は必ずロシア軍は国境を超えてくると確信して、できるかぎりの武器弾薬を集積し、臨戦態勢に入ったそうです。

では、プーチンはなにを観察していたのでしょうか。もちろん米国の動向です。
というのは、ちょうどこの時期、偶然にも米国大統領選の結果、バイデンが政権が成立していたからです。
ロシアとしては、トランプが続いたほうか好都合だったと、小泉氏は見ます。
トランプは共和党独特の国際秩序維持の役割に消極的姿勢を持ち、自分の国の利害を前面に押し出す傾向があったからです。
おそらく彼ではNATOは団結できずに、武器支援は失敗に終わったことでしょう。

一方、バイデンは同盟重視を掲げ、プーチンから見れば「いつもの米国が戻ってくる」と感じて警戒しました。
ですからプーチンは、トランプのほうが組み易いと考えたのでしょう。

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バイデン政権誕生へ始動、コロナ対策メンバー発表へ - 社会写真ニュース : 日刊スポーツ (nikkansports.com)

実際、政権をとったバイデンは就任早々の2月、クリミア半島簒奪7周年にあたってロシアのクリミア半島領有を認めないと発言し、ウクライナに対する軍事援助を増強しました。
プーチンは恐れていた米国の関与強化が明らかになった、と考えて身構えたと思われます。

一方、ウクライナにとっては、百万の味方が現れたという思いだったはずです。
というのは、この2年前の2019年に政権の座についたゼレンスキーは、クリミアとドンバスの主権奪還を掲げつつ、現実にはロシアとの対話路線を模索せざるをえませんでした。
なぜなら、EUとNATOがウクライナに無関心を決め込んでいたからです。
しかし、バイデンが就任するとゼレンスキーはそれに勇気づけられたのか、プーチンとのつながりが強いとされる親露派の資産凍結に踏み切り、さらに8月の独立記念日には世界の首脳を集めて「クリミア・プラットフォーム」を作ることを発表しました。
これらのウクライナの動きに対して、4月に行われた米国-ウクライナの電話首脳会談で、バイデンは「ゆるぎない支援」を約束しています。
バイデンは11万の大軍を演習名目で国境付近に集結させているロシア軍に対して、牽制する狙いがあったと思われます。

ところが、このまま緊張が高まると見えたロシア-ウクライナ間は、一転してデタタント(緊張緩和)を迎えます。
4月22日、ロシア国防相がウクライナ周辺の軍事演習が終了したとして、集結したロシア軍に撤退を命じたのです。

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ウクライナ国境付近のロシア軍、衛星写真で活動が明らかに - BBCニュース

もっともこれはただのポーズにすぎず、ほんとうに撤退したのはごくわずかで、大部分のロシア軍はそのまま居すわっていたのですが、これに飛びついたのがバイデンでした。
この偽装撤収を、プーチンからのデタントの外交シグナルだと考えてしまったのです。

これを受けてバイデンは6月に米露首脳会談に合意し、さらに懸案になっていたノルドストリーム2に科していた制裁を大幅に緩和すると発表しました。
6月の米露首脳会談では、バイデンはウクライナのウの字も口にせず米露がデタントに入ったことを世界に大きくアピールしました。
バイデンは冷戦期を知っている政治家だけに、このプーチンの動きを冷戦期に何度かあった緊張と雪解けの周期にすぎない、本気で侵攻してくることはないだろう、いままでだってレッドライン寸前で互いにストップしたのだから、と考えてしまったようです。
完全なプーチンの意志の読み違えです。
プーチンのウクライナ侵略の意志は2014年のクリミア侵攻以来一貫して変わらず、その時期を見ていたにすぎなかったのですから、プーチンはバイデンなどだますのはチョロイもんだと舌をだしたはずです。

このデタントは淡く短い夢に終わります。
暗転はわずか2か月後の6月、英海軍が黒海にウクライナ軍への軍事援助引き渡しのために訪れた時に起きました。

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ロシア、警告射撃の映像公開 英駆逐艦のクリミア接近|全国のニュース|佐賀新聞LiVE (saga-s.co.jp)

英国海軍駆逐艦ディフェンダーがクリミア半島沿岸を航行中に、ロシア沿岸警備隊の発砲を受けた上に、ロシア空軍に進路に爆弾まで投下されたのです。
ロシアは領海侵犯だと主張しましたが、仮にそうであったとしても無害通航権があるわけですから、それに対して発砲したり空爆したりするのは正気の沙汰ではありません。
これで一気にデタント気分が吹き飛びました。

NATOは黒海に艦艇と航空機を集結させ、ロシアも負けじと集結したために緊張が高まりました。
デタントはあっけなく終わったのです。
そこに8月の米国のアフガン撤退がかぶりました。

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「アフガン撤退」が送る日本へのシグナル|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト (tv-asahi.co.jp)

バイデンは8月中の撤退にこだわり、アフガンにおける米国の敗北を世界に印象づけてしまいました。
結果として、アフガンを中国に割譲してしまい、しかもアフガン政府とも同盟国とも一切の協議もしないで撤退してしまったために、同盟国との亀裂を作りました。
英国など、「スエズ動乱以来最大の裏切り」と激怒し、バイデンが「自国を守る意志がない国は守らない」などと時と立場をわきまえない発言をしたために、いらぬ同盟国の動揺まで引き起しました。韓国が本気で動揺したのはご愛嬌でしたが。
これは最悪のプーチンへの外交シグナルでした。
米国は本気で中国やロシアとはコトを構える気はない、何をされても口先非難しかしない、という誤った発信をしてしまったのです。
小泉氏は、バイデンが制裁緩和や軍備管理で弱腰だったと見ており、さらにはこの8月のアフガンからのあわてふためいたような撤退ぶりを目の当たりにして、「米国は世界秩序維持の役割から降りようとしている」と考えたとしています。
プーチンにゴーサインを出したのは、他ならぬバイデンなのです。

そして7月、このバイデンの弱腰に気をよくしたプーチンがおもむろに取り出したのが、ドゥーギン譲りのユーラシア主義宣言とでもいうべき思想的宣戦布告文書だったのです。
プーチンはここでロシアとウクライナの一体性を主張し、ウクライナは弟のような国だとしたうえで、彼らは誤って独立してしまった、自立する力などないために崩壊国家になった、そしていまや西側の東進政策の拠点にされてしまったのだ、これを許すわけにいかないと非難しています。

この昨年夏の時点で開戦はできるできないの次元ではなく、いつするのかの現実的テーマに移行します。
プーチンが囚われたのは一撃主義でした。
ほんのわずかな力を加えれば、ゼレンスキーは政権を放り出して逃げ出すだろうから48時間でウクライナは片づくはずだという非現実的な想定です。
そのために、本来は東部2州への侵攻だけでよいものを、あえて軍を分割して半分をベラルーシから南下させてキエフを奇襲し、ゼレンスキーら国家指導部を無力化する斬首作戦にこだわりました。
ここでウクライナの頭脳を叩き潰せば、ウクライナの軍も国民もヤヌコビッチのような傀儡政権を再び受け入れるはずだと考えたのです。

後にこれは戦線の無意味な広域化と、補給線の長大化、兵力不足といったロシア軍の力の分散を呼ぶ原因となります。

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https://usmail24.com/russia-breaks-ceasefire-to-shell-evacuation-routes-out-of-besieged-mariupol/

成功した場合の予定稿「ロシアの攻勢と新世界」を、RIAノーボスチ通信社が間違って公開したため、ほんとうにそのように考えていたことが世界に知れ渡ってしまいました。
世界はロシアが本気で4日間で勝てると信じていたことに驚きました。

なぜプーチン政権は、ここまで非現実的になってしまったのでしょうか。
根本的にはプーチンの「ロシアとウクライナは一体」というユーラシア主義思想がありますが、その権力構造が側近をみずからと同じ体質を持つ旧ソ連情報機関出身者たちで固めてしまったことにあります。

彼ら旧ソ連情報機関は、スパイらしい独特の思考様式と手段を偏愛します。
彼らにとって武力行使は、暗殺・拉致・斬首作戦など少人数による電光石火の作戦であって、旧ソ連軍の伝統の重厚長大の縦深作戦には興味がありませんでした。
東部地域からひたすら戦車と歩兵戦闘車の大軍で、津波のように押し寄せるという縦深作戦は否定され、空挺部隊と特殊部隊によるアントノフ空港からの斬首作戦が開戦直後に実施されました。
そしてそれが無残に失敗すると、戦争計画全体がバラバラになってしまい、自壊していきます。

このような流れを見ると、日本の親露派が流す情報がただの俗説にすぎないと、お分かりになったと思います。
彼らは戦争の原因をこう言っています。
いわく、「ドネツクでウクライナがドローンを飛ばしてプーチンを刺激したからだ」、「ドネツクでネオナチがジェノサイドを働いたからだ」、はたまた「キエフ合意を守らなかったウクライナが戦争を招いたのだ」、「ゼレンスキーが話あいを拒否したからだ」などという言い草は、以上の流れを見ればデタラメだとわかるでしょう。

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月27日 (水)

アゾフスタル要塞に再攻撃始まる

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「アゾフスタル要塞」のその後です。
ロシア軍はまた攻撃を再開し始めたようです。
なぜか理由はわかりません。

米国戦争研究所( (ISW)は淡々とこう書いています。

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ISW

ISWは、これらの報告されたロシアの攻撃の規模を独自に確認することはできないが、ロシアの司令官は、今後数週間で残りのウクライナ防衛隊を飢えさせることができず、クレムリンが自主的に課した可能性のある5月9日までに施設を片付けるために、急いで費用のかかるロシアの攻撃を必要とすると評価するかもしれない。
ロシア軍が、突破する可能性は極めて低く、ほぼ確実に物資が不足している残りの防衛兵を飢えさせる意図を以前に表明した後、なぜ施設への地上攻撃を再開するのかは不明である」
(ISW4月25日)
ロシアの攻撃キャンペーン評価、|4月25日戦争研究所 (understandingwar.org) 

なにを考えているのでしょうか。
よほど東部戦線に行きたくないので、ここで戦っているふりをしていたいということなのか。
ここが世界にもまれなる地下要塞だということは、あの「ドネツクなんじゃら共和国」のスポークスマンが認めています。
報道しているのはロシア御用通信のスプートニクです。

「ドネツク人民共和国政府のヤン・ガーギン首長補佐官がリアノーボスチ通信の取材に応じた中で明らかにした。
ガーギン補佐官によると、ソ連時代に建設されたアゾフスタリ製鉄所は広大な面積を誇り、施設内には多くの工場が立ち並んでいる。その面積はマリウポリ市そのものに匹敵するという。従って、これはもう一つのマリウポリと呼んでもよい規模とのこと。
この製鉄所はソ連時代に空爆や核攻撃も想定して建設され、この施設そのものを制圧することは非常に困難であるという。地下にも連絡網が存在しており、マリウポリ市内にあるその他の施設と繋がっている模様」
(スプートニク4月16日)
)地下都市が広がるアゾフスタリ製鉄所の制圧は困難=ドネツク人民共和国高官 - 2022年4月16日, Sputnik 日本 (sputniknews.com)

このアゾフスタル製鉄所の地下は、核戦争用の要塞なのです。
面積は地表のマウリポリ市街地といい勝負といわれるほど広大です。
部隊が立て籠もるだけではなく、避難した住民用の施設や病院、娯楽施設、カフェ、自給用の園芸施設まで揃っているそうです。
居住区域は最下層にあるようで、ここに2000人とも言われる市民と1000人のウクライナ軍が避難しています。
当然、進入されても迷うように偽フロアまでしつらえてあって、トラップだらけでしょう。
ISWが書いているとおり、多くのトンネルで市中の建物と繋がっているようです

とはいえ、市街地が焼け野原なので、食料調達ができるかどうかはわかりません。
確実に飢餓が訪れようとしています。

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アゾフスタル要塞を守りとおす目的について、西側軍事筋のマイケル・コフマンはこのようにツイートしています。

「南部では、ロシア軍はマリウポリで足止めを食らっていた。プーチンがアゾフスタル襲撃を回避すると発表したのは、これ以上兵力を失うわけにはいかず、ドンバス攻防戦に兵力を必要とすることを反映したものと思われる」https://twitter.com/KofmanMichael/status/1517856532976881664

専門家の見解を前に素人がいうのはナンですが、私の見方が裏付けられました。
彼らは志願した捨て石だったというのが私の見方でしたが、その目的は達せられました。
ロシア軍司令部は、包囲軍は一部を除いて他の激戦地に送り込みたかったのでしょうが、遅すぎたようです。
というか、疲弊しきっていて使い物にならない負け癖のついた群れと化していたようです。

このマウリポリでも集団墓地が見つかっています。

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ウクライナフォーラム

「(マウリポリ)市議会は、衛星写真では、スタリー・クリム墓地の敷地内に溝が掘られているのが3月24日に確認できており、それはロシアがその町を占領して以降のことだと指摘した。その際のPlanetの衛生写真では、その溝は60〜70メートルの長さであることがわかるという。
そして、2週間後の4月7日には、その溝はさらに拡大しており、しかもその一部は埋められていたという。
さらに4月24日の写真には、新たな溝が確認されており、その長さは200メートル以上に伸びていると説明された。
またボイチェンコ・マリウポリ市長は、この新たな集団墓地の存在に気が付いたのは、ロシア軍人が地元住民をこの埋葬作業に「食べ物を報酬に」参加させているからだと指摘した。ボイチェンコ氏は、「彼らは私たちに、食べ物や水を受け取るためには『労働時間』に仕事をしないといけないと話した。(中略)現在、マリウポリには、ロシア軍が運んでくる人道支援は十分な数がなく、人々は仕方なくその仕事をしている」と説明した」
(ウクライナフォーラム4月26日)
マリウポリ近郊でさらに集団埋葬地が見つかる (ukrinform.jp)

ロシア軍が支配しているので、埋められた市民の数は不明ですが、ブチャより大きいマウリポリですから心配されます。
また明日に詳細な記事にする予定ですが、BBC が虐殺の証拠となるスクープを出しています。
このような市民虐殺に手を汚した兵隊は、その後まともにな兵士として使い物になりません。
だから、他の戦線に行かさずに、ここにとどめているのかもしれません。

なお、日本がウクライナから支援国として感謝されなかったことが、国内で波紋を呼んでいます。
仕方がないとは思いつつ、2カ月間毎日応援してきた私も少しがっかりしました。
国民を守る武器を送ってくれという国に、カネと防弾ジャケットしか送れなかったのがわが国ですから。
怒ったりがっかりする前に法改正をして武器も含んで供与できるようにするのが先です。

ただこのような事は日本国民のウクライナ支援の気持ちを確実に冷えさすので、外務省はひとこと在日ウクライナ大使にこれはないだろうと言っておくことです。
アジア最大の支援国であることはたしかですし、米国議会での真珠湾発言、昭和天皇をヒトラーと並べるガサツな映像(陳謝されて修正されたようですが)などを見ると、日本に支援を要請する以上、わが国のことを多少は知っていただきたいと思うのは、戦っている国には贅沢なのでしょうか。
うまくいっている両国間に、気まずい空気が流れることを恐れます。

とまれ、このウクライナ戦争は、軍事をまるで悪のように考えてきた戦後日本の現状を問い詰めているのです。

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月26日 (火)

逃亡オリガルヒたちの末路

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昨日もふれたように、「プーチンエクソダス」が広範囲に起きています。
数は推定ですが数十万人規模に及び、特にハイテク企業のエンジニアが大量に含まれていました。

「正確な数字かどうか検証するのは困難だが、ロシアから他国に最近移り住んだ人々が立ち上げた情報サイト「OKラシアンズ」の推計によれば、ウクライナでの戦争が始まってから母国を後にしたロシア人は30万人を超える。
このサイトの調査によれば、最近の移住者の大半は若くて高学歴であり、外国語を操り、移住先に同化したがっている。
ロシアは最も優秀な息子たちや娘たちを失いつつある。(略)
人々がロシアから逃げ出したのは政治的な迫害や徴兵、孤立を恐れているからであり、気味が悪いほど旧ソ連に似た、馴染みのない新しい国に閉じ込められることを恐れているからだ。
そして、戦争を仕掛けている国に留まるのは、人々の頭上に爆弾を落とす飛行機に乗っているような感じで、道徳に反することをしている気がするからだ」
(英フィナンシャル・タイムズ電子版 2022年4月14日)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69784  

この若いハイテク企業に勤めるエンジニアとは違った理由で、国外脱出をしたグループがあります。
それがオリガルヒ(新興財閥)の大富豪たちでした。
彼らは、ウクライナ戦争を見て、今まで絶対的指導者として仰いできた「同志プーチン」のやり方に強い疑問を持ったようです。

「ロシアの新興財閥(オリガルヒ)の間でウラジーミル・プーチン大統領と距離を置こうとする姿勢が強まっており、戦争への反対を表明する動きが相次いでいる。
ウクライナ侵攻を受けて大規模な対ロシア制裁を打ち出している米欧は、こうした実業家らの資産を凍結する動きも強めている」
(ウォールストリートジャーナル3月2日)
ロシア新興財閥、ウクライナ侵攻への反対表明相次ぐ - WSJ

たとえば有名どころでは、英国の強豪チェルシーFCのオーナーもしていたロシア人富豪のロマン・アブラモビッチは、ロンドンに上場する金融サービス会社TCSグループ・ホールディング傘下のロシア銀行大手のティンコフ銀行の創業者です。
アブラモビッチはは
っきりとプーチンを批判し、自身の財団が行うウクライナの子ども支援活動などを強調していました。

彼は例外的な存在ではなく、他にもプライベートエクイティ(PE)投資会社VIYマネジメントの創業者、アンドレイ・ヤクーニンもこう呼びかけています。

「ロシア人とロシア国家、ロシア政府を同一視しないよう呼び掛け、「現在の軍事行動に強く反対するロシア人は多く、私もその一人だ」と述べた」
(WSJ前傾)

もちろん彼らオルガリヒが急に良心に目覚めてウクライナを支援し始めたわけではなく、西側の制裁対象になれば倒産の憂き目にあうからです。
下写真の馬鹿げた成り金趣味のクルーザーは、オリガルヒの私有物でしたが、先月に制裁に合って差し押さえられてしました。
ヤクーニンの反プーチンの意思表示も、なんのことはないウクライナの人々を思ってではなく、御身大事だからです。
オリガルヒの資産凍結はすでに始まっており、彼らがマネーロンダリングに 使っていた英領ケイマン諸島などのタクスヘイブンでもビシビシと凍結されていますし、大戦中にはナチ幹部の資産すら預かっていたスイス銀行すらそれに協力するありさまです。

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CNN

「(CNN) ロシアによるウクライナ侵攻を受け欧州連合(EU)が制裁措置として打ち出したロシアやベラルーシの新興財閥(オリガルヒ)、関係企業などの資産の凍結は約300億ユーロ(約4兆500億円)相当に達したことが10日までにわかった。
EUの資産凍結・没収の作業班が発表した。声明によると、凍結した資産には船舶、ヘリコプター、不動産や美術品が含まれる。また、1960億ユーロ相当の商取引なども中止に追い込んだという」
(CNN4月10日)
CNN.co.jp : ロシア・ベラルーシの新興財閥、計4兆円の資産を凍結 EU制裁

オリガルヒというプーチンを支えた経済基盤そのものがすでに大きくグローバル経済の中に組み込まれており、当人とその家族はロシア国内に住んでいない者のほうが多いのです。
どうでもいいですが、プーチンが反グローバリズムの旗手だなんてヨタを言っている人がまだいますが、プーチンの基盤のオリガルヒはとうにグローバル金融の中にどっぷりと漬かって蓄財し、その富を吸い上げてきたのがプーチンです。
プーチンがオリガルヒに特権的、かつ独占的権益を与え、プーチンはその見返りとして24兆円とも噂される世界一の大富豪となりました。

それはさておき、ウクライナ戦争が始まると、オリガルヒは一斉に海外逃亡を開始しました。
我がちに逃げたようですが、次々に怪死しています。

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BBC

怪死したオリガルヒは、ウクライナ戦争前後からわずか3カ月間で6人にも及びます。

●ウクライナを侵略前後に怪死したオリガルヒたち
・レオニード・シュルマン (1/29死亡)
・アレクサンドル・チュリャコフ (2/25死亡)
・ミハイル・ワトフォート (2/28死亡)
・ヴァシリー・メルニコフ (3/24死亡)
・ウラジスラフ・アヴァエフ (4/18死亡)
セルゲイ・プロトセーニャ  (4/19死亡)
プーチンがウクライナを侵略して以来、亡くなったすべてのロシア寡頭支配者 - 全リスト (newsweek.com)

そもそも海外逃亡した理由は、プーチンに殺されるのを恐れたからだともいわれています。
プーチンは有名な毒殺マニアで、いかにもチェキストだったらしい陰湿なやり方です。
有名な暗殺事例では、ウラジミール・カラムルザやナバリヌイなどの民主化指導者、ジャーナリストのポリトコフスカヤ、FSBから裏切り者とされて英国に逃げていたアレクサンドル・レトビネンコなどのケースです。

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邪魔者は殺す プーチン大統領のデスノート|NEWSポストセブン (news-postseven.com)

「中でも記憶に残っているのが、チェチェン紛争でのロシア政府による残虐行為などを批判してきたノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が2004年、機内で出された紅茶を飲んで意識不明の重体になった事件。
このときは奇跡的に回復したが、わずか2年後の06年に自宅アパートのエレベーター内で射殺体で見つかった。くしくも、この日は10月7日で、プーチン大統領の誕生日。そのため「誕生日プレゼント」という見方が出た。このことも強烈に記憶に残る理由となった」
(朝日グローバル8月24日)
「裏切り者」が次々消えていく ロシア暗殺の歴史を振り返る:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

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一家心中か…ロシアの富豪とその家族の死が相次ぐ | 経済・IT | ABEMA TIMES

もっとも最近に起きた怪死事件の犠牲者は、セルゲイ・プロトセーニャです。

「ロシアメディアによると、19日、天然ガス大手のノバテク社の元副会長セルゲイ・プロトセーニャ氏がスペインのリゾート地で妻と娘とともに遺体で発見された。地元警察はプロトセーニャ氏が家族を殺害した後、自殺した可能性があると話しているという。
また、18日にはロシア有数の銀行のひとつガスプロムバンクの元副社長、ウラジスラフ・アバエフ氏がモスクワ市内の自宅で妻と娘とともに死亡した。モスクワの捜査当局は一家心中の可能性があると発表している」
(ANNニュース4月22日)

彼はスペインに逃げたところを殺されました。
プロトセーニャは、天然ガス生産2番手のノヴァテックの元トップマネージャーでしたが、一家で死んでいるのが発見されました。
その死に方はむごたらしく、別荘の庭で絞首刑にされており、その遺体のよこには斧とナイフがあったそうです。
また家族はベッドで刺し殺されていました。
スペイン警察は、ロシアにまきこまれるのを恐れてか、自殺と一家心中にして葬ってしまいましたが、露骨な見せしめです。

プロトセーニャが亡くなる数日前の4月18日には、天然ガス最大手のガスプロム系列銀行ガスプロムバンクのウラジスラフ・アヴァエフ副頭取も、モスクワの豪華マンションで妻と娘とともに遺体で発見されています。
一家心中としてモスクワ警察に処理さてしまいました。

また3月24日には、オリガルヒの富豪であったワシリー・メルニコフが、ニジニ・ノヴゴロド市の高級アパートで死亡しているのが発見されました。
これも妻と子供を刺し殺して自殺しているように見えるために、警察は一家心中として片づけたようです。

2月28日には、ミハイル・ワトフォードが英国サリーの自宅で遺体で発見されました。
ワトフォードは英語名で、実名はトルストシェヤ、1955年に当時のソ連のウクライナで生まれ、石油とガスで巨万の富を築いた男です。
ワトフォードもプロトセーニャと同じように絞首刑にされて死んでいました。

2月25日には、ガスプロム系列の企業安全保障会社の副所長をしていた、アレクサンドル・チュリャコフが、サンクトペテルブルク近くのコテージで死体で発見されています。
死に方はワトフォードやプロトセーニャと一緒の絞首刑でした。

侵略の前ですが、1月28日には、ガスプロムのトップマネージャーだったレオニード・シュルマンが、サンクトペテルブルクのコテージのバスルームで自殺しています。

これらの怪死事件は、戦争からわずか2カ月間に集中しており、しかもガスプロムなどの原油・LNG関連のオリガルヒやその関係者であったことから、なんらかの因果関係があると見られています。
現時点では決定的証拠は見つかっていません。
しかしこれはただの偶然でしょうか。

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キーウ独立広場に立つ女神ベレヒニア
独立広場・キエフ州 - うみごえ (umigoe.com)
ウクライナに平和と独立を

2022年4月25日 (月)

ロシア中銀総裁、経済制裁の結果は感じられ始めたばかりだ

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プーチンは何年でも戦争をやると言っています。もはや狂気の沙汰です。
プーチンに言わせると西側の制裁はまったく効いていない、平気の平左であるぞと言っていますが、現場はまったくそうは思っていないようです。
あいかわらずこんな怪気炎を吹き上げているようです。困ったやつだ。

「プーチン氏は月曜日、ロシア経済が本格的なパニックを避けたという事実を利用して、西側の懲罰的な制裁が彼を抑止しないという彼の主張を強化するために、全く異なるシナリオを予測した。
西側の罰則は、高官とのテレビテレビ会議で、「わが国の金融経済状況を急速に弱体化させ、市場のパニックを引き起こし、銀行システムの崩壊と店舗での商品の大規模な不足を引き起こす」ことを意図していると述べた。
「しかし、我々はすでに自信を持って、この対ロシア政策は失敗したと言うことができる」と彼は続けた。「経済電撃戦の戦略は失敗した。
プーチン氏は、現金不足、株式市場の荒廃、イケアのような人気のある西側の小売業者の閉鎖の恐怖に耐えなければならなかったロシア人を安心させようと、部分的に国内の聴衆に演説していました。彼は彼のメッセージを増幅する強力な国家プロパガンダマシンを持っている」
(ニューヨークタイムス4月18日)
https://www.nytimes.com/2022/04/18/world/europe/russian-economy-bleak-assessments.html

ところが、外貨払底にもかかわらず、ルーブル暴落をドル売りルーブル買いの為替操作で補修し、さらには政策金利を20%にするという西側経済当局ならまず死んでもやらないような超高金利政策をしてルーブル安を食い止めている真っ最中の当のロシア中央銀行総裁のエルヴィラ・ナビウリナは、プーチンとは違う意見のようです。

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エルヴィラ・ナビウリナ総裁
国家仮想通貨に「明白な必要性なし」:ロシア中央銀行総裁 | coindesk JAPAN | コインデスク・ジャパン

「ロシアの中央銀行総裁は月曜日、欧米経済制裁の結果は感じられ始めたばかりだと警告し、モスクワ市長は、ロシアの首都だけで20万人の雇用が危険にさらされていると述べ、経済制裁がロシア経済を不安定化させなかったというウラジーミル・V・プーチン大統領の主張を弱体化させる明確な認識を表明した。
二人の高官による厳しい評価は、ロシアが輸入品や部品の在庫が底をつき、急激な景気後退に直面しているという多くの専門家の予測と一致している」
(ニューヨークタイムス4月18日)
https://www.nytimes.com/2022/04/18/world/europe/russian-economy-bleak-assessments.html

実はナビウリナ総裁は、就任にあたって中銀側から警戒感をもたれていました。
なにせ彼女、元プーチンの大統領補佐官だった女性ですからね。
中銀側は、政府で唯一プーチンの意志が通らない伝統を誇ってきた中銀の独立性が危ういと考えたのです。
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復活するロシア市場、ナビウリナ中銀総裁の手腕に高い評価 - WSJ

「ロシア中銀はプーチン大統領の権限が及ばない最後の国家機関の一つだった。独立性を保ち、2008年の世界金融危機からその後に至るまで、一貫して通貨ルーブルを守ってきた。
しかし今、警戒感が漂い始めたようだ。大統領の子分であるナビウリナ氏が金融緩和を推進し、通貨の安定とインフレ抑制よりも低金利を優先するのではないかと」
(ロンター2013年3月14日)
ロシア中銀、新総裁の下でプーチン支配を免れるか | Reuters

実際、ナビウリナはこの戦争の後始末についても、プーチンの意向を優先したようです。
そのナビウリナですら、というのが今回の「もうロシアではモノが作れなくなる」発言の裏にはあります。

ところでNYTの記事に出てくる「ふたりの高官」のもうひとりとは、セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長のことです。
彼はプーチンの与党「統一ロシア」に属し、腹心とまでいわれた人物でした。

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セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長
モスクワ市長にプーチンの腹心ソビャーニンСобянин - 壺 齋 閑 話 (hix05.com)

ソビャーニンは、プーチンのパペットといってよいような人物だったようです。

「プーチンとソビャーニンの関係はそう旧いものではないが、プーチンのソビャーニンに対する信頼は非常に厚いといわれている。プーチンは2005年に、チュメニ州知事だったソビャーニンを大統領府の主席補佐官に迎え、2008年に首相になると、自分の分身として副首相に任命した」
(壺斉閑話2010年10月25日)

その人物ですから、モスクワだけで20万人の雇用が危険にさらされていると述べて、制裁が失敗したというプーチンの主張を否定しています。
実は、ウクライナ侵攻開始から3月22日までのわずか1カ月間に5~7万人が海外へと逃避し、さらにその後も7~10万人の人材流出が続くと推定されています。
しかも流出した人材の多くは、ロシア人の中でも優れて教育水準が高く、複数の言語を話すことが可能なテック製企業に勤務する若いエンジニア、ソフト開発や投資家層のようです。
彼らが、そう大きいとは言えないロシアの中間層を形成していました。

この階層は複数の言語に堪能なだけに、いち早くロシアの置かれた状況を察知して、ロシア人がビザなしで滞在できるアルメニア、ジョージア、トルコ、UAEなどの国々に脱出してしまったようです。
米国商務省によれば、2019年の時点で130万人以上のロシア人がテック企業に雇用されているといいますから、早くも1割が逃げ出したようです。
このような人材流出は歯止めがかからず、プーチンが戦争を長引かせれば長引かすほどロシアの金融業界を破綻に追い込むはずです。
しかしプーチンからすれば、この高い教育を受けた知識階層は、ウクライナ戦争当初に起きた反戦デモの主役でしたから、むしろ自分から逃げてくれることは嬉しいことでしょう。

下の写真は反戦デモで拘束された上品な女性ですが、どう見ても富裕階層に属しているように見えます。
このような人々までもが反戦を叫んだだけで根こそぎ逮捕されて口を封じられてしまう、そんな独裁者が支配するロシアを見限ったのです。

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ロシアで3500人超拘束 反戦デモ参加者 - 産経ニュース (sankei.com)

一方、ナビウリナ総裁は、この日のロシア議会に出席してこのようにも述べています。

「ロシアで製造されるすべての製品は輸入部品に依存する」とし、西側の輸出制裁でロシア企業はサプライチェーンを移すか、自ら部品を調達するなどの対策を講じなければならないと述べ、また、西側の制裁で6000億ドル(約77兆円)に達する外貨保有高と金の半分が凍結された状態であることを認めた。
NYTはプーチン大統領の楽観的予想とは相反する予測が方々から出ているとし、国際金融機関らは今年のロシア経済が10~15%縮小すると予想していると伝え、ロシア中央銀行は、消費財価格が昨年より16.7%上昇したと述べた」
(NYT前掲)

中銀総裁が、このまま推移すれば、ロシアではモノが作れなくなると言うのです。
制裁のためにロシア企業はサプライチェーンを外国に移すしかなくなり、すでに多くの企業が部品調達ができなくなって操業が停止しかけています。

ロシア経済は、発展途上国タイプのモノカルサャーです。
国家経済は、原油、LNG、木材、金属などの資源の輸出によって成り立っています。
その中で唯一世界と対等の競争力を持つ製造業は軍需産業です。
軍需産業はそこそこの性能のものを西側より格安で売って世界第2位に上り詰めた、ワン&オンリーの輸出産業なのです。
ミグとスホーイのブランドを持つユナイテッド・エアクラフト社、戦車ならロスティック社、通信機器のバイカルエレクロニクス社などがそうです。

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ロシアSu-34戦闘機の組み立ての様子が公開_中国網_日本語 (china.org.cn)

戦車や戦闘機産業は、ロシアの唯一の輸出工業製品であり、かつ世界の大国としての威信はこの軍事力に依存していました。
世界に大量の武器類を輸出することで、その国を政治的に従属させる力にしていました。
カネ儲けできるうえに世界の大国ヅラできるて、一粒で二度おいしい、これが武器輸出なのです。

ロシアのプーチン大統領が17日、今年の武器輸出総額が過去最高の$14B以上となる見通しだと 述べた。 また今年の新規契約が$15B超であることも明らかにした。
 ロシアは米国に次ぐ世界第二位の武器輸出国で、近年は増加傾向にある。 主な取引先には旧ソ連時代からの取引相手であるインドのほか、中 国軍の台頭を警戒するベトナムなど東南アジア諸国が含まれているという」
(Report: Russia surges in global arms sales 2014年1月31日)
ロシア軍事産業 (ssri-j.com)

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アジア太平洋の武器輸出国は中国がトップ 国内軍需産業の基盤を強化 地域の軍拡レースに拍車(木村正人)

この戦争で多くのアジアの国々が国連人権委員会追放に対して棄権、ないしは反対に回ったのは、軍事体系の基礎をロシアに握られているからです。
逆らうと、自分の国の戦闘機や戦車が動かなくなるかもしれませんからね。

ところがロシアの軍事産業の最大の弱点は内製率が低く、使用する工作機械や電子部品などの大部分を外国製品に頼ってきたことです。
これが今、制裁でこれらの輸入が停止に追い込まれました。
特にロシアの軍事産業にとって致命的な制裁は、半導体の禁輸措置でした。
半導体を製造できる国は、世界でそう多くはありません。米国、台湾、韓国、EU、日本で95%を占め、そこにわずかに中国が食い込むていどです。

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台湾が月産445万枚でトップ国・地域別半導体生産能力 | 電波新聞デジタル (dempa-digital.com)

中国は輸出してくれそうですが、量的に圧倒的に不足しているうえに、セカンダリーサンクション(二次制裁)を恐れていつまで続くかわかりません。

そうなると、現代の戦闘機や戦車は電子部品の塊ですから、半導体がなければ戦闘機も戦車も動かない、修理すらできないことになります。
実際、ウクライナで故障した戦車や戦闘機などを修理するパーツが切れてしまい、戦車は半世紀以上前のポンコツを引っ張りだして使わせている有り様のようです。
航空機も飛ぶものが希少となり、最新鋭ステルス戦闘機をつまらない爆撃に投入しているほどです。

ロシアの造船業も大ピンチで、同じように資金が枯渇した上に部品不足で船舶の建造や修理を継続することができない状態であるようです。
ウラジオストクの国営造船所は、部品不足のために350億ルーブル相当のタンカー2隻とミサイル艇2隻という政府発注を完了することができず、救済を申し出ました。
とうぜん、船舶の保守・修理もできず、大打撃を食った黒海艦隊の修理・補給は手つかずのようです。
つまり陸海空の軍需産業が、ガン首並べて滅亡寸前となりそうです。
そりゃそうでしょうとも。あまりの高利でカネが借りられないから運転資金がショート、エンジニアが海外に逃げて技術部門がショート、制裁で部品が禁輸で製造部門がショート、これでどうやってモノ作れっつうんだ、というところです。
しかも戦争が仮に終わっても、制裁は終了することなく、延々とどこまで続くかわからないのですからね。

そうでなくても、ロシア製武器類が笑劇的にボンコツなことがバレたせいもあって、ロシア製武器に頼ってきた諸国が一斉にロシア離れするのは必至と予測されています。
すると、世界の軍事地図が大きく塗り替わることになります。
このような状況を直視せずに、目先だけの政策をとらせるという頭のネジのはずれたことをして、いっそう企業を追い詰めているのが、プーチンというイケイケドンドンの馬鹿男です。

なお、今後ですが、西側はこのように予測しています。

「ロシア経済は今のところ壊滅的な崩壊を避けているが、経済の痛みをさらに増大させるような制裁が進行中だ。欧州連合(EU)はロシア産石油の輸入を抑制する計画を策定中だ。そして、ジャネット・L・イエレン財務長官は、今週ワシントンで開催される世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合で、アメリカの同盟国にロシアに対する経済的圧力を強化するよう呼びかけると予想されている、と財務省関係者は言う。
ロシア経済の縮小に関する国際金融機関の推計は10〜15%の範囲である。
月曜日、ロシアの中央銀行はウェブサイトで、消費者物価は平均して1年前より16.7%高かったと述べた。
アメリカ財務省のウォーリー・アデエモ副長官は、月曜日の経済会議で、ロシアのインフレは急上昇し、輸入は急落し、クレムリンは"ロシア経済を支え、ウクライナ侵略を追求し、将来、権力を投射する資源が少なくなる"と予測した」
(NYT前掲)

よく制裁が効いていないという人がいますが、まだ始まったばかりなのです。
まさにロシア中銀総裁が言うように、「欧米経済制裁の結果は感じられ始めたばかり」なことをお忘れなく。
地獄の釜の蓋は開いたばかりなのです。

 

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ウェッジ5月号表紙より
ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月24日 (日)

日曜写真館 菜の花の寒がる雨の降りにけり

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息せるや菜の花明り片頬に 西東三鬼

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菜の花のたましい遊ふ胡蝶かな 政岡子規 

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すべり合ふ少女の言葉若葉風 林翔

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きらきらと若葉に光る午時の風 政岡子規

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朝かげす蕗の葉にはねみづすまし 飯田蛇笏

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蕗の傘三人を容れぬ朝曇 水原秋櫻子 

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孤客われにコロボックルの蕗の雨 林翔

 

2022年4月23日 (土)

宜野湾くれない丸氏寄稿 照屋寛徳氏のこと

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                                                    照屋寛徳氏のこと
                                                                                 宜野湾くれない丸

衆議院議員の照屋寛徳氏が15日に亡くなられました(享年76)。
18日の告別式には保革を超え2000人の方々が訪れたとの報道がされております。
ご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

ここ数日「ウチナーの未来はウチナンチュが決める!」という言葉が(こっちの)メデァイで流れてます。
寛徳さんは、国政選挙のたびごとにこの言葉をキャッチフレーズとして繰り返し発言してました。
でも私はこのフレーズを聞くたびに何だか違和感を感じてました。

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【評伝・照屋寛徳さん】護憲と平和を論じたウチナー政治家 沖縄の指標、示し続けた - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト (ryukyushimpo.jp)

いつ頃からこのフレーズを耳にしたのかは記憶は定かでありませんが、いつぞや、選挙期間中に寛徳さんの選挙事務所へ電話を入れて質問をしたことがありました。
「僕は2区の有権者で奄美出身なんですが、寛徳さんの言うウチナンチュとは誰のことなんでしょうか?そしてそれはどんな定義でしょうか?」と。
今にして思えば、なんだかポリコレ的な感じですが、自分としてはそんな刺々しい気持ちは全くなく、純粋に「どう考えているのだろう?」というものからでした。

国政の場であれほど政権与党へ対して鋭い質問をしている寛徳さんですので、このフレーズにも寛徳さんなりの意味と思いがあるのではなかろうかと。
あるいはただ単にキャッチフレーズなだけなのかもしれない。いずれにせよ本意を確認したかったのです。
事務所の人は面倒くさいな~、と思ってたかもしれませんが、私(有権者)としては候補者はどう認識しているのか?を知りたかったからなのです。
選挙のたびごとに問い合わせをしました。まずまず納得のいく返答は一度ももらえたことはありませんでした。
ましてやそっけない対応をされたこともありました。そんなこともあって、寛徳さん自身のホームページへ問い合わせメールをしたり、事務所へハガキでお問合せをしたこともありますが、返信は全くありませんでした。
なんだかガッカリした憶えがあります。

「僕は奄美大島生まれ育ちで、つまり出身は鹿児島県なんです。両親も奄美出身です。生粋の奄美です。で、在沖数十年になります。僕は沖縄の人たちのことを身近に、親戚とでもいうか、そんな風に感じてます。
寛徳さん事務所としては僕はウチナンチュのカテゴリーに入っているんでしょうか?僕にはウチナーの未来を語る事は、決めることは出来るのでしょうか?そうでは無いのでしょうか?」
とまぁ、こんな意地悪な言い方をしたこともありました。

その時電話口で対応された選挙事務所の方は、返答に困ってました。候補者のキャッチフレーズに使う言葉の意味を有権者から問われて、その問いに満足な返答を言えない選挙事務所のスタッフ・・・とは?
更に「なんだか私はこの言葉に『排他的』な印象を受けます」とも伝えました。
何も嫌がらせをしようとは思ってませんが、それまで選挙のたびごとに同じ問い合わせをしているのだから、少しくらいは有権者の言葉に耳を傾けてもいいのでは?という気持ちがありました。

「寛徳さんの所属する政党は、多様性の尊重を積極的に発信されてます。であるならば何故・・・」と、そこまでは言いませんでしたが、そんな思いが渦をまいてました。
「寛徳さんは、自身の言うウチナンチュの定義も有権者へ示さず」に、何年もこのフレーズを使い続ける。
私からのこのような「問い合わせ」は寛徳さん自身へ伝わっているのだろうか?
少なくとも事務所としては「問題意識」していないことが分かりました。
熱くも鋭い気骨な寛徳さんの国会答弁などを見ていると、再びガッカリした記憶があります。
ここ最近では党大会席上で「福島瑞穂党首批判」をする寛徳さんのニュース映像を目にすることがありました。
なんだかため息が出ました。批判するのはいいけれど、「それ、遅すぎるんじゃない?・・・」。

あるとき知人のSNS記事にこう書かれているのを目にしました。
「このキャッチフレーズは、これは対抗馬へ対してのものであろう」と。
あー、そうか、そうか成る程、成る程ね。ストーンと腑に落ちました。
「『東京の未来は江戸っ子が決める』と言ってるようなもんだ」という事も書かれてました。
なんだか安い代理店の付け焼刃的な仕事の匂いがしました。そしてそれに踊らされる我々有権者。
今度は思わず苦笑してしまいました。

沖縄は来月15日本土復帰50周年を迎えます。
同郷の先輩が彼のFB上に「奄美群島が本土へ復帰した後の沖縄県内における奄美出身者へ対しての蔑視(差別)」記事をUPしてました。復帰50年を祝うと同時にこのようなことがあった事実も改めて認識を共有せねば、と。
そのようなことをしっかりと認識共有しているのであれば、上記のようなフレーズとはまた違う言葉でアピールしているんじゃないのか?と感じてます。
あのフレーズはあくまで選挙選での「対抗馬」を意識した言葉であって、決して「有権者を前向きにする言葉」ではないと私は感じてます。
もっと言えば「煽り言葉」です。まぁ、選挙でとかく使われるネガキャン的なフレーズと見ればそれまでですが、何だかもっと「将来へ向けたワクワクする言葉」みたいなものはなかったのか・・・・
何も目くじらをたてて言うわけでもないのですが、今は少し残念な気持ちがしております。

この辺に沖縄社会の根底に渦巻くひとつの問題があるのかもしれません。
世代としての問題であるのかもしれません。

ちなみに私は「本籍は奄美、住民票は沖縄、国籍は日本人」という帰属で、意識としては「奄美」が一番強いです。

                                                                                                                     (了)

2022年4月22日 (金)

アゾフスタリ要塞陥落せず

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マウリポリで驚異的な抵抗が続いています。
西側軍事筋ですら、毎日のように陥落近しと言っているのに頑として落ちないのです。
いまや彼らをして、マウリポリの抵抗は謎だとまで言わしめています。

その理由はひとつには、マウリポリがロシア語圏地域の多い東部で数少ないウクライナ語の街であったことです。
彼らは去年からのロシア軍の演習と称する東部国境での挑発を見て、必ずマウリポリを狙ってくると確信していたようです。
政府もそれをわかっていて、装備や兵員の集積を行っていました。

そしてアゾフ連隊という地場の猛者がマウリポリにはいました。
彼らは2014年からずっと戦い続けているのです。
彼らの獅子奮迅の戦いぶりは世界に伝えられ、彼らに対する悪宣伝を完全に打ち消しました。

今回、さまざまな情報が乱れ飛びましたが(全面投降というのはロシア側が流した偽情報のようですが)、実際は港湾地区とアゾフマシ工場で抵抗していた海軍歩兵35旅団の残存部隊は、アゾフ連隊(国家親衛隊第12特務旅団) とアブフスタリ製鉄所一カ所に合流したようです。
残存兵は約500名、それに一般市民も数百人いると推定されています。

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BBC

当初、これらの部隊は2000人規模だったはずですから、その4分の3を失ったと考えられます。
通常3割の損害で「全滅」と判定されますから、まさに死を決した兵と化しています。
負け癖がついて一般市民を殺すことしかできないロシア兵が、なぜ攻めあぐねているのか、それはウクライナ兵が死兵だからです。

ではなぜ、彼らがかくも勇敢に自らの生命を省みず戦い続けているのでしょうか。
それはマウリポリで戦いを継続することによって、ロシア軍包囲部隊を拘置し、足止めすることでドネツク戦線に合流させないためです。
彼らが1日耐えれば、東部に世界からの支援物資がより多く到着し、1日持久すればウクライナ軍の集合もより進んで、いっそう強固にロシア軍との決戦に備えることが可能となるからです。

失笑することには、ロシア軍は自分がでっち上げた「アゾフ大隊」というネオナチの幻影に自らが怯えてしまいました。
彼らは侵略の口実にアゾフ大隊を使い、彼らをナチのように残虐非道なならず者たちとして大宣伝したために、彼らを過剰に恐怖することになってしまいました。

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Leaders of "Azov" Denis Prokopenko and 36th OBRMP Serhiy Volynsky
https://www.pravda.com.ua/rus/news/2022/04/20/7340941/

捨て石と呼びたいのなら、どうぞそうお呼び下さい。
彼らは昂然と頭を上げて、われわれはウクライナの捨て石になることを志願したのだ、と答えるでしょう。
かつての沖縄や硫黄島で戦った兵士たちが、そうであったように。

彼らが籠もった最後の砦がアゾフスタル製鉄所でした。
これはまるで映画「バイオハザード」のアンブレラ社のような奇怪な構造物です。
「産経抄」はこのように書いています。

「ウクライナに侵攻するロシア軍は、東部地域で攻勢を強めている。アゾフ海に面した要衝マリウポリでは、ウクライナ軍や武装組織「アゾフ大隊」の将兵が市内のアゾフスタリ製鉄所に立てこもっている。東京ドーム約235個分という広大な敷地に平時には1万人以上が働いていた欧州最大級の製鉄所である。
▼第二次大戦中に一時ナチス・ドイツに占領された教訓から、ソ連は地下に要塞を建設した。いくつもの施設はトンネルで結ばれ、ミサイル攻撃にも耐えられるほど頑丈な構造である。製鉄所を包囲するロシア軍と親露派の武装勢力は攻めあぐね、投降を求めてきた」
(産経4月21日)

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マリウポリのアゾブスタル工場 - 9GAG

なんと地下6層まで拡がっており、そこに拡がる無数の部屋は迷路のように互いに連結されているようです。
そして多くの地表にでる隠された出口があり、そこから出没するウクライナ兵のゲリラ攻撃に悩まされねばなりません。
ロシア軍はこれらの真っ暗な地下室をひとつひとつ潰していかねば陥落させたと言えないのですから、やや気の毒になります。
いくらモスクワがなんどもマウリポリを陥落させたといおうと、この抵抗が続く限りそれはありえないのです。

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ゼレンスキーは「ハリコフ方面、ドンバス、ドニプロ地方でのロシア軍による砲撃の激しさが著しく増している」と主張し、ロシアが住宅や市民を標的にしていると非難しています。
さらに、こうも述べています。

「これは、何世代にもわたってロシア国家を絶対悪の根源としてマークするような卑怯な行為だ」

ゼレンスキーが非人道的だと非難するのは、ロシア軍側のマリウポリの降伏勧告が一般市民にも向けられていることです。
非戦闘員である一般市民には「降伏勧告」ではなく、救助と避難であるべきです。
シリアでドゥボルニコフがやったのは、降伏勧告をして、それを拒否した市民までをも全員虐殺の対象とすることでした。
同じ人物が同じような状況で「降伏勧告」をだしていることにゾッとします。
ドゥボルニコフは手を焼くと思えば、躊躇なく無差別爆撃と化学兵器を使う男だからです。
日本でいえば川崎にあたるような活気のある美しい街だったマウリポリは、すでにすべてが焼き尽くされて平坦な瓦礫の土地になってしまいました。
この後、ドゥボルニコフが化学兵器に手をつけないことを祈ります。

とりあえずマウリポリから「人道回廊」が開かれたようですが、用意されたバスには禍々しい「Z」の文字がペイントされ、しかもわずか4台でした。
数千人を退避させるのにわずか4台とは!これもただのロシアのプロパガンダです。
西側メディアにこれを取材させながら、
避難する真っ最中に平気で砲撃を加えているのですから、ほんとうにベタな連中です。
市民退避させるという意味は、停戦状態が完全に守られるのが大前提です。
それすら守れないなら、国際停戦監視団を入れるべきです。

「米シンクタンク、ウッドロウ・ウィルソン国際センターのフェロー、カミル・ガレエフは3月6日のツイッターで、ロシアが掲げる「Z」はロシア語の「Za pobedy(勝利のために)」や「Zapad(西)」を表しているという解釈もあると述べた。
ガレエフはそのうえで、解釈にかかわらず、Zは「新しいロシアのイデオロギーと国民意識の象徴」になっており、不吉な含みを持つと続けた。「簡単に言えば、完全なファシストに近づいているということだ(To put it simply, it's going full fascist)」 
(ニューズウィーク米国版4月15日)
https://www.newsweek.com/russia-ukraine-z-vremya-symbol-may-day-victory-1698904

米国のロシアウォチャーは、「ロシアは特大サイズの北朝鮮になってしまった」(Russia is basically an oversized North Korea, but worse.)と評しています 。まことにそのとおりです。
いやまだしも正恩のほうが、他国に攻め込む力がないいぶんだけよほどマシというものです。

なおロシア軍は製鉄所への突入を断念して、勝手に勝利を宣言を出しました。

「露大統領府によると、ショイグ氏は、ウクライナ軍と武装組織「アゾフ大隊」の兵士らが最後の拠点とするアゾフスタリ製鉄所について、2000人以上が残っているが、周辺を完全に「封鎖」していると語った。3月11日の時点でマリウポリに約8100人いたウクライナ兵のうち4000人以上を殺害し、1478人が降伏したと説明した。
 プーチン氏は軍事作戦の「成功」を宣言した上で、製鉄所への突入は「現実的ではない」と述べ、中止を命じた。「ハエも飛ばさぬように」との表現で封鎖の継続を指示し、ウクライナ兵に改めて投降を求めた」
(読売4月21日)
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12213-1591766/

「現実的」ね。キーウ敗退は信頼醸成と言い繕い、「モスクワ」撃沈は事故だと言い、ブチャ大虐殺はウクライナの仕業だと言い、マウリポリではまだ守備隊が健在なのにかかわらず「勝利した」と言い繕う。
戦争中だとはいえ、なんと言葉が軽い人たちなんでしょうか。

今回も弱兵の尻をいくら叩いても突入を拒否するは、司令部からはいつまで手こずっているんだ早くドネツク方面に集合しろとせっつかれたので、それを「封鎖継続」と言い繕っているだけのことです。
そう言えば、そもそもこの侵略戦争は「特別軍事作戦」で、人道支援を目的とした「平和維持軍」でしたっけね(笑)。
初めから嘘とプロパガンダばかり。こんなことばかり言っているから自分でも真実と嘘の境がわからなくなってしまったようです。
この後も製鉄所部隊はマウリポリ守備隊が健在であることを世界に発信し続けるわけですから、避難民救出の声と守備隊を称賛する声は高まる一方です。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月21日 (木)

ウクライナ東部に迫るロシア軍

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キーウからの敗退、ブチャ大虐殺、そのうえ巡洋艦「モスクワ」までが沈められるという弱り目に祟り目のロシアが、最後の反攻に出ました。
それが東部ドネツク戦線です。
ここでロシアが敗北すると、もはやロシア軍はもたないでしょう。

プーチンは明らかに焦っています。
戦争初頭でウクライナを数日間で制圧するという目論見がはずれ、ロシア軍は1カ月以上経ってもいまだにウクライナ全土の掌握はおろか首都キエフを包囲することすら放棄しました。
こうした膠着状態が続いたために、プーチンは当初のドニエプル河以西の支配という目的を見直さざるをえなくなりました。
このまま膠着状態を続ければ、シロビキが離反し、ロシア国内で反政府勢力の動きがより活発化する可能性がでたからです。

いうまでもなく、欧米の制裁は効きすぎるほど効いています。
プーチンは効いていないぞ、ルーブルは戻したと豪語しているようですが、バカですか。
そりゃ中央銀行が政策金利を20%にすれば、一時的にルーブルの為替は維持できますが、その副反応は凄まじいはずです。
なぜなら、超高金利政策は間違いなくロシアの企業活動を直撃するはずですから。

今の日本に置き換えれば、日本はゼロ金利ですが、いきなり20%にしたらどうなりますか、ロシアでも同じ現象が起きるでしょう。
市中銀行の金利は連動しますから、企業はカネを銀行から借りられなくなり、設備投資はおろか、原材料や人件費をまかなう運転資金も出なくなります。
たちまち倒産へ向けて直滑降ですから、大量の失業者が市中に溢れることになります。
こういう下策中の下策をしてしまったら、インフレが進行下中での不況というスタグフレーションに突入するでしょう。
プーチンが経済のイロハを知らないからこうなります。

といっても、事実上「選挙なき国」ですから、国民がどうなろうと無関係です。
政権が揺らぐのは宮廷政治に敗北し、命を狙われるようになった時だけです。
したがって、プーチンの頭にあるのは唯一自身のメンツです。
メンツだけで戦争方針を決めるのかとお思いでしょうが、独裁国家は自身の神格化が崩壊すればオシマイなのです。
ロシア、北朝鮮、中国、揃って独裁者たちはメンツの塊です。

プーチンは、なんとしてでも5月9日に迫る対独戦勝利記念日と、その前段のロシア正教会(露正教会はプーチンの右腕ですから)の重要な行事である4月26日の復活祭までに、ドネツク州とルハンスク州の領土をオレに差し出せと、「シリアの虐殺者」ことアレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍に厳命したはずです。
ロシア軍がこのドネツク戦線で勝利すれば、東部2州を完全制圧した、当初の戦略目標は達成した、としてここでウクライナに停戦を呼びかける口実になります。
また勝てば、北上して支配地域を拡大することも可能だと西側軍事筋は見ています。

かねてからロシアには「ノボロシア」(新しいロシア)という構想があります。
これは親露分離派(自称「ドネツク人民共和国)がドネツク州の一部を支配するドンバスとルガンスクを更に西に伸ばし、マウリポリ、オデーサ、クリミア一帯を支配しようというプランでした。
これはウクライナ領の約3分の1に相当します。

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AFP

「ノボロシア」自体は帝政ロシアの18世紀からあるもので、黒海、アゾフ海沿岸のロシア人入植地域を指します。
これを現代に蘇らせたのがプーチンです。

「クリミアの併合の説明のなかで、クレムリンは「歴史的な権利」(半島は18世紀末にはじめてロシアが征服しただけではあるが)と「同胞の保護」(同胞とは、ロシアの外でロシア語を話す人々を指すのに通常使われる言葉に過ぎないが)といった論拠を持ち出した。
ドンバスへの介入以前、プーチン大統領は公に、現在ウクライナ南東部の領土を指す名前である「ノヴォロシア」(新しいロシア)について話した」(ニューズウィーク4月12日)
2014年、プーチンが進めた「ノヴォロシア」計画――ウクライナ・アイデンティティ(下)(ニューズウィーク日本版)

国境が確定した現代では、露骨なまでの領土拡張野望ですが、プーチンはこれを目標にしていると考えられます。
プーチンマニアの人たちは、この戦争が米国のネオコンが仕組んだものだとか、NATO東進が追いやったのだということを言う者がいますが(いいかげんにしろ)、ウクライナ侵略とはドゥーギンの存在といい、このノボロシアといい、かねてからあったプーチンの構想を現実化したものにすぎないのです。

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ロシア軍、ウクライナ東部総攻撃へ 総司令官に「シリアの虐殺者」任命 ゼレンスキー大統領「これまで以上に備えている」 5・9「戦勝記念日」見据えzakzak

「ロシアはウクライナ東部を制圧した場合、西部への進軍を再度試みる可能性がある。黒海沿岸でウクライナ政府が依然支配している唯一の港オデーサが奪取されれば、ウクライナは海のない国に変わる。ロシア軍はドニエプル川沿いの南東部の都市ドニプロの掌握を試みる可能性があるほか、キーウでの攻撃を再開する可能性もある。(略)
「米軍の元欧州総司令官で退役中将のベン・ホッジス氏は「全く別の新しい戦争だと言って、ほぼ差し支えないだろう」と指摘。「重火力攻撃による機甲部隊間の古典的な」戦闘を予想した。
 西側諸国の当局者や軍事専門家らによれば、ロシアの主な狙いは、ウクライナ南東部ドンバス地方のロシア支配地域に向き合う形で配置されているウクライナの精鋭部隊を孤立させることだという。
この目的のため、ロシア軍はハルキウ付近から南下している。またアゾフ海に面する港湾都市のマリウポリを完全に掌握した場合には、そこから北上するとみられている」
(ウォールストリートジャーナル4月18日)
https://jp.wsj.com/articles/russia-and-ukraine-build-forces-for-looming-battles-in-east-11650247110

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朝日
https://www.asahi.com/articles/ASQ4N5S9VQ4MUHBI01L.html

ここでホッジス元中将が言っている「まったく新しい別の戦争」とは、今までのようにウクライナ軍の歩兵対戦車ミサイルに翻弄され、補給車列をズタズタにされるという形から、開けた土地で機甲師団同士が激突する大戦中の独ソ戦に何回かあった正面戦を想定しているようです。
ロシア軍は、司令官が交代したためもあるのか、忘れていたロシア軍らしい戦法を踏襲し始めました。
砲弾を昼夜分かたず降り注ぎ、すでに14時間連続で砲撃を加えられているというウクライナ現地軍の通信もあるようです。
ロシア軍はここを先途と、持てる火力を、小は迫撃砲から大砲、そして多連装ロケットランチャー、あるいは地上攻撃機による空爆と手を替え品を替えて撃ちまくっているようです。
今回はロシア軍は、ロシア領に近いせいもあって補給を整え武器弾薬をかき集めて集中投入しているのでしょう。

「元英軍装甲歩兵大隊司令官で、現在はロンドンのシンクタンク「国際戦略研究所」に所属するベン・バリー氏は「ロシアは指揮統制の改善に着手したようだ」と指摘、「ロシアが兵站問題を解決したかどうかは分からない」と語った。
 理論上は多くの要因がロシアにとって有利となっているものの、ロシアは開戦後の数週間、ウクライナより高性能の武器と大規模な兵力を活用するのに苦労していた。平地で掃討作戦を行うには部隊同士の連携が必要となるが、ロシア軍はこれまで必ずしも連携していない。ただ、平らな地形のおかげで、ウクライナ軍部隊を包囲し、防衛線を突破するための大規模な部隊を投入する機会は得られるだろう」
(WSJ前掲)

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航空万能論

もちろんゼレンスキーはこういう構えでロシアが来ることはとうにお見通しでしたから、この1週間の発言の中でロシア軍は「戦略を変えつつある。東部でさらに攻勢を強めるため戦力を増強している」との見方を示した上で、西側に大砲、多連装ロケット、戦車、歩兵戦闘車などを中心とした支援を要請していました。
英米のみならず、チェコはウクライナ軍の戦車の修理を引き受け、フィンランドも追加の軍事援助を送り、ルーマニアさえも軍事支援のための法改正を急いでいます。まさに全欧の助けがウクライナを支えているのです。
この支援が間に合うか間に合わないかはギリギリの線で、まだその首尾はわかりません。

ゼレンスキーはこの東部戦線に「我々がもつ最高の戦闘部隊を投入する」とのべました。
これはドンバス方面に配備されている5万人規模と見られる10個旅団相当のことで、装備も優先的に割り当てられ、兵員の質ももっとも高い練度だと言われている精鋭部隊です。
これが破れる事態になると、今度はウクライナの方に戦争継続する力がなくなりかねません。

いずれにしてもウクライナ軍が、まともにガチンコの戦車戦に乗るとは思えません。
そのような戦い方をすれば、ロシアの土俵に乗ることになりますし、開けた地形とは言っても実際は雪解けによる泥濘によって、50トン以上もある戦車が道路以外の平野部を踏破することが困難だからです。
ウクライナ軍は劣勢な戦車部隊を温存しつつ、道路上に列をなしているロシア戦車部隊を側面からジャベリンなどで破壊していけばよいからです。


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ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年4月20日 (水)

プーチンのラスプーチン・アレクサンドル・ドゥーギンという怪物

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ロシアという国が奇々怪々なカオスに見えるのは、国家としての態をなしていないからです。
長年ロシアをウォッチしてきた畔蒜泰助(あびるたいすけ)氏はこのように述べています。


「あるロシアの著名な専門家が「ロシアはまだ本当の国家になり切っていない、プーチンレジームの国だ」と言いました。それで「国家とレジームの違いは何ですか」と聞くと「最終的に国民に奉仕するのが国家。一方で仲間内に奉仕するのがレジームだ」と。ロシアは、唯一プーチンという存在に国の正統性を依存しているんです」
(畔蒜泰助 フォーサイト4月12日)
https://www.fsight.jp/articles/-/48788

オルガルヒ(新興財閥)とシロビッキと呼ばれるFSB(連邦保安)と軍がプーチンというカリスマを担いで作っているのが、このロシアという国だというのです。
ですから、プーチンはオルガルヒと癒着し、シロビッキを手足に使う永遠の独裁者であり、三権分立などという概念そのものがない前近代的ともなんともつかない異様な国です。
到底近代的国家とはいえず、極右民族主義に染まったマフィアらが結託して国のふりをしているカルト国家としての「プーチン・レジーム」なのです。

さて、このウクライナ戦争はいかなる結果になるにせよ、いずれ終わります。
どのような終りかたにせよ、ひとつだけはっきりしているのは、ウラジミール・プーチンという男が「21世紀が生んだ新しいヒトラー」として虐殺者の殿堂に列せられることです。

かつてのヒトラードイツが、突撃隊と親衛隊という私的暴力を手足にして簒奪した国家がそのまま独裁国家に成長したように、ロシアは「ロシア民族」「ロシア国家」と言いつつただの私的なクラスターが国家を詐称しているにすぎないのです。
グレンコ・アンドリー氏が「自由主義陣営は、ロシアが豊かになれば変わるだろうと見ていたが変わらなかった。むしろロシアは凶暴になった」と言っていますが、まさにそのとおりです。

プーチン以降、原油で国は多少豊かになりましたが、民主主義不毛の地であり続けました。
ロシア国民は市民的自由を奪われた、ただの「ロシアという有機体の一部」でした。
プーチンのイデオローグであるイワン・イリンはこのように述べています。


「「選挙は独裁者に従属の意思表示をし、国民を団結させる儀式でしかなく、投票は公開かつ記名で行なわれるべきだ」
 イリインは、祖国(ロシア)とは生き物であり、「自然と精神の有機体」であり、「エデンの園にいる現在を持たない動物」だと考えた。細胞が肉体に属するかどうかを決めるのは細胞ではないのだから、ロシアという有機体に誰が属するかは個人が決めることではなかった。こうしてウクライナは、「ウクライナ人」がなにをいおうとも、ロシアという有機体の一部とされた」
(橘玲2022年4月7日)
ウクライナ侵攻の背景にあるプーチンの「ロシア・ファシズム」思想。ロシアは巨大な「カルト国家」だった橘玲の日々刻々

 豊かになれば民主的になるというのは、決して歴史法則ではないのです。
オバマは中国でも同じ誤解をして中華帝国の勃興を手伝ってしまいましたが、プーチン帝国の勃興をも許していたのです。

したがって、今回のウクライナ戦争の原因を解きあかすには、プーチンの考えを読んでいく必要があります。
よく安易にプーチンは精神を病んでいる、病気なのだという者がいますが、それは自分のプーチン理解がまちがっていたことの弁解にすぎません。
精神を病んでいるからウクライナ戦争を始めたのではなく、この男のユーラシア主義の延長に今の地獄があるのです。
そうでなくては、プーチンという男を駆り立てていたものはなんだったのか、どうしてあれほどまでに病的な残忍なのかわからないでしょう。

そのように考えると、プーチンに絶大な影響を与えた二人の人物にいきあたります。
ひとりは、アレクサンドル・ドゥーギン、今ひとりはイワン・イリンという人物です。
このふたりはロシアの極右民族主義者で、全体主義的世界観の持ち主です。

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アレクサンドル・ドゥーギン
プーチンも洗脳?超保守主義学者の危険すぎる思想  WEDGE Infinity

アレクサンドル・ドゥーギンは、 モスクワ大学教授として極端なロシア民族主義を鼓吹する極右哲学者で、長年にわたってクレムリンの政策に影響を与えてきました。
たとえば、ドゥーギンは、ロシアの反西欧的な「ユーラシア運動」の創始者で、2014年、ロシアがクリミアに侵攻した際に、プーチンにウクライナ東部への介入を促したのは、この人物だとされています。

このクリミア侵略とそれに続く東部2州の「人民共和国」に際しても、オバマは許容してしまいました。
今にして思えば、これがヒトラーのズデーテン地方侵攻に相当したのですが。


「ヨーロッパ(とりわけドイツ)はロシアにエネルギー供給を依存し、中国の台頭に危機感を募らせたオバマ政権もロシアとの対立を望まなかった。
「クリミアはソ連時代の地方行政区の都合でウクライナに所属することになっただけ」「ドンバス地方を占拠したのは民兵でロシア軍は関与していない」などの主張を受け入れ、「ロシアはそんなに悪くない」とすることは、誰にとっても都合がよかったのだ」
(橘前掲)

このドゥーギンのユーラシア思想は、2011年にプーチンが「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ロシアの公的なイデオロギーとなってしまいました。

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朝日GLOBE+

「ユーラシア共同体」という名称は、彼らが敵対視するヨーロッパ共同体(EU)の模倣です。


「従来も「ユーラシア経済共同体」という枠組みはあったのですが、プーチンが「共同体」よりもさらに踏み込んだ「連合」という言葉を使ったのは、欧州連合(EU)に比肩する地域統合体を築いていくという意欲の表れでした。
論文の中にあった「我々が提案しているのは、現代世界の極の一つとなりうる、しかもヨーロッパとダイナミックなアジア太平洋地域の効果的な『結節点』の役割を果たせるような、強力な超国家的統合モデルである」といったくだりには、プーチンの強い決意がうかがえました 」
(服部倫卓2020年1月28日朝日GLOBE+)
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)


ロシアを提唱国として、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニア、モルドバの5カ国が調印しており、トルクメニスタン、ウズベキスタン、;po099アゼルバイジャンの3カ国も検討に入ったとされましたが、これらの諸国の貧しい経済的内実では遠くEUには及ばず、現状はかつて「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的破局」と述べた独裁者プーチンの幻影の残骸にすぎません。
ちなみに当時、旧ソ連圏最大の工業国にして穀倉地帯だったウクライナも執拗に加入を勧められましたが、蹴り続けたことがプーチンの屈折した怒りとなったとする人もいます。

むしろここで注目すべきは、ドゥーギンの思想の具現化がこのユーラシア共同体だったことです。
アレクサンドル・ドゥーギンは、地政学的な見地から、ロシアを中心とした「新ユーラシア主義」と米国や西欧を中心とした「大西洋主義」が相いれない対立構造にあり、ユーラシア勢力を団結して作りだすべきだとします。


「プーチンがいずれ、仮にウクライナにおける〝ロシア問題〟を処理できたとして、次に目指すものは何か?
 ドゥーギンが描く構図によれば、今後、ドイツがロシアへの依存度を一段と高めることによって、欧州は次第にロシア圏とドイツ圏へと分断されていく。
英国は(EU離脱後)ボロボロの状態となり、ロシアは漁夫の利を得ることで『ユーラシア帝国』へと拡大・発展していく、というものだ。
ドゥーギンはさらに、アジア方面についても、ロシアの野望を実現するために、中国が内部的混乱、分裂、行政的分離などを通じ没落しなければならないと主張する一方、日本とは極東におけるパートナーとなることを提唱する。つまるところ、ドゥーギンは第二次大戦後の歴史の総括として、もし、ヒトラーがロシアに侵攻しなかったとしたら、英国はドイツによって破壊される一方、米国は参戦せず、孤立主義国として分断され、日本はロシアの〝ジュニア・パートナー〟として中国を統治していたはずだ、と論じている」
「ドゥーギン氏の戦略論は「新ユーラシアニズム」ともいうべきものであり、目指すべき将来目標として、旧ソ連邦諸国を再びロシアが併合するとともに、欧州連合(EU)諸国もロシアの〝保護領protectorate〟にするという極論から成り立っている」
(斎藤 彰 元読売新聞アメリカ総局長2022年3月26日 )
『プーチンも洗脳?超保守主義学者の危険すぎる思想』  WEDGE Infinity(ウェッジ) (ismedia.jp)

この「ユーラシア帝国」の核心となるのが、ドゥーギンが言う高貴なる永遠の「ロシア民族」です。
この「ロシア民族」とは、かつてのキエフ公国を発祥地とするスラブ民族のことで、ロシアとウクライナがその中心とならねばならないと説きます。
いわばナチス思想の「ゲルマン民族」、マルクス主義の「労働者階級」に相当するのが、ドゥーギンの「ロシア民族」で、彼らは世界の救世主としての任務があるとします。

イリンもこう言います。

「イリインが理想とする社会は「コーポレートの構造(cooperate structure)」で、国家と国民とのあいだに区別はなく、「国民と有機的かつ精神的に結合する政府と、政府と有機的かつ精神的に結合する国民」があるだけだ。
 キリスト教(ロシア正教)ファシズムの社会では、国民は個人の理性を捨てて国家(有機体)への服従を選ばなくてはならない。有権者がすべきことは政権の選択ではなく、「神に対し、この人間界に戻ってきてロシアがあらゆる地で歴史を終わらせるのを助けてくれるよう乞うこと」だけだ」
(橘前掲)

ドイツナチズムや北朝鮮、中国を思わせる「国家有機体論」です。
後者とやや異なっているのは、社会の統合装置としてロシア正教が登場することで、ロシア正教が今回和平に綺羅するどころか、ウクライナ絶滅を唱える理由がわかります。

ドゥーギンは、主要な政治理論を「自由主義」「共産主義」「ファシズム」の3つに区分し、自由主義の米国がファシズムと共産主義に勝利したのが現代だとし、その自由主義はいまや虚無主義的な価値相対主義と化したために自由主義の終焉は近いと語っています。


「自由主義は自由とあらゆる形式の集合的アイデンティティからの解放を求める。これが自由主義の本質である。自由主義者は人間を国民というアイデンティティ、宗教というアイデンティティから解放した。そして最後に残った集合的アイデンティティがジェンダーである。いつか、自由主義はジェンダーを抹消し、性別を恣意的で選択できるものにするだろう」
(ドゥーギン)

そしてドゥーギンは、自由主義の経済と社会秩序と文化のすべてを破壊することを唱え、ソ連方型国家統制型経済やロシア正教を統合装置とする「新世界」を国境を超えて作れ、と叫んだのです。
このロシアを盟主とするユーラシア共同体は、かつてのすべての旧ソビエト諸国とその衛星国、さらにはEU圏のすべての国と民族を「保護領」に置く歴史的使命があるのだ、とドゥーギン は考えました。

民主主義と法の支配、国境の実力による変更は認められない、などと彼らにいってもまったく無意味なことがおわかりでしょうか。
ナチスの東方生存圏構想に似た、おそるべき侵略的全体主義思想こそプーチンの「ユーラシア主義」思想です。
言葉の正確な意味で、プーチンはロシアン・ファシストなのです。
プーチンはウクライナへの侵攻理由にネオナチからの解放を上げていますが、片腹痛いとはこのことです。

そしてそこの「ユーラシア主義」の実践として、ドゥーギンは「ドネツク人民共和国」のための超国家主義団体「ユーラシア青年同盟」を組織しました。
これはまさにナチスのヒトラーユーゲント、ないしは突撃隊(SS)に相当します。

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ユーラシア青年同盟

ちなみに、この組織は「ジオポリティカ」と呼ばれるウェブサイトを運営し、西側に対する偽情報とプロパガンダ を流しており、日本にもその影響を受けたサイトがいくつもあって偽情報を大量に流してるようです。

この病的なドゥーギンとイリンの妄想が、プーチンという独裁者の思想となった時、ウクライナ戦争が始まったのです。

「このユーラシア主義によれば、ウクライナ人とは、「カルパチア山脈からカムチャッカ半島までの」広大な土地に散らばるひとびとであり、よってロシア文明の一つの要素にしかすぎない。ウクライナ人が(タタール人、ユダヤ人、ベラルーシ人のように)もう一つのロシア人集団にほかならないとすれば、ウクライナの国家としての地位(ステートフッド)などどうでもよく、ロシアの指導者としてプーチンはウクライナのひとびとを代弁する権利を有することになる。だからこそ、プーチンはこう述べた。
 「我々は何世紀にもわたりともに暮らしてきた。最も恐るべき戦争にともに勝利を収めた。そしてこれからもともに暮らしていく。我々を分断しようとする者に告げる言葉は一つしかないのだ――そんな日は決して来ない」
(橘前掲)

捕らえたアゾフ連隊の兵士にヒトラーの彫り物をした者がいたですって、なんのプーチン御大自身は脳の中までファシズムに冒されているのです。
プーチン、お前こそネオナチだ!

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月19日 (火)

フィンランドNATO加盟の大打撃

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ブチャ大虐殺が明るみ出て、そしてマウリポリで守備隊が全滅したなら和平協議はもう行わないとゼレンスキーは言ったそうです。
となると、例のロシアが突き付けていた和平条件のひとつの「中立化」も吹き飛ぶことになります。
この「中立化」を巡って、西側もそうとうに頭を痛めていました。

「中立化」といっても、いくとおりもの方法があったからです。
①「フィンランド化」
②NATO加盟断念
③NATOに代わる集団的安保体制

リベラル好みの非武装中立は、ロシア案ですから除外します。
大方の西側外交関係者は、①の「フィンランド化」が落とし所だろうと見ていました。
「フィンランド化」とは外交用語にもなっていますが、一言でいえば「強いられた中立化」のことで、「親露ではないが反露ともいえない微妙な立ち位置」の国になることです。
これはフィンランドが、ウクライナと同じように国民が一丸となってロシア(ソ連)と戦ったからできることで、攻めて来たらすぐに白旗を上げましょうなどというどこかの国の評論家ばかりの国だったら、直ちに属国の軛に繋がれてしまいます。
フィンランドは、かつての冬戦争と呼ばれる、ソ連の侵略に対して驚異的な粘り強さで戦い続けたことで、破れこそすれ「中立」を勝ち得たのです。
決して不名誉なことではないので、このある意味もっとも厳しい「中立」に耐えてきました。

ところが、そのフィンランドが「フィンランド化」を止めて、NATOに加盟することを決定する方向を打ち出したので、ヨーロッパは当のNATO諸国の多くは驚愕しました。
驚かなかったのは、今までフィンランドなどとJEF(北欧統合遠征軍)を作ってきた実績がある英国くらいでしょうか。

「4月16日 AFP】フィンランドのトゥッティ・トゥップライネン欧州問題・公営企業相は15日、同国が北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請する「可能性が高い」と述べた。ロシアはこの直前、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した場合、「結果」が伴うと警告していた。
 ロシアが2月24日にウクライナへ侵攻したことで、フィンランドとスウェーデンでは長年続いた軍事非同盟主義に対する世論と政論が一転。フィンランドのサンナ・マリン首相は13日、NATO加盟申請の是非について「数週間以内に」決定すると表明し、スウェーデンも加盟を議論している」
(AFP4月16日)

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世界最年少首相!フィンランドのサンナ・マリン首相ってどんなひと?|ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)

ちなみにサンマリン首相は34歳にして、世界最年少の女性首相ですが、わが国では閣僚に女性が多いことからジェンダー政権と言われてきましたが、驚くほど大胆な政権でした。
彼女が決めた外交方針は、70年以上にわたった中立政策を捨てて、西側の集団安保体制の一員に加わるというものでした。
といっても、なんでも合議のクラス委員会的NATOでは、承認に4か月から長ければ1年かかりますが。

それはさておき、そのフィンランドが中立を捨ててしまったのですから、なんだか冗談のようなことになってしまいました。
これは効きましたね。ウクライナの奮戦の影で目立ちませんでしたが、ヨーロッパ全体のパワーバランスが一気にひっくり返るような勇断でした。てひ
巡洋艦「モスクワ」の撃沈がストレートパンチだったのに対して、アッパーカットのようにプーチンのキシャな顎に炸裂したわけで、余りの激痛に、ロシアはこんな脅し文句を並べています。

「ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は15日、NATO加盟はフィンランドとスウェーデンが決めることだとしつつも、「このような措置が、われわれの2国間関係や欧州全体の安全保障構造に対する結果を伴うことを理解すべきだ」と警告した」
(AFP前掲)

このように上品に言えば「二国間関係に責任を持て」ですが、要はロシアと敵対関係に入りたいのだな、ならば首を洗っていろ、ウクライナが片づいたら次はお前の番だという意味です。
さっそくフィンランド周辺にミサイルを展開してみせましたが、すぐにこういうことをするからあんたらロシアは嫌われるのです。
まぁ、いくらスゴんでも、キーウ包囲作戦に敗退し、地方都市のマウリポリひとついっかな抜けず、旗艦「モスクワ」が撃沈でしまっては、大いに迫力に欠けますが。

さて、先日英国が主導する北欧10カ国の連合であるJEF(北欧統合遠征軍)についてふれましたが、スウェーデン、フィンランドの西側軍事同盟への加盟でいっそうその意味が重くなりました。

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どうしてここまでロシアがフィンランド加盟に神経を尖らせるのかといえば、その地理的関係です。
下の地図をご覧ください。
フィンランドとロシアはまさに一衣帯水の関係で、フィンランド湾を隔ててヘルシンキとサンクトペテルブルクがにらみ合う関係にあります。
ロシア海軍の主力であるバルチック艦隊はサンクトペテルブルクに母港があり、ここから外洋に出撃しようとするとフィンランド湾を西に航行してバルト海にでねばなりません。
ですから、フィンランドがNATOに加盟すると、バルト海の出入り口を西側陣営に押えられたことになります。
有事ともなればフィンランドはロシア海軍の航行を拒否し、機雷敷設を宣言するはずです。
哀れ、バルチック艦隊はサンクトペテルブルクに雪隠詰となってしまいます。

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毎日

それをなんとか突破してバルト海に出たとしても、沿岸はスウェーデン、ラトビア、リトアニア、ポーランド、そしてドイツといったNATOがびっしりと固めていて、わずかに飛び地のカリーニングラードだけが、離れ小島のようにあるだけにすぎません。
かくて、「ロシアの内海」のような顔でブイブイ言わせてきたバルト海の制海権は、永久に喪失しました。 
このようにスウェーデンとフィンランドのNATO加盟は、バルト海の軍事的力関係を大きく変化させるものなのです。

そしてさらにフィンランドは、2016年8月24日、自国領土内で初めて 仮想敵軍の空襲に対抗する米国との合同空軍訓練を実施しました。
いままでEUには加盟しつつもNATOには首を振っていたフィンランドが、米国の核の傘に入ろうというですから、時代は変わったものです。
これもまたロシアの身から出たサビとはいえ、プーチンはここでもまた再起不能の大失敗をしてしまったことになります。

巡洋艦「モスクワ」の撃沈で黒海の覇権も風前の灯ですから、いまやロシアに出口なし。
そう言えば昨日、巡洋艦「モスクワ」の炎上写真が流出しました。救助に来たトルコ船からのもののようです。
左舷に大きく傾いて火薬庫付近が炎上しています。ここまで来るともう曳航は不可能です。

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Russian Navy Cruiser Moskva Seen Badly Damaged In Unverified Image

下図の黄色の点はロシアの軍港の位置ですが、ロシア海軍の絶望的気分がお分かりになるでしょう。
不凍港がもうないのです。

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https://foimg.com/00049/yhFdKC

残るはオホーツク方面のウラジオストツク、ナホトカ、北朝鮮の羅津、中国の青島に大きな借りを作って間借りするかです。(中国は貸さないでしょうが)
いずれにしても、対岸の火事のようにウクライナを見て、早く降伏しようなどと言っている日本人も、ウライナ情勢は玉突き的にわが国に強い影響を及ぼすことをお忘れなく。


 

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月18日 (月)

巡洋艦「モスクワ」撃沈の衝撃と核搭載疑惑

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艦隊旗艦「モスクワ」があえなく撃沈されてしまったために、モスクワは半狂乱状態のようです。
なにやら事故だと言っているくせに、ウクライナに報復してやるぅと息巻いてミサイルを打ち込んでいます。
事故でしょう、事故なんだよね、戦争ではない「特別軍事作戦」で起きた事故なんだよね、モスクワさん。
でも報復するっておっしゃる、ホント分かりやすいねぇ、あんた方は。

いまや「第3次大戦」だ、とロシア国営テレビがガナっているようです。

「ロシア国営が「モスクワ」艦の沈没を報じるなかで、第三次世界大戦がすでに始まったという表現を使ったことが分かった。
15日(現地時間)、英デイリーメールなどによると、ロシア国営テレビロシア-1の報道番組「60分」において、アンカーのオルガ・スカベエワは、「ウクライナで進行中のロシア軍の特別作戦は、すでに第3次世界大戦と呼べる段階に進んだ」とし「ロシアは明らかに米国と北大西洋条約機構(NATO)に対抗して戦っているからだ」と主張した。
スカベエバは、米国をはじめとする西側国がウクライナに大規模武器を支援していることを主張の根拠とした。
この日の放送では、モスクワ艦の沈没に対抗してウクライナに大規模反撃を加えなければならないという主張も出た。特に、ウクライナの首都キーウ(キエフ)に核兵器を使用しなければならないとプーチン大統領に提案する内容もあったと伝えられた」
(コリアンエコノミックス4月17日)

自分から無理無体で手を出しておいて大火傷を負うとお前の責任だ、世界戦争にしてやるとわめく。
ロシア正教会の坊主までもが、ウクライナ民族を絶滅させよ、とハッパをかける。普通の精神状態ではないですね。
それほどまでに「モスクワ・ショック」は巨大なインパクトを与えたのです。

あと3週間後の5月9日「対独戦争勝利記念日」までに、ウクライナを屈伏させることは100%不可能な以上、祝賀モード転じて撃ちてしやまん、NATO、米国なにするものゾ、エイエイオーの国民総動員を呼びかけるものになりそうです。
この時に、巡洋艦「モスクワ」の戦死した452名の水兵たちは、美化されて戦意高揚の材料に利用されるのかもしれません。

「モスクワの510人の乗組員の運命について救出された情報には疑問が残っており、そのほとんどは行方不明である。
ロシアから亡命した政治家イリヤ・ポノマレフは、452人もの乗組員が死亡した可能性があると述べた」
(デイリー メイル4月17日)

救助されて生き延びた水兵らは監禁されて、尋問を受けているという噂もありますが。
ホントに事故による沈没なら銃殺だよな、あの国なら。

まぁそりゃそうでしょうとも、旗艦が撃沈されたのは日露戦争の時のバルチック艦隊旗艦クニャージ・スヴォーロフ以来の屈辱ですから。
「モスクワ」という名前がつくように、この巡洋艦はただのフネではなく、先日沈んだ揚陸艦などとは比較にならない価値を持つものでした。
巡洋艦「モスクワ」が沈んだと聞いたある元海自の幹部が、うそだろう、ありゃ核ミサイルを積んでいるようなバケモノ艦だぜと言ったという話すらあります。

下の写真でもわかるように、全身ハリネズミのようにミサイルで覆っています。
ですから、被弾した場合は脆いだろうとはいわれていましたが、図星だったようです。

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https://www.dailymail.co.uk/news

そしてもう一枚の写真は、巡洋艦「モスクワ」が4月10日にセヴァストポリ港を出港した最後の写真です。
いわば遺影ですが、そういえば影が薄いような。(動画から切りとったからですが)
もうこの前から、巡洋艦「モスクワ」の行動パターンがルーチン化しているのがウクライナ側に読まれており、同じ時刻に必ず現れる地点も特定されていたようです。

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The Moskva pictured leaving port at Sevastopo for the lasttime
https://www.dailymail.co.uk/news

また、この巡洋艦「モスクワ」には2発の核ミサイルが搭載されていた可能性があると英国紙「デイリー・メイル」が伝えています。

「ロシアの黒海艦隊の旗艦であるモスクワは、セヴァストポリ港の近くで沈没したことが確認された。専門家とアナリストは現在、このロシア軍艦が2つの核弾頭を搭載していた可能性があると警告している。
西側専門家は、「ブロークンアロー」( 核兵器事故)への緊急の調査を求めている」
(デイリー メイル前掲)
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10721351/Ukraine-war-Fears-Moskva-warship-carrying-nuclear-weapons-sank.html

艦長以下ほとんどが艦艇と運命を共にしたようですが、その時に共に海に沈んだといわれているのが、下の写真のミサイルです。

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P-1000ヴルガン超音速巡航ミサイル https://www.dailymail.co.uk/news

P-1000ミサイルには核弾頭搭載型もあり、それが搭載されていたかもしれないというわけですが、ロシアがそんなことを明らかにするはずがないので、真偽はわかりません。
ただし搭載していれば、ロシアは必死に海底の「モスクワ」からP-1000をサルベージするはずですから、わかるはずです。
現時点では特にその動きはありません。

とまれ、ロシア海軍の象徴とも言えるこのバケモノ艦が睨みを効かせているから、黒海の制海権はロシアが握っていられたわけです。
制海権だけではなく、「モスクワ」はS300対空ミサイルシステムを搭載しており、この南部地域全体の防空システムの要でした。
黒海艦隊に残されたのは、「モスクワ」よりはるかに小さいカシン級ミサイル駆逐艦スメトリーヴイ、クリヴァクI級フリゲート・ラードヌイ、クリヴァクII級フリゲート・プイトリーヴイなどの3隻と、旧式のキロ級通常型潜水艦2隻だけ、あとはろくな戦闘艦はないというお寒い状況になりました。

補充したくとも、黒海の入り口をトルコが塞いでしまったためにできません。
したがって、このバケモノ艦が失われたために、ロシアの黒海支配権は大きく揺らぐことになります。
そもそも2014年にクリミア半島簒奪をしかけた軍事的意味は、半島突端のセバストポリ軍港を完全掌握したかったからです。
ここは黒海を扼する要衝で、この軍港に巡洋艦「モスクワ」を配備することで黒海全域を「ロシアの内海」とするのが目的でした。

その牙が折れてしまったのですから、ウクライナ支援側としては、黒海経由で今まで不可能だったウクライナ支援物資を送る可能性が浮上しました。
もちろん黒海艦隊は弱体化したとはいえまだ残存していますから簡単ではありませんが、この黒海経由の支援ルートが開かれれば、従来のようにポーランド国境からウクライナ長距離横断して届けていた東部戦線への補給が一気に加速します。

面白いのは米国の対応です。
米国はやっとウクライナのネプチューン地対艦ミサイルによるものだと認めたようですが、なぜか慎重な姿勢でした。
もちろん米国はグローバルホークを使って、「モスクワ」の位置情報を、ウクライナに逐一伝達していた以上、その詳細はどの国よりもよくわかっていたはずですし、損害状況も知らないはずがありませんでした。
おそらくワシントンのためらいは、あまりにウクライナが世界が驚愕するような戦果をあげてしまったことに対する驚きと警戒があったのかもしれません。
警戒というのは、プーチンの性格からすれば、核報復をかけることを考えつかないはずがないからです。
西側が勝手に考えている「プーチンのプッツンライン」(レッドライン)には、東部の「人民共和国」が陥落しかければ化学兵器、クリミア奪還に踏み切れば核使用という想定があるそうです。
ロシア海軍の旗艦の撃沈などは、誰も考えていなかったので、米国も素直にアレはウクライナのミサイルの戦果です、といえなかったのかもしれません。

なお、この「オデーサ海戦」のプロセスは、さまざまなSNSで分析されているようなので、簡単にしますが、ドローンとの共同作戦であったようです。

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 https://www.dailymail.co.uk/news

上図①はいまやこのウクライナ戦の代名詞となったバイラクタルTB2が囮となって北西方向に注意をひきつけ、転進した時を見計らって、②オデーサ付近の海岸近くから対艦隊ミサイル・ネプチューンを複数発発射し、③巡洋艦「モスクワ」左舷に2発命中しました。
うち一発は不発だったという未確認情報もありますが、おそらくは巡洋艦「モスクワ」がトップヘビーになるほど大量に積んでいたミサイルか、あるいはその弾薬庫に命中して大火災を発生させたようです。
不幸なことには、この命中した箇所がよりよにって、下図のように2基のRBU-6000対潜水艦ミサイルや、16基のP-1000対艦ミサイルが搭載されていた箇所(「121」の艦艇番号のあたり)でした。

偶然じゃありませんよ。作った製造元がウクライナですからね。
ウクライナは、ソ連の工業の中心地帯でした。
この巡洋艦「モスクワ」を作ったのは他ならぬソ連時代のウクライナですから、どこがフネの急所か知り尽くしています。
ついでにいえば、ロシア軍の主力のT-72戦車を設計したのもウクライナ、スホーイ戦闘機を設計したのもウクライナでした。
ウクライナに独立され、特に2014年のクリミア戦争で敵対関係になってから、ロシアの軍艦や戦車、戦闘機の更新が進まない理由もそのためです。
だからこそ、ロシアはウクライナを取り戻したかったのでしょうが、逆に永遠の敵にしてしまいました。
今後、支援を与えてくれた米欧に軍事技術を多く提供することになるはずですから、ロシアの軍事はスケスケとなることでしょう。

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https://www.dailymail.co.uk/news

このような歴史的大敗北を受けて、プーチンの精神状態のほうが心配です。

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月17日 (日)

日曜写真館 あこがれのたましい宿れ山桜

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山桜ひたすら散つて己れ消す 津田清子

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おのが葉と花の競ひて山ざくら 鷹羽狩行

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その上の雲のふくらみ山ざくら 鷹羽狩行

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かなしみのしづかな笑ひ桃の花 平井照敏

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めぐりあひしことの美し桃の花 高屋窓秋

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ふつとふるさとのことが山椒の芽 種田山頭火

 

※ご承知だと思いますが、横アングルの画像はクリックすると大きくなります。

2022年4月16日 (土)

ほんとうのアゾフ連隊と「モスクワ」撃沈

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ロシアは、マリウポリ守備隊が大量に降伏したとロシアが流しており、それを無検証で流しているメディアがありますが、まだ守備隊は全面降伏したわけではありません。
アゾフ製鉄所に立て籠もった海軍歩兵は、まだ頑強に抵抗をしています。
ロシアのニュース映像でも降伏したとされる兵士たちの数は百人ていどで、ウクライナ守備隊は2000人規模いるはずですので、少なすぎます。
おそらく局地的に降伏した兵士の映像を、さも全面降伏したかのように流しているのだと思われます。

これについて、定評のある客観分析をしている米国戦争研究所(ISW)は、ロシア側の大量降伏情報は虚偽だと述べています。    

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ww.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-assessment-april-13

●4月13日のウクライナの戦況
・ロシア軍はマリウポリに上陸し続けたが、ウクライナの大量降伏というロシアの主張はおそらく虚偽である。
・ロシア軍は、より広範な攻撃の可能性に向けて準備を続ける中、ウクライナ東部での現地攻撃は失敗に終わった。
・ロシア軍は攻撃作戦のためにハリコフ州で再編成を続け、イズユムの南でわずかな攻撃しか行わなかった。

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アゾスフタル製鉄所 航空万能論

海軍歩兵旅団はその多くが降伏、ないしは少数が包囲を突破してアゾフ連隊と合流したとみられます。
大戦中の日本軍ではないのですから、ウクライナ軍に玉砕はありえません。
何度捕まってもまた戦い続けるのが、むしろ義務です。
親露派大物を捉えたために、近々行われるという噂がある捕虜交換でまた海軍歩兵旅団の姿を見せて下さい。

ところで、このアゾフ連隊のことを、昨今メディアは、「ネオナチ」「極右」から「最精鋭部隊」に格上げしたようです(笑)。
やっと、[アゾフ連隊=ネオナチ=ウクライナはネオナチ政権]というプーチンのプロパガンダの危険性に気がついたようです。
私も正確さを欠いた情報を先日書きましたので、いい機会ですので、改めて修正をかねて詳述しておきます。

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ウクライナフォーラム

彼らはもともとイデオロギー的なナチズム信奉者にはほど遠く、なかには右翼の奴もいる、ていどの勢力でした。
歴史的独立運動家を尊敬していただけのことで、別にヒトラーの崇拝者でもなんでもありませんでした。(あたりまえだ)

「アゾフ連隊の前身のアゾフ大隊はしばしば極右のナショナリストの民兵と説明されてきた。アゾフ大隊の創始者、アンドリー・ビレツキーが極右政党の主催者であった事や初期の隊員らがウルトラスの中でも極右思想を持つ者が多かったことも強く影響している。ウクライナ国内軍の組織である国家警備隊編入に伴い、政府は組織の非政治化を図り取り組んだ。この時、アンドリー・ビレツキーら極右思想を持つ指導部は去り、アゾフ運動を支持する政党「ナショナル・コー」を立ち上げた」

「現在は少なくとも公には反人種主義が愛国主義に置き換わっていると報じている。なお、ビレツキーら極右思想や反ユダヤ的を持っていると見られていたアゾフ大隊の創始メンバーや元司令官は、独自の政治活動を行うため国会議員、キエフ州警察、内務省の役人などに転身していため、アゾフ連隊に在籍し続ける事が法律上不可能になった。またビレツキーは2019年の改選の際に「最も得票数の少ない前職議員ワースト5」になり、再選できなかった」
(アゾフ大隊 - Wikipedia )

現在は、ユダヤ系ウクライナ人も多く在籍しており、ネオナチとはほど遠い存在で、ためにする誹謗にすぎません。
また勝手連のように言われいた時期もありましたが、警察大隊に編入されて以降は武装警察官の資格を有している民兵組織です。
今はさまざまな変遷を経て、正式に国家親衛隊に編入されて、政府の統制下にあります。

「2014年3月に制定された国家親衛隊法によりウクライナ国内軍を改編して創設された。現在は、ウクライナ国家親衛隊の東部作戦地域司令部第12特務旅団所属のアゾフ特殊作戦分遣隊(通称: アゾフ連隊)となっている。アゾフ海沿岸地域のマリウポリを拠点とする 」
(アゾフ大隊 - Wikipedia )

その時代によってアゾフ連隊は変貌していきます。
どこの時代を切るかで、アゾフ連隊の性格がまるで違ったものに見えるはずです。

●第1期[自警団」

「2014年の親ロシア派騒乱時に、2月末からハリコフの庁舎ビル(RSAビル)等を親ロシア分離独立派が占拠しはじめ、これに対抗する親ウクライナ政府統一国家支持の勢力として、Sect82メンバーを中心とする、地元側の自警団として機能した「東部中隊」が結成された。
この組織はアルセン・アバコフ内務大臣と当時のドネツク知事のセルヒ・タルタの支持を得てすぐに内務省の一部のボランティアの警察大隊となり、その地域で戦争が発生した場合にハリコフを保護する役割を課された。」
(ウィキ前掲)

当初は親露派の州政府占拠などに対応するために作られたボランティアの自警団だったようです。
初期は、地元サッカーチームの熱烈なファンのつながりで発生しています。

●第2期「警察大隊」

「2014年4月、アルセン・アバコフ内務大臣は、 ウクライナでの親ロシア派騒乱を受けて特別警察大隊を創設するよう命令を出し、5月にアゾフ大隊はそれを受けて発足した特別パトロール警察大隊(ボランティア大隊)うちの1つである。
しかし内務省の認可を受け設立されており、自治体により差異があるあるものの多くが正式な警察官の身分を有し、法執行機関の一員とみなされていた」
(ウィキ前掲)

この第2期は、警察大隊として組織化が進み、警察官の身分を持つ準警察武装部隊へと成長します。
公的に認められた一種の民兵組織といってよいでしょう。

●第3期・現在「国家親衛隊」
正式に国家機関に組み込まれて、国内軍の地位を与えられています。

「アゾフ連隊は公式にウクライナ国軍組織であるウクライナ国家警備隊(親衛隊)に統合されており、その作戦行動と訓練は東部作戦地域司令部12特務旅団長の指揮の元にある。連隊の兵士は政府から給料や戦闘用車両と戦車などの装備が支給されており、内務大臣の指令の元、ウクライナ陸軍と共に多くの分離独立派との戦闘に参加している」
(ウィキ前掲)

国家親衛隊という呼称がナチの親衛隊とダブって誤解を招きますが、これは旧ソ連領内の国々が持つ内務省管轄の国内軍のことです。
同じ名前の組織をロシアも持っています。

●旧部隊章ヴォルフスアンゲルに似たシンボルマークについて
2014年から15年にかけて使用していた部隊章が、ナチス親衛隊の記章を反転させたもので、それをネオナチの根拠とするドイツ報道があり、一気に西側に拡散しました。
その最大の根拠は、部隊章がナチスのハーケンクロイツに似ているという理由でした。

「なおアゾフ大隊側は、これは反転したヴォルフスアンゲルではなく、ナチズムに無関係なNとIの融合であるとしており、『国家思想"National Idea"』や『国家連帯"united nation"』を表しているとしている」
(ウィキ前掲)

アゾフ連隊のメッセージをウクライナフォーラムが紹介しています。
一部の保守系論客が流したような、アゾフ連隊がマリウポリの産院を人間の楯にしたから爆撃を受けたのだ、というような悪質極まる情報が流布していますから、たまにはアゾフ連隊自身の声を聞くのもいいでしょう。

「私たちは、ナチズムとスターリニズムを軽蔑している。なぜなら、私たちの国は、この二つの全体主義体制と嘘のイデオロギーによって最も苦しんできたからだ。クレムリンのプロパガンダは、私たちをナチやらファシストやらと呼びつつ、自分のことはウクライナを非ナチ化しに来た『解放者』だと呼ぶ。しかし、真実はこうだ。私たちの領土にプーチン・モンスターが侵攻してきており、私たちにはそれを守る権利と義務がある。その防衛の最前線に立っているのがアゾフだ」 
(ウクライナフォーラム4月15日)
アゾフ連隊、ロシアに対してナチズムを説明 (ukrinform.jp)

●公安調査庁の見解

「近時、一部において、公安調査庁が『アゾフ連隊』をネオナチ組織と認めている旨の事実と異なる情報が拡散されている状況が見受けられるが、このような誤った情報が拡散されていることは誠に遺憾である。
これは『国際テロリズム要覧2021』の『ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した』等の記載を根拠にするようですが、そもそも、『国際テロリズム要覧』は、内外の各種報道、研究機関等が公表する報告書等から収集した公開情報を取りまとめたものであって、公安調査庁の独自の評価を加えたものではなく、当該記載についても、公安調査庁が「アゾフ大隊」をネオナチ組織と認めたものではありません。
ついては、上記のような事実と異なる情報が拡散されることを防ぐため、当庁HP上の「国際テロリズム要覧2021」から上記の記載を削除することとした」

このように日本政府公安機関は、アゾフ連隊をネオナチとして、侵略の口実にしているロシアのプロパダンダを否定しています。
いまでも日本には、ウクライナではネオナチが暴れているということを平気で言う人が出没しますが、こういう人はロシアのプロパガンダの罠にはまっているのでご注意下さい。

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ANN

さて一方、巡洋艦「モスクワ」が海の藻屑となってしまったようです。ヨオッシャ!
ウクライナ軍がバイラクタルTB2を囮にして黒海艦隊の旗艦を対艦ミサイルで攻撃したという噂もありますが、真偽は定かではありません。
また、当時は海上はシケ模様で、接近するミサイルがわからなかったようです。
左舷に2発食らって、火薬庫に誘爆し、大火災となったようです。
乗組員500名全員が退艦できてから沈んだので、無駄な血が流れずに済ますことができました。

「ウクライナ侵攻で、ロシア国防省は14日、露黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没したと発表した。
露国防省によると、「モスクワ」では同日、火災が発生し、弾薬に引火して爆発が起きた。曳航中に暴風雨に遭い、復元力を失って沈没した。乗員は避難していたという。火災原因は調査中だとしている。
これに先立ち、ウクライナ軍は同日、南部オデッサ近くの黒海海域で、対艦巡航ミサイル「ネプチューン」2発が「モスクワ」に命中したと発表していた。 露軍はこれまで、ウクライナ南部や東部に対し、海上からもミサイル攻撃を実施。黒海海域で海上封鎖も行ってきた。「モスクワ」の喪失で、露軍の作戦に支障が出るのは避けられない見通しだ」
(産経 4月15日)

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内藤陽介ブログ

上の切手は、この撃沈があったわずか2日前に発行されたもので、ウクライナ兵士がくたばれロシアと「モスクワ」に叫んでいるところを絵にしたもです。
これがそのまま現実になってしまったので、郵便局は長蛇の列だそうです。私も欲しい。

沈められたのは、その名も「モスクワ」といい、黒海艦隊の旗艦にして、全ロシア海軍のフラッグシップでした。
いわば日本でいえば、「大和」か「東京」という名の艦が沈められたわけですから、ロシア国民はいっそう盛り下がることでしょう。

しかも「モスクワ」はただの艦艇ではなく司令部を載せ、広域防空システムの中心だった艦なので、黒海艦隊は最大の艦艇と司令部、防空司令部の3ツを同時に喪失したことになります。
ウクライナ側は海岸線から150km~180kmの地点でミサイル攻撃をしていますが、こんな距離ではウクライナ製ネプチューン対艦ミサイルの射程280kmにすっぽり入ってしまいます。

こんな沿岸から近い距離に主力艦を置いたのは、広域防空システムとして陸上の防空までカバーしていたからですが、先日も東部で揚陸艦が3隻同時にミサイル攻撃で大破炎上しているのを見ると、要するになめていたのです。
そして小馬鹿にして、旗艦を射程内に入れてプカプカ浮かべて水上砲台として使ってしまう愚かさ、さすが大ロシア海軍です。
これまた陸軍もウクライナを小僧っこ扱いにして満足な航空優勢も確保しないうちに部隊を入れて撃滅され、空軍も小馬鹿にしていたウクライナ空軍に追い回され、低空で侵入すればスティンガーの餌食となるありさま。
陸海空、揃って驕り高ぶったツケを払わされているようです。

これで黒海からオデーサ(オデッサ)への上陸作戦は、ほぼ不可能になりました。
なお、モスクワは「モスクワ」の沈没は事故だと言っていますが、いつもウソしか言わないので誰も信じないようです。
あの~事故の方が、海軍主力艦を大チョンボで沈めてしまったわけですから、よほど責任重大なんですがね。
米国国防総省は非公式にですが、対艦ミサイル2発の戦果だと認めているようです。

ちなみに、ロシア国防省は14日、ロシア海軍太平洋艦隊の潜水艦2隻が巡航ミサイル「カリブル」の発射演習を行い、日本海上の標的に命中したと発表しましたが、カリブルなんて今時は恥ずかしくて他人サマの前では撃てないような37年前の中古ミサイルです。
ウクライナでもハエのようにバタバタ落とされています。
日米合同艦隊が北朝鮮への押えで日本海に来たので、焦ってぶっ放したのでしょうが、なにをしているのか、この国は。


 

Unnamed

Lipatova Maryna/ Shutterstock.com

ウクライナに平和と独立を

 

 

 

2022年4月15日 (金)

英国外交張り切る、AUKUSに日本の参加を打診

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EU離脱後の英国外交には、目ざましいものがあります。
先日も、ボリス・ジョンソン英首相がキーウに電撃訪問してみせました。
しかも、表通りをゼレンスキーの案内で「散歩」してみせるという警護陣が頭をかかかえそうなことまでやって見せました。

「イスタンブール時事】ジョンソン英首相は9日、事前予告なしでウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問してゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナに対する財政・軍事両面での追加支援を表明した。ロシア軍によるウクライナ侵攻開始後、国連安全保障理事会の常任理事国首脳がキーウを訪問したのは初めて」
(時事4月10日)
ジョンソン英首相、ウクライナ追加支援表明 キーウ電撃訪問、大統領と会談:時事ドットコム (jiji.com)

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これを政治家のスタンドプレーとしか捉えられない元大阪市長を大いに悔しがらせていました。気の毒な人。
この元市長殿は、ミサイルが降り注ぐ中に行けなどと自分ができないことを、英国首相に命じていました。

もうとにかくロシアを倒すことだけ、一般市民がどれだけ犠牲になってもやむなしっていう声がうわ~っと政治家の中から出てくるんですけど、いや、政治家だって、自分の命のことになったら、いつ行くかってことを微妙に判断してるじゃないですか。じゃ、いっちばんミサイルが飛んでる時に行きなさいよ が、と。だーーーれも行かないわけですよ」
(飯山陽氏による書き起こし note4月12日)

蟹は甲羅に似せて穴を掘るとはよくイッタもんです。
自分の尺度でしか見れないのです。
大阪市長の災害対応の感覚でウクライナ戦争を切ってみせて悦にいる始末。
その心理の奥には、どうやらこの人は大きなステージでスポットライトを浴びる人が出ると、嫉妬してしまうタチがあるようです。
口だけ達者ですから、そんなセコイ男の嫉妬を、さも政治的に意味あるかのようにしゃべり散らすから悪質です。
ホントこの男、国政に出てこなくてよかった。
吉本興業にでも拾ってもらって、時事漫談でもやったら。

閑話休題。
このウクライナ訪問は、ただの目立ちたがり屋ではなく、ウクライナ戦争後をにらんでいました。
ウクライナが和平交渉の中で行っていたことは、「中立化」の代償です。
ウクライナはロシアの要求の「中立化」を徹底的に値切り倒して、NATO加盟を取り下げることまで矮小化してしまいました。
もちろんかつてのフィンランドのような「親露のような、ではないような」というデリケートな立場になる気はいささかもありません。
だってウクライナというダビデは、ロシアというゴリアテの顔面に石ツブテを投げつけてうずくまらせしまったのですから。
そしていまやウクライナが戦っているのは、たんなる自国の独立のためだけではなく、自由と民主主義、法の支配を守るためだと宣言したからです。
我々ウクライナ人の戦いは、民主主義と全体主義の戦いなのだと宣言したわけです。

こうウクライナに言われては、自由主義陣営は指をくわえて眺めているわけにはいきません。
「中立化」の名の下にNATOに代替する具体的な多国間安全保障体制を構築せねばならないし、英国はそれに真っ先に手を挙げたのです。
集団のみならず、単独国としてもウクライナに安保を提供する用意があることを、まっさきにゼレンスキーに言いに行ったのでしょう。
このような従来の枠組みにとらわれずに、自在に各国と集団安全保障の幅を拡げていくのが、ジョンソン流のようです。

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また最近では、2022年3月14日、英国の主導する北欧10カ国の連合体JEF(Joint Expeditionary Force・統合遠征軍)が成立し、首脳を含む代表が初めて英国首相別邸で会合を開きました。
このJEF10カ国とは、英国、アイスランド、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアで、出来たのは今を去ること10年も前になります。
当時のNATOは、ロシア宥和主義に凝り固まったメルケルおばさんに牛耳られていたために、ガタイだけが肥大し続けていたのに、本気でロシアの抑止装置になる気はなしという情けない時期でした。
この時期に、当時中立政策をとっていたスウエーデン、フィンランドを参加させた枠組みを作ってしまうというのが、さすがブリテン。
それが初めて意味を持つことが、参加各国に痛烈に響いたのが、今回のウクライナ侵略だったわけです。
今回のウクライナへの速やかな武器供与みると、JEFのなんらかの合意があったのかもしれません。

JEFの最大の利点はこのウクライナ侵略といった軍事的に急を要する事案が起きた場合、クラス委員会のようなNATOとは別枠で、それぞれの国の首脳同士の合意ひとつで、即応できることです。ヨーロッパの場合、空陸の兵力だけではなく、多くの小国に欠けている海軍力を提供するのが米英の2カ国である以上、この「ヨーロッパ連合艦隊」を形成するためには米英、とくにーロッパの当事国として英国が中軸になる必要があったようです。

「3月14日、英国が主導する北欧10カ国の連合であるJEF(Joint Expeditionary Force=統合遠征軍)の6カ国首脳を含む代表が初めてチェッカーズ(英国首相別邸)で会合した。エコノミスト誌3月19日号が報じたところによれば、彼らは、ウクライナが要請する武器その他の装備を「相互に調整し、供給し、資金を手当てする」ことに合意した。 
また、彼らは、JEFは訓練と「前方防御」を通じてロシアの更なる侵略 ――北大西洋条約機構(NATO)を妨害しあるいはNATOの敷居に至らないようなウクライナの国境外での挑発を含め ―― を抑止することを狙いとする、と宣言した。
JEFは、その存在がほとんど知られていないが、10年前に即応部隊として設立され、英国、アイスランド、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの10カ国から成る。NATOと異なり、危機への対応の意思決定がコンセンサスを要しない点が大きな特徴である。 
英国にとって、JEFを通じる活動はNATOの北辺における伝統的な軍事的役割を再構築し、同時に英国にとっての自然な同盟国との間にBrexit後の関係を作るものであると言えるだろう」
(Wedge 2022年4月6日)
ウクライナ情勢下で機能する英国主導の北欧連合JEF(Wedge) 3月14日、英国が主導する北欧10カ国の連…

いうまでもなく、JEFは訓練と前方防御を通じてロシアの更なる侵略を抑止するのが狙いです。
これはNATOが第5条の自動参戦条項に縛られて、かえって動きがとれなくなったことに対して、もっと機動的に動ける仕組みを作ろうというものです。
なんせNATOにはハンガリーやトルコのような親露国さえありますから、危機の緊急対応に腰が重いのです。

その英国が、インド-太平洋戦略として打ち出したのが第2次日英同盟構想ですか、さらにこれを具体的にする提案がありました。
なんとあのAUKAS(オーカス)に参加しないかという提案が英国から日本政府にあったようです。

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産経

「米国、英国、オーストラリアの3カ国が、インド太平洋地域の安全保障枠組みとしてAUKUS(オーカス)を作りましたが、これはオーストラリアへの原潜供与にとどまらず、さまざまな装備の共同開発の強力のフレーム作りをに日本の参加を打診していることが12日、分かった。
極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるとみられる。
日本政府内ではAUKUS入りに積極的な意見がある一方、米英豪3カ国とは2国間の協力枠組みがあるため、参加の効果を慎重に見極める考えもある。
複数の政府関係者によると、米英豪3カ国はそれぞれ非公式に日本のAUKUS参加を打診。極超音速兵器や電子戦能力のほか、サイバー、人工知能(AI)、量子技術などの先端技術分野で、日本の技術力との相乗効果に期待がある」
(産経4月12日)
<独自>AUKUS参加、米英豪が日本に打診 極超音速兵器など技術力期待 - 産経ニュース (sankei.com)

松野官房長官がこの報道を否定したゾ、とロシア官営スプートニクが嬉しそうに報じていますから、水面下での打診だったのを産経がスクープしたのでしょう。
といっても、無下に断ったというわけではなく、岸田さんはまんざらでもないようです。

「岸田文雄首相が3月27日に行った防衛大学校卒業式の訓示で、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を目指す上で米国以外のパートナー国として挙げた2カ国が英豪だった。日本は英豪両国とそれぞれ「戦略的パートナーシップ」を結んでおり、防衛装備品・技術移転協定も締結している。
日本はFOIPに向けた取り組みを主導してきた。AUKUS参加に前向きな政府関係者は、台頭する中国に対抗する上でも米国と同盟国を中心とした枠組みが必要と主張する」
(産経前掲)

まぁ確かに日本は体質的に余りに長い期間に渡って日米安保という二国間安全保障のぬるま湯に浸ってきたために、多国間安全保障体制を本能的に忌避する傾向があります。
日米安保は米国がこう要請しそうだとわかればササっと動き、与党内がまとまらなければ必死に落とし所をみつけようとするいじましさがありました。
唯一米国の意志に反してやらかして失敗したのが辺野古移転で、あんな筋の悪い話を始めた日本が悪い。

ですから、そのような与党内の抵抗を押し切って「自由で開かれたインド太平洋」という戦略を打ち出してザ・クアッドを具体的に立ち上げたのは、たいへんな安倍氏の力業だったわけです。
今回も多国間安全保障体制守旧派から、AUKUSはオーストラリアへの原潜供与がメーンテーマだから日本には関われない、個別分野の是々非々でやったらどうかという意見が出てきたようです。
ニュークリアシェアリングにしても、多国間安全保障にしても、ろくな議論もせずに封じこめてしまう、これが岸田流のようですが、自民党内でもコチラの方が主流でしょう。
ただそんな近視眼外交ではたち行かないことが判ったのが、このウクライナ戦争のはずですが。

とまれウクライナ戦争をきっかけとして、世界の安全保障環境が激変することだけは間違いありません。

 

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東京新聞

ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月14日 (木)

衛星から見るマウリポリの惨状と守備隊決別の辞

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NHKが、いい意味でのNHKらしい報道をしています。
マウリポリの現況について、宇宙からのリモートセンシングで撮られた画像によって、今この製鉄と港湾の都市が置かれた状況が理解できます。
ウクライナ “最大の激戦地” AI解析で見えたこととは | NHK | WEB特集 | ウクライナ情勢

NHKがとった方法はこうです。
現在米国企業「プラネット」が運用する衛星からの画像は、マリウポリ中心部の5キロ四方がすべて収まっています。
解像度は、50センチの大きさまで認識できます。
たぶん軍事衛星の解像度はもう一桁高いはずですが、公開されるはずがないので、これでよしとしましょう。

NHKは、この「プラネット」が撮った侵攻前の2021年8月29日と31日の画像と、侵攻後の映像を比較しています。
下図に黄オレンジ赤のドットが見えますが、これは侵攻による変化の度合いを現しています。
衛星画像を20m四方で区切って、大きく破壊された地域を黄色から赤で表示していますが、都市中心部に集中しています。

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NHK

そのうち特に破壊がひどい施設は、市民がいる産科病院と総合病院、工科大学、避難場所となっていた劇場、美術学校、ショッピングセンター2箇所という民生施設でした。
軍事目標は一切ありません。
これらすべてに赤に区分されており、ロシア軍があえて市民を無差別に標的にして攻撃をしかけていたことが裏づけられます。
いうまでもなく、これは重大な戦時国際法違反です。

●戦時国際法(ジュネーブ諸条約)に定義されている攻撃禁止施設
・非戦闘員への攻撃
・学校への攻撃
・病院への攻撃

したがって、住宅地域、商用地域、病院への攻撃自体が禁止されており、マウリポリにおいてロシア軍は一切の国際法への考慮なく攻撃していたわけです。
マウリポリ中心部の東側にあるのが、3月16日に子どもを多く含む避難民がいたにも関わらず標的にされて破壊された劇場跡です。
マウリポリ市当局は、子どもを含む少なくとも300人が死亡したと推計しています。
しかもこの避難施設は、庭の地表に大きく「子ども」と書いて警告を呼びかけていました。

周辺の住宅などの建物も屋根が焦げていたり、黒く穴が空いていることが確認できます。 
破壊の度合いは下図のように真っ赤なドットに表示されており、完全に破壊されたことがわかります。

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NHK 劇場

劇場から北東に800mにあった美術学校も完全に破壊されています。
この劇場と美術学校は共に、屋根のほとんどが吹き飛び、壁面も火災によって焼けただれて黒く焦げて残っています。
このような破壊のされ方は、地上戦闘の結果であるより、上からの攻撃、つまり空爆、ないしは砲撃によるものだ思われます。
この劇場周辺の住宅地が平らに開けており、おそらくロシアが地上軍を突入させるに際して障害物を砲撃で破壊したとかんがえられます。

現在、戦闘は海岸に近いアゾフ製鉄所に限定されつつあります。
それがわかるのが黒煙の推移で、西から東に推移していきます。

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NHK 3月28日の黒煙(赤丸)

同地域の4月3日の映像ですが、黒煙はなくなっています。

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NHK 4月3日 黒煙は消えている。

残念ですが、これによってマウリポリの守備軍は中心部から東の海岸方面へと後退していることがわかります。

ここを守っていた守備隊の海軍歩兵第36旅団は、4月12日付けで最後のお別れの通信を出しました。
彼らはすべての弾丸を打ち尽くしたのです。

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「弾薬が不足しているためロシア軍への抵抗は今日が最後になるかもしれない。
最後まで持ち場を放棄せずウクライナに忠誠を誓う、この抵抗の代償を忘れずロシアに勝利して欲しい。
我々は最後までマリウポリ防衛のために戦い抜いたし、今も持ち場を守り続けている。
私たちは敵に陣地を明け渡した訳ではないが都市は封鎖され、包囲され、弾薬や食料が届かなかったのだ。
我々は最後まで耐え抜いていた。海軍歩兵旅団を信じ、信じ続けてくれた全てのウクライナ人に感謝している。この信念のもとに我々は長い間耐えてきた。私たちはこれまでも忠誠を誓ってきたし、これからも忠誠を誓い続ける。
全てのウクライナ人は抵抗の代償を忘れず、最後まで勝利を守り抜かなければならない」
Морпехи из Мариуполя: Мы не сдавали позиций, помните цену этого сопротивления

戦いは最後の抵抗拠点であるアゾフスタル製鉄所の周囲だけとなりました。
なお海軍歩兵旅団は投降したという情報と、包囲を突破してアゾフ連隊と合流したという説があります。

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月13日 (水)

「死の司令官」ウクライナに

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頑強に陥落を拒んでいるマリウポリの最後の砦となっているアゾフ製鉄所において、ロシア軍が化学兵器を使用した疑いが強まっています。

「ワシントン – 国防総省のジョン・カービー報道官は、ウクライナの包囲都市マリウポルに対するロシアの化学兵器攻撃の可能性に関する月曜日の夜の報道を綿密に監視していると述べた。
もしロシアがこの戦略的な防衛都市で化学兵器を使用したことが判明すれば、紛争が大きくエスカレートし、NATOの行動に直接的な課題を突きつけることになる。
「我々は、ロシア軍がウクライナのマリウポリに化学兵器を配備したとするソーシャルメディアの報道を承知している」と、カービー氏は月曜日に述べた。「現時点では確認できないが、引き続き状況を注意深く監視していく」
https://www.cnbc.com/2022/04/11/pentagon-monitoring-reports-of-possible-russian-chemical-weapons-attack-in-mariupol.html

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さて、これがロシア流なのでしょうか。悪手が悪手を呼び、悪手が故に破綻するとそれを倍増しした悪手をもってきて対応しようとする。
このような負のスパイラルに入れば、この先は見えています。
なんとまぁプーチンは、こともあろうに西側から「死の司令官」とまで言われた冷酷無比な男をウクライナの総司令官にしてしまいました。

「ロシア軍はウクライナ侵攻で、さらに残虐行為を重ねるつもりなのか。ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでの軍事作戦を統括する総司令官に南部軍管区のアレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍(60)を任命した。米欧メディアが報じた。シリア内戦で軍事作戦を指揮し、多くの民間人が犠牲となり、「シリアの虐殺者」「血と土の国家主義者」と呼ばれた人物だ。
ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、CNNテレビで、ドゥボルニコフ氏の総司令官任命について、「ウクライナ国民に対する犯罪と残虐行為(が増える)」との見方を示した。まさに、「死の司令官」といえそうだ」
(産経4月1日)
露軍新司令官は「犯罪と残虐を助長」 米高官 - 産経ニュース (sankei.com)

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アレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍 産経

この人物が、他の指揮官と異なるのは、平然と民間人を巻きぞえにすることです。
いや、正しくは「民間人を標的にする」ことです。
民間人を殺すことが、このドゥボルニコフ将軍の戦略であり、彼の戦争のやり方なのです。

彼の戦歴は、プーチンの戦争と完全に重なります。
ドゥボルニコフ将軍は、旧ソ連の士官学校で教育を受け、1982年に任官して以来、1999年から2000年まで続いた第二次チェチェン紛争に、2015年から16年まで、シリアでそれまで劣勢だったアサド政権軍を支援をする軍事作戦を指揮しました。
ここで彼がとった攻撃方法が、後にこの男を「死の司令官」と名付けることになります。

反政府派の拠点だったアレッポなどにしたロシア軍による無差別攻撃は、あえて民間人を標的にして甚大な被害を与えることで、相手側の戦意をくじき、降伏を迫る作戦でした。
ざっとこの男の犯罪歴を書き出してみます。

●ドゥボルニコフ将軍の犯罪歴(2015年9月から16年6月まで)
・2015年9月 空爆開始
・2015年11月 爆撃機から無差別絨毯爆撃
・2015年12月 市街地でテルミット焼夷爆弾を使用
・2016年2月 市街地でクラスター爆弾を使用
・2017年3月~2019年5月  シリア・アサド政権、VXとサリンガスを提供されて85回使用

シリアで調査に当たっていたヒューマン・ライツウォッチはこう述べています。

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シリア内戦で民間人を殺している「空爆」の非人道性|ニューズウィーク日本版 

「空爆後に現場に駆けつけたある住民は、当該地域を訪れたヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員に対し、次のように証言した。
「ひどい有様で、建物はがれきの山と化してしまっていた。素手とシャベルだけで救出作業を始めたよ。食器棚と壁が子どもたちの上に崩れ落ちていた。発見した時は生きていたけれど、子どもたちのおじさんの家に運ぶ前に死んでしまった。ここには診療所も病院もないんだ」
パン屋と病院施設への空爆に加えて、ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査して取りまとめた空爆のいくつか、とりわけ周辺に合法的な軍事目標が存在した証拠が全くない地域への空爆は、意図的に一般市民を標的にした可能性がある」
(ヒューマン・ライツ・ウォッチ2013年3月11日) 
シリア:一般市民への空襲 | Human Rights Watch (hrw.org)

また、禁止されている兵器の使用も確認されています。

「(シリア)政府による違法な攻撃手段には、その無差別性を理由に大半の国で禁じられているクラスター弾も含まれていた。2012年10月以降、政府軍が119カ所で150発超のクラスター弾を使用した事実を、ヒューマン・ライツ・ウォッチは調査して取りまとめている。少なくとも人口密集地では禁じられるべき焼夷弾を、政府が使用した事実も明らかにした」
(ヒューマンライツ・ウォッチ前掲)

シリアには独力で化学兵器を研究開発する能力はなく、ロシアが供与したものだと思われています。
また化学兵器使用をアサド政権にさせたのは、当時シリア派遣軍司令官だったドゥボルニコフです。

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シリア政権、5月に化学兵器使用 米国が対抗措置へ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

「シリアでは、内戦が本格化した12年にアサド政権が化学兵器の所有を認めた。「外部からの侵略」に目的を限定し、反体制派を含むシリア国民には危害を加えないと明言していたが、その後は反体制派が支配する首都ダマスカス郊外や北部アレッポ、北西部イドリブ県で相次ぎ使ったとされる。
 アサド氏の後ろ盾のロシアは、シリアを非難する国連安保理決議に拒否権を行使するなど使用を黙認。化学兵器使用を「越えてはならない一線」と宣言したオバマ米大統領(当時)は13年に一度は決断した軍事行動を見送ったが、17年にイドリブ県でサリンが使われ多数の市民が死亡した際は、トランプ米大統領(同)がシリア空軍基地に巡航ミサイル攻撃を加えた」
(時事2022年3月13日)
「化学兵器」脅威で応酬 ロシア、シリア内戦で使用黙認―欧米、自制促す・ウクライナ侵攻:時事ドットコム (jiji.com)

このシリアでの残虐行為の数々は、今ウクライナの各地でなされているロシア軍の蛮行と完全に重なります。
シリア当局者がいみじくも言ったように、「恐怖で縛って服従させる」のが目的です。

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AFP 廃墟と化したマリウポリ

ロシア軍がシリアのアレッポでしたことを、今ロシア軍は大きく拡大してウクライナ全土に拡げたのです。
都市を厳重に包囲して逃げられなくなったところで、ライフラインを切断し、無警告で住宅地、商用地、行政区に無差別絨毯爆撃をしかけて皆殺しにします。
そして多くの市民に死者がでると、猫なで声で「人道回廊」を設置するといってロシア側に市民を誘導します。
従ったら最後、「ロシア国民」にされてしまいます。
マリウポリの惨状は、親露派の任命した「市長」ですらこう言っています。

「4月8日 AFP】親ロシア派武装勢力に任命されたウクライナ南東部マリウポリの「新市長」は7日、同市の民間人約5000人が死亡したと明らかにした。ロシア国営のタス通信が伝えた。
 東部ドネツク州の一部を実効支配する親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」の指導者、デニス・プシーリン氏は6日、マリウポリの「新市長」にコンスタンチン・イワシュシェンコ氏を任命した。
イワシュシェンコ氏は「住宅の60~70%が全壊または一部損壊した」と説明した。また、25万人が市外に避難したという」
(AFP4月8日)
マリウポリで民間人5000人死亡 親ロ派任命の「新市長」 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

ウクライナ当局はマリウポリの民間人死者数について、控えめに見積もっても5000人、数万人に上る恐れもあるとしていますが、この外道の戦法を作り出した当の人物こそが、このアレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍なのです。
この悪魔のような男がウクライナにやって来ました。

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月12日 (火)

ウクライナ侵略のショックウェーブその1 原油価格高騰

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昨日、私はレンドリース法の発動をもって、ウクライナ戦争は「銃火を交えない第3次大戦」が始まったと書きました。
レンドリース法だけではなく、すでに米国はIEEPA法(国際緊急経済権限法)を発動しています。
IEEPA法とは

「米国が交戦状態にあるか又は外国又は外国の国民に攻撃された時に、このような米国に対する交戦状態、攻撃を計画、認定、援助したと大統領が判定した外国人、外国組織の持つ米国の司法権の対象である財産を没収すること。
このように没収された財産のすべての権利、所有権、利権は大統領の指示の条件で、大統領が処方できる条件で大統領が指名する機関、人に授けるものとする。
その資産、利権は米国の利益のために保持、使用、管理、清算、売却、他の取り扱いをされるものとする。
指名された機関、人はそれぞれの目的を達成、推進するために必要な一切の行為を可能とできる」
(渡邉哲也『金融制裁と世界の仕組み』)

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レンドリース法ポスター

これは大統領令で発動されたもので、議会に諮ることなくロシアに制裁を課すことが可能な強権発動です。
レンドリース法と同じく、緊急事態における大統領権限の優越を認めた法律です。
これらの措置によって米国は安全保障、
外交政策・経済に対する異例、かつ重大な脅威に対して、非常事態宣言後、金融制裁を使ってその脅威に対処することができます。
米国はレンドリース法とあいまって、いわば準戦時体制に入ったといってよいでしょう。
米軍が直接戦闘に加わっていないことで、甘くみないほうがよい。

では、敵陣営はどこでしょうか?
今回のIEEPA法においては、「ウクライナの安全保障に害をなす者」と言う表現を用いて、直接的なロシアの名指しは避けていますが、事実上名指しと同等であるというだけではなく、ロシアに加担するすべての国に対して、ロシアと同等の制裁のセカンダリー・サンクション(2次制裁)を加えるゾという含みまで持たせています。

さて、この制裁の影響は、世界規模で出ています。
まだこの影響は出始めたばかりで、真の影響の正体が判明するのは1年後、2年後のはずですが、すでにふたつのショックウェーブが生じています。
ひとつは、ロシアの原油・LNG輸出が禁止に追い込まれたことで、原油は先が見通せない青天井に貼りつきました。
今の原油価格相場は上下していますが、今後の見通しは不透明です。
ロシアからの禁輸措置に加わるか否かにかかわらず、ロイズ保険がロシアへ寄港する船舶に対する保険をすべて適用外としたために、ロシア産原油の船による輸送は事実上息の根を止められました。

英国は大英帝国名残の老大国と思っていませんでしたか。
なんの、金融ではいまだ世界の覇者なのです。
だからブリテンを本気で怒らせると、ありとあらゆる金融がらみの手段で締めつけられます。

そりゃそうでしょう、いくらロシアから原油を運びたくても船舶輸送が制限されてしまった以上、事実上パイプライン以外使えないからです。
いくらサハリン2のショボイ権益にしがみついても、保険適用外ですから輸送コストがバカ高いものつきますが、どうするんです岸田さん。
ロシア産石炭の輸入を止めたのは妥当な措置ですか、その代替はどうするのでしょうか。
原発を動かさないで、凌げるような時期はとっくに過ぎています。
いい理由づけができたのですから、さっさと原発を再稼働したらどうでしょうか。

世界全体で見た場合、サウジなどのOPECがどのように反応するかを見てみましょう。

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WTI原油価格週次チャート Investing.com

「問題は、OPECがロシアと距離を置かざるを得ないと感じるかどうかである。そう考えると、OPECが世界的な外圧に屈することはないだろう。なぜならOPECは通常、政治や感情に流されることなく、目標を達成することができるからだ。
現在、ロシアは常に世界のトップ3に入る原油生産国であり、OPEC+を構成する上で欠かせない存在となっている。サウジアラビアとロシアを合わせると、現在の市場で最も強力な2大生産国としての強力な権力を有している。
もし、OPECがロシアから切り離さざるを得なくなった場合、OPECの市場影響力は著しく低下することになる。また、今OPECがロシアとの関係を断てば、OPECはロシアを再加入させることができなくなるかもしれない」
(エレン・ワルド22年3月3日 Investing.com)
原油価格の高騰、エネルギー・パラダイムの転換、注目すべき3つのシグナル | Investing.com

中東のOPEC諸国は当分自分らの都合で日和見を続けるつもりでしょう。
それはサウジ、UAEといった産油国が、前回の国連人権委員会からのロシア追放に棄権票を投じたことでもわかります。
ただしこれがいつまで続くのかとなると、もはや「銃火を交えない第3次大戦」に突入して待った以上、どこかで旗幟を鮮明にせねばならない時期になるはずです。
その時には、泣いても笑ってもOPEC諸国は掘削施設に再投資せねばならなくなるはずです。

ちなみにそれはASEAN諸国も一緒で、国連人権委からの追放決議においてオール棄権にまわり、ベトナム、ラオスなど反対票すら投じるという愚行をしでかしました。
これらの国はまだウクライナ戦争が、東欧の片隅でやっている局地紛争だと考えているのです。
なにを寝ぼけているんだ、ASEAN諸君。これは世界中を巻き込んだ「世界大戦」であって、したがってその勝敗が以後の世界の覇権を確実にするのです。

ところで実はサウジやロシアを抜いて原油生産世界一の国があります。
それが米国です。

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原油市場の動向と見通し | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン (gentosha-go.com)

「米国では、テキサス州パーミアン盆地の送油能力が2018年の日量350万バレルから2024年末には同800万バレルに拡大することが予想されます。米国は2024年までに日量510万バレルの原油輸出能力を有する世界最大級の原油輸出国になることが予想されます」
(ピクテ投信投資顧問株式会社2019年4月24日)

それにもかかわらず、米民主党左派が進めようとしているグリーンニューディール政策によって、化石燃料採掘、輸送への投資が大打撃を食ってしまっています。

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【2022年原油価格見通し】脱炭素、コロナなど、影響要因豊富な1年に! | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net)

「米国はシェールオイル生産量が短期的に増える可能性が高い。バイデン政権は気候変動対策に重きを置いているため、シェール増産を言えない立場にある。新規のパイプライン設置を認めず、さらに連邦用地のリースも停止しているため、金融機関を含め投資家らはシェール開発への投資に忌避的であり、投資抑制によってこれまでのような供給増加傾向にはいたっていない。
温暖化対策と油価高騰の板挟みとなり、対処策としてOPECプラスに対して増産を要請してきたが、OPECプラスは余力低下などを理由にその要請を退けてきた。新たに掘削活動が大きく増加するような市場環境にはないが、足元の原油価格水準からすると、コスト見合いの採算性が極めて高く、新たな掘削数が徐々にではあるが再び増えてきている。また、掘削済みの未仕上げ坑井(DUC)の取り崩しも進んでいる。これは地中に埋まっている在庫を取り出す作業が進んでいることを表す」
(楽天証券2022年1月22日)

したがって、米国政府が、グリーンニューディール政策をウクライナ戦争を理由として一時凍結とすれば、万事解決するわけです。
米国は世界最大の原油生産国になり、その豊かな供給量でロシアの穴をう埋めればよいだけのことです。
このウクライナ戦争は総力戦となっています。
したがって米国もまた、脱炭素などという空論で遊ぶことはできないはずです。
このことによって、米国の覇権国としての地位はなおさら強化されるわけであって、なにをためらっているのかとじれったく思うのは私だけでしょうか。

もう一つは食料危機ですが、それは次回ということに。

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月11日 (月)

米国、レンドリース法成立

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なんと米国で、レンドリース法(武器貸与法)が81年ぶりに復活しました。
これは第2次大戦中の1941年3月に成立した、米国が連合国に軍事支援を送るために作った法律です。
英仏にも送っていますが、圧倒的に恩恵を受けたのが他ならぬロシア、おっと違ったソ連でした。
今回は、この大戦以来使われてこなかった法律を引っ張りだしてウクライナ支援をするというのですから、米国がこの戦争にかける意気込みがわかります。
これで米国はいちいち議会承認をえることなく、大統領権限で無制限にウクライナに軍事的経済的支援を送ることが可能となります。

「米上院は6日、第2次大戦中に連合国向け兵器供与を加速させた「レンドリース法」(武器貸与法)の復活を全会一致で可決した。下院でも可決されれば、ウクライナ向け軍事支援の関連手続きが一気に簡略化されることになる。
米国は戦争長期化を予測する一方、「ウクライナは勝利できる」(国防総省のカービー報道官)との見方を強めている。北大西洋条約機構(NATO)と連携し、兵器供与の質量両面での拡大を図る方針だ。
国防総省によると、ウクライナ側の要請に応じるため24時間態勢で作業を続けている。米国の在庫から調達できない場合は30カ国以上の同盟諸国と調整し、需要に見合う兵器を提供するよう働きかけている。
ウクライナのゼレンスキー大統領が要望する長距離防空システムの確保に向けた調整も続けており、米紙ニューヨーク・タイムズによれば、東欧スロバキアが保有する旧ソ連製の地対空ミサイルシステムを近く提供する方向だ」
(産経4月8日)
米、ウクライナ支援を強化 武器貸与法復活へ - 産経ニュース (sankei.com)

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https://www.politico.com/news/2022/04/06/senate-unanimously-approves-lend-lease-00023668

いうまでもなくこのレンドリース法が復活したのは、ブチャ大虐殺を目の当たりにしたからです。
さもなくば、今でも米国は一国主義から目が覚めていなかったことでしょう。
しかしこのような法律を成立させた以上、もはやあいまいなことでは済まされず、絶対にウクライナを勝たせるという自由主義諸国の宣言となりました。
同時に米国はこのウクライナ戦争が早期に終了せず、長期化すると見ていることが明確になりました。

また米国とNATOは、支援物資をNATO規格に変更することをウクライナと協議しており、これが認められれば、今のように旧ソ連製武器をみつけださずに住むので、支援の幅が一気に拡がるはずです。
戦車や戦闘機などの正面装備は送りにくいでしょうが、それ以外の防衛装備、燃料、食料、医薬品、民需品などは全面的に支援するはずです。

ワシントンの政治紙のポリティコはこう報じています。

「プーチンとの戦いで、上院は、かつてヒトラーを打ち負かすのに役立った措置を全会一致で承認する
上院は、第二次世界大戦時代の措置であるレンドリースを復活させ、ナチスドイツとの戦いで米国が同盟国に迅速に補給することを可能にした。
上院は水曜日遅く、ロシアの血なまぐさい侵略の中で、ジョー・バイデン大統領がウクライナに武器やその他の物資をより効率的に送ることを可能にする第二次世界大戦時代のプログラムを復活させるための主要な法案を全会一致で可決した。
上院議員たちは、2月下旬以来、ウクライナの都市や町を砲撃しているロシア軍をかわすことができるとウクライナ軍が証明したので、レンドリースとして知られる提案の背後に素早く結集した。第二次世界大戦中に創設されたレンドリース・プログラムは、米国が時間のかかる手続き上のハードルなしに連合国に迅速に補給することを可能にしたため、紛争のゲームチェンジャーと見なされました」
(ポリティコ4月6日)
In the fight against Putin, Senate unanimously approves measure that once helped beat Hitler - POLITICO

プーチンは心底ゾッとしたはずです。
なぜなら英仏などの連合軍諸国も大量の支援を受けてましたが、もっともその恩恵を被ったのがソ連だったからです。
というのは、他の諸国のレンドリースによる支援は、軍事物資が大多数を占めたのに対して、ソ連向けのそれは軍事物資+民需製品というトータルな支援だったからです。
それは、ソ連が対独戦にすべての国力をふり絞ってしまい、民製品がまったく作れなくなったためです。
大戦中にソ連が作った戦車は、主力のT34だけで6万4千両にも及びますが、トラックや鉄道車両は100台に満たない数しか生産できませんでした。
これを補ったのが、米国のレンドリースプログラムでした。
おそらくこれなくして、ソ連はドイツに勝利しえなかったと言われています。

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「援助については、戦争がもたらした経済のゆがみを考慮するとよく理解できる。多くの交戦国は戦争に本質的ではない物資の生産をかなり削減し、兵器の生産に集中した。これは必然的に軍および軍需・産業経済の一部にとって必要とされる関連した製品の不足を招いた。
例えば、ソ連は鉄道輸送に強く依存していたが、兵器生産に必死であったため、戦争の全期間を通じてたったの92両の機関車しか生産できなかった。この点で、アメリカの支援した1,981両の機関車の意味が理解できる。同様に、ソビエト空軍は18,700機の航空機を受け取り、これはソビエトの航空機生産の14 %、軍用機の19 % を占めた」
(レンドリース法 - Wikipedia )

特に兵站を支えた鉄道やトラックは、ほとんどが米国からの支援の製品で占められていました。

「兵站も何十万両ものアメリカ製トラックによって支援されており、1945年の時点で赤軍に配備されたトラックの、ほぼ3分の2はアメリカ製であった。
ジープやダッジ 3/4 トントラック(WC シリーズ)、スチュードベーカー 2.5 トントラックは、独ソ戦において両陣営が使用した同クラスの輸送車輌の中では、最良といえるものであった。
また電話線、アルミニウム、缶詰(SPAMやポークビーンズ)、毛皮のブーツなども同様に重要で、特に後者の供給はモスクワの冬期防衛にとって重要な利点となった」
(「ウィキ同上)

長いリストになりますが、主要な米国からロシアへの支援物資は以下です。
ロシア兵は、米国の綿布で作った軍服を着て、軍靴を履き、米国の銃を握って、米国のトラックや鉄道に乗って前線に向かったわけです。

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7千両も送られた米国のM4戦車で進軍するロシア兵

●軍用関係
航空機 14,795機
戦車 7,056輛
銃 8,218丁
機関銃 131,633丁
爆発物 345,735 トン
駆逐艦 105隻

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5千機も送られたソ連軍の米国製戦闘機P39
なぜソ連のエースパイロットは米国の戦闘機P-39を愛したか - ロシア・ビヨンド (rbth.com)

●兵站関係
ジープ 51,503輛
トラック 375,883輛
オートバイ 35,170台
鉄道貨車 11,155輛
機関車輛 1,981
輸送船 90隻
建物設備 10,910,000 ドル

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ロシア軍水兵(右)に米国艦艇を引き渡している米国水兵

民製品関係としては、綿や革製品も含まれていますが、これなくしてロシア兵は東部戦線を戦うことは不可能だったと言われています。

●民需品関係
トラクター 8,071台
石油製品 2,670,000 トン
化学物質 842,000 トン
綿 106,893,000 トン
皮革 49,860 トン
タイヤ 3,786,000
軍靴 15,417,001 足食糧 4,478,000 トン
機械と装備品 1,078,965,000 ドル
非鉄金属 802,000 トン
石油製品 2,670,000 トン
化学物質 842,000 トン
綿 106,893,000 トン
皮革 49,860 トン
タイヤ 3,786,000
軍靴 15,417,001 足

いやまったく、何から何までとはこのことです。
ここまで至れり尽くせりの面倒を米国にしてもらってやっと「大祖国戦争」に勝利したのですが、全部自分ひとりの手柄だと言い張って、来月に戦勝記念日をする、そこまでにウクライナからドネツク・ルンガスの東部2州だけでも奪い取ってやる、と言っているのがプーチンです。
しかしそう焦れば焦るほど、かつての大戦の勃発した原因は、1939年9月のナチス・ドイツによるロシアへの侵攻ではなく、その前月の独ソ不可侵条約であったことか暴露されてしまう結果となるのです。

ある意味で、銃火を交えない第3次大戦は既に始まっているのかもしれません。

 

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ウクライナの平和と独立を

2022年4月10日 (日)

日曜写真館 幹に花咲かせてさくらはちきれそう

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他愛なく花を見てゐる旅ごころ  燕音

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だっこしてまたおんぶして花の山  随笑

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来年も又来ておくれ花の鳥  燕音

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ほころぶと告ぐる言葉の花より浮く  ぱら

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ゆとりより生るゝものに花の風  燕音

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この先も斯うした花の日和あれ  随笑

 

2022年4月 9日 (土)

ロシアの「移動式アウシュビッツ」と、国連人権委員会からの追放

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いくつかニュースがあります。
まずロシアの「移動式火葬装置」の証言がでてきました。

「露軍による包囲と激しい攻撃が続く南東部マリウポリの市議会は6日、露軍が「移動式の火葬施設」を稼働させたとSNSで明らかにした。露軍の侵攻により死亡した地元住民らの遺体を、地元の協力者が集めて焼却しているという。
 ブチャでの民間人殺害を受け、露軍の「戦争犯罪」に非難が高まっていることから、市議会は「ロシアの最高指導部が露軍による犯罪の証拠隠滅を命じた」と批判している」
(読売4月7日)

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セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使(@KorsunskySergiy)さん / Twitter

上のような装置のようで、普通の軍隊はこんなものをわざわざ野戦に運んできません。
ましてやそれでなくても補給が困難な外国の戦場に、わざわざ火葬装置を持参するバカはいませんからね。
だいいち、戦死者を焼く装置なんかを持って歩いたら、兵隊はやる気なくすでしょう。

高温で焼くので骨も粉状になる装置です。
こんなものを持ってくる理由はひとつしか思いつきません。
マリウポリ議会が言うとおり、「浄化作戦」の結果発生した大量の死体を焼却して証拠隠滅するためです。
FSBはこれを使って、自分らが殺した市民を焼くのですが、まるで移動式アウシュビッツです。
マリウポリでは、完全に市がロシア軍に制圧されたら、このグロテスクな装置の出番となります。

先日来引用しているセルゲイ・サムレニー氏のツイートが、まるで予言のようにすべて的中しているのに驚かされます。

「ロシアは、ウクライナの降伏に続いて、3日以内にキーウを容易に奪取することを計画しました。-ロシア軍部隊の後には数千人の治安警察が続いた。
ロシア軍は4万5千個のボディバッグを購入し、移動式火葬装置を持ち込んだ」
https://twitter.com/sumlenny/status/1510168073831165956

サムレニー氏が言っていた、「後から来た数千人の治安警察」はFSBだったことが判明していますし、彼らは「移動式火葬装置」を持ち込んでいました。
もはや目的は氏が述べるとおりだとしか考えられません。

「これらの墓はウクライナ人向けに予定されていたようだ。
標準的な予想では、3日以内に各墓地で最大1000人の死体を対象とする独立した集団墓地の掘削が行われた。
16人の兵士のチームが、すべての墓の掘削に携わった。
ロシアはウクライナ軍に対する迅速な勝利、ウクライナの完全占領、ウクライナの市民社会の指導者、政治家、文化的指導者、聖職者などの大量虐殺を含む大量虐殺を計画したようだ。
計画されたような、大量虐殺は第二次世界大戦以来見られなかった」
(サムレニー氏のツイート前掲)

 何度も強調しますが、ブチャ大虐殺はただの戦場での兵士による違法行為一般ではなく、組織的計画的に準備された「浄化」を目的とする大量虐殺なのです。
それはかつて占領地で、ユダヤ人、精神障害者、身体障害者、LGBTなどを逮捕し処刑したナチス、あるいは社会の指導者層の抹殺を狙ったポルポトの犯罪と酷似しています。

またにわかには信じがたい話ですが、ロシア正教会が「ウクライナ民族の地上からの抹殺」を命じた文書を兵士に配布していたことがわかっています。

「ロシア正教会は「ウクライナ民族を地球上から抹殺するのが貴方たちの任務である」と書かれた配布物をロシア軍の兵士に配っていると報じられている。
ブリャンスク管区のロシア正教会が作成した配布物には「貴方はロシアの戦士である、貴方の任務はウクライナの民族主義から祖国を守ることだ、貴方の任務はウクライナ民族を地球上から抹殺することだ、
貴方の敵は人間の魂に罪深い損害を与えるイデオロギーだ」と書かれており、この話題を取り上げたウクライナのEuromaidan Pressは「ロシア軍兵士にとって正教会関係者の指示はウクライナ民族に対する暴力に限り免罪符を与えている」と指摘しており、もはや平和なウクライナ人をナチズムから解放するという建前は何処かに消えてしまったようだ」
(航空万能論4月7日)
ロシア正教会、ウクライナ民族を抹殺するのがロシア軍兵士の任務 (grandfleet.info)

このソースは
Moscow Patriarchate tells Russian troops: “Your task is to wipe the Ukrainian nation off the face of the earth”

私は侵略前に、ウクライナ正教会とロシア正教会による和解のための仲介を考えた時期もありましたが、これでははなしにもなりません。

さて2番目。国連人権委員会から、ロシアが追放されました。
遅すぎたくらいです。

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「アメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会の緊急特別会合の冒頭、ウクライナのキスリツァ国連大使は、「ロシアは隣国の民間人を殺害し、支配しようとしている」とロシア側を強く批判しました。
その上で、「国連人権理事会におけるロシアの資格停止は、選択肢ではなく義務だ。決議案に賛成し、ウクライナと世界の多くの命を救う必要がある。反対に投票するとスクリーン上に赤がともる。赤は命を奪われた罪のない人々の血を意味する。赤い血の表示は、全員の心に残り続けるだろう」と訴え、決議案への賛成を呼びかけました。
決議案では、「ウクライナでロシアによる組織的な人権侵害および、国際人道法の違反があったという報告に対し、重大な懸念を表明する」と明記した上で、国連人権理事会でのロシアの理事国の資格を停止することを求めていました」
(日テレ4月8日)

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賛成票が93票、反対24票、棄権がなんと58票も出ています。
米国国連大使の表現を使えば「命を奪われた罪のない人たちの血の色」にこれだけの国が日和見を決め込んだわけです。
反対は当のロシア、そして唯一の共犯国であるベラルーシ、そして中国で、後は人権侵害国家で有名なキューバ、ボリビア、シリア、北朝鮮、イラン、ニカラグア、ジンバブエなどがズラリと並びます。
がっくりくるのはTPPには加盟し、クアッドにも協力的なベトナムが反対票を投じていることです。
これらの国々は、兵器体系がすべてロシア式に依存していますから、ロシアに逆らうと国軍が維持できなくなるということのようですが、それにしても大虐殺を肯定するのですか 。

同じくロシアの兵器体系に依存していたインドは、かろうじて棄権で踏みとどまりました。
インドは4月5日、ブチャ大虐殺を非難し、独立した調査の実施を求めています。
これはインドとしては、かなり思い切った決断で、ティルムルティ国連常駐代表は、安全保障理事会の会合でこう言っています。

「ブチャでの民間人殺害に関する報告は実に悲惨だ。こうした殺害を明確に非難し、独立した調査要請を支持する」

これまでロシアのウクライナ侵略については批判を控えて静観していたインドが、とうとうブチャ大虐殺で、長年友好関係にあったロシアと決別を決めたということになります。

インドにはブリンケンが強く働きかけていましたが、これより先にラブロフは、中国歴訪後の3月31日にインドを訪れて、ジャイシャンカル外相と会談しています。
ここでラブロフは懸命にゴマをすりまくり、非難声明に棄権したインドを褒めたたえ、印露両国は今後も西側諸国の違法な制裁圧力とたたかおうぞ、オオっ、みたいな会談をしていました。
そしてロシアへの制裁にはサインせずに、むしろロシアからの原油輸入を増やしてさえいました。
これが一変したのがブチャ大虐殺です。

いかにブチャ大虐殺が、国際的な力関係を激変させたのかわかるでしょう。
ブチャ大虐殺を非難することに反対すれば、それは共犯者とみなされます。
「ロシアの友人たち」は一人減り二人減り、とうとう中央アジア三馬鹿独裁者の一角であるカザフスタンでは、ウクライナ支持デモは許可され、ロシア支持デモは禁止されたそうです。(笑)

カザフスタンのティルベルディ外相は、ロシアが主張するウクライナ東部のルハンスクとドネツの「人民共和国」を承認しないことを明らかにしており、ロシア離れを始めています。
といっても、インドと同様にロシア制裁には反対していますが。

ロシアは追放されるくらいなら辞めてやるわ、とばかりに後ろ足で砂をかけていきました。

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日刊スポーツ

「193カ国で構成される国連総会は7日昼(日本時間8日未明)、ウクライナで「重大かつ組織的な人権侵害」を行ったとして、ロシアの国連人権理事会理事国としての資格を停止する決議を採択した。ロシアは採択後、人権理から離脱する意向を表明した。
 表決は賛成が93カ国で、反対が24カ国。採択には棄権(58カ国)や無投票(18カ国)を除き、3分の2以上の賛成が必要だった。人権理理事国の資格を失うのは、2011年3月のリビア以来、2例目となった」
(朝日4月8日)

これでロシアは復帰の道を自分で断ったことになります。

 

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 ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月 8日 (金)

ウクライナが止めた台湾武力侵攻

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マリウポリで例の移動式火葬装置がみつかったとか。
「特別作戦」とは、浄化作戦であることが確定しました。

さて、今出しておかないとないとお蔵入りとなりそうなので、ここで加筆して再アップします。
このブチャ大虐殺で唯一苦笑させられるのは、中国です。
コッチへふらふら、アッチにふらふら、見ちゃいられません。
当初中国は、世界で唯一の盟友のプーチンにつくのかと思いきや、おっと待て距離を開けねばと思い返し、結局でてきたのは非兵器類を送るんだとか。

「ロシアのウクライナ侵攻から5週間、中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」は3月25日、物資を積んで中国の湖北省鹹寧市からロシアに向けて出発した。
中国紙「湖北日報」の報道によると、41基のコンテナ車両は約770トンの「自動車部品、医療品、家電、日用品」などを積み、14日後にロシアの首都モスクワに到着する予定
(4月4日大紀元)

鉄道でロシアに運ぶそうですが、3月15日にはウクライナにも「人道支援」をしていますからまさにコウモリ。
ブチャ大虐殺後は変化するかとおもいきや、ロシアの代弁を流すだけでお茶を濁しているようです。

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中国の外交下手が全開です。

ところで中国には3通りのシナリオがあったはずです。
①ロシアを支持する。
②ロシア非難の国際社会と同調する。
③あいまい路線。

西側外交筋はおおむね①支持と見ています。

「いっぽう、中国の政治事情に詳しい専門家の間では、ウクライナ侵攻でロシアが劣勢になればなるほど、中国政府は犠牲を払ってでもロシアを支援するという見方が大半を占めている。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)中国部門のジュード・ブランシェット主任は3月24日付のワシントン・ポストへの寄稿で、「中国政府はたとえ経済・外交上の大きなリスクを払ってでも、ロシアの地位を維持させようとする」という観点を示した。 その根拠について、「中国政府にとって、ロシアの敗北は中国の安全保障および米国との大国競争に極めて不利であるからだ」と分析した」
(4月4日大紀元)

日経(3月1日)が中国の対応を並べていますが、ふらふらして一貫した方針がないのがわかります。

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ロシア暴走、中国の誤算: 日本経済新聞 (nikkei.com)

本来は一も二もなく①の全面支持が、中国の方針だったはずです。
よもやロシアが負けるなんてことは、西側軍事筋以上に中国はチラリとも考えなかったはずでした。
中国はロシアを軍事力近代化の師匠にしていましたから、ウクライナ如きに負ければ弟子の立場がなくなります。
だから、在大阪中国公使が「弱者は強者に従っていればいいのだ」とツイートするような鼻息の荒さだったのです。

「ウクライナでの戦争を巡る中国の姿勢にも戦況とともに変化が見られる。中国の薛剣・在大阪総領事は、台湾における中国の敵対勢力に対しプーチン氏によるウクライナ攻撃は「大きな教訓」を含むもので、「弱者は強者にけんかを売るほど愚かであってはならない」と侵攻直後にツイートしていた」
(ブルームバーク3月8日)

まさに強者の奢りそのままの言い草ですが、これこそが中国の本音です。
中国は初めはロシアの大勝利をみじんも疑わず、唯一の気がかりはオリンピック閉幕とパラリンピックの開幕までに終りになること程度でした。
習のプーチンへの入れ上げぶりは異常で、「親友」という表現を使うほどでした。
習は、ウクライナ戦争は短期で終り、「親友」のロシアと友好条約があるウクライナに停戦協議の労をとってみせて漁夫の利を得るくらいに気楽に構えていたことでしょう。

「習近平はプーチンに対し個人的にも思い入れがあり、全面的支援をするつもりだった。あるいはプーチンのウクライナ侵攻に呼応して秋に台湾進攻を計画していたかもしれない。この計画に反対する劉亜洲は発言を封じられて昨年11月以降、「失踪」した。習近平はプーチンに対して冬季五輪閉幕まで進攻作戦を延期するよう頼み、プーチンも承諾した」
(福島香織 2022年3月17日)
これではできない「台湾武力侵攻」、プーチンの失敗で大誤算の習近平 体制内学者から「プーチンを見捨てよ」との提言も(1/5) | JBpress

しかし、現実は4日で終わるどころか、あまりのロシア軍の弱さに西側ですら唖然とするほどで、1か月たっても収束の気配がないばかりか、いまや戦略目標のキーウを断念し、海岸沿いと東部にへばりついていますが、たぶんこのままでは5月までには継戦能力自体を失うことでしょう。
このていたらくでは、政治の師匠をプーチンと仰ぐ習でさえ、今全面支持などしたら破産企業の連帯保証人になるようなものだと判ったはずです。

ところで中国にはウクライナの二匹目のドジョウを狙っていたのではないか、と見るロシアFSBアナリスト情報のリークがありました。
真偽は定かではありません。

「中国にはこの秋、台湾を武力侵攻する計画があったが、ロシアの苦戦ぶりをみてその機会を失ったと考えているという。情報元は、ロシア連邦安全局(FSB)のアナリストが書いたとされる情報分析リポートだ。ロシアの腐敗を告発するサイト「Gulagu.net」を運営するウラジミール・オセチキンが、このFSBの内部文書を公開し、ネットで広まった。オセチキンはこれまでも「ロシアがウクライナに大量破壊兵器使用の準備をしている」といったFSB内部文書由来の情報を暴露してきた人権活動家だ(略)
かつて欧州調査報道賞を受賞したクリスト・ゴロゾフ記者がツイッターで、ウクライナはこれまでにフェイクのFSB文書をリークする心理戦術を使ったことがあると指摘している。だがゴロゾフ記者が2人のFSB元職員と現職員にこのリポートを見せて確認をとったところ、「疑いなく同僚の書いた文書だ」と認めたという」
(福島前掲)

私は台湾侵攻は中国側の軍事的失敗に終わる可能性が大きいので、そうそう簡単にできるものではないと思っていますが、プーチンが大勝利したらあるいは習も西側の団結力を甘く見てコトを起こしたかもしれません。
勝とうものなら、党大会で政権3期目連任は確定、永久首席の座を手にすることができるのは、習に取って甘い誘いではあります。

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こびる習近平をプーチンは冷笑? 中国・ロシア「対米共同戦線」の同床異夢|ニューズウィーク日本版

それはあったかもしれないと、ブルームバークも少数意見として紹介しています。

「ブルームバーグ・ニュースが元当局者や著名な中台関係ウオッチャーら計十数人にインタビューしたところ、具体的な評価にはまだ時期尚早と全員が回答した上で、プーチン氏が始めた戦争は中国政府に台湾への軍事行為を思いとどまらせるとの見方が大勢を占めた。
その多くは、プーチン氏が迅速な勝利を達成できずにいることや、ロシア政府の国際的孤立、米国とその同盟国による団結した対応、米軍介入の可能性、国内の反応などさまざまな理由を挙げた。 
これに対し、ロシアによる今回のウクライナ侵攻が習主席による台湾侵略をあおるとする少数意見があるのも確かだ。その結果、経済制裁が科されたとしても中国には小さな代償だとし、米国が紛争に軍事介入するか疑問視している。さらに、プーチン氏の動きからは、強度に統制された政治体制の年老いた指導者は外部の識者には合理的とは考えられないようなリスクを進んで取る可能性が浮き彫りとなったという」
(ブルームバーク3月8日)
プーチン氏が始めた戦争、習主席に台湾攻撃思いとどまらせる教訓も - Bloomberg

いずれにしても、ウクライナが台湾侵攻の習の野望を打ち砕いたことは確かですが、中国内にもロシアを切り捨てるべきだという意見はありました。
在野のジャーナリストではなく、政権に献策する政府シンクタンクの意見です。

「胡偉は中国国務院参事室公共政策研究センター副理事長で、外交部傘下のシンクタンク「チャハル学会」学術委員会主任委員、上海市公共政策研究会会長。つまり現役の体制内学者で、しかも政府に外交献策を行う立場にある人物だ。
この文書は、執筆日に3月5日の日付が入り、(略)、民主党系カーターセンターが設立したネットサイト「中美印象ネット」で発表された。
チャハル学会とカーターセンターの学術交流は広く知られている。(略)
この交流は、過去に親中政策をとってきた民主党政権の背景に中国のソフトパワー浸透があったということの証左でもあるが、同時に、中国共産党にも米国との全面対立を避けるよう献策する親米派ブレーンたちが多く存在するということでもある」
(福島前掲)

胡偉は、明確に「ロシアは負けるので、プーチンとの関係を切るべきだ」ということを言い切っています。
胡は、中国から見たウクライナ戦争の情勢分析をしています。
要約しておきます。

胡はウクライナ情勢について
①ウクライナ戦争の戦争はロシアの敗北に終わる。ロシアが短時間でウクライナ現政権を倒して傀儡政権を樹立することは失敗し長期化した。
②和平交渉でウクライナの譲歩は引き出せない。占領地支配を継続することも、ウクライナの抵抗とコストと長期制裁のため不可能。強行しても数年で破綻するだろう。
③ウクライナ戦争は最悪の選択。世界大戦と核戦争に発展する危険性もあり、そうなればロシアは破滅。ロシアの大国の地位は終結するだろう。

まぁそのとおりで、胡の見立てどおり、ロシアは今後勝とうと負けようと大国の地位を完全に失い、ただのユーラシア大陸の東端にある貧しい国のひとつとなるかもしれません。

一方西側陣営は
④当初、仏独などのヨーロッパが離反すると見られていたがそのようなことは起きなかった。仏独は再びNATOの枠組みに戻り、ノルドストリーム2の稼働は棚上げされた
⑤ロシア産原油・LNGが制裁によって消滅したために、欧州エネルギーの米国依存が進んだ。米国は西側世界の指導者の地位に復帰した。

そして西側諸国の対中外交は
⑥ロシアが大国の地位を喪失した結果、中国がこれまでの路線を進めた場合、西側勢力は中国のみを唯一の敵として照準した。
⑦今後、ウクライナ戦争の後に、米国は中国に対する戦略的包囲網をさらに強化し、軍事的包囲網と価値観を対置するようになる。

したがって胡は、 ②のプーチン切り捨てが最も正しい中国の選択となるとしています。

「だから、できるだけ早く「ロシアという荷物を降ろすべきだ」と、プーチンを切り捨てるよう提言。1~2週間のうちに即断しなければ中国にも挽回の猶予がない、と判断を急がせている」
(福島前掲)

にもかかわらず、習政権は③の中途半端な路線を選択しているが、これは下策だと胡は述べています。

「さらに胡偉によると、中国は目下、曖昧路線、中間路線をとろうとしているが、この選択はロシア、ウクライナのどちらも満足させていない。それよりも「中国は世界のメーンストリームサイドになって、孤立を避ける選択をすべきだ」「この立場は台湾問題にも有利だ」と言う。
中国の外交原則は、国家の主権・領土の完全性の維持であり、ウクライナの東部分割や独立も承認していない。これは、台湾が中国の国家の一部であるというロジックに立てば譲れない部分だからだ。この場合、ウクライナと中国が国家であり、ドネツク、ルガンスクと台湾が不可分の領土、にあたる。ロシアの支援によるドネツク、ルガンスクの独立を承認すれば、米国の支援による台湾の独立に反対できない、というわけだ」
(福島前掲)

前にも記事でとりあげましたが、プーチンのウクライナ方針はことごとく中国の利害と抵触します。
そもそもあの東欧から中欧一帯は一帯一路の要衝ですから荒らされたくない筆頭の地域であるうえに、ロシアのトネツク・ルガンスクの分離独立方針などを認めれば台湾、ウィグル・チベット・香港の分離独立も認めねばなりません。
だから、ここで中国は思い切ってプーチンを切り捨て、共に対露制裁の陣営に加わる顔をしておけば、バイデンに貸しを作って今の対中制裁も緩和できるだろうと胡は見ます。

「バイデンはもともと「一つの中国」原則を尊重し、台湾独立を支持しないと明言している。プーチンを切る代わりに、台湾問題で米国に幾分かの譲歩を求めるという戦略も見出せるかもしれない。
「いかにロシア・ウクライナ戦争を利用して戦略的な調整を行い、米国の中国に対する敵視態度を改善するために全力を尽くすかが、中国が直面する筆頭の大きな問題なのだ」と胡偉は言う。
さらにうまくいけば、中国は「世界を核戦争から救った立役者」になるかもしれない、と胡偉は指摘する。「中国は世界で唯一この種の能力を持つことのできる国家であり、この優勢を発揮しなければならない。プーチンが中国の支持を失えば、おそらく戦争は終結するしかない。少なくともさらにエスカレートさせることはない。このことから、中国は国際的・普遍的な賞賛を勝ち得て、孤立局面から脱出する助けになるだけでなく、世界平和を維持した立役者となって、米国と西側との関係改善の機会を探すことも可能となるのだ」
(福島前掲)

「世界平和の立役者」ですって、なにを虫のいいことを(笑)。
習がプーチンの忠実な弟子なことは世界の外交筋では知らぬ者とていないことですし、五輪開幕式で五輪とパラリンピックの間にやってくれと懇願したのもバレているのですがね。
「親友」同士手を取り合って、仲良く地獄に落ちなさい。

 

2022年4月 7日 (木)

やっぱり虐殺者はFSBだった

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ブチャ大虐殺の実行者がわかってきました。
今回は事件直後だったために、生き証人が多数残っていました。
いや、残っているどころではありません。
ブチャの市民全員が、その目で自らや家族、友人、近隣者が撃たれ、拘束され、拷問を受ける体験をしているのです。
しかもロシア軍撤退直後に西側メディアが入っています。
言ってみば、ロシアは西側メディアの眼前で大虐殺をやってしまったに等しいことになります。
これは大きい。もう二度といままでのように藪の中にはさせないと、自由主義陣営が結束しました。

今回の事件で、必ずこういう意見が出てくると思っていたのが、あれは戦場ではよくあることなのだ、という超一般化です。
昨日も森永某が、ラジオでしたり顔でそう言っていましたが、なにを言っているのか。
まったく違います。
あれは戦場で間違って民間人を誤射したのではなく、選別と浄化のために計画的に虐殺したのです。しかも大量に。
したがって、ブチャ大虐殺は、どの国でも起きることではなく、浄化思想を持った指導者に率いられた全体主義国家の特定の機関が指導者の直接の命令でやったことなのです。

その特定の機関が判明しました。
彼らの正体は、FSB(ロシア連邦保安局)です。
FSBはたぶん下の写真のようにその標識のついた軍服を着ており、どこかで名乗っているのを住民に聞かれてしまったようです。

AFP(4月6日)のすぐれた報道です。
センテンスを区切りながら読んでいきます。
虐殺実行者は「残忍な」年配部隊 ブチャ住民が証言(AFP=時事)

【AFP=時事】ロシア軍がウクライナの首都キーウ近郊ブチャ(Bucha)を占領して2週間ほどたった頃、地元住民のオレナさん(43)は、事態の悪化を予感した。それまでいた兵士よりも横暴な年配の軍人たちが現れ、街を恐怖に陥れ始めたのだ。
彼らは私の目の前で、スーパーに食料品を買いに行こうとする男性を撃った」。(略)
 当初は若いロシア兵ばかりだったが、2週間後には40歳以上とみられる年配の兵士も加わった。「彼らは残忍で、皆を虐待した。その時から虐殺が始まった」
(AFP4月6日)

先にブチャを占領したのは若年の徴募兵部隊でしたが、2週間ほど後から入った「40歳以上の年齢層を中心にした別の軍服を着た部隊」はあきらかに先発の軍と違って異質でした。
彼らは年齢層だけではなく、到着するやいなや始めたのがいわゆる「浄化」活動だったからです。
これがロシアに抵抗する市民を摘発し、令状なしの逮捕・監禁・拷問を行い、裁判なしの処刑を行う「浄化部隊」です。

彼らは、先日紹介したハインリッヒ・ベル財団のセルゲイ・サムレニー氏がツイートした、このような内容と符号します。
ここでサムレニー氏がいう、「後から来た数千人の治安警察」こそがFSBです。

「ロシアは、ウクライナの降伏に続いて、3日以内にキーウを容易に奪取することを計画しました。-ロシア軍部隊の後には数千人のriot police(治安警察)が続いた。
ロシア軍は45,000個のボディバッグを購入し、mobile crematories(移動式火葬場)を持ち込んだ」
https://twitter.com/sumlenny/status/1510168073831165956

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彼らは外国軍と戦う軍隊ではなく、訓練された虐殺者です。
おそらく
ロシア連邦保安庁特殊任務センター(ФСБ)です。
FSBと見られる兵士たちの戦闘服と、今までの兵士のそれがことなっていたという証言も出ています。

「(FSBとみられる)年配の兵士たちは良い装備を持ち、ロシアの標準的な軍服とは異なる黒と濃い緑色の服を着ていた。ロシア兵の中には「良い人」もいたが、特にロシア連邦保安局(FSB)の職員は「非常に荒っぽかった」
(AFP前掲)

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上の写真はFSBの特殊部隊で、下が一般の兵士の迷彩服です。

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BBC

ちなみにこのふたりのロシア兵は、父親ぐらいの住民になにしに来た、と叱られているところです。
光線の加減もありますが、FSBのほうがコントラストが厳しいようにも見えますし、装備もまるで違い、そもそも彼らは「プロ」です。
虐殺専門部隊は装備もよく、訓練も行き届いており、そして残忍でした。

常識的に言って、いかに外国軍であろうとも軍事占領した地域の住民を大量虐殺するなどありえません。
なぜなら住民の強い憎悪を買ってしまって、占領維持が困難になるからです。
むしろ占領軍は、治安維持をしつつ住民を慰撫しようとします。

その上、ロシア兵といっても民間人を殺戮する訓練など受けていないはずです。
このような平穏の街の住民を無差別に捉えて尋問し、拘束し処刑するなど、徴募されてまもない一般兵に簡単にできることではありません。
つい最近まで平和なロシアの家庭にいた青年が、一夜にして市民の頭を後ろから撃ち抜くまねはできないものなのです。
そのことからも、「先に来た部隊」と「2週間たってから来た部隊」は別の集団だったと推測できます

この「先に来た部隊」は、ウクライナ政府によって第64自動車化狙撃旅団の1600人と判明しています。
現在この部隊はベラルーシにおり、補給と補充を受けて再編中です。
そののちに、再び劇戦地である北東部ハルキウに送られると見られています。
彼らはウクライナ当局に執拗に追跡されていて、現在いる場所もわかっています。

「この部隊はブチャからいったん隣国ベラルーシに移動していたが、再びウクライナ国内に投入されるとの情報があるという。 情報総局のSNSによると、この部隊は「第64自動車化狙撃旅団」で、4日の時点ではベラルーシ領内にいたとみられる。6日まではロシア領内で休暇を過ごし、その後はウクライナ北東部ハルキウ周辺に送られる計画があるという」(朝日4月6日)

通常、前線帰りの部隊はそのまま後方に下げて休暇を与えて予備軍扱いとしますが、どうやらロシア軍司令部は再投入する気のようです。
しかも激戦地のハルキウですから、第64旅団をすり潰す気でいるようです。

ウクライナ国防省情報機関は、「虐殺者が帰ってくる」と警告を発して、こう述べています。

「このようなスケジュールは、第64旅団に「特別な任務」が期待されていることを示しています。
ブチャでジェノサイドの犯罪を犯した者たちは、他の都市でもこれを繰り返す可能性がある。
第64旅団をウクライナの領土に迅速に戻すことのもう1つの目標は、不必要な目撃者の迅速な「処分」である。
つまり、将来の法廷で証言することを不可能にするために彼らが生き続ける機会がない前線に移すことだ。
この部隊の隊員たちは、ブチャでのぎゃくさつの共犯者としての犯罪の責任を認識しており、ウクライナへの帰還に大いに反対しているはずだ。
しかし、ロシアの司令部はこれらの感情を無視し、戦闘を続けることを拒否した場合、彼らを軍法会議にかけると脅かしているのだろう」

死人に口なしということです。どこまて冷血なのか。

ところで彼らの評判はかならずしも悪いことばかりではなく、このような人間的な側面も見せていました。

「子どもに何を食べさせたらいいのかと兵士たちに尋ねに行くと、配給品や食料を持ってきてくれた。その兵士たちが、住民の移動を禁止したのはFSBで、とても暴力的な特殊部隊だと教えてくれた。ロシア人がロシア人のことをこんな風に言うなんて!」
(AFP前掲)   

そしてFSBによる恐怖政治が始まります。
おそらく一般兵は、住民の逮捕や死体の処理などの「雑用」を手伝ったことでしょう。
そのうち感覚の狂った者が現れ、道行く自転車の人を面白半分で撃ったりしはじめたのかもしれません。
同じ虐殺の現場に居合わせて、彼らの手がきれいなはずがないからです。

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「水や食料の調達が許可されているのは女性だけで、男性は外出を禁じられていた。「近所の人が午後5時ごろ、ごみを出しに出た。男性2人と女性1人で、男性1人は従軍経験があった。その人たちは戻ってこなかった。この建物に住んでいる女性たちが中庭にまきを取りに行ったところ、その人たちの遺体を発見した。血まみれで地面に横たわり、銃弾の跡があった。オレナさんは、やってきたFSB職員に「なぜ立ち去らなかったのか?」と尋ねられると、「私は43年間ここに住み、平穏な生活を送ってきた。いまさらどこへ行けと?」と言い返した。するとFSB職員は、街にとどまったオレナさんらを「裏切り者」と呼び始めたという 」
(AFP前掲)  
 

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ここでFSBがブチャ住民に吐いた「裏切り者」という表現に注目してください。
これはプーチン本人の考え方です。
英紙タイムスは、プーチンはウクライナを征服することから絶滅戦争に切り換えたとして、こう述べています。
『プーチンは征服を望んでいたが、 今、それは絶滅だ』
https://www.thetimes.co.uk/article/fiona-hill-putin-war-aim-has-become-carnage-and-annihilation-gbpthv76n

「プーチン大統領は、ウクライナ人をモスクワに対する"裏切り者"と見なし、ウクライナを占領しようとする試みから"絶滅"に切り替えたと、元ホワイト・ハウス顧問は警告した。
侵略者が直面した激しい抵抗は驚きだったが、プーチンは、あらゆる不測の事態に備えるという冷戦の考え方に基づいて、単に彼の目的を調整しただけだと、ロシア大統領を20年間研究してきたイギリス生まれの外交専門家、フィオナ・ヒルは語った。
「彼は彼ら(ウクライナ人)を脅威として排除したがっている」とヒルは語った。「彼は捕獲から基本的に大虐殺と絶滅へと移行しつつある、と私は思う。脅威を取り除くというロシアの見解は、それを完全に粉砕することだ」(タイムス4月4日)

プーチンは核の使用の制限を緩和し、経済的危機や自身の地位の崩壊までその条件にしようとしているといわれています。
また3名の合意に基づいてコードをいれないと作動しない核兵器発射システムも、すでにプーチン以外の2名である国防大臣と参謀長はこの戦争が始まって消え失せて久しく、事実上彼ひとりがこの発射ボタンを独占している状況です。

BBCモスクワ特派員の スティーブ・ローゼンバークはこう述べています

「まず最初に、打ち明けておきたいことがある。私はもう何度も、「まさかプーチンがそんなことをするわけがない」と思ってきた。
「まさかクリミアを併合するなんて。そんなことするわけがない」。そう思ったが、併合した。
「まさかドンバスで戦争を始めるなんて。そんなことするわけがない」。始めた。
「ウクライナの全面侵攻なんてするわけがない」。侵攻した。
「するわけがない」というのは、ウラジーミル・プーチン氏には当てはまらない。そう結論するしかない。
だとすると、居心地の悪い疑問が浮かび上がる。
「まさか自分から先に、核のボタンを押すわけがない。どうかな?」
(BBC2月28日)
プーチン氏は核のボタンを押すのか BBCモスクワ特派員が考える - BBCニュース

私は追い詰められたプーチンが、キーウに対して小型戦術核を使用する可能性を捨てきれません。
私もこうも思っていました。
「まさかこの現代に、ましてや世界のメディアの注視の下で大虐殺なんかするわけない」
どうでしたか?
プーチンならやるのです。この男ならやれるのです。

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年4月 6日 (水)

ウクライナ侵略は「浄化作戦」だった

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「ブチャ虐殺」のいいわけとして、ロシア側はこんな言っていました。
ラブロフのいう「西側のデッチあげで挑発だ」いうのは、弁明ではなくただのポジショントークです。
ぜんぶ国内向けですから、何も言っていないのに等しい。

当事者のロシア国防省は、こんなコトを言っています。

「殺害された市民の映像をめぐり、「死後硬直が見られず、ウクライナ側が西側メディア用に制作したものだ」、「3月29日のトルコでの交渉後、ロシア軍はブチャを離れている」と主張した」
(FNN4月4日)

他にも、「ロシア軍による支配中に「ブチャで地元住民が暴力的事件を起こしたことは一度もない。自由に外出できた」とか、「人道支援物資を何百トン持ってきた」「すべてネオナチがやったことだ」とも言っているようです。
ネオナチうんぬんをここで言い出したのは、意味があります。
プーチンは、この戦争の「大義」はウクライナのネオナチからの解放、すなわち「非ナチ化」だ、と自分で言っているからです。

「NATOはウクライナの“ネオナチ”をあらゆる面で支援している、ウクライナの“非ナチ化”を目指さなければならない」
(2月24日プーチン演説)

プーチンは共産主義者ではありませんが、そのエッセンスである国家と社会の画一的統制を受け継ぎました。
異論を許さない全体主で国民を縛り上げていく時、その核になるキイワードが必要です。
それが「大祖国戦争」でナチスに勝利した、全人民は団結してナチスに打ち勝ったということを神格化してしまいます。
たとえば、今、プーチンは5月9日までにウクライナ戦争を終りにすると言っているようですが、これは対独戦勝記念日で、ソ連時代から続くロシア最大のイベントです。赤の広場で軍事パレードをして軍事力を誇示します。
これがロシアの、いやプーチンの絶対正義です。

絶対正義ですから、普遍的で国境を超えます。
たとえば、ロシアがクリミアに継いでシリアに軍事介入した2016年の対独戦勝利記念日の演説で、プーチンはこう言っています。

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東京新聞

「ロシアは昨年以降、ソ連崩壊後旧ソ連圏以外で初めての本格的な軍事作戦をシリアで展開している。これを念頭に、プーチン大統領は演説で「今日のロシアの兵士や司令官は(第二次大戦に勝利した)英雄たちの後継者であることを証明した」と誇示した。
プーチン氏は「ソ連がナチスの支配から多数の国を解放した」と述べ、第二次大戦で果たしたソ連の貢献を強調。2014年のウクライナ危機以降、ロシアは欧米諸国との対立を深めたが「グローバルな脅威となったテロに勝利するため、ロシアは他国と協力し、軍事ブロックを超えた国際安保システムを構築する用意がある」と呼びかけた」
(毎日 2016年5月9日)

隣の国であろうとなかろうと、ウクライナが国家としてナチズムを蘇らせたと考えれば、ウクライナ人が何人殺されようと、女性や子どもが何人死のうと、許されることになります。
このようなことをプーチンは、チェチェンでもシリアでもやってきました。
これが「プーチン主義」です。

「露国防省は3日の声明で民間人殺害などへの関与を否定している。一方、国営のロシア通信は3日、ウクライナが親米欧・反露路線の「ナチ化」を志向しているとして「浄化」の必要性を指摘した。民間人殺害を正当化したと受け取れる内容で、露軍が制圧地域で「ナチ政権」を支持しているかどうかの大規模調査を実施することやエリート層の除去を主張している」(読売4月5日)
ウクライナ「浄化」が必要とロシアで報道、エリート層除去を主張 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

今回ウクライナ侵略の口実に使われたのが、「アゾフ連隊」でした。
「アゾフ連隊」こそネオナチで、彼らが東部でジェノサイドをしているのを止めねばならない、われわれロシア軍は平和維持軍なのだとプーチンは主張しました。
これはいいがかりです。「アゾフ連隊」の虐殺があったのかといえば極めて疑問です。
ウクライナ研究の第一人者、神戸学院大学の岡部芳彦教授はこう明解に答えています。

「一言でいうと、全くない。もちろん今回、8年間、戦争が2014年から続いてきた地域なので、当然戦闘が散発的に起こって、死者は、ロシア系武装勢力ですとか、ウクライナ軍にも出ている。
ただ、大量虐殺というようなことは全くありません。ただ、ナチスというと、どうしても虐殺っていうようなことと結びつけないといけないので、こういう主張をされてるという形になります」
(FNN3月20日)
【専門家解説】ウクライナをなぜ「ナチス」呼ばわり? プーチン大統領の"極端な"歴史観…背景に「独ソ戦」(FNNプライムオンライン)

「アゾフ連隊」はプーチンのウクライナ侵略の言い訳に使われただけです。
今でも親露派の人たちが、なにかというと「アゾフ連隊」の存在を「ロシアにも言い分がある」とばかりに利用するのは滑稽だから止めたほうがよい。

それはさておき、そして始まったのが、ウクライナ侵略という「浄化作戦」でした。
メディア報道では、調査→拘束→尋問(拷問)→殺害のプロセスがバラバラに報じられているのでつながりがわかりにくいかもしれませんが、こういう流れです。
今、ロシアが占領地でやっていることは典型的な浄化作戦で、ウクライナ人を選別と淘汰のふるいにかけているのです。
まず占領地の全住民を大きくふたつに選り分けます。
まず「いいウクライナ人」と「悪いウクライナ人」に二分するところから始めます。
「いいウクライナ人」は、ネオナチ主義に染まっておらず、ロシアに協力的な者です。
一方悪いウクライナ人は、西欧風の自由主義的思想にかぶれて、反ロシア的な愛国心を持つ人間、ないしはそういう危険分子と連絡を取っている支持層です。
危険分子には、ウクライナの指導層、官僚層、宗教指導者、教育者、軍幹部とその支持層が入ります。
彼らはナチズムに骨の髄まで染まっているので、全員を「矯正不可能」として抹殺するしかありません。

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集団墓地と銃乱射事件:キエフ地域での「ブチャ虐殺」の不思議な詳細 - News | WACOCA JAPAN

それを選別するためには、便利な道具があります。それがスマホです。
スマホを調べれば、ツイートの書き込みや電話先から、その人物の思想傾向や行動がわかります。
だから占領地で、ロシア軍が真っ先にスマホを取り上げて検閲するのはそのためです。

そして、西側思想のツイートをしたり、ロシア軍に対して批判的なことを発言していれば、「ネオナチ」の一丁あがりりです。
ひとりこのような危険分子は腐ったリンゴですから、リンゴ箱から取り除いてやらねばなりません。
さもないとリンゴ箱全体が腐ってしまいます。

ロシア軍はブチャの住民を殺すために広場に集めて、こう言ったそうです。

「キーウ州ブチャでは、ロシア軍が住民約40人を広場に集めた後、連行した5人の男性のうち1人をひざまずかせた状態で射殺。住民に向かって「われわれは汚れを清めるためにやって来た」と宣言した」
(東京4月4日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/169775


これこそが全体主義特有の選別思想そのもので、こちらこそ正統のナチズムです。

そして捕まえた人間は、なにせ「悪いウクライナ人」ですから、人権はありません。
後ろ手に縛って拷問にかけたり、時には殺害したり好き放題してかまいません。
このようなことは、なかなか表面に出ませんでしたが、今回慌てて逃げたために大量に証拠を残して行きました。

では、ロシアの言い分を検証してみることにしましょう。
まず、、世界に衝撃を与えた映像が撮影された日付から押えておきましょう。
ロシア軍は3月31日の夜からキーウ方面の部隊撤退を開始、4月1日の明け方までに戦術大隊3個~4個相当の部隊をベラルーシに向けて移動させ、他の部隊も次々と撤退を開始しました。
数万の部隊の移動が突然始まったために、混乱していたようで、ロシア軍の戦死者が多く置き去りにされているのか発見されています。

ということは、4月1日未明までロシア軍はブチャにいたことになります。
ウクライナ軍が街に到着したのは、4月2日以降のことでした。
では、下の遺骸が散乱する写真はいつ撮られたのでしょうか。
ロシアが主張するとおり、4月2日以降なら辻褄が合います。

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これについて決定的な証拠写真がニューヨークタイムスからスクープされています。
Dead Lay Out in Bucha for Weeks, Refuting Russian Claim, Satellite Images Show - The New York Times (nytimes.com)
『衛星画像は、ロシアの主張にもかかわらず、遺体が数週間ブチャに横たわっていることを示している』

たいへんにおもしろいので、全文訳してみました。

「ニューヨーク・タイムズ紙による衛星画像の分析は、キエフ郊外のブチャでの民間人の殺害は、兵士が町を去った後に起こったというロシアの主張に反論している。
週末にブチャの路上に横たわる民間人の死体(両手を縛られた者もいれば、頭に銃創を負った者もいる)の画像が現れたとき、ロシア国防省は責任を否定した。日曜日の電報の投稿で、同省は、3月30日頃に「すべてのロシア部隊がブチャから完全に撤退した」後、遺体が最近路上に置かれたと示唆した。
ロシアは、画像は「もう一つのでっち上げ」だと主張し、ブチャでの「ウクライナ過激派の挑発」と呼ばれるものに関する国連安全保障理事会の緊急会合を呼びかけた。
しかし、タイムズ紙によるビデオと衛星画像のレビューは、ロシア軍が町を支配していた3週間以上前に民間人の多くが殺されたことを示している。
遺体がいつ現れたのか、そして民間人がいつ殺された可能性が高いのかを確認するために、タイムズのビジュアル調査チームは衛星画像の前後の分析を実施した。

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画像は、3月9日から3月11日の間にヤブロンスカ通りに現れた人体に似た大きさの暗い物体を示しています。4月1日の映像が示すように、遺体はウクライナ軍がブチャを奪還した後に発見された正確な位置に現れる。さらなる分析により、物体は3週間以上その位置にとどまっていたことが示されている。
死因は不明である。いくつかの遺体は衝突クレーター(注・爆撃跡)と思われるものの横にある。他の人たちは放棄された車の近くにいた。遺体のうち3体は自転車の横に横たわっていた。白い布で両手を背中の後ろに縛られている人もいる。遺体はヤブロンスカ通りの半マイル以上に散らばっていた。

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ヤブロンスカ通りで撮影された2番目のビデオには、さらに3人の遺体が映っている。1つは自転車の横にあり、もう1つは放棄された車の近くにあります。衛星画像は、放棄された車と近くの遺体が3月20日から21日の間に現れることを示している。
これらは、土曜日以降に発見された民間人の遺体のほんの一部です。AP通信は、少なくとも6人の死亡した男性がオフィスビルの後ろに一緒に横たわっている画像を掲載し、中には背中の後ろで手を縛られた人もいます。この建物は、ヤブロンスカ通り沿いで発見された他の犠牲者の西1マイルだ。
さらに1マイル進むと、タイムズ紙のカメラマンが、頭に銃創を負った男性が自転車の横に横たわっているのを発見した」
(ニューヨークタイムス4月4日)

お読みいただければわかるように、完全にロシアの弁解を粉っぱみじんにしています。
衛星写真が撮られたのは、3月20日から21日です。
ウクチイナ軍が街を解放したのが、4月2日。
ウクライナ軍が偽旗作戦をしたくても、その時は街にいなかったのです。
ミステリーでいうアリバイ成立です。

なお、ウクライナはこのブチャ虐殺に関わったロシア軍兵士を既に特定しており、ネットで情報を流して情報を集めようとしています。
判明している虐殺にかかわった部隊名は、第64自動車化狙撃旅団で1600人以上。氏名・生年月日・階級・パスポートナンバー等もわかっています。

「ワシントン=横堀裕也、田島大志】ウクライナ国防省は4日、首都キーウ(キエフ)近郊の複数都市で多数の民間人の遺体が見つかったことについて、このうちブチャで「戦争犯罪に直接関与した」とするロシア軍兵士の名簿を発表した。英BBCによると、約2000人が掲載されている。多数の兵士が関与したとの訴えに呼応する形で、欧米などはロシアへの非難をさらに強めている。
ウクライナ国防省は、露軍兵士のリストを氏名や生年月日、階級などとともにホームページ上で公開し、「ウクライナ市民に向けられた犯罪は、全て裁判にかけられる」と非難した」
(読売4月6日)

今まで虐殺は十数年後になってから調査されるために、証人がいなくなったり、証拠が散逸するケースが多かったのですが、今回はホットです。
虐殺者はウクライナ国内にいる可能性すらあります。
国際社会は、侵略非難と切り分けて、虐殺者の調査に早急に乗り出すべきです。

 

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ウクライナに平和と独立を!

 

2022年4月 5日 (火)

「キーウ虐殺」続報

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 キーウ虐殺事件の続報です。

「米宇宙開発企業マクサー・テクノロジーズは3日、ロシア軍の占領から解放されたウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャの教会敷地で、長さ約14メートルの土坑を捉えた衛星画像を公表した。ロシア軍の侵攻後に掘られた集団墓地の可能性があるとしている。
 3月31日に撮影された衛星画像には、住宅街にある教会の敷地に掘られた縦長の穴が写っている。穴は同社が同月10日に撮影した別の衛星画像で最初に確認されたという。埋葬された人数などは明らかになっていないが、現地を訪れた米CNNは、少なくとも150人が埋葬されたとする地元警察当局や住民の証言を伝えた。
ウクライナ司法当局は4月3日、キーウ周辺のロシア軍から奪還した地区で、民間人ら計410人の遺体が発見されたと発表した。
 国連の人権監視団は、ロシア軍が包囲する東部マリウポリでも、衛星画像の分析から複数の集団墓地が確認されたと発表している」
(毎日4月4日)

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BBC キーウ近郊教会に集団墓地か 長さ14メートルの土坑捉えた衛星画像

「ブチャのアナトリー・フェドルク町長はAFP通信に対して、280人を集団埋葬したと話した。ウクライナ軍司令官の1人は、18歳から60歳の男性がロシア兵に取り押さえられ、処刑されたと述べた。
アメリカの人工衛星企業マクサー・テクノロジーズは、ブチャの教会の敷地内に長さ13メートルの塹壕(ざんごう)が掘られているのを、衛星写真で確認したと発表した。
写真は3月31日に撮影されたもので、集団墓地がある場所と一致するという。
マクサーによると、この地域では3月10日ごろからこの塹壕が掘られていた様子があった。
BBCはこの写真について独自に確認が取れていないが、米CNNは、この場所の集団墓地で遺体を見たと報じている」
(BBC4月4日)
ブチャなどキーウ近郊で殺人の証拠相次ぐ、410人の遺体発見と - BBCニュース

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https://www.pravda.com.ua/rus/news/2022/04/4/7336983/ 

ドイツ在住のセルゲイ・サムレニー氏のツイート。
https://twitter.com/sumlenny/status/1510168073831165956
午後5:11 · 2022年4月2日
サムレニー氏はこの間の戦況に関してたびたび専門的見解を発言していおり、ハインリッヒ・ベル財団の職員で東欧人権問題の専門家 。ウクライナ、ロシア、ベラルーシで10年以上働いていた」と紹介されています。
なお、ハインリッヒ・ベル財団は、ドイツ緑の党系シンクタンクです

内容的には未確認ですが、ひとつの見解として紹介します。

「ロシアは、ウクライナの降伏に続いて、3日以内にキーウを容易に奪取することを計画しました。-ロシア軍部隊の後には数千人のriot police(治安警察)が続いた。
ロシア軍は45,000個のボディバッグを購入し、mobile crematories(移動式火葬場)を持ち込んだ。
彼らはウクライナの大量死刑を計画していたと確信している。

2021年9月、ロシアは戦時中の集団墓地の掘削と維持に関する州の技術基準を採用し、2022年2月1日に発効した。
専門家によると、この新しいロシアの技術基準によって予想される集団墓地のサイズは、「核戦争またはパンデミックに対してだけ考えられる」

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ロシア人が2月26日に「勝利」に関する公式記事を発表したように、これらの墓はウクライナ人向けに予定されていたようだ。
標準的な予想では、3日以内に各墓地で最大1000人の死体を対象とする独立した集団墓地の掘削が行われた。
16人の兵士のチームが、すべての墓の掘削に携わった。
要約すると、ロシアはウクライナ軍に対する迅速な勝利、ウクライナの完全占領、ウクライナの市民社会の指導者、政治家、文化的指導者、聖職者などの大量虐殺を含む大量虐殺を計画したようだ。
計画されたような、大量虐殺は第二次世界大戦以来見られなかった。
理解のために。ここに集団墓地に関するロシアの州の技術基準からの詳細がある、計画と写真で、墓を掘る・隔離する方法、死体を化学物質で覆う方法、そして墓全体を重いもので切り倒す方法を説明してある」

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[サムレニー氏のツイートの要約]
①ロシアは3日以内にキーウを占領し、ウクライナを降伏させる計画だった。
② ロシア軍部隊の後に数千人の治安警察を投入した。
③ ロシア軍は4万5千個の死体袋を用意し、移動式火葬場を持ってきた。
④ロシアはウクライナ軍に対する迅速な勝利、ウクライナの完全占領、ウクライナの市民社会の指導者、政治家、文化的指導者、聖職者などの大量虐殺を含む大量虐殺を計画していたとみられる。

現時点で、このサムレニー氏の情報の裏を取る方法はありませんが、事実ならまさしく戦後最大の戦争犯罪で、しかも偶発的に起きたものではなく、計画的にウクライナの指導層、聖職者の抹殺を目的としたおそるべきジェノサイドだったということになります。
続報があれば報じます。

またブチャには悪名高いチェチェンのカディロフツィ部隊がいたことが、その破壊された軍用車両から判明しました。
カディロフツィ部隊は、チェチェンで「プーチンの犬」と呼ばれるラムザン、カデヤロフ首長とその息子が率いる軍事勢力です。
カディロフは、ロシア軍の軍籍も持っており陸軍中将だそうです。

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「2000年代中盤からチェチェンの最高権力者になったカディロフ氏はプーチン大統領の全面的な支援を受けて武力で執権している。民間人の拉致、拷問、殺人などで悪名高い民兵隊を動員して各種人権蹂躪行為を犯している。
性的マイノリティー者を強制収容して反政府活動家は暗殺した。これについてカディロフ氏とその部隊が参戦すると言った時、ロシア軍の心強い援軍になることが予想された。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「カディロフ氏のチェチェン部隊は秘蔵のカード」と表現した」
(中央日報4月1日)
https://japanese.joins.com/JArticle/289454

この記事でもわかるように、彼らは軍事集団というよりもむしろ恐怖政治を実行するテロ集団であり、これがセムレニー氏が指摘するライオット・ポリスなのかもしれません。
今までシリアに派遣され、その残虐さを知られていましたが、今回もウクライナ戦争に投入されましたが、緒戦のホストメル空港攻防戦で空挺部隊の一部として投入され、大損害を被ったと伝えられていました。
ゼレンスキー暗殺のためにも差し向けられており、英国のSASによって未然に無力化されてしまったとされています。

この「キーウの虐殺」に対する各国の反応です。

「米国のブリンケン国務長官はロシアによる戦争犯罪の捜査と、対ロ制裁の強化を呼び掛けた。
英国のトラス外相も3日、民間人に対する「無差別攻撃」を戦争犯罪として捜査する必要があると発言。欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は対ロシア制裁の強化を表明し、国連のグテーレス事務総長はブチャでの民間人殺害について独立した調査が不可欠だと述べた。
ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は3日、キーウ郊外のブチャやイルピン、ホストメリから、ロシア軍の「戦争犯罪、人道犯罪」による「世界滅亡後」のような光景が伝えられていると述べ、子どもを含む民間人の殺りくや強姦、強盗などの行為が国内外で裁かれることになると語った。
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は3日、ロシア軍の占領下にあったキーウや北部チェルニヒウ、東部ハリコフの周辺で2月末から3月にかけ、民間人の男女や子どもが銃殺されたり、女性が避難先で繰り返し強姦されたりしたとする報告書を公表した」
CNN4月4日)
CNN.co.jp : 集団墓地に民間人150人の遺体か、強まる「戦争犯罪」の声 ウクライナ - (2/2)

おそらく、プーチンは勝とうが負けようが、負けたらなおさらのこと、侵略に対する責任のみならず、キーウ虐殺事件という戦争犯罪を問われることになるでしょう。

ちなみちどうでもいいですが、いちおうロシアの弁解も。

「一方、ロシア国防省はブチャからの映像を「偽物」だと断じ、占領中に暴力を受けた住民は「一人もいない」と主張。ロシア軍はこの間、住民に452トンの人道物資を配布したとする声明を出した。
同省さらに別の声明で、複数の外国メディアがブチャのニュースを一斉に報じたのは計画的に仕組まれた作戦だと非難。ロシア軍部隊が先月30日に撤退してから映像が流れるまでの4日間の空白は、映像が偽物であることを裏付けているとの主張を展開した」
(CNN前掲)

ロシアは偽旗作戦にやられたと言っていますが、自分がやっているからお前もやっただろうという類の寝言にすぎません。
日本でこれを信じるのは、馬淵氏くらいしかいないでしょう。

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月 4日 (月)

見渡す限りの死体、プーチンの戦争犯罪

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キーウから退却したロシア軍が残したものは、大量虐殺と暴行の跡でした。
彼らは集団虐殺にまで手を染めていたようです。

「ウクライナに侵攻しているロシア軍の地上部隊が、首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多数の民間人を殺害していた疑いが、現地入りしたウクライナ軍や報道機関の指摘で浮上した。他の都市でも露軍部隊による民間人殺害や暴行が報告されており、ブチャの惨状は氷山の一角とみられる。
 2日、ブチャに入ったAFP通信の記者は、「静かな並木道に、見渡す限り遺体が散乱していた」と表現した。記者が確認した約20人の遺体は、いずれもジーンズやスニーカーなどを身に着けており、軍人には見えない服装だったという。
 遺体は露軍の激しい攻撃で廃虚と化した市内各地に点在している。英紙サンデー・タイムズは2日、ブチャの民家の地下室で、両手両足を縛られた子どもを含む男女18人の遺体が見つかったと報じた。遺体はバラバラに切断されていたという。
 犠牲者の多くは18~60歳の男性だとの情報もある。撤退決定を受けて露軍が組織的に住民を殺害したとも考えられる。露軍部隊が遺体や民家に地雷を仕掛けているとされ、民間人被害の全容把握には時間がかかりそうだ。
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、米CBSニュースのインタビューで、「ジェノサイド(集団殺害)だ。ウクライナの国と国民全体を抹殺しようとしている」と強く非難した。英国のエリザベス・トラス外相は3日、「無実の市民への無差別攻撃は戦争犯罪として調査されなければならない」との声明を発表した」
(読売4月4日)
ロシア軍 組織的に民間人殺害か - Yahoo!ニュース

21世紀に起きたこととは思えないほど残虐、かつ組織的で、しかもそれを隠そうともしていません。
現在分かっているのは西側報道陣が入ったキーウ近郊のブチャだけですが、追々他の占領地の状況が判明するにつれ、民間人虐殺がとてつもない数にのぼることがわかるはずです。
下はその画像の一部ですが、とてもお見せできない映像も多数あります。
※ショッキングな画像が含まれます ロシヤ、ウクライナで民間人を虐殺 - Togetter
https://youtu.be/37v1AZ7uBBg

多くは手を後ろ手に縛られて射殺され、そのまま路上に放置されています。
ある者はマンホールに捨てられていました
もちろん武器も携行せず、ウクライナ軍関係者でもありません。

ブチャに西側報道陣として最初に入ったAFPはこのように報じています。

「私服姿で両手を後ろに縛られたものを含む20体以上の遺体を記者がブチャ市内で見かけた。約300人の遺体が埋葬された集団墓地が見つかった」と報じており、さらにキーウから約20km離れた高速道路上では4~5人の服を身に着けていない女性の遺体が放置されており、ウクライナ国防省は「野蛮人(ロシア人兵士のこと)どもが道路脇で遺体を燃やそうとした」
(AFP4月3日)

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В Буче нашли “братскую могилу”, где похоронены почти 300 человек, на улицах десятки трупов

BBCの報道です。

「ロシア軍が後にしたブチャで、AFP通信の記者が目視した20人の遺体のうち16人は、歩道や緑地のそばに倒れていた。3人は通りの真ん中に横たわり、1人は破壊された民家の中庭で横向きに倒れていた。
白い布で両手を後ろ手に縛られ倒れていた人の隣には、ウクライナのパスポートが開いて地面に置かれていた。
ほかに2人が上腕部に白い布を縛り付けられていた。
ウクライナ当局はAFP通信に対して、死亡した男性たちはロシア軍の砲撃かロシア兵の射撃で死亡した可能性があるとして、警察が捜査すると話した。
一方、ブチャのアナトリー・フェドルク町長はAFP通信の電話取材に対して、発見された20人の遺体はすべて後頭部を銃で撃たれていたと話した。さらに、砲撃で破壊された複数の車両の中にも、複数の遺体が残されているという。
ロシアの軍事侵攻の結果、ブチャの町は280人を集団埋葬したと、町長は話した」
(BBC4月3日)
ウクライナの路上に残される数々の遺体、ロシア後退後の首都郊外ブチャで - BBCニュース

「道のあらゆる場所に、遺体が横たわっていた。建物の地下室では体の一部が切断され、拷問されたとみられる子供の遺体も。「うれしさは感じない。あるのは犠牲者への悲しみだけだ」。ウクライナがロシア軍からの「解放」を宣言したキーウ州の惨状を各国メディアが3日までに伝えた。
ある人は自転車に乗ったまま横倒れに、またある人は買い物袋を握りしめ、激戦地だった首都キーウ近郊ブチャの路上で息絶えていた。橋には対戦車用の地雷が散らばり、舗装道には不発弾が突き刺さる。別の村では1日の捜索で1500超の爆発物が見つかった。
「ここは地雷だらけだ。家の中も、庭も、道も」。英紙サンデー・タイムズによると、領土防衛隊としてキーウ近郊の警備に当たる庭師のトロビクさん(53)は、別荘地の地下室で18人の遺体を目にしたと証言。「(ロシア軍は)拷問していたんだ。一部は耳が切り取られ、ほかは歯が抜かれていた。14歳くらいの子供の遺体もあった
(産経4月4日)
ロシア軍拷問か、子供の遺体も「あるのは悲しみだけ」 - 産経ニュース (sankei.com)

時系列で追います。
朝日4月4日
【詳報】ウクライナ検事総長「キーウ近郊で民間人410人の遺体」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・4月4日23:26(キーウ17:26)
ウクライナ検事総長「キーウ地域から民間人410人の遺体」
 ウクライナのベネディクトワ検事総長は3日、これまでに首都キーウ(キエフ)近郊の地域から民間人410人の遺体が運び出されたとフェイスブックに投稿した。そのうちすでに140人については検視を終えたという。
ベネディクトワ氏は、ロシア軍によるウクライナ人に対する集団殺害などの戦争犯罪が起きているとも指摘。「国内外の法廷で責任を負わせると強調する」などと訴えた。

・23:32(ワシントン10:32)
ゼレンスキー大統領、ロシア軍の民間人殺害は「ジェノサイド(集団殺害)」
 ウクライナのゼレンスキー大統領は、3日に放送さた米CBSのインタビューで、ロシア軍がウクライナ東部や首都近郊ブチャなどで多くの民間人を殺害したとされることについて「ジェノサイド(集団殺害)だ。これは国とすべての(ウクライナの)人々を消滅させる行為だ」などと述べた。
 「これはジェノサイドか」との質問に答えた。ゼレンスキー氏は「私たちはウクライナの市民であり、ロシアの政策に従属したくはない。それゆえに、私たちは破壊され、絶滅させられようとしているのだ」との見方も示した。また、事態の打開に向けて、プーチン大統領に首脳会談を改めて呼びかけた。

・23:50(モスクワ17:50)
ロシア国防省、キーウ周辺の大量虐殺を否定
 ロシア国営のノーボスチ通信は3日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで大量殺害が行われたとするウクライナ側の主張について、ロシア国防省が否定したと報じた。同省は「ロシア軍が何らかの『犯罪』を犯したとする、ウクライナ側が公開した全ての写真や動画は、いつもの挑発に過ぎない」と反論しているという。

・22:30(ワシントン9:30)
米国防総省高官「ロシアは民間人を区別する努力を示していない」
 ロシア軍によるウクライナ侵攻をめぐり、米国防総省のカービー報道官は3日朝のFOXニュースの番組で、「ロシアは市街地を攻撃し、民間人を殺害している。(民間人を)区別する努力を示していない」と述べた。

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また、占領地において多くの首長が拘束されて連行されていましたが、その一部が死体で発見されました。

「ウクライナのベレシュチュク副首相は「3日時点で、キーウ、ヘルソン、ハルキウ、ザポリージャ、ミコライウ、ドネツクの6つの州で、合わせて11の村の首長がロシア軍に拘束されている」と会見で述べた。
国際赤十字委員会に通報し、拘束されたほかの民間人も含めて、拘束場所や健康状態を知らせるよう求めているという。ウクライナ政府は民間人の解放の交渉をロシア兵との捕虜交換の対象に加えているとしている。
 ロシア軍から奪還されたキーウ州のモティジン村では先月23日に拉致されたスヘンコ村長と夫の遺体が見つかったという」
(ABEMAタイムス4月4日)
6つの州で合わせて11の村の首長がロシア軍に拘束か キーウ州では遺体で発見も(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニ草津ュース

まさに悪魔の所業です。
これこそがロシアの占領政策です。
この大量虐殺の原因を残忍さで知られるチェチェンのカディロフツィ部隊のしわざだという意見がありますが、それだけではないはずです。
伝統的にロシア軍が占領地において行ってきたことです。
またプーチンは開戦前から「ウクライナは人口国家だ。存在してはならない」と言っていましたから、占領した地域の指導者層や文化人を抹殺する計画があったと思えます。

早く降伏しろと言っていた者たち、どう考えますか。
降伏していたら、今頃全土でこのようなことが起きていたのですよ。

 

※お断り
本日最初にアップした記事を差し替えました。

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ウクライナに平和と独立を

2022年4月 3日 (日)

日曜写真館 さまざまのこと思ひ出す桜かな

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ほころぶと告ぐる言葉の花より浮く  ぱら

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雨に風加はり花を駄目にする  もも

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つくづくとさくら花満ち日に重る  宿好

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しんとして 露をこぼすや 朝桜  子規

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蛇口より水迸り朝ざくら  石鏡

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花堤さてとここらで折り返そ  寒暑

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朝桜みどり児に言ふさやうなら 中村草田男

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ときをりの風のつめたき桜かな  久保田万太郎

 

 

2022年4月 2日 (土)

マリウポリの危機

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マリウポリが陥落の危機を迎えています。
31日の英国国防省の発表では、いまだ抵抗は継続されています。
10万の市民が残されています。
中心部ではなおウクライナ軍が立て籠もっていますが、補給を遮断された状況では時間の問題だと思われます。
東部ドネツクの武装勢力は、「人民共和国」を宣言しているようです。

「ウクライナ東部を実効支配する親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」(自称)のプシーリン首長は31日、激戦が続く東部マリウポリに「地方行政府」を創設すると発表した。タス通信が伝えた。マリウポリの掌握を宣言した形だが、実態は不明。
英国防省は31日、マリウポリ中心部はウクライナ軍が保持しているとする戦況分析を公表していた」
(産経3月31日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/767dee2423bfe88189736ca0be494ca5b96c35c9

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3月31日のウクライナ情勢
tps://www.yomiuri.co.jp/feature/titlelist/ukraine_news/

市街地にまともな建物はもはや存在せず、無差別空爆と砲撃により瓦礫の原と化しています。

「マリウポリでは停電や断水、食料不足の中で「10万人」(ウクライナ副首相)の住民が取り残されている。英BBCによると、赤十字国際委員会(ICRC)は3月31日に住民退避のための車両派遣を計画していたが、露軍に足止めされ、1日に改めて派遣を試みている。マリウポリ市長の側近はSNSで「住民が脱出することすら非常に危険な状況だ。露軍の妨害で支援物資も届いていない」と訴えた」
(読売4月1日)
マリウポリ、残された「10万人」…露軍空爆強化に市長「物資は届かず脱出も危険」 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

民間衛星が捉えたマリウポリの市街地の去年のものと比較してみます。
2021年6月のものです。美しい市街地がひろがっています。

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ttps://www.businessinsider.jp/post-251552

続いて同じ市街地の2022年3月9日のものです。

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同上

ニューズウィークによれば、光学センサーMODISの火災をモニタリングでは、マリウポリで多くの火災が確認されています。
またウクライナ軍が救出に向かったという情報もありますが、2機が撃墜されて失敗したとも伝えられています。

なおウクライナ軍残存部隊には、「アゾフ連隊」も含まれています。
このような切迫した状況においても、山口敬之氏なお執拗にアゾフ連隊」叩きを続けています。
彼にかかるとロシアの産院爆撃はアゾフ連隊のせいにしていますが、非難する方向が逆です。
今のマリウポリは上の写真でも明らかのように、非人道的な無差別爆撃にさらされ続けており、そこをこそを問題視すべきです。
この悪鬼のようなロシア軍の戦争犯罪を免罪しておいて、なにをやっているのか。
今回のウクライナ戦争は一種のリトマス試験紙で、保守論客と見られた者の中から何人かの変節者が発見されましたが、山口氏もその列に並びたいようです。

マリウポリを抜かれると、昨日私が書いた東部の「人民共和国」から、「ロシア領クリミア」まで繋がるJ 字状のロシア軍事支配地域が完成してしまいます。
奪回することは難しいのは事実ですが、ウクライナ軍は東部はこのロシアによる「支配の回廊」を各所で寸断することに傾注するはずです。

なお、ロシア軍は深刻な兵員と装備の不足に悩まされており、とうとうかつぎだしたのが囚人部隊のようです。

「ウクライナ国防省情報総局は28日、ロシアはBARSプログラム(年1回の招集/最大1ヶ間に応じて訓練もしくは戦闘任務への従事を行う見返りに毎月一定額の報酬を受け取る仕組み)の契約を締結している約10万人の予備役、ウクライナでの戦いに参加して生き残れば恩赦を与えると約束した犯罪者を4月1日から大量動員すると警告しており、チェチェン共和国のチェルノコゾボで拘束している犯罪者(約100人)はすでにウクライナへの移送準備に入っているらしい」
(航空万能論3月29日)
https://grandfleet.info/russia-related/an-armed-russian-army-pickup-with-the-z-mark-has-appeared-to-make-up-for-the-shortage-of-vehicles/

伝統的にロシアは戦争中に囚人部隊を持っている国として有名でしたが、とうとう再び登場したようです。
もう恥も外聞もありませんね。

国際社会は住民の救援に向かっています。
現在、フランス主導で犬猿の仲のギリシアとトルコが組み救出部隊を送ろうとしています。
大型輸送船を使って、一刻も早く西側に避難させねばなりません。

 

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ウクライナ守護神 大天使ミカエル

ウクライナに平和と独立を!

2022年4月 1日 (金)

あの男が排除される時まで戦争は続く

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ペシミスティックに聞こえたら申し訳ないのですが、昨日見てきたような交渉では戦争は終わらないかもしれません。
日本人が戦後に罹った病のひとつは、「対話と交渉」によって戦争が収まると思っている精神の傾きです。
積極的降伏論者はその亜種ですし、共産党的話し合い路線も似たようなものです。

そこには自分が理性的判断ができるから、相手もそうするだろうという楽天的な錯覚が宿っています。
自分もそうだから、相手もそうだろうと考えてしまう。
ところが侵略は必ずしも合理的判断の結果はじまるのではない場合もある、というのが今回の事例です。
開戦前から何度か言ってきているように、ウククライナ戦争は、プーチンにとって「やらなくてもいい戦争」でした。

西側情報機関の一部もそう思っていました。
フランスのマクロンなどは、情報機関のプーチンのブラフだという分析を信じて、自信満々にクレムリンに乗り込んでサシで話せば止められると信じていました。

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マクロン仏大統領、ロシアでコロナ検査を拒否 ロシア政府認める - BBCニュース

今頃になって、マクロンはフランス情報機関の幹部に責任をとらせています。
一方、米英の情報機関はウクライナ国境付近のロシア軍の集積状況から見て、開戦は不可避だという冷徹な判断を下して、開戦日まで特定して警告を発していました。

結局、開戦から一カ月経過してわかったことは、プーチンはリアルマッドマンだったという衝撃的事実でした。
彼は自らが滅びるまで、戦争を継続するでしょう。
最後まで諦めることなく、滅びの道をを突き進みます。
破滅するなら、世界を破滅に引きずり込むまでやる、そういう男なのです。

ですからプーチンは、どれだけウクライナの街が焼かれて数万の住民が殺され、数百万の難民が出ようと、千両もの戦車が残骸に変わり、ロシア兵が死体の山を築こうと、一切気にしないのです。
なぜなら、既に彼は脳内の世界にだけしか生きていないからです。

よくロシア兵が数万戦死したら、世論に押されて戦争を止めるだろうと言う人がいますが、ありえません。
それは普通の国の普通の政治家が考えることです。
民主主義を停止してしまった国には「世論」はありません。
独裁者は、自らが権力の椅子から転げ落ちるくらいなら、国民を巻き添えにしてしまえる生き物なのです。
唯一止まるとすれば、それはプーチンが何らかの理由で死ぬか、権力の座から引きずり降ろされて逮捕された時だけです。
ベルリンの総統官邸で毒薬をあおる時まで、戦争を止めなかったあの男と一緒です。
ルトワックはこう言っています。

「今回の戦争でロシア国家そのものの破壊が進み、それはプーチンが権力の座から堕ちるまで続く。
ロシアはこの戦争で徹底的に破壊される。プーチンはもう後戻りできないことは間違いない」
(エドワード・ルトワック『戦争集結、唯一のシナリオ』Hanada5月号)

したがって、この男を物理的に排除しない限り、戦争はどこまでも続くことになります。

「プーチンを止められる人間はいるのかといえば、それはクレムリン内の"シロヴィキ"と呼ばれる人間たちだけだと応えるしか他ない。
しかし繰り返しになるが、残念ながら、これは歴史的に一度も起こったことがない。イラクのサダム・フセインの政権では、誰もフセインを引きずり降ろすことができなかった。残念ながら、プーチンもその歴史の例外とはならないはずだ」
(ルトワック前掲)

シロヴィキとは、ロシアのFSBなどを指します。
彼らはこぞってウクライナ戦争で負けるという分析をしておきながら、それを独裁者には提出できず、その意に沿った短期間制圧可能という情報を上げて、彼の怒りを買う結果になっています。
情報機関とプーチンの間の溝は深く、これにロシア軍の一部の将官が与しているということはありえるかもしれません。

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ヒトラー暗殺計画 ワルキューレ作戦 ウィキ

彼らが、かつてのドイツ帝国軍が30もの暗殺計画を建てたように、密かに暗殺とクーデターを準備していてもなんら不思議ではありません。
ただし実行は極めて困難ですし、計画が漏れればロシアのシュタウフェンベルクたちはクレムリンから全員刑場送りとなるでしょう。

ところで、ロシア軍の新たな戦略が見えてきました。
これはロシア軍が天王山と目したキーウ包囲の挫折に伴う、新たな動きです。
アルジャジーラはこう述べています。

「国全体を乗っ取ることに失敗した後、ロシアはウクライナを二つに分割して、モスクワが支配する地域を作ろうとしている、とウクライナ軍事諜報機関のトップは語った。
ロシアが支援するウクライナ東部の反政府勢力地域、ルハンスクは、ロシア加盟に関する国民投票を実施する可能性があると述べ、そのような投票は法的根拠がなく、強力な国際的反応を引き起こすとキエフから警告を発している。
ロシアは「全面的な武力侵略」を続けており、ウクライナ軍はドネツクとルハンスクの東部地域で7回の攻撃を撃退したとウクライナ軍は述べている。
ウクライナの副首相は、ロシア軍が占領下のチェルノブイリ発電所周辺の立ち入り禁止区域を「軍事化」していると述べた」
(アルジャジーラ3月28日)
https://www.aljazeera.com/news/2022/3/28/russias-invasion-of-ukraine-list-of-key-events-from-day-33

アルジャジーラの戦況地図を押えておきましょう。

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アルジャジーラ

上図で赤色の地域はロシアの占領地域、草色地域は、ロシアが占領したと主張するウクライナ領、赤の斜線はロシア軍が侵攻したが支配していない地域、青色がウクライナ軍が反撃して支配している地域、そして黄色はドンバス州です。
これを大きく上から俯瞰すれば、ロシア軍はウクライナを東から南にかけて大きく回廊状の支配地域を作ろうとしているように見えます。
今、この回廊を遮断しているのは、南部マウリポリと、東部ハリコフ北西の2箇所です。
ここをウクライナが落とされれば、ロシアの支配の環はいったん閉じます。

では、ロシアはここでなにをするのでしょうか。
いままで彼らがしてきたことを考慮すると、先日も述べましたが要約すると

①ロシア連邦保安庁(FSB)と国家親衛隊による強権支配。FSBが支配の指揮、手足となるのは国家親衛隊。
②令状なしの家宅捜索と、ウクライナ軍の協力者の逮捕監禁。
③外部との通信と情報の遮断。マスメディアは完全検閲されて発行禁止。電話とインターネットは、すべて盗聴。無線機は没収。
④全住民の選別と登録。ロシアの出先機関に出頭し、ロシア占領機関発行の身分証明書の常時携帯の義務化。密告の推奨。
⑤ウクライナ貨幣を使用禁止。ロシアの軍票使用の義務化。外貨の所持禁止。
⑥配給切符制により食料を統制。
⑦ウクライナ人を支配地域の偽代表とする。

すでに抵抗が激しかった地域においては、反露分子とみなした住民を丸ごとシベリアに大量移送することをしていますが、更に拡大するかもしれません。
そして事実上ウクライナを二分割し、占領地域に傀儡の「人民共和国」を作らせます。

このように見てくると、ロシアはこの東部から南部クリミアにかけての「支配の回廊」が完成するまで、一切の妥協はしないでしょう。
そこを半永久的に実行支配下に置いて、やがて時をみて住民投票でロシアに「民主的に」編入します。
これがキーウ占領の代わりに、プーチンを納得させられると思う軍のギリギリのラインです。

ちなみに橋下徹氏は「被害レッドラインを決めて、そこに達すれば降伏しろ」と言っているようです。

「防衛力が不十分なウクライナではロシアに狙われるのでレッドラインを公表できないだろうが、日本では戦争指導の在り方として議論する必要がある。戦争終結妥結案確定のプロセス。被害レッドラインを定めることは、そこに達しないための防衛力強化の目標になる」
(3月22日ツイート)

利口ぶっているだけに脳みそが足りないのが目立ちます。維新さん、この男と一線を画しておいてよかったですね。
「戦うこと一択でいいのか」などと言っていましたが、一択なのはプーチンであって、ウクライナではありませんから念のため。
そもそも戦争には相手がいるわけで、今回は一方的なロシアの侵略が発端な以上、プーチンが戦争を止めようと思わないかきり戦争はどこまでも続きます。
ちなみに降伏した後待ち構えているのは、前述した永久奴隷の道なのです。
だから奴隷となって生きるよりも独立を選んで戦っているのが、ウクライナ国民ではなかったのでしょうか。

まして「レッドライン」論を平時の日本にまで敷衍して、自分のスチューピッドぶりをさらに際たたせているようです。
いいですか、日本がこのような「ここまで来たら降伏」なんてものを明示したら最後、敵からすればそこまで日本人を殺しまくらねば勝てないことになります。
仮に「レッドライン」なるものを死者10万とすれば、10万人になるまで侵略国は日本人を殺し続けるでしょう。
そんなことを明示してどうするんですか。

そもそも橋下氏のような小賢しいタイプが見誤っているのは、プーチンが彼の思惑の範囲で動いてくれるフツーの人間だと思っていることです。
あいにくプーチンは常人ではなく、一世紀に1人出るか出ないかの狂人なのです。

とまれ、プーチンという世紀の虐殺者を排除しない限り、戦争はどこまでも続くでしょう。
なおもうひとつの戦争終結方法は、ロシア軍を完全に敗北させることであるのはいうまでもありません。

 

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ウクライナに平和と独立を!

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